説明

青色の発光が改善されたフル−カラー有機ディスプレイ

【課題】フルカラー有機ディスプレイの青色発光寿命の改善。
【解決手段】繰り返しパターンの配置にされた画素アレイを含んでいて、各画素は、赤色発光サブ画素と、緑色発光サブ画素と、青色発光サブ画素を備えており、それぞれの赤色発光サブ画素と緑色発光サブ画素は、1つのELユニットだけを含むのに対し、それぞれの青色発光サブ画素は、鉛直方向に堆積された2つ以上のELユニット含んでいる、カラー画像を表示するためのフル-カラー有機ディスプレイ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フル-カラー有機ディスプレイの性能向上に関するものであり、より詳細には、フル-カラー有機ディスプレイの各画素内の青色発光サブ画素の寿命を延ばすことに関する。
【背景技術】
【0002】
フル-カラー有機ディスプレイ(有機発光ディスプレイとしても知られる)には画素アレイが存在している。各画素は、赤色、緑色、青色のエレクトロルミネッセンス(EL)サブ画素(一般に発光サブ画素、RGBサブ画素、RGBエレメントと呼ばれる)を含むことができる。各発光サブ画素は、基本的な有機発光ダイオード(OLED)からなる。基本的なOLEDは、共通に、アノードと、カソードと、アノードとカソードに挟まれた有機EL媒体(またはELユニット)とを備えている。有機EL媒体は、1つ以上の有機薄膜層を含むことができ、そのうちの1つの層が、ELすなわち発光にとって主要な役割を果たしている。この特別な層は、一般に、有機EL媒体の発光層(LEL)と呼ばれる。有機EL媒体に存在する他の有機層は主に電荷輸送機能を提供することができ、正孔輸送層(HTL)または電子輸送層(ETL)と呼ばれる。Tangらは、「有機エレクトロルミネッセンス・ダイオード」(Applied Physics Letters、第51巻、913ページ、1987年)と、譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許第4,769,292号において、高い効率のOLEDを示した。それ以来、別の層構造を備える多数のOLEDが開示されており、OLEDで使用するための異なる多くのタイプのEL材料も合成されてきた。フル-カラー有機ディスプレイの画素を形成する際には、有機EL媒体のLEL、または有機EL媒体全体を正確にパターニングする方法を適用する必要もある。Tangは、譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許第5,937,272号において、EL材料を気相蒸着することにより薄膜トランジスタ(TFT)アレイ基板の上にマルチカラーELサブ画素をパターニングする方法を提示している。したがって基本的なOLED構造を有機EL材料、正確なパターニング法、駆動回路と組み合わせることにより、フル-カラー・ディスプレイを実現することができる。
【0003】
フル-カラー有機ディスプレイの寿命は、ディスプレイを応用する上で非常に重要である。フル-カラー有機ディスプレイの寿命は、主にELサブ画素の寿命によって決まる。より詳細には、フル-カラー有機ディスプレイの寿命は、一般に、各画素内で寿命が最も短いカラーELサブ画素によって決まる。ELサブ画素の寿命は、所定の電流強度における初期輝度が半分の値になる時間として定義される。青色ELサブ画素の寿命は、緑色ELサブ画素の寿命よりも短く、赤色ELサブ画素の寿命よりもはるかに短い。明らかに、フル-カラー有機ディスプレイの寿命は青色ELサブ画素によって決まる。したがって青色ELサブ画素の寿命を長くすると、ディスプレイへの応用に大きなインパクトがあろう。
【0004】
青色OLEDの寿命を長くする方法がいくつか存在している。例えばShiら(「安定な青色発光有機ルミネッセンス・デバイスのためのアントラセン誘導体」、Applied Physics Letters、第80巻、3201ページ、2002年)とHosokawaら(アメリカ合衆国特許出願公開第2003/0077480 A1号)は、適切な材料を選択することによって青色発光の動作安定性の向上を実現した。他方、Yamada(アメリカ合衆国特許第6,366,025号)とCokら(譲受人に譲渡された「カラー発光エレメントの繰り返しパターンを有するカラーOLEDディスプレイ」という名称のアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/315,622号)は、発光面積が異なるELサブ画素を有するフル-カラー有機ディスプレイを開示した。ここではELサブ画素の発光面積は、寿命が延びるとともに、赤色、緑色、青色の発光を組み合わせることでよりよいホワイト・バランスが実現されるように選択されている。
【0005】
動作の観点からすると、ELサブ画素の寿命は駆動する電流密度に依存する。比較的大きな発光面積を持つ青色ELサブ画素は、より狭い発光面積を持つ青色ELサブ画素と同じ明るさを実現するのに必要とされる電流密度は小さいであろう。したがって寿命を長くできることが期待される。しかしフル-カラー・ディスプレイでは、各画素の全発光面積はあらかじめ決められている。1つの画素内の青色ELサブ画素が相対的に大きな発光面積を占めているのであれば、赤色と緑色のELサブ画素は相対的に小さな発光面積を占めねばならない。これは、所定の明るさにするために赤色と緑色のELサブ画素を相対的に大きな電流密度で駆動せねばならないことを意味する。その結果、同じ明るさで発光するならば、発光面積がより狭い赤色と緑色のELサブ画素は、発光面積がより広い赤色と緑色のELサブ画素よりも寿命が短くなるであろう。したがって青色ELサブ画素の寿命延長は、赤色と緑色のELサブ画素の寿命を犠牲にしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の1つの目的は、フル-カラー有機ディスプレイの各画素内の青色発光ELサブ画素の寿命を長くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、カラー画像を表示するために繰り返しパターンとして配置されている画素アレイを含むフル-カラー有機ディスプレイであって、各画素が、赤色発光サブ画素と、緑色発光サブ画素と、青色発光サブ画素を備えており、それぞれの赤色発光サブ画素と緑色発光サブ画素がELユニットを1つだけ備えているのに対し、それぞれの青色発光サブ画素が、鉛直方向に積層された2つ以上のELユニットを備えているフル-カラー有機ディスプレイによって達成される。
【0008】
本発明では、鉛直方向に積層された複数の青色ELユニットを青色発光ELサブ画素で用いる。複数のELユニットを有する1つの青色発光サブ画素は、ELユニットの数に比例して発光効率を増大させることができる。その結果、同じ明るさだと、ELユニットの数を増やすのに合わせて青色発光サブ画素の寿命を長くできるが、必ずしも画素中の青色ELサブ画素の発光面積を広くし、他のELサブ画素の発光面積を狭くする必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来技術によるフル-カラー有機ディスプレイの画素構造の断面図である。
【図2】図1に示した従来技術によるフル-カラー有機ディスプレイの画素内の青色ELサブ画素の断面図である。
【図3】本発明によるフル-カラー有機ディスプレイの一実施態様による画素構造の断面図である。
【図4】図3に示した本発明の実施態様による画素内の青色ELサブ画素の断面図である。
【図5】本発明によるフル-カラー有機ディスプレイの別の一実施態様による画素構造の断面図である。
【図6】図5に示した本発明の実施態様による画素内の別の青色ELサブ画素の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
フル-カラー有機ディスプレイにおけるELサブ画素のサイズ(例えば層の厚さ)は、ミクロン以下の範囲であることがしばしばあるため、図1〜図6は、正確に拡大して示すのではなく、見やすくなるように描いてある。
【0011】
底部から発光する構成にした場合について本発明を説明する。これは、光が透明な底部電極と透明な基板を通って出てくることを意味する。しかし本発明がこの構成に限定されることはない。本発明は、上部から発光する構成にも適用できる。これは、光が透明または半透明な上部電極を通って出てくることを意味する。本発明は、画素を形成する直交したアノード・アレイとカソード・アレイからなるパッシブ・マトリックス・ディスプレイのように、複数のELユニットが青色ELサブ画素の中で使用されている他の構成にも適用できる。
【0012】
各画素内の青色ELサブ画素に2つ以上のELユニットを有する本発明のフル-カラー有機ディスプレイの構造をより完全に理解するため、従来技術によるフル-カラー有機ディスプレイの画素構造とELサブ画素構造について、それぞれ図1と図2を参照して説明する。
【0013】
図1では、画素100内に異なる3色のELサブ画素が存在しており、EL11は赤色ELサブ画素、EL12は緑色ELサブ画素、EL13は青色ELサブ画素である。透明な基板101の上には、透明な有機絶縁層102および103と、アレイ内の個々のELサブ画素を駆動するのに必要な回路ユニット(配線、キャパシタ、トランジスタ)が載っている。見やすくするため、各サブ画素内の回路ユニットは、EL11、EL12、EL13をそれぞれ駆動するのに用いられるブロックELEC11(部分111)、ブロックELEC12(部分121)、ブロックELEC13(部分131)として示してある。有機絶縁層102の上には、透光性のあるアノード・パッド112、122、132のアレイが載っていて、導線104によってそれぞれELEC11、ELEC12、ELEC13に接続されている。有機絶縁層103は、有機絶縁層102とアノード・パッド112、122、132の上に載っていて、アノード・パッドが露出するようにパターニングされている。アノード・パッド(112、122、132)と有機絶縁層103の上には、有機ELユニット113、123、133が載っている。これら有機ELユニットは、それぞれEL11、EL12、EL13における赤色、緑色、青色の発光に対応する。ELユニットの上には、カソード180が載っている。各サブ画素内のELユニットは、1つのHTLと、1つのLELと、1つのETLを少なくとも含んでいる。EL11、EL12、EL13をアクティブ・マトリックス回路によって駆動すると、それぞれ赤色、緑色、青色の光が出る。出た光は透明なアノードを通過し、透明な有機絶縁層を通過し、透明な基板を通過する。画素内の各ELサブ画素の発光面積は、対応する個々のアノードと接触している面積によって決まる。各ELサブ画素の発光面積は、同じ値にすること、または互いに違った値にすることができる。
【0014】
図2には、画素100内の青色ELサブ画素EL13(またはサブ画素200)の詳細な層構造が示してある。ELサブ画素200は、アノード・パッド132とカソード180の間に位置する青色ELユニット133を含んでいる。この青色ELユニット133は、第1のHTL133.1と、第2のHTL133.2と、青色LEL133.3と、第1のETL133.4と、第2のETL133.5を備えている。いくつかのケースでは、第1のHTL133.1を正孔注入層(HIL)と呼び、第2のETL133.5を電子注入層(EIL)と呼ぶこともできる。別のいくつかのケースでは、第1のHTL133.1および/または第2のETL133.5を省略することができる。サブ画素200は、青色LEL133.3を赤色LELで置き換えると、画素100内の赤色ELサブ画素EL11を表わすことができる。サブ画素200は、青色LEL133.3を緑色LELで置き換えると、画素100内の緑色ELサブ画素EL12を表わすことができる。
【0015】
図3は、本発明によるフル-カラー有機ディスプレイの画素構造の有用な一実施態様である画素300を例示している。画素300は、青色ELサブ画素EL33においてアノード・パッド132とカソード180の間に2つのELユニット(ユニット133と335)が挟まれている点を除き、画素100と同じである。ELユニット133は、アノード・パッド132と有機絶縁層103の上に配置されている。ELユニット335は、ELユニット133の上に配置されており、カソード180で覆われている。EL11、EL12、EL13をアクティブ・マトリックス回路によって駆動すると、それぞれ赤色、緑色、青色の光が出る。画素100(図1)内のEL13と比較すると、画素300内のEL33は、同じ電流密度で発光効率が2倍になっている。したがって所定の明るさを維持するのに必要な電流密度は半分である。寿命は駆動する電流密度に反比例するため、EL33の寿命を2倍に延ばすことができる。その結果、フル-カラー有機ディスプレイの全体的な寿命も延ばすことができる。図3に示したEL33は2つのELユニットを有する好ましい1つの構造であるが、寿命をさらに長くするため、画素300内の青色ELサブ画素EL33は3つ以上のELユニットを備えることができる。ELユニットの数は、2〜5の範囲が可能である。
【0016】
図4には、画素300内の青色ELサブ画素EL33(またはサブ画素400)の詳細な層構造が示してある。第1のELユニット133は、第1のHTL133.1と、第2のHTL133.2と、青色LEL133.3と、第1のETL133.4と、第2のETL133.5を備えており、アノード・パッド132の上に配置されている。第2のELユニット335は、やはり第1のHTL133.1と、第2のHTL133.2と、青色LEL133.3と、第1のETL133.4と、第2のETL133.5を備えており、第1のHTL133.1が第1のELユニット133の第2のETL133.5と接触した状態で、第1のELユニット133の上に配置されている。カソード180が、第2のELユニット335の上に配置されている。鉛直方向に積層されたこの構造は、積層OLEDまたはカスケード式OLEDと呼ばれる。Liaoらは、「N型有機層およびP型有機層との接続ユニットを有するカスケード式エレクトロルミネッセンス・デバイス」という名称の譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願公開2003/0170491 A1と譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願第10/437,195号において、この構造を製造する方法を開示している。
【0017】
図5は、本発明によるフル-カラー有機ディスプレイの画素構造の有用な一実施態様である画素500を例示している。画素500は、青色ELサブ画素EL53において中間コネクタ534がELユニット133とELユニット335の間に挟まれている点を除き、画素300と同じである。画素500のEL11、EL12、EL53をアクティブ・マトリックス回路によって駆動すると、それぞれ赤色、緑色、青色の光が出る。EL53は、画素100のEL13(図1)と比較すると、同じ電流密度で発光効率が2倍になっている。したがって所定の明るさを維持するのに必要な電流密度は半分であり、EL53の寿命を2倍に延ばすことができる。その結果、フル-カラー有機ディスプレイの全体的な寿命も延ばすことができる。図5に示したEL53は2つのELユニットを有する好ましい1つの構造であるが、寿命をさらに長くするため、画素500内の青色ELサブ画素EL53は3つ以上のELユニットを備えることができる。ELユニットの数は、2〜5の範囲が可能である。したがって中間コネクタの数は1〜4の範囲が可能である。中間コネクタの数が0だと、図3のケースになる。
【0018】
図6には、画素500内の青色ELサブ画素EL53(またはサブ画素600)の詳細な層構造が示してある。EL53は、中間コネクタ534がELユニット133の第2のETLとELユニット335の第1のHTLに挟まれている点を除き、EL33と同じである。これは、鉛直方向に積層させた別のタイプの構造である。Tanakaら(アメリカ合衆国特許第6,107,734号)、Jonesら(アメリカ合衆国特許第6,337,492号)、Kidoら(日本国特開2003-04676A)、Liaoら(アメリカ合衆国特許第6,717,358号)が、この構造を製造する方法を開示している。
【0019】
デバイスの特徴に関する詳細
【0020】
基板
【0021】
本発明のELサブ画素は、一般に、支持用基板の上に形成し、カソードとアノードのいずれか一方を基板と接触させることができる。基板と接触する電極を底部電極と呼ぶ。便宜上、底部電極をアノードにするが、そうでなくてもよい。基板は、どの方向に光を出したいかに応じ、透光性または不透明にすることができる。透光特性は、基板を通してEL光を見る上で望ましい。その場合には、透明なガラスまたはプラスチックが一般に用いられる。EL光を上部電極を通じて見るような用途では、底部支持体の透過特性は重要でないため、底部支持体は、透光性、光吸収性、光反射性のいずれでもよい。この場合に用いる基板としては、ガラス、プラスチック、半導体材料(例えばケイ素)、セラミック、回路板材料などがある。このような構成のデバイスでは、もちろん、透光性のある上部電極を設ける必要がある。
【0022】
アノード
【0023】
EL光をアノード・パッド112、122、132を通して見る場合、アノードは、興味の対象となる光に対して透明か、実質的に透明である必要がある。本発明で用いられる透明なアノード用の一般的な材料は、インジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)、スズ酸化物であるが、他の金属酸化物(例えばアルミニウムをドープした亜鉛酸化物、インジウムをドープした亜鉛酸化物、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物)も可能である。これら酸化物に加え、金属窒化物(例えば窒化ガリウム)、金属セレン化物(例えばセレン化亜鉛)、金属硫化物(例えば硫化亜鉛)をアノードとして用いることができる。EL光を上部カソード電極だけを通して見るような用途では、アノードの透過特性は重要でないため、透明であるか不透明であるか反射性であるかに関係なく、あらゆる導電性材料を使用できる。必要な場合には、よく知られている方法でパターニングすることができる。方法としては、例えば、スルー-マスク蒸着、アメリカ合衆国特許第5,276,380号とヨーロッパ特許第0,732,868号に記載されている一体化シャドウ・マスキング、レーザー除去、選択的化学蒸着などがある。
【0024】
ELユニット
【0025】
本発明のELユニットは、第1のHTL、第2のHTL、LEL、第1のETL、第2のETLを備える従来と同じ有機媒体構造にすることができるが、この構造には限定されない。
【0026】
本発明の画素300と画素500に含まれる赤色発光サブ画素と緑色発光サブ画素と青色発光サブ画素のそれぞれにおけるHTLは、少なくとも1つの正孔輸送化合物(例えば芳香族第三級アミン)を含んでいる。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ポリマー・アリールアミン)である。具体的なモノマー・トリアリールアミンは、Klupfelらによってアメリカ合衆国特許第3,180,730号に示されている。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、および/または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantley他によってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。
【0027】
芳香族第三級アミンのより好ましいクラスは、アメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061,569号に記載されているように、少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。HTLは、単一の芳香族第三級アミン化合物で形成してもよいし、複数の芳香族第三級アミン化合物で形成してもよい。有用な芳香族第三級アミンの具体例としては、以下のものがある。
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン;
4,4'-ビス(ジフェニルアミノ)クアドリフェニル;
ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)-フェニルメタン;
N,N,N-トリ(p-トリル)アミン;
4-(ジ-p-トリルアミノ)-4'-[4-(ジ-p-トリルアミノ)-スチリル]スチルベン;
N,N,N',N'-テトラ-p-トリル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラ-1-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラ-2-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N-フェニルカルバゾール;
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル;
4,4"-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(3-アセナフテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン;
4,4'-ビス[N-(9-アントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4"-ビス[N-(1-アントリル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-フェナントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(8-フルオランテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ピレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ナフトアセニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ペリレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(1-コロネニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
2,6-ビス(ジ-p-トリルアミノ)ナフタレン;
2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレン;
2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ナフタレン;
N,N,N',N'-テトラ(2-ナフチル)-4,4"-ジアミノ-p-テルフェニル;
4,4'-ビス{N-フェニル-N-[4-(1-ナフチル)-フェニル]アミノ}ビフェニル;
4,4'-ビス[N-フェニル-N-(2-ピレニル)アミノ]ビフェニル;
2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミン]フルオレン;
4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン。
【0028】
有用な正孔輸送材料の別のクラスとして、ヨーロッパ特許第1,009,041号に記載されている多環式芳香族化合物がある。3つ以上のアミン基を有する第三級芳香族アミン(例えばオリゴマー材料)を使用できる。さらに、正孔輸送ポリマー材料を使用することができる。それは、例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、コポリマー(例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSSとも呼ばれる))などである。
【0029】
第1のHTLと第2のHTLの間には違いがあってもよい。そのような違いの1つは、第1のHTLが、ホスト材料としての少なくとも1つの正孔輸送材料と、ドーパント材料としての少なくとも1つの電子受容材料を含んでいることである。このタイプのHTLは、p型ドープされた有機層と呼ばれる。p型ドープされた有機層とは、その層が導電性であり、電荷の担体が主として正孔であることを意味する。導電性は、ホスト材料からドーパントへと電子が移動する結果として電荷移動錯体が形成されることによって生じる。ホスト材料から電子を受け取る際のドーパントの濃度と有効性に応じ、層の導電性は半導性から導電性の範囲にわたる可能性がある。p型ドープされた有機層でp型ドーパントとして使用される材料としては、有機化合物である2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(F4-TCNQ)、またはTCNQの他の誘導体や、無機化合物であるFeCl3、FeF3、SbCl5、または他のいくつかのハロゲン化金属などがある。ホストがポリマーである場合には、ドーパントは、上記の任意のものが可能であり、ホストに分子レベルで分散させた材料、または少量成分としてホストと共重合させた材料も可能である。第1のHTLはHILと呼ぶことができ、p型の半導性を持つ金属化合物層で置換することも可能である。
【0030】
アメリカ合衆国特許第4,769,292号と第5,935,721号により完全に説明してあるように、本発明による画素300の赤色ELサブ画素、緑色ELサブ画素、青色ELサブ画素それぞれの中にあるLELは、発光材料または蛍光材料を含んでいて、この領域で電子-正孔対が再結合する結果としてELが発生する。LELは、単一の材料を含むことができるが、より一般には1つまたは複数のゲスト化合物をドープされたホスト材料からなる。その場合、発光は主にドーパントからのものであり、ELユニット113のLEL内では赤色、ELユニット123のLEL内では緑色、ELユニット133と335のLEL内では青色を出すことが可能である。LEL内のホスト材料は、電子輸送材料、正孔輸送材料、別の材料のいずれか、または正孔-電子の再結合をサポートする材料の組み合わせにすることができる。ドーパントは、通常は蛍光の強い染料の中から選択するが、リン光化合物(例えばWO 98/55561、WO 00/18851、WO 00/57676、WO 00/70655に記載されている遷移金属錯体)も有用である。ドーパントは一般に0.01〜10質量%がホスト材料に組み込まれる。ポリマー材料(例えばポリフルオレン、ポリビニルアリーレン(例えばポリ(p-フェニレンビニレン)、すなわちPPV))もホスト材料として使用できる。この場合、小分子ドーパントは、ポリマーからなるホストに分子として分散させること、またはそのドーパントを少量成分と共重合させてホスト・ポリマーに添加することができる。
【0031】
染料をドーパントとして選択する際の重要な関係は、電子のエネルギー・バンド・ギャップの比較である。ホストからドーパント分子にエネルギーが効率的に移動するための必要条件は、ドーパントのバンド・ギャップが、ホスト材料のバンド・ギャップよりも小さいことである。リン光発光材料では、ホストの三重項のエネルギー・レベルがホストからドーパントにエネルギーが移動するのに十分な大きさであることも重要である。
【0032】
有用であることが知られているホスト分子および発光分子としては、アメリカ合衆国特許第4,768,292号、第5,141,671号、第5,150,006号、第5,151,629号、第5,405,709号、第5,484,922号、第5,593,788号、第5,645,948号、第5,683,823号、第5,755,999号、第5,928,802号、第5,935,720号、第5,935,721号、第6,020,078号に開示されているものがある。
【0033】
8-ヒドロキシキノリン(オキシン)および同様の誘導体の金属錯体は、金属キレート化オキシノイド(一般式E)としても知られており、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを形成する。オキシノイド系化合物の具体例としては、以下のものがある。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)]
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II)
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)
CO-5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム]
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)]
CO-8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)]
CO-9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)]
【0034】
有用な他のクラスのホスト材料としては、アメリカ合衆国特許第5,935,721号に記載されているアントラセンの誘導体(例えば2-(1,1-ジメチルエチル)-9,10-ビス(2-ナフタレニル)アントラセン(TBADN)、9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセン(ADN)、これらの誘導体)、アメリカ合衆国特許第5,121,029号に記載されているジスチリルアリーレン誘導体、ベンズアゾール誘導体(例えば2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール])、青色発光金属キレート化オキシノイド系化合物(例えばビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(B-Alq))などがあるが、これだけに限定されるわけではない。カルバゾール誘導体は、リン光発光材料にとって特に有用なホストである。
【0035】
有用な蛍光発光材料としては、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドンの誘導体や、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタン化合物、カルボスチリル化合物などがあるが、これだけに限定されるわけではない。
【0036】
本発明の画素300と画素500に含まれる赤色発光サブ画素と緑色発光サブ画素と青色発光サブ画素のそれぞれにおけるETLの形成に用いられる好ましい薄膜形成材料は、金属キレート化オキシノイド系化合物(例えばオキシン(8-キノリノールまたは8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)そのもののキレート)である。このような化合物は、電子を注入して輸送するのを助け、高レベルの性能を示し、体積指せて薄膜を形成するのが容易である。オキシノイド系化合物の具体例としては、以下のものがある。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)]
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II)
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)
CO-5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム]
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)]
CO-8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)]
CO-9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)]
【0037】
他の電子輸送材料としては、アメリカ合衆国特許第4,356,429号に開示されているさまざまなブタジエン誘導体、アメリカ合衆国特許第4,539,507号に開示されているさまざまな複素環式蛍光増白剤などがある。ベンズアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、ピリジンチジアゾール、トリアジン、いくつかのシロール誘導体も、有用な電子輸送材料である。
【0038】
第1のETL133.4と第2のETL133.5には違いがあってもよい。そのような違いの1つは、第2のETLが、ホスト材料としての少なくとも1つの電子輸送材料と、ドーパント材料としての少なくとも1つの電子供与材料からなることである。このタイプのETLは、n型ドープされた有機層と呼ばれる。n型ドープされた有機層とは、その層が導電性であり、電荷の担体が主として電子であることを意味する。導電性は、ドーパントからホスト材料へと電子が移動する結果として電荷移動錯体が形成されることによって生じる。ホスト材料に電子を与える際のドーパントの濃度と有効性に応じ、層の導電性は半導性から導電性の範囲にわたる可能性がある。n型ドープされた有機層でn型ドーパントとして使用される材料としては、仕事関数が4.0eV未満の金属または金属化合物がある。特に有用なドーパントとしては、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物がある。“金属化合物”という用語には、有機金属錯体、金属-有機塩、無機塩、酸化物、ハロゲン化物が含まれる。金属含有n型ドーパントのクラスのうちで、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、Sm、Eu、Tb、Dy、Ybや、その無機化合物または有機化合物が特に有用である。n型がドープされた有機層でn型ドーパントとして使用される材料としては、ビス(エチレンジチオ)-テトラチアフルバレン(BEDT-TTF)、テトラチアフルバレン(TTF)、その誘導体などもある。ホストがポリマーである場合には、ドーパントは、上記の任意のものが可能であり、ホストに分子レベルで分散させた材料、または少量成分としてホストと共重合させた材料も可能である。第2のETLはEILと呼ぶことができ、n型の半導性を持つ金属化合物層で置換することも可能である。
【0039】
中間コネクタ
【0040】
青色ELユニット133と335の間に設けられる任意の中間コネクタ534は、隣接する青色ELユニットへの電子と正孔の注入を改善するために用いられる。鉛直方向に積層されたこの構造の発光性能を優れたものにするためには、この中間コネクタがあることで電気抵抗が大きくなってはならず、透光性が低下してもならない。さもないと駆動電圧が大きくなり、光の出力が低下するであろう。中間コネクタの化学的組成と厚さは拡散作用と光学的特性の両方に影響を与えるため、最適なものにする必要があろう。有機層は堆積中の分解に特に敏感であるため、堆積法も最適なものにする必要がある。
【0041】
中間コネクタ534は、少なくとも1つの無機半導性材料、または2つ以上の半導性材料の組み合わせを含んでいる。適切な半導体材料は、光学的エネルギー・バンド・ギャップが4.0eV未満でなくてはならない。光学的エネルギー・バンド・ギャップは、光吸収のピークが始まるエネルギーとして定義される。光学的エネルギー・バンド・ギャップは、UV-Vis吸収分光計(例えばHP 8453 UV-Vis分光計)を用いて測定することができる。材料の有用な1つのクラスは、元素周期表(例えばVWRサイエンティフィック・プロダクツ社が発行している『元素の周期表』)のIVA族、VA族、VIA族、VIIA族、VIIIA族、IB族、IIB族、IIIB族、IVB族、VB族にあるサブ画素用化合物の中から選択することができる。そのような化合物として、炭化物、ケイ化物、窒化物、リン化物、ヒ化物、酸化物、硫化物、セレン化物、テルル化物、またはこれらの混合物がある。これら半導性化合物は、化学量論的な状態で存在していても、非化学量論的な状態でで存在していてもよい。すなわちこれら半導体化合物は、金属成分を過剰に含んでいても、金属成分が不足していてもよい。中間コネクタ534のための特に有用な材料は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、亜鉛、カドミウム、ガリウム、タリウム、ケイ素、ゲルマニウム、鉛、アンチモンの半導性酸化物、またはこれらの組み合わせである。中間コネクタ534のための特に有用な材料には、セレン化亜鉛、窒化ガリウム、炭化ケイ素、またはこれらの組み合わせも含まれる。中間コネクタ534のための有用な材料は、WO3、MoO3、In2O3、SnO2、PbO、Sb2O3、SnSe、SnS、ZnSe、ZnS、VO2、V2O5のいずれかであることが好ましい。
【0042】
中間コネクタ534は、Sze、『半導性デバイスの物理学』、第2版、ワイリー社、ニューヨーク、1981年、251ページに示してあるような少なくとも1つ以上の金属材料も含むことができ、その金属材料のうちの少なくとも1つは、仕事関数が4.0eVよりも大きい。中間コネクタ534のための有用な材料は、Al、Ag、Au、Pd、Ptのいずれかであることが好ましい。
【0043】
カソード
【0044】
アノードを通した発光だけを見る場合には、本発明で使用するカソード180は、ほぼ任意の導電性材料で構成することができる。望ましい材料は優れたフィルム形成特性を有するため、下にある有機層との接触がよくなり、低電圧で電子の注入が促進され、優れた安定性を得ることができる。有用なカソード材料は、仕事関数が小さな(4.0eV未満)金属または合金を含んでいることがしばしばある。好ましい1つのカソード材料は、アメリカ合衆国特許第4,885,221号に記載されているように、銀が1〜20%の割合で含まれたMgAg合金である。適切なカソード材料の別のクラスとしては、有機層(例えばETL)と接触している薄い無機EILを含む二層があり、有機層には、より厚い導電性金属層が被せてある。無機EILが仕事関数の小さな金属または金属塩を含んでいる場合には、より厚い被覆層の仕事関数が小さい必要はない。このような1つのカソードは、アメリカ合衆国特許第5,677,572号に記載されているように、LiFからなる薄い層と、その上に載るより厚いAl層からなる。他の有用なカソード材料のセットとしては、アメリカ合衆国特許第5,059,961号、第5,059,862号、第6,140,763号に開示されているものがあるが、これだけに限定されるわけではない。
【0045】
カソードを通して発光を見る場合、カソードは、透明であるか、ほぼ透明である必要がある。このような用途のためには、金属が薄いか、透明な導電性酸化物を使用するか、このような材料の組み合わせを使用する必要がある。透光性のあるカソードは、アメリカ合衆国特許第4,885,211号、第5,247,190号、第5,703,436号、第5,608,287号、第5,837,391号、第5,677,572号、第5,776,622号、第5,776,623号、第5,714,838号、第5,969,474号、第5,739,545号、第5,981,306号、第6,137,223号、第6,140,763号、第6,172,459号、第6,278,236号、第6,284,393号、日本国特許第3,234,963号、ヨーロッパ特許第1,076,368号に、より詳細に記載されている。カソード材料は、一般に、熱蒸着、電子ビーム蒸着、イオン・スパッタリング、化学蒸着によって堆積させる。
【0046】
ディスプレイの特徴
【0047】
本発明のフル-カラー有機ディスプレイは、それぞれの画素内に特定の色のための2つ以上のELサブ画素を含むことができる。各画素内にあるそれぞれの色のためのELサブ画素の数は、その色に対するヒトの相対的視覚周波数応答とパターニングの複雑さに従って決める。ヒトの目は緑色の光に対する感度が最もよいため、Elliotは、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0015110 A1と譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/315,622において、見たときの特定の解像度を大きくするため、互いに隣接する画素内または1つの画素内に対角に緑色ELサブ画素を配置することを提案した。したがって本発明では、1つの画素内の緑色ELサブ画素の数を4よりも大きくすることができ、それを1つの画素内に対角に配置する。その結果、本発明のフル-カラー有機ディスプレイは、それぞれの画素内に、1つの赤色発光サブ画素と、複数の緑色発光サブ画素と、1つの青色発光サブ画素を含むことができる。しかしパターニングの複雑さのほうが考慮すべきより重要な因子である場合には、画素のパターニングを単純化するため、本発明のフル-カラー有機ディスプレイは、それぞれの画素内に、1つの赤色発光サブ画素と、1つの緑色発光サブ画素と、1つの青色発光サブ画素を含むこともできる。
【0048】
本発明のフル-カラー有機ディスプレイでは、特定の色を出す発光サブ画素の発光面積は、その発光サブ画素の効率と、その発光サブ画素の寿命と、各画素内でその色を出す発光サブ画素の数と、ディスプレイのホワイト・バランスに対するその発光サブ画素の色からの相対的寄与と、パターニングの複雑さの関数である。各画素内にあるそれぞれのELサブ画素の発光面積は異なっていることが好ましい。一般に、各画素内の3つの色のELサブ画素のうちで、青色ELサブ画素がやはり最も広い発光面積を持つことができ、緑色ELサブ画素が最も狭い発光面積を持つことができる。しかし単純なパターニングを考える場合には、それぞれの色のELサブ画素を同じ発光面積にすることができる。
【0049】
本発明のフル-カラー有機ディスプレイでは、各画素内にあるそれぞれのELサブ画素の発光面の形状は、その色に対するヒトの相対的視覚周波数応答と、発光サブ画素の発光面積と、パターニングの複雑さに従って決める。発光面の形状は、正方形、長方形、三角形、円、またはこれらの任意の組み合わせにすることができる。それぞれの色のELサブ画素は、異なる形状の発光面を持つこと、または同じ形状の発光面を持つことができる。
【0050】
他の特徴
【0051】
有機層の堆積
【0052】
上記の有機材料は、気相法(例えば熱による蒸発)でうまく堆積するが、流体(例えば溶媒。フィルムの形成を改善するため、場合によっては結合剤もその中に含まれている)から堆積させることもできる。材料がポリマーである場合には、溶媒堆積が通常は好ましいが、他の方法(例えばスパッタリング、ドナー・シートからの熱転写)も利用することができる。熱による蒸発で堆積させる材料は、タンタル材料からなることの多い蒸発用“ボート”から気化させること(例えばアメリカ合衆国特許第6,237,529号に記載されている)や、まず最初にドナー・シートにコーティングし、次いで基板のより近くで昇華させることができる。混合材料からなる層では、別々の昇華用ボートを用いること、または材料をあらかじめ混合し、単一のボートまたはドナー・シートからコーティングすることができる。フル-カラー・ディスプレイでは、LELの画素化が必要とされる可能性がある。LELを画素化した堆積は、シャドウ・マスク、一体化シャドウ・マスク(アメリカ合衆国特許第5,294,870号)、ドナー・シートからの空間的に限定された染料熱転写(アメリカ合衆国特許第5,688,551号、第5,851,709号、第6,066,357号)、インクジェット法(アメリカ合衆国特許第6,066,357号)を利用して実現することができる。
【0053】
封入
【0054】
たいていのOLEDデバイスは、水分と酸素の一方または両方に敏感であるため、一般に不活性雰囲気(例えば窒素やアルゴン)中で、乾燥剤(例えばアルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、粘土、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、ハロゲン化金属、過塩素酸塩)とともに密封される。封入と乾燥のための方法としては、アメリカ合衆国特許第6,226,890号に記載されている方法などがある。さらに、障壁層(例えばSiOx、テフロン(登録商標))や、交互に積層された無機層/ポリマー層が、封入法として知られている。
【0055】
光学的最適化
【0056】
本発明のELサブ画素では、望むのであれば特性を向上させるため、よく知られているさまざまな光学的効果を利用することが可能である。その中には、層の厚さを最適化して光の透過を最大にすること、誘電体ミラー構造を設けること、反射性電極の代わりに光吸収性電極にすること、グレア防止または反射防止のコーティングをディスプレイの表面に設けること、偏光媒体をディスプレイの表面に設けること、カラー・フィルタ、中性フィルタ、カラー変換フィルタをディスプレイの表面に設けることなどがある。フィルタ、偏光装置、グレア防止用または反射防止用コーティングは、カバーの表面に、またはカバーの一部として特別に設けることができる。
【0057】
この明細書で言及した特許その他の刊行物の開示内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【実施例】
【0058】
本発明とその利点は、以下に示す本発明の実施例と比較例によってさらによく理解することができる。簡略化するため、材料と、その材料で形成した層を以下のように略記する。
ITO:インジウム-スズ-酸化物;ガラス基板の上に透明なアノードを形成するのに用いる。
CFx:重合したフルオロカーボン層;ITOの上に正孔注入層を形成するのに用いる。
m-TDATA:4,4',4"-トリス(N-3-メチルフェニル-N-フェニル-アミノ)トリフェニルアミン;正孔輸送特性を改善するため第1の正孔輸送層を形成する際にホスト材料として用いる。
F4-TCNQ:2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン;第1の正孔輸送層の中のp型ドーパント材料として用いる。
NPB:N,N'-ビス(1-ナフチル)-N,N'-ジフェニル-1,1'-ビフェニル-4,4'-ジアミン;第2の正孔輸送層を形成するのに用いる。
TBADN:2-(1,1-ジメチルエチル)-9,10-ビス(2-ナフタレニル)アントラセン;発光層を形成する際にホスト材料として用いる。
TBP:2,5,8,11-テトラ-t-ブチルペリレン;発光層におけるドーパント材料として用いる。
Bphen:4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン;第1の電子輸送層を形成するのに用いられるとともに、第2の電子輸送層を形成する際のホスト材料としても用いられる。
Li:リチウム;電子輸送特性を改善するために第2の電子輸送層でドーパント材料として用いられる。
MgAg:体積比が10:1.0のマグネシウム:銀;カソードを形成するのに用いる。
【0059】
以下の実施例では、有機層の厚さとドーピングの濃度は、較正した厚さモニター(INFICON IC/5堆積制御装置)を用い、その場で制御してモニターした。製造したすべてのデバイスのEL特性は、定電流源(キースリーy白の2400ソースメータ)と光検出器(フォト・リサーチ社のスペクトラスキャンPR650)を用いて室温にて評価した。色は、国際照明委員会の(CIE)座標を用いて表示する。
例1(比較例)
【0060】
従来の青色ELサブ画素の調製は以下のようにして行なう。透明なITO導電層をコーティングされた厚さが約1.1mmのガラス基板を、市販のガラス研磨ツールを用いてきれいにして乾燥させた。ITOの厚さは約42nmであり、ITOの面抵抗は約68Ω/□である。次に、ITOの表面を酸化プラズマで処理し、アノードとして適した表面にした。RFプラズマ処理チェンバーの中でCHF3ガスを分解することにより、厚さが1nmのCFx層をきれいなITOの表面にHILとして堆積させた。次に基板を真空蒸着チェンバー(トロヴァトMFG社)に移し、基板の上に他のすべての層を堆積させた。約10-6トルの真空下で加熱したボートから蒸発させることにより、以下に示す層を以下の順番で堆積させた。
1.ELユニット:
a)3.0容積%のF4-TCNQをドープしたm-TDATAからなる厚さが約70nmの第1のHTL;
b)NPBからなる厚さが10nmの第2のHTL;
c)1.5容積%のTBPをドープしたTBADNからなる厚さが20nmのLEL;
d)Bphenからなる厚さが10nmの第1のETL;
e)1.2容積%のLiをドープしたBphenからなる厚さが25nmの第2のETL。
2.カソード:MgAgからなり、厚さは約220nm。
【0061】
これらの層を堆積させた後、デバイスを蒸着チェンバーから乾燥ボックス(VACバキューム・アトモスフェア社)に移し、封入した。デバイスの発光性能を室温にて20mA/cm2で測定した。表1にデバイスの発光性能のデータ、すなわち駆動電圧、輝度、発光収率、効率(単位はW/A)、CIEx、CIEy、輝度のピークを示してある。
例2
【0062】
青色ELサブ画素を例1に記載したようにして構成した。堆積させた層の構造は以下の通りである。
1.第1のELユニット:
a)3.0容積%のF4-TCNQをドープしたm-TDATAからなる厚さが約70nmの第1のHTL;
b)NPBからなる厚さが10nmの第2のHTL;
c)1.5容積%のTBPをドープしたTBADNからなる厚さが20nmのLEL;
d)Bphenからなる厚さが10nmの第1のETL;
e)1.2容積%のLiをドープしたBphenからなる厚さが25nmの第2のETL。
2.第2のELユニット:
a)3.0容積%のF4-TCNQをドープしたm-TDATAからなる厚さが約55nmの第1のHTL;
b)NPBからなる厚さが10nmの第2のHTL;
c)1.5容積%のTBPをドープしたTBADNからなる厚さが20nmのLEL;
d)Bphenからなる厚さが10nmの第1のETL;
e)1.2容積%のLiをドープしたBphenからなる厚さが25nmの第2のETL。
3.カソード:MgAgからなり、厚さは約330nm。
【0063】
デバイスの発光性能を室温にて20mA/cm2で測定した。表1にデバイスの発光性能のデータを示してある。
【0064】
【表1】

【0065】
本発明に従って製造した青色ELサブ画素は、同じ電流密度でテストして輝度が2倍になり、色純度が改善した。それと同時に、駆動電圧は10ボルト未満を維持していた。例1における所定の明るさを維持するのに必要な電流密度は半分であるため、例2の青色ELサブ画素の寿命を2倍に延ばすことができる。その結果、本発明のフル-カラー有機ディスプレイの全体的な寿命を延ばすことができる。
【符号の説明】
【0066】
100 フル-カラー有機ディスプレイ内の画素(従来技術)
101 基板
102 有機絶縁層
103 有機絶縁層
104 導電性ワイヤー
EL11 赤色ELサブ画素
111 赤色ELサブ画素内の回路ユニット
112 赤色ELサブ画素内のアノード・パッド
113 赤色ELユニット
EL12 緑色ELサブ画素
121 緑色ELサブ画素内の回路ユニット
122 緑色ELサブ画素内のアノード・パッド
123 緑色ELユニット
EL13 青色ELサブ画素
131 青色ELサブ画素内の回路ユニット
132 青色ELサブ画素内のアノード・パッド
133 青色ELユニット
200(EL13) 画素100内の青色ELサブ画素(従来技術)
133.1 第1の正孔輸送層
133.2 第2の正孔輸送層
133.3 青色発光層
133.4 第1の電子輸送層
133.5 第2の電子輸送層
180 カソード
300 フル-カラー有機ディスプレイ内の画素(本発明)
EL33 青色ELサブ画素
335 青色ELユニット
400(EL33) 画素300内の青色ELサブ画素
500 別のフル-カラー有機ディスプレイ内の画素(本発明)
EL53 青色ELサブ画素
534 中間コネクタ
600(EL53) 画素500内の青色ELサブ画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラー画像を表示するために繰り返しパターンとして配置されている画素アレイを含むフル-カラー有機ディスプレイであって、各画素が、赤色発光サブ画素と、緑色発光サブ画素と、青色発光サブ画素を備えており、それぞれの赤色発光サブ画素と緑色発光サブ画素がELユニットを1つだけ備えているのに対し、それぞれの青色発光サブ画素が、鉛直方向に積層された2つ以上のELユニットを備えているフル-カラー有機ディスプレイ。
【請求項2】
鉛直方向に積層された上記青色ELユニットの数が2〜5の範囲である、請求項1に記載のフル-カラー有機ディスプレイ。
【請求項3】
上記青色ELユニットのための0〜4個の中間コネクタをさらに備える、請求項2に記載のフル-カラー有機ディスプレイ。
【請求項4】
鉛直方向に積層された上記ELユニットの数が2であり、それぞれの青色発光サブ画素が、
a)アノードと;
b)該アノードの上に配置された第1の青色ELユニットと;
c)該第1の青色ELユニットの上に配置された第2の青色ELユニットと;
d)該第2の青色ELユニットの上に配置されたカソードとを備える、請求項2に記載のフル-カラー有機ディスプレイ。
【請求項5】
鉛直方向に積層された上記ELユニットの数が2であり、それぞれの青色発光サブ画素が、
a)アノードと;
b)該アノードの上に配置された第1の青色ELユニットと;
c)該第1の青色ELユニットに接して配置された中間コネクタと;
d)該中間コネクタに接して配置された第2の青色ELユニットと;
e)該第2の青色ELユニットの上に配置されたカソードとを備える、請求項2に記載のフル-カラー有機ディスプレイ。
【請求項6】
上記青色ELユニットが、
a)第1の正孔輸送層と;
b)該第1の正孔輸送層に接して配置された第2の正孔輸送層と;
c)該第2の正孔輸送層の上に配置されていて、正孔-電子の再結合に応答して青色の光を発生させる青色発光層と;
d)該青色発光層の上に配置された第1の電子輸送層と;
e)該第1の電子輸送層に接して配置された第2の電子輸送層を備える、請求項2に記載のフル-カラー有機ディスプレイ。
【請求項7】
上記第1の正孔輸送層が、p型ドープされた有機層である、請求項6に記載のフル-カラー有機ディスプレイ。
【請求項8】
上記第1の正孔輸送層が、p型半導性を有する金属化合物層である、請求項6に記載のフル-カラー有機ディスプレイ。
【請求項9】
上記第2の電子輸送層が、n型ドープされた有機層である、請求項6に記載のフル-カラー有機ディスプレイ。
【請求項10】
上記第2の電子輸送層が、n型半導性を有する金属化合物層である、請求項6に記載のフル-カラー有機ディスプレイ。
【請求項11】
上記中間コネクタが、光学的エネルギー・バンド・ギャップが4.0eV未満の無機半導層を含む、請求項3に記載のフル-カラー有機ディスプレイ。
【請求項12】
上記中間コネクタが、WO3、MoO3、In2O3、SnO2、PbO、Sb2O3、SnSe、SnS、ZnSe、ZnS、VO2、V2O5のいずれかを含む、請求項3に記載のフル-カラー有機ディスプレイ。
【請求項13】
上記中間コネクタが、仕事関数が4.0eVよりも大きい金属層を含む、請求項3に記載のフル-カラー有機ディスプレイ。
【請求項14】
上記中間コネクタが、Al、Ag、Au、Pd又はPtからなる層を含む、請求項3に記載のフル-カラー有機ディスプレイ。
【請求項15】
各画素中でそれぞれの色を発光するサブ画素の数が、色に対するヒトの相対的視覚周波数応答とパターニングの複雑さに従って決められている、請求項1に記載のフル-カラー有機ディスプレイ。
【請求項16】
各画素が、1つの赤色発光サブ画素と、複数の緑色発光サブ画素と、1つの青色発光サブ画素を含む、請求項15に記載のフル-カラー有機ディスプレイ。
【請求項17】
特定の1つの色の発光サブ画素の発光表面積が、該発光サブ画素の効率と、該発光サブ画素の寿命と、各画素中で該色を出す発光サブ画素の数と、ディスプレイの望ましい白色点に対する該発光サブ画素の色からの相対的寄与と、パターニングの複雑さに従って決定されている、請求項1に記載のフル-カラー有機ディスプレイ。
【請求項18】
それぞれの発光サブ画素が、異なる発光表面積を有する、請求項17に記載のフル-カラー有機ディスプレイ。
【請求項19】
それぞれの発光サブ画素が、同じ発光表面積を有する、請求項17に記載のフル-カラー有機ディスプレイ。
【請求項20】
各画素中のそれぞれの発光サブ画素の発光面の形状が、色に対するヒトの相対的視覚周波数応答と、該発光サブ画素の発光表面積と、パターニングの複雑さに従って決められている、請求項1に記載のフル-カラー有機ディスプレイ。
【請求項21】
それぞれの発光サブ画素が、異なる形状の発光面を有する、請求項20に記載のフル-カラー有機ディスプレイ。
【請求項22】
それぞれの発光サブ画素が、同じ形状の発光面を有する、請求項20に記載のフル-カラー有機ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−43817(P2012−43817A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−264327(P2011−264327)
【出願日】平成23年12月2日(2011.12.2)
【分割の表示】特願2006−552139(P2006−552139)の分割
【原出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(510059907)グローバル オーエルイーディー テクノロジー リミティド ライアビリティ カンパニー (45)
【Fターム(参考)】