説明

青色発光半導体ナノクリスタル物質

【課題】青色発光半導体ナノクリスタル物質を提供する。
【解決手段】半導体ナノクリスタルは、第一半導体物質含有コア、及び第二半導体物質含有オーバーコーティングを含む。該ナノクリスタルの単分散集団は、高い量子効率で、波長範囲の狭い青色光を発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本明細書は、35 U.S.C. § 119(e)の下で、2004年3月8日に出願された米国特許
出願番号第60/550,314号に対して優先権を主張し、かつ“青色発光半導体ナノ
クリスタル物質”と題された、2005年3月4日にUSPTOにおいて出願された代理
人整理番号14952.0329の出願に対して優先権を主張する。これらのそれぞれは
、全体として引用により組み込まれている。
(連邦政府によって後援を受けた研究、又は成果)
米国政府は、NSFによる契約書第DMR0213282号、及び米国陸軍研究室によ
る契約書第DAAD−19−02−0002号に準拠したこの発明において一定の権利を
有し得る。
(技術分野)
本発明は、青色発光半導体ナノクリスタルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
(背景)
小さい直径を有する半導体ナノクリスタルは、分子と、物質のバルク形態との間の中間
的な特性を有し得る。例えば、小さい直径を有する半導体物質を基礎とするナノクリスタ
ルは、3次元すべてにおいて、電子及び正孔、双方の量子閉じ込めを示すことができ、ナ
ノクリスタルサイズの減少とともに、該物質の有効バンドギャップを増加させる。その結
果、ナノクリスタルの光吸収、及び発光の双方は、該ナノクリスタルサイズの減少に伴い
、青(すなわち、高エネルギー)側にシフトする。半導体ナノクリスタルは、狭い蛍光バ
ンドを有することができ、その発光波長は、該ナノクリスタルのサイズ、及び物質で整調
される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
青色発光半導体ナノクリスタル物質を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(要旨)
安定した、青色発光物質は、カラー表示用途において高度に望ましい。発光性の半導体
ナノクリスタルは、有機発光化合物よりもより安定であり得る。また、半導体ナノクリス
タルは、有機化合物と比較して狭い発光バンド幅を有し得る。
【0005】
コア−シェルナノクリスタル物質は、青色の狭いバンド端発光を示すように調製され得
る。該物質は、少なくとも10%、少なくとも30%、又は少なくとも50%の量子効率
、及び40nm未満、30nm未満、又は20nm未満の半値全幅の発光バンド幅を有し
得る。
【0006】
一態様において、半導体ナノクリスタルは、第一半導体物質含有コア、及び該コア上の
第二半導体物質含有オーバーコーティングを含み、該ナノクリスタルは、深いトラップ発
光部位(Deep-trap emission sites)が実質的になく、かつ該ナノクリスタルは、励起し
た場合に青色光を発する。
別の態様において、半導体ナノクリスタルの集団、該集団のそれぞれのナノクリスタル
は、第一半導体物質含有コア、及び該コア上の第二半導体物質含有オーバーコーティング
を含む。それぞれのナノクリスタルは、深いトラップ発光部位が実質的にない。該集団は
、励起した場合、青色光を発する。
【0007】
該ナノクリスタルは、励起した場合に、少なくとも10%、少なくとも30%、又は少
なくとも50%の量子効率を有する青色光を発し得る。該青色光は、40nm以下、30
nm以下、又は20nm以下の半値全幅を有する。該青色光は、470nmよりも短いピ
ーク波長を有し得る。該第一半導体物質は、CdSであり得る。該第二半導体物質は、Z
nSであり得る。該青色光は、深いトラップ発光の強度よりも、少なくとも5倍、少なく
とも10倍、又は少なくとも20倍大きい強度を有し得る。
【0008】
該集団は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも
50%の量子効率を有する光を発し得る。該集団は、40nm以下、30nm以下、又は
20nm以下の、半値全幅を有する光を発し得る。
別の態様において、発光デバイスは、マトリックス含有層、該層に隣接する第一電極、
該第一電極と向かい合う第二電極、及び該第一電極と該第二電極との間に配置された複数
の半導体ナノクリスタルを含む。該半導体ナノクリスタルは、深いトラップ発光部位が実
質的にない。該ナノクリスタルは、励起された場合に青色光を発する。
【0009】
該発光デバイスにおいて、該半導体ナノクリスタルは、第一半導体物質含有コア、及び
該コア上の第二半導体物質含有オーバーコーティングを含み得る。該デバイスは、40n
m以下の半値全幅で発光することができる。
さらに別の態様において、ナノクリスタルの製造方法は、半導体ナノクリスタルの単分
散集団とM含有化合物、X−ドナー、及びアミンとを、該ナノクリスタルを個々にオーバ
ーコートするのに十分な温度で接触させることを含む。該オーバーコートされたナノクリ
スタルは、深いトラップ発光部位が実質的になく、かつ該オーバーコートされたナノクリ
スタルは、励起された場合に青色光を発する。
【0010】
該アミンは、第一級アルケニルアミンであり得る。該アミンは、C−C20第一級ア
ルケニルアミンであり得る。該アミンは、オレイルアミンであり得る。半導体ナノクリス
タルの単分散集団は、CdSナノクリスタルの単分散集団であり得る。
他の特徴、目的、及び利点は、該記述、及び図面から、並びに、特許請求の範囲から明
らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(詳細な説明)
狭いサイズ分布、及び高い発光効率を有する半導体ナノクリスタルは、光電子デバイス
、及び生物学的蛍光ラベリングのような用途において、有機分子に代わるものとして魅力
的である。例えば、V. L. Colvinらの論文、Nature 1994, 370, 354;B. O. Dabbousiら
の論文、Appl. Phys. Lett. 1995, 66, 1316;M. Bruchez Jr.らの論文、Science 1998,
281, 2013;W. C. W. Chan、及びS. Nieの論文、Science 1998, 281, 2016;及びH. Matt
oussiらの論文、J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 12142を参照されたい。それらの各々は
、全体として引用により組み込まれている。半導体ナノクリスタルは、光酸化より安定で
あり、有機分子と比較してより飽和された蛍光(すなわち、より狭い発光バンド幅)を有
し得る。これらのサイズ調整可能な光学特性は、これらの安定性、及び飽和色発光と、こ
れらの化学特性とから独立し、広面積(cm)ハイブリッド有機/無機半導体ナノクリ
スタル発光デバイス(LED)における活性物質として、特に興味深いものとされている
。例えば、S. Coeらの論文、Nature 2002, 420, 800;N. Tesslerらの論文、Science 200
2, 295, 1506;及びJ. S. Steckelらの論文、Adv. Mater. 2003, 15, 1862を参照された
い。これらの各々は、全体として引用により組み込まれている。効率的な赤、及び緑色発
光の半導体ナノクリスタルLEDは、(CdSe)ZnSコア−シェルナノクリスタルで
実現された。フラットパネルディスプレー用途におけるLEDの理想的な青色発光スペク
トルは、国際ドエクライレージ委員会(CIE)色度図(Commission International d'E
clairage (CIE) Chromaticity Diagram)におけるその対等色が、現在の全国テレビジョ
ン方式委員会(National Television System Committee)(NTSC)標準色三角の外側
にあるような、狭いバンド幅、及び波長を有する。30nmの半値全幅(FWHM)、及
び最大限の認識されるパワーを有するガウス発光スペクトルにとって、表示用途のための
青色発光の理想的な波長は、〜470nmである。470nmより短い波長(より青側)
は、ヒトの目に認識されるのが難しくなるが、470nmよりも長い波長(より赤側)は
、標準NTSC色三角内に位置する座標を有する。
【0012】
CdSe半導体ナノクリスタルの発光波長は、該スペクトルの可視領域に及ぶ。青色発
光を、2nmよりも小さいCdSe粒子から得ることができ、これは、狭いサイズ分布、
及び適した量子効率で合成をすることが難しくなり得る。このサイズのCdSe粒子は、
より高いバンドギャップ無機半導体で加工、操作、及びオーバーコートするのが難しくな
り得る。その特性は、固相構造への組み込みにとって望ましい。コア−シェル型半導体ナ
ノクリスタルは、これらの増幅された光ルミネッセンス、及び電気ルミネッセンス、及び
デバイス製造に必要な加工条件に対する大きな耐性のために、LEDなどの固体デバイス
に望まれ得る。例えば、S. Coe-Sullivanらの論文、Org. Electron. 2003, 4, 123;M. A
. Hines、及びP. Guyot-Sionnestの論文、J. Phys. Chem. 1996, 100, 468;及びB. O. D
abbousiらの論文、J. Phys. Chem. B 1997, 101, 9463、及び米国特許第6,322,9
01号を参照されたい。それらの各々は、全体として引用により組み込まれている。さら
に、2nm未満の直径を有する半導体ナノクリスタルは、小さな吸収断面を有し得る。そ
れは、小さなフォルスターエネルギー移動距離をもたらす。
【0013】
大型で、高品質のZnSeナノクリスタルは、440nm程度の波長で帯域端蛍光を示
し得る。ZnSeは、460nmに対応する、2.7eVの室温バルクバンドギャップを
有する。M. A. Hines、及びP. Guyot-Sionnestの論文、J. Phys. Chem. B 1998, 102, 36
55を参照されたい。これは、全体として引用により組み込まれている。ZnTe、及びC
dSの両方は、470nm付近の光を発するナノクリスタルの形成に適切なバンドギャップ
を有する。ZnTe、及びCdSは、それぞれ、2.39eV(519nm)、及び2.
42eV(512nm)のバンドギャップを有する。狭いサイズ分布を有するZnTeの
大きな粒子(直径4.5nmよりも大きい)を十分に成長させることは難しいことがある
。裸CdSコアは、該青色発光を覆う、深いトラップ白色発光を発し得る。W. W. Yu、及
びX. Peng, Angewの論文、Chem. Int. Ed. 2002, 41, 2368を参照されたい。これは、全
体として引用により組み込まれている。深いトラップ発光は、該ナノクリスタルの深いト
ラップ部位における、励起子再結合の結果で生じ得る。ナノクリスタルをオーバーコート
することにより、深いトラップ部位の数を減らすことができ、それによって深いトラップ
発光の強度を減少させる。CdSナノクリスタルをオーバーコーティングする公知の方法
では、オーバーコートされたナノクリスタルの深いトラップ発光を排除することに失敗し
ている。意外にも、アミンの存在下で、CdSナノクリスタルをオーバーコーティングす
ることにより、深いトラップ発光のない明るい青色発光を示す、オーバーコートされたC
dSナノクリスタルを生じる。
【0014】
ナノクリスタルの製造方法は、コロイド成長プロセスである。例えば、米国特許第6,
322,901号、及び第6,576,291号を参照されたい。これらの各々は、全体
として引用により組み込まれている。コロイド成長はM含有化合物、及びXドナーを、熱
い配位溶媒中へと素早く注入することによって起こる。該配位溶媒は、アミンを含み得る
。該M含有化合物は、金属、M含有塩、又はM含有有機金属化合物であり得る。該注入に
より、制御された様式で成長され得る核を生成し、ナノクリスタルを形成する。該反応混
合物は、穏やかに加熱して、該ナノクリスタルを成長、及びアニールすることができる。
あるサンプルにおいて、該ナノクリスタルの平均サイズ、及びサイズ分布の双方は、成長
温度に依存する。安定した成長を維持するために必要な該成長温度は、平均結晶サイズの
増加に伴って、上昇する。該ナノクリスタルは、ナノクリスタルの集団のメンバーである
。別個の核形成、及び制御された成長の結果として、得られたナノクリスタルの集団は、
狭い、直径の単分散分布を有する。また、直径の該単分散分布は、サイズとして言及され
る。また、核形成に続く、該配位溶媒中での、該ナノクリスタルの制御された成長及びア
ニーリングのプロセスは、均一の表面誘導体化、及び規則的なコア構造を生じ得る。該サ
イズ分布が、鋭くなるにつれて、該温度は、安定した成長を維持するために引き上げられ
得る。より多くのM含有化合物、又はXドナーを添加することにより、該成長期間を短縮
することができる。
【0015】
M含有塩は、例えば、金属−炭素結合がない化合物などの非有機金属化合物である。M
は、カドミウム、亜鉛、マグネシウム、水銀、アルミニウム、ガリウム、インジウム、又
はタリウムである。該M含有塩は、金属ハロゲン化物、金属カルボン酸塩、金属炭酸塩、
金属水酸化物、金属酸化物、又は金属アセチルアセトネートのような金属ジケトナートで
あり得る。該M含有塩は、安価であり、かつ金属アルキルのような有機金属よりも使用に
際して安全である。例えば、M含有塩は空気中で安定であるが、金属アルキルは一般的に
空気中で不安定である。2,4−ペンタンジオネート(すなわち、アセチルアセトネート
(acac))、ハロゲン化物、カルボン酸塩、水酸化物、又は炭酸塩のようなM含有塩
は空気中で安定であり、ナノクリスタルを、対応する金属アルキルよりもより温和な条件
下で加工することができる。
【0016】
適切なM含有塩は、カドミウムアセチルアセトネート、ヨウ化カドミウム、臭化カドミ
ウム、水酸化カドミウム、炭酸カドミウム、酢酸カドミウム、酸化カドミウム、亜鉛アセ
チルアセトネート、ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酢酸亜鉛、酸化亜鉛
、マグネシウムアセチルアセトネート、ヨウ化マグネシウム、臭化マグネシウム、水酸化
マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水銀アセチル
アセトネート、ヨウ化水銀、臭化水銀、水酸化水銀、炭酸水銀、酢酸水銀、アルミニウム
アセチルアセトネート、ヨウ化アルミニウム、臭化アルミニウム、水酸化アルミニウム、
炭酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、ガリウムアセチルアセトネート、ヨウ化ガリウム
、臭化ガリウム、水酸化ガリウム、炭酸ガリウム、酢酸ガリウム、インジウムアセチルア
セトネート、ヨウ化インジウム、臭化インジウム、水酸化インジウム、炭酸インジウム、
酢酸インジウム、タリウムアセチルアセトネート、ヨウ化タリウム、臭化タリウム、水酸
化タリウム、炭酸タリウム、又は酢酸タリウムを含む。
【0017】
アルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル
、t−ブチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、及びテト
ラコシルなどの炭素原子1〜100個、好ましくは炭素原子1〜30個の分岐又は非分岐
飽和炭化水素基、並びにシクロペンチル、及びシクロヘキシルなどのシクロアルキル基で
ある。任意で、アルキルは、−O−、−S−、−M−、及びRが水素原子又はC−C
アルキル若しくは低アルケニルである−NR−からなる群から選択される1〜6個の結合
を含むことができる。
【0018】
M含有塩をXドナーと混合する前に、該M含有塩は、M含有前駆体を形成する配位溶媒
と接触され得る。代表的な配位溶媒は、アルキルホスフィン、アルキルホスフィンオキシ
ド、アルキルホスホン酸、又はアルキルホスフィン酸が挙げられるが、ピリジン、フラン
、及びアミンのような、他の配位溶媒もまた、該ナノクリスタルの生成にとって適切であ
り得る。適切な配位溶媒の例としては、ピリジン、トリ-n-オクチルホスフィン(TOP)、
及びトリ-n-オクチルホスフィンオキシド(TOPO)が挙げられる。工業用のTOPOを使うこ
とができる。該配位溶媒は、1,2−ジオール、又はアルデヒドを含み得る。該1,2−
ジオール、又はアルデヒドは、該M含有塩と該Xドナーとの間の反応を促進することがで
き、該成長プロセス、及び該プロセスで得られるナノクリスタルの品質を向上させる。該
1,2−ジオール、又はアルデヒドは、C−C201,2−ジオール、又はC−C
アルデヒドであり得る。適切な1,2−ジオールは、1,2−ヘキサデカンジオールで
あり、適切なアルデヒドはドデカナールである。
【0019】
該Xドナーは、該M含有塩と反応し、一般式MXの物質を形成することができる化合物で
ある。通常、該Xドナーは、カルコゲナニドドナー、又はプニクタイドドナー、例えば、
ホスフィンカルコゲニド、ビス(シリル)カルコゲニド、二酸素、アンモニウム塩、又は
トリス(シリル)プニクタイドである。適切なXドナーを挙げると、二酸素、単体硫黄、
ビス(トリメチルシリル)セレニド((TMS)Se)、トリアルキルホスフィンセレ
ニド(例えば、(トリ-n-オクチルホスフィン)セレニド(TOPSe)、又は(トリ-n-
ブチルホスフィン)セレニド(TBPSe))、トリアルキルホスフィンテルリド(例え
ば、(トリ−n−オクチルホスフィン)テルリド(TOPTe)、又はヘキサプロピルホ
スホラストリアミドテルリド(HPPTTe))、ビス(トリメチルシリル)テルリド(
(TMS)Te)、硫黄、ビス(トリメチルシリル)スルフィド((TMS)S)、
トリアルキルホスフィンスルフィド(例えば、(トリ−n−オクチルホスフィン)スルフ
ィド(TOPS))、トリス(ジメチルアミノ)アルシン、アンモニウム塩(例えば、ハ
ロゲン化アンモニウム(例えば、NHCl))、トリス(トリメチルシリル)ホスフィ
ド((TMS)P)、トリス(トリメチルシリル)アルセニド((TMS)As)、
又はトリス(トリメチルシリル)アンチモニド((TMS)Sb)がある。特定の実施
態様において、該Mドナー、及び該Xドナーは、同一分子内の成分とすることができる。
【0020】
M含有塩から加工されるナノクリスタルは、該配位溶媒がアミンを含む場合、制御され
た様式で成長する。
該配位溶媒中のアミンは、該M含有塩、及びX−ドナーから得られるナノクリスタルの
品質に寄与する。好ましくは、該配位溶媒は、例えば、該アミンとアルキルホスフィンオ
キシドとのモル比が10:90、30:70、又は50:50の混合物である。該混合溶
媒は、サイズ分散を減少させることができ、かつ該ナノクリスタルの光ルミネッセンス量
子収量を改善することができる。好ましいアミンは、C−C20アルキルアミン、C
−C20アルケニルアミン、好ましくはC−C18アルキルアミン、又はC−C18
アルケニルアミンのような、第一級アルキルアミン、又は第一級アルケニルアミンである
。例えばトリ−オクチルホスフィンオキシド(TOPO)との混合に適切なアミンは、1
−ヘキサデシルアミン、又はオレイルアミンを含む。該1,2−ジオール、又はアルデヒ
ド、及び該アミンを、該M含有塩と混合して使用し、ナノクリスタルの集団を形成する場
合、該光ルミネッセンス量子効率、及びナノクリスタルサイズの分布は、該1,2−ジオ
ール、又はアルデヒド、又は該アミンなしで加工されたナノクリスタルと比較して、改善
される。
【0021】
該ナノクリスタルは、狭いサイズ分布を有するナノクリスタルの集団のメンバーであり
得る。該ナノクリスタルは、球形、棒状、円盤状、又は他の形状であり得る。該ナノクリ
スタルは、半導体物質のコアを含むことができる。Mが、カドミウム、亜鉛、マグネシウ
ム、水銀、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、又はこれらの混合物であり
、かつXが、酸素、硫黄、セレン、テルル、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、又はこれら
の混合物である場合、該ナノクリスタルは、式MXを有するコアを含むことができる。
【0022】
該ナノクリスタルは、励起時に発光することができる。該ナノクリスタルは、励起波長
光の照射、電気的励起、又は他のエネルギー移動によって励起され得る。該ナノクリスタ
ルからの発光は、狭いガウス発光バンド(Gaussian emission band)となることができ、
該ナノクリスタルのサイズ、該ナノクリスタルの組成、又はその両方を変えることにより
、紫外領域、可視領域、又は赤外領域のスペクトルの全ての波長領域に渡って整調するこ
とができる。例えば、CdSe、及びCdSは、可視領域に整調することでき、かつIn
Asは、赤外領域に整調することができる。
【0023】
ナノクリスタルの集団は、狭いサイズ分布を有し得る。該集団は、単分散であり得、か
つ該ナノクリスタルの直径において15%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは
5%未満のrms偏差を示し得る。半値全幅(FWHM)10〜100nmの狭い範囲に
おいて、スペクトル発光が観察され得る。エネルギーに関して示した該FWHMは、0.
05eV以下、又は0.03eV以下であり得る。半導体ナノクリスタルは、2%、5%
、10%、20%、40%、60%、70%、又は80%よりも大きい発光量子効率を有
し得る。
【0024】
該ナノクリスタルを形成する半導体には、II−VI族の化合物、II−V族の化合物、III−
VI族の化合物、III−V族の化合物、IV−VI族の化合物、I−III−VI族の化合物、II−IV−
VI族の化合物、及びII−IV−V族の化合物、例えば、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe
、HgS、HgSe、HgTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、GaSe、InN、InP、I
nAs、InSb、TlN、TlP、TlAs、TlSb、PbS、PbSe、PbTe、又はこれらの混合物を含むことが
できる。
【0025】
第一半導体物質のコアを有するナノクリスタルからの発光の量子効率は、第二半導体物
質の伝導帯が第一半導体物質の伝導帯よりもより高いエネルギーであり、かつ第二半導体
物質の価電子帯が第一半導体物質の価電子帯よりもより低いエネルギーであるような、第
二半導体物質のオーバーコーティングを適用することによって向上される。結果として、
キャリアー、すなわち電子、及び正孔は、該ナノクリスタルのコア内に閉じ込められる。
該コアは、該コアの表面上にオーバーコーティングを有し得る。該オーバーコーティング
は、該コアの組成と異なる組成を有している半導体物質であり得、かつ該コアのバンドギ
ャップよりも大きなバンドギャップを有し得る。該ナノクリスタルの表面上の半導体物質
のオーバーコーティングは、II−VI族の化合物、II−V族の化合物、III−VI族の化合物、
III―V族の化合物、IV−VI族の化合物、I−III−VI族の化合物、II−IV−VI族の化合物、
及びII−IV−V族の化合物、例えば、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、Hg
Te、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、GaSe、InN、InP、InAs、InSb、TlN
、TlP、TlAs、TlSb、PbS、PbSe、PbTe、又はこれらの混合物を含むことができる。
【0026】
該ナノクリスタルの外部表面は、該成長プロセスの間に用いた該配位溶媒から誘導され
る化合物の層を含むことができる。該表面は、過剰な競合配位基へ繰り返し曝露すること
により、修飾され、被覆層を形成することができる。例えば、該覆われたナノクリスタル
の分散を、配位性有機化合物(例えば、ピリジン)を用いて処理して、ピリジン、メタノ
ール、及び芳香族化合物中で容易に分散するが、脂肪族溶媒中では分散しない結晶を製造
することができる。このような表面交換プロセスを、該ナノクリスタルの外部表面と配位
、又は結合できるすべての化合物(例えば、ホスフィン、チオール、アミン、及びリン酸
塩を含む。)を用いて実施することができる。該ナノクリスタルを、表面に対して親和性
を示し、かつ懸濁液、又は分散媒体に対して親和性を有する成分で終る短鎖ポリマーに曝
露させることができる。そのような親和性は、該懸濁液の安定性を改善し、かつ該ナノク
リスタルの凝集を防止する。
【0027】
単座のアルキルホスフィン(及び、ホスフィン酸化物、以下のホスフィンという用語は
両方に言及する)は、効率的にナノクリスタルを不動態化できる。従来の単座配位子を有
するナノクリスタルが、非不動態化環境(すなわち、過剰な配位子が存在しない)中に希
釈、又は埋め込まれた場合、該ナノクリスタルは、それらの高発光性、及びそれらの最初
の化学的不活性を失う傾向がある。典型は、発光の急激な減衰、凝集、及び/又は相分離
である。これらの制限を克服するために、多座配位子は、多座オリゴマー化ホスフィン配
位子のファミリーなどが使用され得る。該多座配位子は、配位子とナノクリスタル表面と
の間に高親和性を示す。言い換えれば、それらの多座特性のキレート効果から予想される
ように、それらはより強い配位子である。
【0028】
オリゴマーホスフィンは、ナノクリスタル表面に対して1以上の結合部位を有し、該ナ
ノクリスタル表面へのそれらの高親和性を保証する。例えば、2003年8月15日に出
願された米国特許出願番号第10/641,292号、及び2002年8月15日に出願
された米国特許出願番号第60/403,367号を参照されたい。それらの各々は、全
体として引用により組み込まれている。該オリゴマーホスフィンは、モノマー、例えばト
リスヒドロキシプロピルホスフィンのような単量体多官能性ホスフィン、及び、例えばジ
イソシアナートのような多官能性オリゴマー化試薬から形成され得る。該オリゴマーホス
フィンは、式R'−L−NCOのイソシアナートと接触することができる。式中LはC
−C24のアルキレンであり、かつR'は式
【0029】
【化1】

【0030】
を有し、R'は式
【0031】
【化2】

【0032】
を有し、又はR'は水素原子であり、式中Raは水素原子、又はC−Cのアルキルで
ある。
【0033】
オーバーコーティングプロセスは、例えば米国特許第6,322,901号に記載され
、全体として引用により本明細書中に組み込まれている。オーバーコーティングの間の反
応混合物の温度を調節し、該コアの吸収スペクトルをモニタリングすることによって、高
い発光量子効率と狭いサイズ分布とを有する、オーバーコートされた物質を得ることがで
きる。あるいは、オーバーコーティングは、第一組成、及び第一平均直径を有するコアナ
ノクリスタルを、第二組成、及び第一平均直径よりも小さい第二平均直径を有するナノク
リスタルの集団に曝露することにより形成され得る。
【0034】
該反応の成長段階の間のサイズ分布は、該粒子の吸収線幅をモニタリングすることによ
って概算され得る。該粒子の吸収スペクトル変化に応じた反応温度の変更は、成長中の鋭
い粒子サイズ分布の維持を可能にする。より大きな結晶を成長させるために、結晶成長の
間、反応物質が、核形成溶液に加えられ得る。特定のナノクリスタル平均直径で成長を停
止させることによって、150Å未満の平均ナノクリスタル直径を有する集団を得ること
ができる。ナノクリスタルの集団は、15Å〜125Åの平均直径を有し得る。
【0035】
粒子サイズ分布は、全体として引用により本明細書中に組み込まれている、米国特許第
6,322,901号中に記載されているように、メタノール/ブタノールのようなナノ
クリスタルに対する貧溶媒を用いたサイズ選択的沈殿によってさらに精製され得る。例え
ば、ナノクリスタルは、ヘキサン中の10%ブタノール溶液内に分散され得る。メタノー
ルは、オパール色が持続するまで、この撹拌溶液に滴下して加えられ得る。遠心分離によ
る上清と凝集物の分離は、該試料中の最も大きな結晶が豊富な沈殿物を生成する。この手
順は、さらなる鋭い光学吸収スペクトルが観察されなくなるまで繰り返され得る。サイズ
選択的沈殿は、ピリジン/ヘキサン、及びクロロホルム/メタノールを含む、様々な溶媒
/非溶媒ペアで実行され得る。サイズ選択されたナノクリスタル集団は、平均直径から1
5%rms偏差以下、好ましくは10%rms偏差以下、及びより好ましくは5%rms
偏差以下であり得る。
【0036】
透過型電子顕微鏡(TEM)は、サイズ、形、及びナノクリスタル集団の分布についての
情報を提供し得る。粉末X線回折(XRD)パターンは、ナノクリスタルの結晶構造の型、
及び質に関する最も完全な情報を提供し得る。また、粒子直径は、X線可干渉距離を介し
て、該ピーク幅に反比例するので、サイズの推定が可能である。例えば、該ナノクリスタ
ルの直径は、透過型電子顕微鏡により直接測定され得るか、又は例えば、シェラー式(Sc
herrer equation)を用いたX線回折データから概算され得る。また、UV/Vis吸収スペク
トルから推定され得る。
【実施例】
【0037】
(実施例)
(CdS)ZnSコア−シェルナノクリスタルを調製するために、二段階合成経路を使用した
。第一段階において、該CdSコアは、脱気(100℃、1時間の真空下)オレイルアミン
(7ml、98% Pfaltz & Bauer社)、及びトリオクチルホスフィン(TOP)(8ml
、97% Strem)を含む丸底フラスコに該前駆体溶液を素早く注入し、250−280
℃で素早く撹拌し、次に250℃で15〜30分間成長させることにより調製した。例え
ば、B. K. H. Yenらの論文, Adv. Mater. 2003, 15, 1858を参照されたい。これは、全体
として引用により組み込まれている。該前駆体溶液は、酢酸カドミウム水和物(1−2m
mol)、TOP(6ml)、及び1−2mmolのビス(2,4,4−トリメチルペン
チル)ホスフィン酸[BTMPPA、シアネックス+272抽出剤(Cyanex+ 272 Extracta
nt)(Cytec Canada社)として販売されている。全体として引用により組み込まれている
、刊行された米国特許出願第2002/0144644号を参照されたい。]の脱気(1
00℃、1時間の真空下)混合物を、オレイルアミン(3ml)中の単体硫黄(1−2m
mol)の脱気(室温、1時間の真空下)溶液と混合することにより作った。該サイズは
、硫黄対カドミウム対BTMPPAの割合を1:1:1に維持しながら、注入温度、成長
時間、及び前駆体の濃度を変えることによって整調した。
【0038】
オーバーコーティング前に、該CdSコアを成長溶液から沈殿させ、次に、未反応前駆
体、及び余剰キャッピング配位子を取り除くために、もう一度ヘキサンから沈殿した。1
.0体積の成長溶液に、0.4体積のヘキサン、0.8体積のブタノール、及び3.0体
積のメタノールを加え、かつ5分間遠心分離することにより、該粒子を成長溶液から凝集
した。次に、該粒子を、0.15体積のヘキサン中で分散し、かつ1体積の最初の成長溶
液、及び0.5体積のメタノールに対して1滴のブタノールを加え、かつ5分間遠心分離
することにより凝集した。
図1は、狭いサイズ分布を示すCdSナノクリスタルの一連のサイズに対する、光学吸
収スペクトルを示す。該CdSナノクリスタルは、直径3.7±0.4nm〜5.2±0
.4nmのサイズ範囲であった。スペクトルの最も長波長側の吸収特徴は、(a)λ=4
22nm、(b)427nm、(c)432nm、(d)435nm、(e)439nm
、(f)444nm、及び(g)448nmである。448nmで第一吸収特徴を有する
最も大きな粒子(コア直径5.2±0.4nm)は、第二、及び第三吸収特徴も示す。
【0039】
図2は、直径4.9±0.4nmを有する裸CdSナノクリスタルのTEMイメージを
表す。該コア物質の結晶化度を、図2aの挿入図中に明瞭に示した。そのうちのHRTE
M顕微鏡写真は、〜4.9nm粒子の原子列を示す。低解像度TEMイメージ(図2a)
は、比較的好適なサイズ分布と、該粒子の形態とを図示している。
加工後のこれらのCdSナノクリスタルに対する光ルミネッセンス量子効率は、3−6
%であった。該CdSコアナノクリスタルの光ルミネッセンスは、顕著な量の深いトラッ
プ発光を含み、UVランプを用いて励起された場合、該コア物質に紫色の様相を与える。
図3中の点線は、裸CdSナノクリスタルの規格化光ルミネッセンススペクトルである。
図3において、深いトラップ発光は、該ピーク発光よりもより長い波長を有する広い特徴
として示される。
【0040】
該ZnSシェルの成長は、(CdSe)ZnSコア−シェルナノクリスタルに対する、
先のオーバーコーティング手順に基づいている。例えば、M. A. Hines、及びP. Guyot-Si
onnestの論文、J. Phys. Chem. 1996, 100, 468;B. O. Dabbousiらの論文、J. Phys. Ch
em. B 1997, 101, 9463;及び、米国特許第6,207,229号を参照されたい。それ
らの論文のそれぞれは、全体として引用により組み込まれている。CdSとZnSとの間
の比較的小さな8%格子不整合に伴い、該CdSコア上の励起子の閉じ込めを助けるZn
Sの大きなバンドギャップ(λ=335nmに対応する3.7eV)のために、ZnSを
シェル物質として選択した。トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)(8−14g
、99% Strem)、オレイルアミン(3mL)、ヘキサデシルアミン(2g、98% A
ldrich)、及びBTMPPA(0.3−2.0mmol)を、100℃で4口フラスコ中
で、2時間の真空下で脱気した。次に、ヘキサンに分散したCdSコアを、該脱気溶液に
加え、かつ該ヘキサンを、真空下、80℃で除去した。アルゴンフロー下で、該ナノクリ
スタル溶液を180℃に加熱し、かつ該ZnSシェル前駆体溶液(TOP(7ml)に溶
解したジエチル亜鉛(95% min. Strem)、及びヘキサメチルジシルチアン(hexamethy
ldisilthiane)(>97% Fluka))を、滴下添加(〜1滴/2秒)によって、該フラ
スコ中に導入した。添加終了後、該溶液を、180℃で5分間維持し、次に、該シェルの
アニーリングを促進するために75℃で一晩撹拌し続けた。該コア加工手順に類似した、
ブタノール、及びメタノールの混合物を用いた沈殿により、該(CdS)ZnSコア−シ
ェルナノクリスタルを得た。
【0041】
該亜鉛、及び硫黄前駆体を加えるにつれて、該弱い紫色蛍光は、該オーバーコーティン
グプロセスの経過の間に、明るい青色発光へと徐々に変化した。図3は、オーバーコーテ
ィング前のCdSコアの発光スペクトル(点線)、及びオーバーコーティング後の対応す
る(CdS)ZnSコア−シェル発光スペクトル(実線)を示す。図3中の該スペクトル
を、(a)450nm(4.7±0.4nm直径コア、FWHM=18nm)で発光し、
かつ460nm(FWHM=24nm)で発光する〜2単層でオーバーコートされた、C
dSナノクリスタル、(b)450nm(4.7±0.4nm直径コア、FWHM=18
nm)で発光し、かつ465nm(FWHM=18nm)で発光する〜3単層でオーバー
コートされた、裸CdSナノクリスタル、(c)454nm(4.9±0.4nm直径コ
ア、FWHM=18nm)で発光し、かつ469nm(FWHM=18nm)で発光する
〜3単層でオーバーコートされた、裸ナノクリスタル、及び(d)463nm(5.2±
0.4nm直径コア、FWHM=18nm)で発光し、かつ480nm(FWHM=18
nm)で発光する〜4.5単層でオーバーコートされた、裸CdSナノクリスタルに対し
て記録した。
【0042】
ZnSシェルでCdSコアをオーバーコートすることより、光ルミネッセンス安定性を
高めた。光ルミネッセンスの安定性は、コア、及び溶液から2回沈殿し、かつグラススラ
イド上のヘキサンから滴下成型されたコア−シェルナノクリスタルの両方に対して測定し
た。各スライドを、合計180分間、開放空気中に置き、かつ30分ごとにスキャンを得
た。図8を参照すると、時間の関数として光ルミネッセンス強度を示している。該コア−
シェルナノクリスタルは、20−30%の光ルミネッセンス量子効率を示す。光ルミネッ
センス量子効率は、光学密度0.1を有する希釈ヘキサン溶液中の所定のナノクリスタル
試料の総合発光を、エタノール中のクマリン102(Lambda Physik)のものと比較するこ
とによって決定した。該量子効率は、〜3単層(1単層につき3.1Å)の平均ZnSシ
ェル厚さでピークに達する。
【0043】
裸CdSコアへのアミンの添加は、該コアからの深いトラップ発光を変更しない。アミ
ンの非在下で該オーバーコーティングを調製した場合でも、得られた(CdS)ZnSナ
ノクリスタルは、幾らかの深いトラップ発光を示した。D. V. Talapinらの論文、Nano Le
tt. 2001, 1, 207を参照されたい。これは、全体として引用により組み込まれている。意
外にも、オーバーコーティング時のアミンの存在が、該ZnSシェルの制御成長を可能に
し、得られるナノクリスタルは、深いトラップ発光がないようである(図3を参照された
い)。これらの観察は、該アミンが独立してシェルの厚さ(アミン濃度は常に一定であっ
た)、及び量子収量にどのように影響を及ぼすかを識別するまでには至らない。該コアC
dSナノクリスタル上のより厚いZnSシェルは、発光FWHMの増加に関連する。Cd
Sコア粒子のバンド端発光FWHMは、17−19nmであった。2−3単層でオーバー
コートした後では、発光において約10nm、及び第一吸収特徴に対して約5nmの赤方
偏移を伴い、該FWHMが約24−26nmに増加した。図6は、コアCdS、及びコア
−シェル(CdS)ZnSナノクリスタルの吸収スペクトルを表す。該スペクトルを、(
a)4.7±0.4nmの裸CdS(点線)、及び対応する〜2単層の平均ZnSシェル
の厚さを有する(CdS)ZnSコア−シェルナノクリスタル(実線);(b)4.9±
0.4nmの裸CdS(点線)と、対応する〜3単層の平均ZnSシェルの厚さを有する
(CdS)ZnSコア−シェルナノクリスタル(実線);及び(c)5.2±0.4nm
の裸CdS(点線)、及び対応する〜4.5単層の平均ZnSシェルの厚さを有する(C
dS)ZnSコア−シェルナノクリスタル(実線)の試料から記録した。CdSeのZnSでの
オーバーコーティングで、吸収において類似した赤方偏移が観測された。これは、該シェ
ルへの励起子の漏出のためである。波長分散分光法は、図2b、及び5cの該試料のZn
Sシェル厚を確認し、平均元素重量パーセントは、Cd21.6±0.9%、Zn32.
2±0.5%、及びS46.2±0.7%であった。これらの値は、0.77nm(2.
5単層)厚さの理論上のZnSシェルに対応し、これは、TEM測定から得られた平均実
験的厚さと一致した。
【0044】
図4は、5.4±0.4nm(CdS)ZnSコア−シェルナノクリスタルの吸収、及
び発光スペクトルを示す。挿入図は、(CdS)ZnSコア−シェルの電界発光を示す。
該層化デバイス(S. Coeらの論文、Nature 2002, 420, 800を参照されたい。これは全体
として引用により組み込まれている。)は、ITO/CBP/(CdS)ZnSナノクリ
スタル単層/TAZ/Alq3/Mg:Ag/Ag構造を有し、かつCBPが4,4'−
N,N'−ジカルバゾリル−ビフェニルである場合、0.1%の外部量子効率を示す(図
7を参照されたい)。低電流では(図4挿入図内の円、14Vで1mA/cm)、該L
EDスペクトルピークのFWHMは、468nmに中心がある30nmであり、一方、よ
り高い電流では(図4挿入図内の実線、21Vで60mA/cm)、有機層からの電界
発光が優勢になり始めた。有機電界発光を、該スペクトルのUV、及び緑領域内に、ショ
ルダーとしてみることができる(図4挿入図を参照されたい)。有機、及びナノクリスタ
ル発光は、動作しているデバイス中で同時に起こり、かつ電流が供給されるにつれて、有
機発光に対するナノクリスタルの割合が変化する(例えば、S. Coe-Sullivanらの論文、O
rg. Electron. 2003, 4, 123を参照されたい。)。
【0045】
図7は、該発光デバイスにおける、外部量子効率対電流密度プロットを示す。該挿入図
は、図4の挿入図中の電子ルミネッセンススペクトルに対応する、2つの異なる電流密度
(14Vで1mA/cm、及び21Vで60mA/cm)を示している2つの点線で、I
−V(電流−電圧)曲線を示している。
図5aは、4.9±0.4nmの裸CdSナノクリスタルに対するX線粉末パターンを
示し、これは、002方向に沿って閃亜鉛鉱積層欠陥を有するウルツ鉱構造であるように
見える。〜2単層(図5b)、及び〜3単層(図5c)のZnS被覆を有するコア−シェ
ルナノクリスタルのX線粉末パターンは、全体の回折パターン上で、ウルツ鉱ZnSシェ
ルの顕著な影響を示した。小さなZnS粒子の証拠は、TEM、又は光学分光学でほとん
ど見られなかったが、それでもZnS粒子が、XRD、及びWDS測定で存在しないこと
を確実にするために、試料調製時に注意を払った。
【0046】
CdSコアを上述のように調製し、該反応は、2mmolのCd(OAc)、2mm
olのBTMPPA、及び2mmolのSを含み、単一反応において、0.23mmol
のCdSコアを得た。
より短時間で単体硫黄、及びオレイルアミンの混合物を脱気することにより、CdSコ
アの単分散を増進し得る。CdSコアの調製は、単体硫黄、及びオレイルアミンの混合物
を10−15分間脱気することを除き、上記のように実行した。結果として、以下の反応
は、完全には進まない。従って、より少ないHS(これは気体として残る)、及びより
少ない(RHN)n−1(これはCdSコア形成の速度を変化させる)が生成する。
2RNH+Sn→(RNH)n−1+H
【0047】
より速い脱気段階は、単体硫黄(S)から(RHN)n−1への相対比率を変化
させ、かつサイズがより均一である(発光の18−20nmFWHMに比較して、17n
mFWHM)CdSナノクリスタルコアを生成した。より短い硫黄/アミン脱気段階で生
成されたCdSコアは、与えられた反応収率で、より効率的な発光体(3−6%〜15%
)であった。結局、より高品質(より効率的な発光体、より緊密なサイズ分布)のコアナ
ノクリスタルは、より高品質のコア−シェル物質を生じる。該ナノクリスタルの吸収スペ
クトルを、図9Aに示す。2mmolのCd(OAc)、BTMPPA、及びSを用い
て該反応を行い、16%の量子収量、及び18nmのFWHMを有するCdSコアを0.
24mmol得た。ナノクリスタルの吸収スペクトルを、図9Bに示す。
【0048】
オーバーコーティング反応を、フラスコ中で、CdSコアと、TOPO(6g)、BT
MPPA(0.5mmol)、オレイルアミン(1.5mL)、及びHDA(1g)とを
混合することにより行った。フラスコの内容物を170℃に熱し、かつシェル前駆体溶液
を、2秒ごとに約1滴の割合で添加漏斗により添加した。該シェル前駆体溶液は、ジエチ
ル亜鉛(17mg)、及び2〜3倍過剰のヘキサメチルジシルシアン(141mg)、並
びに、TOP(7mL)中に溶解されたジメチルカドミウム10−30%(モル基準で、
Znと比較して)を含む。得られたオーバーコート化ナノクリスタルは、20nmのFW
HM、及び25%の量子収量の発光を有し、かつ過剰硫黄前駆体、又はジメチルカドミウ
ムが不足のオーバーコーティング反応によって調製されたナノクリスタルと比較して、発
光のより卓越した安定性を有していた。これらの特性は、該ZnSシェルにCdをわずか
にドープすることにより得られ、成長するにつれて該CdSコアから該ZnSコアへのよ
り円滑な移行を提供する。過剰の硫黄は、該ZnSシェルが成長する場合に、高濃度硫黄
環境を提供し、より円滑かつより結晶性のシェル成長、並びに、該CdSコアとZnSシ
ェルとの間のより少ない欠陥を有する界面を提供する。オーバーコーティング前の該コア
、及びオーバーコートされたナノクリスタルの光ルミネッセンススペクトルを、図10A
に示す。CdSコアのオーバーコートに、同じ溶媒系を用いたが、該シェル前駆体溶液は
、58μL/分の速度で、2時間にわたってシリンジポンプを介して連続的にフラスコへ
と添加した。得られたナノクリスタルは、22nmの発光FWHM、及び43%のQYを
有していた。オーバーコーティング前の該コア、及びオーバーコートされたナノクリスタ
ルの光ルミネッセンススペクトルを、図10Bに示す。
【0049】
CdSコアを、フラスコ中で、該コアとオレイルアミン(7mL)、TOP(8mL)
、及びBTMPPA(1mmol)とを最初に混合することによりオーバーコートした。
該フラスコ内容物を170℃に加熱した後、シェル前駆体溶液(ジエチル亜鉛(86mg
)、S(TMS)(411mg、3倍過剰)、Cd(Me)(11mg、ジエチル亜鉛
に対して10mol%)、及びTOP(7mL))を、3秒ごとに約1滴加えた。得られ
たオーバーコート化ナノクリスタルは、22nmのFWHM、及び37%のQYを有する
、467nmの発光波長を有していた。オーバーコーティング前の該コア、及びオーバー
コートされたナノクリスタルの光ルミネッセンススペクトルを、図11Aに示す。
【0050】
CdSコアを、フラスコ中で、該コアとオレイルアミン(5mL)、TOP(5mL)
、及びBTMPPA(0.75mmol)とを最初に混合することにより、オーバーコー
トした。フラスコ内容物を170℃に加熱した後、シェル前駆体溶液(ジエチル亜鉛(4
1mg)、S(TMS)(198mg、3倍過剰)、Cd(Me)(7mg、ジエチ
ル亜鉛に比較して10mol%)、及びTOP(5mL))を、42μL/分の速度で、
2時間にわたってシリンジポンプを介して添加した。得られたオーバーコート化ナノクリ
スタルは、32nmのFWHM、及び50%のQCを有していた。オーバーコーティング
前の該コア、及びオーバーコートされたナノクリスタルの光ルミネッセンススペクトルを
、図11Bに示す。
【0051】
光学吸収スペクトルは、ヒューレット−パッカード(Hewlett-Packard)8453ダイ
オードアレイ分光器から得た。光ルミネッセンススペクトルは、直角収集配置で、SPE
X Fluorog−2分光器を用いて得た。該コアCdS吸収スペクトルは、ヘキサン
中で成長しているナノクリスタル溶液を希釈することにより調製された試料で測定し、一
方、全ての(CdS)ZnSコア−シェル光学特性は、少なくとも1回溶液から沈殿され
、かつヘキサン中に再分散された試料を用いて処理した。該シェル厚さ、結晶化度、及び
粒子サイズ分布を測定するための高解像度透過型電子顕微鏡(HRTEM)検査は、20
0kVで操作されたJEOL−2010電子顕微鏡で行った。低解像度TEMは、200
kVで操作されたJEOL 2000FXで行った。該コア−シェル物質の元素解析は、
JEOL JXA−733 Superprobesの波長分散分光法(WDS)を用いて
行った。粉末X線回折(PXRD)パターンは、Rigaku Ru300 X線回折計か
ら得た。
【0052】
該ナノクリスタルは、1998年9月18日に出願された米国特許出願番号第09/1
56,863号、1998年9月24日に出願された第09/160,454号、199
8年9月24日に出願された第09/160,458号、1999年7月9日に出願され
た第09/350,956号、2003年3月28日に出願された第10/400,90
8号に同時係属で開示され、かつ共通して所有されているものを含む、様々な出願に適合
することができ、これらの全ては、引用により本明細書中に全体として組み込まれている
。例えば、該ナノクリスタルは、発光ダイオード(LED)、又は交互性電流薄膜電界発光
デバイス(alternating current thin film electroluminescent device)(ACTFE
LDs)などの電界発光デバイスを含む光電子デバイスに用いることができる。
他の実施態様は、下記の特許請求の範囲の範囲内である。
(図面の説明)
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1a−1gは、半導体ナノクリスタルの吸収スペクトルを示すグラフである。
【図2】図2a、及び2bは、半導体ナノクリスタルのTEMイメージである。
【図3】図3a−3dは、半導体ナノクリスタルの光ルミネッセンススペクトルを示すグラフである。
【図4】図4は、半導体ナノクリスタルの吸収、及び光ルミネッセンススペクトルを示すグラフである。挿入図は、半導体ナノクリスタルを含む発光デバイスの電界発光スペクトルを示すグラフである。
【図5】図5a−5cは、半導体ナノクリスタルのX線回折パターンを示すグラフである。
【図6】図6a−6cは、半導体ナノクリスタルの吸収スペクトルを示すグラフである。
【図7】図7は、発光デバイスの性能を示すグラフである。
【図8】図8は、半導体ナノクリスタルの光ルミネッセンス安定性を示すグラフである。
【図9】図9a−9bは、半導体ナノクリスタルの吸収スペクトルを示すグラフである。
【図10】図10a−10bは、半導体ナノクリスタルの光ルミネッセンススペクトルを示すグラフである。
【図11】図11a−11bは、半導体ナノクリスタルの光ルミネッセンススペクトルを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一半導体物質含有コア;及び該コア上の第二半導体物質含有オーバーコーティングを
含む、半導体ナノクリスタルであって、深いトラップ発光部位が実質的になく、かつ励起
された場合に青色光を発する、前記ナノクリスタル。
【請求項2】
励起された場合に、少なくとも10%の量子効率で青色光を発する、請求項1記載のナ
ノクリスタル。
【請求項3】
励起された場合に、少なくとも30%の量子効率で青色光を発する、請求項1記載のナ
ノクリスタル。
【請求項4】
励起された場合に、少なくとも50%の量子効率で青色光を発する、請求項1記載のナ
ノクリスタル。
【請求項5】
前記青色光が、40nm以下の半値全幅を有する、請求項1記載のナノクリスタル。
【請求項6】
前記青色光が、30nm以下の半値全幅を有する、請求項1記載のナノクリスタル。
【請求項7】
励起された場合に、20%よりも大きい量子効率で青色光を発する、請求項6記載のナ
ノクリスタル。
【請求項8】
前記青色光が、20nm以下の半値全幅を有する、請求項1記載のナノクリスタル。
【請求項9】
前記青色光が、470nmよりも短いピーク波長を有する、請求項1記載のナノクリス
タル。
【請求項10】
前記第一半導体物質が、CdSである、請求項1記載のナノクリスタル。
【請求項11】
前記第二半導体物質が、ZnSである、請求項10記載のナノクリスタル。
【請求項12】
前記青色光が、深いトラップ発光の強度よりも少なくとも5倍大きい強度を有する、請
求項1記載のナノクリスタル。
【請求項13】
前記青色光が、深いトラップ発光の強度よりも少なくとも10倍大きい強度を有する、
請求項1記載のナノクリスタル。
【請求項14】
前記青色光が、深いトラップ発光の強度よりも少なくとも20倍大きい強度を有する、
請求項1記載のナノクリスタル。
【請求項15】
励起された場合に青色光を発する半導体ナノクリスタル集団であって、該集団の各ナノ
クリスタルが、第一半導体物質含有コア;及び該コア上の第二半導体物質を含有し、かつ
深いトラップ発光部位が実質的にないオーバーコーティングを含む、前記集団。
【請求項16】
励起された場合に、少なくとも10%の量子効率で青色光を発する、請求項15記載の
集団。
【請求項17】
前記青色光が、470nmよりも短いピーク波長を有する、請求項16記載の集団。
【請求項18】
励起された場合に、少なくとも30%の量子効率で青色光を発する、請求項15記載の
集団。
【請求項19】
励起された場合に、少なくとも50%の量子効率で青色光を発する、請求項15記載の
集団。
【請求項20】
前記青色光が、40nm以下の半値全幅を有する、請求項15記載の集団。
【請求項21】
前記青色光が、30nm以下の半値全幅を有する、請求項15記載の集団。
【請求項22】
励起された場合に、少なくとも20%の量子効率で青色光を発する、請求項21記載の
集団。
【請求項23】
前記青色光が、20nm以下の半値全幅を有する、請求項15記載の集団。
【請求項24】
前記青色光が、470nmよりも短いピーク波長を有する、請求項15記載の集団。
【請求項25】
前記第一半導体物質が、CdSである、請求項15記載の集団。
【請求項26】
前記第二半導体物質が、ZnSである、請求項24記載の集団。
【請求項27】
前記青色光が、深いトラップ発光の強度よりも少なくとも5倍大きい強度を有する、請
求項15記載の集団。
【請求項28】
前記青色光が、深いトラップ発光の強度よりも少なくとも10倍大きい強度を有する、
請求項15記載の集団。
【請求項29】
前記青色光が、深いトラップ発光の強度よりも少なくとも20倍大きい強度を有する、
請求項15記載の集団。
【請求項30】
マトリックス含有層;該層に隣接する第一電極;該第一電極と向かい合う第二電極;及
び該第一電極と該第二電極との間に配置された複数の半導体ナノクリスタルを含む、発光
デバイスであって、該半導体ナノクリスタルは、深いトラップ発光部位が実質的になく、
かつ励起された場合に青色光を発する、前記発光デバイス。
【請求項31】
前記半導体ナノクリスタルが、第一半導体物質含有コア、及び該コア上の第二半導体物
質含有オーバーコーティングを含む、請求項30記載の発光デバイス。
【請求項32】
前記第一半導体物質が、CdSである、請求項30記載の発光デバイス。
【請求項33】
前記第二半導体物質が、ZnSである、請求項32記載の発光デバイス。
【請求項34】
40nm以下の半値全幅で発光することができる、請求項31記載の発光デバイス。
【請求項35】
半導体ナノクリスタルの単分散集団とM−含有化合物、X−ドナー、及びアミンとを、
該ナノクリスタルを個々にオーバーコートするのに十分な温度で接触させることを含む、
ナノクリスタル製造方法であって、該オーバーコートされたナノクリスタルは、深いトラ
ップ発光部位が実質的になく、かつ励起された場合に青色光を発する、前記製造方法。
【請求項36】
前記アミンが、第一級アルケニルアミンである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記アミンが、C−C20の第一級アルケニルアミンである、請求項35記載の方法

【請求項38】
該アミンが、オレイルアミンである、請求項36記載の方法。
【請求項39】
前記半導体ナノクリスタルの単分散集団が、CdSナノクリスタルの単分散 集団であ
る、請求項35記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−64141(P2013−64141A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−248191(P2012−248191)
【出願日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【分割の表示】特願2007−502908(P2007−502908)の分割
【原出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】