説明

青色発光蛍光体を有するVUV励起装置

プラズマディスプレイパネル(PDP)又は他の真空紫外励起(VUV)装置でで使用するための青色発光蛍光体が提供される。これら青色発光蛍光体及びその混合物は、ユーロピウム付活カルシウム置換バリウム・ヘキサアルミン酸塩(CBAL)蛍光体を少なくとも含む。好ましくは、該CBAL蛍光体は、化学式:Ba1.29-x-yCaxEuyAl1219.29(0<x<0.25及び0.01<y<0.20)で表され得る組成を有する。これらの青色発光蛍光体は、VUV励起装置に見られる状況下での色シフトの低減及び強度保守性の向上を含む改善された劣化特性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、両方とも2003年5月15日付けの米国予備出願第60/470,734号及び第60/470,635号の利益を主張する。
技術分野
本発明は、プラズマディスプレイ装置又は他の真空紫外(VUV)励起装置に使用される青色発光蛍光体及びその混合物に関連する。これらの装置は、プラズマディスプレイパネル又は真空紫外励起ランプ等の装置を部分的に含む。プラズマディスプレイパネル又は真空紫外励起ランプ等の装置は、密封された透明構造体で部分的に構成されており、該密封構造体は、希ガスもしくは希ガスの混合物で満たされ、また、赤色発光蛍光体、緑色発光蛍光体又は青色発光蛍光体を含んでいる。高圧電流はガス放電を作り出し、該ガス放電は、一次励起源として真空紫外放射を発する。該VUV放射は、次いで、上記蛍光体を励起して可視光線を放出させる。
【背景技術】
【0002】
従来のプラズマディスプレイ装置は、希ガス(例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン及びクリプトン)もしくは希ガスの混合物が満たされ、高電圧電流によって励起されて、波長が200nmを下回るVUV範囲の紫外線放射を発する。この発せられたVUV放射は、次いで、種々の青色、緑色及び赤色発光蛍光体を励起する一次励起源として使用される。プラズマディスプレイパネル(PDP)は、背(後)面キャリア板と透明前面板とリブ付き構造体とで作製され、リブ付き構造体は、前後板間の空間を(複数の)セルに分ける。プラズマディスプレイパネルはまた、精巧な電極アレイを含み、該電極アレイは、個別のプラズマセルそれぞれに対応して該各セルそれぞれを励起させることができる。各セルは、小量の希ガス混合物と、三色のうちの一色のみを発する小量の蛍光体を含む。三つの別個の色、すなわち赤、緑及び青の各々で発光する蛍光体を含むセルは、異なる色の画素がCRTディスプレイ等の他の種類のディスプレイパネルにおいて分布させられるのとほぼ同じ形式で、プラズマディスプレイパネル内の背面板上に統計学的に分布させられる。プラズマディスプレイパネルと同様に、VUV励起ランプも希ガスもしくは希ガス混合物と上記同様の蛍光体とを含む。励起−発光原理は、次の点を除きプラズマディスプレイパネルと同様である。すなわち、VUV励起ランプでは、青色、緑色及び赤色蛍光体のブレンドがランプの内側面上に広く塗られ、個々別々のプラズマセルによって三つの別個の色が発せられる代わりに、全体的に白色を発生させることを企図して発光する点である。
【0003】
最も一般的に使用されるVUV励起エネルギーは、147nm〜173nm領域で発光するキセノンプラズマもしくはキセノン−ヘリウムプラズマから生じる。正確な発光スペクトルは、Xe濃度及び全ガス組成に依存する。高圧励起下において、Xeベースのプラズマは、一般に、147nmのXe輝線と、173nmあたりのXeエキシマーバンド発光とを有する。これは、従来の蛍光灯の低圧水銀蒸気放電によって作り出される一次254nm励起放射とは非常に異なる。その結果、VUV励起用途で使用される蛍光体には、慣用の短波紫外蛍光用途に比べより高い励起エネルギーによって課される新規な要求がある。
【0004】
一般に、VUV励起装置に用いられる蛍光体は、いくつかの望ましくない特性を示す。しかしながら、最大の問題は、青色発光体として一般的に用いられる蛍光体であるユーロピウム付活バリウム・マグネシウム・アルミン酸塩(BAM)、すなわちBa1-xEuxMgAl1017(0.01<x<0.20)である。この蛍光体は、製造工程中、温度及び湿度の上昇により、輝度及び色の両方が低下することが知られている。PDPパネルの製造中、透明前面板及び誘電体層を保護する目的で薄いMgO層が適用される。MgOはかなりの吸湿性を有し、また、パネル製造中に見られる高湿度状況が、焼出し中にMgO層から解離された水によって生じる。この水は、色の劣化を助長して、緑領域へと向かう色点のシフトを引き起こすと考えられる。この蛍光体はまた、高強度Xeプラズマ及びVUV光子束に対する長期露出後に輝度及び色の両方が低下する。BAMの劣化(低下)メカニズムは、多くの研究の主題であり、また、例えば、Eu2+〜Eu3+の酸化、アルミン酸塩蛍光体格子の実際の構造の変更、及び、格子内の異なる位置間のEu2+活性剤イオンの運動等の変化を含むと考えられている。市販のプラズマディスプレイパネルの実際の寿命は、色点のシフトと、全体的なパネル色における望ましくない黄色シフトをまねく青色蛍光体成分の強度(もしくは輝度)の低下とにより、劇的に短くなる。この劣化に大いに関連する一つの基準(尺度)は、パーセンテージで計算され得る、強度(I)対CIEy色点の比率である。強度の低下及びCIEy色座標の増長(緑色シフト)の両方は、I/y比の低減をもたらす。
【0005】
青色発光VUV励起BAM蛍光体の保守性(維持性)を改善するため、近年、多くの異なるアプローチが試みられている。これらのアプローチは、米国特許公開第2002/0039665号の、BAM蛍光体上への広バンドギャップ酸化金属のゾル−ゲルコーティング、米国特許第6,242,043号の、フッ化アンモニウムと混合したアルミン酸塩蛍光体の熱処理、及び、米国特許第5,998,047号の、溶剤ベースの、BAM蛍光体のカテナ(連鎖)−ポリリン酸塩コーティングを含む。米国特許公開第2002/0190240A1号の、BAMにおける一又は複数の金属成分に対するアルカリ金属、アルカリ土類金属もしくは亜鉛の置換等のBAM化学量論の置換バリエーションも、BAMの保守性を改善するために試みられた。今日まで、以上のアプローチにおいて完全に成功したものは無い。
【0006】
更に、例えば、米国特許第5,989,454号の(La1-x-y-zTmxLiySrz)PO4;米国特許第6,527,978号のBa1-aEuaMgAl611;CaMgSi26:Eu2+;及びCaAl24:Eu2+等の市販のBAM蛍光体と比較して改善された保守性を示す新規な蛍光体組成が研究されてきた。BAMバリウム・ヘキサアルミン酸塩の固溶相(0.82BaO・6Al23)は、改善された色安定性及び保守性を示すが、望ましくない色点を有する。改善された保守特性を有する青色VUV蛍光体の新規な混合物すなわちブレンドも開示されている。例えば、米国特許第6,187,225号の、BAMと混合した(La1-x-y-zTmxLiyAEz)PO4、Eu2+付活バリウム・マグネシウム・ランタン・アルミン酸蛍光体、Eu2+付活アルカリ土類クロロアパタイト蛍光体、又はEu2+付活カルシウム・クロロホウ酸塩蛍光体、及び、米国特許公開第2001/0033133A1号の、幅広い数のUV−C光発光蛍光体と混合したBAMもしくはSCAP(Ba,Sr,Ca)5(PO43Cl:Euである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの蛍光体もしくは蛍光体複合体の多くは、色及び強度安定性に改善を示すが、実行可能な選択肢であると証明されたものはまだない。そのため、依然として改良された青色VUV励起蛍光体が必要とされている。特に、次の特性が望まれるであろう。すなわち、より深い青色、パネル製造時の改善された色安定性、パネル作動時の改善された寿命、及び、加速された高熱、高湿、Xeプラズマ及び高強度光子束試験後の保守性のI/y比の比較的高いパーセントである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ユーロピウム付活カルシウム置換バリウム・ヘキサアルミン酸塩(CBAL)蛍光体が、BAM蛍光体が示す劣化を被ることなく許容できる青色発光蛍光体としてVUV励起装置で使用可能であることが分かった。CBAL蛍光体は、水銀蒸気放電で用いるための、米国特許第4,827,187号における従来の蛍光体として上述したが、これまで、VUV励起装置での使用は記載されていない。好ましくは、CBAL蛍光体は、Ba1.29-x-yCaxEuyAl1219.29(0<x<0.25及び0.01<y<0.20)で表される組成を有する。
【0009】
VUV励起下において、CBAL蛍光体は、BAM蛍光体よりも深い青色発光ピークを示すが、初期強度(もしくは初期輝度)は市販入手可能なBAM蛍光体のわずか80〜85%である。しかしながら、温度及び湿度が高められた状況にさらされると、CBAL蛍光体は、色点におけるほぼゼロの緑色シフトと、ごくわずかな強度喪失を示す。更に、加速エージング試験として用いられる高強度VUV光子束にさらされると、CBAL蛍光体は、市販のBAM蛍光体に見られる強度低下の1/2未満の同低下と、ほぼ無いに等しい色シフトを示す。CBAL蛍光体はまた、オキシ水酸化アルミニウムコーティングでコーティングされ得、高強度VUV光子束にさらされた場合の保守性に更なる改善をもたらす。これらのコーティングされた蛍光体は、以下、頭字語cCBALと称する。CBAL蛍光体はまた、他の青色発光蛍光体と組み合わせて使用され得る。特に、CBAL及びcCBAL蛍光体は、BAM蛍光体、オキシ水酸化アルミニウムコーティングを有するBAM蛍光体(cBAM)、又は、米国特許第6,187,225号、同第5,989,454号及び同第6,419,852号に記載される近紫外、青色及び赤外発光蛍光体である、ツリウム及びリチウム付活ガドリニウム・ランタン蛍光体(LaPOT)(Gd,La)PO4:Tm,Liとブレンドされ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の更なる目的、利点及び機能共々、本発明をより深く理解するため、図面と共に以下の開示及び特許請求の範囲が参照される。
【0011】
図面は、誘電体バリア放電ランプと一般に称されるタイプのVUV励起装置を例示する。フラット矩形形状装置が断面で示される。放電容器10は、ガラス等の透明材料から構成され、また、前面板3及び背面板2を備える。前面板3及び背面板2は、これら板の周囲においてフレーム5によって接合される。放電容器10は放電室15を取り囲み、放電室15は、希ガス、一般的にはキセノン、もしくは希ガスの混合物を収容して、真空紫外(VUV)放射を発する放電を発生させるために使用される。背面板2は、作動中にアノード及びカソードとして機能し得る複数のストリップ電極6を有する。該電極の少なくともいくつか6’は、誘電体バリア層7で覆われる。上部板3及び背面板2の内側面は、VUV放射の少なくともいくらかを可視光へと変換するための蛍光体層11で覆われる。誘電体バリア放電ランプの更なる例は、米国特許第6,566,810号、同第6,246,171号及び同第6,469,435号に開示されている。プラズマディスプレイパネルの例は、米国特許第6,713,959号及び同6,726,519号に開示されている。
【0012】
高温高湿試験及び加速エージング試験を含む、実際のPDPパネルの製造及び使用をシミュレートすることを企図して実験室試験が設計された。パーキンエルマー社(Perkin-Elmer)のLS−50Bスペクトロメータを使用して発光スペクトルを測定し、かつ、該発光スペクトルを、標準BAM蛍光体基準の発光スペクトルに対して定量化することにより、高温高湿試験及び加速エージング試験の前後の輝度が取得された。最大強度(もしくは最大輝度)におけるピーク波長が上記スペクトルから得られ、また、y座標色値が、X、Y、Z−三刺激値カーブに基づく周知で公認の方程式を用いてスペクトルデータから計算された。励起源は、VUVビーム経路から空気を除外しつつ粉末プラークを照らすために使用される市販入手できるキセノンエキシマーランプ(カナダ国オンタリオ州Barrie所在のResonance, Ltd.,からのXeCM−L)である。蛍光体はまた、ペーストへと混合され、アルミナチップすなわち「スライド」上に塗られて乾燥させられ、かつこの形態で測定され得る。
【0013】
高温高湿試験は、蛍光体試料を、425℃にある温かい水飽和空気流に2時間さらす工程を含む。加速エージング試験は、高強度Xeプラズマ及びVUV光子束に対する露出を含む。加速エージング試験は、高出力の希ガス放電室内で行われる。該室は、5cmI.D.(内径)のパイレックス(登録商標)管材の100cmループからなり、これは、最初に10-6トルの真空まで排気された後、ほぼ5ミリリットルの流れるXeを有する。誘導結合放電が、RF電源から450kHzにてほぼ280ワットの入力を適用することによって得られる。試料面においてほぼ90ミリワット/cm2の147nmVUV放射があると推定される。この状況下において著しいエキシマー発光は発生しない。選択した露出時間後、蛍光体試料の輝度が上述したように測定された。PDPパネルに対する限られた結果は、上記のような加速試験が実際のPDPパネルの製造及び使用状況を確かにシミュレートすることを示す。これらの試験結果はまた、誘電体バリア放電ランプ等の別の種類のVUV励起装置における蛍光体性能を予測するためにも用いられ得る。
【0014】

CBAL蛍光体は、水酸化アルミニウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化ユーロピウム、及び、フッ化バリウムもしくはホウ酸を十分に混ぜ、次いで、結果として生じた混合物を、窒素−水素雰囲気(5%水素〜75%水素の範囲で残りは窒素ガス)下の還元炉内において、アルミナもしくはアルミナベースのトレーにて2〜4時間、1400℃〜1600℃で焼成することによって作られ得る。該焼成ケーキは、次に、脱イオン水で洗浄され、378メッシュスクリーンを通じて湿式篩いにかけられるか、又は、湿式篩い分け前に軽く粉砕(製粉)される。該材料は、次いで乾燥させられ、いかなるあり得る凝集体をもばらばらにするため、60メッシュ篩いを通じて乾式篩いにかけられる。CBAL配合(調合)物の限定されない三つの例が以下に列記される。
配合#1は、加速試験のための試料を調製するために用いられた。配合バリエーションは、同様の特性を有する同様の蛍光体を調製するために用いられ得る。
【0015】
CBAL配合♯1
試薬 モル比 重量比(アッセイで調整)
Al(OH)3 11.0000 6.9076
CaCO3 0.1700 0.1366
BaF2 0.1000 0.1407
Eu23 0.0400 0.1153
BaCO3 0.8325 1.3251
【0016】
CBAL配合♯2
試薬 モル比 重量比(アッセイで調整)
Al(OH)3 11.0000 3.3458
CaCO3 0.1500 0.0602
BaF2 0.1000 0.0704
Eu23 0.0400 0.0576
BaCO3 0.8525 0.6785
【0017】
CBAL配合♯3
試薬 モル比 重量比(アッセイで調整)
Al(OH)3 11.0000 3.443
CaCO3 0.1000 0.040
3BO3 0.20重量% 0.009
Eu23 0.0400 0.056
BaCO3 1.003 0.794
【0018】
cCBAL及びcBAM蛍光体を形成するためにオキシ水酸化アルミニウムコーティングを適用(塗布)するための手順は、流動床反応器内に上記粉末を懸濁する工程を含み、該流動床反応器内において、蒸発(気化)させられたトリメチルアルミニウム(TMA)と水蒸気が約430℃で反応させられて、オキシ水酸化アルミニウムコーティングを形成する。窒素ガス流が、蛍光体粒子からなる床を流動化するため、金属フリット分配板を通じて上記反応器のベース内へと導入される。反応器は、次いで、外部の炉によって約430℃まで加熱される。加熱されたTMAバブラー(34℃)からの蒸発させられたTMA、及び、加熱された水バブラー(70℃)からの水蒸気は、別々の窒素ガス流に同伴される。TMA/窒素流は、窒素流動化ガスと混ぜ合わされ、上記分配板を通じて反応器内へと送られる。約1分間、蛍光体粒子をTMA蒸気で飽和した後、水蒸気/窒素流は、中央分配器を通じて反応器内へと導入される。中央分配器は、好ましくは有孔中空シャフトであり、該シャフトは、反応器内に上部を通じて挿入されており、また、粒子を流動化状態に保つために使用される振動ミキサーの一部であり得る。TMAと水は反応して、蛍光体粒子上にオキシ水酸化アルミニウムコーティングを形成する。個々の粒子上のコーティングの厚さは、反応器で費やされる時間、ガス流中における反応物質の濃度、及び、反応ガス流の流量を操作することによって調整され得る。
【0019】
CBAL−BAM蛍光体及びcCBAL−BAM蛍光体のブレンドは、ある量の該二つの成分を清潔なガラス容器に加え、次いで、ロール−ブレンディング技術によってこれら成分を十分に混合することによって調製された。そのような混合物は、該二成分の重量比を調整することにより、所望の特性を与えるように容易に変更され得る。
【0020】
CBAL−LaPOT及びcCBAL−LaPOTのブレンドは、小量の媒体及び脱イオン水と共に指定量の該二成分をガラス容器に加え、次いで、該材料を、ロール−ブレンディングによって20分間、十分に混合することにより、調製された。試験前に、上記媒体は除去され、試料は乾燥させられた。上述したように、そのような混合物は、該二成分の重量比を調整することによって、所望の特性を与えるように容易に変更され得る。好ましくは、CBAL:LaPOT成分の比は、重量で2:1〜20:1の範囲である。
【0021】
試験結果
CBAL、cCBAL、cBAM、CBAL−BAM混合物、CBAL−cBAM混合物、CBAL−LaPOT混合物、及びcCBAL−LaPOT混合物の試料は、基準に対する初期強度のための(調整として用いられる)市販入手できるBAM蛍光体の試料と共に測定された。VUV発光スペクトルは、上述したようにパーキンエルマー社のLS−50Bスペクトロメータを用いて集められた。これら試料は、次に、既述したように高温高湿処置を通じて劣化させられ、VUV強度が再測定された。全試料は、実験的に同等の条件下で劣化させられた。同試料は、更に、上記した装置を用いた高強度Xeプラズマ及びVUV光子束に対する露出を通じて劣化させられ、これらのVUV強度が再測定された。
【0022】
表1は、初期の及び劣化後のVUV励起蛍光体に対する粉末プラーク光学発光測定の結果を提供する。用語「TH」は、高められた温度及び湿度にさらして劣化した試料を意味する。用語「THX」は、上記TH試験後に、高強度Xeプラズマ及びVUV光子束にさらすことによって更に劣化した試料を意味する。強度は、標準BAM蛍光体を基準にして測定される。カッコ内のブレンド比は、蛍光体重量について与えられる。
【0023】
【表1】

【0024】
BAM調整(BAMコントロール)試料は最大の初期強度を示すが、%(I/y)比で測定されるように最悪の劣化をも示す。高温高湿試験後のI/y比は、BAM調整に対する初期I/y比の50%のみであり、高温高湿及び高強度XeプラズマVUV光子束試験後は初期I/y比の27%である。その最終強度(THX)は、最低強度の試料よりも最大で6%高いが、最初は、BAM調整は、最低強度試料よりも16%ほども高かった。
【0025】
すべての実験試料は、BAM調整よりも著しく良好な保守性のI/y比を示している。特に、CBAL及びCBAL−LaPOT混合物は、劣化試験後、すぐれた保守性のI/y比を示す。そのTH試料は、BAMよりも良好なものが80%を上回り、高温高湿試験後、初期I/y比の少なくとも93%を維持し(調整試料は50%であるのに対し)、また、そのTHX試料は、BAMよりも良好なものがほぼ100%であり、高温高湿及び高強度Xeプラズマ−VUV光子束試験後、初期I/y比の少なくとも53%を維持する(調整試料は27%であるのに対し)。更に、すべてのCBAL含有試料は、TH及びTHX処置の前後いずれにおいても、BAM調整に比べてより青いピーク波長を有する。CBAL−BAM混合物及びCBAL−cBAM混合物は、それぞれBAM単独及びcBAM単独に比べ改善した劣化保守性を示す。
【0026】
表2は、初期の及び劣化後のVUV励起蛍光体からの粉末プラーク及びペーストスライド光学発光の結果を提供する。表1と同様に、強度は標準BAM蛍光体に対して測定され、カッコ内のブレンド比は、蛍光体重量について与えられる。用語「X」は、高強度Xeプラズマ及びVUV光子束に対する露出によってのみ劣化された試料を意味する。PDPパネル製造により近似するデータを取得するため、ペーストスライドデータは、蛍光体試料と、PDPパネル用に作られたペースト、例えば、米国特許第6,660,184号に記載されるペーストとを混合することによって得られた。
【0027】
【表2】

【0028】
同じ試料の粉末調製及びペースト調製を起因とする劣化は、基本的に同等である。ペースト輝度は、粉末輝度値よりも高くなる傾向にあるが、これらは、相対的に同じである。最大強度におけるピーク波長は、CBAL又はcCBAL試料のいずれに対しても変わらないが、BAM調整試料は、高温高湿試験後、色の大きなシフトを示す。BAMに対する初期輝度は、CBAL、cCBAL、CBAL−LaPOT、及びcCBAL−LaPOT試料の初期輝度よりも格段に高いが、高温高湿試験並びに高強度Xeプラズマ及びVUV光子束に対する露出後、すべての試料は同程度の輝度を有する。高温高湿及びXeプラズマ試験(THX)後、CBAL試料に対する%(I/y)に関する保守性は、BAM調整の同様の保守性よりも非常に優れている(それぞれ54%対28%、及び62%対32%)。また、オキシ水酸化アルミニウムで覆われたCBAL(cCBAL)の保守性は、被覆されていないCBALの保守性よりもずっと優れている。cCBAL材料はまた、いかなる高温高湿試験も伴わない高強度Xeプラズマ及びVUV光子束露出後に著しく改善した保守性を示す。CBAL−LaPOTブレンド及びcCBAL−LaPOTブレンドは、CBAL及びcCBAL成分と同様にふるまうが、より高い保守性の値を示す。
【0029】
現時点で本発明の好ましい実施形態と考えられるものを示し記載したが、特許請求の範囲で定義した本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更及び変形がなされ得ることが当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】VUV励起装置の例示の断面である。
【符号の説明】
【0031】
2 背面板
3 前面板
5 フレーム
6、6’ ストリップ電極
7 誘電体バリア層
10 放電容器
11 蛍光体層
15 放電室


【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体コーティングを有する放電室を含むVUV励起装置であって、放電室は、希ガスもしくは希ガス混合物を収容し、蛍光体コーティングは放電室の内側面に塗られ、該装置は、作動時に、一次励起源として真空紫外放射を発する放電を発生させ、蛍光体コーティングは、ユーロピウム付活カルシウム置換バリウム・ヘキサアルミン酸塩蛍光体を含むVUV励起装置。
【請求項2】
前記ユーロピウム付活カルシウム置換バリウムヘキサアルミン酸塩蛍光体は、Ba1.29-x-yCaxEuyAl1219.29(0<x<0.25及び0.01<y<0.20)で表される組成を有する請求項1のVUV励起装置。
【請求項3】
該装置は147nm〜173nmの波長を有する真空紫外光を発生させる請求項1のVUV励起装置。
【請求項4】
前記放電室は、キセノンもしくはキセノンとヘリウムの混合物を収容する請求項1のVUV励起装置。
【請求項5】
前記蛍光体コーティングは、ユーロピウム付活バリウム・マグネシウム・アルミン酸塩、オキシ水酸化アルミニウムでコーティングされたユーロピウム付活バリウム・マグネシウム・アルミン酸塩、及び(Gd,La)PO4:Tm,Liからなる群から選択される蛍光体を更に含む請求項1のVUV励起装置。
【請求項6】
前記蛍光体コーディングは、(Gd,La)PO4:Tm,Li蛍光体を更に含み、ユーロピウム付活カルシウム置換バリウム・ヘキサアルミン酸塩蛍光体対(Gd,La)PO4:Tm,Li蛍光体の比は、重量で2:1〜20:1の範囲である請求項1のVUV励起装置。
【請求項7】
前記ユーロピウム付活カルシウム置換バリウム・ヘキサアルミン酸塩蛍光体は、オキシ水酸化アルミニウムでコーティングされる請求項1のVUV励起装置。
【請求項8】
蛍光体コーティングを有する放電室を含むVUV励起装置であって、放電室は、希ガスもしくは希ガス混合物を収容し、蛍光体コーティングは放電室の内側面に塗られ、該装置は、作動時に、一次励起源として真空紫外放射を発する放電を発生させ、蛍光体コーティングは、Ba1.29-x-yCaxEuyAl1219.29(0<x<0.25及び0.01<y<0.20)で表される組成を有するユーロピウム付活カルシウム置換バリウム・ヘキサアルミン酸塩蛍光体を含むVUV励起装置。
【請求項9】
該装置は147nm〜173nmの波長を有する真空紫外光を発生させる請求項8のVUV励起装置。
【請求項10】
前記放電室は、キセノンもしくはキセノンとヘリウムの混合物を収容する請求項8のVUV励起装置。
【請求項11】
前記蛍光体コーティングは、ユーロピウム付活バリウム・マグネシウム・アルミン酸塩、オキシ水酸化アルミニウムでコーティングされたユーロピウム付活バリウム・マグネシウム・アルミン酸塩、及び(Gd,La)PO4:Tm,Liからなる群から選択される蛍光体を更に含む請求項8のVUV励起装置。
【請求項12】
前記蛍光体コーディングは、(Gd,La)PO4:Tm,Li蛍光体を更に含み、ユーロピウム付活カルシウム置換バリウム・ヘキサアルミン酸塩蛍光体対(Gd,La)PO4:Tm,Li蛍光体の比は、重量で2:1〜20:1の範囲である請求項8のVUV励起装置。
【請求項13】
前記ユーロピウム付活カルシウム置換バリウム・ヘキサアルミン酸塩蛍光体は、オキシ水酸化アルミニウムでコーティングされる請求項8のVUV励起装置。
【請求項14】
青色光を発生させる方法であって、真空紫外放射で青色発光蛍光体を励起させる工程を含み、青色発光蛍光体は、ユーロピウム付活カルシウム置換バリウム・ヘキサアルミン酸塩蛍光体を含む方法。
【請求項15】
前記ユーロピウム付活カルシウム置換バリウムヘキサアルミン酸塩蛍光体は、Ba1.29-x-yCaxEuyAl1219.29(0<x<0.25及び0.01<y<0.20)で表される組成を有する請求項14の方法。
【請求項16】
147nm〜173nmの波長を有する真空紫外光を発生させる請求項14の方法。
【請求項17】
147nm〜173nmの波長を有する真空紫外光を発生させる請求項15の方法。
【請求項18】
前記青色発光蛍光体は、ユーロピウム付活バリウム・マグネシウム・アルミン酸塩、オキシ水酸化アルミニウムでコーティングされたユーロピウム付活バリウム・マグネシウム・アルミン酸塩、及び(Gd,La)PO4:Tm,Liからなる群から選択される蛍光体を更に含む請求項14の方法。
【請求項19】
前記青色発光蛍光体は、(Gd,La)PO4:Tm,Li蛍光体を更に含み、ユーロピウム付活カルシウム置換バリウム・ヘキサアルミン酸塩蛍光体対(Gd,La)PO4:Tm,Li蛍光体の比は、重量で2:1〜20:1の範囲である請求項14の方法。
【請求項20】
前記ユーロピウム付活カルシウム置換バリウム・ヘキサアルミン酸塩蛍光体は、オキシ水酸化アルミニウムでコーティングされる請求項14の方法。

【公表番号】特表2007−504348(P2007−504348A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533054(P2006−533054)
【出願日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/015079
【国際公開番号】WO2004/105070
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(394001685)オスラム・シルバニア・インコーポレイテッド (68)
【Fターム(参考)】