説明

青色発光蛍光体及び該青色発光蛍光体を用いた発光装置

【課題】発光強度の温度安定性が高い青色発光蛍光体を蛍光体を提供する。
【解決手段】Euで付活された(Sr,Ca)3MgSi28の基本組成式を有し、メルウィナイト結晶構造を持つ青色発光蛍光体であって、SrとCaのモル比が、1:0.10〜1:0.30の範囲にあることを特徴とする青色発光蛍光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色LEDの青色発光源として有用なケイ酸系青色発光蛍光体に関し、特にEuで付活した(Sr,Ca)3MgSi28の基本組成式を有し、メルウィナイト結晶構造を持つ青色発光蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、白色LEDとして、電気エネルギーの付与によって青色光を放出する半導体発光素子と黄色発光蛍光体とを組み合わせて、半導体発光素子からの青色光と、その青色光で黄色発光蛍光体を励起することによって発生した黄色光との混色により白色光を得る二色混色タイプのものが広く利用されている。しかしながら、この二色混色タイプの白色LEDが発する白色光は純度が低いという問題がある。このため、最近では、電気エネルギーの付与によって波長350〜430nmの光を発光する半導体発光素子と、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体そして赤色発光蛍光体の三種類の蛍光体を組み合わせて、半導体発光素子からの光で、それぞれの蛍光体を励起することによって発生した青色光と緑色光及び赤色光の三色の混色により白色光を得る三色混色タイプの白色LEDの開発が行なわれている。
【0003】
青色発光蛍光体としては、Sr3MgSi28の基本組成式を有し、メルウィナイト(Ca3MgSi28)と同じ結晶構造を有するケイ酸塩化合物を二価のEuで付活した青色発光蛍光体(以下、SMS青色発光蛍光体とも言う)が知られている。このSMS青色発光蛍光体については、プラズマディスプレイパネルや上記三色混色タイプの白色LEDの青色発光源として利用することが検討されている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、下記の式で示される、Srの一部をCaで置換したSMS青色発光蛍光体が記載されている。
(Sr3-c-3xCacEu3x)MgSi28
但し、式中cは0.9以下の数、xは、0.00016以上0.003未満である。
【0005】
上記特許文献1に記載の発明は、実施例の表1に記載されている蛍光体の組成と輝度維持率のデータを見ると、SMS青色発光蛍光体のEu含有量を上記の範囲にすることによって、蛍光体を蛍光体層に形成したときの発光輝度の維持率が向上するという知見に基づく発明であると理解される。但し、特許文献1では、SMS青色発光蛍光体の発光輝度をプラズマディスプレイパネルで主に利用される波長146nmの真空紫外光を用いていることから、特許文献1に記載されているSMS青色発光蛍光体はプラズマディスプレイパネルの青色発光源として最適化されたものと考えられる。すなわち、特許文献1に記載されているSMS青色発光蛍光体は、白色LEDの青色発光源として最適化されたものではない。
【0006】
特許文献2には、LEDの作動温度について、LEDを長時間駆動させたり、発光輝度を高めるために高電流駆動させた場合には、LEDチップ(半導体発光素子)が発熱し、120℃にまで達する高温状態となることがある旨の記載がある。従って、白色LEDの可視光発光源として利用する蛍光体は、LED作動時の発熱による温度の変化によって発光強度が変動しにくいこと、すなわち120℃の付近の温度での発光強度の安定性が高いことが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−312654号公報
【特許文献2】特開2010−3790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の通り、白色LEDの可視光発光源として利用する蛍光体では、室温〜120℃付近での温度範囲において発光強度の温度安定性が高いことが要求される。しかしながら、本発明者の検討によるとSMS青色発光蛍光体は、環境温度の上昇に伴って発光強度が低下する傾向が高い。
従って、本発明の目的は、発光強度の温度安定性が高いSMS青色発光蛍光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、SMS青色発光蛍光体のSrの一部をCaに置換して、SMS青色発光蛍光体中のSrとCaとのモル比を1:0.10〜1:0.30の範囲とすることによって、波長350〜430nmの光で励起させたときの発光強度の温度安定性が向上することを見出して、本発明を完成させた。
【0010】
従って、本発明は、Euで付活された(Sr,Ca)3MgSi28の基本組成式を有し、メルウィナイト結晶構造を持つ青色発光蛍光体であって、SrとCaのモル比が、1:0.10〜1:0.30の範囲にあることを特徴とする青色発光蛍光体にある。
【0011】
本願発明の青色発光蛍光体の好ましい態様は、次の通りである。
(1)波長350〜430nmの光を放出する半導体発光素子からの光で励起して、青色光を発生させるための青色発光蛍光体である。
(2)EuをMgの含有量を1モルとしたときに、0.01〜0.20モルの範囲の量にて含有する。
(3)さらに、Sc、Y、Gd、Tb及びLaからなる群より選ばれる一種以上のEu以外の希土類金属元素で共付活されている。
(4)SrとCaのモル比が、1:0.13〜1:0.23の範囲にある。
【0012】
本発明はさらに、上記本発明の青色発光蛍光体と、波長350〜430nmの光を放出する半導体発光素子とを含む発光装置にもある。
【発明の効果】
【0013】
本発明のSMS青色発光蛍光体は、120℃付近(特に100〜150℃)での高温環境下での発光強度が高く、発光強度の温度安定性が高い。従って、本発明のSMS青色発光蛍光体は、白色LEDなどの装置内の温度が120℃付近にまで上昇することがあるような発光装置の青色発光源として有利に使用することができる。
また、本発明のSMS青色発光蛍光体を青色発光源に用いた発光装置は、広い温度範囲において発光強度が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に従う発光装置(白色LED)の一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のSMS青色発光蛍光体は、(Sr,Ca)3MgSi28の基本組成式を有し、メルウィナイト結晶構造を持つ。SMS青色発光蛍光体中のSrとCaとのモル比(Sr:Ca)は、通常は1:0.10〜1:0.30の範囲、好ましくは1:0.13〜1:0.23の範囲である。
【0016】
本発明のSMS青色発光蛍光体は、二価のEuで付活されている。EuはSrに置換していることが好ましい。SMS青色発光蛍光体のEuの含有量は、Mgの含有量を1モルとしたときに、通常は0.01〜0.20モルの範囲、好ましくは0.01〜0.15モルの範囲、特に好ましくは0.02〜0.10モルの範囲にある。
【0017】
本発明のSMS青色発光蛍光体は、さらにSc、Y、Gd、Tb及びLaなどのEu以外の希土類金属元素で共付活されていてもよい。希土類金属元素はSrに置換していることが好ましい。SMS青色発光蛍光体の希土類金属元素の含有量は、Mgの含有量を1モルとしたときに、好ましくは0.00010〜0.030モルの範囲、より好ましくは0.0005〜0.02モルの範囲、特に好ましくは0.0008〜0.02モルの範囲である。希土類金属元素は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。SMS青色発光蛍光体のEuの含有量とEu以外の希土類金属の含有量とのモル比(Eu/希土類金属元素)は、好ましくは1以上、より好ましくは1〜300の範囲、特に好ましくは2〜100の範囲にある。
【0018】
本発明のSMS青色発光蛍光体は、メルウィナイト結晶構造が維持される範囲であれば、金属元素のモル比が基本組成式のモル比から外れていてもよい。SMS青色発光蛍光体の金属元素のモル比は、Mgのモル量を1としたときに、Sr、Ca、Eu及びEu以外の希土類金属元素はその合計量が2.9〜3.1の範囲にあって、Siが1.9〜2.1の範囲にあることが好ましい。
【0019】
本発明のSMS青色発光蛍光体の一例として、下記式で表される化合物を挙げることができる。
SraCabEucLndMgSiea+b+c+d+e
但し、LnはSc、Y、Gd、Tb及びLaからなる群より選ばれる少なくとも一つの希土類金属元素であり、a、b、c及びdはその合計で2.9〜3.1の範囲の数であり、b/aは0.10〜0.30の範囲の数であり、cは0.01〜0.20の範囲の数であり、dは0〜0.030の範囲の数であり、そしてeは1.9〜2.1の範囲の数である。
【0020】
本発明のSMS青色発光蛍光体の表面をフッ化アンモニウムの熱分解ガスで処理してもよい。この表面処理によって、SMS青色発光蛍光体を大気雰囲気下にて加熱処理した後の発光特性(発光強度)の低下が改善される。上記の表面処理は、SMS青色発光蛍光体にフッ化アンモニウムを添加して混合し、得られた混合物を坩堝などの耐熱性容器に入れ、耐熱性容器に蓋をした状態で加熱することにより行なうことが好ましい。フッ化アンモニウムの添加量は、SMS青色発光蛍光体100質量部に対して一般に0.1〜30質量部の範囲、好ましくは0.1〜15質量部の範囲にある。加熱温度は、一般に300〜600℃の範囲、好ましくは300〜500℃の範囲、特に好ましくは300〜480℃の範囲である。加熱時間は一般に1〜5時間の範囲にある。
【0021】
本発明のSMS青色発光蛍光体は、例えば、Sr源粉末、Mg源粉末、Si源粉末、Eu源粉末、さらに必要に応じてEu以外の希土類金属元素源粉末を、SMS青色発光蛍光体を生成する割合で混合し、得られた原料粉末混合物を焼成することによって製造することができる。Sr源粉末、Mg源粉末、Si源粉末、Eu源粉末及び希土類金属元素源粉末の各原料粉末はそれぞれ、酸化物粉末であってもよいし、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩(塩基性炭酸塩を含む)、硝酸塩、シュウ酸塩などの加熱により酸化物を生成する化合物の粉末であってもよい。原料粉末はそれぞれ一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。各原料粉末は、純度が99質量%以上であることが好ましい。
【0022】
原料粉末混合物には、フラックスを添加してもよい。フラックスはハロゲン化物であることが好ましく、塩素化合物であることが特に好ましい。フラックスとして原料粉末の一部に塩素化合物粉末を用いることが好ましい。特に、ストロンチウムの塩素化合物粉末を用いることが好ましい。フラックスの添加量は、粉末混合物中のマグネシウムを1モルとして、ハロゲン量が0.0001〜0.5モルの範囲となる量であることが好ましく、0.02〜0.5モルの範囲となる量であることが特に好ましい。
【0023】
原料粉末の混合方法には、乾式混合法及び湿式混合法のいずれかの方法を採用することができる。湿式混合法で原料粉末を混合する場合は、回転ボールミル、振動ボールミル、
遊星ミル、ペイントシェーカー、ロッキングミル、ロッキングミキサー、ビーズミル、撹拌機などを用いることができる。溶媒には、水や、エタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコールを用いることができる。
【0024】
原料粉末混合物の焼成は、0.5〜5.0体積%の水素と99.5〜95.0体積%の不活性気体とからなる還元性気体の雰囲気下にて行なう。不活性気体の例としては、アルゴン及び窒素を挙げることができる。焼成温度は、一般に900〜1300℃の範囲である。焼成時間は、一般に0.5〜100時間の範囲である。
【0025】
原料粉末に加熱により酸化物を生成する化合物の粉末を用いる場合には、還元性気体雰囲気下で焼成する前に、粉末混合物を大気雰囲気下にて、600〜850℃の温度で0.5〜100時間仮焼することが好ましい。焼成により得られたSMS青色発光蛍光体は、必要に応じて分級処理、塩酸や硝酸などの鉱酸による酸洗浄処理、ベーキング処理を行なってもよい。
【0026】
次に本発明のSMS青色発光蛍光体を用いた発光装置について、添付図面の図1を参照しながら説明する。
【0027】
図1は、本発明のSMS青色発光蛍光体を用いた白色LEDの一例の断面図である。図1において、白色LEDは、基板1と、基板1の上に接着材2により固定された半導体発光素子3、基板1の上に形成された一対の電極4a、4b、半導体発光素子3と電極4a、4bとを電気的に接続するリード線5a、5b、半導体発光素子3を被覆する樹脂層6、樹脂層6の上に設けられた蛍光体層7、そして樹脂層6と蛍光体層7の周囲を覆う光反射材8、そして電極4a、4bと外部電源(図示せず)とを電気的に接続するための導電線9a、9bからなる。蛍光体層7には、SMS青色発光蛍光体と緑色発光蛍光体と赤色発光蛍光体とがガラスやシリコーン樹脂などの透明樹脂に分散されている。図1の白色LEDにおいて、導電線9a、9bを介して電極4a、4bに電圧を印加して、電気エネルギーを付与すると半導体発光素子3が発光して波長350〜430nmの範囲にピークを有する発光光が発生し、この発光光が蛍光体層7中の各色発光蛍光体を励起させることによって青色、緑色及び赤色の可視光が生成する。そして、それらの青色光、緑色光及び赤色光の混色により白色光が生成する。
【0028】
半導体発光素子3の例としては、AlGaN系半導体発光素子を挙げることができる。樹脂層6の材料の例としてはシリコーン樹脂を挙げることができる。蛍光体層7に分散させる緑色発光蛍光体の例としては、(Ca,Sr,Ba)2SiO4:Eu2+、BaMgAl1017:Eu2+,Mn2+、α−SiAlON:Eu2+、β−SiAlON:Eu2+、ZnS:Cu,Alを挙げることができる。赤色発光蛍光体の例としては、Y22S:Eu2+、La23S:Eu2+、(Ca,Sr,Ba)2Si58:Eu2+、CaAlSiN3:Eu2+、Eu229、(Ca,Sr,Ba)2Si58:Eu2+,Mn2+、CaTiO3:Pr3+,Bi3+、(La,Eu)2312を挙げることができる。
【実施例】
【0029】
実施例及び比較例で使用した原料粉末は、次の通りである。
(1)炭酸ストロンチウム(SrCO3)粉末:純度99.7質量%、レーザー回折散乱法により測定した平均粒子径0.9μm
(2)塩化ストロンチウム(SrCl2・6H2O)粉末:純度99質量%
(3)炭酸カルシウム(CaCO3)粉末:純度99.99質量%、レーザー回折散乱法により測定した平均粒子径3.87μm
(4)酸化ユウロピウム(Eu23)粉末:純度99.9質量%、レーザー回折散乱法により測定した平均粒子径2.7μm
(5)酸化マグネシウム(MgO)粉末:気相法により製造したもの、純度99.98質量%、BET比表面積から換算した粒子径0.2μm
(6)二酸化ケイ素(SiO2)粉末:純度99.9質量%、BET比表面積から換算した粒子径0.01μm
(7)酸化イットリウム(Y23)粉末:純度99.9質量%
【0030】
[実施例1]
原料粉末にSrCO3粉末、SrCl2・6H2O粉末、CaCO3粉末、Eu23粉末、MgO粉末、SiO2粉末を用い、SrCO3:SrCl2・6H2O:CaCO3:Eu23:MgO:SiO2のモル比がそれぞれ2.445:0.125:0.360:0.035:1:2.000となるように秤量した。秤量した各粉末を、水中にてボールミルを用いて15時間湿式混合して、粉末混合物のスラリーを得た。得られたスラリーをロータリーエバポレーターで乾燥して、乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末をアルミナ坩堝に入れて、大気雰囲気下にて800℃の温度で3時間焼成し、次いで、室温まで放冷した後、2体積%水素−98体積%アルゴンの混合ガス雰囲気下にて1220℃の温度で3時間焼成して、組成式がSr257Ca036Eu007MgSi28のSMS青色発光蛍光体を製造した。得られたSMS青色発光蛍光体の発光強度の温度特性を、下記の方法により測定した。表1に、得られたSMS青色発光蛍光体のSrとCaのモル比と発光強度の温度特性を示す。
【0031】
[発光強度の温度特性の測定方法]
試料のSMS青色発光蛍光体を10℃/1分の昇温速度で加熱して、30℃、50℃、100℃、150℃の各温度となった時点で、該温度を5分間維持した後に該温度を維持したままSMS青色発光蛍光体にキセノンランプを用いて波長400nmの紫外光を照射して、発光スペクトルを測定する。得られた発光スペクトルの400〜500nmの波長範囲の中で最大ピーク強度を求め、これを発光強度とする。発光強度は、後述の比較例1で製造したSMS青色発光蛍光体を30℃に加熱したときの発光強度を100とした相対値で示す。
【0032】
[実施例2]
各原料粉末の量をSrCO3:SrCl2・6H2O:CaCO3:Eu23:MgO:SiO2のモル比で2.295:0.125:0.510:0.035:1:2.000としたこと以外は、実施例1と同様にして組成式がSr242Ca051Eu007MgSi28のSMS青色発光蛍光体を製造した。得られたSMS青色発光蛍光体の発光強度の温度特性を上記の方法により測定した。表1に、得られたSMS青色発光蛍光体のSrとCaのモル比と発光強度の温度特性を示す。
【0033】
[比較例1]
原料粉末にSrCO3粉末、SrCl2・6H2O粉末、Eu23粉末、MgO粉末、SiO2粉末を用い、各原料粉末をSrCO3:SrCl2・6H2O:Eu23:MgO:SiO2のモル比が2.805:0.125:0.035:1:2.000となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様にして組成式がSr293Eu007MgSi28のSMS青色発光蛍光体を製造した。得られたSMS青色発光蛍光体の発光強度の温度特性を上記の方法により測定した。表1に、得られたSMS青色発光蛍光体の発光強度の温度特性を示す。
【0034】
[比較例2]
各原料粉末の量をSrCO3:SrCl2・6H2O:CaCO3:Eu23:MgO:SiO2のモル比で2.655:0.125:0.150:0.035:1:2.000としたこと以外は、実施例1と同様にして組成式がSr278Ca015Eu007MgSi28のSMS青色発光蛍光体を製造した。得られたSMS青色発光蛍光体の発光強度の温度特性を上記の方法により測定した。表1に、得られたSMS青色発光蛍光体のSrとCaのモル比と発光強度の温度特性を示す。
【0035】
[比較例3]
各原料粉末の量をSrCO3:SrCl2・6H2O:CaCO3:Eu23:MgO:SiO2のモル比で2.055:0.125:0.750:0.035:1:2.000としたこと以外は、実施例1と同様にして組成式がSr218Ca075Eu007MgSi28のSMS青色発光蛍光体を製造した。得られたSMS青色発光蛍光体の発光強度の温度特性を上記の方法により測定した。表1に、得られたSMS青色発光蛍光体のSrとCaのモル比と発光強度の温度特性を示す。
【0036】
表1
────────────────────────────────────────
SMS青色発光蛍光体の SMS青色発光蛍光体の発光強度の温度特性
SrとCaのモル比 ───────────────────────
Sr:Ca 30℃ 50℃ 100℃ 150℃
────────────────────────────────────────
実施例1 1:0.14 100 97 86 76
実施例2 1:0.21 105 101 90 78
────────────────────────────────────────
比較例1 Caの添加なし 100 96 83 72
比較例2 1:0.05 98 93 81 70
比較例3 1:0.34 91 86 77 66
────────────────────────────────────────
【0037】
上記表1の結果から、SrをCaで本発明の範囲で置換したSMS青色発光蛍光体(実施例1、2)は、Caで置換していないSMS蛍光体(比較例1)やCaの含有量が本発明の範囲から逸脱したSMS蛍光体(比較例2、3)と比べて、120℃付近(100〜150℃)での高温環境下での発光強度が高く、発光強度の温度安定性が高いことが分かる。
【0038】
[実施例3]
原料粉末にSrCO3粉末、SrCl2・6H2O粉末、CaCO3粉末、Eu23粉末、Y23粉末、MgO粉末、SiO2粉末を用い、各原料粉末の量をSrCO3:SrCl2・6H2O:CaCO3:Eu23:Y23:MgO:SiO2のモル比で2.500:0.125:0.300:0.035:0.0025:1:2.000としたこと以外は、実施例1と同様にして組成式がSr2625Ca0300Eu00700005MgSi28のSMS青色発光蛍光体を製造した。得られたSMS青色発光蛍光体の発光強度の温度特性を上記の方法により測定した。表2に、得られたSMS青色発光蛍光体のSrとCaのモル比と発光強度の温度特性を示す。
【0039】
[実施例4]
各原料粉末の量をSrCO3:SrCl2・6H2O:CaCO3:Eu23:Y23:MgO:SiO2のモル比で2.440:0.125:0.360:0.035:0.0025:1:2.000としたこと以外は、実施例3と同様にして組成式がSr2565Ca0360Eu00700005MgSi28のSMS青色発光蛍光体を製造した。得られたSMS青色発光蛍光体の発光強度の温度特性を上記の方法により測定した。表2に、得られたSMS青色発光蛍光体のSrとCaのモル比と発光強度の温度特性を示す。
【0040】
[実施例5]
各原料粉末の量をSrCO3:SrCl2・6H2O:CaCO3:Eu23:Y23:MgO:SiO2のモル比で2.355:0.125:0.450:0.035:0.0025:1:2.000としたこと以外は、実施例3と同様にして組成式がSr2475Ca0510Eu00700005MgSi28のSMS青色発光蛍光体を製造した。得られたSMS青色発光蛍光体の発光強度の温度特性を上記の方法により測定した。表2に、得られたSMS青色発光蛍光体のSrとCaのモル比と発光強度の温度特性を示す。
【0041】
[実施例6]
各原料粉末の量をSrCO3:SrCl2・6H2O:CaCO3:Eu23:Y23:MgO:SiO2のモル比で2.290:0.125:0.510:0.035:0.0025:1:2.000としたこと以外は、実施例3と同様にして組成式がSr2415Ca0510Eu00700005MgSi28のSMS青色発光蛍光体を製造した。得られたSMS青色発光蛍光体の発光強度の温度特性を上記の方法により測定した。表2に、得られたSMS青色発光蛍光体のSrとCaのモル比と発光強度の温度特性を示す。
【0042】
[実施例7]
各原料粉末の量をSrCO3:SrCl2・6H2O:CaCO3:Eu23:Y23:MgO:SiO2のモル比で2.200:0.125:0.600:0.035:0.0025:1:2.000としたこと以外は、実施例3と同様にして組成式がSr2325Ca0600Eu00700005MgSi28のSMS青色発光蛍光体を製造した。得られたSMS青色発光蛍光体の発光強度の温度特性を上記の方法により測定した。表2に、得られたSMS青色発光蛍光体のSrとCaのモル比と発光強度の温度特性を示す。
【0043】
[実施例8]
各原料粉末の量をSrCO3:SrCl2・6H2O:CaCO3:Eu23:Y23:MgO:SiO2のモル比で2.140:0.125:0.660:0.035:0.0025:1:2.000としたこと以外は、実施例3と同様にして組成式がSr2265Ca0660Eu00700005MgSi28のSMS青色発光蛍光体を製造した。得られたSMS青色発光蛍光体の発光強度の温度特性を上記の方法により測定した。表2に、得られたSMS青色発光蛍光体のSrとCaのモル比と発光強度の温度特性を示す。
【0044】
表2
────────────────────────────────────────
SMS青色発光蛍光体の SMS青色発光蛍光体の発光強度の温度特性
SrとCaのモル比 ───────────────────────
Ca:Sr 30℃ 50℃ 100℃ 150℃
────────────────────────────────────────
実施例3 1:0.11 106 99 89 77
実施例4 1:0.14 107 104 92 81
実施例5 1:0.18 109 104 96 83
実施例6 1:0.21 112 108 96 84
実施例7 1:0.26 106 102 90 78
実施例8 1:0.29 106 101 90 77
────────────────────────────────────────
【0045】
上記表2の結果から、Srの一部をCaで置換し、さらにYで共付活したSMS青色発光蛍光体は、120℃付近での高温環境下での発光強度が高く、発光強度の温度安定性が高いことが分かる。
【符号の説明】
【0046】
1 基板
2 接着材
3 半導体発光素子
4a、4b 電極
5a、5b リード線
6 樹脂層
7 蛍光体層
8 光反射材
9a、9b 導電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Euで付活された(Sr,Ca)3MgSi28の基本組成式を有し、メルウィナイト結晶構造を持つ青色発光蛍光体であって、SrとCaのモル比が、1:0.10〜1:0.30の範囲にあることを特徴とする青色発光蛍光体。
【請求項2】
波長350〜430nmの光を放出する半導体発光素子からの光で励起して、青色光を発生させるための、請求項1に記載の青色発光蛍光体。
【請求項3】
EuをMgの含有量を1モルとしたときに、0.01〜0.20モルの範囲の量にて含有する請求項1に記載の青色発光蛍光体。
【請求項4】
さらに、Sc、Y、Gd、Tb及びLaからなる群より選ばれる一種以上のEu以外の希土類金属元素で共付活されている請求項1に記載の青色発光蛍光体。
【請求項5】
SrとCaのモル比が、1:0.13〜1:0.23の範囲にある請求項1に記載の青色発光蛍光体。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれかの項に記載の青色発光蛍光体と、波長350〜430nmの光を放出する半導体発光素子とを含む発光装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−35957(P2013−35957A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173867(P2011−173867)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000119988)宇部マテリアルズ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】