説明

青色着色薄片およびそれを配合した化粧料、塗料組成物、樹脂組成物およびインキ組成物

群青粒子の凝集を防止し、化粧料、塗料等に配合した場合にごろつき感を防止して肌上での伸びなどの使用感が良く、また基板上での伸びが良く、きれいな色調を呈する青色着色薄片を提供する。 二酸化ケイ素および酸化アルミニウムのような透明な金属酸化物を母材とし、その内部に30〜3000nmの粒径の群青粒子を5〜60質量%分散して含有する青色着色薄片である。青色着色薄片は5〜500μmの平均粒径、0.1〜5μmの平均厚さおよび5〜300の平均アスペクト比を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料、塗料、樹脂、フィルムまたはインキなどにフィラーとして配合される青色着色薄片に関する。さらには、この青色着色薄片を含有する化粧料、塗料、樹脂組成物およびインキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
群青(ウルトラマリン)は他の顔料では表現し得ない独特の鮮明な色調と、優れた耐アルカリ性および耐光性とに加え、優れた耐熱性や安全性を有するので、化粧料、塗料、樹脂、フィルムまたはインキなどにフィラーとして使用されている。しかし群青は、粒子状粉体では凝集し易いため、群青を化粧料、塗料、樹脂等に配合した場合、ごろつき感(物がごろごろする感じ)が生じ、感触や使い勝手が悪化するなどの問題があった。また、群青の粒子状粉体が凝集すれば、透過光ないし反射光を散乱させる機能が低下して群青独特の鮮明な色調が得られなくなるという問題もあった。さらに、群青はケイ酸、アルミナ、ナトリウムおよび硫黄によって構成され、その構成成分である硫黄の影響により、群青を擦り合わせた場合等において、わずかながら硫黄臭が発生することがある。そのため、特に臭いを重要視する化粧品においてはその使用が問題となり、配合量の調整や臭いを目立たなくすることが必要になる。
【0003】
微粒子凝集によるごろつき感の問題を解決して感触や使い勝手を改善させるために、球状の無機粉体の表面に微粒子を付着させたものが開発されている(特許文献1、特許文献2など)。これらは、無機粉体表面に酸化亜鉛のような微粒子を付着させることにより微粒子の凝集を防止するものであるが、無機粉体が球状であるため、無機粉体自体が凝集し易く、化粧料に配合した場合、上記同様に感触や使い勝手が悪いなどの問題もあった。さらには、機械的摩擦などにより、無機粉体の表面に付着した微粒子が容易に剥がれる問題もあった。
【0004】
非特許文献1にはシリカコートした群青粒子が記載されている。しかしこの群青粒子は耐久性の向上および硫黄臭の防止に役立つが、凝集を防止することができず、この群青粒子を化粧料に使用する場合にごろつき感が生じる。
特許文献3には、シリカの板状粉体に微粒子を付着させたフィラーが例示されている。板状粉体であれば、それ自身は凝集し難いことから、このフィラーを用いた化粧料は、ごろつき感がなく、なめらかな使用感を与えると予想される。
しかし、板状の粉体に微粒子を付着させただけでは、群青のような臭いを発生する微粒子においては、その臭いを抑制することはできない。
【特許文献1】特開平8−217637公報
【特許文献2】特開平11−001411号公報
【特許文献3】特開平10−087433号公報
【非特許文献1】伊藤征司郎総編集「顔料の辞典」、p225、朝倉書店 2000年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、群青粒子の凝集を防止し、化粧料、塗料等に配合した場合にごろつき感を防止して肌上での伸びなどの使用感が良く、また基板上での伸びが良く、きれいな色調を呈する青色着色薄片を提供することにある。さらには化粧料等に配合した場合に硫黄臭の発生を抑制した青色着色薄片を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の青色着色薄片は、透明な金属酸化物を母材とし、その内部に30〜3000nmの粒径の群青粒子を5〜60質量%分散して含有する。
【0007】
本発明の青色着色薄片は透明な金属酸化物の母材と、その内部に分散して含有される群青粒子からなる。透明な金属酸化物としては、二酸化ケイ素および酸化アルミニウム(三二酸化アルミニウム)等が好ましく用いられる。青色着色薄片は、化粧料または樹脂組成物などのフィラーとして利用されるのに適しており、その外形が鱗片状であることから凝集し難いという特徴を備える。そのため、たとえば化粧料に配合された場合には、ごろつき感などの使用感の低下を生じさせることがない。この青色着色薄片は耐熱、耐酸性が高く、任意の色調の青色の顔料として用いられる。
【0008】
本発明の青色着色薄片は、その内部に粒径30〜3000nm、好ましくは50〜2000nmの群青粒子を分散含有する。最終形状が薄膜状になるような化粧料、塗料、フィルム用樹脂組成物、インキ組成物等に含有された本発明の青色着色薄片は凝集することなく薄膜の内部で薄膜の膜面に平行に配向して並ぶため、薄片内の群青粒子は均一に並ぶことになり、顔料としての効果が高くなる。
【0009】
もし仮に、化粧料、塗料、フィルム用樹脂組成物、インキ組成物等が、薄片中に内包されていない群青粒子を含有するならば、群青粒子同士が凝集して大きな粒径の2次粒子を形成する。群青粒子の凝集(2次粒子形成)はその塗膜中でのむらを生じることとなる。また薄片中に内包されていない群青粒子を含有した化粧料は、凝集しやすいために、展延性が乏しく、使用感が悪くなる。薄片中に内包されていない群青粒子を含有した塗料はその配合時に伸びが少ない。
【0010】
本発明の青色着色薄片は5〜500μmの平均粒径、0.1〜5μmの平均厚さおよび5〜300の平均アスペクト比を有することが好ましく、8〜300μmの平均粒径、0.2〜2.5μmの平均厚さおよび8〜200の平均アスペクト比を有することがより好ましく、8〜50μmの平均粒径、0.5〜2.0μmの平均厚さおよび8〜50の平均アスペクト比を有することがさらに好ましい。この平均粒径が5μm未満では、青色着色薄片が凝集し易いため、むらとなりやすい。一方、平均粒径が500μmを超えると、フィラーとして配合する際に青色着色薄片が破砕され易く、また化粧料に配合した場合には、ごろつき感が生じるなどその使用感を劣化させる。平均厚さが0.1μm未満では、製造が困難で、かつ、破砕され易いなどの問題が生じる。一方、平均厚さが5μmを超えると、塗料に配合した場合、塗膜表面に凹凸が形成され、その見栄えを悪化させる、あるいは化粧料に配合した場合、ごろつき感などその使用感を劣化させる。平均アスペクト比が5未満では、球状粒子としての特徴が表れ始め、凝集を起こし易くなる。一方、平均アスペクト比が300を超えると、フィラーとして配合する際に破砕されて、粒径が不均一になり、むらが生じやすい。
青色着色薄片の平均粒径はレーザ回折・散乱式粒度分布測定装置、例えば、マイクロトラックII(日機装(株)製)により、平均厚さは電子顕微鏡による青色着色薄片50個測定の単純平均により、平均アスペクト比は上記平均粒径の値を上記平均厚さ値を除することによりそれぞれ求めることができる。
【0011】
青色着色薄片の製造は特に限定されるものではなく、例えば群青粒子を混入した溶融ガラスを膜状に引き伸ばす方法、およびいわゆるゾルゲル法等によることができる。この中でもゾルゲル法が特に適している。たとえば、特開平1−9803号公報に記載の方法、すなわち金属アルコキシドもしくは金属有機酸塩などからなる金属化合物溶液または金属酸化物ゾル(母材の原料)に粒径30〜3000nmの群青粒子を分散してなる原液を作製し、この原液を、平滑面を有する基材表面に塗布して塗膜を形成し、ついで塗膜を乾燥、反応(酸化分解等)などの処理により薄片状として、この薄片を前記基材より剥離する方法が挙げられる。この時、母材の金属酸化物ゾルとして、市販の金属酸化物コロイド溶液(以下、ゾル溶液ともいう)を使用してもよい。剥離した薄片を200〜800℃で焼成し、必要に応じて粉砕・分級して、任意の平均粒径の青色着色薄片とする。また。本発明においては、上記原液に、公知の添加剤を配合してもよく、添加剤の種類としては、トレハロース等の二糖類などが挙げられる。このような添加剤の添加量は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、金属酸化物および群青の質量に対して、通常3〜60質量%、好ましくは5〜20質量%である。
【0012】
前記塗布の基材の形態は、とくに限定されるものではなく、ロール状、ベルト状またはシート状などが例示される。これらの中でも、薄片状物質の生産性の観点から連続生産に適したロール状またはベルト状が好ましい。ロール状基材の素材としては、鉄またはステンレスなどの金属、前記金属にクロムなどのメッキしたもの、酸化アルミニウムもしくは酸化ジルコニウムを含有するセラミックまたはガラス、あるいは前記素材をシリコンゴムなどの高分子で被覆したものが例示される。ベルト状またはシート状の素材としては、鉄またはステンレスなどの金属、酸化アルミニウムもしくは酸化ジルコニウムを含有するセラミックまたはガラス、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリイミドまたはポリアミドなどの樹脂組成物が例示される。
【0013】
塗布基材に原液を塗布する方法としては、とくに限定されるものではなく、公知の塗布方法をそのまま用いることができる。たとえば、ディッピング法、バーコーター法、ロールコーター法、カーテンコーター法またはスプレー法などが挙げられる。
【0014】
原液を基材に塗布した後、基材または塗膜を加熱して、塗膜を乾燥させ、ゲル化さらには薄膜化させる。加熱方法としては、熱風、赤外線ヒーターまたは高周波加熱などで塗膜を直接加熱する方法、あるいは基材を発熱体に接触させるなどして間接的に塗膜を加熱する方法が例示される。薄膜化する際、溶媒の除去および加熱に伴い薄膜が収縮するため、薄膜には無数の亀裂が発生する。この亀裂の発生により、薄膜は薄片状となる。薄片を基材より剥離する工程は、例えば薄片が表面に形成されている基材をフェルトなどの不織布で挟み込み、不織布で薄片を押さえ込みながら基材のみをスライドさせて基材と薄片とを剥離するなどの公知手段を適宜に用いて容易に実施される。
【0015】
剥離した薄片状金属化合物または金属酸化物を焼成し、必要に応じて粉砕・分級して、任意の平均粒径の薄片とする。色調にもよるが、焼成温度と時間は群青色が変色しない条件が良い。焼成温度は酸素雰囲気下では600℃以下に保つことが好ましく、非酸化性雰囲気下では1200℃以下に保つことが好ましい。上記焼成の温度が比較的に低く、例えば400℃である場合には、多孔質の薄片が得られ、この温度が比較的に高く、例えば800℃を超える場合には、多孔質ではなく緻密な薄片が得られる。多孔質の薄片はその空孔のため強度が比較的弱いが、その空隙の屈折率(空気=1)が母材より非常に小さくその空隙の界面によりさらに可視光が散乱されることが期待される。そのため、多孔質の薄片は、応力負荷が小さく、かつ散乱強度が要求される用途に好適に使用される。緻密な薄片は、強度が比較的必要とされる用途や、細孔中に周囲の物質が吸収されては困る用途などに好適に使用される。
【0016】
このようにして得られる本発明の青色着色薄片は、群青粒子がその内部に分散包含されるものであるため、各用途でフィラーとして配合される場合でも、群青粒子が薄片から剥離してしまうことがない。
【0017】
この青色着色薄片における群青粒子の含有率は、5〜50質量%、好ましくは8〜30質量%である。この含有率が5質量%未満の場合は、鮮やかな青ではなく、淡い青の色調になってしまい群青本来の色が損なわれてしまう。また一方50質量%を超えると、薄片が脆くなってその機械的強度が低下する。群青粒子の形状としては不定形、球状、円柱状、紡錘状等、特に限定はない。なお、上記群青粒子の含有率(質量%)は下式によって表される。
【数1】

【0018】
本発明の青色着色薄片を化粧料に配合することにより、肌上での感触に優れ、群青がもつ独特の美しい青色の化粧料となる。さらに、群青がもつ硫黄臭も薄片に加工することにより、抑制することができるようになる。化粧料における青色着色薄片の含有率は、1〜70質量%が適当である。1質量%未満では、青色粉体としての着色効果が小さく、一方70質量%を超えると、青色粉体としての着色効果が大きく透明性がなくなり、不自然な仕上がりとなる。より好ましくは、3〜50質量%である。
【0019】
本発明の青色着色薄片は、化粧料の目的に応じて適宜疎水化処理を施してもよい。疎水化処理の方法としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高粘度シリコーンオイルまたはシリコーン樹脂などのシリコーン化合物による処理、アニオン活性剤またはカチオン活性剤などの界面活性剤による処理、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、フッ素樹脂またはポリアミノ酸などの高分子化合物による処理、あるいはパーフルオロ基含有化合物、レシチン、コラーゲン、金属石鹸、親油性ワックス、多価アルコール部分エステルまたは完全エステルなどによる処理、さらにはこれらの複合処理が挙げられる。ただし、一般に粉末の疎水化処理に適用できる方法であればよく、これらの方法に限定されるものではない。
【0020】
この化粧料には、前記青色着色薄片のほかに、通常化粧料に用いられる他の成分を必要に応じて適宜配合することができる。他の成分としては、無機粉末、有機粉末、顔料、色素、油性成分、有機溶剤、樹脂または可塑剤などが挙げられる。たとえば、無機粉末としては、タルク、カオリン、セリサイト、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、バーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイソウ土、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、硫酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、シリカ、ヒドロキシアパタイト、ゼオライト、窒化ホウ素またはセラミックスパウダーなどが挙げられる。
【0021】
また、有機粉末としては、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリ四フッ化エチレンパウダー、ジスチレンベンゼンポリマーパウダー、エポキシパウダーまたはアクリルパウダーなどが挙げられる。
【0022】
他の顔料としては、微結晶性セルロース、二酸化チタンまたは酸化亜鉛などの無機白色顔料、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄などの無機赤色系顔料、γ酸化鉄などの無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土などの無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラックなどの無機黒色系顔料、マンゴバイオレット、コバルトバイオレットなどの無機紫色系顔料、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルトなどの無機緑色系顔料、紺青などの無機青色系顔料、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、着色酸化チタン被覆雲母などのパール顔料、アルミニウムパウダー、あるいはカッパーパウダーなどの金属粉末顔料などが挙げられる。
【0023】
色素としては、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号および青色404号などの有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号および青色1号のジルコニウム、バリウムまたはアルミニウムレーキなどの有機顔料、あるいはクロロフィルまたはβ−カロチンなどの天然色素などが挙げられる。
【0024】
さらには油性成分として、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、オケゾライト、セレシン、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、セチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、2−エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセロール、オレイン酸−2−オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、トリイソステアリン酸グリセロール、トリヤシ油脂肪酸グリセロール、オリーブ油、アボガド油、ミツロウ、ミリスチン酸ミリスチル、ミンク油またはラノリンなどの各種炭化水素、シリコーン油、高級脂肪酸、油脂類のエステル類、高級アルコール、あるいはロウなどが挙げられる。
【0025】
また、化粧料に配合される他の成分として、さらに、アセトン、トルエン、酢酸ブチルまたは酢酸エステルなどの有機溶剤、アルキド樹脂または尿素樹脂などの樹脂、カンファ、クエン酸アセチルトリブチルなどの可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、界面活性剤、保湿剤、香料、水、アルコール、あるいは増粘剤などが挙げられる。
【0026】
化粧料の形態としては、粉末状、ケーキ状、ペンシル状、スティック状、軟膏状、液状、乳液状またはクリーム状など種々の形態が挙げられる。これらには、たとえば化粧水、乳液またはクリームなどのフェーシャル化粧料、ファンデーション、口紅、アイシャドー、頬紅、アイライナー、ネイルエナメルまたはマスカラなどのメークアップ化粧料などが含まれる。
【0027】
また、この青色着色薄片は、従来のフィラーと同様に塗料、樹脂練り込み、フィルムまたはインキなどのフィラーとしても使用できる。塗料に使用した場合、塗布基板上での伸びが良く、下地を見えにくくし、また、きれいな透明感のある青色を呈する。樹脂成型物や樹脂フィルム、インキに使用した場合、可視光散乱効果の高い、あるいは、きれいな透明感のある青色を呈するものとすることができる。塗料組成物、樹脂組成物、インキ組成物中の青色着色薄片の含有率は、1〜70質量%が好ましい。1質量%未満では、可視光散乱効果が低くなって下地隠蔽効果および透明感のある青色が得られ難くなり、70質量%を超えると光沢が強くなりすぎる。より好ましい青色着色薄片の含有率は、3〜50質量%である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に限定するものではない。
【実施例】
【0029】
各実施例および比較例において作製した薄片について、下記手段により薄片の色調と肌上への使用感を評価した。
[実施例1〜5]
二酸化ケイ素(シリカ)のゾル溶液(日本化学工業株式会社製 シリカドール30A
粒径20nm、分散媒 水)141g(シリカ分42g)を攪拌しながら、群青の粒子(粒径200nm、第一化成工業株式会社製「CB−80」)を実施例1として2.2g、実施例2として4.7g、実施例3として18g、実施例4として42gまたは実施例5として63g加えて、さらに純水178gを加えて混合し、公知のホモジナイザー分散機を使用して10分間分散させ、群青粒子含有シリカゾルを作製した。この時、群青粒子含有シリカゾルはpHが8〜10のアルカリであることを確認した。ここに水溶性物質であるトレハロース(分子量342)を全固形分質量(金属酸化物の質量+群青の質量)に対し10質量%添加し、さらに30分間公知のホモジナイザー分散機を使用して分散した。さらにこのゾル溶液を25℃で18時間静置した。このゾル溶液を幅10cmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにバーコーターを用いて、乾燥後の厚さが1.0μmになるように塗布し、そのフィルムを120℃の乾燥炉に3分間入れ、ゾル溶液を乾燥させた。そして、このフィルムを乾燥炉から取り出し、室温まで冷却した。このとき、薄膜はPETフィルム表面に均一に付着していた。このフィルムに室温の水を噴霧しながら、薄膜形成面にフェルトを市販のバインダークリップで挟んで押し付けつつ、フィルムだけを引張りスライドさせた。これにより、フィルム表面から薄膜が剥離した。また、剥離した薄片を回収し、120℃で1時間乾燥させた後、400℃で5時間焼成を行った。群青粒子を分散内包しかつシリカを主成分とする多孔質なシリカ−群青からなる薄片を得た。この薄片を公知の装置を用いて分級して、平均粒径10μm、平均厚さ1.0μm、平均アスペクト比10に調整した。
【0030】
これらの薄片について、肌上の感触、硫黄臭および塗板上での彩度を測定および評価した。薄片の平均粒径(μm)、平均厚さ(μm)、平均アスペクト比、薄片中に分散して含有される群青粒子の含有率(質量%)とシリカ含有率(質量%)、官能試験による粉体の色調と肌上感触評価および硫黄臭評価、さらに彩度評価結果を表1に示す。これら各実施例における薄片については、群青粒子の含有率が5〜60質量%において群青粒子よりも肌上感触評価、硫黄臭評価に優れていることが分かる。そして、肌上感触、硫黄臭評価および彩度評価の点で総合的にみて、群青粒子の含有率が10〜50質量%がより好ましいことが分かる。比較のため群青粒子そのものを比較例1として上記と同様に評価した。
【0031】
【表1】

【0032】
肌上感触および硫黄臭についての評価試験は、肌上感触および硫黄臭を次の基準により評価することにより行われた。
肌上感触
◎・・・なめらかにのびる
○・・・ごろつき感なし
△・・・少しごろつき感あり
×・・・ごろつき感あり
【0033】
硫黄臭
◎・・・ほとんどにおいがしない
○・・・若干においがする
△・・・においがする
×・・・不快なにおいがする
【0034】
彩度についての評価試験は次のとおり行われた。
アクリル樹脂塗料(アクリルオートクリアスーパー 日本ペイント株式会社製、固形分約50質量%)に実施例3の青色着色薄片を樹脂中で10質量%になるように添加し、よく混合撹拌した後、混合物を隠蔽率測定紙に9ミル(9/1000インチ)隙間のアプリケーターで塗布し、ついで乾燥させることにより塗板を作製した。また、実施例1、2、4及び5の薄片、及び比較例1の群青粒子の彩度は、アクリル樹脂中の群青粒子の含有量が上記と同じ量になるように調整したこと以外、上記と同様にして塗板を作製した。作製した塗板を色差計(ミノルタ製 CR−300)でa、b値測定し、彩度を次式により算出した。
【数2】

【0035】
次に、上記実施例で作製した青色着色薄片および比較例1の群青粒子を用いて、化粧料を試作し、その使用感について官能試験を行った。官能試験の項目は、仕上がり感、肌やまつ毛などへの塗布時の感触および青色のきれいさの3項目であり、個々の項目について1〜5の5段階の評価を行った。各項目の評価基準を表2〜4に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
以下の化粧料の官能試験では、10人のパネリストを起用した。この10人の評価の平均値をもって、化粧料の仕上がり感、感触および青色のきれいさの3項目を評価する。なお、評価結果を見易くするため、以下の表5では評価の平均値の値によってつぎの記号により示す。
【0040】
【表5】

【0041】
[実施例6:乳化型マスカラ]
以下の表6に示す各成分により、乳化型マスカラを調製した。
【表6】

【0042】
成分(1)〜(5)を混合し、75℃に加熱して溶解し、均一化する。この混合物に対して成分(6)の青色着色薄片を添加し、コロイドミルを通して均一に分散させる。さらに(7)の成分を混合、溶解して75℃に加熱し、加熱溶解均一化した。混合液に成分(8)〜(11)を添加して乳化し、冷却して、乳化型マスカラを得た。
【0043】
[比較例2]
実施例6の処方中、成分(6)の青色着色薄片を比較例1の群青粒子に代え、それ以外は実施例6と同様にして作製した。
実施例6と比較例2との官能試験の結果を表7にまとめて示す。
【0044】
【表7】

【0045】
表7より、本発明に係る乳化型マスカラであれば、感触、青色のきれいさに優れていることが判る。
【0046】
[実施例7:アイシャドー]
以下の表8に示す各成分により、アイシャドーを調製した。
【表8】

【0047】
上記成分(1)〜(4)をヘンシェルミキサーで混合し、これに成分(5)〜(9)を加熱混合したものを吹き付け混合した後粉砕した。これを所定の中皿に吐出して、アイシャドーを得た。
【0048】
[比較例3]
実施例7の処方中、成分(3)の青色着色薄片を比較例1の群青粒子に代え、それ以外は実施例7と同様にしてアイシャドーを作製した。
実施例7と比較例3との官能試験の結果を表9にまとめて示す。
【0049】
【表9】

【0050】
表9より、本発明に係るアイシャドーであれば、感触、青色のきれいさに優れていることが判る。
【0051】
[実施例8:アイライナー]
以下の表10に示す各成分により、アイライナーを調製した。
【表10】

【0052】
成分(1)〜(7)を85℃に加熱し、攪拌混合した後、室温まで冷却し、気密性の筆つき容器に充填してアイライナーを調製した。
【0053】
[比較例4]
実施例8の処方中、成分(4)の青色着色薄片を比較例1の群青粒子に代え、それ以外は実施例8と同様にしてアイライナーを作製した。
実施例8と比較例4との官能試験の結果を表11にまとめて示す。
【0054】
【表11】

【0055】
表11より、本発明に係るアイライナーであれば、感触、青色のきれいさに優れていることが判る。
【0056】
[実施例9:ネイルカラー]
以下の表12に示す成分によりネイルカラーを調製した。
【表12】

【0057】
成分(1)〜(4)および成分(9)〜(10)をローラーミルで混練した後、成分(5)〜(8)を添加し溶融拡散、均一分散させ、所定の容器に充填してネイルカラーを得た。
【0058】
[比較例5]
実施例9の処方中、成分(10)の青色着色薄片を比較例1の群青粒子に代え、それ以外は実施例9と同様にしてネイルカラーを作製した。
実施例9と比較例5との官能試験の結果を表13にまとめて示す。
【0059】
【表13】

【0060】
表13より、本発明に係るネイルカラーであれば、感触、青色のきれいさに優れていることが判る。
【0061】
[実施例10:油性スティックファンデーション]
以下の表14に示す各成分により、油性スティックファンデーションを調製した。
【表14】

【0062】
成分(9)〜(15)を85℃で溶解し、この溶液に成分(1)〜(8)を添加し、ディスパーで混合した後、コロイドミルで分散させた。その後成分(16)を添加し、脱気後70℃で容器に流し込み冷却し、油性スティックファンデーションを得た。
【0063】
[実施例11:頬紅]
以下の表15に示す各成分により、頬紅を調製した。
【表15】

【0064】
成分(1)〜(4)を成分(7)の一部に加え、ローラーで処理して、顔料部を調製した。成分(5)、(6)、(7)の残り、(8)および(9)を90℃に加熱溶解し前記顔料部を加え、ホモミキサーで均一に分散させ、分散後に所定の容器に充填して目的の頬紅を得た。
【0065】
[実施例12:口紅]
以下の表16に示す各成分により、口紅を調製した。
【表16】

【0066】
上記成分(1)〜(4)を85℃で加熱溶解させ、これに成分(5)〜(7)を加え攪拌混合した後、さらに成分(8)を混合攪拌し、その後所定の容器に充填して口紅を得た。
【0067】
[実施例13:青塗料組成物]
以下の表17および18に示す各成分により、塗料組成物を調製した。
まず、下記表17に示す成分を、ペイントシェーカーを用いて60分間分散させ、分散ビヒクルを作製した。
【表17】

この分散ビヒクルにさらに、下記表18に示す成分(5)および(6)を添加して攪拌し、青色の塗料組成物を作製した。
【表18】

【0068】
[比較例6]
実施例13に示す塗料組成物のうち、成分(4)の青色着色薄片15.6質量部を比較例1の群青粒子4.7質量部に代え、それ以外は実施例13と同様にして、青色塗料を作製した。
【0069】
実施例13と比較例6の青色塗料をそれぞれ、均一分散性、また、目視で色感を判定した。その結果を表19に示した。
【0070】
【表19】

【0071】
表19により、本発明に係る青色塗料は、均一分散性に優れ、光輝感、透明感のある非常にきれいな青色であることがわかる。
【0072】
[実施例14:樹脂組成物および樹脂成形物」
メタクリル酸メチル共重合ビーズ98質量%、実施例3の青色着色薄片2質量%をヘンシェルミキサーで攪拌混合して樹脂組成物を得た。これを用いて押し出し機で厚み0.5mmのアクリル樹脂成形物を作製した。この樹脂成形物は光輝感のある澄んだ青色を呈した。
【0073】
[比較例7]
実施例14で用いた青色着色薄片2質量%に代えて比較例1の群青粒子0.6質量%使用した以外は実施例14と同様にして、厚み0.5mmのアクリル樹脂成形物を作製した。この樹脂成形物は光輝感のない、マット調の青色を呈した。
実施例14及び比較例7から、本発明に係る樹脂成形物は、光輝感、透明性のあるきれいな澄んだ青色を呈することが分かる。
【0074】
[実施例15:インキ組成物]
以下の表20に示す各成分を十分に混合し、青色インキを調製した。
【表20】

このインキ組成物を用いて白紙上に筆記したところ、非常にきれいな青色を呈する筆跡となった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の青色着色薄片は、化粧料、塗料、樹脂成形体、インキなどのフィラーとして利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な金属酸化物を母材とし、その内部に30〜3000nmの粒径の群青粒子を5〜60質量%分散して含有する青色着色薄片。
【請求項2】
5〜500μmの平均粒径、0.1〜5μmの平均厚さおよび5〜300の平均アスペクト比を有する請求の範囲第1項に記載の青色着色薄片。
【請求項3】
前記群青粒子を内包する母材は、二酸化ケイ素および酸化アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を主成分とするものである請求の範囲第1項または第2項に記載の青色着色薄片。
【請求項4】
群青粒子を分散した金属化合物溶液または金属酸化物ゾルを基材表面に塗布して塗膜を形成し、ついで塗膜を加熱して薄片状金属酸化物とし、これを前記基材より剥離することを特徴とする請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の青色着色薄片の製造方法。
【請求項5】
請求の範囲第1項〜第3項のいずれか1項に記載の青色着色薄片を含有する化粧料。
【請求項6】
請求の範囲第1項〜第3項のいずれか1項に記載の青色着色薄片を含有する塗料組成物。
【請求項7】
請求の範囲第1項〜第3項のいずれか1項に記載の青色着色薄片を含有する樹脂組成物。
【請求項8】
請求の範囲第1項〜第3項のいずれか1項に記載の青色着色薄片を含有するインキ組成物。

【国際公開番号】WO2005/028567
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【発行日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514091(P2005−514091)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013769
【国際出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】