説明

青銅の電気めっき

【課題】シアン化物を含有せず、均一でおよび光沢のある白色青銅堆積物が得られる電気めっき液を提供する。
【解決手段】電気めっき液は、1以上のスズイオン源と、1以上の銅イオン源と、メルカプトトリアゾールおよびメルカプトテトラゾールからなる群より選択される1以上のメルカプタンとを含む、組成物からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアン化物を含有しない電解質からの白色青銅の電気めっきに関する。特に、本発明は、均一な色および光沢を有する白色青銅堆積物を提供するための、シアン化物を含有しない電解質からの青銅の電気めっきに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な種類の電解質に基づくスズおよびスズ合金の堆積方法が、当該産業において公知であり、実際に広く使用されている。シアン化物電解質からのスズおよびスズ合金の堆積方法が一般的である。しかし、このような電解質は有毒であるため、それらの使用は環境の観点から問題となり、そのためこの数年、シアン化物を含有しない電解質、たとえば、5〜9のpH領域で使用されるピロリン酸塩またはシュウ酸塩に基づく電解質の開発が推進されている。しかし、このような方法は、遅い堆積速度などの経済面および技術面の両方の面で欠点を有する。
【0003】
これらの理由から、酸電解質中で二価のスズは金属スズに還元することができ、それによってより良好な堆積速度が得られ、また質的に同等の被覆を有することから、現在では、酸電解質からスズおよびスズ合金を堆積する方法を利用可能にする方向で、大部分の開発が進められている。しかし、このような方法は、銅含有率が少なくとも10%のいわゆる「純」青銅などの銅含有率の高いスズ/銅合金の堆積に限定される。たとえばスズと銅との間の電位差のために、二価のスズの酸化速度の方が速くなる場合があり、二価のスズは酸化されて酸電解質中で四価のスズとなる。四価の形態では、酸性環境においてスズの電解析出がもはやできない。これによって、2種類の金属の堆積が不均一になり、堆積速度が低下する。さらに、四価のスズに酸化することで、スラッジの形成が増加し、それによって、電解質の安定性が低下し、電解質の寿命が短縮することがある。このような汚染は、結合を不十分にしたり、被覆中に孔を形成したりすることもある。
【0004】
このような方法の欠点のために、電解析出される青銅被覆は一般的ではない。しかし、青銅の電着は、電子部品を被覆するためのエレクトロニクス、あるいは機械工学、および軸受のオーバーレイおよび摩擦層を被覆するための処理技術などのいくつかの技術分野において徐々に重要になってきている。また、白色青銅が、ニッケルの代用品として堆積されることがある。場合により、青銅被覆は、高価な銀またはアレルギーの誘因となるニッケルの代用品として宝飾品に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第20060137991号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
米国特許出願公開第20060137991号明細書には、スズおよび銅のイオン、アルキルスルホン酸、ならびにα−ナフトールエトキシレートおよびノニルフェノールエトキシレートの芳香族湿潤剤を含有する酸電解質から青銅被覆を堆積する方法が開示されている。この電解質はシアン化物を含有しないが、シアン化物を含有せず、均一で光沢のある白色青銅堆積物が得られる電解質がなお必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、一つの組成物は、1以上のスズイオン源と、1以上の銅イオン源と、メルカプトトリアゾールおよびメルカプトテトラゾールからなる群より選択される1以上のメルカプタンとを含む。この水性スズ/銅合金電気めっき組成物は、シアン化物を含有せず、環境に優しい。スズイオン源および銅イオン源、ならびにメルカプタンに加えて、本発明の組成物は1以上の従来の添加剤を含むことができる。
【0008】
別の一態様において、一つの方法は、1以上のスズイオン源と、1以上の銅イオン源と、メルカプトトリアゾールおよびメルカプトテトラゾールからなる群より選択される1以上のメルカプタンとを含む組成物に基体を接触させるステップと;その基体上に合金を堆積させるステップとを含む。この方法によって堆積された合金は、基体上に安定で均一で光沢のある白色青銅堆積物を形成する。
【0009】
この白色青銅は、電子部品を被覆するためにエレクトロニクス産業において使用することができ、軸受のオーバーレイおよび摩擦層を被覆するための処理技術に使用することもできる。白色青銅は、宝飾品に使用したり、ニッケルの代用品として使用したりすることもできる。プラスチックも、この白色青銅でめっきすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書全体で使用される場合、文脈上明確に他の意味を示すのでなければ、下記の略語は以下の意味を有する:℃=摂氏温度、g=グラム、L=リットル、mL=ミリリットル、mm=ミリメートル、A=アンペア、dm=デシメートル、μm=ミクロン=マイクロメートル、およびppm=百万部当たりの部数;用語「電気めっき」、「めっき」、および「堆積」は本明細書全体で互いに交換可能に使用され;用語用語「皮膜」および「層」は本明細書全体で互いに交換可能に使用される。すべての数値範囲は、端点の値を含み、そのような数値範囲が最終的に100%となると論理的に見なされる場合を除けば、あらゆる順序で組み合わせることができる。
【0011】
組成物は、1以上のスズイオン源、1以上の銅イオン源、メルカプトトリアゾールおよびメルカプトテトラゾールからなる群より選択される1以上のメルカプタンとを含む。本発明の水性電解質組成物は、シアン化物を含有せず、環境に優しい。
【0012】
スズ源としては、メタンスルホン酸第一スズなどの第一スズ有機スルホン酸塩、硫酸第一スズ、グルコン酸第一スズ、クエン酸第一スズ、乳酸第一スズ、ならびに臭化第一スズ、塩化第一スズ、塩化第一スズ二水和物などの第一スズハロゲン化物が挙げられが、これらに限定されるものではない。このような第一スズ塩の多くは市販されている。Sn2+の重量に変換される量を基準にした第一スズ塩の含有量は、たとえば1g/L〜150g/L、またはたとえば5g/L〜30g/Lの範囲内であってよい。
【0013】
銅イオン源としては、第一銅塩または第二銅塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。第一銅塩(Cu)としては、酸化第一銅、塩化第一銅、臭化第一銅、およびヨウ化第一銅が挙げられるが、これらに限定されるものではない。第二銅塩(Cu2+)としては、メタンスルホン酸第二銅などの第二銅有機スルホン酸塩、硫酸第二銅、塩化第二銅、臭化第二銅、ヨウ化第二銅、酸化第二銅、リン酸第二銅、ピロリン酸第二銅、酢酸第二銅、クエン酸第二銅、グルコン酸第二銅、酒石酸第二銅、乳酸第二銅、コハク酸第二銅、スルファミン酸第二銅、ホウフッ化第二銅、ギ酸第二銅、およびケイフッ化第二銅が挙げられるが、これらに限定されるものではない。CuまたはCu2+の重量に変換される量を基準にした銅塩の含有量は、0.5g/L〜150g/L、またはたとえば10g/L〜50g/Lの範囲内であってよい。
【0014】
メルカプタンとしては、メルカプトトリアゾールおよびメルカプトテトラゾールからなる群より選択される化合物が挙げられる。このようなメルカプタンは、文献から調製することができるし、市販のものを入手することもできる。理論によって束縛しようとするものではないが、このようなメルカプタンは、スズおよび銅のイオンを低い酸化状態で安定化させ、スズ/銅合金の均一性を改善すると考えられる。このようなメルカプタンは、組成物中に0.001g/L〜100g/L、またはたとえば0.01g/L〜50g/L、またはたとえば1g/L〜10g/Lの量で含まれる。
【0015】
メルカプトトリアゾールは、下記の一般式を有する:
【0016】
【化1】

【0017】
式中、Mは、水素、NH、ナトリウム、またはカリウムであり、RおよびRは独立に、置換または非置換の(C〜C18)アルキル、あるいは置換または非置換の(C〜C10)アリールである。置換基としては、アルコキシ、フェノキシ、ハロゲン、ニトロ、アミノ、スルホ、スルファミル、置換スルファミル、スルホニルフェニル、スルホニル−アルキル、フルオロスルホニル、スルホンアミドフェニル、スルホンアミド−アルキル、カルボキシ、カルボキシレート、ウレイド、カルバミル、カルバミル−フェニル、カルバミルアルキル、カルボニルアルキル、およびカルボニルフェニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。このようなメルカプトトリアゾールとしては、5−エチル−3−メルカプト−4−フェニル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−5−ペンチル−4−フェニル−1,2,4−トリアゾール、4,5−ジフェニル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−フェニル−5−ウンデシル−1,2,4−トリアゾール、4,5−ジエチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−エチル−3−メルカプト−5−ペンチル−1,2,4−トリアゾール、4−エチル−3−メルカプト−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール、5−p−アミノフェニル−4−エチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−p−アセトアミドフェニル−4−エチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−p−カプロンアミドフェニル−4−エチール−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、および4−エチル−5−p−ラウロアミドフェニル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
メルカプトテトラゾールは下記の一般式を有する:
【0019】
【化2】

【0020】
式中、Mは、水素、NH、ナトリウム、またはカリウムであり、Rは、置換または非置換の(C〜C20)アルキル、あるいは置換または非置換の(C〜C10)アリールである。置換基としては、アルコキシ、フェノキシ、ハロゲン、ニトロ、アミノ、置換アミノ、スルホ、スルファミル、置換スルファミル、スルホニルフェニル、スルホニル−アルキル、フルオロスルホニル、スルホアミドフェニル、スルホンアミド−アルキル、カルボキシ、カルボキシレート、ウレイドカルバミル、カルバミル−フェニル、カルバミルアルキル、カルボニルアルキル、およびカルボニルフェニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。このようなメルカプトテトラゾールとしては、1−(2−ジメチルアミノエチル)−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール、1−(2−ジエチルアミノエチル)−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール、1−(3−メトキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、1−(3−ウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、1−((3−N−カルボキシメチル)−ウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、1−((3−N−エチルオキサルアミド)フェニル)−5−メルカプトテトラゾール、1−(4−アセトアミドフェニル)−5−メルカプト−テトラゾール、および1−(4−カルボキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
典型的には、メルカプトテトラゾールが本発明のスズ/銅合金組成物中に使用される。より典型的には、Rが置換または非置換のアミノ置換基を含むメルカプトテトラゾールが本発明の組成物中に含まれる。
【0022】
本発明の組成物は、場合により1以上の添加剤を含むこともできる。このような添加剤としては、界面活性剤または湿潤剤、錯化剤またはキレート剤、酸化防止剤、光沢剤、結晶成長抑制剤、緩衝剤、ならびに導電剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
界面活性剤または湿潤剤としては、1以上のアルキル基を含有する脂肪族アルコールのエチレンオキシド(「EO」)および/またはプロピレンオキシド(「PO」)誘導体、あるいは芳香族アルコールのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。脂肪族アルコールは、飽和していても不飽和であってもよい。このような脂肪族および芳香族のアルコールは、たとえばサルフェート基またはスルホネート基などでさらに置換されていてもよい。好適な湿潤剤としては、12モルのEOを含有するエトキシル化ポリスチレン化フェノール、5モルのEOを含有するエトキシル化ブタノール、16モルのEOを含有するエトキシル化ブタノール、8モルのEOを含有するエトキシル化ブタノール、12モルのEOを含有するエトキシル化オクタノール、12モルのEOを含有するエトキシル化オクチルフェノール、エトキシル化/プロポキシル化ブタノール、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー、8モルまたは13モルのEOを含有するエトキシル化β−ナフトール、10モルのEOを含有するエトキシル化β−ナフトール、10モルのEOを含有するエトキシル化ビスフェノールA、13モルのEOを含有するエトキシル化ビスフェノールA、30モルのEOを含有する硫酸化エトキシル化ビスフェノールA、および8モルのEOを含有するエトキシル化ビスフェノールAが挙げられるが、これらに限定されるものではない。通常、このような非イオン性界面活性剤または湿潤剤は0.1g/L〜50g/L、好ましくは0.5g/L〜10g/Lの量で加えられる。
【0024】
錯化剤またはキレート剤としては、限定するものではないが、カルボン酸およびその塩が挙げられ、たとえば、限定するものではないが、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、およびリンゴ酸などのジカルボン酸、限定するものではないが、クエン酸、およびトリカルバリル酸などのトリカルボン酸、限定するものではないが、フェニル酢酸、安息香酸、およびアニス酸などの芳香族カルボン酸、ならびに限定するものではないが、イミノジ酢酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン−ジコハク酸、およびジエチレントリアミン五酢酸などのアミノカルボン酸、ピコリン酸、ジピコリン酸、ピラジンカルボン酸、およびピラジンジカルボン酸などのN−複素環式カルボン酸が挙げられる。上記酸の塩を使用することもできる。このような塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、およびリチウム塩などのアルカリ金属塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような錯化剤またはキレート剤は、10g/L〜100g/L、またはたとえば15g/L〜50g/Lの量で組成物中に含まれる。
【0025】
スズを可溶性の二価の状態に維持するのを補助するために、酸化防止剤を本発明の組成物に加えることができる。このような酸化防止剤としては、没食子酸および酢酸などのカルボン酸、クレゾール、ヒドロキノン、ヒドロキノン−スルホン酸、ならびにレソルシノール、カテコール、およびピロカテコール(pyrocatechole)などのヒドロキシル化芳香族化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような酸化防止剤は0.1g/l〜5g/Lの量で組成物中に含まれる。
【0026】
第一スズのスズの酸化を最小限にするのに有用となりうる他の化合物としては、非置換および置換のベンゼンジオール、ナフタレンジオール、アントラセンジオール、またはそれらの混合物などの芳香族ジオールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換ベンゼンジオールおよびナフタレンジオール上に存在しうる置換基としては、最大12個の炭素原子を有するアルキル、クロロなどのハロゲン、シクロヘキシルなどのシクロアルキル、およびフェニルなどのアリールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。芳香族ジオールとしては、1,2−ベンゼンジオール、メチル−1,4−ベンゼンジオール、シクロヘキシル−1,4−ベンゼンジオール、フェニル−1,4−ベンゼンジオール、1,2−ナフタレンジオール、および1,4−ナフタレンジオールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。芳香族ジオールは、0.05g/L〜10g/Lの量で組成物中に含むことができる。
【0027】
本発明のスズ/銅合金組成物中に場合により加えることができる光沢剤としては、クロロベンズアルデヒドなどの芳香族アルデヒド、ベンザルアセトンなどの芳香族アルデヒド誘導体、およびアセトアルデヒドやグルタルアルデヒドなどの脂肪族アルデヒドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の好適な光沢剤としては、硝酸ビスマス、硝酸コバルト、塩化アンチモニル、およびセレン酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような光沢剤は0.5g/L〜3g/Lの量で組成物中に含まれる。
【0028】
導電剤は、電気めっき中に組成物中の好適な電流を維持するために電解質組成物中に含むことができる。このような導電剤としては、硫酸ナトリウムなどのアルカリ金属硫酸塩、メタンスルホン酸ナトリウムなどのアルカリ金属アルカンスルホン酸塩、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムなどのアルカリ金属塩化物、硫酸アンモニウム、メタンスルホン酸、硫酸、クエン酸、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸アンモニウムなどの希釈剤に溶解性のクエン酸塩、ラクテート、グルコン酸ナトリウムなどのグルコネート、ピロリン酸カリウム、あるいはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような導電剤は、組成物のpHを維持するのにも役立つ。導電剤は、たとえば5g/L〜300g/L、またはたとえば20g/L〜150g/Lの量で使用される。
【0029】
結晶成長抑制剤は、堆積物の外観および動作電流密度範囲をさらに改善するために加えることができる。このような結晶成長抑制剤としては、ポリエトキシル化アミンのジェファーミン(JEFFAMINE)T−403またはトリトン(TRITON)RWなどのアルコキシレート、トリトンQS−15などの硫酸化アルキルエトキシレート、ならびにゼラチンまたはゼラチン誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような結晶成長抑制剤の量は、0.01〜20mL/L、またはたとえば0.5〜8mL/L、またはたとえば1〜5mL/Lの範囲である。
【0030】
他の結晶成長抑制剤としては、1ppm〜10ppmの量の金属が挙げられる。このような金属としては、ビスマス、アンチモン、銀、インジウム、テルル、セレン、鉄、コバルト、亜鉛、およびクロムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。鉄、コバルト、クロム、および亜鉛が使用される場合、電解質のpHは8〜10の範囲内である。これらの金属は、それらのイオンの形態で電解質中に加えられ、それらの水溶性塩として電解質に加えられる。
【0031】
使用できる銀塩としては、アルカンスルホン酸銀、硫酸銀、塩化銀、グルコン酸銀、クエン酸銀、乳酸銀、および硝酸銀が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ビスマス塩としては、硝酸ビスマス、酢酸ビスマス、および酒石酸ビスマスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。インジウム塩としては、塩化インジウム、硫酸インジウム、およびアルカンスルホン酸インジウムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アンチモン塩としては、乳酸アンチモンおよび酒石酸アンチモンカリウムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。典型的には、セレンおよびテルルはそれらの二酸化物として加えられる。鉄塩としては、臭化第二鉄および無水塩化第二鉄が挙げられるが、これらに限定されるものではない。コバルト塩としては、硝酸第一コバルト、臭化第一コバルト、および塩化第一コバルトが挙げられるが、これらに限定されるものではない。亜鉛塩としては、乳酸亜鉛および硝酸亜鉛が挙げられるが、これらに限定されるものではない。クロム塩としては、臭化第一クロム、塩化第一クロムおよびギ酸第一クロムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
白色青銅二元合金は、5重量%〜60重量%のスズおよび40重量%〜95重量%の銅、またはたとえば10重量%〜40重量%のスズおよび60重量%〜90重量%の銅を含む。典型的には、酸性電解質から電気めっきされた白色青銅堆積物は、CuSnまたはCuSnなどの平衡構造および非平衡構造を有する。この白色青銅二元合金は、均一で白色で光沢のある色を有し、クロムなどの金属最上層を後電気めっき(post−electroplate)するのに役立つ。またこの二元合金は安定である。
【0033】
スズ/銅の二元合金に加えて、白色青銅の耐食性および耐摩耗性を改善するための三元合金を形成する量で前述の金属を加えることができる。典型的には、第3の金属は、0.5g/L〜100g/L、またはたとえば1g/L〜50g/L、またはたとえば5g/L〜20g/Lの量で組成物中に含まれる。このような三元合金としては、スズ/銅/銀、スズ/銅/ビスマス、スズ/銅/アンチモン、スズ/銅/インジウム、スズ/銅/コバルト、およびスズ/銅/亜鉛が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本発明の三元合金は、10重量%〜30重量%のスズ、30重量%〜65重量%の銅、および5重量%〜60重量%の第3の金属を含む。典型的には、この三元合金は、15重量%〜25重量%のスズ、50重量%〜60重量%の銅、および15重量%〜45重量%の第3の金属を含む。本発明の三元合金は、均一で光沢のある白色の外観を有し、安定である。
【0035】
0.01μm〜20μm、またはたとえば0.1μm〜10μm、またはたとえば1μm〜5μmの範囲の白色青銅皮膜を電気めっきするのに十分な時間、基体と電解質組成物を接触させる。複合基体を電解質組成物浴中に浸漬する場合は、電解質組成物を垂直適用によって適用してもよいし、水平電気めっきなどのように電解質組成物を基体上に噴霧することもできる。電気めっきの他の例としては、静止めっき、バレルめっき、およびフープめっきやジェットめっきなどの高速めっきが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
カソード電流密度は0.01A/dm〜20A/dmの範囲内とすることができる。この範囲は、使用される方法に応じて変動させることができる。たとえば静止めっきの場合、電流密度は0.5A/dm〜5A/dm、またはたとえば1A/dm〜3A/dm2の範囲とすることができる。バレルめっきでは、電流密度は0.01A/dm〜1A/dm、またはたとえば0.1A/dm〜0.5A/dmの範囲とすることができる。アノードは、可溶性アノードであっても不溶性アノードであってもよい。可溶性アノードの一例はスズ電極である。不溶性アノードの例は二酸化イリジウムまたは二酸化白金である。他の種類の可溶性アノードおよび不溶性アノードも好適である。電流を発生させるために、あらゆる好適な電源を使用することができる。その多くは当業者に周知である。
【0037】
めっき温度は、15℃〜100℃、またはたとえば20℃〜50℃の範囲とすることができる。電気めっき組成物は撹拌することができる。撹拌する場合、撹拌は、カソードを振動させることによって、またはポンピングによる液体の流動化、アノードの回転、または撹拌装置によって行われる。
【0038】
電解質のpHは0〜10の範囲である。典型的にはpHの範囲は1〜8である。より典型的には、pHは2〜5の範囲である。
【0039】
基体としては、鉄、鉄合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、宝飾品、電子部品、およびプラスチックが挙げられるが、これらに限定されるものではない。電子部品としては、コネクタ、リードフレーム、パッケージング、オプトエレクトロニクス部品、およびプリント配線板が挙げられるが、これらに限定されるものではない。電解質組成物でめっきできるプラスチックとしては、ポリアニリンおよびポリチオフェンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。導電性フィラーを含むポリエチレン、ポリイミド、ポリウレタン、アクリル樹脂、およびエポキシ樹脂などのプラスチックも電解質組成物でめっきすることができる。
【0040】
以下の実施例は、本発明の実施態様をさらに説明することを意図するものであり、本発明の範囲の限定を意図するものではない。
【0041】
実施例1
以下の水性電解質組成物を調製する。
【0042】
【表1】

【0043】
5つの銅インゴットを、上記水性電解質が入った5つの別々のハルセルに入れる。pHを1に維持し、温度を30℃に維持する。各ハルセル中のアノードは二酸化白金の不溶性アノードである。銅インゴットおよびアノードを従来の整流器に接続する。
【0044】
10A/dmの電流密度で電気めっきを行う。それぞれが20μmの白色青銅層で被覆されるまで、銅インゴットに電気めっきを行う。白色青銅めっきがされた銅インゴットを脱イオン水で洗浄し、風乾する。各インゴッド上の白色青銅被覆は、均一で光沢のある白色を有すると予想される。
【0045】
実施例2
以下の水性電解質組成物を調製する。
【0046】
【表2】

【0047】
5つの銅インゴットを、上記水性電解質が入った5つの別々のハルセルに入れる。pHを1未満に維持し、温度を30℃に維持する。各ハルセル中のアノードは二酸化白金の不溶性アノードである。銅インゴットおよびアノードを従来の整流器に接続する。
【0048】
5A/dmの電流密度で電気めっきを行う。それぞれが10μmの白色青銅層で被覆されるまで、銅インゴットに電気めっきを行う。白色青銅めっきがされた銅インゴットを脱イオン水で洗浄し、風乾する。各インゴッド上の白色青銅被覆は、均一で光沢のある白色を有すると予想される。
【0049】
実施例3
以下の水性電解質組成物を調製する。
【0050】
【表3】

【0051】
5つのニッケルインゴットを、上記水性電解質が入った5つの別々のハルセルに入れる。pHを2に維持し、温度を40℃に維持する。各ハルセル中のアノードは二酸化白金の不溶性アノードである。ニッケルインゴットおよびアノードを従来の整流器に接続する。
【0052】
2A/dmの電流密度で電気めっきを行う。それぞれが8μmの白色青銅層で被覆されるまで、ニッケルインゴットに電気めっきを行う。白色青銅めっきがされたニッケルインゴットを脱イオン水で洗浄し、風乾する。各インゴッド上の白色青銅被覆は、均一で光沢のある白色を有すると予想される。
【0053】
実施例4
以下の水性電解質組成物を調製する。
【0054】
【表4】

【0055】
5つのポリアニリン板を、上記水性電解質が入った5つの別々のハルセルに入れる。pHを3に維持し、温度を50℃に維持する。各ハルセル中のアノードは二酸化白金の不溶性アノードである。ポリアニリン板およびアノードを従来の整流器に接続する。
【0056】
5A/dmの電流密度で電気めっきを行う。それぞれが10μmの白色青銅層で被覆されるまで、板に電気めっきを行う。白色青銅めっきがされたポリアニリン板を脱イオン水で洗浄し、風乾する。各板上の白色青銅被覆は、均一で光沢のある白色を有すると予想される。
【0057】
実施例5
以下の水性電解質を調製する。
【0058】
【表5】

【0059】
5つの鋼インゴットインゴットを、上記水性電解質が入った5つの別々のハルセルに入れる。pHを1に維持し、温度を20℃に維持する。各ハルセル中のアノードは二酸化白金の不溶性アノードである。鋼インゴットおよびアノードを従来の整流器に接続する。
【0060】
15A/dmの電流密度で電気めっきを行う。それぞれが20μmの白色青銅層で被覆されるまで、鋼インゴットに電気めっきを行う。白色青銅がめっきされた鋼インゴットを脱イオン水で洗浄し、風乾する。各インゴッド上の白色青銅被覆は、均一で光沢のある白色を有すると予想される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のスズイオン源と、1以上の銅イオン源と、メルカプトトリアゾールおよびメルカプトテトラゾールからなる群より選択される1以上のメルカプタンとを含む、組成物。
【請求項2】
シアン化物を含有しない、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記メルカプトトリアゾールが下記式:
【化1】

(式中、Mは、水素、NH、ナトリウム、またはカリウムであり、RおよびRは独立に、置換または非置換の(C〜C18)アルキル、あるいは置換または非置換の(C〜C10)アリールである)
を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記メルカプトテトラゾールが下記式:
【化2】

(式中、Mは、水素、NH、ナトリウム、またはカリウムであり、Rは、置換または非置換の(C〜C20)アルキル、あるいは置換または非置換の(C〜C10)アリールである)
を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記メルカプタンが0.001g/L〜100g/Lの範囲である、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
1以上の第3の金属源をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
a)1以上のスズイオン源と、1以上の銅イオン源と、メルカプトトリアゾールおよびメルカプトテトラゾールからなる群より選択される1以上のメルカプタンとを含む組成物に基体を接触させるステップと;
b)前記組成物に電流を発生させて、銅とスズとを含む合金を前記基体に堆積させるステップとを含む、方法。
【請求項8】
電流密度が0.01A/dm〜20A/dmの範囲である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記メルカプタンが0.001g/L〜100g/Lの範囲内である、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記基体が、電子デバイスまたは宝飾品の部品である、請求項11記載の方法。

【公開番号】特開2009−185381(P2009−185381A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−314021(P2008−314021)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】