説明

静止型流体混合装置

【課題】集合流路における圧力損失を低減させて、加圧ポンプの電力消費量の低減さらには小型化された静止型流体混合装置を提供する。
【解決手段】混合ユニット12を、ケーシング体11内に同心円的に配設するとともに、ケーシング11体の内周面に沿わせて拡散・混合流路60の終端部と集合流路の始端部を連通させた静止型流体混合装置であって、混合ユニット12は、中央部に流体の流入口を形成した円板状の第1拡散エレメント30に、円板状の第2拡散エレメント40を対面させて配置して、両拡散エレメントの間に拡散・混合流路60を形成する一方、第2拡散エレメント40の背面側に、中央部に流体の流出口を形成した円板状の集合エレメント50を対面させて配置して、集合エレメント50に集合流路70を形成して構成し、集合流路70は、周縁部から中央部の流出口に向けて直状かつ同一幅に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を混合する静止型流体混合装置、具体的には、例えば、液体と液体、液体と気体、粉体と液体、を超微細化かつ均一化して混合する静止型流体混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静止型流体混合装置の一形態として、特許文献1に開示されたものがある。すなわち、特許文献1には、中央部に流体の流入口を形成した円板状の第1拡散エレメントに、円板状の第2拡散エレメントを対向させて配置するとともに、両拡散エレメントの間に中央部側の流入口から流入した流体を周縁部側に向けて半径方向に流動させて拡散・混合する拡散・混合流路を形成した拡散・混合ユニットと、中央部に流体の流出口を形成した円板状の第1集合エレメントに、円板状の第2集合エレメントを対向させて配置すると共に、両集合エレメントの間に周縁部側から流入した流体を中央部側に向けて半径方向に流動させて集合・混合する集合・混合流路を形成した集合・混合ユニットとを具備し、拡散・混合流路の終端部と集合・混合流路の始端部を接続した静止型流体混合装置が開示されている。
【0003】
そして、第1・第2拡散エレメントの対向面と第1・第2集合エレメントの対向面には適切な同一の深さと大きさの六角形の凹部群をハニカム構造に形成するとともに、対向する各エレメントを相互に連通するように位置を違えて配置して、拡散・混合流路と集合・混合流路において、流体が蛇行しながら合流と分流(分散)を繰り返しながら半径方向に流動するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−52034
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に開示された静止型流体混合装置は、中央部側の流入口から流入した流体を周縁部側に向けて半径方向に流動させて拡散・混合する拡散・混合流路と、周縁部側から流入した流体を中央部側に向けて半径方向に流動させて集合・混合する流路構造を同様に形成しているために、混合分散機能の高い拡散・混合流路と比べて,集合・混合側流路は分散数がはるかに少ないにもかかわらず拡散・混合流路と同程度の圧力損失が生じていた。そのため,拡散・混合側エレメントと集合・混合側エレメント全体の圧力損失をできるだけ削減して、静止型流体混合装置に流体を加圧して供給する加圧ポンプの電力消費量の低減さらには装置自体の小型化(ユニット数低減)が望まれていた。
【0006】
そこで、本発明は、集合・混合流路における圧力損失を低減させて、加圧ポンプの電力消費量の低減さらには装置自体の小型化(ユニット数低減)を図ることができる静止型流体混合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明に係る静止型流体混合装置は、中央部側の流入口から流入した流体を周縁部側に向けて半径方向に流動させて拡散・混合する拡散・混合流路と、周縁部側から流入した流体を中央部側の流出口に向けて半径方向に流動させて集合させる集合流路とを有する混合ユニットを、ケーシング体内に同心円的に配設するとともに、ケーシング体の内周面に沿わせて拡散・混合流路の終端部と集合流路の始端部を連通させた静止型流体混合装置であって、混合ユニットは、中央部に流体の流入口を形成した円板状の第1拡散エレメントに、円板状の第2拡散エレメントを対面させて配置して、両拡散エレメントの間に拡散・混合流路を形成する一方、第2拡散エレメントの背面側に、中央部に流体の流出口を形成した円板状の集合エレメントを対面させて配置して、集合エレメントに集合流路を形成して構成し、集合流路は、周縁部から中央部の流出口に向けて直状かつ同一幅に形成したことを特徴とする。
【0008】
かかる静止型流体混合装置では、集合流路を集合エレメントの周縁部から中央部の流出口に向けて直状かつ同一幅に形成しているため、拡散・混合流路を流動した流体を、集合流路を通して流出口に向けて直状に速やかに流動させることができる。そのため、集合流路においては流体の流線が大きく乱れことがなくなり、流体の圧力にばらつきが発生しにくくなる。その結果、流体圧力が均一化されて流路抵抗が低下する。流路抵抗が低下すると圧力損失が低減されて(圧力損失低減効果が得られて)、供給する流体の圧力を高圧にしなくても処理量を増大させることができる。圧力損失が低減されると、低圧で流体混合処理を行なうことができるようになって、シール部における流体漏れ防止を図るためのガスケット等のシール部材の使用が大幅に低減される。その結果、シール部材の交換などの作業が不要、ないしは大幅に削減されるため、静止型流体混合装置自体のメンテナンス作業の簡易化と迅速化を図ることができて、作業効率を向上させることができる。
【0009】
請求項2記載の発明に係る静止型流体混合装置は、請求項1記載の静止型流体混合装置であって、集合エレメントは、上流側半部を下流側半部よりも小径の円板状に形成して、上流側半部の外周部に拡散・混合流路と連通する円形リング状の連通用凹部を形成し、上流側半部には周縁部から中央部の流出口に向けて直状かつ同一幅の流路形成用凹部を形成して、流路形成用凹部の開口面を第2拡散エレメントの背面により閉塞することで、連通用凹部と連通する集合流路を形成したことを特徴とする。
【0010】
かかる静止型流体混合装置では、拡散・混合流路と連通する円形リング状の連通用凹部に集合流路を連通させて形成しているため、拡散・混合流路から集合流路への流体の流動が円滑になされる。
【0011】
請求項3記載の発明に係る静止型流体混合装置は、請求項2記載の静止型流体混合装置であって、流路形成用凹部は、上流側半部に十字状に配置して形成したことを特徴とする。
【0012】
かかる静止型流体混合装置では、流路形成用凹部を上流側半部に十字状に配置して形成することで、集合流路を集合エレメントの円周廻りに均等に配置することができ、連通用凹部から最寄りの集合流路を通して流出口に流体を流出させることができる。
【0013】
請求項4記載の発明に係る静止型流体混合装置は、請求項2又は3記載の静止型流体混合装置であって、円筒状のケーシング体内に一つないしは複数の混合ユニットを同心円的に配設し、ケーシング体の両端部には側壁体を配設して、各側壁体の外側壁に接続体の基端部を係止するとともに、接続体の先端部をケーシング体の外周面に螺着して、隣接する各混合ユニットの流出口と流入口を連通させた状態にて両側壁体間にケーシング体を介して混合ユニットを挟持し、上流側の側壁体の中央部に形成した導入口には、近接する混合ユニットの流入口を連通させる一方、下流側の側壁体の中央部に形成した導出口には、近接する混合ユニットの流出口を連通させたことを特徴とする。
【0014】
かかる静止型流体混合装置では、ケーシング体の外周面に螺着した接続体を工具なしに螺脱して取り外すことにより、ケーシング体内に配設した混合ユニットの挟持を簡単に解除することができる。そのため、混合ユニットをケーシング体から容易に取り出すことができて、混合ユニットのメンテナンス作業を楽に行うことができる。また、反対の手順を辿ることで静止型流体混合装置を工具なしに簡単に組み立てることができる。
【0015】
請求項5記載の発明に係る静止型流体混合装置は、請求項4記載の静止型流体混合装置であって、流体としての液体と液体、液体と気体、ないしは粉体と液体の混合体を、上流側の側壁体の中央部に形成した導入口から導入させて、混合ユニットの拡散・混合流路と集合流路を通して流動させた後に、下流側の側壁体の中央部に形成した導出口から導出させるようにしたことを特徴とする。
【0016】
かかる静止型流体混合装置では、液体と液体、液体と気体、ないしは粉体と液体の混合体を、流体として上流側の側壁体の導入口から導入させて、混合ユニットの拡散・混合流路と集合流路を通して流動させた後に、下流側の側壁体の導出口から導出させることで、超微細化かつ均一化して混合することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、次のような効果が生起される。すなわち、本発明では、集合流路における圧力損失を低減させることができるため、静止型流体混合装置に流体を加圧して供給する加圧ポンプの電力消費量の低減さらには装置自体の小型化(ユニット数低減)を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る静止型流体混合装置の断面正面説明図。
【図2】本発明に係る静止型流体混合装置が具備する混合ユニットの正面断面分解説明図。
【図3】本発明に係る静止型流体混合装置が具備する混合ユニットの分解斜視説明図。
【図4】第1・第2拡散エレメントの側面説明図。
【図5】集合エレメントの側面説明図。
【図6】流体混合システムの概念説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る静止型流体混合装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。
[静止型流体混合装置]
図1に示す10は本発明に係る静止型流体混合装置であり、静止型流体混合装置10は、一方向(本実施形態では左右方向)に伸延する円筒状に形成したケーシング体11内に、一組ないしは複数組(本実施形態では五組)の混合ユニット12を同心円的に配設している。ケーシング体11の両端部には左・右側壁体13,14を配設して、各側壁体13,14の外側周縁部に左・右接続体15,16の基端部15a,16aを係止するとともに、左・右接続体15,16の先端部15b,16bをケーシング体11の外周面に螺着して、隣接する各混合ユニット12の流出口62と流入口32を連通させた状態にて、両側壁体13,14間にケーシング体11内にて同軸的に配列した混合ユニット12を挟持している。上流側の側壁体13の中央部には導入口17を形成して、導入口17には近接する混合ユニット12の流入口32を整合させて連通させる一方、下流側の側壁体14の中央部には導出口18を形成して、導出口18には近接する混合ユニット12の流出口62を整合させて連通させている。
【0020】
左・右側壁体13,14は、ケーシング体11の内径よりもやや大径の円板状に形成し、内側半部にケーシング体11への内嵌部13a,14aを形成する一方、外側半部の周縁部に左・右接続体15,16の基端部15a,16aを係止する段付き凹条の係止用凹部13b,14bを形成している。上流側の側壁体13の中央部に形成した導入口17には上流側連通連結体19を連通連結する一方、下流側の側壁体14の中央部に形成した導出口18には下流側連通連結体20を連通連結している。
【0021】
左・右接続体15,16は相互に左右対称に形成している。すなわち、左・右接続体15,16はリング板状に形成した基端部15a,16aと、基端部15a,16aの外周縁部に連設した円筒状の先端部15b,16bとから一体成形して、先端部15b,16bの内周面に雌ネジ部15c,16cを形成している。ケーシング体11の左右側端部には段付き凹部11a,11bを形成するとともに、段付き凹部11a,11bの外周面に雌ネジ部15c,16cを螺着する雄ネジ部11c,11dを形成している。
【0022】
混合ユニット12は、中央部に処理対象である流体R(図1において矢印で示す)の流入口32を形成した円板状の第1拡散エレメント30に、円板状の第2拡散エレメント40を対面させて配置して、両拡散エレメント30,40の間に拡散・混合流路60を形成する一方、第2拡散エレメント40の背面側に、中央部に流体Rの流出口62を形成した円板状の集合エレメント50を対面させて配置して、集合エレメント50に集合流路70を形成して構成している。
【0023】
すなわち、混合ユニット12は、中央部側の流入口32から流入した流体Rを周縁部側に向けて半径方向に流動させて拡散・混合する拡散・混合流路60と、周縁部側から流入した流体Rを中央部側の流出口62に向けて半径方向に流動させて集合させる集合流路70とを備えており、ケーシング体11の内周面に沿わせて拡散・混合流路60の終端部と集合流路70の始端部を連通させている。
【0024】
集合エレメント50は、図2及び図3に示すように、上流側半部52を下流側半部53よりも小径の円板状に形成して、上流側半部52の外周部に拡散・混合流路60と連通する円形リング状の連通用凹部54を形成し、上流側半部52には周縁部から中央部の流出口62に向けて直状かつ同一幅の流路形成用凹部55を形成して、流路形成用凹部55の開口面を第2拡散エレメント40の背面により閉塞することで、連通用凹部54と連通する集合流路70を形成している。流路形成用凹部55は、上流側半部52に側面視で十字状に配置している。つまり、円周方向に90度の間隔をあけて形成している。その結果、本実施形態では、流路形成用凹部55の開口面が第2拡散エレメント40の背面により閉塞されて形成される集合流路70は、周縁部から中央部の流出口62に向けて直状かつ同一幅の流路が十字状に形成されている。ここで、集合エレメント50の半径方向と直交する流路形成用凹部55の流路幅Wは、流出口62の半径rと下記の関係を有している。
【数1】

【0025】
このような関係を保つことにより、集合流路70の流路幅Wを可及的に広く形成するとともに、隣接する集合流路70を流動する流体Rが相互に干渉することなく流出口62に速やかに流入するようにしている。
【0026】
79はOリングであり、Oリング79はケーシング体11内において、左側壁体13と混合ユニット12との間、混合ユニット12,12同士の間、混合ユニット12と右側壁体14との間にそれぞれ配設してシール部を形成している。
【0027】
このように構成して、静止型流体混合装置10では、集合流路70を集合エレメント50の周縁部から中央部の流出口62に向けて直状かつ同一幅に形成しているため、拡散・混合流路60を流動した流体Rを、集合流路70を通して流出口62に向けて直状に速やかに流動させることができる。そのため、集合流路70においては流体Rの流線が大きく乱れことがなくなり、流体Rの圧力にばらつきが発生しにくくなる。その結果、流体圧力が均一化されて流路抵抗が低下する。流路抵抗が低下すると圧力損失が低減されて(圧力損失低減効果が得られて)、供給する流体の圧力を高圧にしなくても処理量を増大させることができる。圧力損失が低減されると、低圧で流体混合処理を行なうことができるようになって、シール部材としてのOリング79を配設したシール部における流体漏れ防止を図るためのOリング79の使用が大幅に低減される。その結果、シール部材の交換などの作業が不要、ないしは大幅に削減されるため、静止型流体混合装置自体のメンテナンス作業の簡易化と迅速化を図ることができて、作業効率を向上させることができる。
【0028】
拡散・混合流路60と連通する円形リング状の連通用凹部54に集合流路70を連通させて形成しているため、拡散・混合流路60から集合流路70への流体Rの流動が円滑になされる。そして、流路形成用凹部55を上流側半部52に十字状に配置して形成することで、集合流路70を集合エレメント50の円周廻りに均等に配置することができ、連通用凹部54から最寄りの集合流路70を通して流出口62に流体Rを流出させることができる。
【0029】
ケーシング体11の両端部に形成した段付き凹部11a,11bの外周面には雄ネジ部11c,11dを形成し、左・右接続体15,16の先端部15b,16bの内周面には雌ネジ部15c,16cを形成して、雄ネジ部11c,11dに雌ネジ部15c,16cを螺着した左・右接続体15,16は、工具なしに螺脱して取り外すことにより、ケーシング体11内に配設した混合ユニット12の挟持を簡単に解除することができる。そのため、混合ユニット12をケーシング体11から容易に取り出すことができて、混合ユニット12のメンテナンス作業を楽に行うことができる。また、反対の手順を辿ることで静止型流体混合装置10を工具なしに簡単に組み立てることができる。
【0030】
次に、静止型流体混合装置10の構成をより具体的に説明する。静止型流体混合装置10は、図1に示すように、ケーシング体11内に五組の混合ユニット12を同軸的にかつ直列的に配列させて収容して、各混合ユニット12の周縁部間にOリング79を介設している。この際、ケーシング体11の内周面と各混合ユニット12の外周面とは、隙間のない密着状態となしている。このように構成して、ケーシング体11内に配設した混合ユニット12内を流体Rが上流側である左側の導入口17側から下流側である右側の導出口18に蛇行しながら流動するようにしている。
【0031】
拡散・混合流路60は、図2〜図4に示すように、第1・第2拡散エレメント30,40の対向面にそれぞれ同形・同大の多数の凹部35,45を配列して形成して、各拡散エレメント30,40の凹部35,45の開口面を突き合わせ状に面接触させるとともに、相互に連通するように位置を違えて配置している。流体Rの流入口32を中心とする同一円周上に配置した各拡散エレメント30,40の凹部35,45の数は、中心部側から周縁部側に向けて漸次増大させて、流動方向である半径方向に分流数(分散数)を増大させている。
【0032】
また、集合流路70は、図2,図3及び図5に示すように、円板状の第2拡散エレメント40に、中央部に流体Rの流出口62を形成した円板状の集合エレメント50を対向させて配置するとともに、両エレメント40,50の間に周縁部側から流入した流体Rを中央部側に向けて半径方向に流動させて集合させるように形成している。最右側に配置した集合エレメント50の中央部に形成した流出口62は、右側壁体14の中央部に形成した導出口18に整合させて連通している。
【0033】
このように構成して、混合ユニット12では、第1・第2拡散エレメント30,40の凹部35,45の数は、中心部側から周縁部側に向けて漸次増大させているため、流体Rが合流する凹部35,45の数は周縁部側ほど増大するとともに、それに比例して数多く分流(分散)される。そのため、拡散・混合流路60においては流体Rにせん断力が作用して微細化される回数が流体Rの流動方向(周縁部側に向かう半径方向)に沿って漸次増大するようにしている。
【0034】
各混合ユニット12は、いずれも同様の構造であり、図2及び図3に示すように、対向配置された2枚の板状(略円板形状)の部材、より具体的には円板形状の第1・第2拡散エレメント30,40と、対向配置された板状(略円板形状)の部材、より具体的には円板形状の集合エレメント50とを備えている。
【0035】
各混合ユニット12の上流側半部を形成する2枚の第1・第2拡散エレメント30,40のうち、導入口17側(上流側)に配置される第1拡散エレメント30は、円板状のエレメント本体31の中央部に、流体Rの流入口32が貫通状態で形成されている。
【0036】
図4に示すように、エレメント本体31の下流側面には、開口形状が正六角形の凹部35が隙間のない状態で複数形成されている。いわゆるハニカム状に多数の凹部35が形成されている。34は第1拡散エレメント30のピン挿入用凹部である。36は第1拡散エレメント30の中央部に配設した第1螺着部、37は第1螺着部36を流入口32中の中央に支持する3片の支持片である。
【0037】
図2〜図4に示すように、2枚の拡散エレメント30,40のうち、導出口18側(下流側)に配置される第2拡散エレメント40は、第1拡散エレメント30よりも小径である。第2拡散エレメント40のエレメント本体41の第1拡散エレメント30との対向面、すなわち導入口17側に向けられる上流側面(第1拡散エレメント30と対向する面)には、第1拡散エレメント30のエレメント本体31と同様に、開口形状が正六角形の凹部45が隙間のない状態で複数形成されている。
【0038】
42は第2拡散エレメント40の中央部に形成した第2螺着部であり、第2螺着部42と第1拡散エレメント30の第1螺着部36とを符合させて、連結ボルト43により第1拡散エレメント30と第2拡散エレメント40とを対面状態に重合させて連結している。46は第2拡散エレメント40に形成したピン挿通孔、47はピン挿通孔46に挿通した位置決めピンであり、位置決めピン47の先端部を第1拡散エレメント30のピン挿入用凹部34に挿入して第1拡散エレメント30と第2拡散エレメント40を位置決めして対面させている。
【0039】
そして、両拡散エレメント30,40は、図2および図3に示すような配置で組み付けられる。具体的に説明すると、第1拡散エレメント30と第2拡散エレメント40を対面状態に配置する。このとき、第1拡散エレメント30の下流側面のハニカム状の多数の凹部35の開口面と、第2拡散エレメント40の上流側面のハニカム状の多数の凹部45の開口面とが対面状態に当接するように、第2拡散エレメント40の向きを定める(図3参照)。この状態で、第1拡散エレメント30のピン挿入用凹部34に、第2拡散エレメント40のピン挿通孔46に挿通した位置決めピン47の先端部を挿入して組み付ける。
【0040】
従って、両拡散エレメント30,40を組み付けると、両拡散エレメント30,40間に形成される拡散・混合流路60の終端部が外周に向けてリング状に開口されている。そして、第1拡散エレメント30の流入口32に供給された流体Rは、拡散・混合流路60(図1参照)を通過した後、この拡散・混合流路60の終端部から放出される。
【0041】
ここで、位置決めピン47により位置決めされて、各拡散エレメント30,40の当接側の面に形成されるハニカム状の多数の凹部35,45の相互関係について説明する。すなわち、図4に示すように、両拡散エレメント30,40の凹部35,45は同形・同大に形成して、これらの当接面は、第1拡散エレメント30の凹部35の中心位置に、第2拡散エレメント40の凹部45の角部49が位置する状態で当接している。
【0042】
このような状態で当接させると、第1拡散エレメント30の凹部35と第2拡散エレメント40の凹部45との間で流体Rを流動させることができる。また、角部49は3つの凹部45の角部が集まっている位置である。
【0043】
従って、例えば、第1拡散エレメント30の凹部35側から第2拡散エレメント40の凹部45側に流体Rが流れる場合を考えると、流体Rは、2つの流路に分流(分散)されることになる。
【0044】
つまり、第1拡散エレメント30の凹部35の中央位置に位置された第2拡散エレメント40の角部49は、流体Rを分流する分流部として機能する。逆に、第2拡散エレメント40側から第1拡散エレメント30側に流体Rが流れる場合を考えると、2方から流れてきた流体Rが1つの凹部35に流れ込むことで合流することになる。この場合、第2拡散エレメント40の中央位置に位置された角部49は、合流部として機能する。
【0045】
また、第2拡散エレメント40の凹部45の中心位置にも、第1拡散エレメント30の凹部35の角部39が位置する。この場合は、第1拡散エレメント30の角部39が上述した分流部や合流部として機能する。
【0046】
このように、相互に対向状態に対面配置された両拡散エレメント30,40の間には、中央の流入口32から両拡散エレメント30,40(ケーシング体11)の軸線方向に供給された流体Rが、分流と合流(分散と混合)を繰り返しながら両拡散エレメント30,40の放射線方向(軸線方向と直交する半径方向)に蛇行状態にて流動する拡散・混合流路60(図1参照)が形成されている。
【0047】
この拡散・混合流路60を流体Rが流動する過程で、流体Rに混合処理が施される。そして、拡散・混合流路60を通過した流体Rは、その後、連通用凹部54を通して集合エレメント50の集合流路70に流入される。各混合ユニット12の下流側を形成する集合エレメント50には、円板状の中央部に流体Rの流出口62が貫通状態で形成されている。
【0048】
図1に示すように、左・右側壁体13,14の内周縁部と、第1拡散エレメント30の上流側(左側)の外周縁部と、第1拡散エレメント30と同径状に形成した集合エレメント50の下流側(右側)の外周縁部には、それぞれテーパー面部13c,14c,38,48を形成して、隣接して対向するテーパー面部とケーシング体11の内周面とによりOリング79を配置するためのOリング配置空間78を形成している。
[流体混合システム]
流体Rとしての液体と液体、液体と気体、ないしは粉体と液体の混合体は、上流側の側壁体13の中央部に形成した導入口17から導入させて、混合ユニット12の拡散・混合流路60と集合流路70を通して流動させた後に、下流側の側壁体14の中央部に形成した導出口18から導出させるようにしている。
【0049】
このように構成して、液体と液体、液体と気体、ないしは粉体と液体の混合体を、流体Rとして上流側の側壁体13の導入口17から導入させて、混合ユニット12の拡散・混合流路60と集合流路70を通して流動させた後に、下流側の側壁体14の導出口18から導出させることで、超微細化かつ均一化して混合することができる。
(エマルション燃料生成装置)
流体混合システムの一形態であるエマルション燃料を生成するエマルション燃料生成装置80を図6に示す。エマルション燃料生成装置80は、前記した静止型流体混合装置10を具備して構成している。すなわち、エマルション燃料生成装置80は、静止型流体混合装置10の導入口17に上流側連通連結体19を介して流体Rを導入する導入管90を接続する一方、導出口18に流体Rを導出する導出管91を接続している。導入管90には導入用ポンプP1を設けて、導入用ポンプP1により導入口17を通して流体Rを静止型流体混合装置10に圧送するようにしている。そして、導入用ポンプP1により導入管90を通して異なる複数種類の流体R(例えば、液体と気体)を静止型流体混合装置10に圧送して導入し、静止型流体混合装置10により流体Rを混合処理して、混合処理が施された流体Rを導出管91を通して導出可能としている。
【0050】
導出管91の中途部と、導入管90の導入用ポンプP1よりも下流側に位置する中途部との間には、導出側三方弁92と導入側三方弁93とを介して流体戻し管94を介設している。流体戻し管94の中途部には戻し用ポンプP2を設けている。各ポンプP1,P2としては、気液混合移送が可能なポンプ、すなわち、気液混合流体であるエマルション燃料を圧送する際にも、安定した吐出圧力及び吐出流量を確保することができるポンプ(例えば、株式会社ニクニ製の「気液移送ポンプ」)を使用することができる。
【0051】
このように構成して、エマルション燃料生成装置80では、導出側三方弁92と導入側三方弁93を適宜切り替えて、流体Rを導入管90→静止型流体混合装置10→導出管91→導出側三方弁92→流体戻し管94→導入側三方弁93→導入管90を通して循環させる循環回路を形成可能としている。この際、循環回数ないしは循環時間を所望に設定することで、流体成分を超微細化(ナノレベルから数μmレベルまで)することができるとともに、均一な大きさに微細化することができる。
【0052】
混合処理対象となる流体Rは、液体と液体、液体と気体、粉体と液体の組み合わせが考えられるが、ここでは液体である連続相としての燃料油及び分散相としての水と、気体である微量の空気を混合処理して、微細な気泡混じりのエマルション燃料を生成することができる。燃料油と水の混合比を調整することにより、適正な燃焼条件下で内燃機関を燃焼させる燃料として使用することができる。また、燃料油としては、ガソリン、航空タービン用燃料油(ジェット機燃料油)、灯油、軽油、ガスタービン用燃料油、重油などがあるが、本実施形態は、特に重油の改質に有効なものであり、廃油であっても改質して、有効利用可能な改質廃油となすことができる。さらに、難燃性の廃油を燃料油として用いた場合でも、本実施形態に係るW/O型のエマルション燃料とすることで安定的に燃焼させることができる。また、空気は導入管90に吸気管81を連通連結し、吸気管81から外気をエジェクタ効果(導入管90中の圧力と吸気管中の圧力との圧力差を利用した吸引効果)によりを取り入れ可能としている。82は吸気管81の中途部に取り付けた流量調整弁である。
【0053】
ここで、エマルション燃料を製造するに際して、混合される燃料油と水の体積比は、燃料油:水=6〜9:4〜1である。燃料油としてA重油を用いる場合は、好ましくは、燃料油:水=8:2、燃料油としてC重油を用いる場合は、好ましくは、燃料油:水=8.5:1.5、燃料油として廃油を用いる場合は、好ましくは、廃油:水=9:1の体積比で混合することにより、エマルション燃料を生成することができる。気体である微量の空気は、例えば、吸気管81から吸気される外気の量を、燃料油と水の混合液の体積(所定流量)の0.1%〜3%、好ましくは1%前後(0.7%〜1.2%)に流量調整弁82により設定して、燃料油と水の混合液に混合されるようにすることで、気泡混じりのエマルション燃料を生成することができる。
【0054】
このように構成して、エマルション燃料生成装置80では、導入管90を通して流体Rとしての燃料油と水と微量の空気を静止型流体混合装置10の導入口17に導入して、静止型流体混合装置10により流体Rを混合処理する。この際、流体Rは循環回路25を通して所望の回数ないしは時間だけ循環させて混合処理することができる。そして、混合処理終了後、つまり、気泡混じりのエマルション燃料が生成された後は、導出側三方弁92を切替操作して、導出管91の終端部から回収することができる。
【0055】
連続相としての燃料油と、分散相としての水と、微量の空気とを静止型流体混合装置10により微細化して混合することにより、浮力が減少した微細な気泡混じりのエマルション燃料を生成することができる。この際、浮力が減少した微細な気泡は、疎水性であるため、水滴の表面には付着せずに、燃料油中に分散して、気−液界面の面積(燃焼表面積)を増加させるとともに静電分極により表面活性(界面活性剤のような機能)を発揮して、微細化した水滴の合一を防止して、水滴をエマルション燃料中で安定化させることができる。その結果、かかるエマルション燃料では水滴径の分散が均一化して、かかるエマルション燃料を例えば燃焼装置で燃焼させると、良好な燃焼効率を確保することができて、すすや黒煙が発生するという不具合を解消することができる。
【0056】
ここで、微量の空気の直径をナノレベルないしはサブミクロンレベルの超微細な気泡となした場合には、直径がナノレベルないしはサブミクロンレベルの超微細な気泡混じりのエマルション燃料となすことができる。この場合、超微細な気泡によるより一層の気−液界面の面積(燃焼表面積)増加、及び、静電分極による表面活性(界面活性剤のような機能)の増大を図ることができて、微細化した水滴の合一を防止して、水滴をエマルション燃料中でより一層安定化させることができる。その結果、良好な燃焼効率をより一層向上させることができる。なお、ナノレベルとは、1μm未満のレベルをいう。サブミクロンレベルとは、0.1μm〜1μmのレベルをいう。
【符号の説明】
【0057】
10 静止型流体混合装置
11 ケーシング体
12 混合ユニット
13 左側端部壁体
14 右側端部壁体
30 第1拡散エレメント
40 第2拡散エレメント
50 集合エレメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部側の流入口から流入した流体を周縁部側に向けて半径方向に流動させて拡散・混合する拡散・混合流路と、周縁部側から流入した流体を中央部側の流出口に向けて半径方向に流動させて集合させる集合流路とを有する混合ユニットを、ケーシング体内に同心円的に配設するとともに、ケーシング体の内周面に沿わせて拡散・混合流路の終端部と集合流路の始端部を連通させた静止型流体混合装置であって、
混合ユニットは、中央部に流体の流入口を形成した円板状の第1拡散エレメントに、円板状の第2拡散エレメントを対面させて配置して、両拡散エレメントの間に拡散・混合流路を形成する一方、第2拡散エレメントの背面側に、中央部に流体の流出口を形成した円板状の集合エレメントを対面させて配置して、集合エレメントに集合流路を形成して構成し、
集合流路は、周縁部から中央部の流出口に向けて直状かつ同一幅に形成したことを特徴とする静止型流体混合装置。
【請求項2】
集合エレメントは、上流側半部を下流側半部よりも小径の円板状に形成して、上流側半部の外周部に拡散・混合流路と連通する円形リング状の連通用凹部を形成し、上流側半部には周縁部から中央部の流出口に向けて直状かつ同一幅の流路形成用凹部を形成して、流路形成用凹部の開口面を第2拡散エレメントの背面により閉塞することで、連通用凹部と連通する集合流路を形成したことを特徴とする請求項1記載の静止型流体混合装置。
【請求項3】
流路形成用凹部は、上流側半部に十字状に配置して形成したことを特徴とする請求項2記載の静止型流体混合装置。
【請求項4】
円筒状のケーシング体内に一つないしは複数の混合ユニットを同心円的に配設し、ケーシング体の両端部には側壁体を配設して、各側壁体の外側壁に接続体の基端部を係止するとともに、接続体の先端部をケーシング体の外周面に螺着して、隣接する各混合ユニットの流出口と流入口を連通させた状態にて両側壁体間にケーシング体を介して混合ユニットを挟持し、
上流側の側壁体の中央部に形成した導入口には、近接する混合ユニットの流入口を連通させる一方、下流側の側壁体の中央部に形成した導出口には、近接する混合ユニットの流出口を連通させたことを特徴とする請求項2又は3記載の静止型流体混合装置。
【請求項5】
流体としての液体と液体、液体と気体、ないしは粉体と液体の混合体を、上流側の側壁体の中央部に形成した導入口から導入させて、混合ユニットの拡散・混合流路と集合流路を通して流動させた後に、下流側の側壁体の中央部に形成した導出口から導出させるようにしたことを特徴とする請求項4記載の静止型流体混合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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