説明

静止型誘導機器

【課題】静止型誘導機器におけるコイルを巻回した鉄心の冷却効率を高めること。
【解決手段】インボリュート磁性鋼板を放射状に積層した断面円形状の鉄心11に、全面に無溶剤系絶縁接着剤層14を形成したポリイミド系フイルムからなる絶縁紙13を巻回し、その上に交流電圧を印加するコイルを構成する絶縁導体管12を巻回し、その絶縁導体管に冷却流体を通流する。全面に無溶剤系絶縁接着剤層を形成したポリイミド系フイルムは、熱伝導性が良く、導体管に通流する冷却流体により効率よく鉄心は冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器やリアクトルなどの静止型誘導機器、詳しくは静止型誘導機器における鉄心の冷却に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば静止型誘導機器の一つである衝合型乾式変圧器において、変圧器入力コイルと出力コイルとの間に配置する混触防止板に冷却媒体通流路を形成し、その冷却媒体通流路に水や油などの冷却流体を通流して冷却能力を高め、コイルの径を小さくして導線の使用量を低減し、変圧器を小型化することが考えられている。図4は、このような衝合型乾式変圧器におけるコイル部を示すもので、この図4において、1は断面円形状の脚鉄心、2はポリイミド系フイルムからなる絶縁紙、3は入力コイル(一次コイル)、4は第1の出力コイル(二次コイル)、5は第2の出力コイル(三次コイル)、6は絶縁処理した細い中空導体管を巻回した混触防止板、7は絶縁紙2の全面に塗着した乾燥時に発泡が起きない無溶剤系絶縁接着剤層である。すなわち、絶縁紙2の表裏全面に無溶剤系絶縁接着剤を塗着して絶縁層が形成されている。
【0003】
そして、脚鉄心1に絶縁紙2を巻き、その上に第1の出力コイル4の1層目を巻き、無溶剤系絶縁接着剤層7を両面に塗着した絶縁紙2を巻き、第1の出力コイル4の2層目を巻く。第2の出力コイル4の2層目の上に無溶剤系絶縁接着剤層7を両面に塗着した絶縁紙2を巻き、その上に混触防止板6を配置して無溶剤系絶縁接着剤層7を両面に塗着した絶縁紙2を巻き、入力コイル3の1層目を巻き、その上に無溶剤系絶縁接着剤層7を両面に塗着した絶縁紙2を巻き、入力コイル3の2層目を巻く。以下、無溶剤系絶縁接着剤層7を両面に塗着した絶縁紙2を巻き混触防止板6を配置して無溶剤系絶縁接着剤層7を両面に塗着した絶縁紙2を巻き、第2の出力コイル5の1層目を巻き、その上に無溶剤系絶縁接着剤層7を両面に塗着した絶縁紙2を巻き、第2の出力コイル5の2層目を巻き、絶縁紙11を巻き付けてコイル部を作成する。
【0004】
このようにコイル部を作成した脚鉄心1の複数を継鉄心8に締付固定して変圧器本体を作成し、この変圧器本体を、冷却風を挿通する容器内に収納して変圧器を完成させる。この変圧器の運転時には、混触防止板6の管内に水または油などの冷却された流体を流す。この冷却流体の通流により混触防止板6は冷却され、その冷却により脚鉄心1および各コイル4、5、6は冷却される。この場合、導体間に配置した無溶剤系絶縁接着剤層7およびポリイミド系フイルムからなる絶縁紙2は断熱効果が低く、熱伝導性が高いのでその冷却効果を高めることができる。
【0005】
この場合、図5に示すような、インボリュート曲線状に湾曲した磁性鋼板9a(以下、インボリュート磁性鋼板という。)を放射状に積み重ね断面円形状に作成(図示例は、これをABCの3重に重ね合わせて所定の径に作成)した断面ほぼ完全な円形(周面に段差がない)をなす鉄心9を脚鉄心とすれば、その脚鉄心は渦電流損が小さいので、脚鉄心自体の発熱を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−206254号公報
【特許文献2】特開2009−105253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の静止型誘導機器のコイルに高周波成分を多量に含む電圧が印加されると、脚鉄心としてインボリュート磁性鋼板を放射状に積層した鉄心を用いても、脚鉄心自体の発熱が大きく増加し、その脚鉄心の熱により絶縁が破壊する場合があるといった問題があった。
【0008】
発明が解決しようとする課題は、静止型誘導機器における脚鉄心の冷却効率を高め、斯かる問題を解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、インボリュート磁性鋼板を放射状に積層した断面円形状の鉄心に絶縁層を介して絶縁導体線を巻回してなる静止型誘導機器において、前記絶縁層を表裏全面に無溶剤系絶縁接着剤を塗着した絶縁紙とするとともに、少なくとも前記鉄心に最も近接して巻回する前記絶縁導体線を絶縁導体管とし、その絶縁導体管の内部に冷却流体を通流する構成としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、インボリュート磁性鋼板を放射状に積層した断面円形状の鉄心に全面に無溶剤系絶縁接着剤層を形成した絶縁紙を巻回し、その外周面に交流電圧を印加する絶縁導体管を巻回し、その導体管の内部に冷却流体を通流するので、鉄心の熱は熱伝導性の高い無溶剤系絶縁接着剤層を形成した絶縁紙を経て冷却流体を通流する導体管に直ちに伝達され、これにより、鉄心の冷却効率を高めることができ、安心して巻回導体管(コイル)に高周波成分を多量に含む電圧を印加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例に係る静止型誘導機器のコイルの半断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る静止型誘導機器の構成を示す構成図で、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は結線図である。
【図3】本発明の他の実施例に係る静止型誘導機器のコイル部の半断面図である。
【図4】従来の静止型誘導機器のコイル部の半断面図である。
【図5】脚鉄心の斜視図である。
【実施例】
【0012】
本発明の実施例に係る静止型誘導機器(例は単相リアクトル)について、図1および図2を参照して説明する。図1において、11は空隙11aを設けた脚鉄心、12aは1層目の巻回導体管、12bは2層目の巻回導体管、12cは流体入り口フランジ、12dは流体出口フランジ、13はポリイミド系フイルムからなる絶縁紙、14は無溶剤系絶縁接着剤層である。なお、脚鉄心11は、図5に示すように、インボリュート曲線状に湾曲された湾曲部を有する多数の磁性鋼板11aを放射状に積層して円筒状に形成し、これをABCと径方向に三段積層(段数は必要とする脚鉄心の直径に合わせる。)して形成されている。
【0013】
その脚鉄心11に、表裏全面に無溶剤系絶縁接着剤14を塗着した絶縁紙13を巻回し、その上に銅などからなる外周面を絶縁処理した導体(以下、絶縁導体という。)管を巻回(12a)し、その上に絶縁紙13を巻回し、巻回した絶縁紙13の上に折り返した絶縁導体管を巻回(12b)して一脚のリアクトルを作成する。流体入り口フランジ12cおよび流体出口フランジ12dは導体管の両側の開口端に形成され、流体入り口フランジ12cは1層目の巻回導体管12aの巻き始めに位置し、流体出口フランジ12dは2層目の巻回導体管12bの巻き終端に位置する。
【0014】
すなわち、最も冷却された流体が脚鉄心11に最も近い巻回導体管12aに流される。なお、導体管の絶縁として無溶剤系絶縁接着剤を塗着した絶縁テープとし、その絶縁テープをポリイミド系フイルムで形成するとより一層冷却効果を高めることができる。また、表裏全面に無溶剤系絶縁接着剤を塗着した絶縁テープを導体管に巻回しておくと、その導体管を脚鉄心に巻回するだけで、脚鉄心と導体管の間に、表裏全面に無溶剤系絶縁接着剤を塗着した絶縁紙からなる絶縁層を形成することができる。
【0015】
このように巻回導体管12aと巻回導体管12bを装着した脚鉄心11は、図2(a)(b)に示すように、上下のヨーク鉄心15の両端部の間に配置されて締付固定される。つまり上下のヨーク鉄心15と脚鉄心11とによりロ字型の閉磁路が形成される。そして、図2(c)に示すように片側の脚鉄心11に巻回した巻回導体管の一端は、単相電源の入力U端子に接続され、他端は単相電源の入力V端子に接続される。また、他の片側の脚鉄心11に巻回した巻回導体管も同様に一端は、単相電源の入力U端子に接続され、他端は単相電源の入力V端子に接続され、その導体管の折り返し部は単相電源の入力V端子に接続される。
【0016】
なお、以上の実施例では、絶縁導体管は断面円形とし、また、脚鉄心の空隙を設けているが、図3に示すように、絶縁導体管は角型銅管16としてもよく、空隙を設けない脚鉄心としてもよい。絶縁導体管を角型銅管16とすれば、電気伝導率および熱伝導率が高くなり、角型銅管16の平らな面を脚鉄心に無溶剤系絶縁接着剤層および絶縁紙を介してであるが密着させることができ、熱伝導面積を大きくとることができ、脚鉄心の冷却効果を一層高めることができる。
【0017】
また、インボリュート磁性鋼板を放射状に積層した断面円形状の鉄心に、全面に無溶剤系絶縁接着剤層を形成した絶縁紙を介して鉄心に最も近接して巻回する導体線を導体管とし、その導体管に冷却流体を通流して、該鉄心を冷却する本発明は、単相リアクトルに限らず、三相や多相リアクトルあるいは変圧器に適用できる。たとえば図4に示す変圧器である場合、少なくとも1層目の第1の出力コイル4の1層目のコイルを導体管とし、この導体管に冷却流体を通流すればよい。
【符号の説明】
【0018】
11 脚鉄心
12a、22b、16 導体管巻線
13 絶縁紙
14 無溶剤系絶縁接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インボリュート磁性鋼板を放射状に積層した断面円形状の鉄心に絶縁層を介して絶縁導体線を巻回してなる静止型誘導機器において、前記絶縁層を表裏全面に無溶剤系絶縁接着剤を塗着した絶縁紙とするとともに、少なくとも前記鉄心に最も近接して巻回する前記絶縁導体線を絶縁導体管とし、その絶縁導体管の内部に冷却流体を通流してなることを特徴とする静止型誘導機器。
【請求項2】
絶縁紙がポリイミド系フイルムであることを特徴とする請求項1に記載の静止型誘導機器。
【請求項3】
絶縁導体管の絶縁処理が無溶剤系絶縁接着剤を塗着した絶縁テープの巻回であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静止型誘導機器。
【請求項4】
絶縁テープがポリイミド系フイルムであることを特徴とする請求項3に記載の静止型誘導機器。
【請求項5】
絶縁導体管が角型絶縁銅管であることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4に記載の静止型誘導機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−82387(P2011−82387A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234386(P2009−234386)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】