説明

静止機器

【課題】
油入り変圧器やリアクトルなど静止機器において、漏れ磁束がタンクに流れ、機器の損失が増大し局所化熱が生じていた。また、漏れ磁束が周辺機器に悪影響を及ぼしたりしていた。従来、この対策として、磁気シールドをタンク面にネジで固定する方法が取られていたが、対策費用や作業性で問題となっていた。
【解決手段】
本発明は、上記の問題を解消するため、鉄心と、コイルと、該鉄心及びコイルを絶縁、冷却する絶縁油をタンク内に収納した静止機器において、前記タンクには外側の周囲に垂直方向に波リブを形成し、前記タンクの内壁に垂直方向に所定の間隔でステーを取り付け、該ステーは、磁気シールドを挿入できるコ字形形状を有し、該コ字形形状に磁気シールドを挿入し、固定したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静止機器に関わり、特に漏れ磁束が多く機器の冷却のため波リブを有した静止機器に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器やリアクトルなどの静止機器は、鉄心、コイルからなる本体はタンク内に収納され、タンク内は絶縁及び冷却機能を有する絶縁油が充填されている。
そして、タンクの外部機器へ漏れ磁束が影響を及ぼさないようにタンクの内側に磁気シールド板を取り付けているものがある(特許文献1(特開2002−8928号公報)参照)。
【0003】
また、特許文献2(実開昭61−125033号公報)には、静止誘導電器において、波形フィンを設けたタンクの溝に取付片を縦方向に短冊状に3ヶ所設け、けい素鋼板、アモルファス鋼板を複数枚積層した磁気遮蔽板を設置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−8928号公報
【特許文献2】実開昭61−125033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、一般に波形フィンを設けた油入変圧器などの静止機器において、漏れ磁束がタンクに流れると静止機器の損失が増大し、局所的に異常加熱が生じることが知られている。
また、静止機器により漏れた磁束が周辺機器に悪影響を及ぼすことも分かっており、コイル、鉄心から漏れた磁束をタンクの内側で止める磁束漏れ対策の必要性が高まっている。
この漏れ磁束の対策として、磁気シールドの設置が挙げられる。磁気シールドとは、鉄心、コイルから漏れた磁束がタンク、または静止機器の外部へ漏れないようにタンク内に設置する透磁率の高い磁性材料の板のことであり、電磁鋼板やアモルファス薄帯などが用いられる。
また、磁気シールドの取付方法としては、タンクの内側の面にネジで固定する方法が取られているが、機器が小型になると作業効率が大幅に低下し、対策費用もかさむということが生じている。特に、タンクに波リブが形成された構造においては、波リブの部分に直接溶接などの加工を行うことは困難で、また波リブ内の油道を確保しないといけないため加工作業の難易度や対策費用が更に増大する。
さらに、漏れ磁束が大きい機器は、静止機器自体が振動して唸るため磁気シールドを確実に固定する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、上記問題を最小とするため磁気シールドの取り付けを簡単な構造で確実に取り付けることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、鉄心と、コイルと、該鉄心及びコイルを絶縁、冷却する絶縁油をタンク内に収納した静止機器において、前記タンクには外側の周囲に垂直方向に波リブを形成し、前記タンクの内壁に垂直方向に所定の間隔でステーを取り付け、該ステーは、磁気シールドを挿入できるコ字形形状を有し、該コ字形形状に磁気シールドを挿入し、固定したことを特徴とする。
【0008】
また、上記の静止機器において、前記ステーで、中央部のステーは両側方向に開放されたコ字形形状とし、端部のステーは内側に開放されたコ字形形状とし、前記ステーの下側は前記磁気シールドを支持する支持部を有することを特徴とする。
【0009】
さらに、上記の静止機器において、前記コ字形形状を有するステーの下側に、前記磁気シールドを受け支持する支持枠を設け、該支持枠は、凹部形状とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、静止機器のタンク内に設置する磁気シールドを簡単な構造で取り付けることができ、ステーによりタンク自体の強度も増大できる。
また、磁気シールドを特別加工する必要もなく、分割して輸送することも可能である。さらに、磁気シールドを取り付ける構造で、ポケット形状として取り付け固定するため、確実な固定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のタンク構造を有した静止機器を示す外観斜視図である。
【図2】本発明の静止機器で、磁気シールドを備えたタンクの正面断面図を示す。
【図3】本発明の静止機器で、磁気シールドを備えたタンクの側面断面図を示す。
【図4】図2において、磁気シールドを取り付ける前のタンクの正面断面図である。
【図5】図4に示したA部及びB部の切り欠きを有した部分拡大図である。
【図6】本発明の第2の実施例である磁気シールドを固定するステーをタンクに設置した静止機器の上面断面図を示す。
【図7】図6に示したC部の部分拡大図である。
【図8】図6及び図7の中央部のステーを表す斜視図である。
【図9】本発明の図4に示した磁気シールドを設置するステーで、下側に凹部部材を設けた図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図を用いて説明する。
(実施例1)
図1は、本発明の磁気シールドを取り付けた静止機器の外観を示す斜視図である。静止機器には、リアクトルや油入変圧器などがある。
図1において、静止機器は、鉄心及び鉄心に装着したコイルを絶縁、冷却する絶縁油を収納したタンク2の周縁に波リブ3を設けて冷却する構造である。4は波リブ3の上下に溶接して固定した溶接線で、波リブに強度を持たせ、変形しないようにしている。
6は一次側端子で、発電所から送電された高電圧の電源を接続する端子で、7は二次側端子で、変圧器で昇圧又は降圧した電圧を負荷側に送るために接続する端子である。
図2は、本発明の磁気シールドを設置した静止機器のタンク2の正面図を示す。
図2において、2は鉄心、コイル及び絶縁油を収納したタンク、3は冷却のための波リブ、8はフランジ、11は端部のステー、12は中央部のステー、13は磁気シールドである。
一般に、ステーは、タンクに強度を持たせるためにタンクの外側に設置している。
しかし、本発明は、タンクの内側に設置し、このステーに磁気シールドを取り付け、固定することを特徴としている。
磁気シールド13は、タンク2の内側の壁面に設けたステー11、12に設置する構成とし、中央のステー12は静止機器の長辺の部分において2,3ヶ所配置し、静止機器の短辺の部分においては1,2箇所配置する。
また、磁気シールド13は、タンク2の壁面において、上側と下側は開放し、波形リブ3の開口部を塞がないように構成する。
波側リブ3の内側の壁面は、絶縁油が波リブの空間に出入りするために縦方向に開口部(隙間)を有している。
従って、タンク2の内壁の上下を開放しているため絶縁油が波リブ3の中を循環して静止機器を冷却することに支障は生じない。
【0013】
また、本静止機器の特徴としては、波リブ付きのタンクにも関わらずタンクの外形寸法を広げることなく、磁気シールドを取付けているところである。具体的にはタンクの内側に磁気シールドを取付ける加工を施したステーを取付けている。また、磁気シールドの固定方法としては、磁気シールドをシールやネジで留めず、ステーの凹部形状で両側から支える構造となっているため磁気シールドへの特別な加工を必要としない。
図3は、静止機器のタンク2の側面図を示す。
図3において、16は鉄心、17はコイル、30は絶縁油で、13は磁気シールド、14,15は絶縁物である。
磁気シールド13は、絶縁物14と絶縁物15の間に挟む構成とする。すなわち、タンクと磁気シールド間、及びコイルと磁気シールド間にプレスボード等の絶縁物を挟む。このような構成によってより確実な距離を確保し、また絶縁性を確保することができる。また、磁気シールドの取付け位置はコイルより高い部分に設置することでその効果を発揮する。
【0014】
また、磁気シールドの効果は磁気シールドとコイルとタンクの距離で決まる。
次に、磁気シールドを設置するステーについて説明する。
図4は、磁気シールドを取り付ける前の状態を示している。また、タンク2の中央部に2か所設置したステー12の下側の構造を図5(a)に示し,タンクの両側に設置した端部のステー11の下側の構造を図5(b)に示している。
図5(a)において、中央部のステー12の構造は、コ字形形状を有しており、磁気シールドを挿入する開口部がそれぞれ反対方向を向くように形成する。
また、端部のステー11は、図5(b)に示すようにコ字形形状をし、磁気シールド13を挿入する部分の開口部が内側を向くように形成している。
【0015】
このように、ステーのコ字形形状を向かい合わせ、タンクの上側から磁気シールド13及び絶縁物14,15を挿入しスライドして設置、固定する。
【0016】
このような構成にしたことは、第一の理由として、タンク製作後、磁気シールドを容易に、そして確実に設置することを可能にするためである。磁気シールドの設置だが一般的に磁気シールド自体が電導体であるため、短絡防止の点から確実な設置が必要となる。また、固定をネジで行う際は構造上、作業が行いにくく、また、固定の確認が困難となってしまう。その作業性は機器が小さくなる程悪化する。第二の理由として、磁気シールドに丸の切抜き等の特別加工を行わないためである。磁気シールドの加工は専用の加工が必要であり、高周波向電磁鋼板やアモルファス薄帯はその加工費用だけでも大きな値となる。本構造では材料を長方形へ切断するのみであり、磁気シールドへの加工は最低限で済む。
【0017】
また、中央部及び端部のステー12,11のコ字形形状の下側は、磁気シールド13を受ける受け部を有する構造とし、磁気シールド13及び絶縁物14,15を支持し固定することができる。
中央部及び端部のステー12,11のコ字形形状の上側は、磁気シールド及び絶縁物を挿入するため開放する構造にする。
(実施例2)
次に、磁気シールドを取り付けるステーの第2の実施例について説明する。
【0018】
図6は、ステー21の構造を十字形状とした実施例を示す図で、タンクの上面から見た上面断面図である。
図6において、16は鉄心、17はコイル、30は絶縁油、2はタンクである。
3は波リブで、21が中央のステー、20が端部のステーである。
ステーは、静止機器の長辺(横方向)に2個ずつ設置し、短辺(縦方向)に2個ずつ設けている。そして、ステー20,21は、磁気シールド及び絶縁物を取り付けるような構成にしている。
図6のC部の部分拡大図を図7に示し、中央のステー21の外観斜視図を図8に示す。
図7のC部拡大図において、ステー21は、タンクの中央部に設置され、ステー21とタンクの間に磁気シールド13を絶縁物14,15で挟んだ状態で、挿入して取り付ける。
ステー21の構造は、図8に示すように十字形状を形成し、タンクのフランジ8に垂直に突起した突起部40を有し、突起部40に垂直に翼のような突起部41を両側に形成し、磁気シールド13及び絶縁物14,15を挿入するための空間42を形成する。そして空間42はステーの長手方向(鉛直方向)に長く形成する。
且つ、ステーの下側は、受け部を設け、磁気シールドを受けて支持する構造にする。
【0019】
なお、ステー21の構造は十字形状の例を示したが、T字形状など磁気シールド13及び絶縁物14,15を挿入取り付けできる構造であれば良い。
(実施例3)
アモルファス薄帯を磁気シールドに使用する場合、最も注意しなければならないのがアモルファス薄帯の破片の飛散である。アモルファス薄帯は透磁率が高く、優れた磁性材料であるが脆く、割れにより生じた細かな破片がコイル付近に飛散することにより短絡事故を起こしてしまう可能性がある。
【0020】
図9にアモルファス薄帯を磁気シールドに使用する場合の別の実施例の静止機器のタンク図を示す。
【0021】
図9において、図4の構成と異なるのは磁気シールド13を受ける支持枠31を設置した点である。
この支持枠31の構造は、各ステー11,12の下部に設け、その形状を凹部形状とし、この凹みの部分にアモルファス薄帯を絶縁物で挟んだ磁気シールド13を、上側よりステー11,12に挿入しスライドさせて、支持枠31の凹部で支持するものである。このように磁気シールド13の下側の端面を支持枠31の凹部で覆うことによりアモルファス薄帯の破片飛散を防止することができる。
【符号の説明】
【0022】
1‥油入変圧器 2‥タンク 3‥波リブ
8‥フランジ 10‥底板部 11‥端部ステー
12‥中央部のステー 13‥磁気シールド
14,15‥絶縁物
16‥鉄心 17‥コイル 30‥絶縁油
40‥突起部 41‥突起部 42‥空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心と、コイルと、該鉄心及びコイルを絶縁、冷却する絶縁油をタンク内に収納した静止機器において、
前記タンクには外側の周囲に垂直方向に波リブを形成し、
前記タンクの内壁に垂直方向に所定の間隔でステーを取り付け、
該ステーは、磁気シールドを挿入できるコ字形形状を有し、
該コ字形形状に磁気シールドを挿入し、固定したことを特徴とする静止機器。
【請求項2】
請求項1記載の静止機器において、
前記ステーで、中央部のステーは両側方向に開放されたコ字形形状とし、端部のステーは内側に開放されたコ字形形状とし、前記ステーの下側は前記磁気シールドを支持する支持部を有することを特徴とする静止機器。
【請求項3】
請求項1記載の静止機器において、
前記コ字形形状を有するステーの下側に、前記磁気シールドを受け支持する支持枠を設け、
該支持枠は、各ステー間を接続し、凹部形状とすることを特徴とする静止機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−65701(P2013−65701A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203541(P2011−203541)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【Fターム(参考)】