静脈圧測定装置
【課題】生体が自然な状態における静脈圧の測定を簡易な装置で可能とする非侵襲的静脈圧測定装置を提供する。
【解決手段】生体の静脈および動脈を有する第1部分に装着する第1のカフ20aと、第1のカフにより第1部分に加えられる第1印加圧力を変化させる圧力制御手段30aと、第1のカフが第1部分から受ける圧力から第1脈波を検出する第1脈波検出手段40aと、生体の第1部分と異なる第2部分において少なくとも動脈の脈波を含む第2脈波を検出する第2脈波検出手段20b、40bと、圧力制御手段により第1印加圧力を変化させることで変化する、第1脈波検出手段により検出された第1脈波と第2脈波検出手段により検出された第2脈波との相関を解析する解析手段50と、第1印加圧力と解析手段の解析結果とに基づいて静脈圧を算出する静脈圧算出手段50と、を有する。
【解決手段】生体の静脈および動脈を有する第1部分に装着する第1のカフ20aと、第1のカフにより第1部分に加えられる第1印加圧力を変化させる圧力制御手段30aと、第1のカフが第1部分から受ける圧力から第1脈波を検出する第1脈波検出手段40aと、生体の第1部分と異なる第2部分において少なくとも動脈の脈波を含む第2脈波を検出する第2脈波検出手段20b、40bと、圧力制御手段により第1印加圧力を変化させることで変化する、第1脈波検出手段により検出された第1脈波と第2脈波検出手段により検出された第2脈波との相関を解析する解析手段50と、第1印加圧力と解析手段の解析結果とに基づいて静脈圧を算出する静脈圧算出手段50と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静脈圧測定装置に関し、特に、非侵襲的に平均静脈圧を測定する静脈圧測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
右心房近傍の静脈圧は中心静脈圧と呼ばれ、心臓の前負荷を表し、循環動態の把握にとって重要な指標となっている。
【0003】
中心静脈圧は、右心房近傍までカテーテルを挿入することで侵襲的に測定することができるが、近年、患者にとって負担が少ない非侵襲的な中心静脈圧測定が可能な静脈圧測定装置の開発が進められている。
【0004】
非侵襲的な静脈圧測定に関する先行技術として、上腕に装着させたカフにより動脈および静脈を一度閉塞した後、徐々にカフ圧を下げて動脈、静脈の順に閉塞を解除し前腕部の鬱血およびその解除を行うとともにこれを前腕部先端への近赤外線照射による透過画像のグレースケール値により検知することで鬱血が解除されたときのカフ圧により静脈圧を測定するというものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−279654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記先行技術は、一度静脈を鬱血させ、鬱血させた状態から静脈血が流れ始めるときの静脈圧を測定することから生体が自然な状態における静脈圧を測定しているとは言えない。また、近赤外線照射および近赤外線センサといった設備が必要になるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、静脈の脈波の変化を利用することで、生体が自然な状態における静脈圧の測定を簡易な装置で可能とする非侵襲的静脈圧測定装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、以下の手段によって解決される。
【0009】
(1)生体の静脈および動脈を有する第1部分に装着する第1のカフと、前記第1のカフにより前記第1部分に加えられる第1印加圧力を変化させる圧力制御手段と、前記第1のカフが前記第1部分から受ける圧力から第1脈波を検出する第1脈波検出手段と、前記生体の前記第1部分と異なる第2部分において少なくとも動脈の脈波を含む第2脈波を検出する第2脈波検出手段と、前記圧力制御手段により前記第1印加圧力を変化させることで変化する、前記第1脈波検出手段により検出された第1脈波と前記第2脈波検出手段により検出された第2脈波との相関を解析する解析手段と、前記第1印加圧力と前記解析手段の解析結果とに基づいて静脈圧を算出する静脈圧算出手段と、を有する静脈圧測定装置。
【0010】
(2)生体の静脈および動脈を有する部分に装着するカフと、前記カフにより前記部分に加えられる印加圧力を変化させる圧力制御手段と、前記カフが前記部分から受ける圧力から脈波を検出する脈波検出手段と、前記圧力制御手段により前記印加圧力を変化させることで変化する前記脈波検出手段により検出された前記脈波と、前記印加圧力と、に基づいて静脈圧を算出する静脈圧算出手段と、を有する静脈圧測定装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る静脈圧測定装置によれば、静脈の脈波の変化を利用することで、生体が自然な状態における静脈圧の測定を簡易な装置により実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る静脈圧測定装置のブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る静脈圧測定装置により平均静脈圧を測定するときのフローチャートを示す図である。
【図3】上腕の心臓に対し近位と遠位の脈波、およびこれらの減算波形を示すグラフである。
【図4】印加圧力と減算波形の最大振幅との関係を示す図である。
【図5】第1脈波と第2脈波との関係を示すグラフを第1印加圧力値ごとに示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る静脈圧測定装置により平均静脈圧を測定するときのフローチャートを示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る静脈圧測定装置により平均静脈圧を測定するときのフローチャートを示す図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る静脈圧測定装置のブロック図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る静脈圧測定装置のブロック図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係る静脈圧測定装置により平均静脈圧を測定するときのフローチャートを示す図である。
【図11】本発明の第6実施形態に係る静脈圧測定装置により平均静脈圧を測定するときのフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る静脈圧測定装置について詳細に説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る静脈圧測定装置10のブロック図である。図1には、静脈圧測定装置10とともに生体100が示され、生体100の上腕101に第1カフ20aと第2カフ20bとが装着された状態が示されている。
【0015】
本実施形態に係る静脈圧測定装置10は、第1カフ20a(第1脈波検出手段)、第2カフ20b(第2脈波検出手段)、第1圧力制御部(圧力制御手段)30a、第2圧力制御部(圧力制御手段)30b、第1圧力センサ40a(第1脈波検出手段)、第2圧力センサ40b(第2脈波検出手段)、圧力波形解析部(解析手段、静脈圧算出手段)50、表示部60、および異常通知部(異常通知手段)65を有する構成により平均静脈圧を測定する。
【0016】
第1カフ20aは、生体の一部(第1部分)である腋窩部近傍の上腕101に巻かれることで装着され、第1圧力制御部30aの制御により装着された部分を加圧するとともに加圧した部分から受ける圧力として検出される血管壁の振動である脈波(以下「第1脈波」と称する)を第1圧力センサ40aに伝達する。なお、第1カフ20aが装着される場所は、動脈および静脈の両方が存在する部分であれば限定されない。第1脈波には、動脈および静脈の脈波が含まれ得る。
【0017】
第2カフ20bは、第1カフ20aと同様の機能を有し、上腕101の第1カフ20aより心臓に対し遠位の部分(第2部分)に装着される。第2カフ20bは、第2圧力制御部30bの制御により装着された部分を加圧するとともに加圧した部分から受ける脈波(以下、「第2脈波」と称する)を第2圧力センサ40bに伝達する。なお、第2カフ20bが装着される場所は、第1カフ20aが装着される部分と異なる部分であれば限定されないが、少なくとも動脈の脈波が検出可能な部分に装着される。従って、第2脈波には、少なくとも動脈の脈波が含まれる。
【0018】
本実施形態は、オシロメトリック法の原理を利用し、第1脈波と第2脈波との相関が最小となるときに第1カフ20aが生体に印加する圧力を平均静脈圧と推定するものである。このような推定が可能なのは、(1)静脈の血管内外の圧力差が最小になるときに静脈脈波が最大となることから静脈脈波が最大のときのカフによる印加圧力が平均静脈圧と推定できること、(2)静脈血管はコンプライアンスが大きく心臓から遠位になるにつれて静脈の脈波は減衰することから静脈脈波成分が大きくなるほど遠位と近位の脈波の相関が小さくなると考えられること、に基づく。
【0019】
なお、平均静脈圧より大きな圧力を静脈に加えると、印加圧力の上昇に伴って静脈拍動成分は徐々に小さくなり、静脈が完全に閉塞すると脈波から静脈拍動成分は消失する。平均静脈圧より小さい圧力を静脈に加えた場合にも脈波の静脈拍動成分は減少する。
【0020】
ここで、四肢静脈血管内腔には逆流防止弁があり、逆流防止弁よりも心臓に近い腋窩部近傍の上腕の静脈では逆流防止弁よりも遠位の静脈より静脈拍動が大きく現れる。従って、逆流防止弁を跨いで第1カフ20aおよび第2カフ20bが装着されるとともに、第1カフ20aはできるだけ心臓に近い位置に装着されることにより、第1脈波および第2脈波の各静脈成分の差を大きくすることができる。これにより、第1脈波と第2脈波との相関をより精密に計測でき、平均静脈圧の測定精度を向上させることができる。第1カフ20aが腋窩部近傍の上腕101に装着され、第2カフ20bが上腕101の第1カフ20aより心臓に対し遠位の部分に装着されることでこのような条件を満たすことができる。
【0021】
また、第1カフ20aと心臓の高さが等しい体位としたときに測定される平均静脈圧は、中心静脈圧と考えることができるため、このような体位とすることで本実施形態に係る静脈圧測定装置により中心静脈圧を測定することができる。
【0022】
第1圧力制御部30aは、第1カフ20aを制御し、第1カフ20aが装着された部分を所定の圧力に加圧し、また加圧している圧力を変化させる。第1圧力制御部30aは、例えば、第1カフ20aに空気を送ることで第1カフ20aが装着された部分を加圧することができる。
【0023】
第2圧力制御部30bは、第2カフ20bを制御し、第2カフ20bが装着された部分を所定の圧力で加圧し、また加圧している圧力を変化させることができる。第2圧力制御部30bは、例えば、第2カフ20bに空気を送ることで第2カフ20bが装着された部分を加圧することができる。
【0024】
第1圧力センサ40aは、第1カフ20aから第1脈波の伝達を受け、第1脈波を電気信号として圧力波形解析部50に出力する。第1圧力センサ40aが第1カフ20aから受ける第1脈波は空気を媒体とした圧力波形であり、第1圧力センサ40aは圧力による信号を電気信号に変換する圧電素子とすることができる。
【0025】
第2圧力センサ40bは、第2カフ20bから第2脈波の伝達を受け、第2脈波を電気信号として圧力波形解析部50に出力する。第2圧力センサ40bが第2カフ20bから受ける第2脈波は空気を媒体とした圧力波形であり、第2圧力センサ40bは圧力による信号を電気信号に変換する圧電素子とすることができる。
【0026】
圧力波形解析部50は、第1圧力センサ40aおよび第2圧力センサ40bからそれぞれ第1脈波および第2脈波を受信し、第1圧力制御部30aおよび第2圧力制御部30bからそれぞれ上腕部への印加された圧力の値を受信し、第1脈波と第2脈波との相関が最小となるときに第1カフ20aにより生体に印加された圧力に基づいて静脈圧を算出する。
【0027】
圧力波形解析部50は、第1脈波または第2脈波の波形、各種演算結果を表示部60に送信する。
【0028】
表示部60は、圧力波形解析部50から受信した各種波形または各種演算結果を表示する。表示部60は、例えば、液晶ディスプレイにより構成することができる。また、表示部60は、外部から表示を切替えるための信号を受け付けるタッチパネルであってもよい。
【0029】
異常通知部(異常通知手段)65は、圧力波形解析部50が算出した静脈圧が閾値を超えたかどうかを判定し、閾値を超えた場合はその旨通知する。前記通知は、測定された静脈圧値とともに異常であることを知らせる表示を表示部60に表示することでユーザに通知してもよく、他の装置に測定された静脈圧値とともに異常であることを知らせる通知を送信することでユーザに通知してもよい。
【0030】
閾値は、例えば、医師が臨床において異常と判断する場合に用いる一般的な数値とすることができる。
【0031】
図2は、本実施形態に係る静脈圧測定装置により平均静脈圧を測定するときのフローチャートを示す図である。
【0032】
第1圧力制御部30aおよび第2圧力制御部30bは、それぞれ、心臓の近位に装着された第1カフ20aにより腋窩部近傍の上腕101に印加される圧力(以下、「第1印加圧力」と称する)および遠位に装着された第2カフ20bにより上腕部101に印加される圧力(以下、「第2印加圧力」と称する)を0mmHgに設定する(S200)。
【0033】
第1圧力制御部30aおよび第2圧力制御部30bは、それぞれ、第1印加圧力および第2印加圧力を所定の大きさ増圧する(S201)。ここで、1回の増圧幅である所定の大きさは、例えば10mmHgとすることができる。本実施形態においては、第1印加圧力と第2印加圧力の大きさは同じ値に設定するが、異なる値としてもよい。
【0034】
第1カフ20aおよび第1圧力センサ40aは第1脈波を、第2カフ20bおよび第2圧力センサ40bは第2脈波を、それぞれ同時に測定し(S202)、圧力波形解析部50は第1脈波と第2脈波の相関を計算する(S203)。
【0035】
図3は、上腕の心臓に対し近位と遠位の脈波、およびこれらの減算波形を示すグラフである。ここで、グラフの横軸は経過時間を示し、縦軸は脈波の振幅を示している。なお、振幅は、各脈波からその中心値(直流的な成分)を減算した値として示している。
【0036】
図3には、第1印加圧力および第2印加圧力を10mmHgから50mmHgまで変化させたときの第1脈波(近位脈波)と第2脈波(遠位脈波)、および第1脈波から第2脈波に相関する成分を減算した波形が10mmHgごとに示されている。
【0037】
上腕の心臓に対し近位の部分における第1脈波から上腕の心臓に対し遠位の部分における第2脈波を減算して減算波形を求めることにより第1脈波と第2脈波との相関を計算することができる。減算波形の振幅が大きいと相関が小さく、振幅が小さいと相関が大きい。ここで、図3のグラフは、第1カフ20aと第2カフ20bとの間を圧脈波が伝播する時間を考慮し、第1脈波と第2脈波の位相を合わせる位相補正を行っている。具体的には、第1カフ20aから第2カフ20bに圧脈波が伝達する時間を40msecとし、0.1msecごとのサンプルデータを400サンプル分相対的にシフトさせている。なお、第1脈波および第2脈波のピークあるいは微分波形のピークの時間差を測定して該時間差をなくすような位相補正をしてもよい。また、印加圧力を大きくしたときの第1脈波と第2脈波との相関を求め、相関が最大となるシフト量を位相補正時のシフト量としてもよい。
【0038】
図4は、印加圧力と減算波形の最大振幅との関係を示す図である。
【0039】
図4によれば、第1印加圧力および第2印加圧力を20mmHgとしたときの減算波形の振幅が最大となっていることから、平均静脈圧を20mmHgと推定することができる。
【0040】
なお、このようにして推定された平均静脈圧に対し必要に応じて補正をして測定精度を向上させることができるのは勿論である。例えば、予めカフ圧とカテーテルを用いて測定した血圧内圧との関係の一般的なデータを入手しておき、減算波形の振幅が最大となるときの第1印加圧力(カフ圧)との比較により求めた血圧内圧を平均静脈圧とする補正をすることができる。
【0041】
図5は、第1脈波と第2脈波との関係を示すグラフを第1印加圧力値ごとに示す図である。横軸は第2脈波の振幅を、縦軸は第1脈波の振幅を示している。図5には、第1脈波と第2脈波との相関を示す寄与率Rの二乗値R2を併せて示している。R2値は第1脈波と第2脈波との相関が大きいほど大きい値を示す。
【0042】
図5によれば、第1印加圧力が20mmHgのときにR2値が最小となっていることから、このときに第1脈波と第2脈波との相関が最も小さいことが明らかである。
【0043】
静脈圧測定装置10は、第1脈波と第2脈波との相関を示すR2値が所定値以上になるまで(S204、NO)、第1印加圧力および第2印加圧力の増圧(S201)、第1脈波および第2脈波の測定(S202)、第1脈波と第2脈波の相関の計算(S203)を繰り返す。前記所定値は、例えば、0.9とすることができる。
【0044】
圧力波形解析部50は、R2の値が所定値以上になった場合は(S204、YES)、それまでの測定結果に基づいて、R2の値が最小となるときの第1印加圧力を求め(S205)、求めた第1印加圧力を平均静脈圧と推定する(S206)。
【0045】
なお、ステップS203において計算された第1脈波と第2脈波との相関を示すR2値が減少から増加に転じた時点で第1脈波および第2脈波の測定を終了し、その時点でR2の値が最小となるときの第1印加圧力を平均静脈圧と推定してもよい。
【0046】
本実施形態に係る静脈圧測定装置は、心臓に対し近位における脈波と遠位における脈波との相関が最小になるときのカフ圧を平均静脈圧と推定することにより平均静脈圧を測定するものである。これは、心臓に対し遠位における脈波を利用して、近位における脈波から静脈の脈波成分を抽出し、静脈の脈波成分が最大となるときのカフ圧を平均静脈圧と推定することと等価である。
【0047】
本実施形態に係る静脈圧測定装置は、右心房の収縮拡張に由来する静脈の脈波を利用して静脈圧を推定する。従って、静脈を閉塞することによる鬱血が生じたとしても心臓からの静脈脈波の圧伝播を阻害するものではないので、鬱血の有無が測定上ほとんど問題とならない。
【0048】
本実施形態に係る静脈圧測定装置によれば、静脈の脈波を抽出しその脈波の変化を利用することで、生体が自然な状態における静脈圧の測定を簡易な装置により実現することができる。
【0049】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る静脈圧測定装置について説明する。なお、第1実施形態と重複する説明は省略する。
【0050】
本実施形態と第1実施形態とで異なる点は、第1実施形態は心臓に対し近位の脈波である第1脈波と遠位の脈波である第2脈波との相関が最小となるときの印加圧力を平均静脈圧と推定するのに対し、本実施形態は、第1脈波から動脈の脈波成分を減算し減算後の第1脈波の振幅が最大となるときの印加圧力を平均静脈圧と推定する点である。
【0051】
図6は、本実施形態に係る静脈圧測定装置により平均静脈圧を測定するときのフローチャートを示す図である。
【0052】
ステップS600〜S604においては、第1実施形態と同様に、第1脈波と第2脈波の測定を、両者の相関を示すR2値が所定値以上になるまで繰り返す。
【0053】
圧力波形解析部50は、R2値が最大となるときの第1脈波と第2脈波の相関の回帰式の傾きを求める(S605)。
【0054】
回帰式は、図5において、第1脈波と第2脈波との関係のグラフに測定結果と共に示されている直線が表す式である。図5によれば、R2値が最大となるのは第1印加圧力が40mmHgのときである。圧力波形解析部50は、このときの回帰式の傾きSを計算する。
【0055】
圧力波形解析部50は、第1脈波と第2脈波の動脈成分の比が一定であると仮定し、第2脈波に、ステップS605で計算した回帰式の傾きSを乗じることにより、第1脈波の動脈脈波成分を求める(S606)。ここで、動脈脈波成分とは、脈波のうち動脈の脈動に起因する部分を言う。
【0056】
圧力波形解析部50は、ステップS606で求めた第1脈波の動脈脈波成分を各第1脈波から減算することにより各第1脈波の静脈脈波成分を抽出する(S607)。ここで、静脈脈波成分とは、脈波のうち静脈の脈動に起因する部分をいう。
【0057】
圧力波形解析部50は、ステップS607で抽出した各第1脈波の静脈脈波成分のうち振幅が最大となるときの第1印加圧力を求め(S608)、求めた第1印加圧力を平均静脈圧と推定する(S609)。
【0058】
本実施形態に係る静脈圧測定装置によれば、静脈の脈波を抽出しその脈波の変化を利用することで、生体が自然な状態における静脈圧の測定を簡易な装置により実現することができる。
【0059】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る静脈圧測定装置について説明する。
【0060】
図7は、本実施形態に係る静脈圧測定装置により平均静脈圧を測定するときのフローチャートを示す図である。
【0061】
第2カフ20bおよび第2圧力制御部30bによりオシロメトリック法で動脈血圧が測定された後(S700)、第1カフ20aにより生体に印加される第1印加圧力と第2カフ20bにより生体に印加される第2印加圧力とは動脈血圧拡張期圧まで増圧される(S701)。その後、第2印加圧力は動脈血圧拡張期圧に保持されたまま、第1カフ20aにより印加される第1印加圧力は2mmHg/sの速度で連続的に減圧され(S702)、第1脈波と第2脈波とがそれぞれ測定される(S703)。測定は第1印加圧力が5mmHg以下に減圧されるまで継続される(S704、NO)。
【0062】
第1印加圧力が5mmHg以下になった場合は(S704、YES)、一連の第1脈波から一連の第2脈波に相関する成分を減算し、第1脈波から静脈の脈波成分が抽出され(S705)、抽出された第1脈波の静脈成分の振幅が最大となるときの第1印加圧力を求め(S706)、求めた第1印加圧力を平均静脈圧と推定する(S707)。
【0063】
本実施形態においては、第2印加圧力を平均静脈圧より大きい動脈血圧拡張期圧に保持し、第2カフ20bが装着された部分の静脈を圧閉することにより、第2脈波から静脈の脈波成分を除去する。そして、第2脈波から抽出された動脈の脈波成分を第1脈波から減算することで第1脈波から静脈の脈波成分を抽出し、抽出した静脈の脈波成分の振幅が最大となるときの第1印加圧力を平均静脈圧と推定するものである。
【0064】
本実施形態に係る静脈圧測定装置によれば、静脈の脈波を抽出しその脈波の変化を利用することで、生体が自然な状態における静脈圧の測定を簡易な装置により実現することができる。
【0065】
(第4実施形態)
図8は、本発明の第4実施形態に係る静脈圧測定装置10のブロック図である。図8には、静脈圧測定装置10とともに生体100が示され、生体100の腋窩部に第1カフ20aが装着され、指先に光電容積脈波センサ70が装着された状態が示されている。
【0066】
本実施形態においては、第1実施形態または第3実施形態における第2カフ20bおよび第2圧力センサ40bの代わりに光電容積脈波センサ70および光電容積脈波入力回路80を用いる。すなわち、第1実施形態および第3実施形態における第2脈波を、光電容積脈波センサ70および光電容積脈波入力回路80により検出して利用するものである。これ以外の点においては、第1実施形態または第3実施形態と同様であるため重複する説明は省略する。
【0067】
光電容積脈波センサ70は、ヘモグロビンにより吸収される波長帯の光を発光する発光素子と、発光素子から発光された光を受光する受光素子とを有し、生体の指先に装着されることで光電容積脈波を検出する素子である。光電容積脈波センサ70は、第1カフ20aより心臓に対し遠位に装着される。これにより、第1脈波より動脈の脈波成分の比率の大きい第2脈波を検出することができる。
【0068】
光電容積脈波入力回路80は光電容積脈波センサ70から光電容積脈波の電気信号を受信し、これを適当な大きさの電圧電気信号に増幅して圧力波形解析部50に出力する。
【0069】
本実施形態に係る静脈圧測定装置によれば、第1実施形態および第3実施形態と同様に、静脈の脈波を抽出しその脈波の変化を利用することで、生体が自然な状態における静脈圧の測定を簡易な装置により実現することができる。
【0070】
(第5実施形態)
図9は、本発明の第5実施形態に係る静脈圧測定装置10のブロック図である。
【0071】
図9に示すように、本実施形態に係る静脈圧測定装置10は、第1カフ20a、第1圧力制御部30a、第1圧力センサ40a、圧力波形解析部50、表示部60を有する。すなわち、第1実施形態〜第3実施形態は、カフ、圧力制御部、圧力センサをそれぞれ2つ有するのに対し、本実施形態に係る静脈圧測定装置10は、それぞれ1つ有する。これ以外の静脈圧測定装置10の構成は第1実施形態と同一であるため、重複する説明は省略する。
【0072】
図10は、本実施形態に係る静脈圧測定装置により平均静脈圧を測定するときのフローチャートを示す図である。
【0073】
第1カフ20aおよび第1圧力センサ40aで動脈血圧拡張期圧を測定する(S1000)。動脈血圧拡張期圧は通常のオシロメトリック法により測定することができる。
【0074】
次に第1カフ20aを腋窩部近傍の上腕に装着して、圧力制御部30aにより、第1カフ20aが腋窩部近傍の上腕に加える第1印加圧力が0mmHgに設定される(S1001)。その後、第1カフ20aおよび第1圧力センサ40aにより第1脈波が測定され、第1印加圧力が所定の増加幅で増圧される(S1004)。このように、第1印加圧力を増加させつつ行う第1脈波の測定は、第1印加圧力がステップS1000で測定された動脈血圧拡張期圧に達するまで繰り返される(S1004、NO)。
【0075】
第1印加圧力が動脈血圧拡張期圧以上となったときは(S1004、YES)、測定を終了し、測定された第1脈波の振幅が最大となるときの第1印加圧力を求め(S1005)、求めた第1印加圧力を平均静脈圧と推定する(S1006)。
【0076】
本実施形態においては、動脈血圧拡張期圧以下の範囲内でカフ圧力を腋窩部近傍の上腕に印加し、印加したカフ圧を変化させることによりカフで検出される脈波の振幅が最大となるときのカフ圧を求める。すなわち、カフ圧が平均静脈圧に至った際に静脈が圧閉されることによる脈圧の振幅の変化を検出することにより平均静脈圧を推定する。
【0077】
本実施形態に係る静脈圧測定装置によれば、静脈の脈波の変化を利用することで、生体が自然な状態における静脈圧の測定を簡易な装置により実現することができる。
【0078】
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態に係る静脈圧測定装置について説明する。
【0079】
本実施形態と第5実施形態とで異なる点は、第5実施形態は第1印加圧力を変化させたときに脈波の振幅が最大になるときの第1印加圧力を平均静脈圧と推定するのに対し、本実施形態は第1印加圧力を最大にしたときに検出される脈波を参照脈波とし参照脈波と脈波との相関が最小となるときの第1印加圧力を平均静脈圧と推定する点で異なる。この点を除き、本実施形態は第5実施形態と同様であるため重複する説明は省略する。
【0080】
図11は、本実施形態に係る静脈圧測定装置により平均静脈圧を測定するときのフローチャートを示す図である。
【0081】
ステップS1100〜S1104においては、第5実施形態のステップS1000〜S1004と同様に、動脈血圧拡張期圧以下の範囲内で第1印加圧力を0mmHgから所定の増加幅で増圧するとともに第1脈波を測定する。
【0082】
圧力波形解析部50は、測定した第1脈波のデータを第1印加圧力とともに保存する。
【0083】
その後、第1印加圧力を最大値である動脈血圧拡張期圧としたときの第1脈波を参照波形とし(S1105)、参照波形と脈波の相関が最小となるときの第1印加圧力を平均静脈圧と推定する(S1106)。相関は、第1実施形態と同様に求めることができる。
【0084】
ここで、第1脈波と参照脈波と同期をとるために心電図および光電容積脈波の少なくともいずれかを利用することができる。
【0085】
本実施形態に係る静脈圧測定装置によれば、静脈の脈波を抽出しその脈波の変化を利用することで、生体が自然な状態における静脈圧の測定を簡易な装置により実現することができる。
【0086】
以上、本発明の実施形態に係る静脈圧測定装置について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【0087】
例えば、第3実施形態以外の実施形態においては印加圧力を0mmHgから増圧させて脈波を測定しているが、適当な大きさの圧力から減圧させて脈波を測定してもよい。また、第3実施形態においては、印加圧力を動脈血圧拡張期圧から減圧させて脈波を測定しているが、適当な大きさの圧力から増圧させて脈波を測定してもよい。
【符号の説明】
【0088】
10 静脈圧測定装置、
20a 第1カフ、
20b 第2カフ、
30a 第1圧力制御部、
30b 第2圧力制御部、
40a 第1圧力センサ、
40b 第2圧力センサ、
50 圧力波形解析部、
60 表示部、
65 異常通知部、
70 光電容積脈波センサ、
80 光電容積脈波入力回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、静脈圧測定装置に関し、特に、非侵襲的に平均静脈圧を測定する静脈圧測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
右心房近傍の静脈圧は中心静脈圧と呼ばれ、心臓の前負荷を表し、循環動態の把握にとって重要な指標となっている。
【0003】
中心静脈圧は、右心房近傍までカテーテルを挿入することで侵襲的に測定することができるが、近年、患者にとって負担が少ない非侵襲的な中心静脈圧測定が可能な静脈圧測定装置の開発が進められている。
【0004】
非侵襲的な静脈圧測定に関する先行技術として、上腕に装着させたカフにより動脈および静脈を一度閉塞した後、徐々にカフ圧を下げて動脈、静脈の順に閉塞を解除し前腕部の鬱血およびその解除を行うとともにこれを前腕部先端への近赤外線照射による透過画像のグレースケール値により検知することで鬱血が解除されたときのカフ圧により静脈圧を測定するというものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−279654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記先行技術は、一度静脈を鬱血させ、鬱血させた状態から静脈血が流れ始めるときの静脈圧を測定することから生体が自然な状態における静脈圧を測定しているとは言えない。また、近赤外線照射および近赤外線センサといった設備が必要になるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、静脈の脈波の変化を利用することで、生体が自然な状態における静脈圧の測定を簡易な装置で可能とする非侵襲的静脈圧測定装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、以下の手段によって解決される。
【0009】
(1)生体の静脈および動脈を有する第1部分に装着する第1のカフと、前記第1のカフにより前記第1部分に加えられる第1印加圧力を変化させる圧力制御手段と、前記第1のカフが前記第1部分から受ける圧力から第1脈波を検出する第1脈波検出手段と、前記生体の前記第1部分と異なる第2部分において少なくとも動脈の脈波を含む第2脈波を検出する第2脈波検出手段と、前記圧力制御手段により前記第1印加圧力を変化させることで変化する、前記第1脈波検出手段により検出された第1脈波と前記第2脈波検出手段により検出された第2脈波との相関を解析する解析手段と、前記第1印加圧力と前記解析手段の解析結果とに基づいて静脈圧を算出する静脈圧算出手段と、を有する静脈圧測定装置。
【0010】
(2)生体の静脈および動脈を有する部分に装着するカフと、前記カフにより前記部分に加えられる印加圧力を変化させる圧力制御手段と、前記カフが前記部分から受ける圧力から脈波を検出する脈波検出手段と、前記圧力制御手段により前記印加圧力を変化させることで変化する前記脈波検出手段により検出された前記脈波と、前記印加圧力と、に基づいて静脈圧を算出する静脈圧算出手段と、を有する静脈圧測定装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る静脈圧測定装置によれば、静脈の脈波の変化を利用することで、生体が自然な状態における静脈圧の測定を簡易な装置により実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る静脈圧測定装置のブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る静脈圧測定装置により平均静脈圧を測定するときのフローチャートを示す図である。
【図3】上腕の心臓に対し近位と遠位の脈波、およびこれらの減算波形を示すグラフである。
【図4】印加圧力と減算波形の最大振幅との関係を示す図である。
【図5】第1脈波と第2脈波との関係を示すグラフを第1印加圧力値ごとに示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る静脈圧測定装置により平均静脈圧を測定するときのフローチャートを示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る静脈圧測定装置により平均静脈圧を測定するときのフローチャートを示す図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る静脈圧測定装置のブロック図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る静脈圧測定装置のブロック図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係る静脈圧測定装置により平均静脈圧を測定するときのフローチャートを示す図である。
【図11】本発明の第6実施形態に係る静脈圧測定装置により平均静脈圧を測定するときのフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る静脈圧測定装置について詳細に説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る静脈圧測定装置10のブロック図である。図1には、静脈圧測定装置10とともに生体100が示され、生体100の上腕101に第1カフ20aと第2カフ20bとが装着された状態が示されている。
【0015】
本実施形態に係る静脈圧測定装置10は、第1カフ20a(第1脈波検出手段)、第2カフ20b(第2脈波検出手段)、第1圧力制御部(圧力制御手段)30a、第2圧力制御部(圧力制御手段)30b、第1圧力センサ40a(第1脈波検出手段)、第2圧力センサ40b(第2脈波検出手段)、圧力波形解析部(解析手段、静脈圧算出手段)50、表示部60、および異常通知部(異常通知手段)65を有する構成により平均静脈圧を測定する。
【0016】
第1カフ20aは、生体の一部(第1部分)である腋窩部近傍の上腕101に巻かれることで装着され、第1圧力制御部30aの制御により装着された部分を加圧するとともに加圧した部分から受ける圧力として検出される血管壁の振動である脈波(以下「第1脈波」と称する)を第1圧力センサ40aに伝達する。なお、第1カフ20aが装着される場所は、動脈および静脈の両方が存在する部分であれば限定されない。第1脈波には、動脈および静脈の脈波が含まれ得る。
【0017】
第2カフ20bは、第1カフ20aと同様の機能を有し、上腕101の第1カフ20aより心臓に対し遠位の部分(第2部分)に装着される。第2カフ20bは、第2圧力制御部30bの制御により装着された部分を加圧するとともに加圧した部分から受ける脈波(以下、「第2脈波」と称する)を第2圧力センサ40bに伝達する。なお、第2カフ20bが装着される場所は、第1カフ20aが装着される部分と異なる部分であれば限定されないが、少なくとも動脈の脈波が検出可能な部分に装着される。従って、第2脈波には、少なくとも動脈の脈波が含まれる。
【0018】
本実施形態は、オシロメトリック法の原理を利用し、第1脈波と第2脈波との相関が最小となるときに第1カフ20aが生体に印加する圧力を平均静脈圧と推定するものである。このような推定が可能なのは、(1)静脈の血管内外の圧力差が最小になるときに静脈脈波が最大となることから静脈脈波が最大のときのカフによる印加圧力が平均静脈圧と推定できること、(2)静脈血管はコンプライアンスが大きく心臓から遠位になるにつれて静脈の脈波は減衰することから静脈脈波成分が大きくなるほど遠位と近位の脈波の相関が小さくなると考えられること、に基づく。
【0019】
なお、平均静脈圧より大きな圧力を静脈に加えると、印加圧力の上昇に伴って静脈拍動成分は徐々に小さくなり、静脈が完全に閉塞すると脈波から静脈拍動成分は消失する。平均静脈圧より小さい圧力を静脈に加えた場合にも脈波の静脈拍動成分は減少する。
【0020】
ここで、四肢静脈血管内腔には逆流防止弁があり、逆流防止弁よりも心臓に近い腋窩部近傍の上腕の静脈では逆流防止弁よりも遠位の静脈より静脈拍動が大きく現れる。従って、逆流防止弁を跨いで第1カフ20aおよび第2カフ20bが装着されるとともに、第1カフ20aはできるだけ心臓に近い位置に装着されることにより、第1脈波および第2脈波の各静脈成分の差を大きくすることができる。これにより、第1脈波と第2脈波との相関をより精密に計測でき、平均静脈圧の測定精度を向上させることができる。第1カフ20aが腋窩部近傍の上腕101に装着され、第2カフ20bが上腕101の第1カフ20aより心臓に対し遠位の部分に装着されることでこのような条件を満たすことができる。
【0021】
また、第1カフ20aと心臓の高さが等しい体位としたときに測定される平均静脈圧は、中心静脈圧と考えることができるため、このような体位とすることで本実施形態に係る静脈圧測定装置により中心静脈圧を測定することができる。
【0022】
第1圧力制御部30aは、第1カフ20aを制御し、第1カフ20aが装着された部分を所定の圧力に加圧し、また加圧している圧力を変化させる。第1圧力制御部30aは、例えば、第1カフ20aに空気を送ることで第1カフ20aが装着された部分を加圧することができる。
【0023】
第2圧力制御部30bは、第2カフ20bを制御し、第2カフ20bが装着された部分を所定の圧力で加圧し、また加圧している圧力を変化させることができる。第2圧力制御部30bは、例えば、第2カフ20bに空気を送ることで第2カフ20bが装着された部分を加圧することができる。
【0024】
第1圧力センサ40aは、第1カフ20aから第1脈波の伝達を受け、第1脈波を電気信号として圧力波形解析部50に出力する。第1圧力センサ40aが第1カフ20aから受ける第1脈波は空気を媒体とした圧力波形であり、第1圧力センサ40aは圧力による信号を電気信号に変換する圧電素子とすることができる。
【0025】
第2圧力センサ40bは、第2カフ20bから第2脈波の伝達を受け、第2脈波を電気信号として圧力波形解析部50に出力する。第2圧力センサ40bが第2カフ20bから受ける第2脈波は空気を媒体とした圧力波形であり、第2圧力センサ40bは圧力による信号を電気信号に変換する圧電素子とすることができる。
【0026】
圧力波形解析部50は、第1圧力センサ40aおよび第2圧力センサ40bからそれぞれ第1脈波および第2脈波を受信し、第1圧力制御部30aおよび第2圧力制御部30bからそれぞれ上腕部への印加された圧力の値を受信し、第1脈波と第2脈波との相関が最小となるときに第1カフ20aにより生体に印加された圧力に基づいて静脈圧を算出する。
【0027】
圧力波形解析部50は、第1脈波または第2脈波の波形、各種演算結果を表示部60に送信する。
【0028】
表示部60は、圧力波形解析部50から受信した各種波形または各種演算結果を表示する。表示部60は、例えば、液晶ディスプレイにより構成することができる。また、表示部60は、外部から表示を切替えるための信号を受け付けるタッチパネルであってもよい。
【0029】
異常通知部(異常通知手段)65は、圧力波形解析部50が算出した静脈圧が閾値を超えたかどうかを判定し、閾値を超えた場合はその旨通知する。前記通知は、測定された静脈圧値とともに異常であることを知らせる表示を表示部60に表示することでユーザに通知してもよく、他の装置に測定された静脈圧値とともに異常であることを知らせる通知を送信することでユーザに通知してもよい。
【0030】
閾値は、例えば、医師が臨床において異常と判断する場合に用いる一般的な数値とすることができる。
【0031】
図2は、本実施形態に係る静脈圧測定装置により平均静脈圧を測定するときのフローチャートを示す図である。
【0032】
第1圧力制御部30aおよび第2圧力制御部30bは、それぞれ、心臓の近位に装着された第1カフ20aにより腋窩部近傍の上腕101に印加される圧力(以下、「第1印加圧力」と称する)および遠位に装着された第2カフ20bにより上腕部101に印加される圧力(以下、「第2印加圧力」と称する)を0mmHgに設定する(S200)。
【0033】
第1圧力制御部30aおよび第2圧力制御部30bは、それぞれ、第1印加圧力および第2印加圧力を所定の大きさ増圧する(S201)。ここで、1回の増圧幅である所定の大きさは、例えば10mmHgとすることができる。本実施形態においては、第1印加圧力と第2印加圧力の大きさは同じ値に設定するが、異なる値としてもよい。
【0034】
第1カフ20aおよび第1圧力センサ40aは第1脈波を、第2カフ20bおよび第2圧力センサ40bは第2脈波を、それぞれ同時に測定し(S202)、圧力波形解析部50は第1脈波と第2脈波の相関を計算する(S203)。
【0035】
図3は、上腕の心臓に対し近位と遠位の脈波、およびこれらの減算波形を示すグラフである。ここで、グラフの横軸は経過時間を示し、縦軸は脈波の振幅を示している。なお、振幅は、各脈波からその中心値(直流的な成分)を減算した値として示している。
【0036】
図3には、第1印加圧力および第2印加圧力を10mmHgから50mmHgまで変化させたときの第1脈波(近位脈波)と第2脈波(遠位脈波)、および第1脈波から第2脈波に相関する成分を減算した波形が10mmHgごとに示されている。
【0037】
上腕の心臓に対し近位の部分における第1脈波から上腕の心臓に対し遠位の部分における第2脈波を減算して減算波形を求めることにより第1脈波と第2脈波との相関を計算することができる。減算波形の振幅が大きいと相関が小さく、振幅が小さいと相関が大きい。ここで、図3のグラフは、第1カフ20aと第2カフ20bとの間を圧脈波が伝播する時間を考慮し、第1脈波と第2脈波の位相を合わせる位相補正を行っている。具体的には、第1カフ20aから第2カフ20bに圧脈波が伝達する時間を40msecとし、0.1msecごとのサンプルデータを400サンプル分相対的にシフトさせている。なお、第1脈波および第2脈波のピークあるいは微分波形のピークの時間差を測定して該時間差をなくすような位相補正をしてもよい。また、印加圧力を大きくしたときの第1脈波と第2脈波との相関を求め、相関が最大となるシフト量を位相補正時のシフト量としてもよい。
【0038】
図4は、印加圧力と減算波形の最大振幅との関係を示す図である。
【0039】
図4によれば、第1印加圧力および第2印加圧力を20mmHgとしたときの減算波形の振幅が最大となっていることから、平均静脈圧を20mmHgと推定することができる。
【0040】
なお、このようにして推定された平均静脈圧に対し必要に応じて補正をして測定精度を向上させることができるのは勿論である。例えば、予めカフ圧とカテーテルを用いて測定した血圧内圧との関係の一般的なデータを入手しておき、減算波形の振幅が最大となるときの第1印加圧力(カフ圧)との比較により求めた血圧内圧を平均静脈圧とする補正をすることができる。
【0041】
図5は、第1脈波と第2脈波との関係を示すグラフを第1印加圧力値ごとに示す図である。横軸は第2脈波の振幅を、縦軸は第1脈波の振幅を示している。図5には、第1脈波と第2脈波との相関を示す寄与率Rの二乗値R2を併せて示している。R2値は第1脈波と第2脈波との相関が大きいほど大きい値を示す。
【0042】
図5によれば、第1印加圧力が20mmHgのときにR2値が最小となっていることから、このときに第1脈波と第2脈波との相関が最も小さいことが明らかである。
【0043】
静脈圧測定装置10は、第1脈波と第2脈波との相関を示すR2値が所定値以上になるまで(S204、NO)、第1印加圧力および第2印加圧力の増圧(S201)、第1脈波および第2脈波の測定(S202)、第1脈波と第2脈波の相関の計算(S203)を繰り返す。前記所定値は、例えば、0.9とすることができる。
【0044】
圧力波形解析部50は、R2の値が所定値以上になった場合は(S204、YES)、それまでの測定結果に基づいて、R2の値が最小となるときの第1印加圧力を求め(S205)、求めた第1印加圧力を平均静脈圧と推定する(S206)。
【0045】
なお、ステップS203において計算された第1脈波と第2脈波との相関を示すR2値が減少から増加に転じた時点で第1脈波および第2脈波の測定を終了し、その時点でR2の値が最小となるときの第1印加圧力を平均静脈圧と推定してもよい。
【0046】
本実施形態に係る静脈圧測定装置は、心臓に対し近位における脈波と遠位における脈波との相関が最小になるときのカフ圧を平均静脈圧と推定することにより平均静脈圧を測定するものである。これは、心臓に対し遠位における脈波を利用して、近位における脈波から静脈の脈波成分を抽出し、静脈の脈波成分が最大となるときのカフ圧を平均静脈圧と推定することと等価である。
【0047】
本実施形態に係る静脈圧測定装置は、右心房の収縮拡張に由来する静脈の脈波を利用して静脈圧を推定する。従って、静脈を閉塞することによる鬱血が生じたとしても心臓からの静脈脈波の圧伝播を阻害するものではないので、鬱血の有無が測定上ほとんど問題とならない。
【0048】
本実施形態に係る静脈圧測定装置によれば、静脈の脈波を抽出しその脈波の変化を利用することで、生体が自然な状態における静脈圧の測定を簡易な装置により実現することができる。
【0049】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る静脈圧測定装置について説明する。なお、第1実施形態と重複する説明は省略する。
【0050】
本実施形態と第1実施形態とで異なる点は、第1実施形態は心臓に対し近位の脈波である第1脈波と遠位の脈波である第2脈波との相関が最小となるときの印加圧力を平均静脈圧と推定するのに対し、本実施形態は、第1脈波から動脈の脈波成分を減算し減算後の第1脈波の振幅が最大となるときの印加圧力を平均静脈圧と推定する点である。
【0051】
図6は、本実施形態に係る静脈圧測定装置により平均静脈圧を測定するときのフローチャートを示す図である。
【0052】
ステップS600〜S604においては、第1実施形態と同様に、第1脈波と第2脈波の測定を、両者の相関を示すR2値が所定値以上になるまで繰り返す。
【0053】
圧力波形解析部50は、R2値が最大となるときの第1脈波と第2脈波の相関の回帰式の傾きを求める(S605)。
【0054】
回帰式は、図5において、第1脈波と第2脈波との関係のグラフに測定結果と共に示されている直線が表す式である。図5によれば、R2値が最大となるのは第1印加圧力が40mmHgのときである。圧力波形解析部50は、このときの回帰式の傾きSを計算する。
【0055】
圧力波形解析部50は、第1脈波と第2脈波の動脈成分の比が一定であると仮定し、第2脈波に、ステップS605で計算した回帰式の傾きSを乗じることにより、第1脈波の動脈脈波成分を求める(S606)。ここで、動脈脈波成分とは、脈波のうち動脈の脈動に起因する部分を言う。
【0056】
圧力波形解析部50は、ステップS606で求めた第1脈波の動脈脈波成分を各第1脈波から減算することにより各第1脈波の静脈脈波成分を抽出する(S607)。ここで、静脈脈波成分とは、脈波のうち静脈の脈動に起因する部分をいう。
【0057】
圧力波形解析部50は、ステップS607で抽出した各第1脈波の静脈脈波成分のうち振幅が最大となるときの第1印加圧力を求め(S608)、求めた第1印加圧力を平均静脈圧と推定する(S609)。
【0058】
本実施形態に係る静脈圧測定装置によれば、静脈の脈波を抽出しその脈波の変化を利用することで、生体が自然な状態における静脈圧の測定を簡易な装置により実現することができる。
【0059】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る静脈圧測定装置について説明する。
【0060】
図7は、本実施形態に係る静脈圧測定装置により平均静脈圧を測定するときのフローチャートを示す図である。
【0061】
第2カフ20bおよび第2圧力制御部30bによりオシロメトリック法で動脈血圧が測定された後(S700)、第1カフ20aにより生体に印加される第1印加圧力と第2カフ20bにより生体に印加される第2印加圧力とは動脈血圧拡張期圧まで増圧される(S701)。その後、第2印加圧力は動脈血圧拡張期圧に保持されたまま、第1カフ20aにより印加される第1印加圧力は2mmHg/sの速度で連続的に減圧され(S702)、第1脈波と第2脈波とがそれぞれ測定される(S703)。測定は第1印加圧力が5mmHg以下に減圧されるまで継続される(S704、NO)。
【0062】
第1印加圧力が5mmHg以下になった場合は(S704、YES)、一連の第1脈波から一連の第2脈波に相関する成分を減算し、第1脈波から静脈の脈波成分が抽出され(S705)、抽出された第1脈波の静脈成分の振幅が最大となるときの第1印加圧力を求め(S706)、求めた第1印加圧力を平均静脈圧と推定する(S707)。
【0063】
本実施形態においては、第2印加圧力を平均静脈圧より大きい動脈血圧拡張期圧に保持し、第2カフ20bが装着された部分の静脈を圧閉することにより、第2脈波から静脈の脈波成分を除去する。そして、第2脈波から抽出された動脈の脈波成分を第1脈波から減算することで第1脈波から静脈の脈波成分を抽出し、抽出した静脈の脈波成分の振幅が最大となるときの第1印加圧力を平均静脈圧と推定するものである。
【0064】
本実施形態に係る静脈圧測定装置によれば、静脈の脈波を抽出しその脈波の変化を利用することで、生体が自然な状態における静脈圧の測定を簡易な装置により実現することができる。
【0065】
(第4実施形態)
図8は、本発明の第4実施形態に係る静脈圧測定装置10のブロック図である。図8には、静脈圧測定装置10とともに生体100が示され、生体100の腋窩部に第1カフ20aが装着され、指先に光電容積脈波センサ70が装着された状態が示されている。
【0066】
本実施形態においては、第1実施形態または第3実施形態における第2カフ20bおよび第2圧力センサ40bの代わりに光電容積脈波センサ70および光電容積脈波入力回路80を用いる。すなわち、第1実施形態および第3実施形態における第2脈波を、光電容積脈波センサ70および光電容積脈波入力回路80により検出して利用するものである。これ以外の点においては、第1実施形態または第3実施形態と同様であるため重複する説明は省略する。
【0067】
光電容積脈波センサ70は、ヘモグロビンにより吸収される波長帯の光を発光する発光素子と、発光素子から発光された光を受光する受光素子とを有し、生体の指先に装着されることで光電容積脈波を検出する素子である。光電容積脈波センサ70は、第1カフ20aより心臓に対し遠位に装着される。これにより、第1脈波より動脈の脈波成分の比率の大きい第2脈波を検出することができる。
【0068】
光電容積脈波入力回路80は光電容積脈波センサ70から光電容積脈波の電気信号を受信し、これを適当な大きさの電圧電気信号に増幅して圧力波形解析部50に出力する。
【0069】
本実施形態に係る静脈圧測定装置によれば、第1実施形態および第3実施形態と同様に、静脈の脈波を抽出しその脈波の変化を利用することで、生体が自然な状態における静脈圧の測定を簡易な装置により実現することができる。
【0070】
(第5実施形態)
図9は、本発明の第5実施形態に係る静脈圧測定装置10のブロック図である。
【0071】
図9に示すように、本実施形態に係る静脈圧測定装置10は、第1カフ20a、第1圧力制御部30a、第1圧力センサ40a、圧力波形解析部50、表示部60を有する。すなわち、第1実施形態〜第3実施形態は、カフ、圧力制御部、圧力センサをそれぞれ2つ有するのに対し、本実施形態に係る静脈圧測定装置10は、それぞれ1つ有する。これ以外の静脈圧測定装置10の構成は第1実施形態と同一であるため、重複する説明は省略する。
【0072】
図10は、本実施形態に係る静脈圧測定装置により平均静脈圧を測定するときのフローチャートを示す図である。
【0073】
第1カフ20aおよび第1圧力センサ40aで動脈血圧拡張期圧を測定する(S1000)。動脈血圧拡張期圧は通常のオシロメトリック法により測定することができる。
【0074】
次に第1カフ20aを腋窩部近傍の上腕に装着して、圧力制御部30aにより、第1カフ20aが腋窩部近傍の上腕に加える第1印加圧力が0mmHgに設定される(S1001)。その後、第1カフ20aおよび第1圧力センサ40aにより第1脈波が測定され、第1印加圧力が所定の増加幅で増圧される(S1004)。このように、第1印加圧力を増加させつつ行う第1脈波の測定は、第1印加圧力がステップS1000で測定された動脈血圧拡張期圧に達するまで繰り返される(S1004、NO)。
【0075】
第1印加圧力が動脈血圧拡張期圧以上となったときは(S1004、YES)、測定を終了し、測定された第1脈波の振幅が最大となるときの第1印加圧力を求め(S1005)、求めた第1印加圧力を平均静脈圧と推定する(S1006)。
【0076】
本実施形態においては、動脈血圧拡張期圧以下の範囲内でカフ圧力を腋窩部近傍の上腕に印加し、印加したカフ圧を変化させることによりカフで検出される脈波の振幅が最大となるときのカフ圧を求める。すなわち、カフ圧が平均静脈圧に至った際に静脈が圧閉されることによる脈圧の振幅の変化を検出することにより平均静脈圧を推定する。
【0077】
本実施形態に係る静脈圧測定装置によれば、静脈の脈波の変化を利用することで、生体が自然な状態における静脈圧の測定を簡易な装置により実現することができる。
【0078】
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態に係る静脈圧測定装置について説明する。
【0079】
本実施形態と第5実施形態とで異なる点は、第5実施形態は第1印加圧力を変化させたときに脈波の振幅が最大になるときの第1印加圧力を平均静脈圧と推定するのに対し、本実施形態は第1印加圧力を最大にしたときに検出される脈波を参照脈波とし参照脈波と脈波との相関が最小となるときの第1印加圧力を平均静脈圧と推定する点で異なる。この点を除き、本実施形態は第5実施形態と同様であるため重複する説明は省略する。
【0080】
図11は、本実施形態に係る静脈圧測定装置により平均静脈圧を測定するときのフローチャートを示す図である。
【0081】
ステップS1100〜S1104においては、第5実施形態のステップS1000〜S1004と同様に、動脈血圧拡張期圧以下の範囲内で第1印加圧力を0mmHgから所定の増加幅で増圧するとともに第1脈波を測定する。
【0082】
圧力波形解析部50は、測定した第1脈波のデータを第1印加圧力とともに保存する。
【0083】
その後、第1印加圧力を最大値である動脈血圧拡張期圧としたときの第1脈波を参照波形とし(S1105)、参照波形と脈波の相関が最小となるときの第1印加圧力を平均静脈圧と推定する(S1106)。相関は、第1実施形態と同様に求めることができる。
【0084】
ここで、第1脈波と参照脈波と同期をとるために心電図および光電容積脈波の少なくともいずれかを利用することができる。
【0085】
本実施形態に係る静脈圧測定装置によれば、静脈の脈波を抽出しその脈波の変化を利用することで、生体が自然な状態における静脈圧の測定を簡易な装置により実現することができる。
【0086】
以上、本発明の実施形態に係る静脈圧測定装置について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【0087】
例えば、第3実施形態以外の実施形態においては印加圧力を0mmHgから増圧させて脈波を測定しているが、適当な大きさの圧力から減圧させて脈波を測定してもよい。また、第3実施形態においては、印加圧力を動脈血圧拡張期圧から減圧させて脈波を測定しているが、適当な大きさの圧力から増圧させて脈波を測定してもよい。
【符号の説明】
【0088】
10 静脈圧測定装置、
20a 第1カフ、
20b 第2カフ、
30a 第1圧力制御部、
30b 第2圧力制御部、
40a 第1圧力センサ、
40b 第2圧力センサ、
50 圧力波形解析部、
60 表示部、
65 異常通知部、
70 光電容積脈波センサ、
80 光電容積脈波入力回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の静脈および動脈を有する第1部分に装着する第1のカフと、
前記第1のカフにより前記第1部分に加えられる第1印加圧力を変化させる圧力制御手段と、
前記第1のカフが前記第1部分から受ける圧力から第1脈波を検出する第1脈波検出手段と、
前記生体の前記第1部分と異なる第2部分において少なくとも動脈の脈波を含む第2脈波を検出する第2脈波検出手段と、
前記圧力制御手段により前記第1印加圧力を変化させることで変化する、前記第1脈波検出手段により検出された第1脈波と前記第2脈波検出手段により検出された第2脈波との相関を解析する解析手段と、
前記第1印加圧力と前記解析手段の解析結果とに基づいて静脈圧を算出する静脈圧算出手段と、
を有することを特徴とする静脈圧測定装置。
【請求項2】
前記静脈圧算出手段は、前記解析手段の解析結果が前記相関が最小となったときの前記第1印加圧力に基づいて前記静脈圧を算出することを特徴とする請求項1に記載の静脈圧測定装置。
【請求項3】
前記解析手段は、前記第1脈波から第2脈波と相関する成分を減算することにより静脈脈波成分を得ることを特徴とする請求項1に記載の静脈圧測定装置。
【請求項4】
前記第2脈波に相関する成分は、前記第2脈波の動脈脈波成分と前記第1脈波とから算出された前記第1脈波の動脈脈波成分であることを特徴とする請求項3に記載の静脈圧測定装置。
【請求項5】
前記静脈圧算出手段は、前記静脈脈波成分の振幅が最大となるときの前記第1印加圧力に基づいて前記静脈圧を算出することを特徴とする請求項3または4に記載の静脈圧測定装置。
【請求項6】
前記第1のカフは、頚部または腋窩近傍の上腕に装着することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の静脈圧測定装置。
【請求項7】
前記第2脈波検出手段は、生体の前記第1のカフより心臓に対し遠位の第2部分に装着する第2のカフであり、
前記圧力制御手段は、前記第2のカフにより前記第2部分に加えられる第2印加圧力をさらに制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の静脈圧測定装置。
【請求項8】
前記第1のカフは腋窩近傍の上腕に装着し、前記第2のカフは前記第1のカフが装着される上腕で、前記第1のカフより心臓に対し遠位に装着することを特徴とする請求項7に記載の静脈圧測定装置。
【請求項9】
前記第2脈波検出手段は、光電容積脈波センサであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の静脈圧測定装置。
【請求項10】
前記圧力制御手段は前記第1のカフによる第1印加圧力と前記第2のカフによる第2印加圧力とを同じ圧力に制御することを特徴とする請求項7または8に記載の静脈圧測定装置。
【請求項11】
前記圧力制御手段は、前記第2印加圧力を、予め予想した静脈圧以上の圧力に一定に保持することを特徴とする請求項7または8に記載の静脈圧測定装置。
【請求項12】
前記第1脈波と前記第2脈波との位相差を小さくする補正をする位相補正手段をさらに有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の静脈圧測定装置。
【請求項13】
前記静脈圧算出手段が算出した前記静脈圧が閾値を超えたかどうかを判定し、前記閾値を超えた場合はその旨通知する異常通知手段をさらに有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の静脈圧測定装置。
【請求項14】
同じ上腕に装着される第1のカフと第2のカフとの間に装着されて動脈圧を測定するための第3のカフをさらに有し、
これら3つのカフは一体構造をなすことを特徴とする請求項7または8に記載の静脈圧測定装置。
【請求項15】
前記静脈圧算出手段は、予め実測した静脈圧と前記第1印加圧力との関係を用いて、算出した静脈圧を補正することを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の静脈圧測定装置。
【請求項16】
生体の静脈および動脈を有する部分に装着するカフと、
前記カフにより前記部分に加えられる印加圧力を変化させる圧力制御手段と、
前記カフが前記部分から受ける圧力から脈波を検出する脈波検出手段と、
前記圧力制御手段により前記印加圧力を変化させることで変化する前記脈波検出手段により検出された前記脈波と、前記印加圧力と、に基づいて静脈圧を算出する静脈圧算出手段と、
を有することを特徴とする静脈圧測定装置。
【請求項17】
前記静脈圧算出手段は、前記脈波検出手段により検出された前記脈波の振幅が最大となるときの前記印加圧力に基づいて静脈圧を算出することを特徴とする請求項16に記載の静脈圧測定装置。
【請求項18】
予め予想した静脈圧より大きい基準圧力を前記印加圧力としたときに前記脈波検出手段により検出される参照脈波と前記基準圧力より小さい圧力を前記印加圧力としたときに前記脈波検出手段により検出される脈波との相関を解析する解析手段をさらに備え、前記印加圧力と前記解析手段の解析結果とに基づいて静脈圧を算出することを特徴とする請求項16に記載の静脈圧測定装置。
【請求項19】
前記解析手段は、前記脈波から前記参照脈波と相関する成分を減算することにより前記相関を得ることを特徴とする請求項18に記載の静脈圧測定装置。
【請求項20】
前記静脈圧算出手段は、前記相関が最小となるときの前記印加圧力に基づいて前記静脈圧を算出することを特徴とする請求項18または19に記載の静脈圧測定装置。
【請求項21】
前記圧力制御手段が前記印加圧力を変化させたとき、前記脈波検出手段が検出する前記脈波と前記参照脈波との同期をとるために心電図および光電容積脈波の少なくともいずれかを利用することを特徴とする請求項18〜20のいずれか一項に記載の静脈圧測定装置。
【請求項22】
前記静脈圧算出手段は、予め実測した静脈圧と前記印加圧力との関係を用いて、算出した静脈圧を補正することを特徴とする請求項16〜21のいずれか一項に記載の静脈圧測定装置。
【請求項1】
生体の静脈および動脈を有する第1部分に装着する第1のカフと、
前記第1のカフにより前記第1部分に加えられる第1印加圧力を変化させる圧力制御手段と、
前記第1のカフが前記第1部分から受ける圧力から第1脈波を検出する第1脈波検出手段と、
前記生体の前記第1部分と異なる第2部分において少なくとも動脈の脈波を含む第2脈波を検出する第2脈波検出手段と、
前記圧力制御手段により前記第1印加圧力を変化させることで変化する、前記第1脈波検出手段により検出された第1脈波と前記第2脈波検出手段により検出された第2脈波との相関を解析する解析手段と、
前記第1印加圧力と前記解析手段の解析結果とに基づいて静脈圧を算出する静脈圧算出手段と、
を有することを特徴とする静脈圧測定装置。
【請求項2】
前記静脈圧算出手段は、前記解析手段の解析結果が前記相関が最小となったときの前記第1印加圧力に基づいて前記静脈圧を算出することを特徴とする請求項1に記載の静脈圧測定装置。
【請求項3】
前記解析手段は、前記第1脈波から第2脈波と相関する成分を減算することにより静脈脈波成分を得ることを特徴とする請求項1に記載の静脈圧測定装置。
【請求項4】
前記第2脈波に相関する成分は、前記第2脈波の動脈脈波成分と前記第1脈波とから算出された前記第1脈波の動脈脈波成分であることを特徴とする請求項3に記載の静脈圧測定装置。
【請求項5】
前記静脈圧算出手段は、前記静脈脈波成分の振幅が最大となるときの前記第1印加圧力に基づいて前記静脈圧を算出することを特徴とする請求項3または4に記載の静脈圧測定装置。
【請求項6】
前記第1のカフは、頚部または腋窩近傍の上腕に装着することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の静脈圧測定装置。
【請求項7】
前記第2脈波検出手段は、生体の前記第1のカフより心臓に対し遠位の第2部分に装着する第2のカフであり、
前記圧力制御手段は、前記第2のカフにより前記第2部分に加えられる第2印加圧力をさらに制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の静脈圧測定装置。
【請求項8】
前記第1のカフは腋窩近傍の上腕に装着し、前記第2のカフは前記第1のカフが装着される上腕で、前記第1のカフより心臓に対し遠位に装着することを特徴とする請求項7に記載の静脈圧測定装置。
【請求項9】
前記第2脈波検出手段は、光電容積脈波センサであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の静脈圧測定装置。
【請求項10】
前記圧力制御手段は前記第1のカフによる第1印加圧力と前記第2のカフによる第2印加圧力とを同じ圧力に制御することを特徴とする請求項7または8に記載の静脈圧測定装置。
【請求項11】
前記圧力制御手段は、前記第2印加圧力を、予め予想した静脈圧以上の圧力に一定に保持することを特徴とする請求項7または8に記載の静脈圧測定装置。
【請求項12】
前記第1脈波と前記第2脈波との位相差を小さくする補正をする位相補正手段をさらに有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の静脈圧測定装置。
【請求項13】
前記静脈圧算出手段が算出した前記静脈圧が閾値を超えたかどうかを判定し、前記閾値を超えた場合はその旨通知する異常通知手段をさらに有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の静脈圧測定装置。
【請求項14】
同じ上腕に装着される第1のカフと第2のカフとの間に装着されて動脈圧を測定するための第3のカフをさらに有し、
これら3つのカフは一体構造をなすことを特徴とする請求項7または8に記載の静脈圧測定装置。
【請求項15】
前記静脈圧算出手段は、予め実測した静脈圧と前記第1印加圧力との関係を用いて、算出した静脈圧を補正することを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の静脈圧測定装置。
【請求項16】
生体の静脈および動脈を有する部分に装着するカフと、
前記カフにより前記部分に加えられる印加圧力を変化させる圧力制御手段と、
前記カフが前記部分から受ける圧力から脈波を検出する脈波検出手段と、
前記圧力制御手段により前記印加圧力を変化させることで変化する前記脈波検出手段により検出された前記脈波と、前記印加圧力と、に基づいて静脈圧を算出する静脈圧算出手段と、
を有することを特徴とする静脈圧測定装置。
【請求項17】
前記静脈圧算出手段は、前記脈波検出手段により検出された前記脈波の振幅が最大となるときの前記印加圧力に基づいて静脈圧を算出することを特徴とする請求項16に記載の静脈圧測定装置。
【請求項18】
予め予想した静脈圧より大きい基準圧力を前記印加圧力としたときに前記脈波検出手段により検出される参照脈波と前記基準圧力より小さい圧力を前記印加圧力としたときに前記脈波検出手段により検出される脈波との相関を解析する解析手段をさらに備え、前記印加圧力と前記解析手段の解析結果とに基づいて静脈圧を算出することを特徴とする請求項16に記載の静脈圧測定装置。
【請求項19】
前記解析手段は、前記脈波から前記参照脈波と相関する成分を減算することにより前記相関を得ることを特徴とする請求項18に記載の静脈圧測定装置。
【請求項20】
前記静脈圧算出手段は、前記相関が最小となるときの前記印加圧力に基づいて前記静脈圧を算出することを特徴とする請求項18または19に記載の静脈圧測定装置。
【請求項21】
前記圧力制御手段が前記印加圧力を変化させたとき、前記脈波検出手段が検出する前記脈波と前記参照脈波との同期をとるために心電図および光電容積脈波の少なくともいずれかを利用することを特徴とする請求項18〜20のいずれか一項に記載の静脈圧測定装置。
【請求項22】
前記静脈圧算出手段は、予め実測した静脈圧と前記印加圧力との関係を用いて、算出した静脈圧を補正することを特徴とする請求項16〜21のいずれか一項に記載の静脈圧測定装置。
【図1】
【図2】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2012−205822(P2012−205822A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74839(P2011−74839)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】
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