説明

静脈治療装置および方法

導入手段を装着し、その本体内に中空のチャンネルを有しそして近位の末端と遠位の末端とを有するカテーテルまたはハンドピース;放射の2つの異なる波長を射出し、1つの波長がヘモグロビン−水により主として吸収されそして他の波長が静脈の壁中の水−コラーゲンにより主として吸収されて該静脈の閉鎖を行う放射源;該放射源へ接続されそして該カテーテルまたはハンドピースを通る光ファイバー;および治療中該静脈に沿って該射出放射手段を移動させる手段からなる皮膚の不規則さの治療、血管異常特に静脈瘤の排除および外科的処置における一般的な補助のための皮下レーザー治療システムの提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静脈の経皮治療のための装置/システムおよび方法である。特に、この方法および装置は、静脈の破壊を行うために、約980nmおよび約1460nmを組み合わせるかまたは後者単独の波長により、異常なまたは病気にかかった静脈を静脈内で照射することによって、静脈の破壊を目的とする。
【背景技術】
【0002】
本発明は、病気にかかったまたは異常な静脈、特に静脈瘤の静脈内加熱治療のための装置および方法である。症候性の懸念および美容上の懸念から下肢静脈の治療を求める人々の数が増加している。静脈内治療の使用は、血管の治療部位の付近に近づいて治療することを可能にし、そして皮膚表面を治療するレーザー(より強力であり、周囲の組織へ損傷を生じそして有効な治療ではない)に比べたとき、より害がなくそしてより強力ではないレーザーの使用を可能にする。
【0003】
静脈は、開いたとき血液を1つの方向に流れさせそして閉じたとき逆流を防ぐ多くの一方方向の弁を含む、壁の薄い血管である。これらの弁は、血管中の血液の量が増えたとき、弱くなるかまたは機能不全になり、血管壁に働く圧力により、血管壁を膨張させるかまたは拡大させる。静脈瘤は、成人の普通の医学上の症状であって、多くの場合に美容上の変形が視られる、脚の腫脹、痛みおよび不快のような症状を有する。もし治療することなく放置しておくと、静脈瘤は多くの医学上の合併症を引き起こす。
【0004】
顔面の毛細血管拡張症および或る下肢静脈のような種々の血管の疾患の治療におけるレーザーの使用は、外部的に達成されて或る程度の成功を収めている。この技法において、レーザーエネルギーは、皮膚の表面に照射されて、浸透すると血液に吸収され、血液を凝固し血管を虚脱させる。深い軟組織に生ずる大きな静脈瘤は、より高いパワーを必要とするために、この方法では治療できない。これは、また瘢痕および皮膚の色素変化を含む副作用を生じさせることがある。
【0005】
一時的な緩和のために種々の形の治療があり、例えば圧迫ストッキングまたは関係部位の上昇が普通に行われている。静脈瘤に関する通常の長期治療は、硬化療法、外来の静脈切除、伏在−大腿接合部不全の場合の大伏在静脈の結紮および静脈抜去を含む。硬化療法は、静脈中への化学刺激剤の導入を含む。この化合物は、静脈壁に作用し、静脈壁を閉塞し血流をブロックする。合併症は重度であり、皮膚潰瘍、皮膚反応および永久的な着色を生ずる。治療は、また或る静脈サイズの範囲に限られ、そして血管の再開通による再発率が比較的高い。外科的切除は、麻酔薬を使用することが必要とされ、そして回復に要する期間が長い。たとえ成功率が高くても、プロセスは高価でありそして手術による合併症が生じやすい。外科的切除は、また治療箇所に永久的な瘢痕および変形を残す。外来の静脈切除は、静脈を除くために静脈の長さ方向の皮膚に複数の切除をしなければならない。このプロセスは、比較的長く、高価でありそして組織に目に見える瘢痕を残す。
【0006】
静脈瘤を治療するのに使用される他の技法の1つは、血管壁へ直接電気により発生する熱を伝えるRFエネルギーである。この技法では、血管壁に沿うエネルギーの適用が一層一様になる。しかし、使用されるカテーテルが高価であってしかも複雑であり、またカテーテルが静脈内部を加熱し、そして多くの場合、無差別に周囲の組織を損傷させる。ダイオードレーザーが小さいファイバーを用いるためそして熱が血管の内部に残るため、皮膚の表面の小さい血管は治療できる。これは、電子加熱法を用いては行うことができない。
血管内レーザー治療は、静脈逆流疾患にとり比較的新しい技法である。この技法では、光ファイバーが、治療されるべき静脈中に経皮で挿入される。レーザーエネルギーは、次に血管中へ裸のファイバーチップを経て放射される。エネルギーは、静脈の内容物と接触し、静脈を閉塞するかまたは虚脱させる。レーザーは、治療されるべき静脈の全体に沿って徐々に引き出される。
【0007】
静脈瘤を治療する従来の技術は、血液中のヘモグロビンを目標にし、次に血管壁へ熱を移動させることにより、血管壁を加熱しようとするものである。波長は500nmから1100nmに及び、そして他の波長に比べて組織に散乱する。これらの波長は、吸収する媒体により停止されない限り種々の深さに浸透する。500nmから1100nmの波長の範囲は、もしパワーのレベルが安全な限界内でないならば、周囲の組織に損傷を生じさせる。静脈中の血液は、ヘモグロビンの存在下1mm以下でこれらの波長のエネルギーを吸収する。これは、血液を急速に加熱し、伝導によりそして直接的な壁の吸収によることなく、静脈壁を損傷する。これらの波長範囲は、しかし、ほぼ980nmの波長のヘモグロビンおよびオキシヘモグロビンの吸収ピークにより分かるように、血液の吸収にとり好ましいが、これは、特定の部位でのより高いパワーおよびより長いパルス時間の使用を必要とするため、血液から静脈壁へのこの熱の伝導によって静脈壁を閉塞しない。より高い波長は、ほぼ1460nmの波長の吸収ピークから分かるように、静脈壁における遙かに高い水およびコラーゲンの吸収を有する。
【0008】
特許文献1では、静脈瘤または大きな伏在静脈の治療の装置および方法が示されている。この装置は、静脈を閉塞し再吸収する治療に用いられる1320nmの波長のレーザーを含む。光ファイバーカテーテルは、フロストまたはディフューザーチップカテーテル、モーター駆動プルバック装置および血管の温度を追跡する熱センサーを有する。この技術は、静脈壁を有効に閉塞するために継続する前に、血液の排出を要する。この波長範囲で血液により吸収されるエネルギーは比較的低く、そのため、この範囲における血液の有効な吸収は認められない。これは、もし血液が存在すると、治療されるべき静脈の治療は不適切または不完全になる。また、周囲の組織の損傷を最低にするための手段を設けることから、より高いエネルギーを使用する冷却メカニズムを用いることも考えられる。部位についてより高いエネルギーまたはより長い露出時間を使用することは、末梢静脈および周囲組織を損傷させる。
【0009】
特許文献2では、血管を治療するために、約532nmから約1064nmの波長のレーザーエネルギーを用いることを記述している。この技術は、治療の開始時および治療中、血管壁とファイバーチップとの間の接触を確実にするために、レーザーチップ上に圧力をかけそして血管中の血液を空にする必要がある。これらの必要性のため、血管に孔が開きそして血液が周囲の組織または静脈中に流れ、不快感および紫斑を生じさせる。接触点に向けられるレーザーエネルギーは、血管壁および周囲に孔を直接的または間接的に開ける。これらの波長範囲は、透過エネルギーにより生ずる火傷を最小にするための冷却メカニズムを要する。
【0010】
特許文献3および4では、皮下のレーザー治療を行う装置が記述されている。治療は、異なる治療に特に使用される深さに制限される。治療は、長さに沿って閉塞を行うために、治療する静脈の長さに沿って複数の挿入を要する。この技術は、面倒であり、特殊なチップを要するために高価である。レーザーエネルギーは、その壁を縮脱することにより静脈の閉鎖を生ずる静脈の付近に伝達され、それは間接的な解決である。皮膚への複数の穿刺の導入により、感染のリスクが増大する。静脈付近の放射の使用は、また皮膚表面の変形を生じさせそして周囲の組織へ損傷を生じさせる。治療が静脈の近くで行われるため、放射はまた神経におよび、それは患者にとり痛みを感じさせる。
【0011】
従来技術において、レーザー波長が血管壁へ有効にカップリングされず、血液により吸収されるか、または血管壁を通って透過されるために、10−約20Wの使用が必要になる。このような場合、外部の冷却装置は、皮膚表面での火傷を防ぐ必要がある。或る場合には、これらのレーザー波長が水および組織と相互作用することから、満足な結果を得るには、ファイバーチップは調整される必要がある。ファイバーチップが熱を捉えることから、「ホット・チップ」は、400℃を越える温度に達する。またこれらのレーザーからのエネルギーは、調整されたチップにより吸収され、水、ヘモグロビンまたは組織に吸収されない。伝導熱の移動は、側副の組織を損傷し、膨張、組織壊死、火傷および患者の不快感を生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許公開2004/0092913
【特許文献2】米国特許6398777
【特許文献3】米国特許5531739
【特許文献4】米国特許5578029
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来技術に伴う問題および有害な副作用を起こすことなく、後続の繊維化を伴う直接的な内皮および静脈壁を生成するために、ヘモグロビンおよび水における吸収のための波長の最適な組み合わせを選ぶ、外科医または操作者の能力によって静脈瘤を治療する血管内の経皮レーザー治療装置/システムおよび方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
約980nmおよび約1460nmの異なる波長の組み合わせを選ぶ操作者の能力により静脈瘤を治療する装置/システムおよび方法を提供するのが本発明の目的である。また、治療のパワーの範囲は、静脈に存在する水、コラーゲンおよびヘモグロビンの吸収に関する最適な組み合わせを得るために考えられるものである。
【0015】
静脈中のファイバーの手動のブルバック速度および静脈の物理的なパラメーターに基づいて静脈へ予定されたエネルギーを伝達するコントロールメカニズムを利用する有効な経皮血管内レーザー治療の要求を満たすことが本発明のさらなる目的である。
【0016】
皮下の治療の正確さを改善する装置/システムおよび方法を提供することが本発明の他の目的である。これは、有効な治療を誘導する利用可能な静脈パラメーターに基づいて、好適なパワー、プルバック距離および速度を選ぶために、コントロールメカニズムから使用者へのフィードバックによりもたらされる。
【0017】
コントロールメカニズムへ接続されたモーター駆動プルバックメカニズムを提供することが本発明のさらなる目的であり、それは、異常な静脈へのコントロールされた理想的な治療方法を提供するのにさらに助けになる。
【0018】
ファイバーチップから血管壁への放射伝達を増加させるために、ファイバー末端に融解石英ディフューザーチップを使用することが本発明のさらなる目的である。
【0019】
簡単に説明すると、本発明は、静脈瘤および他の静脈瘤または静脈異常の治療の装置/システムおよび方法を提供する。1つの好ましい態様では、治療は、有効に異常な静脈を閉塞するための2つの波長の組み合わせを含む。波長は、ヘモグロビンおよび水の有効な吸収ピークとして選ばれ、それらは、それらの波長すなわちそれぞれほぼ980nmおよび1460nmで分かる。静脈は、これらの波長により目標とされて、最大かつ有効な吸収を得る。近赤外レーザー放射は、血管中の血液、コラーゲンおよび水に伝達され、静脈の閉塞および収縮を生ずる。この技術では、光ファイバーは静脈中に挿入され、そしてレーザー源を用いて静脈を照射する。コントロールメカニズムは、ファイバー引き出しの速度に関するフィードバックおよび局所的な構造上の静脈パラメーターに基づいて、一定のパワー密度の伝達を可能にする。この技術は、治療された静脈が、エネルギーの2つの波長によりまたは別に非常にコントロールされた静脈壁損傷特性を有する波長により目標とされるため、静脈異常の有効な治療である。治療の条件は、モニターされた異なるコントロールパラメーターからのフィードバック、および治療部位の予備的な予定された構造のパラメーターに基づく。装置は、該ファイバーの遠位の末端からほぼ一様に周辺を照射できるサイド焼成光ファイバーを含む。別のやり方として、他の好ましい態様では、1460±60nmのレーザーエネルギーが用いられ、それは、静脈壁のその高い吸収により、静脈の外に熱ストレスを殆ど生ずることがなく、そして損傷反応応答および静脈壁の収縮を開始するのに非常に有効である。1例では、例えば1470±20nmの波長を用いる。1460±60nmを用いて行われるレーザー静脈治療は、高い静脈閉鎖率および極めて好ましい術後の結果(すなわち、静脈壁の少量のコラーゲン/水のそれらの非常に高い吸収により、もしあるとしても、術後の痛み/不快、紫斑または炎症反応がほとんどない)という利点を有する。
【0020】
本発明の上記および他の目的、特徴および利点は、図面とともに以下の記述から明らかになるだろう。図面では、異なる図面の同じ番号は、同じものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】静脈瘤閉鎖を行うための装置の代表的な概略図である。
【図2】エネルギーの適用直前の伏在−大腿接合部に位置するファイバーチップを有するカテーテルを通る静脈中へのファイバーの挿入を示す。
【図3】フィードバックにより治療されるべき静脈瘤の図である。
【図4】近赤外範囲の波長の関数としてのヘモグロビン、オキシヘモグロビンおよび水の吸収曲線を示す。
【図5】ディフュージングファイバーチップの図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、多くの静脈異常特に静脈瘤の治療の装置/システムおよび方法に関する。この方法は、皮膚の不整、血管異常の皮下のレーザー治療および手術時の一般的な助けに有用である。この装置/システムおよび方法は、表面、皮下の構造および内部器官および組織を含むレーザー治療により影響されるすべての身体の構造に本質的に適用される。本発明がそれに使用できる種々の用途は、使用する作業者にとり皮下のレーザー治療システムについて、それを有益かつ有効で実際的なものにする。異なる波長のレーザーは、予定されたエネルギーにより異常な組織を治療するのに使用される。この技術は、使用されるエネルギーを少なくして、静脈を有効に閉塞しそして周囲組織への損傷および血管壁の開口を防ぐのを助ける。
【0023】
1.2nmから1.8nmの近赤外域は、壁中のコラーゲンを加熱し収縮するのに有用である。テストによれば、このエネルギー範囲の使用が、たとえもしファイバーが数秒間1つの場所に留まっていても、血管壁の開口を生じさせないことを示している。実験では、この範囲のエネルギーの使用が、血管壁が常にエネルギーを停止させるために、ほとんど痛みまたは側副の紫斑を生じさせないことを示す。
【0024】
本発明は、静脈瘤または異常な組織を治療するために選ばれる或る範囲のパワーの選択により、2つの波長(すなわちレーザーエネルギーの1つが約980nmであり他が約1460nmである)を伝達する装置/システムおよび方法に関する。それは、また静脈瘤または異常組織を治療するために選ばれる或る範囲のパワーの選択により、約1460nmのレーザーエネルギーのみを伝達する装置および方法に関する。この方法で重要なことは、周囲組織への不必要な損傷なしに、組織へ臨床的に有効な量のエネルギーを伝達することである。本発明は、また必要なパワーが作業者にかかわりなく伝達され、従って人的エラーを避けることができる。
【0025】
副作用を全く起こすことなく異常な静脈を有効に閉塞するために、異常な静脈へ2つの波長の組み合わせまたは近IRの範囲の単一の波長の形のレーザーエネルギーの血管内伝達は、本発明における要点である。これは、静脈を治療するのに必要なパワーを減らし、そしてその上の皮膚および周囲の組織への副作用の可能性を排除する。さらに、血管の繊維化は、直径の異なる静脈が有効に治療されるため、好ましい。使用者は、そのため、表在性および深部の静脈並びに内部の器官および組織に対して本発明による治療を適用できる。
【0026】
第1段階において、挿入は、ハンドピースを有するかまたは有しないカテーテルまたは針により行われて、進入路の静脈を通って治療部位へ光ファイバーを導入する。画像化技術例えばX線画像化または超音波が利用されて、静脈瘤の場合には伏在−大腿接合部に近い位置または治療部位の遠位の末端へファイバーを移動する。さらなる視覚化技術が使用されてファイバーチップの位置または静脈中の出力チップをピンポイントで示す。静脈へ放射を伝達するファイバーチップは、レーザー放射の実行前に、治療部位の遠位の末端に最初に配置される。
【0027】
波長の組み合わせの場合、パルスモードの数フラッシュが980±20nmで射出されて、静脈の遠位の末端で静脈を閉塞しシールする。次に、レーザー伝達を治療静脈の残りの長さについて連続モードへ変える。ハンドピースは静脈中に存在するファイバーの正確な距離をモニターするために参照基準を有する。これは、光ファイバーがマーキング(静脈中に存在するファイバーの深さについて基準を与える)を有することにより達成される。980±20nmおよび1460±60nmという2つの波長のレーザーエネルギーが、次に有効な治療のために要求されて、異なる組み合わせで静脈中に投与される。可能な放射の組み合わせは、(a)先ず980nmが伝達され次に1460nmが伝達される、(b)先ず1460nmが伝達され次に980nmが伝達される、(c)両者の波長が同時に治療部位に伝達される、または(d)波長が個々に治療部位へ伝達される。そしてすべて患者のニーズに依存する。980nmは、血液−ヘモグロビンおよび水の吸収に有用である。1460nmは、ヘモグロビンについて遙かに低い吸収であるが、静脈壁における水およびコラーゲンの吸収が高い吸収であるときに有用である。放射の組み合わせは、特定の治療部位についてそしてプリセットパワー範囲およびパルス、連続などを含む操作モードについて選ばれる。放射プロトコールは、治療前および治療中のコントロールユニットから得られるパラメーターからのフィードバックに基づいて選ばれる。放射の組み合わせまたは個々の放射波長は、パワー範囲の選択前に選ばれる。パラメーターを選択した後、治療を部位に行う。
【0028】
さらに、1460±60nmのみを用いることが、痛みのない有効な静脈の閉鎖を生ずることが見いだされた。それは、静脈壁の水/コラーゲンによるその吸収が非常に強くそして典型的な壁の厚さの数分の一以内にあるからである。これは、組み合わせの場合と同じく、正常の波長よりも能率的でありそして患者の痛みが少なくそして組み合わせのアプローチと実質的に同じように安全な閉鎖をもたらす。
【0029】
放射後、ファイバーチップが異常な静脈の部分の近い部分に達するまで、ファイバーを予定された速度で引き出す。ファイバーチップからの放射は、治療組織へ一様に射出される。さらに、或る場合では治療組織へのより良いエネルギー伝達のために、ファイバーチップは、サイド焼成チップである。ハンドピースにより相対的にモニターされるファイバー引き出し速度のフィードバックに基づいて、コントロールユニットは、静脈へ伝達されるエネルギーをモニターする。予定された静脈の大きさおよび静脈の内容のパラメーターもコントロールユニットによりモニターされて、エネルギーを治療部位へ伝達する。システムのこの組み込まれた特徴は、介入および人的エラーを最低にする。
【0030】
以下の図面に示される特徴は、一般に、各波長への特別な言及がされている場合を除いて、980±20nmプラス1460±60nmの組み合わせの照射、または1460±60nm単独の照射の何れにも適用される。
【0031】
図1は、静脈瘤の閉鎖を行うのに使用される装置の基本的なブロックダイアグラム100の図である。システムは、レーザーコンソール102、コントロールユニット104および治療部位106からなる。コントロールユニット104は、治療部位106の種々のパラメーター、例えば治療時間、移動距離、パワー出力、電流および累加、温度、使用する1つ以上の波長などに関する情報を集める。コントロールユニット104は、接続ファイバー108によりレーザーコンソール102および治療部位106へ接続される。接続ファイバー108は、ハンドピース112(光ファイバー110を治療部位106へ導入する手段である)へ接続される。ハンドピース112は、その遠位の末端に標準の挿入針を含み、そして光ファイバーの挿入のためにその本体内に中空のチャンネルを有する。ハンドピース112は、光ファイバーの引き出し速度を測定し、そしてコントロールユニット104へフィードバックを伝え、104は次にレーザーコンソール102からのパワー出力をコントロールする。レーザーコンソール102は、そのなかに配置されそしてコントロールユニット104へ接続された適切な波長の2つのレーザーを有する。さらに、レーザーコンソール102は、モーター駆動プルバック装置(或る治療での使用のために光ファイバー110を一様に引き出すことを助ける)を含む。
【0032】
図2は、治療されるべき静脈中に置かれた光ファイバー218を示す。ハンドピース212では、針214は、そのなかに配置されて、治療されるべき静脈中に挿入される。治療されるべき静脈は、大伏在静脈(GSV)224であり、この場合、伏在−大腿結合部220で伏在静脈222を結合しているものである。光ファイバー218は、伏在−大腿結合部220まで大伏在静脈中へ導入される。GSV静脈224の大きな部分216は、問題を生じやすい域である。ハンドピース212は、レーザーコンソールユニット202がそれを経てファイバー206により接続されそしてコントロールユニット204がそれを経てリンクファイバー208により接続されるインターフェースユニット210を有する。静脈および治療部位に関する情報は、ハンドピース212のインターフェースユニット210によりコントロールユニット204へ伝えられる。フィードバックに基づいてコントロールユニット204は、パワー出力を静脈へレーザーコンソール202を経て導く。光ファイバー218は、レーザーコンソール202から伏在−大腿結合部220へ接続ファイバー206、ハンドピース212およびGSV224を経て通る。
【0033】
図3は、治療されるべき静脈瘤306の図である。異常な静脈瘤306は、大伏在静脈(GSV)310の一部であり、末梢静脈308は血液を肢または身体の表面からGSVへ運ぶ。GSVは、伏在−大腿結合部304で伏在静脈302へ移る。
【0034】
図4は、種々の波長における水、オキシヘモグロビンおよびメラニンの吸収係数のグラフである。吸収曲線(水およびヘモグロビンにおけるθδ曲線)は、波長範囲全体が同等に有用でないことを示す(1.2−1.8μm)。980nmにおけるオキシヘモグロビンの吸収曲線および1460nmにおける水の吸収曲線が示される。これらの波長は、異常な静脈の治療にとり特に有効な組み合わせである。980nmの波長は、血液:ヘモグロビン−水の組み合わせにおける吸収のために有用である。1460nmの波長は、静脈壁での水およびコラーゲンにおけるその高い吸収そしてヘモグロビンにおけるその遙かに低い吸収のために有用である。1460nmの波長は、1320nmの波長よりも約20倍高い水吸収能力を有し、980nmの波長よりも約50倍高い水吸収能力を有する。2つの波長間の混合の可能性を用いて、血液と水との間の吸収を支持または最適にし、それにより、年齢、静脈のサイズ、静脈の位置および神経構造への近接に関して理想的な浸透を達成し、さらに静脈壁におけるコラーゲン−水の直接照射が加わる。この組み合わせは、技術的な向上と外科的な利点とを組み合わせることになる。
【0035】
例示の態様によれば、上記の図2によるようなレーザー静脈治療は、単一の1460±60nmの波長を用いてGSVに投与される。例えば、1つの態様では、治療は、約2分から約3分のプルバック時間で、1470nmでの連続波として投与される。上述のように、1460±60nmは、静脈壁の水およびコラーゲンの吸収における高い吸収のために有用である。1460±60nmでの単一波長の静脈治療は、極めて好ましい術後の結果と組み合わされた高い静脈閉鎖率の追加の利益を得る。すなわち、もしあるとしても、術後の痛み/不快、紫斑または炎症反応は、殆どなく、そして1460±60nmの治療を感受性のある部分(例えば脚または腕)における使用にとり理想的なものにする。
【0036】
照明/照射の目的のための光ファイバーの多くの可能性のある適用では、出力角の制限は、大きな制限になる。望ましい域を完全に照射/照明するために、ディフューザーチップが用いられる。ディフューザーチップは、一様な、予想できかつ再現可能な結果を得るために、目的物を一様に加熱、照明または照射することが望ましい適用に特に有用である。ディフューザーチップファイバーは、レーザーとともに超増殖性腫瘍を治療にするのに使用されることは周知である。ディフューザーチップファイバーは、一般に、治療部位へレーザー光を有効に拡散するために、それらのチップで散乱する材料を要する。ディフューザーチップの使用は、レーザー放射がディフューザーチップから治療静脈へ垂直に導かれるので、静脈瘤の治療に有用である。これは、静脈の内皮細胞の精密な加熱および破壊を可能にする。ディフューザーファイバーチップではないチップは、静脈の軸に沿ってエネルギーを導き、一様なエネルギーは静脈壁へ伝達されない。丸いディフューザーチップの使用は、鋭い縁により静脈に孔を開けるチャンスを減らす。
【0037】
図5は、特別なサイド焼成ディフューザーチップ500の図である。このファイバーは、ディフューザーチップについて通常提案されている定義を実質的に拡大する。ここでは、半径方向へ分布するビームが生じ、前方への発光を減少させそして静脈壁の周辺のすべての半径方向へ実質的な放射をもたらす。光ファイバー506は、内部の芯512および外側のクラッディング510を有し、光ファイバーは外側の表面にプラスティックコーティング508を有する。ディフューザーチップは、光ファイバーの芯の開口中へ融解される石英ブロック502を有する。ディフューザーチップは、芯の一部を除いて、空気/空所の隙間504を形成し、そしてファイバーの芯の末端はVノッチの末端を形成するように成形される。Vノッチの芯の末端と融解石英ブロックとの間の空気/空所の隙間504は、レーザー光の拡散手段として働く。芯の空所は、円錐形の隙間を形成するために精密機械加工により形成される。この空所は、次に隙間中へ融解される石英ブロックにより閉じられてディフューザーチップを形成する。レーザー放射パターン514は、静脈壁へ垂直に射出し、ファイバーチップから静脈壁への最短の道を与える。
【0038】
別の態様では、ディフューザーチップ500は、軸方向へ放射するばかりでなくチップ500から半径方向に放射する永続性媒体512を実際上有する。レーザーエネルギーがファイバーチップの延在する長さの上に静脈壁に向かって半径方向に散乱しているより普通のディフューザーチップを用いることも、本発明の範囲内にある。特に、延在する部分について、ファイバーチップがその挿入点に向かってプルバックされつつあるとき、大きくないパワーレベルおよび延在する拡散部分での内部壁の治療は、特定の壁の部分のより長い露出時間を可能にする。静脈サイズの情報とともに拡散部分の長さ、その出力が使用されて、適切なプルバック速度を決定して治療を要する内部の壁を適切に照射する。
【0039】
図面とともに本発明の好ましい態様が記述されたが、本発明はこれら特定の態様に限定されず、そして種々の変化および改変が、請求の範囲で限定された本発明の範囲から離れることなく当業者によりなされることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0040】
100 本発明の装置
102 レーザーコンソール
104 コントロールユニット
106 治療部位
108 接続ファイバー
110 光ファイバー
112 ハンドピース
210 インターフェースユニット
212 ハンドピース
214 針
216 GSVの大きな部分
218 光ファイバー
220 伏在−大腿結合部
222 伏在静脈
224 GSV静脈
302 伏在静脈
304 伏在−大腿結合部
306 静脈瘤
308 末梢静脈
310 大伏在静脈
500 サイド焼成ディフューザーチップ
504 空気/空所の隙間
506 光ファイバー
508 プラスチックコーティング
510 クラディング
512 芯
514 レーザー放射パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入手段を装着し、その本体内に中空のチャンネルを有しそして近位の末端と遠位の末端とを有するカテーテルまたはハンドピース;
2つの異なる波長の放射を射出し、1つの波長がヘモグロビン−水により主として吸収されそして他の波長が静脈の壁中で水−コラーゲンにより主として吸収されて該静脈の閉鎖を行う放射源;
該放射源へ接続されそして該カテーテルまたはハンドピースを通る光ファイバー;および
治療中該静脈に沿って該射出放射手段を移動させる手段
からなることを特徴とする皮膚の不規則さの治療、血管異常の排除および外科的処置における一般的な補助のための皮下レーザー治療システム。
【請求項2】
該レーザー源が、約980±20nmおよび約1460±60nmの波長の放射を射出する請求項1の皮下レーザー治療システム。
【請求項3】
該第1の波長および該第2の波長が、同時に射出されそして調節されて治療中各波長の効果を最大する請求項1の皮下レーザー治療システム。
【請求項4】
該光ファイバーが、該遠位の末端にディフューザー部分を含む請求項1の皮下レーザー治療システム。
【請求項5】
該ディフューザー部分が、ファイバーの芯の円錐ノッチ付き末端を有するチップ、ブロック、および該円錐ノッチ付き末端と該ブロックとの間にある空隙を含む請求項4の皮下レーザー治療システム。
【請求項6】
レーザー出力パワー、パルスまたは連続のレーザー操作、プルバック速度、操作時間を含む操作パラメーターをモニターしかつコントロールし、そして別の光ファイバーにより該放射源および該カテーテルまたはハンドピースのインターフェース装置へ接続されているコントロール手段をさらに含む請求項1の皮下レーザー治療システム。
【請求項7】
移動させる該手段が、該静脈中の該光ファイバーのためのモーター駆動プルバック装置である請求項1の皮下レーザー治療システム。
【請求項8】
治療のための静脈または他の領域を同定し、導入手段を用いて治療のために選ばれた該静脈または他の領域に出力チップを供えた光ファイバーを配置し、該光ファイバーを取り出すとき該静脈を照射し、該照射は、放射の2つの波長の放射からなり、第1の波長はヘモグロビン−水により主として吸収されそして第2の波長は該静脈の該壁中で主として水−コラーゲンにより吸収されて静脈の閉鎖を行い、そしてコントロールされたやり方で該処置された静脈から該光ファイバーおよび該導入手段を取り出すことを特徴とする皮膚の不規則さおよび血管異常の治療および外科的処置における一般的な補助のための皮下レーザー治療システムの使用。
【請求項9】
該導入手段がモニタリングインターフェースを含み、該モニタリングインターフェースを経て該照射をコントロールする操作パラメーターが、放射パワー、時間、距離を含み、該光ファイバーの取り出し速度がモニターされて該コントロールされたやり方で取り出しを達成する請求項8の使用。
【請求項10】
身体内の構造の治療のために、該光ファイバーが画像化装置により該選択された治療部位へ導かれて該ファイバーの遠位のチップの配置を確実にする請求項8の使用。
【請求項11】
該照射が、該チップの軸に対して垂直に周縁全体にわたって半径方向に放射を射出するファイバーチップから行われる請求項8の使用。
【請求項12】
第1の波長が約980±20nmであり、第2の波長が約1460±60nmである請求項8の使用。
【請求項13】
第1および第2の波長が、同時に入力され調節されて治療中各波長の効果を最大にする請求項8の使用。
【請求項14】
該光ファイバーが、モーター駆動プルバック装置により該静脈から取り出される請求項8の使用。
【請求項15】
該照射が、放射の2つの波長の放射を選び、該放射の第1の波長がパルスモードで提供されて主としてヘモグロビン−水により吸収される該静脈をシールし、そして該放射の第2の波長が該静脈の該壁で主として水−コラーゲンにより吸収されて該静脈の閉鎖を行う請求項8の使用。
【請求項16】
導入手段を備え、その本体内に中空のチャンネルを有しそして近位の末端および遠位の末端を有するカテーテルまたはハンドピース;
静脈壁で水−コラーゲンにより主として吸収される放射の少なくとも1つの波長の連続波を射出して該静脈の閉鎖を行う放射源;
該放射源へ接続されそして該カテーテルまたはハンドピースを通る光ファイバー;および
治療中該静脈に沿って該射出放射手段を移動させるための手段
からなることを特徴とする皮膚の不規則さの治療、血管異常の排除および外科処置における一般的な補助のための皮下レーザー治療システム。
【請求項17】
該レーザー源が約1460±60nmの波長の放射を射出する請求項16の皮下レーザー治療システム。
【請求項18】
該光ファイバーが該遠位の末端にディフューザー部分を含む請求項16の皮下レーザー治療システム。
【請求項19】
該ディフューザー部分が、ファイバーの芯の円錐ノッチ付き末端、ブロックおよび該円錐ノッチ付き末端と該ブロックとの間にある空隙を有するチップを含む請求項18の皮下レーザー治療システム。
【請求項20】
レーザー出力パワー、パルスまたは連続のレーザー操作、プルバック速度、操作時間を含む操作パラメーターをモニターしかつコントロールし、そして別の光ファイバーにより該放射源および該カテーテルまたはハンドピースのインターフェース装置へ接続されるコントロール手段をさらに含む請求項16の皮下レーザー治療システム。
【請求項21】
移動させる該手段が、該静脈中の該光ファイバーのためのモーター駆動プルバック装置である請求項16の皮下レーザー治療システム。
【請求項22】
治療のための静脈または他の領域を同定し、治療のために選ばれた該静脈または他の領域に出力チップを供えた光ファイバーを導入しかつ配置し、該光ファイバーを取り出すとき該静脈を照射し、該照射は、該静脈の該壁で主として水−コラーゲンにより吸収される少なくとも1つの波長の放射の連続波からなって静脈の閉鎖を行い、コントロールされたやり方で処置された静脈から該光ファイバーおよび該導入手段を取り出すことを特徴とする皮膚の不規則さおよび血管異常の治療および外科的処置における一般的な補助のための皮下レーザー治療システムの使用。
【請求項23】
カテーテルまたはハンドピースがモニタリングインターフェースを含み、該モニタリングインターフェースを経て該照射をコントロールする操作パラメーターが、放射パワー、時間、距離を含み、該光ファイバーの取り出し速度がモニターされて該コントロールされたやり方を達成する請求項8の使用。
【請求項24】
身体内の構造の治療のために、該光ファイバーが画像化装置により該選択された治療部位へ導かれて該ファイバーの遠位のチップの配置を確実にする請求項22の使用。
【請求項25】
該照射が、該チップの軸に対して垂直に拡散するやり方で半径方向に放射を射出するファイバーチップから行われる請求項22の使用。
【請求項26】
波長が約1460±60nmである請求項22の使用。
【請求項27】
該光ファイバーが、モーター駆動プルバック装置により該静脈から取り出される請求項22の使用。
【請求項28】
該光ファイバーが、約2分間から約3分間のプルバック時間に従って該照射中に取り出される請求項22の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2010−503459(P2010−503459A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528260(P2009−528260)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/019766
【国際公開番号】WO2008/033367
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(502359666)セラムオプテック インダストリーズ インコーポレーテッド (20)
【Fターム(参考)】