説明

静脈認証装置、静脈認証システム及び静脈認証方法

【課題】認証精度の低下を防止することを課題とする。
【解決手段】静脈認証装置10は、静脈認証に成功した静脈データおよび静脈認証時の気温を参照用の静脈データとして静脈データ記憶部15に追加する。さらに、静脈認証装置10は、気温を取得する。さらに、静脈認証装置10は、認証対象の静脈画像が入力された場合に、当該認証対象の静脈画像から登録静脈データとの照合に用いる静脈データを抽出する。さらに、静脈認証装置10は、抽出した入力静脈データと、静脈データ記憶部15に記憶された登録静脈データのうち気温に対応する登録静脈データとを照合して認証する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静脈認証装置、静脈認証システム及び静脈認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオメトリクス認証の一態様として静脈認証が知られている。かかる静脈認証では、体内の器官である静脈を用いることから複製が困難であり、バイオメトリクス認証の中でも本人認証に適した認証方式であることも認知されている。ところが、静脈情報が参照用に予め登録される時点と静脈情報が入力される時点との間で環境が変化する場合、例えば気温差が生じる場合には、同じ利用者であっても血管が収縮または膨張するので、認証精度が低下することもある。
【0003】
かかる環境の変化に対応する認証技術の一例としては、個人認証に気温、天候や時刻などの環境情報を使用する個人認証システムが挙げられる。この個人認証システムでは、暗証番号や指紋を用いて認証する高精度個人認証装置による認証結果と、追跡センサによって検知されるユーザ移動感知情報と、個人スケジュールの情報とに基づいて、個人認証手段に認証させる候補の絞り込みを行う。その上で、個人認証手段は、絞り込まれたユーザを対象に、個人特徴抽出センサによって抽出された身長や体重などの個人特徴と環境情報センサによって検出された気温、天候や時刻などの環境情報とを個人認証ルールに当てはめて個人認証を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/006533号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術には、依然として、認証精度の低下を防止できないという問題が残る。
【0006】
すなわち、上記の個人認証システムは、ユーザ固有の認証情報を用いずに、個人認証ルールという条件の一要素として環境情報を組み込んで個人を認証するものに過ぎない。かかる個人認証ルールは、あくまでユーザの行動に関する傾向を条件化したものに過ぎず、仮にあるユーザが特定の行動を取るからといって他のユーザがその行動を取らないという保証はない。このように、複数のユーザが同じ条件を満たし得る個人認証ルールを用いて個人認証を行ったとしても、ユーザの誤認が生じてしまうので、認証精度の低下を防止することはできない。
【0007】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、認証精度の低下を防止できる静脈認証装置、静脈認証システム及び静脈認証方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の開示する静脈認証装置は、静脈認証に成功した静脈情報および静脈認証時の気温を参照用の静脈情報として記憶部に追加する追加部を有する。さらに、前記静脈認証装置は、気温を取得する取得部を有する。さらに、前記静脈認証装置は、認証対象の静脈画像が入力された場合に、当該認証対象の静脈画像から前記参照用の静脈情報との照合に用いる静脈情報を抽出する抽出部を有する。さらに、前記静脈認証装置は、前記抽出部によって抽出された認証対象の静脈情報と、前記記憶部に記憶された参照用の静脈情報のうち前記取得部によって取得された気温に対応する参照用の静脈情報とを照合して認証する認証部を有する。
【発明の効果】
【0009】
本願の開示する静脈認証装置の一つの態様によれば、認証精度の低下を防止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施例1に係る静脈認証装置の外観構成を模式的に示す図である。
【図2】図2は、実施例1に係る静脈認証装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図3は、静脈データ記憶部に記憶される情報の構成例を示す図である。
【図4】図4は、静脈データ記憶部に記憶されたデータの遷移例を示す図である。
【図5】図5は、実施例1に係る登録処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】図6は、実施例1に係る静脈認証処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】図7は、実施例1及び実施例2に係る静脈認証プログラムを実行するコンピュータの一例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本願の開示する静脈認証装置、静脈認証システム及び静脈認証方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例は開示の技術を限定するものではない。そして、各実施例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【実施例1】
【0012】
[静脈認証装置の外観構成]
図1は、実施例1に係る静脈認証装置の外観構成を模式的に示す図である。図1に示す静脈認証装置10は、利用者の手のひらの静脈を撮像した静脈画像から得られる静脈データと、予め登録された静脈データとを照合する静脈認証を行うものである。
【0013】
図1に示すように、静脈認証装置10には、ガイド部11aが設けられた平面上に、利用者に静脈認証に関する情報を通知するためのランプ11b及びスピーカ11cが設けられる。なお、図1の例では、ガイド部11aと同一の平面上にランプ11b及びスピーカ11cを設ける場合を例示したが、必ずしもガイド部11aと同一の平面上に設ける必要はなく、ランプ11b及びスピーカ11cは任意の箇所に設けることができる。
【0014】
このうち、ガイド部11aは、後述の静脈センサ14の撮像範囲に利用者の手のひらを誘導するための標示である。なお、図1の例では、ガイド部11aが平面として形成される場合を例示したが、ガイド部11aは手のひら及び指の形状に合わせて湾曲させた凸部を有するものであってもかまわない。
【0015】
ランプ11bは、静脈認証に関する各種の状態を点灯数や点灯色の切換えによって表すLED(Light Emitting Diode)である。一例としては、ランプ11bは、自装置が静脈認証中である場合には、4つのランプのうち認証完了に近づくにしたがって点灯数を増加させることにより、静脈認証の進行状態を通知する。他の一例としては、ランプ11bは、静脈認証に成功した場合には緑色に点灯する一方で、静脈認証に失敗した場合には赤色に点灯することにより、静脈認証の結果を通知する。
【0016】
スピーカ11cは、静脈認証に関する各種の状態を音声出力する音声出力装置である。一例としては、スピーカ11cは、静脈認証に成功した場合や静脈認証に失敗した場合に、その旨を表す通知音やメッセージを音声出力することにより、静脈認証の結果を通知する。
【0017】
ここで、本実施例に係る静脈認証装置10は、静脈認証に成功した静脈データおよび静脈認証時の気温を参照用の静脈データとして記憶部に追加する。さらに、静脈認証装置10は、気温を取得する。さらに、静脈認証装置10は、認証対象の静脈画像が入力された場合に、当該認証対象の静脈画像から参照用の静脈データとの照合に用いる静脈データを抽出する。さらに、静脈認証装置10は、抽出した認証対象の静脈データと、記憶部に記憶された参照用の静脈データのうち先に取得された気温に対応する参照用の静脈データとを照合して認証する。
【0018】
このように、本実施例に係る静脈認証装置10は、静脈画像が入力される気温との間で気温差が可及的に小さい参照用の静脈データを用いて静脈認証を実行するので、血管の膨張及び収縮の影響を最小限に留めることができる。このため、本実施例に係る静脈認証装置10では、本人拒否率および他人受入率を低減することができる。したがって、本実施例に係る静脈認証装置10によれば、認証精度の低下を防止することが可能になる。
【0019】
さらに、本実施例に係る静脈認証装置10では、静脈認証に成功した静脈データを静脈認証時の気温とともに参照用の静脈データとして追加するので、必ずしも始めから参照用の静脈データを登録しておく必要がない。それゆえ、本実施例に係る静脈認証装置10では、登録時に気温を上下させた上で静脈画像を採取するという煩雑な手間なく、気温別に参照用の静脈データを登録することも可能になる。また、上記では気温データを取得して静脈認証時に気温データを参照用の静脈データとして保存する例を例示したが、認証対象の生体自体の温度データを気温データに代えて用いることも可能である。この方法によれば、認証時点の生体自体の温度を元に参照用データを用いて認証を実行するため、認証時の生体の状態によりあった認証を行うことが可能となる。
【0020】
[静脈認証装置の機能構成]
図2は、実施例1に係る静脈認証装置の構成を示す機能ブロック図である。図2に示すように、静脈認証装置10は、通知部11と、通信I/F部12と、気温取得部13と、静脈センサ14と、静脈データ記憶部15と、登録部16と、抽出部17と、認証部18と、追加部19とを有する。なお、図2の例では、図示しない認証サーバ経由で利用者の静脈データを初回に1つだけ後述の静脈データ記憶部15へ登録しておき、以降の静脈認証が成功する度にその気温に対応する静脈データを追加することにより参照用の静脈データを拡充する例を想定する。
【0021】
このうち、通知部11は、利用者に静脈認証に関する情報を通知する処理部である。かかる通知部11の一態様としては、図1を用いて説明したランプ11bやスピーカ11cなどが挙げられる。一例としては、静脈認証の進行状態や静脈認証の結果などがランプ11bやスピーカ11cを通じて利用者に通知される。
【0022】
通信I/F部12は、他の装置、例えば図示しない認証サーバとの間で通信制御を行うインタフェースである。例えば、通信I/F部12は、認証サーバから初期に登録される静脈データ及び気温を受信したりする。なお、通信I/F部12には、一例として、LANカードなどのネットワークインタフェースカード(NIC:Network Interface Card)やモデムを採用できる。
【0023】
気温取得部13は、静脈認証装置10のガイド部11a周辺の外気温を取得する処理部である。一例としては、気温取得部13は、後述の静脈センサ14によって静脈画像が撮像されたことを契機に、ガイド部11a周辺の外気温を取得した上で後述の認証部18へ出力する。なお、気温取得部13には、既知の温度センサを適用することができる。尚、気温取得部13は、上記で説明した生体自体の温度を測定する生体の温度取得部(図示せず)として置き換えることが可能である。
【0024】
静脈センサ14は、ガイド部11aに近接または接触された利用者の手のひらの静脈画像を取得するセンサである。一例としては、利用者の手のひらに近赤外線を発光してその反射光を受光することにより静脈画像を取得する。なお、静脈センサ14には、接触型または非接触型のいずれのタイプを採用することとしてもかまわない。
【0025】
静脈データ記憶部15は、静脈データを記憶する記憶部である。一例として、静脈データ記憶部15は、静脈センサ14から入力された静脈画像から得られる静脈データと照合するために、静脈認証時に後述の認証部18によって参照される。他の一例として、静脈データ記憶部15は、静脈認証が成功した静脈データを参照用の静脈データに追加するために、後述の追加部19によってアクセスされる。なお、以下では、静脈センサ14によって取得された静脈画像から後述の抽出部17によって特徴量が抽出された静脈データのことを「入力静脈データ」と呼ぶ。さらに、入力静脈データを認証するために参照される静脈データであって静脈データ記憶部15に記憶された静脈データのことを「登録静脈データ」と呼ぶ場合がある。
【0026】
かかる静脈データ記憶部15の一態様としては、利用者ID(identification)、温度帯種別、登録静脈データの有無及び静脈データが対応付けられたデータを採用できる。ここで言う「温度帯レベル」とは、気温を所定の区間ごとに区切った温度帯のレベルを指す。例えば、温度帯レベル「A」は、気温が0度未満で採取された静脈データを指し、温度帯レベル「B」は、気温が0度以上10度未満で採取された静脈データを指し、温度帯レベル「C」は、気温が10度以上20度未満で採取された静脈データを指す。また、温度帯レベル「D」は、気温が20度以上30度未満で採取された静脈データを指し、温度帯レベル「E」は、気温が30度以上40度未満で採取された静脈データを指し、気温が40度以上50度未満で採取された静脈データを指す。また、気温を生体自体の温度とした場合、生体の温度を所定の温度幅で採取された生体データとして扱う。生体の温度幅としては、上記気温の温度帯に対して狭い温度幅が設定される。
【0027】
図3は、静脈データ記憶部15に記憶される情報の構成例を示す図である。図3に示す利用者ID「0000001」の利用者の例では、気温が0度以上30度未満に対応する3つの静脈データが登録されていることを示す。また、図3に示す利用者ID「0000002」の利用者の例では、気温が10度以上20度未満に対応する1つの静脈データしか登録されていないことを示す。さらに、図3に示す利用者ID「0000003」の利用者の例では、気温が20度以上40度未満に対応する2つの静脈データが登録されていることを示す。なお、本例では、各々の静脈データがバイナリ形式で格納されている。
【0028】
登録部16は、静脈データを静脈データ記憶部15へ登録する処理部である。一態様としては、登録部16は、図示しない認証サーバから静脈データの登録要求を受け付けた場合に、認証サーバから利用者IDとともに静脈データ及び気温を受信する。そして、登録部16は、認証サーバから受信した利用者IDのレコードを静脈データ記憶部15に新規作成した上で気温が該当する温度帯レベルに対応付けて静脈データを登録する。
【0029】
抽出部17は、静脈センサ14によって取得された静脈画像から静脈の血管パターンに関する特徴量を抽出する処理部である。一態様としては、抽出部17は、静脈画像から血管部分を取り出した上で細線化し、血管における分岐点の座標、分岐点間の長さ、分岐点の分岐角度などの特徴量を抽出する。そして、抽出部17は、静脈センサ14によって取得された静脈画像から特徴量が抽出された静脈データを入力静脈データとして後述の認証部18へ出力する。なお、ここでは、静脈の特徴量として、分岐点に関するデータを抽出する場合を例示したが、これ以外の他の特徴量、すなわち後述の認証部18が採用する認証方式に合わせたデータを抽出することができる。
【0030】
認証部18は、抽出部17によって抽出された入力静脈データと、静脈データ記憶部15に記憶された登録静脈データのうち気温取得部13によって取得された気温に対応する登録静脈データとを照合して認証する処理部である。
【0031】
一態様としては、認証部18は、静脈データ記憶部15に記憶された登録静脈データのうち気温取得部13によって取得された気温に対応する利用者の登録静脈データを全て読み出す。そして、認証部18は、各利用者の登録静脈データと入力静脈データとの間で照合スコアを算出する。このとき、認証部18は、先に算出した照合スコアのうち最大の消防スコアが所定の閾値以上である場合に、最大の照合スコアを持つ登録静脈データと入力静脈データとの間で静脈認証が成功したと判定する。また、認証部18は、最大の消防スコアが所定の閾値以上である場合に、静脈認証に失敗したと判定する。なお、認証部18は、マニューシャ方式、パターンマッチング方式や周波数解析法などの任意の認証方式を採用できる。
【0032】
なお、ここでは、認証部18が入力静脈データと全ての登録静脈データとの間で照合を行う場合を例示したが、開示の装置はこれに限定されない。例えば、開示の装置は、抽出部17によって抽出される静脈データよりも簡易な特量を表す絞込データを作成し、絞込データを用いて登録静脈データを絞り込むことにより、照合する登録静脈データの数を減らしてから照合を行うこととしてもかまわない。
【0033】
追加部19は、静脈認証に成功した入力静脈データおよび静脈認証時の気温を登録静脈データとして静脈データ記憶部15に追加する処理部である。一態様としては、追加部19は、認証部18によって静脈認証に成功したと判定された場合に、今回に静脈画像が撮像された時の温度帯レベルに該当する登録静脈データを静脈データ記憶部15から検索する。このとき、追加部19は、登録静脈データが静脈データ記憶部15に未登録であった場合に、静脈認証に成功した利用者IDのレコードを追加した上で気温が該当する温度帯レベルに対応付けて入力静脈データを静脈データ記憶部15へ追加する。
【0034】
図4は、静脈データ記憶部15に記憶されたデータの遷移例を示す図である。図4の例では、利用者ID「0000005」の利用者に関する登録静脈データの遷移が示されている。例えば、季節「春」に気温15度の環境下で認証サーバ経由の初回登録が行われたものとする。この場合には、図4の上段に示すように、認証サーバ経由で受信した静脈データが気温10度以上20度未満の温度帯レベル「C」に対応付けて登録部16によって登録される。次に、季節「夏」に気温28度の環境下で入力静脈データが利用者ID「0000005」の登録静脈データとの間で静脈認証に成功したものとする。この場合には、図4の中段に示すように、入力静脈データが気温20度以上30度未満の温度帯レベル「D」に対応付けて追加部19によって追加登録される。さらに、季節「冬」に気温3度の環境下で入力静脈データが利用者ID「0000005」の登録静脈データとの間で静脈認証に成功したものとする。この場合には、図4の下段に示すように、入力静脈データが気温0度以上10度未満の温度帯レベル「B」に対応付けて追加部19によって追加登録される。
【0035】
このように、初回登録時には1つしか静脈データが静脈データ記憶部15へ登録されなかったとしても、時間が経過するにしたがって各種の温度帯レベルに対応する静脈データを登録静脈データとして登録することが可能である。
【0036】
なお、登録部16、抽出部17、認証部18及び追加部19には、各種の集積回路や電子回路を採用できる。例えば、集積回路としては、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)が挙げられる。また、電子回路としては、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などが挙げられる。
【0037】
また、静脈データ記憶部15には、半導体メモリ素子や記憶装置を採用できる。例えば、半導体メモリ素子としては、VRAM(Video Random Access Memory)、RAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリ(flash memory)などが挙げられる。また、記憶装置としては、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置が挙げられる。
【0038】
[処理の流れ]
次に、本実施例に係る静脈認証装置の処理の流れについて説明する。なお、ここでは、静脈認証装置10によって実行される(1)登録処理を説明した後に、(2)静脈認証処理を説明することとする。
【0039】
(1)登録処理
図5は、実施例1に係る登録処理の手順を示すフローチャートである。かかる登録処理は、図示しない認証サーバから静脈データの登録要求を受け付けた場合に処理が起動される。
【0040】
図5に示すように、認証サーバから静脈データの登録要求を受け付けると(ステップS101肯定)、登録部16は、認証サーバから利用者IDとともに静脈データ及び気温を受信する(ステップS102)。そして、登録部16は、認証サーバから受信した利用者IDのレコードを静脈データ記憶部15に新規作成した上で気温が該当する温度帯レベルに対応付けて静脈データを登録し(ステップS103)、処理を終了する。
【0041】
(2)静脈認証処理
図6は、実施例1に係る静脈認証処理の手順を示すフローチャートである。かかる静脈認証処理は、静脈センサ14によって静脈画像が取得された場合に処理が起動される。
【0042】
図6に示すように、静脈センサ14によって静脈画像が取得されると(ステップS301肯定)、抽出部17は、静脈画像から静脈の血管パターンに関する特徴量を抽出することによって静脈データを生成する(ステップS302)。そして、気温取得部13は、ガイド部11a周辺の外気温を取得する(ステップS303)。
【0043】
続いて、認証部18は、静脈データ記憶部15に記憶された登録静脈データのうち気温取得部13によって取得された気温に対応する利用者の登録静脈データを全て読み出す(ステップS304)。
【0044】
その上で、認証部18は、入力静脈データと各利用者の登録静脈データとを照合することにより静脈認証を実行する(ステップS305)。そして、認証部18は、静脈認証の結果に応じてランプ11bを点灯させたり、スピーカ11cに通知音やメッセージを音声出力させたり、静脈認証の結果を図示しない認証サーバへ出力することにより、認証結果を通知する(ステップS306)。
【0045】
その後、認証部18によって静脈認証に成功したと判定された場合(ステップS307肯定)には、追加部19は、今回に静脈画像が撮像された時の温度帯レベルに該当する登録静脈データを静脈データ記憶部15から検索する(ステップS308)。なお、静脈認証が失敗した場合(ステップS307否定)には、ステップS301へ移行する。
【0046】
ここで、登録静脈データが未登録であった場合(ステップS309肯定)には、静脈認証に成功した利用者IDのレコードを追加した上で気温が該当する温度帯レベルに対応付けて入力静脈データを静脈データ記憶部15へ追加する(ステップS310)。入力静脈データの追加登録後にはステップS301に移行する。
【0047】
一方、登録静脈データが既に登録されている場合(ステップS309否定)には、改めて登録する必要はない。よって、入力静脈データの追加登録は実行せずに、そのままステップS301に移行する。なお、今回に静脈認証に成功した入力静脈データの方がその前に追加登録された登録静脈データよりも照合スコアが高かった場合には、登録静脈データを上書きすることとしてもかまわない。尚、上記気温データを生体自体の温度として扱った場合も上記で説明した処理と同様である。
【0048】
[実施例1の効果]
上述してきたように、本実施例に係る静脈認証装置10は、静脈画像が入力される気温との間で気温差が可及的に小さい参照用の静脈データを用いて静脈認証を実行するので、血管の膨張及び収縮の影響を最小限に留めることができる。このため、本実施例に係る静脈認証装置10では、本人拒否率および他人受入率を低減することができる。したがって、本実施例に係る静脈認証装置10によれば、認証精度の低下を防止することが可能である。
【0049】
さらに、本実施例に係る静脈認証装置10では、静脈認証に成功した静脈データを静脈認証時の気温とともに参照用の静脈データとして追加するので、必ずしも始めから参照用の静脈データを登録しておく必要がない。それゆえ、本実施例に係る静脈認証装置10では、登録時に気温を上下させた上で静脈画像を採取するという煩雑な手間なく、気温別に参照用の静脈データを登録することも可能である。
【0050】
なお、静脈認証装置10は、情報処理装置やWebアプリへのログインの他、入退室管理などのように各種のシステムで本人認証を実行する場合に好適に適用できる。また、生体自体の温度を気温に代えて処理する場合、生体認証時の生体の状態をより反映した状態を認証に利用する事ができ、生体の状態に応じた本人認証を行うことが可能となる。
【実施例2】
【0051】
さて、これまで開示の装置に関する実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。そこで、以下では、本発明に含まれる他の実施例を説明する。
【0052】
[応用例]
さらに、上記の実施例1では、静脈認証が成功した場合に温度帯レベルに対応付けて入力静脈データを追加する場合を例示したが、必ずしも入力静脈データを登録静脈データとして追加する必要はない。例えば、成人男性に比べて成人女性や子供の血管パターンは採取しにくいため、利用者の性別が女性であったり、あるいは利用者の年齢が所定値、例えば15才以下である場合に限って入力静脈データを登録静脈データとして追加することとしてもよい。これによって、静脈データ記憶部15に記憶されるデータ量を低減できる。
【0053】
[適用例]
例えば、上記の実施例1では、利用者によって入力された静脈データと予め登録されたN人の静脈データとを照合することで認証する「1:N認証」を実行する場合を例示したが、開示の装置はこれに限定されない。すなわち、開示の装置は、利用者によって入力された静脈データと利用者の識別情報に対応付けて予め登録された静脈データとを照合することで認証する「1:1認証」にも適用できる。
【0054】
また、上記の実施例1では、手のひらの静脈を撮像した静脈画像を用いて認証を行う場合を例示したが、手のひら以外の静脈、例えば指の腹や手の甲の静脈を撮像した静脈画像を用いて認証を行う場合にも同様に適用できる。
【0055】
また、上記の実施例1では、静脈認証装置10がスタンドアローンで静脈認証を実行する場合を例示したが、開示の装置はこれに限定されない。例えば、認証対象の静脈画像を取得する端末装置と、認証対象の静脈画像から得られる静脈データを用いて静脈認証を実行する認証サーバとを有する静脈認証システムとして提供することもできる。この場合には、図2に示した静脈認証装置10の機能部の一部を認証サーバへ移すことにより、容易に実現できる。一例としては、開示のシステムでは、端末装置が少なくとも気温取得部13(生体温度取得部)、静脈センサ14及び抽出部17を有し、認証サーバが静脈データ記憶部15、認証部18及び追加部19を有する構成を採用できる。このような構成を採用した場合には、端末装置から認証サーバへ入力静脈データを送信し、認証サーバから端末装置へ認証結果を通知したり、認証結果に応じて各種の処理、例えばログインの許可やドアの解錠などを実行すればよい。これによって、端末装置及び認証サーバ間で個人情報である静脈画像から抽出された静脈データが授受される結果、利用者の個人情報をよりセキュアに保護することができる。
【0056】
[分散及び統合]
また、図示した各装置の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、抽出部17、認証部18又は追加部19を静脈認証装置10の外部装置としてネットワーク経由で接続するようにしてもよい。また、抽出部17、認証部18又は追加部19を別の装置がそれぞれ有し、ネットワーク接続されて協働することで、上記の静脈認証装置10の機能を実現するようにしてもよい。
【0057】
[静脈認証プログラム]
また、上記の実施例で説明した各種の処理は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。そこで、以下では、図7を用いて、上記の実施例と同様の機能を有する静脈認証プログラムを実行するコンピュータの一例について説明する。
【0058】
図7は、実施例1及び実施例2に係る静脈認証プログラムを実行するコンピュータの一例について説明するための図である。図7に示すように、コンピュータ100は、操作部110aと、スピーカ110bと、カメラ110cと、ディスプレイ120と、通信部130とを有する。さらに、このコンピュータ100は、CPU150と、ROM160と、HDD170と、RAM180と有する。これら110〜180の各部はバス140を介して接続される。
【0059】
HDD170には、図7に示すように、上記の実施例1で示した抽出部17、認証部18及び追加部19と同様の機能を発揮する静脈認証プログラム170aが予め記憶される。この静脈認証プログラム170aについては、図2に示した各々の抽出部17、認証部18及び追加部19の各構成要素と同様、適宜統合又は分離しても良い。すなわち、HDD170に格納される各データは、常に全てのデータがHDD170に格納される必要はなく、処理に必要なデータのみがHDD170に格納されれば良い。
【0060】
そして、CPU150が、静脈認証プログラム170aをHDD170から読み出してRAM180に展開する。これによって、図7に示すように、静脈認証プログラム170aは、静脈認証プロセス180aとして機能する。この静脈認証プロセス180aは、HDD170から読み出した各種データを適宜RAM180上の自身に割り当てられた領域に展開し、この展開した各種データに基づいて各種処理を実行する。なお、静脈認証プロセス180aは、図2に示した抽出部17、認証部18及び追加部19にて実行される処理、例えば図5〜図6に示す処理を含む。また、CPU150上で仮想的に実現される各処理部は、常に全ての処理部がCPU150上で動作する必要はなく、処理に必要な処理部のみが仮想的に実現されれば良い。
【0061】
なお、上記の静脈認証プログラム170aについては、必ずしも最初からHDD170やROM160に記憶させておく必要はない。例えば、コンピュータ100に挿入されるフレキシブルディスク、いわゆるFD、CD−ROM、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」に各プログラムを記憶させる。そして、コンピュータ100がこれらの可搬用の物理媒体から各プログラムを取得して実行するようにしてもよい。また、公衆回線、インターネット、LAN、WANなどを介してコンピュータ100に接続される他のコンピュータまたはサーバ装置などに各プログラムを記憶させておき、コンピュータ100がこれらから各プログラムを取得して実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 静脈認証装置
11 通知部
11a ガイド部
11b ランプ
11c スピーカ
12 通信I/F部
13 気温取得部
14 静脈センサ
15 静脈データ記憶部
16 登録部
17 抽出部
18 認証部
19 追加部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静脈認証に成功した静脈情報および静脈認証時の気温を参照用の静脈情報として記憶部に追加する追加部と、
気温を取得する取得部と、
認証対象の静脈画像が入力された場合に、当該認証対象の静脈画像から前記参照用の静脈情報との照合に用いる静脈情報を抽出する抽出部と、
前記抽出部によって抽出された認証対象の静脈情報と、前記記憶部に記憶された参照用の静脈情報のうち前記取得部によって取得された気温に対応する参照用の静脈情報とを照合して認証する認証部と
を有することを特徴とする静脈認証装置。
【請求項2】
認証対象の静脈画像を取得する端末装置と、前記認証対象の静脈画像から得られる静脈情報を用いて静脈認証を実行する認証サーバとを有する静脈認証システムであって、
前記端末装置は、
気温を取得する取得部と、
認証対象の静脈画像が入力された場合に、当該認証対象の静脈画像から参照用の静脈情報との照合に用いる静脈情報を抽出する抽出部と、
前記取得部によって取得された気温および前記抽出部によって抽出された認証対象の静脈情報を送信する送信部とを有し、
前記認証サーバは、
静脈認証に成功した静脈情報および静脈認証時の温度を参照用の静脈情報として記憶部に追加する追加部と、
前記送信部によって送信された認証対象の静脈情報と、前記記憶部に記憶された参照用の静脈情報のうち前記送信部によって送信された気温に対応する参照用の静脈情報とを照合して認証する認証部とを有する
ことを特徴とする静脈認証システム。
【請求項3】
コンピュータが、
静脈認証に成功した静脈情報および静脈認証時の気温を参照用の静脈情報として記憶部に追加し、
認証対象の静脈画像が入力された場合に、当該認証対象の静脈画像から前記参照用の静脈情報との照合に用いる静脈情報を抽出し、
気温を取得し、
抽出された認証対象の静脈情報と、前記記憶部に記憶された参照用の静脈情報のうち取得された気温に対応する参照用の静脈情報とを照合して認証する処理
を実行することを特徴とする静脈認証方法。
【請求項4】
認証対象の静脈画像を取得する端末装置と、前記認証対象の静脈画像から得られる静脈情報を用いて静脈認証を実行する認証サーバとを有する静脈認証システムに用いる静脈認証方法であって、
前記端末装置が、
認証対象の静脈画像が入力された場合に、当該認証対象の静脈画像から参照用の静脈情報との照合に用いる静脈情報を抽出し、
気温を取得し、
取得された気温および抽出された認証対象の静脈情報を送信する処理を実行し、
前記認証サーバは、
静脈認証に成功した静脈情報および静脈認証時の温度を参照用の静脈情報として記憶部に追加し、
前記端末装置から受信した認証対象の静脈情報と、前記記憶部に記憶された参照用の静脈情報のうち前記端末装置から受信した気温に対応する参照用の静脈情報とを照合して認証する処理を実行する
ことを特徴とする静脈認証方法。
【請求項5】
静脈認証に成功した静脈情報および静脈認証時の気温を参照用の静脈情報として記憶部に追加する追加部と、
認証対象の生体の温度を取得する取得部と、
認証対象の静脈画像が入力された場合に、当該認証対象の静脈画像から前記参照用の静脈情報との照合に用いる静脈情報を抽出する抽出部と、
前記抽出部によって抽出された認証対象の静脈情報と、前記記憶部に記憶された参照用の静脈情報のうち前記取得部によって取得された生体の温度に対応する参照用の静脈情報とを照合して認証する認証部と
を有することを特徴とする静脈認証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−198817(P2012−198817A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63398(P2011−63398)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】