説明

静電チャック、真空処理装置

【課題】短時間で確実に誘電体層と基板との吸着を解除する。
【解決手段】被処理基板13を吸着する誘電体層14aと、断熱プレート14bとが積層されてなる静電チャック14であって、断熱プレートの誘電体層側上面14fと側面14gとが帯電電荷逃避用導体膜14cで覆われてなる。真空処理装置10は、静電チャックが内部に設けられ気密性を有するチャンバ12と、電気的にフローティング状態とされて導体からなるステージ15と、を有し、ステージに静電チャックが載置されて、帯電電荷逃避用導体膜の下端がその全周でステージに接続され、
ステージの電気的容量を増大するために、ステージの面積および厚さが静電チャックより大きく設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャック、真空処理装置に係り、特に、基板の離脱を容易にする技術に用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
静電チャックは、載置台の上に誘電体層を設け、載置台とウェーハ(基板)の間に電圧を印加し、両者の間に発生した力によってウェーハを吸着する機構である。吸着方式の違いによって、誘電体として絶縁材料を使用するクーロン力型と、ジョンソン・ラベック力型に分類される。低電圧で強い吸着力を発揮するジョンソン・ラベック力型は、アルミナなどのセラミック製静電チャックに多く、耐熱性と耐プラズマ性の面で優れ、普及している。
【0003】
このような静電チャックは、例えば半導体製造プロセスにおけるシリコンウェーハの固定のような真空プロセスで平面度よく吸着させたい場合などに利用されている。
特に、静電チャックは、ウェーハの保持および温度制御のために載置台、搬送系に用いられる。おもにエッチングやCVDなどの装置で、機械的な保持具を使用しないためにウェーハ全面を均一に加工できることから、ウェーハの吸着固定用デバイスとして広く普及しており、ウェーハと静電チャックの間にHeなどの不活性ガスを流してウェーハを冷却させたり、ヒータと組み合わせてウェーハを加熱したりと、加工中のウェーハの温度を制御する目的と併せて使用されるケースがある。現在では、LCDガラスやプリント基板の固定用としても利用範囲が拡大している。
【0004】
静電チャックは、機械的特性だけでなく、パーティクルの低減、純度の向上、耐プラズマ性、耐薬品性の向上に加え、成膜、エッチング時の温度の均一性と冷却特性の向上も求められている。そのため静電チャックの材質の改良と同時に、大型化するウェーハを均一に温度制御することが要請されている。
従来の静電チャック装置は、静電気を発生させる静電吸着用電極を吸着面の近傍に配置し、該静電吸着用電極を絶縁体で覆う構造としている。
【0005】
しかし、プラズマ処理を繰り返し行うことにより静電チャック上に半導体ウェーハを多数回吸着させると、静電チャックの絶縁体表面や半導体ウェーハ自体に電荷が残留して、静電チャック上からウェーハを円滑に取り外すことができなかった。
【0006】
残存電荷による影響を排除するために特別な機構を有する例として、ウェーハをチャックから離間するための機構を有するもの(特許文献1)、基板とチャックとの間にガスを導入するもの(特許文献2)、静電チャック内に帯電制御用の電極を別に有するもの(特許文献3)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−205407号公報
【特許文献2】特開2001−189301号公報
【特許文献3】特開2008−251737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1、2に記載されるような従来の静電チャック装置では、容易に基板を離間させるために、特殊な電源を使用したりガス供給をしたり複雑な操作をしなくてはならないという問題を有していた。さらに、特許文献3の例においては、帯電制御用の電極を設けたことによりチャックが充分にされない、あるいは、チャック解除が迅速におこなえない、などの問題を有していた。
さらに、静電チャック上の基板において、処理特性の向上のため、面内熱均一性を保ったまま帯電チャックから逃げる熱量の低減を図りたいという要求があった。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、熱状体の向上を図るとともに、静電チャックでチャックした基板からの除電を確実におこなうことで、静電チャックに吸着した基板の吸着解除および離脱を、特殊な電源を使用したり複雑な操作をしなくても容易に行うことができる汎用性の高い静電チャック、真空処理装置を提供するという目的を達成しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の静電チャックは、被処理基板を吸着する誘電体層と、断熱プレートとが積層されてなる静電チャックであって、
前記断熱プレートの前記誘電体層側上面と側面とが帯電電荷逃避用導体膜で覆われてなるとにより上記課題を解決した。
本発明の真空処理装置は、上記の静電チャックが内部に設けられ気密性を有するチャンバと、
電気的にフローティング状態とされて導体からなるステージと、を有し、
該ステージに前記静電チャックが載置されて、前記帯電電荷逃避用導体膜の下端がその全周で前記ステージに接続され、
前記ステージの電気的容量を増大するために、該ステージの面積および厚さが前記静電チャックより大きく設定されてなることが可能である。
また、本発明において、前記ステージが電気的に絶縁した状態で保持されて高周波電力を供給するマッチングボックスが接続されるとともに、前記ステージには、高周波電力が供給されてない静電チャックの帯電逃避時に、前記ステージをアース状態に接続する切り替え手段が設けられてなる手段を採用することもできる。
また、前記静電チャックへの吸着用電力供給と前記ステージのアース接続状態を維持しながら前記ステージを回転可能とする回転手段を有することができる。
【0011】
本発明の静電チャックは、被処理基板を吸着する誘電体層と、断熱プレートとが積層されてなる静電チャックであって、前記断熱プレートの前記誘電体層側上面と側面とが帯電電荷逃避用導体膜で覆われてなるとにより、前記誘電体層の下端部全周が、前記帯電電荷逃避用導体膜で断熱プレートの全周にわたって断熱プレートの下端側の外部と接続可能であるため、吸着していた基板を離間する際に、帯電した電荷を帯電電荷逃避用導体膜によって、速やかに外部に逃がすことができるため、短時間で誘電体層と基板との吸着を解除することができるとともに、電荷によって予期しない動きが発生することがない。
また、本発明において、前記誘電体層には、被処理基板の温度を設定するための温度調節手段が設けられてなることができる。なお、本発明において、静電チャックの誘電体層とは厳密に誘電体からなる部分だけではなく、被処理基板を吸着する静電吸着用電極およびその付近の帯電可能な部分を示すものである。また、被処理基板としては、半導体基板、ガラス基板他を適応することができる。
【0012】
本発明の真空処理装置は、上記の静電チャックが内部に設けられ気密性を有するチャンバと、電気的にフローティング状態とされて導体からなるステージと、を有し、該ステージに前記静電チャックが載置されて、前記導体膜の下端がその全周で前記ステージに接続され、前記ステージの電気的容量を増大するために、該ステージの面積および厚さが前記静電チャックより大きく設定されてなることにより、静電チャックに帯電していた電荷を帯電電荷逃避用導体膜を介して速やかにステージに逃がすことが可能な程度にステージが大きな電気容量を有しているため、静電チャックを含む部分が真空処理装置内で電気的に絶縁状態とされた状態であっても、短時間で誘電体層と基板との吸着を充分に解除することができる程度に静電チャックに帯電していた電荷を速やかにステージに逃がすことが可能となり、したがって、電荷によって予期しない動きが発生することがなく、安定した位置設定をおこなうことが可能である。
【0013】
また、本発明において、前記ステージには、前記静電チャックの帯電逃避時に、前記ステージをアース状態に接続する切り替え手段が設けられてなることにより、ステージに高周波が供給されるように、静電チャックを含む部分が真空処理装置内で電気的に絶縁状態とされている状態であっても、静電チャックが充分な容量と接続されているため、短時間で誘電体層と基板との吸着を解除することができるとともに、電荷によって予期しない動きが発生することがなく、安定した位置設定をおこなうことが可能である。
【0014】
また、前記静電チャックへの吸着用電力供給と前記ステージのアース接続状態を維持しながら前記ステージを回転可能とする回転手段を有することで、回転可能な状態で、短時間で誘電体層と基板との吸着を解除することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ステージに載置された静電チャックが導体膜によってその全周でステージに電気的に接続され、かつ、ステージの電気的容量が大きく設定されていることにより、基板吸着解除時に、静電チャックに残余していた電荷を帯電電荷逃避用導体膜を介して速やかにステージに逃がすことが可能なため、静電チャックを含む部分が真空処理装置内で電気的に絶縁状態とされた状態であっても、短時間で確実に誘電体層と基板との吸着を充分に解除することができ、電荷によって予期しない動きが基板に発生することがなく、安定した基板の位置設定をおこなうことが可能であるという効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る静電チャック、真空処理装置の第1実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る静電チャック、真空処理装置の他の実施形態を示す模式断面図である。
【図3】本発明に係る静電チャック、真空処理装置の第2実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る静電チャック、真空処理装置の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における真空処理装置を模式的に示す正断面図であり、図において、符号10は、真空処理装置である。
【0018】
本実施形態における真空処理装置10は、例えばプラズマ処理装置とされる。
真空処理装置10には、図1に示すように、気密性を有して半導体ウェーハ(基板)13に対してスパッタ、エッチング、成膜など所望のプラズマ処理を行う真空チャンバ(チャンバ)12が設けられ、真空チャンバ12内には、半導体ウェーハ13を吸着する静電チャック14が設けられる。さらに、真空チャンバ12は、静電チャック14が載置される導体からなるステージ15と、このステージ15に対向しステージ15とともにプラズマ処理を行うための図示しない上電極と、チャンバ12内に所定のガスを供給するガス供給口16と、図示しない排気口とを有している。
【0019】
真空処理装置10においては、真空チャンバ2が、グランドに接続されたシャーシ12aと、電気的にフローティング状態とされて導体からなるステージ15と、このステージ15を電気的に絶縁状態として支持する絶縁支持部材12bと、絶縁支持部材12bに対してステージ15を絶縁状態かつ密閉状態として支持するOリング等の密閉支持部材12cとからなっている。絶縁支持部材12bは、ステージ15の全周下側を密閉支持部材12cを介して支持しており、絶縁支持部材12bの外側はシャーシ12に接続されている。
ステージ15と絶縁支持部材12bとは、密閉支持部材12cを介した部分以外は互いに接触していない。
ステージ15は、マッチングボックス15bを介して高周波電源15Aに接続されている。
【0020】
静電チャック14は、静電力を利用して半導体ウェーハ13を吸着させるためのアルミナセラミック等の誘電体層14aと、半導体ウェーハ13および誘電体層14aから熱がステージ15側に逃げることを防止する断熱プレート14bと、この断熱プレート14bを覆う帯電電荷逃避用導体膜14cとからなる。
【0021】
静電チャック14の誘電体層14aは、半導体ウェーハ13と略同等の径寸法とされる円盤状とされ、誘電体層14a内部には、図示しないパターン形成された静電吸着用電極14m、14nおよびヒータ(温度調節手段)14d、14dが埋め込まれて、この静電吸着用電極14m、14nおよびヒータ14d、14dが、絶縁性材料よりなる誘電体層14aに被覆されるようにして設けられている。静電吸着用電極14m、14nは、半導体ウェーハ13の主面と平行をなすようにパターン状に形成された導電部からなっている。また、静電吸着用電極14m、14nは、所望の印加電圧を発生してウェーハ13を吸着するための静電チャック電源14kに接続されている。ヒータ14dは静電吸着用電極14m、14nよりも断熱プレート14b側深度に位置して、温度調節用に制御した供給電力をヒータ14dに供給するヒータ電源14eに接続されている。ヒータ14dは、ウェーハ13を面内均一な温度など所望の温度状態に加熱できるように、面内分布位置形状および面内加熱状態を制御可能とされている。
【0022】
断熱プレート14bは、石英、セラミック等の断熱材料からなり、誘電体層14aと略同等の径寸法とされる円盤状とされ、誘電体層14aと同心位置となるよう誘電体層14aと貼り合わせている。
断熱プレート14bの上面14fと側面14gとは、帯電電荷逃避用導体膜14cによって被覆されている。帯電電荷逃避用導体膜14cの材質は、銅、アルミニウム、ニッケルなど各種の金属材料、導電性ペースト、インジウムスズ酸化物(ITO)などの各種透明電極材料などから選択することができる。
【0023】
帯電電荷逃避用導体膜14cの形成方法は特に限定されず、例えば、銅箔などの金属薄膜を断熱プレート表面14bに接着もしくは融着する方法、導電性ペーストをスクリーン印刷する方法、溶射により金属を断熱プレート表面14bに堆積させる方法、スパッタリングにより金属を断熱プレート表面14bに堆積させる方法、蒸着により金属を堆積させる方法、めっきにより金属を堆積させる方法、エッチングにより所定の金属パターンを形成する方法、サンドブラストにより不要部分を削り取る方法などを組み合わせることで形成することができる。
【0024】
帯電電荷逃避用導体膜14cの上面はその全体が誘電体層14aに接続されるとともに、帯電電荷逃避用導体膜14cの下端部は、その全周が例えばSUSとされる導電体からなるステージ15に接続されている。
帯電電荷逃避用導体膜14cの厚さ寸法は0.5〜2mm程度とされることが好ましい。
ステージ15は、平面視して、少なくとも誘電体層14aよりも大きな径寸法で、かつ、誘電体層14aよりも大きな厚み寸法を有するように設定される。これらの帯電電荷逃避用導体膜14cおよびステージ15の寸法は、誘電体層14aでウェーハ13を吸着解除した際に、残余の電荷が速やかに移動してウェーハ13の吸着を短時間に解除できる程度に電荷が帯電電荷逃避用導体膜14cを移動可能でステージ15が大きな静電容量を有するように設定される。
【0025】
次に、本実施形態の真空処理装置10において、静電チャック14が半導体ウェーハ13を吸着する動作について説明する。
先ず静電チャック14上に半導体ウェーハ13を図示しないロボットハンド等の搬送手段によって載置する。
【0026】
静電チャック電源14kは、図示しない制御手段によって制御されて、印加電圧を静電吸着用電極14m、14nに出力する。定常の印加電圧を受けると、誘電体層14aの静電吸着用電極14m、14n上側位置が帯電し静電チャック4と半導体ウェーハ13との間で吸着力が働く。これにより、半導体ウェーハ13は静電チャック14に吸着される。本実施形態では、双極タイプの静電チャック14としているが、単極タイプの静電チャックとすることもできる。
【0027】
半導体ウェーハ13が吸着された状態で、ガス供給口16から所定のガスを供給し、マッチングボックス15bを介して高周波電源15Aからステージ15に高周波電力を供給してプラズマを発生させ、同時に図示しないヒータ等の温度制御手段によって温度状態を制御した半導体ウェーハ3の表面に所定の処理を施す。この際、断熱プレート14bにより半導体ウェーハ13からの熱がステージ15側に逃げてしまうことが低減され、半導体ウェーハ13の温度状態が面内均一となり、処理を確実におこなうことができる。
【0028】
次に、静電チャック14が半導体ウェーハ13を離脱する本発明の動作について説明する。
プラズマによる半導体ウェーハ13表面処理が終了すると、静電チャック電源14kは、静電吸着用電極14m、14nへの電圧印加を解除し、誘電体層14aの静電吸着用電極14m、14n上側位置に帯電している電荷を静電チャック電源14kを介してアースに逃がして、静電チャック4と半導体ウェーハ13との間における吸着力を解除する。
この際、静電チャック電源14kを介してアースに逃げずに誘電体層14aに残留した電荷は、帯電電荷逃避用導体膜14cを介してステージ15に退避する。これにより、静電チャック4と半導体ウェーハ13との間における吸着力を確実に低減して、半導体ウェーハ13の離脱をほぼ確実におこなうことができる。
静電チャック14上の半導体ウェーハ13を図示しないロボットハンド等の搬送手段によって容易に搬出することができる。
【0029】
本実施形態の静電チャック14、真空処理装置10は、吸着していた半導体ウェーハ13の離脱時に誘電体層14aの残余電荷を帯電電荷逃避用導体膜からステージに移動可能なことにより、短時間で誘電体層14aとウェーハ13との吸着を解除することができるとともに、電荷によってウェーハ13の予期しない動きを防止できる。
この際、誘電体層14aの残余電荷を、帯電電荷逃避用導体膜14cを介して速やかにステージ15に逃がすことが可能な程度にステージ15が大きな電気容量を有しているため、ステージ15が真空処理装置10内で電気的に絶縁状態とされた状態であっても、短時間で誘電体層14aとウェーハ13との吸着を充分に解除することができる。
同時に、帯電電荷逃避用導体膜14cと誘電体層14aとが平面視した全面で接続されるとともに、帯電電荷逃避用導体膜14cの下端部全周がステージ15に接続されていることにより、誘電体層14aの残余電荷を速やかにステージ15に逃がすことが可能となる。これにより、電荷によるウェーハ13に発生する予期しない動きを防止でき、安定した位置設定をおこなうことが可能である。
【0030】
さらに、本実施形態において、図2に示すように、ステージ15には、静電チャック14の吸着解除時、つまり、誘電体層14aの帯電逃避時に、ステージ15をアース状態に接続する切り替え手段15kが設けられ、このステージ15アース状態の切り替えは、静電チャック電源14kによる静電吸着用電極14m、14nへの電圧印加解除と同期するように制御されることができる。なお図2ではヒータ14dおよびその関係する構成を省略して図示している。
これにより、ステージ15が真空処理装置10内で電気的に絶縁状態とされている状態であっても、誘電体層14aの帯電逃避時に静電チャック14をアースして、短時間で誘電体層14aとウェーハ13との吸着を解除することができるとともに、帯電によってウェーハ13に発生する予期しない動きを防止でき、より一層安定した位置設定をおこなうことが可能となる。
【0031】
以下、本発明に係る静電チャック、真空処理装置の第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
図3は、本実施形態における真空処理装置20を模式的に示す正断面図であり、本実施形態において、図1または図2に示した第1実施形態と異なるのは回転手段に関する点であり、これ以外の対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0032】
本実施形態において、ステージ15Aは、平面視して静電チャック14と略等しい大きさとされる。また、ステージ15Aはシース12aに固定支持されていない。
本実施形態においては、ステージ15A、静電チャック14を、吸着した半導体ウェーハ13ごと回転可能とするために、ステージ15A裏面に固着された回転軸15rと、この回転軸15rを回転可能に軸支するとともに、密閉性を保持する磁性流体シール部15jと、回転軸15r内に導かれた各導線を回転時に電気的接続を維持するための集電環(回転子)とブラシ(固定子)とからなる多極のスリップリング15sと、回転軸15rを回転駆動する回転駆動源であるモータ15Mとが設けられている。これら回転軸15rと、磁性流体シール部15jと、スリップリング15sと、モータ15Mとは回転手段を構成する。
スリップリング15sは、静電吸着用電極14m、14nと静電チャック電源14k、ヒータ14dとータ電源14e、帯電電荷逃避用導体膜14cと切り替え手段15k、ステージ15Aと高周波電源15Aとをそれぞれ接続するために必要な極数が設けられるが、図3には図示していない。
【0033】
本実施形態において、図示しない制御部によりモータ15Mを駆動して、ステージ15A、静電チャック14を、吸着した半導体ウェーハ13ごと回転する。これにより、プラズマ処理時に、ウェーハ13表面を所望の状態に処理することが可能となる。また、静電チャック14からのウェーハ13離脱時に、ウェーハ13を回転したまま、誘電体層14aに帯電した電荷を速やかに外部に逃がすことが可能となる。
これによりウェーハ13の回転を維持した状態で、静電吸着用電極14m、14nへの電圧印加と、誘電体層14aから帯電退避させ、静電チャック14からのウェーハ13の離脱を速やかに行うことができる。
【0034】
なお、本実施形態においては、図3に示すように、静電チャック14において、例えばグラファイト等からなる板体の導電性基材14q周囲となる表面に静電吸着用電極14m、14nを、また、裏面にヒータ(温度調節手段)14dを形成し、これら導体からなる静電吸着用電極14m、14n、ヒータ14dをPBN(パイロリティックボロンナイトライド)やポリイミド等からなる絶縁膜で被覆して誘電体層14aを形成することができる。
【0035】
さらに、断熱プレート15においては、少なくとも、帯電した電荷を逃がすための導電性が必要な上面14fおよび側面14gを含む部分、例えばその表面の少なくとも厚さ数mmの範囲から断熱プレート15全体までの範囲で所定の割合が、導電性セラミック(アルミナやジルコニアに金属等の導電性物質を混合あるいは内包させたもの)からなることができる。
【符号の説明】
【0036】
10,20…真空処理装置
12…チャンバ
12b…絶縁支持部材12b
13…半導体ウェーハ(基板)
14…静電チャック
14a…誘電体層
14b…断熱プレート
14c…帯電電荷逃避用導体膜
14d…ヒータ(温度調節手段)
14f…上面
14g…側面
14k…静電チャック電源
15、15A…ステージ
15k…切り替え手段
15j…磁性流体シール部(回転手段)
15M…モータ(回転手段)
15r…回転軸(回転手段)
15s…スリップリング(回転手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板を吸着する誘電体層と、断熱プレートとが積層されてなる静電チャックであって、
前記断熱プレートの前記誘電体層側上面と側面とが帯電電荷逃避用導体膜で覆われてなることを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
請求項1記載の静電チャックが内部に設けられ気密性を有するチャンバと、
電気的にフローティング状態とされて導体からなるステージと、を有し、
該ステージに前記静電チャックが載置されて、前記帯電電荷逃避用導体膜の下端がその全周で前記ステージに接続され、
前記ステージの電気的容量を増大するために、該ステージの面積および厚さが前記静電チャックより大きく設定されてなることを特徴とする真空処理装置。
【請求項3】
前記ステージには、前記静電チャックの帯電逃避時に、前記ステージをアース状態に接続する切り替え手段が設けられてなることを特徴とする請求項2記載の真空処理装置。
【請求項4】
前記静電チャックへの吸着用電力供給と前記ステージのアース接続状態を維持しながら前記ステージを回転可能とする回転手段を有することを特徴とする請求項3記載の真空処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−16554(P2013−16554A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146555(P2011−146555)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】