説明

静電チャック及びこれを備えた有機電界発光素子の製造装置

【課題】高真空装備内で大面積基板のチャッキング及びデチャッキングを安定的に制御できる静電チャックを提供する。
【解決手段】本発明の静電チャックは、中心部を貫通する少なくとも1つの開口部を備える絶縁プレートと、前記絶縁プレートに実装される一対の電極と、前記一対の電極に電圧を印加する第1コントローラと、前記絶縁プレートに隣接するように配置され、前記絶縁プレートの一面上に位置する帯電物体の静電荷が除去されるように前記少なくとも1つの開口部にイオンを放出する除電部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空チャンバ内で上向式に基板を吸着して支持する静電チャックと、この静電チャックを備える有機電界発光素子の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(Organic Light Emitting Diode;OLED)は、単分子、低分子又は高分子の有機物薄膜で陽極と陰極を通じて注入された電子と正孔が再結合して励起子を形成し、形成された励起子からのエネルギーにより特定の波長の光が発生する現象を用いた自己発光型ディスプレイ素子である。
【0003】
有機電界発光素子の陽極膜としては、面抵抗が小さく、透過性の良いITO(Indium Tin Oxide)膜を用いることができ、発光効率を高めるために有機薄膜としては、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、発光層(EML)、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)の多層構造を用いることができる。そして、陰極膜としては、LiF−Alなどの金属膜を利用し得る。
【0004】
有機電界発光素子を用いる有機電界発光表示装置は、広い視野角、速い応答速度、小さな消費電力、高輝度などの優れた特性を有しているだけでなく、超軽量、超薄型に製作でき、次世代ディスプレイとして脚光を浴びている。それにも拘わらず、有機電界発光素子の量産装備はまだ正確に標準化されておらず、適切な量産装備の開発が切実に要求されている。
【0005】
有機電界発光素子の量産過程は大きく前工程、後工程、及び封止工程の3つの部分に分けられる。前工程は主にスパッタリング技術を用いてガラス基板上にITO薄膜を形成する工程であって、既に液晶表示装置用として量産工程が商業化されている。封止工程は、有機薄膜が空気中の水分と酸素に非常に弱いので、素子の寿命を伸ばすために、有機薄膜を封止するための工程である。後工程は、基板上に有機薄膜及び金属薄膜を形成する工程である。後工程としては、高真空雰囲気で有機物質を蒸発させて基板上にシャドウマスクを用いた画素パターニングを作るいわゆる真空蒸着法が主に用いられている。
【0006】
有機電界発光素子の量産に必須な要件としては、後工程中に高真空を維持し、高速蒸着をどのように実現するのかが非常に重要である。その細部的な事項としては、例えば、370×470mm以上の大面積基板の活用が可能でなければならないという点が挙げられる。特に、大面積基板の垂れと熱膨張による金属マスクの垂れが最大限に抑制されなければならない。このような要件は蒸着物質をるつぼ(crucible)に入れ、加熱及び蒸発させて上部に位置する基板に膜を形成する上向式蒸着方式において有機薄膜の均一度を±5%未満に保証するためにも欠かせない。
【0007】
蒸着チャンバ内で上向式に基板を支持する方法として、静電チャックが利用され得る。静電チャックを用いれば、基板の垂れを最小化できるという利点がある。
【0008】
しかしながら、大面積基板を適切な吸着力で支持するために静電チャックには数kVの高電圧が印加される。その場合、後続するデチャッキング動作時に、静電チャック上に残留する静電荷によって基板が静電チャックから容易に分離されないという問題が発生する。即ち、チャッキング用電圧が遮断された後もチャッキング時に発生した静電荷が静電チャックと基板との間で一定部分残留状態を維持しており、静電チャックは依然として基板に対する吸着力を有する。このような吸着力は基板のハンドリングを難しくし、ハンドリングエラーを誘発するので、製造工程の時間を遅延させ、生産効率を減少させるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】大韓民国特許出願公開第2001−0091088号明細書
【特許文献2】大韓民国特許出願公開第2000−0031307号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、高真空装備内で大面積基板のチャッキング及びデチャッキングを安定的に制御できる静電チャックを提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、大面積基板を上向式に支持する時、基板の垂れや浮き上がりを除去して成膜の品質を高めることができる有機電界発光素子の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明の一側面によれば、中心部を貫通する少なくとも1つの開口部を備える絶縁プレートと、絶縁プレートに実装される一対の電極と、一対の電極に電圧を印加する第1コントローラと、絶縁プレートに隣接するように配置され、絶縁プレートの一面上に位置する帯電物体の静電荷が除去されるように少なくとも1つの開口部にイオンを放出する除電部とを含む静電チャックが提供される。
【0013】
好ましくは、少なくとも1つの開口部は絶縁プレートの一方向に延びるストライプ状に形成されることができる。
【0014】
開口部は絶縁プレートの一面上に分散配置されることができる。
【0015】
一対の電極は積層構造で配置されることができる。
【0016】
一対の電極は同一平面上に配置されることができる。
【0017】
絶縁プレートは樹脂又はセラミックからなることができる。
【0018】
静電チャックは絶縁プレートを支持する板状の支持部材を更に含むことができる。また、静電チャックは絶縁プレートと支持部材との間にバッファ層を更に含むことができる。
【0019】
除電部はコロナ放電によりイオンを発生させる放電部、及び放電部に第2電圧を印加する第2コントローラを備えることができる。
【0020】
静電チャックは放電部で発生したイオンを開口部に強制移送する送風部を更に含むことができる。また、静電チャックは放電部で発生した陽イオンと陰イオンのバランス状態を検知し、検知された状態に対する出力信号を第2コントローラに伝達するセンサを更に含むことができる。
【0021】
本発明の他の側面によれば、真空チャンバと、真空チャンバ内で基板を上向式で支持する前述した側面のいずれか1つの静電チャックと、真空チャンバに結合され、静電チャックを支持して移動させる機構部とを含む有機電界発光素子の製造装置が提供される。
【0022】
好ましくは、機構部は静電チャックに備えられた絶縁プレートを支持する第1機構部及び静電チャックに備えられた除電部を支持する第2機構部を含むことができる。
【0023】
有機電界発光素子の製造装置は基板の一面に有機物又は金属を蒸着するための蒸発源を更に含むことができる。
【0024】
有機電界発光素子の製造装置は、基板の少なくとも一面に有機薄膜及び導電膜のうちの少なくともいずれかを所望のパターンに形成する蒸着装置であってもよい。
【発明の効果】
【0025】
以上のように本発明によれば、高真空装備内でチャッキング動作とデチャッキング動作を円滑に制御することで、大面積基板の支持及び移送を容易に行うことができる。更に、大面積基板を上向式でチャッキングする時に吸着部と基板との機構公差を実質的に除去することで、固定される基板が優れた平面度を有するようにすることができる。従って、基板上に形成される薄膜の均一性を向上させることができる。また、蒸着工程時に基板の微細なアライン作業を容易に行うことができるので、工程時間を短縮させることができ、有機電界発光表示装置の量産工程に有用に利用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態による静電チャックの概略的な斜視図である。
【図2】図1の静電チャックの一部分に対する分解斜視図である。
【図3】本発明の静電チャックに対する断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態による静電チャックに対する断面図である。
【図5】本発明の静電チャックに適用可能な除電部の概略的な構成図である。
【図6A】本発明の静電チャックに適用可能な除電部を示す斜視図である。
【図6B】図6Aの除電部における放電部の一部分に対する拡大平面図である。
【図7】本発明による有機電界発光素子の製造装置の概略的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
下記の詳細な説明は、本発明の特定の実施形態だけを詳細に記載する。本発明の技術分野において通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で下記の実施形態を多様に変形できる。従って、添付する図面と説明は、本発明を説明するだけであって、これに限定されるものではない。また、1つの構成要素が他の構成要素と「接触している(on)」ということはそれがその他の構成要素と直接接触したり、1つ以上の要素を2つの間に介在させて間接的に接触していることを意味する。また、ある要素が他の要素に「結合されている」ということは、それがその他の要素に直接的に連結されているか、1つ以上の要素を2つの間に介在させて間接的に連結されていることを意味する。以下で同じ参照番号は同じ構成要素を意味する。
【0028】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施形態について本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態による静電チャックの概略的な斜視図である。図2は、図1の静電チャックの一部分に対する分解斜視図である。
【0030】
図1を参照すれば、本実施形態の静電チャック10は、高真空装備内で大面積基板の吸着及び分離作業を容易に行うために吸着部と除電部40を含む。
【0031】
吸着部は、静電チャック10のチャッキング動作時に電気場の誘導により形成された不均一な電界で発生する傾度力(gradient force)で対象物体を吸着する。本実施形態において吸着部は絶縁性絶縁プレートと一対の電極からなる電極パッド20と一対の電極に電圧を印加する第1コントローラを含む。
【0032】
電極パッド20は多様な形態で実現されることができるが、本実施形態においては積層型構造を有する双極型電極パッドを例示する。例えば、電極パッド20は第1絶縁層21a、第1電極層23a、電極間絶縁層21b、第2電極層23b、及び第2絶縁層21cを備える。第1電極層23aと第2電極層23bは一対の電極を形成する。電極パッド20で一対の電極を除いた部分は絶縁プレートとして言及される。
【0033】
第1電極層23aと第2電極層23bは、銅、タングステン、アルミニウム、ニッケル、クロム、銀、白金、錫、モリブデン、マグネシウム、パラジウム、タンタルなどからなることができる。第1電極層23aと第2電極層23bの厚さは任意に選択できるが、約0.1〜20μmで選択可能であり、第1電極層23aは約0.1〜5μmであることが好ましい。それは第1電極層23aの凹凸が対象物体(例えば、基板)の吸着面を形成する第1絶縁層21aの表面に反映されることを最小化するためである。第1電極層23aの厚さを約0.1〜5μmから選択すれば、第1絶縁層21aの吸着面の平坦性を曲率半径1μm程度に確保できる。
【0034】
第1電極層23aと第2電極層23bは多様な形態で形成されることができる。例えば、第1電極層23aは櫛状に形成されることができ、第2電極層23bは開口部を備えたシート状に形成されることができる。また、第1電極層23aと第2電極層23bはスパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ処理などにより形成されることができる。
【0035】
第1絶縁層21a、電極間絶縁層21b、及び第2絶縁層21cは、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、エポキシ、及びアクリルから選択される1種又は2種以上の樹脂からなることができる。他方、前記絶縁層21a、21b、21cは酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、及びチタニアから選択される1種又は2種以上のセラミックからなることができる。前記各絶縁層21a、21b、21cの厚さは適当に選択されることができるが、例えば、第1絶縁層21aの厚さは50〜300μm、電極間絶縁層21bの厚さは25〜100μm、及び第2絶縁層21cの厚さは25〜100μmであってもよい。
【0036】
本実施形態の電極パッド20は、厚さ方向に貫通する複数の開口部30a、30b、30cを備える。図2に示すように、各開口部30a、30b、30cは実質的に第1絶縁層21a、第1電極層23a、電極間絶縁層21b、第2電極層23b、及び第2絶縁層21cにそれぞれ形成されている。開口部30a、30b、30cは、除電部40で発生したイオンを電極パッド20を貫通して第1絶縁層21aの吸着面上に伝達する通路である。前述した開口部30a、30b、30cは電極パッド20の大きさに応じて適切に分散配置され得る。
【0037】
除電部40は、コロナ放電、放射線照射(例えば、弱いX-線照射)、紫外線照射などのような多様な方式のイオン化装置で実現されることができる。除電部40は、シャワーノズル、一字型バーノズルなどを備えることができ、イオンの発生方法によってパルス型DCタイプ、DCタイプ、及びACタイプのうちのいずれか1つの方式で駆動され得る。
【0038】
本実施形態において、除電部40はバー状の3本の放電部42a、42b、42cと第2コントローラを含む。第2コントローラは第1コントローラと共に1つのコントローラ50で示されている。
【0039】
各放電部42a、42b、42cは、電極パッド20の一方向に延びる各開口部30a、30b、30cに対応するように一字状に配置される。開口部30a、30b、30c又は放電部42a、42b、42cが延びる一方向は略直四角形の電極パッド20を考慮するとき、電極パッド20の幅方向、又は長さ方向、又は対角線方向のうちのいずれかの一方向であってもよい。本実施形態においては図示の便宜上、幅方向に延びる形態に示されている。
【0040】
また、各放電部42a、42b、42cは後述する放電電極とグランド電極とからなる単位放電部が所定間隔を置いて複数配置される。放電電極に直流又は交流の高電圧が印加されると、陽イオン又は陰イオンが発生する。発生したイオンは、電極パッド20の開口部30a、30b、30cを通じて静電チャック10の吸着面上に供給されることができる。
【0041】
本実施形態の静電チャック10の作動過程を簡略に説明すれば、以下の通りである。
【0042】
まず、電極パッド20の一対の電極(以下、チャッキング用電極ともいう)に第1電圧V1が印加されると、チャッキング用電極の周囲に磁場が誘導され、誘導された磁場により静電チャック10に隣接した物体は帯電されて吸着される。第1電圧V1は約数百ボルト〜約数キロボルトの範囲の電圧である。
【0043】
一方、大型基板を吸着するためには静電チャック10の吸着力又は支持力を高めるためにチャッキング用電極に印加する電圧を高める。その場合、チャッキング用電極に印加された高電圧を遮断した後も基板は依然として静電チャック10に吸着されるようになる。それはチャッキング用高電圧が遮断された後も静電チャック10と基板との間に一定量の静電荷が残留状態を維持するためである。
【0044】
次に、除電部40の放電部に第2電圧V2が印加されると、放電電極で放電が発生し、周囲の空気をイオン化する。発生したイオンは開口部30a、30b、30cを通じて静電チャック10と基板との間に移動し、そこに残留する静電荷を中和させる。第2電圧V2は約120Vであってもよく、約220Vであってもよい。
【0045】
前述した本実施形態によれば、チャッキング用高電圧が遮断された後も第1絶縁層21aと基板との間に残留する静電荷によって基板が電極パッド20から中々分離されないとき、除電部40で発生したイオンを電極パッド20の開口部30a、30b、30cを通じて基板吸着面上に供給することで、電極パッド20から基板を容易に分離できる。即ち、本実施形態の静電チャック10を用いれば、厚さ0.7mm前後、大きさ1,870×2,200mm、2,200×2,500mmなどの大型ガラス基板をハンドリングする際に、デチャッキング動作時に基板が片方に傾いたり、滑ったりする現象などのハンドリングエラーを防止できる。
【0046】
図3は、本発明の実施形態による静電チャックに対する断面図である。
【0047】
図3を参照すれば、本実施形態の静電チャック10aは、吸着部を形成する電極パッド20a、及び除電部を形成する放電部42a、42b、42cを含む。電極パッド20aは、絶縁プレート21、第1電極層23a、第2電極層23b、支持部材32、及びバッファ層34を備える。
【0048】
支持部材32は、電極パッド20aの付着面と向かい合う一面に一体に配置され、電極パッド20aを支持し、所定の強度を提供する。支持部材32は複数の開口部を備え、これらの開口部は前述した開口部30a、30b、30cに対応するように配置される。支持部材32は、板状の金属基盤の部材を含む。例えば、金属基盤の部材はアルミニウム合金製のようなアルミニウム基盤の部材を含む。
【0049】
バッファ層34は、絶縁プレート21と支持部材32との間に配置される。バッファ層34は開口部を備え、これらの開口部は前述した開口部30a、30b、30cと支持部材32の開口部に対応するように配置される。バッファ層34は、ポリプロピレンなどの樹脂やシリコンゴムなどのゴム系弾性体などからなることができる。電極パッド20aにバッファ層34が適用されれば、チャッキング動作時に電極パッド20aに柔軟性を付加して吸着面に対する基板の接触率を向上させることができる。
【0050】
本実施形態の電極パッドを製造する方法は特に限定されない。例えば、図2を参照して前述した第1絶縁層、第1電極層、電極間絶縁層、第2電極層、及び第2絶縁層を順次積層した後、所定の加熱、加圧条件を熱圧着して積層構造を有する電極パッドを形成できる。熱圧着された電極パッド21aは絶縁プレート21と、絶縁プレート21内に実装された積層構造の第1電極層23a及び第2電極層23bを備えるようになる。バッファ層34と支持部材32は、電極パッドの熱圧着時に絶縁層及び電極層と共に積層されて熱圧着されるか、絶縁層と電極層が1次的に熱圧着された後、2次的な熱圧着工程を通じて付加されることができる。
【0051】
図4は、本発明の他の実施形態による静電チャックに対する断面図である。
【0052】
図4を参照すれば、本実施形態の静電チャック10bは、吸着部を形成する電極パッド20b、及び除電部を形成する放電部42a、42b、42cを含む。除電部は図1〜図3を参照して前述した除電部と実質的に同一であり、電極パッド20bの支持部材32とバッファ層34は図3を参照して前述した対応構成と実質的に同一である。
【0053】
電極パッド20bは、絶縁プレート22、第1電極層24a、及び第2電極層24bを備える。第1電極層24aと第2電極層24bは実質的に同一平面上に位置する。第1電極層24aと第2電極層24bは所定間隔を置いて向き合って挟まれる一対の櫛のような形態を備えることができる。ここで、1つの櫛状は図2の参照符号23aの形状を参照できる。第1電極層24aと第2電極層24bは一対のチャッキング用電極を形成する。第1電極層24aにはポジティブ電圧が印加されることができ、第2電極層24bにはネガティブ電圧が印加されるか、グランドが連結され得る。
【0054】
第1電極層24aと第2電極層24b間の距離はこれら間の距離が約0.5mmであるとき、チャッキング用電圧が最大約3kVであることを勘案して適切に選択されることができる。但し、第1電極層24aと第2電極層24b間の距離をあまりに狭くすれば、電極の間で放電が発生し得るので、静電チャック10bの吸着力を高めるには前述した積層構造の電極層を備えた電極パッドより制約が伴い得る。
【0055】
また、電極パッド20bは厚さ方向に貫通される開口部31a、31b、31cを備える。開口部31a、31b、31cは、放電部42a、42b、42cで発生したイオンが電極パッド20bの吸着面22a上に容易に移動できるように通路を形成する。各開口部31a、31b、31cは、各放電部42a、42b、42cと向かい合うように設置されることが好ましい。
【0056】
図5は、本発明の静電チャックに適用可能な除電部の概略的な構成図である。
【0057】
図5を参照すれば、本実施形態の除電部40aは、放電部43及び第2コントローラ50aを含む。
【0058】
放電部43は第2コントローラ50aで所定電圧が印加されるとき、コロナ放電により陽イオンと陰イオンを発生させる。放電部43でイオンが放出される面は電極パッドに形成された開口部と向かい合うように配置される。
【0059】
第2コントローラ50aは、電源部52、スイッチング部54、高電圧発生部56、及びマイコン58を含む。電源部52は、自体電源又は外部電源を高電圧発生部56とマイコン58に供給する。電源部52は、第1電圧レベル(例えば、24V)を第2電圧レベル(例えば、5V)に変化させる電圧変換部を含むことができる。電圧変換部は、高圧トランジスタ、インダクタコイル及びショットキーダイオードで構成されてもよく、トランジスタ、トランスフォーマ及びショットキーダイオードで構成されてもよい。スイッチング部54は、マイコン58の制御によって電源部52と高電圧発生部56間の電気的連結を許容するか、遮断する。高電圧発生部56は、電源部52から供給される所定の直流電圧(例えば、24V)を変換して直流高電圧(例えば、5kV)を発生させ、発生した高電圧を放電部43に供給できる。高電圧発生部56は、正極性及び負極性高圧パルスを出力する高圧トランジスタで実現されることができる。マイコン58は、電源部52から電源の提供を受け、第2コントローラ50aの全体動作を制御する。
【0060】
また、除電部40aは送風部60及びセンサ62を含むことができる。送風部60は、放電部43で発生したイオンを電極パッドの開口部に強制移送するための流体流動(例えば、空気の流れ)を形成する。センサ62は、放電部43のコロナ放電により発生した陽イオンと陰イオンのバランス状態を検知し、検知された状態に対応する出力信号をマイコン58に伝達する。
【0061】
図6Aは、本発明の静電チャックに適用可能な除電部の一例を示す斜視図である。図6Bは、図6Aの除電部における放電部の一部分に対する拡大平面図である。
【0062】
図6Aを参照すれば、本実施形態の除電部40aは、放電部43、第2コントローラ50a、送風部60、及びセンサ62を含む。
【0063】
放電部43は、一字型バー状のハウジング44、及び複数の単位放電部43aを含む。ハウジング44は、複数の単位放電部43aを支持し、各単位放電部43aと第2コントローラ50aを連結する配線を備え、各単位放電部43aと送風部60を連結する通路を備える。
【0064】
複数の単位放電部43aは、ハウジング44の一面で互いに所定間隔を置いて略一列に配置される。各単位放電部43aは、ノズル状に形成される。複数の単位放電部43aが配置されたハウジング44の一面は静電チャックの吸着部を形成する電極パッドの開口部と向かい合うように設置され得る。
【0065】
本実施形態の各単位放電部43aは、図6Bに示すように、絶縁性ノズル本体44a、グランド電極46、放電電極ホルダ47、及び放電電極48を備える。絶縁性ノズル本体44aは、ハウジング44の一面に中孔部を有し、一端が露出するように配置され、ハウジング44に単位放電部43aを固定させ、ハウジング44とグランド電極46を電気的に絶縁させる。グランド電極46は、ノズル本体44aの中孔部内の表面をほぼ完全に取り囲むように配置される。放電電極ホルダ47はノズル本体44aに固定され、グランド電極46と一定間隔を置いてノズル本体44aの中孔部の中心に配置される。
【0066】
放電電極48は、放電電極ホルダ47に嵌め込まれて固定され、その一端は配線を通じて第2コントローラ50aの高電圧発生部に連結する。放電電極48の他端は針状とされることができ、静電チャックの電極パッドの開口部と向かい合うように配置されることができる。放電電極48は、電極摩耗が防止された耐摩耗性の特殊電極(例えば、X−materialを用いた電極)が利用され得る。
【0067】
また、単位放電部43aは、グランド電極46と放電電極ホルダ47との間に空間45を備える。この空間45は送風部60により流動する流体の通路である。放電電極48で発生したイオンは前記空間45を通じて外部に放出される流体の流れに沿って電極パッドの開口部に強制流入し得る。
【0068】
送風部60はハウジング44の一側に結合し、ハウジング44に配置された各単位放電部43aに流体の流れを形成する。送風部60はゴムからなるチューブの圧力で風を送風するブロワー(blower)や電気モータが搭載されたファンで実現され得る。
【0069】
センサ62は、ハウジング44の一側に結合されることができ、少なくとも1つの単位放電部43aから出る陽イオンと陰イオンのバランス状態を検知し、検知された状態に対応する出力信号を第2コントローラ50aに伝達する。センサ62としては、空気イオン濃度計などが用いられることができる。
【0070】
図7は、本発明の一実施形態による有機電界発光素子の製造装置の概略的な構成図である。
【0071】
図7を参照すれば、本実施形態の有機電界発光素子の製造装置100は、真空チャンバ110、静電チャック120、及び機構部140を含む。
【0072】
真空チャンバ110は、約104kPa以下の高真空環境を提供できるチャンバを含む。また、真空チャンバ110は、チャンバ内部を真空状態にするための真空ポンプ112を備える。真空チャンバ110内には静電チャック120の放電部124に配置された放電電極の周囲に微量の不純物が析出又は堆積後に再び飛散するのを防止するために窒素ガスが注入され得る。
【0073】
静電チャック120は吸着部を形成する電極パッド122及び第1コントローラ130aと、除電部を形成する放電部124及び第2コントローラ130bを備える。第1コントローラ130aは、電極パッド122のチャッキング用電極に第1電圧を印加し、第2コントローラ130bは放電部124のデチャッキング用電極に第2電圧を印加する。静電チャック120は、上向式で基板101を吸着して支持する。
【0074】
本実施形態の静電チャック120は、図1〜図6Bを参照して前述した静電チャックのいずれか1つを含むことができる。
【0075】
第1コントローラ130aからチャッキング用電極に電圧が印加されると、静電チャック120と基板101との間に強い電界が形成され、基板101の表面に分極が発生する。このとき、静電チャック120の第1面120aと基板101との間に電位差が発生し、相互間にクーロン力が発生して基板101が静電チャック120の第1面120a上に吸着される。チャッキング用電極に印加される電圧は±数百Vから±数kVの電圧範囲で任意に選択され得る。
【0076】
特に、真空チャンバ110内で静電チャック120と基板101との間が真空状態であるため、基板101は静電チャック120の第1面120a上に完全に密着する。このような密着の程度、即ち、接触率は電極パッド122の絶縁プレートがポリイミドからなり、電極パッド122内の絶縁プレートと支持部材との間にバッファ層が配置された時に更に高くなり得る。
【0077】
前述した静電チャック120を用いれば、厚さ0.7mm前後、大きさ1,870×2、200mm、又は2,200×2,500mmのガラス基板を安定的に移送するか、固定できる。
【0078】
一方、静電チャック120に完全に密着した基板101はチャッキング時の高電圧が遮断された後も静電チャック120の第1面120a上でそのまま付着状態を維持しようとする。このような属性は基板101のデチャッキング動作を容易に制御できず、工程の進行を難しくし、デチャッキング動作時に基板101の損傷を誘発し得る。従って、本実施形態の有機電界発光素子の製造装置100では静電チャック120に別途の除電部を配置してデチャッキング動作を制御する。
【0079】
第2コントローラ130bから放電部124に所定電圧が印加されると、放電電極のコロナ放電により陽イオンと陰イオンが発生する。発生したイオンは静電チャック120の開口部121を通じて第1面120aに移動する。このとき、放電電極と基板101との間に有効除電距離が要求される場合、放電部124と静電チャック120との間には所定長さの延長通路が付加され得る。延長通路は、静電チャック120の開口部121を放電部124に向かって一定の長さだけ延長する配管を含むことができる。
【0080】
前述した静電チャック120によれば、基板101のチャッキング動作に続くデチャッキング動作時に基板101表面の分極と電位差を効果的に相殺してデチャッキング動作を円滑に行うことができる。
【0081】
機構部140は真空チャンバ110内に固定され、静電チャック120を支持して所望の方向に移動させる。例えば、機構部140は静電チャック120の電極パッドに結合される複数のフィン部、複数のフィン部が固定される連動部、及び連動部を昇降する昇降部を備えることができる。昇降部は螺旋軸を有する昇降モータと、一端が螺旋軸に連結され、他端が連動部に連結されるナットハウジングを備えることができる。また、機構部140は静電チャック120の電極パッド122を支持して移動させる第1機構部142と、静電チャック120の放電部124を支持して移動させる第2機構部144を備えることができる。
【0082】
また、本実施形態の有機電界発光素子の製造装置100は、基板101上に赤色R、緑色G、青色Bの有機薄膜や導電膜を所定のパターンに形成する蒸着装置を含む。この場合、製造装置100は有機物や金属を蒸発方式で基板上に蒸着するための蒸発源150及びマスク160を含むことができる。
【0083】
本実施形態の静電チャック120が備えられる製造装置100において蒸着工程は以下の通り行われる。即ち、真空チャンバ110内に設置された蒸発源150の上部にマスク160を配置し、マスク160の上部に薄膜が形成される基板101を静電チャック120を用いて装着した後、別途の磁石アレイ(図示せず)を駆動させてマスク160が基板101に密着するようにする。その後、蒸発源150を作動させる。蒸発源150に装着されている有機物は気化されてマスク160のスリットを通過して一定のパターンに基板101の一面に蒸着される。
【0084】
前述した蒸着工程時、静電チャック120を用いることで、大型基板を高い平坦度を有して上向式でチャッキングでき、蒸着工程の完了後に基板101を安全にデチャッキングできる。従って、大型基板のハンドリングエラーを防止して基板101の損傷を防止し、タクトタイム(TACT time;1枚の基板が出て次の基板が出るのに要される時間)を短縮でき、完成品の歩留まり及び品質を向上させることができる。
【0085】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は明細書に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能なのはもちろんであり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0086】
40a 除電部
43 放電部
44 ハウジング
45 空間
43a 単位放電部
44a 絶縁性ノズル本体
46 グランド電極
47 放電電極ホルダ
48 放電電極
52 電源部
54 スイッチング部
56 高電圧発生部
58 マイコン
60 送風部
62 センサ
101 基板
100 有機電界発光素子の製造装置
110 真空チャンバ
120 静電チャック
121 開口部
122 電極パッド
124 放電部
130a 第1コントローラ
130b 第2コントローラ
140 機構部
142 第1機構部
144 第2機構部
150 蒸発源
160 マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部を貫通する少なくとも1つの開口部を備える絶縁プレートと、
前記絶縁プレートに実装される一対の電極と、
前記一対の電極に電圧を印加する第1コントローラと、
前記絶縁プレートに隣接するように配置され、前記絶縁プレートの一面上に位置する帯電物体の静電荷が除去されるように前記少なくとも1つの開口部にイオンを放出する除電部と
を備える静電チャック。
【請求項2】
前記少なくとも1つの開口部は、前記絶縁プレートの一方向にストライプ状に延びることを特徴とする請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記開口部は、前記絶縁プレートの一面上に分散配置されることを特徴とする請求項1に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記一対の電極は、積層構造で配置されることを特徴とする請求項1に記載の静電チャック。
【請求項5】
前記一対の電極は、同一平面上に配置されることを特徴とする請求項1に記載の静電チャック。
【請求項6】
前記絶縁プレートは、樹脂又はセラミックからなることを特徴とする請求項1に記載の静電チャック。
【請求項7】
前記絶縁プレートを支持する板状の支持部材を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の静電チャック。
【請求項8】
前記絶縁プレートと前記支持部材との間にバッファ層を更に含むことを特徴とする請求項7に記載の静電チャック。
【請求項9】
前記除電部は、コロナ放電により前記イオンを発生させる放電部、及び前記放電部に電圧を印加する第2コントローラを備えることを特徴とする請求項1に記載の静電チャック。
【請求項10】
前記放電部で発生した前記イオンを前記少なくとも1つの開口部に強制移送する送風部を更に含むことを特徴とする請求項9に記載の静電チャック。
【請求項11】
前記放電部で発生した陽イオンと陰イオンのバランス状態を検知し、検知された状態に対する出力信号を前記第2コントローラに伝達するセンサを更に含むことを特徴とする請求項9に記載の静電チャック。
【請求項12】
真空チャンバと、
前記真空チャンバ内で基板を上向式に支持する静電チャックと、
前記真空チャンバに結合され、前記静電チャックを支持して移動させる機構部と
を含み、
前記静電チャックは、
中心部を貫通する少なくとも1つの開口部を備える絶縁プレートと、
前記絶縁プレートに実装される一対の電極と、
前記一対の電極に電圧を印加する第1コントローラと、
前記絶縁プレートに隣接するように配置され、前記絶縁プレートの一面上に位置する帯電物体の静電荷が除去されるように前記少なくとも1つの開口部にイオンを放出する除電部と
を含む有機電界発光素子の製造装置。
【請求項13】
前記機構部は、前記静電チャックに備えられた絶縁プレートを支持する第1機構部及び前記静電チャックに備えられた除電部を支持する第2機構部を含むことを特徴とする請求項12に記載の有機電界発光素子の製造装置。
【請求項14】
前記基板の一面に有機物又は金属を蒸着するための蒸発源を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の有機電界発光素子の製造装置。
【請求項15】
前記製造装置は、前記基板の少なくとも一面に有機薄膜及び導電膜のうちの少なくともいずれかを所望のパターンに形成する蒸着装置であることを特徴とする請求項12に記載の有機電界発光素子の製造装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つの開口部は、前記絶縁プレートの一方向にストライプ状に延びることを特徴とする請求項12に記載の有機電界発光素子の製造装置。
【請求項17】
前記開口部は、前記絶縁プレートの一面上に分散配置されることを特徴とする請求項12に記載の有機電界発光素子の製造装置。
【請求項18】
前記除電部は、コロナ放電により前記イオンを発生させる放電部、及び前記放電部に電圧を印加する第2コントローラを備えることを特徴とする請求項12に記載の有機電界発光素子の製造装置。
【請求項19】
前記放電部で発生した前記イオンを前記少なくとも1つの開口部に強制移送する送風部を更に含むことを特徴とする請求項18に記載の有機電界発光素子の製造装置。
【請求項20】
前記放電部で発生した陽イオンと陰イオンのバランス状態を検知し、検知された状態に対する出力信号を前記第2コントローラに伝達するセンサを更に含むことを特徴とする請求項18に記載の有機電界発光素子の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−170982(P2010−170982A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165792(P2009−165792)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【Fターム(参考)】