説明

静電チャック

【課題】吸着面とウエハ等との間に生じている電界を制御することにより、ウエハ等へのパーティクルの付着が極めて少ない静電チャックを提供する。
【解決手段】絶縁性基体と、単極型の静電吸着用電極とを備え、前記絶縁性基体の基板吸着面側の平面に設けられた突起先端に基板を吸着する静電チャックであって、前記突起先端は、基板と接触する導電性領域を有することを特徴とする静電チャック。前記導電性領域と前記静電吸着用電極とは、それぞれ別個の電位制御手段に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に半導体製造プロセスに係り、特に露光装置や電子線描画装置のシリコンウエハおよびレチクル等の基板(以下ウエハ等)を静電吸着することに好適な静電チャックに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、静電チャックによるウエハ等の吸着の際、ウエハ等へのパーティクルの付着が問題となっていた。この問題を解決するために、静電チャックの表面に凸部を設けウエハ等の物理的な接触面積を最小に抑えてパーティクルの発生を抑制した発明が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また接触面積を抑えた静電チャックに関して、静電チャックの表面に凸部を設け、その間隙に熱伝達ガスを流す場合に、凸部によって形成された間隙で放電が生じる問題があり、それを防止するために静電チャック表面に導電性膜を形成することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。 さらに、このような静電チャック表面に凸部を設けた場合、凸部の底面とウエハ等の間にクーロン力が発現することが示されている(例えば、特許文献1または特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2005−33125号公報
【特許文献2】特開2002−231799号公報
【特許文献3】特開2000−340640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ウエハ等と静電チャックとの接触は不可避であるため、静電チャックとウエハ等が直接接触する箇所およびその周辺でのパーティクルを無くすことは困難であり、依然としてウエハ等へのパーティクル付着は大きな問題であった。また、このようなウエハ等と静電チャックとの接触面積を抑える手法により、接触部のパーティクルは低減できたものの、直接ウエハ等と接していない箇所へのパーティクルの付着が少なからずあったため、この原因の究明が望まれていた。さらに、吸着面の平面度が非常に厳しく要求されるプロセスにおいては、熱膨張による変形や極めて小さなパーティクルを挟み込むことにより平面度に狂いが生じたり、吸着力が低下したりする問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、本質的にウエハ等へのパーティクルの付着が極めて少なく、十分な吸着力を発揮し、非常に高精度な吸着面を要求されるプロセスにも用いることができる静電チャックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するために、静電チャックの吸着面とウエハ等との間に生じている電界を制御することにより、パーティクルの付着を抑制できることを知見し、本発明をするに至った。すなわち、本発明は、単極型の静電吸着用電極を備え、基板吸着面側に設けられた突起先端に基板を吸着する静電チャックであって、前記突起先端は、基板と接触する導電性領域を有することを特徴とする。
【0006】
この静電チャックに導電性または半導性のウエハ等を載せると突起先端部の導電性領域とウエハ等が電気的に接触する。したがって、突起部とウエハ等の間では電位差は原理的にほとんど発生せず、従来の静電チャックのように突起先端とウエハ等の接触部で現れる大きな接触抵抗による電圧降下は生じないため、高電界な領域が接触界面近傍で現れず、不平等電界で発現するグレーディエント力によるパーティクルのウエハ等側への移動を抑制することができる。
【0007】
また、双極型の静電チャックのように静電吸着用電極とウエハ等の電位差が逆転する領域がある場合、ウエハ等と静電チャックとの間に存在するパーティクルは、この空間で形成される電界により静電分極し、かつ静電吸着用電極から電子が一部パーティクルに進入し、その結果パーティクルの電荷のバランスがくずれ対抗電極に相当するウエハ等に向かって移動する。その結果、パーティクルがウエハ等に付着するという現象(静電植毛の現象)が生じてしまう。
【0008】
一方、本発明では、単極型の構成とし、突起先端部の導電性領域と静電吸着用電極とは、それぞれ別個の電位制御手段に接続されているので、電界の向きを一方向に向けられる。そのため電位制御手段に適切な極性を選択すればパーティクルの静電気的特性に合わせてウエハ等への移動を抑制することができる。このように、本発明は、ウエハ等との接触により不可避的にパーティクルが発生しても、パーティクルのウエハ等への付着を防止できる静電チャックの構成を見出したものである。
【0009】
本発明において、静電吸着用電極は基板吸着面側に露出した構造または、絶縁性基体に埋設された内部電極としても良い。静電吸着用電極が基板吸着面側に露出した構造の場合は、内部電極とするよりも、電極の形成および基板吸着面側の加工が容易である。この場合静電吸着用電極は、絶縁性基体の基板吸着面側の平面に形成することができる。一方、内部電極とした場合は、内部電極は電気絶縁性の材料により被覆されているため、放電が生じにくい。
【0010】
突起先端部の導電性領域は導電性コーティングにより形成することができ、また、静電吸着用電極も導電性コーティングにより形成することができる。これにより、突起先端の平面度に優れ、電極形成による変形も少なくすることができる。
【0011】
基板吸着面側に形成された突起は絶縁性基体と同一材料とすることができ、絶縁性基体は、23±3℃における平均線膨張係数の絶対値が0.5×10-6/K以下、ヤング率が60GPa以上のガラスまたはセラミックスからなる。低熱膨張で高剛性の基体を用いることで、平面度に優れ、熱変形の小さい静電チャックを得ることができる。
【0012】
また、静電吸着用電極は、保護膜により被覆されている構成とすることができる。電極を保護膜で被覆することによりパーティクルの発生が抑えられ、吸着力を安定化することができる。
【0013】
また、本発明は、静電吸着用電極と直列に接続された抵抗を有する静電チャックを提供する。これにより真空度の急変にともなう予期しないアーク放電を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ウエハ等を吸着する際にウエハ等へのパーティクル付着を抑制でき、十分な吸着力を発揮し、吸着面の精度を非常に高く維持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明の代表例である。吸着面側の平面には複数の突起2を形成する。突起2には突起先端部に導電性コーティングを施し導電性領域3とし、各突起の導電性領域が電気的に接続されるよう先端部配線5を形成する。さらに吸着面側の平面には突起先端部の導電性領域3とは電気的に絶縁されるように導電性コーティングを施して静電吸着用電極4を形成する。静電吸着用電極4には配線6および電圧印加用端子9を介して電圧が印加される。
【0016】
図2は、図1におけるB−B´の模式断面であり、本発明に係る静電チャック構造の概略説明のため配線、電圧印加用端子および吸着面の反対側の構造は省略、または簡略化したものである。このような静電チャックを真空下に置き、導電性または半導性のウエハ等を複数の突起2の先端で形成される支持面の上に載せ、突起先端部の導電性領域3を配線5(および電圧印加用端子8)を通して接地する。接地する目的は静電吸着用電極4に印加する電位より低くするためである。したがって、図2における電位制御手段12は、接地に限らず静電吸着用電極の電位より低い電位に制御できるよう、外部電源を用いても良い。このような構成の場合、導電性領域を接地または低電位とし、静電吸着用電極を導電性領域よりも高電位とすることによりパーティクルがウエハ等に移動して付着し難いような電界を形成することができる。この場合、高電位及び低電位というのは、相対的に+(プラス)側の電位及び相対的に−(マイナス)側の電位を意味する。従って、高電位及び低電位の具体的な組合せの例としては、+4kVと+1kV、+3kVと0V、+2kVと−1kV、0Vと−3kV、−1kVと−4kV等、が挙げられる。
【0017】
なお、上記の例では、導電性領域を接地または低電位とし、静電吸着用電極を導電性領域よりも高電位としたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、本発明では、パーティクルがウエハ等に移動して付着し難いような電界が発生するように、適切な極性および電位を選択すれば良い。したがって、パーティクルの種類によっては静電吸着用電極を接地し、先端部の導電性領域に電圧を印加しても良い。また、導電性領域と静電吸着用電極間に電位差が生じて電界が発生すれば良いので、静電吸着用電極と導電性領域の電位が同一極性であっても、逆極性であっても構わない。
【0018】
外部電源等の電位制御手段13により静電吸着用電極4に突起先端部の導電性領域3の電位よりも高い正の直流電圧を印加すると、静電吸着用電極4とウエハ等の間に突起2の高さによって形成される間隙をギャップとした平行平板コンデンサが形成され、平行2面間にクーロン力が出現しウエハ等が静電チャックに吸着される。このとき、真空度が1Pa以下であることが望ましく、真空度が悪くなると導電性領域3と静電吸着用電極4との間で放電しギャップ間に電位差が生じず吸着力が発揮されなくなる。放電が起こるか否かはパッシェンの法則に従い、真空度が比較的低い場合は放電距離が短くなり放電しやすくなる。従ってさらに好ましくは1×10−2Pa以下の真空度で使用することが望ましい。
【0019】
また突起2の高さが高すぎるとクーロン力を引き起こす平行2面間の電荷密度が小さく吸着力が弱くなるなど制約がある。印加電圧を高めることにより吸着力を強くすることが可能であるが、印加電圧を高くすると、放電しやすくなること、また、静電吸着用電極4から突起先端部の導電性領域3へ流れる電流が増加し、発熱が顕著になり望ましくないことから印加電圧は5kV程度を上限とすることが望ましい。
【0020】
図2のように基板吸着面側に露出した静電吸着用電極4に電圧が印加される場合は平行2面間に電位差が与えられるためクーロン力は大きくなりやすい。例えば、印加電圧を3kVとした場合、突起2の高さは最大45μmまで広げてもウエハ等を吸着することは可能である。一方、静電吸着用電極4が内部電極の場合には、平行2面間の電位差は、絶縁層の電圧降下分小さくなる。従ってこの場合は突起の高さが20μm以下に抑える必要がある。なお、突起2の高さの下限は加工性を考慮すると3μmとなることから、突起2の高さは3μm以上とすることができる。ただし、ウエハ等が絶縁性基体の平面または吸着面側に露出した静電吸着用電極に接触するような変形は望ましくないことから、このような変形が起こらないような突起の配置および高さに調整することが好ましい。
【0021】
上述のように静電吸着用電極4とウエハ等の電位差が逆転していた場合、ギャップ間に存在するパーティクルは静電吸着用電極4とウエハ等との間で形成される電界により静電分極し、かつ静電吸着用電極4から電子が一部パーティクルに進入し、その結果パーティクルの電荷のバランスがくずれ対抗電極に相当するウエハ等に向かって移動し、結果としてパーティクルがウエハ等に付着するという静電植毛現象が生じる。したがって本発明ではこのような現象を抑えるため静電チャックの構造をいわゆる単極構造とし、静電吸着用電極と導電性領域に印加する直流電圧の極性および電位を適切に選択でき、パーティクルがウエハ等に移動して付着し難いような電界が発生するようにした。
【0022】
さらに、突起先端部の導電性領域3がウエハ等と電気的に接触しているため、突起先端部とウエハ等の間では電位差は原理的にほとんど発生しない。したがって、一般に突起先端とウエハ等の接触部で現れる大きな接触抵抗による電圧降下は生じないため、高電界な領域が接触界面近傍で現れず、不平等電界で発現するグレーディエント力によるパーティクルのウエハ等側への移動を抑制することができる。また突起部とウエハ等の間で起こりうる静電植毛現象や放電など解明しがたい電気的な現象は現れない。したがって電気的な現象によるパーティクルのウエハ等への付着は防止できる。
【0023】
また、図2に示したように、静電吸着用電極を吸着面側に露出させた場合は、セラミックス焼結体の内部に電極を設ける必要もなく、電極を内蔵することによる吸着面平面度の劣化を防ぐことができる。特に平面度100nm以下が必要とされるプロセスにはセラミックス焼結体内部に平均線膨張係数の大きく異なる材料を内蔵することは加工精度や加工後の経年変化の点で不利であるので、吸着面側に露出した静電吸着用電極を設ける構成が有効である。
【0024】
また、図1では、吸着面の反対側の面に電圧印加用パッドが設けられている。これは、吸着面側にのみ導電性領域を形成すると僅かな温度変化で基体との間の熱膨張差により反りが生じて平面不良を起こすことを防ぐためである。吸着面の反対側の面にも導電性領域を形成することで反りを生じさせる応力を相殺することができる。反対側の面に形成する導電性領域の面積は、要求される平面度や実際に生じる反り量に応じて適宜調整することができる。なお、図1では、静電チャックの吸着面形状を四角形としたが、本発明の静電チャックはこれに限られるものではなく、ウエハ等の形状にあわせて円形、矩形等種々の形状を採用できる。
【0025】
吸着面の突起2は、絶縁性基体の吸着面側に突起配置パターンのマスク処理した後サンドブラスト加工やエッチングを行うことにより形成することができる。このように絶縁性基体を加工して突起を形成し、絶縁性基体と突起を同一材料とすれば突起の形成が容易である。
【0026】
突起先端部の導電性領域3や吸着面側平面の静電吸着用電極4を形成するには、イオンプレーティング、スパッタリングなどのドライプロセスにより絶縁性の突起先端を導電性材料で被覆する導電性コーティングを用いることが望ましい。このような方法はコーティング時に発熱を伴わないため、熱膨張差による剥離等の不具合が生じないし、また好適な厚みでコーティングすることができる。ただし、不具合の生じない範囲で、溶射、CVDまたはAD法等種々の方法を採用することができる。
【0027】
導電性材料はTiN、TiC、CrN、Ti、Cr、W、Mo、Si、AL、Ni、DLCなど導電性があれば良く、ウエハ等との摺動性を考慮して選択する。特に、突起先端部の導電性領域3とウエハ等は物理的に接触するため吸着を繰り返すたびに摺動されるためパーティクルが発生する可能性がある。これを抑えるため摩擦係数の小さな材料による導電性コーティングがのぞましい。また必要に応じて複数層をなすようにコーティングしてもよい。
【0028】
吸着面側の面精度の要求が厳しくない場合は、セラミックス焼結体の内部に電極14を設けてもよい。その場合、電極の材料はMo、Wなどの低熱膨張材料が望ましい。図3に示したような内部電極14を設けた場合、内部電極からの電荷の移動により表面に電極があるかのように振舞う。内部電極の形成は、セラミックス粉末に電極を埋設して成形した後、常圧、ホットプレスのようなセラミックス焼結法を用いる方法の他、セラミックス焼結体に溶射、PVD、CVDまたはAD法等により導電性材料からなる内部電極を形成した後、溶射、PVD、CVD、AD法等により絶縁性の材料で被覆する方法等種々の方法が採用できる。
【0029】
絶縁性基体11としては、電気絶縁性のガラスまたはセラミックスを用いることができる。具体的には、リチウムアルミノシリケート、コーディエライト、アルミナスキータイト、チタン酸アルミニウム、りん酸ジルコニウムから選択された材料に添加物として炭化珪素、窒化珪素、サイアロン、アルミナ、ジルコニア、窒化アルミニウムから選択された材料を添加して得られるセラミックス焼結体により室温近傍の平均線膨張係数の絶対値が1.5×10/K以下の材料を基体として利用することができる。なかでも、負の熱膨張係数を有するリチウムアルミノシリケートと、正の熱膨張係数を有する炭化珪素とを配合したものが好適である。この材料では、室温近傍、すなわち23±3℃における平均線膨張係数の絶対値を0.5×10-6/K以下に調整でき、たとえば、両者を混合した粉末をCIP等の公知の成形方法により成形した後、常圧焼結法で1,400℃で焼成し、室温近傍の平均線膨張係数の絶対値を0.1×10-6/K以下にしたセラミックス焼結体を適用することができる。この材料はヤング率も60GPa以上であり、静電チャックとして十分な剛性を有しており、変形の少ない材料となっている。
【0030】
このような低熱膨張の材料を用いることにより、入熱があってもほとんど変形しない静電チャックを得ることができる。ただし、それほど吸着面の精度が必要でないときは窒化アルミニウムや酸化アルミニウムを基体材料に選択することができる。
【0031】
また、吸着面の精度が必要でないときは絶縁性基体11は、セラミックスのような一体ものでなくともよく図4、5に示したように、金属または金属とセラミックスの複合材料(MMC)のような導電性基材に電気絶縁性の材料を基体としてコーティングしたもの(図4、5における11a)であってもよい。このような場合の例として、図6のように、突起2が電気絶縁性コーティングにより形成されても良い。絶縁性の材料をコーティングする方法としては、溶射、CVD、AD法等の種々の方法が採用できる。このような構成では図4〜6のように導電性基材に直接電圧を印加することができる。この場合は、導電性基材が内部電極として作用する。
【0032】
また、吸着面側の平面に静電吸着用電極4を形成した場合には、電極を保護膜で被覆する構成を採用することができる。これにより電極やその周囲からのパーティクルの発生が抑制されて、吸着力を安定化することができる。保護膜の材質としては、ポリイミドのような有機膜、SiO2、Al2O3ような無機膜、またはこれらのハイブリッド膜を用いることができ、膜の形成は蒸着のほかイオンプレーティングなどの方法を用いることができる。なお、静電吸着用電極への配線を吸着面側の平面に形成した場合は、電極とともに配線も保護膜で被覆した構成を採用することができる。また、各突起の導電性領域が電気的に接続されるよう形成した導電性領域への配線についても、保護膜で被覆した構成とすることができる。導電性領域への配線は、突起の側面にも形成されているので、吸着面側の平面だけでなく、突起の側面も保護膜で被覆することが望ましい。
【0033】
図2、図4および図6のような構成にする場合、直流電圧が空間に露出し、何かしらの放電が生じたときに電流が制限できない場合もある。そのため直流電源との間に高抵抗を挟むことがある。100kΩから1000GΩの範囲で突起部導電性領域3の面積を考慮して選択することができる。このようにすることによって真空度の急変にともなう予期しないアーク放電を防ぐことができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げ、本発明をより詳細に説明する。
(実施例1)
以下に示す条件により、8インチシリコンウエハの吸着試験を実施した。なお、吸着力は、真空下にてウエハ等を引き上げることにより測定した。いずれの静電チャックの形状もほぼ同一であり、外径200mm、厚さ10mmとした。突起は円柱形状、正三角形配置とした。静電チャック平面度は、ウエハ等が接触する複数の先端部からなる平面の平面度であり、レーザー干渉計により測定した。また、基体の熱膨張係数は、レーザー熱膨張計により測定した。
静電チャックの構造:図2、絶縁性基体:リチウムアルミノシリケート+炭化珪素、平均線膨張係数:0.01×10-6/K、静電チャック平面度:50nm、吸着面の突起の高さ:15μm、突起の配置間隔:6mm、突起先端部直径:φ1mm、導電性領域:TiN(厚さ約1μm)、静電吸着用電極4:TiN(厚さ約1μm)、真空度:0.01Pa。
導電性領域3への電圧印加用端子を接地(0V)し、静電吸着用電極4への電圧印加用端子に+1.5kVDC印加したところ、吸着力は約20000Paであった。
【0035】
(実施例2)
静電チャックの構造:図3、絶縁性基体:リチウムアルミノシリケート+炭化珪素、平均線膨張係数:1×10-6/K、静電チャック平面度:50nm、吸着面の突起の高さ:15μm、突起の配置間隔:6mm、突起先端部直径:φ3mm、導電性領域:TiC(厚さ約1μm)、静電吸着用電極:Wメッシュ(線径φ0.1mm、50メッシュ)、真空度:0.01Pa。
導電性領域3への電圧印加用端子を接地(0V)し、静電吸着用電極への電圧印加用端子に+1.5kVDC印加したところ、吸着力は約4000Paであった。
【0036】
(実施例3)
静電チャックの構造:図4、導電性基材:アルミニウム30%−炭化珪素70%複合体(MMC)、絶縁性基体:酸化アルミニウム、平均線膨張係数:8×10-6/K、静電チャック平面度:100nm、吸着面の突起の高さ:10μm、突起の配置間隔:10mm、突起先端部直径:φ0.5mm、導電性領域3:W(厚さ約1μm)、静電吸着用電極4:W(厚さ約1μm)、真空度:0.1Pa。
導電性領域3への電圧印加用端子を接地(0V)し、静電吸着用電極への電圧印加用端子に+1.0kVDC印加したところ、吸着力は約9000Paであった。
【0037】
(実施例4)
静電チャックの構造:図5、導電性基材:アルミニウム30%−炭化珪素70%複合体(MMC)、絶縁性基体:酸化アルミニウム、平均線膨張係数:8×10-6/K、静電チャック平面度:100nm、吸着面の突起の高さ:10μm、突起の配置間隔:10mm、突起先端部直径:φ1mm、導電性領域3:W(厚さ約1μm)、真空度:0.1Pa。
導電性領域3への電圧印加用端子を接地(0V)し、静電吸着用電極である導電性基材への電圧印加用端子に+1.0kVDC印加したところ、吸着力は約2000Paであった。
【0038】
(実施例5)
静電チャックの構造:図2、絶縁性基体:窒化アルミニウム+炭化珪素、平均線膨張係数:1×10-6/K、静電チャック平面度:100nm、吸着面の突起の高さ:45μm、突起の配置間隔:6mm、突起先端部直径:φ3mm、導電性領域:TiN(厚さ約1μm)、静電吸着用電極:TiN(厚さ約1μm)、真空度:0.0001Pa、保護膜:SiO2(厚さ1μm)。
導電性領域3への電圧印加用端子を接地(0V)し、静電吸着用電極への電圧印加用端子に+3.0kVDC印加したところ、吸着力は約9000Paであった。
【0039】
次に、各実施例に示した静電チャックに8インチシリコンウェハを吸着した後、レーザー散乱方式の異物検査装置によりウエハの吸着された面(ウエハ裏面)に付着した粒子径1μm以上のパーティクル数を測定した。また、従来のAlNセラミックからなる双極型静電チャックと比較した。AlNセラミック静電チャックは、AlN粉末に酸化イットリウムを3質量%添加した原料粉末を用い、モリブデン製の双極型電極を埋設し焼成した後、研削加工を行って静電チャック(絶縁層厚さ:1mm、寸法:φ200×8mm、吸着面の突起の高さ:50μm突起の配置間隔:2mm、突起先端部直径φ0.5mm)とした。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
上記実施例に示したように、本発明の静電チャックは、静電チャックとして十分に機能する吸着力を有しており、また、従来の双極型静電チャックに比べてシリコンウエハへのパーティクルの付着が極めて少なかった。さらに、パーティクルの付着が少ないことから、ウエハの吸脱着を繰り返しても吸着力の低下は見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の最適な実施例を示す図であり、(a)は吸着面側から見た静電チャック平面図、(b)はA−A´断面図、(c)はA´側の側面図、(d)は吸着面の反対側の面から見た静電チャック平面図である。
【図2】本発明の最適な実施例を示す模式断面図である。
【図3】本発明の他の実施例を示す模式断面図である。
【図4】本発明の他の実施例を示す模式断面図である。
【図5】本発明の他の実施例を示す模式断面図である。
【図6】本発明の他の実施例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1…静電チャック
2…突起
3…導電性領域
4、14…静電吸着用電極
5…導電性領域への配線
6…静電吸着用電極への配線
7…導電性領域への電圧印加用パッド
8…静電吸着用電極への電圧印加用パッド
9…導電性領域への電圧印加用端子
10…静電吸着用電極への電圧印加用端子
11…絶縁性基体
12…導電性領域の電位制御手段
13…静電吸着用電極の電位制御手段
15…導電性基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基体と、単極型の静電吸着用電極とを備え、前記絶縁性基体の基板吸着面側の平面に設けられた突起先端に基板を吸着する静電チャックであって、前記突起先端は、基板と接触する導電性領域を有することを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
前記導電性領域と前記静電吸着用電極とは、それぞれ別個の電位制御手段に接続される請求項1記載の静電チャック。
【請求項3】
前記導電性領域は、前記静電吸着用電極よりも低い電位に制御される請求項1、2記載の静電チャック。
【請求項4】
前記静電吸着用電極は、前記絶縁性基体の基板吸着面側の平面に形成されている請求項1〜3記載の静電チャック。
【請求項5】
前記導電性領域は導電性コーティングにより形成された請求項1〜4に記載の静電チャック。
【請求項6】
前記静電吸着用電極は導電性コーティングにより形成された請求項1〜5に記載の静電チャック。
【請求項7】
前記突起は前記絶縁性基体と同一材料からなる請求項1〜6記載の静電チャック。
【請求項8】
前記絶縁性基体は、23±3℃における平均線膨張係数の絶対値が0.5×10-6/K以下、ヤング率が60GPa以上のガラスまたはセラミックスからなる請求項1〜7記載の静電チャック。
【請求項9】
前記静電吸着用電極は、保護膜により被覆されている請求項1〜8記載の静電チャック。
【請求項10】
前記静電吸着用電極と直列に接続された抵抗を有する請求項1〜9記載の静電チャック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−135736(P2008−135736A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283521(P2007−283521)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【出願人】(391005824)株式会社日本セラテック (200)
【Fターム(参考)】