説明

静電ロールクリーナ、静電ロールクリーナシステム及びクリーニングステーション

【課題】本発明は、導電性の織布、不織布、組布、編布のコーティングが設けられた順応フォーム下層を有するロールクリーナを包含する静電ロールクリーナおよびクリーニングステーションを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、X線写真法マーキングシステムの表面のクリーニングに使用するための静電ロールクリーナであって、順応フォーム層と、前記フォーム層をオーバーコーティングする導電性ファブリックを包含するコーティングと、を包含し、前記導電性ファブリックが、織布、不織布、組布、編布であり、約8μmから10μmを超えない平均粗さRaと、3.5×10から2.2×1011Ω/スクエアの範囲の表面抵抗率とを有し、前記導電性ファブリックは、前記平均粗さのため、中でのトナー蓄積を最少化するように構成され、前記導電性ファブリックは、同じような太さの糸を有し、滑らかで均一な表面構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法プロセスに、より詳しくはかかるプロセスで使用されるクリーニングシステムに関連する。
【0002】
背景として、X線電子写真法または静電写真法プロセスでは、光受容体表面に均一な静電電荷が載置される。次に、電荷を選択的に放散させるため帯電表面がオリジナルの光線像に露光されて、オリジナルの静電潜像が形成される。細分され帯電したトナー粒子を光受容体表面に付着させることにより、潜像が現像される。帯電したトナーは静電潜像エリアに静電気力で付着して、オリジナルの可視複写が生成される。通常、現像された像は次に光受容体表面から用紙などの最終支持材料へ転写され、トナー像がこれに定着されて、オリジナルに対応する永久記録が形成される。
【0003】
X線写真法コピー機またはプリンタでは、概して光受容体表面は、X線写真法プロセスの様々な加工ステーションをエンドレスな経路で移動するように構成されている。光受容体表面は再使用可能であるので、次にトナー像が用紙などの最終支持材料に転写され、光受容体の表面はオリジナルのコピーの再生に再び使用されるように準備される。このエンドレス経路において、いくつかのX線写真法関連ステーションを光伝導性ベルトが通過する。
【0004】
概して、転写ステーションの後、光伝導体クリーニングステーションが次に設けられ、このステーションは、第1クリーニングブラシ、たいていは第2クリーニングブラシ、そしてブラシ位置の後の、トナー添加剤および他の膜などの残留物を除去するのに使用される汚れブレードを通過するエンドレス光伝導体ベルトを包含する。問題は、クリーナブラシのクリーニング効率が良好であると光伝導体に最小量のトナーしか残らず、そのため汚れブレードの潤滑状態が不適切となることである。
【0005】
一般的なコピー機またはプリンタの光受容体の表面から残留トナーをクリーニングする、広く受容されている先行技術の方法の一つは、光受容体表面との接触状態で比較的高速で回転する単数または複数の円筒形ブラシによるものである。概して、クリーニングされる光受容体表面との干渉接触状態に回転ブラシが取り付けられ、ブラシ繊維が光受容体を連続的に払拭するようにブラシが回転する。導電性のブラシ繊維に印加される電気バイアスは、光受容体表面からクリーニングされた材料の除去および搬送を促進する。ブラシ内の汚れレベルを低下させるため、一部の残留トナーおよびトナー剤をブラシ繊維から除去して残留トナーおよびトナー剤の一部をクリーナから排出するフリッカーバーおよび真空システムが設けられる。あるいは、電気バイアスが印加されたトナー除去ロールへの静電転写により、ブラシ繊維からトナーがクリーニングされてもよい。帯電したトナー粒子は、ブラシ繊維先端から、トナー電荷と反対の極性に電気バイアスが印加されたトナー除去ロール表面へ転写される。クリーニングブレードからクリーニングされたトナーは次に、スクレーパブレードによりトナー除去ロールから除去される。残念なことに、ブラシはトナーおよびトナー剤で汚れ、長期の使用の後には頻繁に交換される必要がある。導電性に影響する繊維端部へのトナーおよび添加剤の衝突と、機械的健全性および/または導電性に影響する機械的または電気的な破損によるブラシの物理的変化により、ブラシ寿命は最終的に損なわれる。現代のコピー機およびプリンタの処理速度が向上し、トナー剤の使用が長期化したことで、上記のブラシクリーニング技術では完全に有効または実用的とは言えない。
【0006】
静電ブラシ(ESB)クリーニングは、長い間、大量クリーニングの用途における選択肢であった。ESBクリーニングは、ブレードクリーニングと比較して優れた信頼性を提供するが、単位製造コスト(UMC)ははるかに高くなる。空気によるトナー除去ではブラシ内のトナーの蓄積を防止するが、クリーニングされたトナーをトナー除去気流から除去するのに高価で使用電力の多い空気ろ過システムを必要とする。ESBクリーナの静電トナー除去は空気トナー除去よりも低コストであるが、ブラシに蓄積したトナーが落下した時の印刷欠陥を防止するためブラシが定期的に真空処理および交換を受けなければならない。
【0007】
ESBクリーナのクリーニング能力は、ブラシの繊維密度と、ブラシ束により生じる光受容体の跡および磨耗によって制限される。ブラシ繊維直径が小さいと、クリーニング能力の向上のため繊維密度を上昇させ、ブラシ束の剛性を低下させることができる。しかし、ブラシ繊維直径の縮小には実用的な限界が見られる。非常に小さい繊維直径によってブラシ剛性を低下させるが、太い繊維と比較して光受容体の磨耗は激しくなることが経験から明らかである。細い繊維先端からの電気放電が光受容体表面の腐食を引き起こすというのがその説明である。最小ブラシ繊維直径の制限により、ESBクリーニング能力の限界が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,398,820号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、導電性の織布、不織布、組布、編布のコーティングが設けられた順応フォーム下層を有するロールクリーナを包含する静電ロールクリーナおよびクリーニングステーションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、X線写真法マーキングシステムの表面のクリーニングに使用するための静電ロールクリーナであって、順応フォーム層と、前記フォーム層をオーバーコーティングする導電性ファブリックを包含するコーティングと、を包含し、前記導電性ファブリックが、織布、不織布、組布、編布であり、約8μmから10μmを超えない平均粗さRaと、3.5×10から2.2×1011Ω/スクエアの範囲の表面抵抗率とを有し、前記導電性ファブリックは、平均粗さのため、中でのトナー蓄積を最少化するように構成され、前記導電性ファブリックは、同じような太さの糸を有し、滑らかで均一な表面構造である。
【0011】
また、本発明は、表面からトナーをクリーニングするのに使用するための静電ロールクリーナシステムであって、フォーム基材をオーバーコーティングする導電性ファブリックを包含するクリーニングロールと、トナー除去ロールと、を包含し、前記導電性ファブリックが、約8μmから10μmを超えない平均粗さRaと、3.5×10から2.2×1011Ω/スクエアの範囲の表面抵抗率とを有し、前記トナー除去ロールが、前記導電性ファブリックと接触するとともに、前記システムからの除去のため前記導電性ファブリックからトナーを除去するよう構成され、前記トナー除去ロールが、前記表面をクリーニングする時に前記導電性ファブリックのバイアスより高い電圧でバイアスが印加されるように構成される。
【0012】
また、前記静電ロールクリーナシステムにおいて、前記フォーム基材が、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスチレンおよび他のポリマーフォーム材料から構成される群から選択された材料であることが好ましい。
【0013】
また、本発明のクリーニングステーションは、静電ロールクリーナと、トナー除去ロールと、バイアス印加構造への電気接続と、を包含し、前記静電ロールクリーナが、導電性ファブリックオーバーコーティングでオーバーコーティングされた順応フォーム層を包含し、前記ファブリックオーバーコーティングが、表面上の残留トナーとクリーニング接触するように構成され、実質的に均一に滑らかで一様な高密度の表面を設けるように前記ファブリックの糸の太さが同じくらいであり、前記バイアス構造および前記電気接続が、前記表面の電荷よりも約50〜500ボルト高い正電圧で前記繊維オーバーコーティングにバイアスを印加するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】先行技術で使用される典型的なX線写真法マーキングシステムの概略構成図である。
【図1B】図2に示された本発明のロールクリーナ35を使用するX線写真法マーキングシステムの概略構成図である。
【図2】本発明の静電ロールクリーナの実施形態を示す図である。
【図3】本発明のロールクリーナを使用した光受容体表面の静電クリーニングの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
クリーニングステーションは、バイアス印加構造と電気接触している。この構造は、負電荷トナーのクリーニングには+50から+500ボルトで、正電荷トナーのクリーニングには−50から−500ボルトで、光受容体基面に対してファブリックにバイアスを印加するように構成されている。
【0016】
現在使用されている大部分のトナーは負に帯電しているので、本開示および請求項を通して、負極性トナーの使用に関する実施形態を説明する。しかし後述するように、正極性トナーが使用される時には、トナー除去ロールのバイアス印加および導電性ファブリックのバイアス印加など、反対の極性となるような適切な調節が容易である。
【0017】
光受容体表面のクリーニングについて本発明のクリーナロールを説明するが、中間転写ベルトのクリーナ、バイアス印加転写ロール、バイアス印加転写ベルト、融着ステーションなど、他のX線写真法ステーションでの使用も可能である。同様に、本発明のクリーナロールファブリックカバーは、ここでは導電性であると記載されている。クリーナロールファブリックカバーは非導電性であってもよい。クリーナロールファブリックカバーが非導電性である場合には、クリーニングおよびトナー除去に適切な電位をファブリックの表面で発生させるため接触面を摩擦帯電させるように、ファブリック材料が選択される。クリーナロールファブリックカバーは非導電性であるが、トナー除去ロール表面は、導電性ロールに使用される陽極処理アルミニウム表面など誘電性である必要はなく、ステンレス鋼など、単純な導電性表面であってもよい。環境温度、湿度および接触面の汚れにより生じる変動のため、摩擦帯電によるクリーニング電気バイアスの発生は、電圧源による導電性ファブリックの直接バイアス印加よりも予測可能性が低い。これらの理由から、導電性ファブリック静電ロールの直接バイアス印加が好ましい。
【0018】
本発明では、導電性繊維の先端によってではなく、順応基材(フォームなど)によって支持されたバイアス印加導電性ファブリックにより、静電クリーニングおよびトナー除去が実施される。織布、不織布、組布、編布のいずれかの導電性ファブリックは、繊維ブラシと比較してクリーニングのための表面エリアを増大させる。良好な結果を得るには、ファブリックの表面が滑らかで均一な表面構造となるように導電性ファブリックの糸が同じような太さであることが重要である。同じような大きさというのは、+/−20%を越える大きさが変動しないことを意味する。一実施形態では、導電性繊維の使用を除いて、静電ロールクリーニングのクリーニング機構は、米国特許第4,398,820号に記載された静電ブラシクリーニングと類似している。本発明では、トナー粒子が、ファブリック内で糸に束ねられた繊維により光受容体表面から機械的に取り除かれて、光受容体表面からの運搬のためバイアス印加導電性繊維に静電付着される。ESBクリーナで使用されるタイプのバイアストナー除去ロールに対してロールが回転すると、ファブリックの静電トナー除去が行われる。ファブリックで被覆されたロールは、トナーが蓄積するブラシの奥行を持たないため、ブラシよりも静電トナー除去に好都合である。トナー除去効率は高く、トナーがファブリックに蓄積しないためトナー落下が回避される。
【0019】
静電ロール(ESR)クリーナは、剛性シャフトに取り付けられてバイアス印加導電性ファブリックで被覆されたフォームロールで構成される。上記のように、導電性ファブリックの使用とファブリックの固有のバイアス印加を除いて、静電トナー除去を行う静電ブラシ(ESB)クリーナと動作が似ている。バイアス印加静電ロールによって効率的にクリーニングされるように、トナー電荷を調節するのにプレクリーン帯電(PCC)装置が必要である。図2は、このESRクリーナの部品を示す。
【0020】
導電性ファブリックは、いくつかの異なる導電性繊維から製造される。市販の導電性繊維およびファブリックの一部を下の表1に挙げる。ファブリック全体が導電性繊維糸から製作されても、ファブリックが導電性と非導電性の糸の混合物であってもよい。ファブリックは、織布、不織布、組布、編布でよい。トナー、添加剤、他の残留物の効率的なクリーニングを行うように、ファブリックのデザイン(織パターンなど)が最適化される。導電性ファブリックは、所望の表面構造が得られるようにデザインされる。繊維の選択は、コスト、ブラシ寿命(耐摩耗性など)、クリーニング表面の研磨度に基づく。ESBクリーナは、クリーニングされる表面に比較的低刺激であることが知られている。その結果、固着した大きな粒子を除去して膜を抑制するためESBシステムに汚れブレードを設ける必要がある。静電ロールクリーナは、汚れおよび膜を防止するための所望のレベルの表面研磨度を付与する際に、静電ブラシの設計許容範囲よりも広い導電性ファブリックの設計許容範囲を持つ。
【0021】
【表1】

【0022】
静電ロールは、静電ブラシのコストに匹敵するか、これより低いコストで製作できる。本発明で使用されるフォーム層またはロールは、低コスト部品である。導電性ファブリックカバーも、導電性ブラシ束に比べて低コストである。表2は、静電ロールの一例について導電性ファブリック材料のコストを示したものである。導電性ファブリックは市販されている。生産時には、織布、不織布、組布、編布の導電性ファブリックカバーがチューブとして製造される。それから、チューブがフォームロールコアの上にかぶされてこれに接着される。静電ロールの製造は、静電ブラシの製造よりも容易である。ブラシでは、束ストリップが裏布ストリップに編まれている。ストリップはブラシコアに巻かれてこれに貼付されてから、固定装置で所定の大きさにせん断される。静電ロール直径は、導電性ファブリックスリーブの大きさによって決められる。ロール直径を決定する際にフォームロールコア直径は関係ない。フォームロール直径はロールの剛性に影響するが、一般的なフォームロール直径の公差内では、ロール剛性の変動は大きくない。
【0023】
【表2】

【0024】
静電ロールは、静電ブラシよりもはるかに高い潜在的なクリーニング能力を持っている。これは、ファブリックの表面積がブラシ先端の表面積よりもずっと大きいからである。静電ブラシクリーニングESBを同じ直径および速度の平織CobalTex ESRと比較するためにクリーニング能力モデルを用いると、クリーニング能力の20倍の上昇が予測された。この比較から、ブラシ繊維先端に付着したトナーのモデルにより計算されたのと同じトナー厚さが推定された。導電性ファブリック表面積の半分のみが機能すると考えられた(推定:縦糸はクリーニングを行うが横糸は行わない)。この計画に用いられた推定が非常に楽観的であったとしても、静電ロールESRのクリーニング能力はやはりESBのものよりもはるかに高いようである。ESRの高いクリーニング能力のため、トナーとトナー添加剤の両方をESBよりも良好にクリーニングすることが可能である。
【0025】
ESRファブリック表面の奥行はESB束と比較して非常に少ないので、結果的により効率的な静電トナー除去が得られる。ブラシ繊維の静電トナー除去は、繊維先端から短距離についてのみ有効である。有効なトナー除去奥行よりも下まで移動したトナーは、ファイバシャフトおよびブラシのコアに蓄積する。非効率的なトナー除去は、時間とともに大量のトナーをブラシの空隙に蓄積させる。収集されたトナーはある時点で不安定となり、機械の振動、ブラシ始動などにより攪乱されるとブラシから落下する。機械の設計構造によるが、トナーはブラシから直接に用紙経路または印刷物へ落下する。少なくとも、クリーナから落下したトナーは、他の部品の早期故障を発生させてtech repおよび顧客にとって不潔な状態を生み出す汚れを発生させる。トナーがトナー除去ロールに接近しているため、ESR導電性ファブリックはトナー除去がより効率的に行われる。トナー除去効率が高いと、結果的にファブリックへのトナーの蓄積が少なくなる。またファブリック自体が、ブラシが蓄積するトナーの量に近い量を保持することができない。ESRの導電性ファブリックカバーからトナーが落下しても、放出されるトナーの量は、問題をほとんどまたは全く発生させないほど少しである。
【0026】
米国特許第4,398,820号には、滑らかなバイアス印加ロールクリーナが記載されている。このクリーナは本質的に、ベルト光受容体に直接使用される磁気ブラシクリーナからの静電トナー除去ロールであった。次に硬質の陽極処理クリーニングロールが鋼製のシムブレードでクリーニングされた。滑らかで直径の大きなクリーニングロールは、光受容体の表面からトナーを効率的に除去するのに充分なほど高い電界を発生させないため、このクリーナは有効でなかった。本発明では、ESRファブリック表面構造は、光受容体表面から離れたトナーおよびトナー添加粒子を吸着および保持する高電界を発生させる小径の導電性繊維を備える。導電性繊維は、高いトナークリーニング能力を得るのにESBで必要とされるほど細くする必要がない。これは、非常に細いブラシ繊維が使用される際に見られる光受容体の「引っかき」問題を回避する。細い繊維先端は、光受容体表面を脆弱化して結果的に光受容体を腐食させる放電を発生させる。ESRの概念を前もって検査したところ、ファブリック表面に奥行のある表面構造を付与するには、もっと太い導電性繊維が望ましいことが分かった。
【0027】
バイアス印加導電性ファブリックのクリーニング機能を実証するために実験が行われた。これらの試験では、導電性ファブリックがフォームパッドに取り付けられた。次に、プラスチック剛性部品の底面にファブリックとパッドのアセンブリが取り付けられ、25gのおもりがファブリックパッド上のプラスチックの上面に取り付けられた。単一部品の光受容体ドラムへトナーが現像された。次に、おもりの付いた導電性ファブリックパッドが、電気バイアスの範囲で光受容体表面を牽引された。ファブリックと光受容体基材が同じ電位にある、つまり二つの間に電界が存在しないようにして、第1の試験が行われた。この場合、一部のトナーが光受容体から機械的に除去されてファブリックへ転写された。
【0028】
第2の試験では、光受容体基材よりも300V高い正電圧でバイアスが印加されたファブリックが設けられた。ファブリックと接触するトナーの大部分が光受容体から除去された。最後の試験では、光受容体基材よりも300V高い負電圧でファブリックにバイアスが印加された。この場合、ファブリックがトナーで汚れたが、光受容体からファブリックへ転写されたトナーはごくわずかであった。これらの試験から、本発明のバイアス印加導電性ファブリックは、光受容体の表面からトナーをクリーニングできることが実証された。図面の説明の図3を参照すること。図3の静電ロールクリーニングの実証試験では、三種類のクリーニングバイアスで試験が行われた。上述したクリーニング試験に続いて、正バイアスされたファブリックパッド(良好なクリーニング作業を行った)の静電トナー除去が試みられた。クリーニング実験に使用される三つの同じバイアス条件で、トナー添加ファブリックパッドが陽極処理静電トナー除去ロールの表面を払拭した。導電性ファブリックと静電トナー除去ロールコアとの間には電界は存在しないので、トナー除去ロールの表面に転写されるトナーはごくわずかである。導電性ファブリックよりも300V高い負電圧でトナー除去ロールにバイアスが印加された時には、トナー除去ロールへ転写されるトナーはさらに少ない。導電性ファブリックよりも300V高い正電圧でトナー除去ロールにバイアスが印加された時には、導電性ファブリックの上の大量のトナーが、トナー除去ロールに転写された。図3を参照すること。
【0029】
図1に示されたブラシクリーナ34の代わりに本発明の静電ロールクリーナ35を使用すると、本発明のX線写真法マーキングシステム全体が得られる。図1Aおよび1Bでは、以下の数字および文字による表示がされている。1は光伝導性ベルト、2は導電性基材、3は電荷発生層、4は電荷輸送層、5は方向矢印、6は剥離ローラ、7はテンションローラ、8は駆動ローラ、9はモータ、10はコロナ装置、11は導電性シールド、12は長尺ベアワイヤを包含するジコロトロン電極、13は電気絶縁層、14はオリジナル文書、15は透明プラテン、16はランプ、17はレンズ、18は磁気ブラシ現像ローラ、19は支持材料のシート、20はシート供給機構、21は供給ロール、22はスタック、23はシュート、24はコロナ発生装置、25は剥離コロナ発生装置、26は方向矢印、27は融着アセンブリ、28は加熱融着ローラ、29はバックアップローラ、30は融着シートガイド、31はキャッチトレイ、32は抵抗器、33はプレクリーンジコロトロンのシールド回路、34は従来のクリーニングブラシ、35は本発明の静電ロールクリーナである。
【0030】
X線写真法マーキングシステムの「従来ステーション」は、図1Bに見られるように、Aの帯電ステーション、Bの露光ステーション、Cの現像ステーション、Dの転写ステーション、Eの剥離ステーション、Fの融着ステーション、Gのクリーニングステーション
を包含する。
【0031】
上記のように、先行技術のブラシクリーニング機構を取り外して本発明の静電ロールクリーナ35をその代わりに使用すると、本発明のロールクリーナ35を使用するマーキングシステム全体が得られる。
【0032】
図2において、本発明の静電ロールクリーナ35は、フォームロール36と、導電性ファブリッククリーニング層37と、陽極処理トナー除去ロール38と、廃棄物移動オーガー39と、クリーナブレード40とを包含する。ロールクリーナ35は、先行技術の静電ブラシ(ESB)クリーナ34と全く同じように作動する。バイアス印加静電ロールにより効率的にクリーニングされるようにトナー電荷を調節するため、プレクリーン帯電(PCC)装置が必要である。導電性ファブリック37により光受容体1からクリーニングされたトナーは、トナー除去ロール38に転写されてから、ブレード40によりトナー除去ロールから剥がされ、ここでトナーは、マーキングシステムからの除去のため廃棄物オーガー39へ落下する。使用される導電性ファブリックは可撓性および弾性を備えなければならず、クリーニング・トナー除去面に均一に順応する平坦で比較的滑らかな均一表面構造を有することが好ましい。ファブリックの粗さは、約8μmから10μmRa(平均粗さ)を超えるべきでない。
【0033】
この滑らかな表面が必要であることを示すため、以下の試験が実施された。
【0034】
設備/条件:「滑らか」から「非常に粗い」までの表面構造範囲を持つ5種類の静電ロールの試験が行われた。以下のファブリック層またはカバーとともにロールフォームコア36が製造された。5種類のロールのためのファブリックカバーは、表3に示された通りであった。
【0035】
【表3】

【0036】
手順:プロトタイプのロールが、クリーナハウジングに取り付けられた。本発明による静電ロールを第1位置の右側サイントナークリーニング(正バイアス)に使用し、第2クリーニングブラシまたはロール(1ESRクリーナ)を使用しない二重静電ブラシクリーナが運転された。運転の長さおよびトナーパッチの現像についてコンピュータ制御される用紙のない固定台で、試験が実施された。各ジョブの開始時にはプロセス幅にわたって延在する太いサイクルアップストライプが、各ジョブの終了時には細いストライプが現れた。すべての現像トナーが、転写されずにクリーナに入った。
【0037】
各ESRタイプについて、基準試験運転が実施された。対になった最大の全密度トナーパッチが各印刷パネルに現像された。これら15対のトナーパッチが現像されてから、固定装置がサイクルを終了した。次に、6対のトナーパッチの現像の後で機械が直接停止した。クリーニングニップの途中でトナーパッチを停止させるように、直接停止箇所が試験固定装置制御コンピュータにプログラムされた。固定装置から印刷カートリッジユニットが取り外された。トナーパッチが視界に入るように、光受容体がプロセス方向に回された。直接停止の箇所を見つける際に、コンピュータ制御装置は完全に反復可能でないため、所望の位置を得るにはいくつかの直接停止が必要なこともあった。ESRクリーニングニップの前後の表面にトナーを記録するため、光受容体表面のテープ転写が行われた。
【0038】
結果:表4は、表面構造の範囲を持つ5種類の静電ロールのクリーニング性能をまとめたものである。試験された各ロールの追加のコメントは、以下の通りである。
【0039】
【表4】

【0040】
<ESR1‐Zelt>
Zeltファブリックは、入手された導電性ファブリックサンプルのうち最も細かい滑らかな平織であった。このファブリックによる光受容体表面のクリーニングは、非常に良好であった。わずかに残った線条は、おそらくファブリックカバーのしわまたはフォームコアの低い点に関連するものであった。静電クリーニングロールの後のトナー線条は、各直接停止で同じような箇所に見られる傾向があった。これは、この箇所でロール均一性の欠陥が見られることを示唆する。
【0041】
<ESR2‐Shieldit Super>
Shieldit Superロールのクリーニングは、かなり良好であった。大量の付着トナーがほぼ除去された。おそらくは手製のロールの欠陥に対応する数本のトナー線条が残った。ファブリックのリップストップパターンに対応する非常に細かい線条も残った。この結果は、織りの細かいZeltファブリックの良好な性能とともに、非常に滑らかな表面構造が望ましいことを示唆している。
【0042】
<ESR3‐ステンレス鋼メッシュ>
この材料は、クリーナとしては大失敗である。オープンニットは高密度でなく非常に隙間が多いので、これは予想されなかったわけではない。テープの転写は、ほぼ、まるでその箇所にクリーナが存在しなかったようなものであった。トナー像の白い線条は、ファブリックの隙間の多い繊維ループでのクリーニングによるものである。
【0043】
<ESR4‐アルミ箔>
ESR用のアルミ箔カバーは著しく良好に機能した。大量の付着トナーがほぼクリーニングされた。多数の細かいトナー線条はクリーニングロールを通過した。これらはおそらく、アルミ箔の細かいしわによるものである。細かいしわは概ね、ロールが固定装置を転がった後で発生した。クリーニング・トナー除去ニップを通過する際の箔の撓みが表面にしわを形成したようであった。この結果から、滑らかさばかりでなく可撓性および弾性を備える材料がESRカバーには必要であることが分かる。
【0044】
<ESR‐ニッケルメッシュ>
ニッケルメッシュESRカバーはかなり良好に機能した。メッシュは通常の窓スクリーンよりも約2倍細かいことを考慮すると、予想よりは良かったが、クリーニングは不充分であった。この失敗は、高密度の細かいトナー線条によるものであった。これは、ファブリックはかなり高いクリーニング能力を持つが、この試験での高いトナー付着を処理するのに充分なほど織目が詰まっていないことを示唆している。この結果は、導電性ファブリック静電クリーニングを導電性繊維静電クリーニングと比較した初期の計算と一致するだろう。この比較では、ブラシ繊維先端よりもはるかに高い表面接触のため、導電性ファブリックがはるかに高いクリーニング能力を持っていた。
【0045】
図3に見られるようにバイアス印加導電性ファブリックのクリーニング機能を実証するため、予備実験が実施された。これらの試験では、導電性ファブリック37がフォームパッド36に取り付けられた。次にファブリックとパッドのアセンブリ(36,37)が剛性プラスチック部品の底面に取り付けられ、ファブリックパッド上のプラスチックの上面に25gのおもりが取り付けられた。単一部品の光受容体ドラムにトナーが現像された。次におもりの付けられたファブリックパッド(36,37)が、電気バイアスの範囲で光受容体表面1を牽引された。第1試験は、ファブリック37と光受容体基材1とが同じ電位にある、つまり41で示されたように二つの間に電界が存在しない状態で行われた。第2試験では、光受容体基材1よりも300V高い正電圧でバイアス印加されたファブリックが使用された。ファブリック37と接触したトナーの大部分は、42に見られるように光受容体から除去された。最後の試験では、光受容体基材1よりも300V高い負電圧でファブリックがバイアス印加された。この場合、43に見られるように、ファブリックがトナーで汚れたが、光受容体1からファブリックへ転写されたトナーはごくわずかであった。これらの試験から、バイアス印加導電性ファブリック37は光受容体1の表面からトナーをクリーニングできることが実証された。上述したクリーニング試験に続いて、正バイアス印加ファブリックパッド(良好なクリーニングジョブを行った)の静電トナー除去が試みられた。クリーニング実験に使用されたのと同じ3種類の条件で、トナー添加ファブリックパッドが陽極処理静電トナー除去ロールの表面を払拭された。導電性ファブリックと静電トナー除去ロールコアとの間に電界が存在しないので、トナー除去ロールの表面に転写されたトナーはごくわずかであった。トナー除去ロールが導電性ファブリックよりも300V高い負電圧でバイアス印加されると、トナー除去ロールに転写されるトナーは少なくなった。トナー除去ロールが導電性ファブリックよりも300V高い正電圧でバイアス印加されると、導電性ファブリック上の大量のトナーがトナー除去ロールに転写された。
【0046】
本発明では、X線写真法マーキングシステムの光受容体表面をクリーニングするのに使用するための静電ロールクリーナが設けられる。このロールクリーナは、順応フォーム層と、このフォーム層をオーバーコーティングするファブリックを包含するコーティングとを包含する。
【0047】
ファブリックは、織布、不織布、組布、編布であり、約8μmから10μmRa(粗さ平均)を超えない表面粗さを持つことが好ましい。ファブリックはその奥行が少ないため、中でのトナー蓄積を最小にすることができる。ファブリック表面の抵抗率は、3.5×10−4から3.3×1025Ω/スクエアの範囲である。この範囲は、接触面にこすり付けることにより摩擦帯電した非導電性ファブリックへ電圧源を接続することで能動バイアスされなければならない導電性ファブリック(3.5×10−4から2.2×1011Ω/スクエア)をカバーする。前に述べたように、滑らかで均一な表面構造を設けるため、ファブリックの糸は類似の太さのものでなければならない。
【0048】
フォーム層は、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスチレン、他のポリマーフォーム材料で構成される群から選択された材料を包含する。このファブリックは、実質的に平坦で、比較的滑らかで、均一な表面構造を持つことが好ましい。ファブリックの構成に使用される糸は、すべてが同じまたは類似の直径を持ち、多様な太さによる混合物ではないことが好ましい。ファブリックが編組される場合には、例えば、縦糸と横糸とが等しい太さであるためバランスの取れた平織が好ましい。ファブリックは、クリーニングされるクリーニング・トナー除去光受容体表面に概ね順応する構造を持つ。
【0049】
負に帯電したトナーが使用されて光受容体からクリーニングされる際には、光受容体表面のバイアスよりも50から500ボルト高い正電圧でファブリックがバイアス印加された時に光受容体表面をクリーニングするように、ロールクリーナは構成されている。正に帯電したトナーが使用される場合には、反対のことが当てはまる。光受容体表面のバイアスよりも50から500ボルト高い負電圧でバイアス印加される。そのため、正に帯電したトナーが使用されて光受容体からクリーニングされる際には、光受容体表面のバイアスよりも50から500ボルト高い負電圧でファブリックがバイアス印加された時に受容体表面をクリーニングするように、ロールクリーナが構成されている。
【0050】
静電ロールクリーナシステムは、光受容体表面からトナーをクリーニングするのに使用される。上記のように、ロールクリーナシステムは、フォーム基材をオーバーコーティングする導電性ファブリックを包含するクリーニングロールと、陽極処理トナー除去ロールとを包含する。導電性ファブリックは、約8μmから10μmを超えない平均粗さRaと、3.5×10から2.2×1011Ω/スクエアの範囲の表面抵抗率とを有する。
【0051】
陽極処理トナー除去ロールは導電性ファブリックと接触し、システムからの除去のため導電性ファブリックからトナーを除去するように構成されている。トナー除去ロールは、光受容体表面をクリーニングする時に導電性ファブリックのバイアスよりも高い電圧でバイアス印加されるように構成される。
【0052】
本発明では、X線写真法マーキングシステムに使用されるクリーニングステーションも設けられる。このステーションは、静電ロールクリーナとトナー除去ロールとバイアス印加構造への電気接続とを包含する。あるいは、クリーニングステーションが、静電ロールクリーナ、トナー除去ロール、バイアス印加構造への電気接続を二つ以上包含してもよい。追加静電ロールクリーナが、第1静電ロールクリーナと同じ極性または反対の極性を持つようにバイアス印加されてもよい。クリーニングロールは、導電性ファブリックオーバーコーティングでオーバーコーティングされた順応フォーム層を包含する。ファブリックオーバーコーティングは、光受容体表面の残留トナーとクリーニング接触するように構成されている。ファブリックは、概ね均一で一様な高密度の表面を有する。
【0053】
ステーションのバイアス印加構造および電気接続は、光受容体表面の電荷よりも約50から500ボルト高い正電圧で繊維オーバーコーティングにバイアスを印加するように構成されている。
【0054】
トナー除去ロールがファブリックオーバーコーティングとクリーニング接触しているステーションは、ロールにより除去されてファブリックオーバーコーティングからステーション外の箇所へトナーを搬送するように構成されている。ステーションは、ファブリックオーバーコーティングでのバイアスよりも高い正電圧でトナー除去ロールにバイアスを印加するようにバイアス印加構造が構成された構造を持つ。
【符号の説明】
【0055】
1 光伝導性ベルト、2 導電性基材、3 電荷発生層、4 電荷輸送層、5 方向矢印、6 剥離ローラ、7 テンションローラ、8 駆動ローラ、9 モータ、10 コロナ装置、11 導電性シールド、12 ジコロトロン電極、13 電気絶縁層、14 オリジナル文書、15 透明プラテン、16 ランプ、17 レンズ、18 磁気ブラシ現像ローラ、19 支持材料シート、20 シート供給機構、21 供給ロール、22 スタック、23 シュート、24 コロナ発生装置、25 剥離コロナ発生装置、26 方向矢印、27 融着アセンブリ、28 加熱融着ローラ、29 バックアップローラ、30 融着シートガイド、31 キャッチトレイ、32 抵抗器、33 プレクリーンジコロトロンのシールド回路、35 静電ロールクリーナ、36 フォームロール、37 導電性ファブリッククリーニング層、38 陽極処理トナー除去ロール、39 廃棄物移動オーガー、40 クリーナブレード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線写真法マーキングシステムの表面のクリーニングに使用するための静電ロールクリーナであって、
順応フォーム層と、
前記フォーム層をオーバーコーティングする導電性ファブリックを包含するコーティングと、を包含し、
前記導電性ファブリックが、織布、不織布、組布、編布であり、約8μmから10μmを超えない平均粗さRaと、3.5×10から2.2×1011Ω/スクエアの範囲の表面抵抗率とを有し、
前記導電性ファブリックは、前記平均粗さのため、中でのトナー蓄積を最少化するように構成され、前記導電性ファブリックは、同じような太さの糸を有し、滑らかで均一な表面構造であることを特徴とする静電ロールクリーナ。
【請求項2】
表面からトナーをクリーニングするのに使用するための静電ロールクリーナシステムであって、
フォーム基材をオーバーコーティングする導電性ファブリックを包含するクリーニングロールと、
トナー除去ロールと、を包含し、
前記導電性ファブリックが、約8μmから10μmを超えない平均粗さRaと、3.5×10から2.2×1011Ω/スクエアの範囲の表面抵抗率とを有し、
前記トナー除去ロールが、前記導電性ファブリックと接触するとともに、前記システムからの除去のため前記導電性ファブリックからトナーを除去するよう構成され、前記トナー除去ロールが、前記表面をクリーニングする時に前記導電性ファブリックのバイアスより高い電圧でバイアスが印加されるように構成されることを特徴とする静電ロールクリーナシステム。
【請求項3】
前記フォーム基材が、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスチレンおよび他のポリマーフォーム材料から構成される群から選択された材料を包含する、請求項2記載の静電ロールクリーナシステム。
【請求項4】
静電ロールクリーナと、
トナー除去ロールと、
バイアス印加構造への電気接続と、を包含し、
前記静電ロールクリーナが、導電性ファブリックオーバーコーティングでオーバーコーティングされた順応フォーム層を包含し、
前記ファブリックオーバーコーティングが、表面上の残留トナーとクリーニング接触するように構成され、
実質的に均一に滑らかで一様な高密度の表面を設けるように前記ファブリックの糸の太さが同じくらいであり、
前記バイアス構造および前記電気接続が、前記表面の電荷よりも約50〜500ボルト高い正電圧で前記ファブリックオーバーコーティングにバイアスを印加するように構成される、
X線写真法マーキングシステムで使用されるクリーニングステーション。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−145997(P2010−145997A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282623(P2009−282623)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】