説明

静電塗装プラント用監視法及び監視装置

本発明は、高電圧装置(4)により帯電された塗装剤で部品(3)を塗装する静電塗装プラント(1)のための監視法及び監視装置(6)に関する。監視法は、高電圧装置(4)の第1の動作変数(IB)を決定する工程、この第1の動作変数(IB)を制限値(IG)と比較する工程、及び、第1の動作変数(IB)と制限値(IG)との比較が静電塗装プラント(1)の異常を示す場合安全対策を開始する工程、を含む。これにより、制限値(IG)を動作モードに応じて柔軟に調節することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧装置により電気的に帯電された塗装剤で部品を塗装する静電塗装設備用の監視法及び対応する監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
関連する工業規則(例えば、EN50176、EN50348)では、動作電流の許容限度を超えた上昇を防ぐため、こうした静電塗装設備は監視装置を備えるべきであると規定されている。こうした監視装置は高電圧装置の電気動作変数(例えば、動作電流)の実値を最大及び/又最小は許容限度値に対して常時確認する。
【0003】
静電塗装設備の電圧制御操作中、動作電流は通常最大許容限度値と比較される。
【0004】
一方、代替法として可能な電流制御操作が静電塗装設備で用いられる場合、動作電圧は通常電圧の最小許容限度値と比較される。
【0005】
計測された電気動作変数が所定の限度値を超過し又は下回る場合、動作モード(電流制御か電圧制御か)に依存して、高電圧源は即座に安全対策としてスイッチを切られる。
【0006】
上述した静電塗装設備用の従来の監視法は、高抵抗性の仕上げ塗料(>400kΩ、ランスバーク尺度)を処理する場合は、満足に動作する。車体を塗装する場合、固形分がしばしば多い低抵抗性の仕上げ塗料(<300kΩ、ランスバーク尺度)がますます用いられるようになってきているものの、用いられる仕上げ塗料の抵抗性が低いため、塗装対象の部品を介して流れる塗装電流と塗装設備を介して流れる設備電流との間の割合が常に望ましい割合よりも低くなり、安全基準のための制限値をますます高く設定する必要があるため、安全上のリスクがある。
【0007】
この問題は、異なるバッチ間又は異なる製造シリーズ間で仕上げ塗料の電気抵抗が変動するためさらに悪化する。例えば、ここで、塗装電流と設備電流との割合を10:1としたとき、低抵抗性仕上げ塗料では、塗装電流と設備電流との割合は1:2などであり得る。塗装電流量が2μAで設備電流量が50μAであるような設備すらも存在する。ここでは、例えば、固形分の高い仕上げ塗料は低抵抗性を示す。さらに、溶媒や添加剤が仕上げ塗料の導電性をより高く又は低くする。さらに、仕上げ塗料が循環する際に、特殊効果粒子(例えば、フレーク)が導電路を形成する。これにより、より深刻な影響をはらむ設備電流の変動がもたらされる。
【0008】
さらに、塗装電流と設備電流との両方が塗装電圧に依存する。これは、特に、大規模な設備電流の場合、例えば、塗装が無数の異なる電圧下で行われる場合、監視装置の制限値を用いられる中で最も高い電圧に設定する必要があるため、それ自身不利であると考えられる。これにより、通常の動作電流と安全のためにスイッチを切るための制限値との間のノイズ比がこれまでになく高くなり、塗装電圧は低くなる。
【0009】
しかし、特許文献1に記載の周知の監視法では、制限値は電気動作変数に応じて調節されはしない。
【0010】
さらに、特許文献2に記載の周知の電流制御回路では、制限値は、塗装の種類や塗装対象の部品ごとの形状やそれぞれの湿り具合毎に個別に設定されるのみである。制限値を自動的に調節することはこの文献では知られていない。
【0011】
このことは特許文献3にも当てはまり、この文献では、同様に、制限値を塗装対象の部品に応じて設定すべきことが記載されている。
【0012】
特許文献4においても、塗装設備の電気動作変数に応じて設定することは記載されているが、制限値を自動的に設定することの記載はない。
【0013】
最後に、特許文献5には、設定値の調節についての開示は一切ない。代わりに、この文献には、自動的に安定化につながる電流制限抵抗を提供することのみが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】独国特許出願公開第19903824号明細書
【特許文献2】旧東独国特許出願公開第31812号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0203198号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0227445号明細書
【特許文献5】米国特許第4073002号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、そこで、静電塗装設備用の改善された監視法及び改善された監視装置を提供することを目的とする。
【0016】
周知技術の上記問題点を回避することが特に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、独立請求項に記載の本発明の監視法及び本発明の監視装置により達成される。
【0018】
本発明は、静電塗装設備の安全に関連する電気動作変数(例えば、動作電流又は動作電圧)の確認のための制限値を厳格に特定することなく、できる限り最小のノイズ比が保証されるよう、該制限値を動作に応じて柔軟に設定することの広範な技術的示唆を含む。こうして監視機能を各動作状況に合わせてより細かく調節することができ、これにより、障害発生時の応答がより迅速になり、そして、また、安全性が改善されることが保証される。
【0019】
本発明のために用いられる用語「ノイズ比」は、好ましくは、監視された電気動作変数の瞬時値(例えば、動作電流)と制限値との間の差を考慮する。
【0020】
本発明のある変形例では、対象値は、静電塗装設備の安全に関連する第1の動作変数(例えば、動作電流又は動作電圧)又は第2の動作変数に関して特定され、第1の動作変数はこの特定された対象値に応じて開ループ制御及び/又は閉ループ制御される。制限値は特定された対象値に応じて固定される。このとき、さまざまな制限値が、対象値に応じて、保存されている割り当て表から読み取ることができる。割り当て表から各制限値を読み取ることは、特定された対象値と結果である制限値との間の関連を定義する割り当て表を維持するために労力がいる点で不利である。
【0021】
本発明のある変形例では、監視される安全に関連する動作変数は閉ループ制御動作変数である。例えば、静電塗装設備の動作電流が、安全に関連する動作変数を形成し、動作電流の閉ループ制御も実行し得る。
【0022】
本発明の別の変形例では、監視される安全に関連する動作変数は対照的に静電塗装設備の閉ループ制御動作変数ではない。本発明のこの変形例では、監視されるのは静電塗装設備の閉ループ制御動作変数ではなく別の動作変数である。例えば、静電塗装設備の動作電圧が、動作電流が安全に関連する動作変数として監視される一方、閉ループ制御であり得る。
【0023】
割り当て表を維持するための上記の不利な点により、制限値が異なる対象値について例えば特定の関数関係に基づいて自動的に計算されるよう、用いられるそれぞれの最高対象値について最も高い制限値のみを操作者が特定するという代替的選択肢がある。この場合、最大の対象値が塗装設備の動作中に生じるよう決定される。そして、この最大対象値について、それに応じた制限値が設定される。そして、他の対象値も瞬時対象値及び最大対象値の制限値に応じて自動的に決定される。
【0024】
本発明の好ましい例示的実施形態では、安全監視のための制限値の設定は完全に自動化されており、これにより、労力が減るのみならず、同時に、制限値が意図的に又は非意図的に高すぎる値に設定されることがないため、安全性が増す。
【0025】
この例示的実施形態では、普通「設備電流」及び「塗装電流」から構成される塗装剤の帯電に働く動作電流について述べる。ここで、設備電流は塗装対象の部品ではなく塗装設備を介して流れ、塗装電流は塗装設備ではなく塗装対象の部品を介してながれる。
【0026】
設備電流は実質的に高電圧源の出力電圧及び用いられる塗装剤の電気抵抗、随意に、洗浄剤の電気抵抗に依存している。一定の出力電圧では、設備電流は塗装処理中一定である。さらに、設備電流は、戻り配管を含む配管の横断面、配管長、及び、配管の数に依存し得る。
【0027】
一方、塗装電流は、所定の範囲でさまざまなパラメーター(例えば、塗布器−加工対象物間の距離、加工対象物の配置など)に応じて変動する可変動作変数である。
【0028】
静電塗装設備の動作電流の監視の際、制限値は安全監視のために設備電流及び/又は塗装電流に応じて固定されてもよい。例えば、制限値は安全監視のために特定のノイズ比を決定された設備電流又は塗装電流に加えることで計算し得る。
【0029】
本発明のさらなる例示的実施形態では、安全監視のための設定値は安全に関連する動作変数(例えば、動作電流)の実値を計測し一時的に保存することで自動的に決定される。そして、瞬時の安全監視のための設定値は少なくとも1つのすでに決定された一時的に保存された安全に関連する動作変数の実値に応じて固定され得る。例えば、瞬時制限値は特定のノイズ比をすでに決定された一時的に保存された実値に加えることで計算し得る。この制限値の計算では、安全に関連する動作変数のすでに計測した実値を考慮に入れる。この例示的実施形態は追加のセンサーが必要ないという利点を持つ。この安全監視の技術原理は、制限値の時間遅延追跡により可変制限値にも関わらず安全のためのスイッチ切断が起きることが保証され、スパークが生じるときなどに許容限度を超えた過電流が極めて迅速に生じるという事実に基づいている。
【0030】
安全確認のための制限値の自動的設定に好ましくは適用できる基礎的条件として、制限値は装置の電力により及び/又は法的規制により特定される幅の範囲内でのみ変動すべきであることが挙げられる。このようにして、(例えば、塗装設備の汚染などにより)負荷抵抗にゆっくりと変化が生じる場合、安全のためのスイッチ切断が危険な状況が起きる前に起こることが保証される。そこで、本発明は、好ましくは、制限値が特定の許容動作範囲内にあるか否かの確認が行われることを提供する。安全監視のための計算された設定値が特定の許容動作範囲外である場合、適切な対抗処置を取り得るよう、エラーフラグが立ち得る。さらに、この場合、制限値は特定の許容動作範囲の最も近い最大値又は最小値に設定される。
【0031】
制限値の上記の許容動作範囲は高電圧装置の瞬時電力に応じて固定され得る。ある例示的実施形態は、そこで、高電圧源の瞬時電力が電流や電圧の計測などにより決定されることを提供する。そして、安全監視のための上記の許容動作範囲は高電圧装置の瞬時電力に応じて固定され得る。
【0032】
好ましくは、監視された安全に関連する動作変数は、静電塗装設備内で塗装剤が帯電されるときの電流であり、このとき、動作電流のうちひとつ、設備電流、及び/又は、塗装電流が考慮され得る。
【0033】
しかし、代わりに、監視される安全に関連する動作変数が、静電塗装設備の高電圧装置が塗装剤を帯電するときの電圧であってもよい。
【0034】
さらに、監視される安全に関連する動作変数は、異なる動作変数(例えば、電流及び電圧)の組み合わせであってもよく、又は、特に電流及び/又は電圧の時間微分などの導変数からなってもよい。
【0035】
しかし、本発明は、静電塗装設備の監視される安全に関連する動作変数に関して、ここで例を示して述べたような特定の動作変数に限定されるものではない。
【0036】
さらに、本発明は、静電塗装設備の電圧制御動作及び電流制御動作の両方において達成可能であることを明記する。
【0037】
本発明による監視で安全に関連する動作変数が制限値を超過する又は下回ることになった場合、安全対策が開始される。これは例えば視覚的又は聴覚的警報の形で行われる。本発明の好ましい例示的実施形態では、しかし、安全対策は、許容値範囲に戻るよう、高電圧装置のスイッチを切ること、又は、安全に関連する動作変数の閉ループ又は開ループの下方制御を含む。
【0038】
本発明は、上記の監視法に限定されるものではなく、本発明の監視法を実行するための対応する監視装置も含むものであることを明記する。この目的で、本発明の監視装置は、静電塗装設備の高電圧装置の安全に関連する動作変数(例えば、動作電流)などを計測する計測要素をまず従来通り備える。
【0039】
さらに、本発明の監視装置は、安全に関連する動作変数(例えば、動作電流)などを特定の制限値と比較する比較ユニットを備える。
【0040】
本発明の監視装置は、さらに、安全に関連する動作変数と特定の制限値との比較が静電塗装設備の機能不全を示した場合、安全対策(例えば、スイッチの切断)を開始するための安全装置を有する。本発明の安全装置は、周知技術のものとは、制限値が動作の変数として柔軟に設定され、尚且つ、これが自動的に処理され得るという点で区別できる。
【0041】
ある例示的実施形態では、本発明の監視装置は、安全装置が特定された対象値に応じて制限値を固定するよう、特定された対象値に応じた安全に関連する動作変数又は他の動作変数の閉ループ制御のための閉ループ制御器を備える。この目的で、各対象値についての関連する制限値を含む割り当て表を設けてもよい。
【0042】
最後に、本発明は、上記の監視装置を有する完全な静電塗装設備もまた含む。
【0043】
本発明のさらなる別の有利な展開が下位請求項に特定され又は以下に図面を参照しながら本発明の好ましい例示的実施形態の記載とともに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】静電塗装設備の模式図を示す。
【図2】静電塗装設備の動作電流の経時的変化を示す図である。
【図3】使用電圧の変化が生じた際の動作電流及び関連する塗装電流及び設備電流の一部の時間プロファイルを示す図である。
【図4A】本発明に係る監視装置の模式図を示す。
【図4B】図4Aの監視装置により実行される監視法を示すフローチャートを示す。
【図5A】本発明に係る監視装置の代替的例示的実施形態を示す。
【図5B】図5Aの監視装置により実行される監視法を示すフローチャートを示す。
【図6A】本発明に係る監視装置の代替的例示的実施形態を示す。
【図6B】図6Aの監視装置により実行される監視法を示すフローチャートを示す。
【図7】本発明に係る代替的監視法をフローチャートの形式で示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、本発明に係る静電塗装設備1の模式図を示す。該静電塗装設備1は、例えば、車体部品3を塗装するための塗装装置として回転式噴霧器2を備えてもよい。塗装設備1はしかし基本的に他の部品を塗装するためにも適している。さらに述べれば、回転式噴霧器2の代わりに別の静電塗装装置を用いてもよい。
【0046】
塗布される塗装剤は、この場合、高電圧源4により帯電され、一方、塗装対象の車体部品3は接地接続される。
【0047】
高電圧源4は、次に、塗装剤供給5を介した設備電流Iとして一部が流れ、別の部分は塗装対象の車体部品3を介して塗装電流Iとして流れる動作電流Iを出力する。動作電流Iは、このようにして、2つの電流成分から、即ち、設備電流I及び塗装電流Iから構成される。
【0048】
設備電流Iは実質的に高電圧源4の出力電圧及び用いられる塗装剤の電気抵抗、随意に、洗浄剤の電気抵抗に依存している。一定の出力電圧では、設備電流Iもまた一定である。
【0049】
一方、塗装電流Iは、図2から明らかなように、所定の範囲でさまざまなパラメーター(例えば、回転式噴霧器2と車体部品3との距離、車体部品3の配置など)に応じて変動する可変量である。
【0050】
図3からさらに明らかであるが、出力電圧u(t)の減少はt=t1及びt=t2の間の期間に極めて大きいノイズ比の定電圧が生ずることにつながり、これにより、システムが緊急状態を検出する感度が低下する。そこで、最小限のノイズ比が保証されるように塗装設備1を改善することが必要となる。
【0051】
図4Aは、安全が重大な結果に関わる動作状態を避けるため、動作電流Iの安全監視を実行する役割を持つ、本発明に係る監視装置6を示す。
【0052】
監視装置6は、電力制御装置7、実値検出器8、及び、閉ループ制御器9を先ず従来通り備える。実値検出器8は、動作電流Iの実値IACTを実値UACTとともに決定し、実値UACTを閉ループ制御器9に送る。該閉ループ制御器9は、特定された対象値UDES及び決定された実値UACTから対象/実値の差を計算し、動作電圧の実値UACTが特定された対象値UDESに調節され、動作電流Iに基づき設定されるよう、対応する制御信号s2で電力制御装置7を動作させる。
【0053】
さらに、設備電流Iを計測しそれを安全装置11に伝える計測要素10が設けられる。安全装置11は、次に、設備電流Iから対応する制限値ILIMITを計算し、これを動作電流Iの実値IACTと比較する。動作電流Iの実値IACTがこうして計算された制限値ILIMITを超過する場合、安全装置11は、これに応じて動作電流Iが下がるよう調節する又はシステムのスイッチを切るように電力制御装置7を動作させるための動作信号s1を発する。
【0054】
本発明の監視法は、図4Aの監視装置6により実行されるが、ここで、この監視法を図4Bのフローチャートを参照しながら以下に説明する。
【0055】
第1のステップS1では、最初に、計測要素10が設備電流Iを計測する。
【0056】
次に、安全装置11が、動作電流Iのための制限値ILIMITを、以下のように、計測した設備電流I及び特定のノイズ比INOISEに応じて固定する。

LIMIT=I+INOISE

高電圧源4の電力PELが次に計測され、ステップS3が進むが、簡略化のためにその詳細は記さない。
【0057】
次にステップS4では、制限値ILIMITに許される幅が次に高電圧源4の電力PELに応じて決定される。
【0058】
ステップS5では次に前に計算された制限値ILIMITが最大許容限度値ILIMIT,MAXを超過するか否かが確認される。
【0059】
条件が満たされる場合、制限値ILIMITはステップS6において、最大許容限度値ILIMIT,MAXに固定される。
【0060】
そうでない場合は、次のステップS7で、前に計算された制限値ILIMITが最小許容限度値ILIMIT,MINを下回るか否かが確認される。
【0061】
条件が満たされる場合、制限値ILIMITはステップS8において、最小許容限度値ILIMIT,MINに固定される。
【0062】
動作電流Iが、次に、ステップS9で、実値検出器8を用いて計測される。
【0063】
次に、ステップS10で、計測された動作電流Iが制限値ILIMITを超過するか否かが確認される。
【0064】
条件が満たされる場合、高電圧源4は、ステップS11で、安全装置11が電力制御装置7を適切に動作させることで、スイッチを切られる。
【0065】
そうでない場合は、図4Bに示した監視法は終わりなく繰り返し実行される。
【0066】
図5Aに示した監視装置6は、上述し又図4Aに示した監視装置6と、大きく重複するので、繰り返しを避けるため、同じ参照番号で示されるものの詳細については上記の記載を参照のこと。
【0067】
この例示的実施形態の唯一の特別な特徴は、制限値ILIMITが設備電流Iではなく塗装電流Iに応じて計算される点である。その他の点については、この例示的実施形態及び図5Bのフローチャートは上記の例示的実施形態と一致するので、上記の説明を参照のこと。
【0068】
図6Aの例示的実施形態は部分的に上記の例示的実施形態に一致するので、繰り返しを避けるため、同じ参照番号で示されるものの詳細については上記の記載を参照のこと。
【0069】
この例示的実施形態の特別な特徴は、特定された対象値UDES又は該特定された対象値UDESから導かれる値IDESのいずれかに応じて制限値ILIMITの計算が進められるため、計測要素10が省かれてもよいという点からなる。従って、図6BのフローチャートのステップS2では、制限値ILIMITは、以下のように、特定された対象値UDES及び特定のノイズ比INOISEに応じて計算される。

LIMIT=f(UDES)+INOISE
【0070】
その他の点については、この例示的実施形態は上記の例示的実施形態と一致するので、繰り返しを避けるため、上記の説明を参照のこと。
【0071】
最後に、図7は、本発明に係る監視法の代替的例示的実施形態をフローチャートで示すものであり、この実施形態は、上記の例示的実施形態とは、ステップS2及びS3での制限値ILIMITの計算が実質的に異なる。
【0072】
次に、この例示的実施形態では、塗装設備1の動作中に、動作電流Iが継続的に計測され一時的に保存される。制限値ILIMITは、次に、以下のように、上記の動作電流I(t−Δt)及び特定のノイズ比INOISEに応じて計算される。

LIMIT=I(t−Δt)+INOISE
【0073】
この変形例は、設備電流I又は塗装電流Iを計測するために追加のセンサーが必要ではないという利点を有する。この変形例は、制限値の時間遅延追跡により可変制限値にも関わらず安全のためのスイッチ切断が起きることが保証され、スパークが生じるときなどに許容限度を超えた過電流が極めて迅速に生じるという事実に基づいている。
【0074】
本発明は上記の好ましい例示的実施形態に限定されるものではない。代わりに、本発明の概念を用いて、保護範囲内に含まれるような、多くの変形例と修正例とが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 塗装設備
2 回転式噴霧器
3 車体部品
4 高電圧源
5 塗装剤供給
6 監視装置
7 電力制御装置
8 実値検出器
9 閉ループ制御器
10 計測要素
11 安全装置
設備電流
動作電流
塗装電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧源(4)により電気的に帯電された塗装剤で部品を塗装する静電塗装設備(1)の監視法であって、前記監視法は、
a)前記高電圧源(4)の第1の動作変数(I)を決定する工程、
b)前記第1の動作変数(I)を制限値(ILIMIT)と比較する工程、
c)前記第1の動作変数(I)と前記制限値(ILIMIT)との比較が前記静電塗装設備(1)の機能不全を示す場合、安全対策を開始する工程、
を備え、
d)前記制限値(ILIMIT)は動作に応じて柔軟に設定される、
ことを特徴とする監視法。
【請求項2】
a)前記第1の動作変数(I)又は前記高電圧源(4)の第2の電気動作変数(UACT)のための対象値(UDES)を特定する工程、
b)特定された前記対象値(UDES)に応じて前記第1又は第2の動作変数(UACT)を閉ループ/開ループ制御する工程、及び、
c)前記制限値(ILIMIT)を特定された前記対象値(UDES)に応じて固定する工程、
を含む、請求項1に記載の監視法。
【請求項3】
前記制限値(ILIMIT)は、前記対象値(UDES)に応じて、保存されている割り当て表から読み取られる、請求項2に記載の監視法。
【請求項4】
a)最大の前記対象値(UDES)は前記塗装設備(1)の動作中に決定され、
b)最大の前記対象値(UDES)のための前記制限値(ILIMIT)は操作者により設定され、及び、
c)他の対象値のための前記制限値(ILIMIT)は、瞬時の前記対象値(UDES)及び最大の前記対象値(UDES)のための前記制限値(ILIMIT)に応じて自動的に決定される、
請求項2に記載の監視法。
【請求項5】
a)前記塗装剤を帯電するために働く前記静電塗装設備の前記動作電流(I)は設備電流(I)及び塗装電流(I)から構成され、
b)前記設備電流(I)は、塗装対象の前記部品(3)ではなく前記塗装設備(5)を介して流れる前記動作電流(I)の一部であり、
c)前記塗装電流(I)は、前記塗装設備(5)塗ではなく装対象の前記部品(3)を介して流れる前記動作電流(I)の一部であり、及び、
d)前記制限値(ILIMIT)との比較に用いられる前記第1の動作変数は前記塗装設備の前記動作電流(I)である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の監視法。
【請求項6】
前記制限値(ILIMIT)を決定するための以下の工程、
a)前記設備電流(I)を決定する工程、及び、
b)決定された前記設備電流(I)に応じて前記制限値(ILIMIT)を固定する工程、
を含む、請求項5に記載の監視法。
【請求項7】
前記制限値を決定するための以下の工程、
a)前記塗装電流を決定する工程、及び、
b)決定された前記塗装電流に応じて前記制限値(ILIMIT)を固定する工程、
を含む、請求項5又は6に記載の監視法。
【請求項8】
前記制限値(ILIMIT)は特定のノイズ比(INOISE)を決定された前記設備電流(I)に又は決定された前記塗装電流(I)に加えることで計算される、請求項6又は7に記載の監視法。
【請求項9】
a)前記第1の電気動作変数(I)又は前記高電圧源(4)の第2の電気動作変数の実値(IACT)を継続的に決定する工程、
b)決定された前記実値(IACT)を一時的に保存する工程、及び、
c)前記瞬時制限値(ILIMIT)を少なくとも1つのすでに決定された一時的に保存された実値(IACT)に応じて固定する工程、
を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の監視法。
【請求項10】
瞬時の前記制限値(ILIMIT)は特定のノイズ比(INOISE)をすでに決定された一時的に保存された実値(IACT)に加えることで決定にされる、請求項9の監視法。
【請求項11】
a)前記制限値(ILIMIT)は特定の許容動作範囲内にあるか否か確認する工程、及び、
b)前記制限値(ILIMIT)が前記特定の許容動作範囲外である場合、エラーフラグを立てる工程、及び/又は、
c)前記制限値(ILIMIT)が前記特定の許容動作範囲外である場合、前記制限値(ILIMIT)を前記特定の許容動作範囲の最も近い最大値又は最小値に設定する工程、
を含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の監視法。
【請求項12】
a)前記高電圧源(4)の瞬時の前記電力(PEL)を決定する工程、及び、
b)前記特定の動作範囲を前記高電圧源(4)の瞬時の前記電力(PEL)に応じて固定する工程、
を含む、請求項11に記載の監視法。
【請求項13】
a)前記第1の動作変数(I)は、前記塗装剤を帯電させるための電流、特に、動作電流、前記高電圧源(4)の前記操作電流(I)又は前記塗装電流(I)、又は、これらを微分して得られた変数、特に、電流の時間微分であり、
b)前記第1の動作変数は、前記塗装剤を帯電させるための前記電圧(UACT)、又は、これを微分して得られた変数、特に、電圧の時間微分である、
請求項1から12のいずれか1項に記載の監視法。
【請求項14】
前記安全対策が、以下の対策、
a)視覚的又は聴覚的警報を生成すること、及び/又は、
b)前記高電圧源(4)のスイッチを切る工程、及び/又は、
c)前記高電圧源(4)の前記第1の動作変数を減少させること、
を含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の監視法。
【請求項15】
静電塗装設備(1)での塗装剤の帯電のための高電圧装置(4)の監視装置(6)であって、
a)高電圧源(4)の第1の動作変数(I)を計測する第1の計測要素(8)、
b)第1の動作変数(I)を制限値(ILIMIT)と比較する比較器(11)、及び、
c)前記第1の動作変数(I)と前記制限値(ILIMIT)との比較が前記静電塗装設備(1)の機能不全を示す場合、安全対策を開始する安全装置(11)、
を備え、
d)前記安全装置(11)は、前記制限値(ILIMIT)を動作に応じて柔軟に設定する、
ことを特徴とする監視装置(6)。
【請求項16】
a)前記塗装剤を帯電するために働く前記静電塗装設備の前記動作電流(I)は設備電流(I)及び塗装電流(I)から構成され、
b)前記設備電流(I)は、塗装対象の前記部品(3)ではなく前記塗装設備(5)を介して流れる前記動作電流(I)の一部であり、
c)前記塗装電流(I)は、前記塗装設備(5)塗ではなく装対象の前記部品(3)を介して流れる前記動作電流(I)の一部であり、及び、
d)第2の計測要素(10)が前記設備電流(I)又は前記塗装電流(I)を計測するために設けられ、
e)前記安全装置(11)は、前記制限値(ILIMIT)を前記設備電流(I)及び/又は前記塗装電流(I)に応じて設定する、
ことを特徴とする請求項15に記載の監視装置(6)。
【請求項17】
前記第1の動作変数(I)又は特定された前記対象値(UDES)に応じた第2の操作変数(UACT)の閉ループ制御のための閉ループ制御器(9)を備え、前記安全装置(11)は前記制限値(ILIMIT)を前記対象値(UDES)に応じて固定する、こと特徴とする請求項15又は16に記載の監視装置(6)。
【請求項18】
前記監視装置(6)は請求項1から14のいずれか1項に記載の監視法を実行する、請求項15から17のいずれか1項に記載の監視装置(6)。
【請求項19】
請求項15から18に記載の監視装置(6)を備えた静電塗装設備(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−520751(P2012−520751A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500105(P2012−500105)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001286
【国際公開番号】WO2010/105738
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(504389784)デュール システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (54)
【Fターム(参考)】