説明

静電容量型入力装置

【課題】 特に、従来に比べて位置検出精度を向上させることが可能な静電容量型入力装置を提供することを目的としている。
【解決手段】 本発明の静電容量型入力装置(タッチパネル)1は、端部2a,2bに配線層4,5が接続されて駆動電圧vddが印加される駆動電極2と、前記駆動電極2と平面方向に間隔を空けて配置された検出電極3と、を有し、操作体の近接に伴う容量結合に基づく前記検出電極3からの出力により、前記操作体の位置を検出可能としており、前記駆動電極2の前記端部2a,2bには、前記端部での印加電圧を検出するための補正電極10,11が接続されていることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機器やその他の電子機器に搭載されて、指などの操作体を操作パネルに接触させて操作する静電容量型入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献には、複数の電極が間隔を空けて複数本、並設されており、指などの操作体の操作座標位置を、前記電極の両端線からの信号比率に基づいて検出するという静電容量型入力装置の発明が開示されている(例えば特許文献1の[0037]欄、[0038]欄等参照)。また特許文献3には駆動電極の間に検出電極が配置された構造の入力装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−531201号公報
【特許文献2】特開2005−512198号公報
【特許文献3】US 7,808,255 B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来の静電容量型入力装置の構造では、配線抵抗による電圧の降下もしくは上昇のために、検出位置ずれが生じる問題があった。
【0005】
また操作画面のデザイン制約や外形上の制約、また製造プロセスにおける制約等により、配線抵抗の影響を抑制すべく配線層の幅を太くしたり、厚みを厚くすることができない場合があった。
【0006】
また配線層は印刷等によるプロセス上のばらつきにより配線抵抗にばらつきが生じやすく、また温度によっても配線抵抗が変動するため、安定した位置検出精度を得ることができない問題があった。
【0007】
そこで本発明は上記従来の課題を解決するものであり、特に、従来に比べて位置検出精度を向上させることが可能な静電容量型入力装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明における静電容量型入力装置は、端部に配線層が接続されて駆動電圧が印加される駆動電極と、前記駆動電極と平面方向に間隔を空けて配置された検出電極と、を有し、操作体の近接に伴う容量結合に基づく前記検出電極からの出力により、前記操作体の位置を検出可能としており、
前記駆動電極の前記端部には、前記端部での印加電圧を検出するための補正電極が接続されていることを特徴とするものである。補正電極により駆動電極の端部の印加電圧(端部印加電圧)を検出し、前記端部印加電圧を位置検出の際のパラメータとして用いて、配線抵抗による電圧降下分あるいは電圧上昇分を補正することで、従来に比べて位置検出精度を向上させることが可能になる。
【0009】
本発明では、複数の前記駆動電極と複数の前記検出電極とが夫々、交互に間隔を空けて設けられており、少なくとも最も前記配線層の配線長さが長い前記駆動電極に対して前記補正電極が接続されていることが好ましい。これにより配線抵抗の高い配線層が接続された駆動電極に対して適切に補正でき、効果的に位置検出精度を向上させることが可能になる。
【0010】
また本発明では、前記補正電極は前記駆動電極の両側の前記端部に夫々、接続されていることが好ましい。これにより高精度な位置検出精度を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の静電容量型入力装置によれば、補正電極により駆動電極の端部の印加電圧(端部印加電圧)を検出し、前記端部印加電圧を位置検出の際のパラメータとして用いて、配線抵抗による電圧降下分あるいは電圧上昇分を補正することで、従来に比べて位置検出精度を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施形態における静電容量型入力装置(タッチパネル)の一部を平面的に示した模式図であり、検出原理及び補正方法を説明するための説明図である。
【図2】図2は、指Fの操作位置と出力V1,V2との関係を示すグラフを模式的に示したものである。
【図3】図3(a)は、本実施形態の静電容量型入力装置(タッチパッド)の表示画面全体を示す平面図であり、図3(b)は、図3(a)に示すA−A線に沿って切断し矢印方向から見た部分断面図である。
【図4】図4は、他の実施形態の静電容量型入力装置(タッチパッド)を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施形態における静電容量型入力装置(タッチパネル)の一部を平面的に示した模式図であり、検出原理及び補正方法を説明するための説明図である。
【0014】
本実施形態の静電容量型入力装置(タッチパネル)1では、駆動電極2と、検出電極3とが平面視にて所定の間隔を空けて並設されている。図1に示すように駆動電極2はX1−X2方向の幅寸法よりもY1−Y2方向に長く延出した帯状で形成されている。駆動電極2と検出電極3とはX1−X2方向に所定の間隔を空けて並設されている。図1では、検出電極3のX1−X2方向の幅寸法が駆動電極2よりも小さく形成されているが、これは一例であって、駆動電極2及び検出電極3の形態を限定するものでない。
【0015】
駆動電極2及び検出電極3は、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電材料をスパッタや蒸着して成膜されたものであり、図1に示す形状となるようにフォトリソグラフィ技術を用いてパターン形成されている。あるいは各電極2,3を印刷にてパターン形成することもできる。
【0016】
なお本実施形態における「透明」とは可視光線透過率が60%以上(好ましくは80%以上)の状態を指す。更にヘイズ値が6以下であることが好適である。
【0017】
図1に示すように駆動電極2のY1側端部2a及びY2側端部2bに夫々、配線層4,5が電気的に接続されている。
【0018】
図1(a)に示すように、配線層4は入力部7に接続され、配線層5は接地部8に接続されており、駆動電極2に所定の駆動電圧vddが印加されている。
【0019】
今、指(操作体)Fが操作面(図示せず)上の位置P1に当接して各電極2,3に近接したとする。このとき各電極2,3と指Fとの間で容量結合が生じて、検出電極3から出力(電圧)V1を得ることができる。
【0020】
図2は、Y1−Y2方向における指Fの位置Pと出力V1,V2との関係を示すグラフを模式的に示したものである。
【0021】
図2に示すように検出電極3から得られる出力V1は、指Fの位置PがY1−Y2方向に変化することで変動する。
【0022】
続いて、指Fが図1(a)と同じ位置P1にあるときの間に、図1(b)に示すように、入力部7の接続を駆動電極2のY2側端部2b側に、接地部8の接続を駆動電極2のY1側端部2a側に切換えて図1(a)と同様に、検出電極3から出力V2を得る。図2に示すようにY1−Y2方向への指Fの位置Pに対する出力V2の変動は、出力V1と逆方向への傾きを示している。
【0023】
ここで図2に示すように出力V1と出力V2とを加算した最大出力値(V1+V2)は、指Fの操作面上での当接状態等、検出条件が全く同一であると仮定すれば、指Fの位置PをY1−Y2方向に平行に移動させたときに、どの位置であっても(位置P1以外であっても)同じ値になる。換言すれば、前記検出条件が変れば、最大出力値(V1+V2)も変化することになる。
【0024】
図1に示す配線層4,5は、操作画面の縁にある加飾領域下に設けられるため、透明である必要がない。例えば配線層4,5は、Ag、Cu、Cu合金、CuNi合金、Ni等の金属材料を有して形成され、例えばAgペーストを印刷して形成される。
【0025】
本実施形態では図1に示すように、駆動電極2のY1側端部2a及びY2側端部2bに夫々、補正電極10,11が接続されている。そして、Y1側端部2aの位置での電圧、及びY2側端部2bの位置での電圧を夫々、測定している。例えば、図1(a)に示す駆動電圧vddの印加タイミングにより、補正電極10,11によりY1側端部2aの端部印加電圧VHと、Y2側端部2bの端部印加電圧VLとを測定している。端部印加電圧VHは端部印加電圧VLよりも高い電圧値を示す。
【0026】
上記した出力V1,V2、端部印加電圧VH,VL、及び駆動電圧vddにより、指Fの位置Pを以下の数式1により求めることができる。
【数式1】
【0027】

【0028】
上記数式1は、配線抵抗R1,R2を除外するために端部印加電圧VH,VLをパラメータに用いて、補正した出力V1を最大出力値(V1+V2)で割ったものである。
【0029】
従来では、駆動電極2の端部2a,2bの端部印加電圧を位置検出の際に考慮していなかった。このように、従来では、図1に示す配線抵抗R1,R2による電圧降下分あるいは電圧上昇分を補正することなく位置検出を行っていたため、正確な位置検出を行うことができなかった。
【0030】
これに対して本実施形態では、補正電極10,11により駆動電極2の端部2a,2bの印加電圧(端部印加電圧VH,VL)を検出し、前記端部印加電圧VH,VLを、位置検出の際のパラメータとして用いることで、配線層4,5の配線抵抗R1,R2による電圧降下分あるいは電圧上昇分を補正でき、従来に比べて位置検出精度を向上させることができる。すなわち配線層4,5の配線抵抗R1,R2自体を小さくしなくても、位置検出ずれを効果的に小さくでき、よって狭額縁化や薄型化に適切に対応可能になる。また温度変化等により配線抵抗R1,R2にばらつきがあっても、位置検出精度のばらつきを抑えることができ、安定した位置検出精度を得ることが出来る。
【0031】
本実施形態では、図示しない制御部(IC)に、出力V1,V2、端部印加電圧VH,VL、及び駆動電圧vddが入力され、上記数式1により、指Fの位置Pが検出される。
【0032】
補正電極10,11が操作画面内に位置する場合は、駆動電極2及び検出電極3と同様にITO等の透明電極で形成される。一方、補正電極10,11が加飾領域と重なる場合には、配線層4,5と同様に透明である必要がなく配線層4,5と同様の材質で形成できる。
【0033】
なお、補正電極10,11が抵抗を持っていても、電圧測定では、ハイインピーダンスで入力するA/Dコンバータを使用するか、あるいはオペアンプなどで一旦、インピーダンス変換する。このため、電圧降下なく端部印加電圧VH,VLを測定することができる。
【0034】
図3(a)は、本実施形態の静電容量型入力装置(タッチパッド)1の表示画面全体を示す平面図であり、図3(b)は、図3(a)に示すA−A線に沿って切断し矢印方向から見た部分断面図である。
【0035】
図3(a)に示すように、駆動電極2及び検出電極3はY1−Y2方向に沿って延出する帯状で形成され、各駆動電極2及び各検出電極3は、X1−X2方向に所定の間隔を空けて並設される。
【0036】
図3(b)に示すように、各駆動電極2及び各検出電極3は、同一の透明基材15上に形成される。透明基材15はPETフィルム等である。
【0037】
図3(a)に示すように、最もX2寄りに形成された駆動電極2のY1側端部2a及びY2側端部2bに補正電極10,11が接続されている。補正電極10,11は、透明基材15上に形成されている。
【0038】
また図3(a)に示すように各駆動電極2は配線層4,5を介して並列回路にて接続されている。
【0039】
電源回路17は、図1(a)(b)で説明した入力部7と接地部8とが各駆動電極2のY1側端部2aとY2側端部2bとの間で切換可能とされている。
【0040】
図3(b)に示すように、駆動電極2、検出電極3、補正電極10,11及び配線層4,5の上方には光学透明粘着層(OCA)18を介してガラスやプラスチック等の透明な操作パネル19が設けられている。図3(b)に示すように、操作パネル19の裏面には、操作画面19aの周囲に額縁状の加飾層21が設けられている。配線層4,5は加飾層21下に位置している。
【0041】
図3(b)に示すように操作パネル19の表面19aが指F等による操作面である。
電源回路17から各駆動電極2に対してパルス駆動電圧が印加されている。電源回路17は、入力側とグランド側とが所定時間間隔で切り換え可能とされている。図3(b)に示すように、操作画面19a上に指Fを当接させたとき、Y1−Y2方向における指Fの位置Pは、上記した数式1で求めることができる。またX1−X2方向の位置Pについては、図3(a)に示す各検出電極3からの出力値に基づいて検出することが可能である。これにより指FのX方向及びY方向の座標位置を検出することができる。
【0042】
図3と異なって各駆動電極2の端部から別々に配線層4,5を引き出すこともできるが、図3のように各駆動電極2を並列に接続することで、配線層4,5を少なく出来、狭額縁化を促進できる。
【0043】
また本実施形態では、全ての駆動電極2に対して補正電極10,11を接続することもできるが、補正電極10,11の設置を限定する場合には、図3(a)(b)に示すように、少なくとも配線層4,5が最も長くなる、最もX2側に設けられた駆動電極2に補正電極10,11を接続することが好適である。
【0044】
これにより配線抵抗が高い配線層4,5が接続された駆動電極2に対して適切に補正を行うことができ、効果的に位置検出精度を向上させることができる。また最もX2側の駆動電極2に対して計測された端部印加電圧VH,VLを基準にして、他の駆動電圧2に対する端部印加電圧VH,VLを距離等から換算して求めることができる。
【0045】
また図4の別の実施形態に示すように、Y2側端部2bに接続された配線層23の長さが短い等により配線抵抗R3が小さくて位置検出の際の前記配線抵抗R3の影響が小さく、一方、Y1側端部2aに接続された配線層24の配線抵抗R4を位置検出の際に無視できないほどであれば、駆動電極2のY1側端部2aにのみ補正電極10を接続することもできる。逆に配線抵抗R3が無視できないほど大きく、配線抵抗R4が小さい場合には図4と異なって、駆動電極2のY2側端部2bにのみ補正電極10を接続する構成もある。
【0046】
補正電極による端部印加電圧の補正タイミングを限定するものでない。例えば電源を立ち上げたときにのみ補正してもよいし、一定時間ごとに補正してもよい。
【0047】
本実施形態における静電容量型入力装置(タッチパネル)1は、携帯電話、携帯用の情報処理装置、携帯用の記憶装置、携帯用のゲーム装置などに適用できる。
【符号の説明】
【0048】
F 指
P1 (指の)位置
1〜R4 配線抵抗
1,V2 出力
VH,VL 端部印加電圧
1 静電容量型入力装置
2 駆動電極
2a Y1側端部
2b Y2側端部
3 検出電極
4、5、23、24 配線層
7 入力部
8 接地部
10、11 補正電極
15 透明基材
17 電源回路
19 操作パネル
19a 操作画面
21 加飾層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に配線層が接続されて駆動電圧が印加される駆動電極と、前記駆動電極と平面方向に間隔を空けて配置された検出電極と、を有し、操作体の近接に伴う容量結合に基づく前記検出電極からの出力により、前記操作体の位置を検出可能としており、
前記駆動電極の前記端部には、前記端部での印加電圧を検出するための補正電極が接続されていることを特徴とする静電容量型入力装置。
【請求項2】
複数の前記駆動電極と複数の前記検出電極とが夫々、交互に間隔を空けて設けられており、少なくとも最も前記配線層の配線長さが長い前記駆動電極に対して前記補正電極が接続されている請求項1記載の静電容量型入力装置。
【請求項3】
前記補正電極は前記駆動電極の両側の前記端部に夫々、接続されている請求項1又は2に記載の静電容量型入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−61746(P2013−61746A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198895(P2011−198895)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】