説明

静電容量型圧力計の取付構造

【課題】 シールリングの締付け時に発生する応力が感圧部に伝達されてダイヤフラム等に歪が発生することを緩和して、長期間使用にかかわらず正確かつ安定よい圧力計測性能を維持できるようにする。
【解決手段】 静電容量型圧力計1におけるケース本体3の感圧ダイヤフラム4側とは反対の端部から外方へ突出させた環状フランジ部5の外側に当接させた押え板部材10側から圧力計取付ブロック2に締付けネジ11をねじ込むことにより、環状フランジ部5を圧力計取付ブロック2側に移動させて金属ガスケット等のシールリング9を締付けて圧力計取付ブロック2に対しシール状態に固定する取付構造において、前記環状フランジ部5のシールリング締付け部位を除く箇所に切り込み溝13を設けて当該箇所に薄肉部5bを形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマスフローコントローラにおけるマスフローセンサに用いられる静電容量型圧力計等のように、ケース本体の一端側に感圧部を有し、他端側にケース本体の外周面より外方へ突出する環状フランジ部を有する静電容量型圧力計を、圧力計取付ブロックに形成された凹状空間内に嵌入させたうえ、その凹状空間を外部にシールした状態に締付け固定してなる静電容量型圧力計の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来より一般的に採用されている静電容量型圧力計の取付構造を示す断面図であり、同図において、1は静電容量型圧力計、2は圧力計取付ブロックである。前記静電容量型圧力計1は、ステンレス鋼などの耐腐食性素材から構成された筒状ケース本体3の一端側に感圧部となるダイヤフラム4が張設されているとともに、このダイヤフラム4裏面の筒状ケース本体3内には該ダイヤフラム4に加わる圧力変位を電気容量の変化として取出すための固定側電極(これは周知であるため、図示を省略する。)が設けられ、かつ、前記筒状ケース本体3の他端側には、該ケース本体3の外周面より外方へ突出する肉厚一定の環状フランジ部5が一体形成されている。
【0003】
一方、前記圧力計取付ブロック2には、前記静電容量型圧力計1におけるケース本体3よりも大径の凹状空間6が形成され、この凹状空間6の底部中央位置には図示省略の流体流路にバイパス接続された流体圧力検出ポート7が開口されているとともに、該凹状空間6の開口端側周面には前記静電容量型圧力計1におけるケース本体3に連なる前記環状フランジ部5の外径とほぼ同一の内径を持つ環状段部8が形成されている。
【0004】
そして、前記静電容量型圧力計1におけるケース本体3を圧力計取付ブロック2の凹状空間6内に、前記ダイヤフラム4が流体圧力検出ポート7に対向するように嵌入させるとともに、前記環状フランジ部5と環状段部8との対向面間に金属ガスケット等のシールリング9を介在させたうえ、環状フランジ部5の外側には環状の押え板部材10を当接させ、この環状押え板部材10の周方向に等間隔を隔てて形成の貫通孔10aに挿通させた複数本の締付けボルト(締付けネジ)11を前記圧力計取付ブロック2における凹状空間6周りに形成の複数個の雌ねじ孔12にねじ込むことにより、前記環状フランジ部5で前記シールリング9を押圧し該シールリング9を環状フランジ部5と環状段部8との対向面に密着させて前記凹状空間6を外部に対しシールした状態で静電容量型圧力計1を圧力計取付ブロック2に締付け固定している。
【0005】
上記のような取付構造が採用された静電容量型圧力計1によれば、前記流体圧力検出ポート7の流体圧力がダイヤフラム4に加わると、このダイヤフラム4が圧力に比例して変位し、その圧力変位を電気容量の変化として取出し、当該圧力計とは別に設けられている回路で処理することにより、流体の圧力が計測される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記した従来の静電容量型圧力計の取付構造においては、締付けボルト11のねじ込みに伴う締付け力によって環状フランジ部5に応力が発生する。特に、凹状空間6内からの微小な流体漏洩を確実に防止するために、シールリング9として、SUS製のOリングやC形シール等の金属ガスケットを用いる場合は、大きな締付け力が必要であり、そのため、環状フランジ部5には非常に大きな応力が発生することになる。このように環状フランジ部5に大きな締付け応力が発生すると、その締付け応力が感圧部に伝わってダイヤフラム4が微小変形するなどして機械的な歪を生じ、その結果、圧力計測値に誤差が出たり、さらに周囲温度の変動に伴うドリフトによって圧力計測値が経時的に変化するなど長期に亘り安定した圧力計測性能を維持することができないという問題があった。
【0007】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、極く簡単な構造改良を施すだけで締付け応力が感圧部に伝わることを緩和して、長期間使用にかかわらず、常に正確かつ安定よい圧力計測性能を維持することができる静電容量型圧力計の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る静電容量型圧力計の取付構造は、ケース本体の一端側に感圧部を有し、他端側にケース本体の外周面より外方へ突出する環状フランジ部を有する静電容量型圧力計を、圧力計取付ブロックに形成した凹状空間内に、前記感圧部が凹状空間底部に開口接続された圧力検出ポートに対向するように嵌入させるとともに、前記環状フランジ部と前記凹状空間の開口端側周面に形成された段部との間にシールリングを介在させたうえ、前記環状フランジ部の外側に当接させた押え板部材側から圧力計取付ブロックに締付けネジをねじ込むことにより、前記環状フランジ部を圧力計取付ブロックに対してシール状態に締付け固定してなる静電容量型圧力計の取付構造であって、前記環状フランジ部のシールリング締付け部位を除く箇所に、切り込み溝を設けて当該箇所に薄肉部を形成してあることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
上記のような特徴構成を採用した本発明によれば、締付けネジのねじ込みによって環状フランジ部を圧力計取付ブロックに対して締付けたときに発生する応力を薄肉部で緩和して、その締付け応力が環状フランジ部およびケース本体を経て感圧部に伝わることを無くする、あるいは、極減することが可能である。このような応力緩和作用によりダイヤフラムが微小変形するなどの歪の発生を防ぎ、圧力計測値の誤差の発生、さらには、周囲温度の変動に伴うドリフトに起因する圧力計測値の経時的な変化もなくして、長期間使用にかかわらず、常に正確かつ安定よい圧力計測性能を維持することができる。しかも、環状フランジ部の一部に切り込み溝を設けるといった極く簡単な構成改良を施すのみでよく、上述のような安定かつ高精度計測性能を発揮する取付構造を安価に提供することができるという効果を奏する。
【0010】
本発明に係る静電容量型圧力計の取付構造において、シールリングとしては、弾性ゴム製のOリングを使用してもよいが、特に、請求項2に記載のように、金属ガスケットを使用する場合に有効である。すなわち、金属ガスケットを使用する場合は、大きな締付け力を必要とし、その大きな締付け力によって環状フランジ部に発生する応力も非常に大きくなるが、その非常に大きな応力であってもそれを薄肉部で緩和することが可能であり、したがって、金属ガスケットの使用による流体の微小な漏洩防止性能と、正確かつ安定よい圧力計測性能との両立を達成することができる。
【0011】
また、本発明に係る静電容量型圧力計の取付構造において、前記環状フランジ部に形成される薄肉部が、請求項3に記載のように、締付けネジによる最大締付け圧力に耐応するに足りる以上の強度を有する厚さに構成されていることが望ましい。このように構成することによって、最大締付け圧力が作用しても環状フランジ部5が薄肉部5bで変形することを防止できるとともに、静電容量型圧力計を高真空条件下で使用する際に必要な耐圧強度も十分に確保しつつ、上述したとおりの優れた圧力計測性能を長期に亘り安定維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る静電容量型圧力計の取付構造を示す断面図であり、同図において、図4に示す従来の取付構造と相違する点は、静電容量型圧力計1におけるケース本体3に一体に連ねて該ケース本体3の外周面より外方へ突出する環状フランジ部5のうち、金属ガスケット等のシールリング9の締付け部位5aを除く箇所に、圧力計取付ブロック2に形成の凹状空間6に向けて開口する切り込み溝13を設けて当該箇所に環状の薄肉部5bを形成したものである。
【0013】
前記環状フランジ5の薄肉部5bは、締付けネジ11のねじ込みによって前記シールリング9を最大限強力に締め付けたときの最大締付け圧力に耐応するに足りる強度以上の強度を有する厚さに構成されている。その他の構成は、図4に示す従来のものと同様であるため、同一部材及び同一部位にそれぞれ同一の符号を付して、それらの説明を省略する。
【0014】
上記のように環状フランジ部5の一部に切り込み溝13による薄肉部5bを形成した静電容量型圧力計1の取付構造においては、締付けネジ11のねじ込みによって環状フランジ部5を圧力計取付ブロック2に対して強力に締付けたときに発生する応力を薄肉部5bで緩和して、大きな締付け応力がダイヤフラム4を含む感圧部分に伝わることを無くする、あるいは、極減することが可能であるから、締付け時にダイヤフラム4が微小変形するなどして機械的な歪を発生することを防ぎ、圧力計測値の誤差の発生、さらには、周囲温度の変動に伴うドリフトに起因する圧力計測値の経時的変化もなくして、長期間使用した後においても、常に正確かつ安定よい圧力計測性能を発揮させることができる。
【0015】
なお、上記実施の形態では、環状フランジ部5の締付け部位5aを除く箇所に圧力計取付ブロック2に形成の凹状空間6に向けて開口する切り込み溝13を設けたものについて説明したが、図2に示すように、環状フランジ部5の締付け部位5aを除く箇所に外部(図面上で上方)に向けて開口する切り込み溝13を設けてその箇所を薄肉部5bに形成してもよく、また、図3に示すように、環状フランジ部5の締付け部位5aを除く箇所に該環状フランジ部5の厚み方向の両側(図面上で上下両方向)に向けて開口する二つの切り込み溝13,13を設けて環状フランジ部5の厚みの中間位置に薄肉部5bを形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る静電容量型圧力計の取付構造の実施の形態を示す断面図である。
【図2】本発明に係る静電容量型圧力計の取付構造の他の実施の形態を示す要部の拡大断面図である。
【図3】本発明に係る静電容量型圧力計の取付構造のもう一つの実施の形態を示す要部の拡大断面図である。
【図4】従来より採用されている静電容量型圧力計の取付構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 静電容量型圧力計
2 圧力計取付ブロック
3 ケース本体
4 ダイヤフラム(感圧部)
5 環状フランジ部
5a 締付け部位
5b 薄肉部
6 凹状空間
7 流体圧力検出ポート
8 段部
9 シールリング
10 押え板部材
11 締付けネジ
13 切り込み溝



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース本体の一端側に感圧部を有し、他端側にケース本体の外周面より外方へ突出する環状フランジ部を有する静電容量型圧力計を、圧力計取付ブロックに形成した凹状空間内に、前記感圧部が凹状空間底部に開口接続された流体圧力検出ポートに対向するように嵌入させるとともに、前記環状フランジ部と前記凹状空間の開口端側周面に形成された段部との間にシールリングを介在させたうえ、前記環状フランジ部の外側に当接させた押え板部材側から圧力計取付ブロックに締付けネジをねじ込むことにより、前記環状フランジ部を圧力計取付ブロックに対してシール状態に締付け固定してなる静電容量型圧力計の取付構造であって、
前記環状フランジ部のシールリング締付け部位を除く箇所に、切り込み溝を設けて当該箇所に薄肉部を形成してあることを特徴とする静電容量型圧力計の取付構造。
【請求項2】
前記シールリングとして、金属ガスケットを使用してある請求項1に記載の静電容量型圧力計の取付構造。
【請求項3】
前記薄肉部が、締付けネジによる最大締付け圧力に耐応するに足りる以上の強度を有する厚さに構成されている請求項1または2に記載の静電容量型圧力計の取付構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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