説明

静電容量式タッチパネル

【課題】入力操作位置の検出精度が高い静電容量式タッチパネルを提供する。
【解決手段】入力操作面に積層される均一導電層と基準ノードの電位を固有周波数fで振動させ、信号検出回路において、基準ノードに対して相対的に各検出電極に現れる固有周波数fの固有発振信号を検出し、各信号電圧を比較して入力操作位置を検出する。入力待機状態では、固有周波数fの固有発振信号の信号電圧が検出されないので、入力操作体の接近により各検出電極に現れる信号電圧を精度良く検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁保護層を介して絶縁パネル上の導電層に入力操作体を接近させる入力操作の入力操作位置を検出する静電容量式タッチパネルに関し、更に詳しくは、単位長さあたりの抵抗値が一定の均一導電層の周囲に複数の検出電極が接続され、各検出電極に現れる信号電圧を比較して入力操作位置を検出する表面型静電容量式タッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器、携帯電話機等の上位機種へ入力操作位置を示す位置座標を入力するポインティングデバイスとして、絶縁性基板上の入力操作面に合成樹脂、ガラス等の絶縁保護層で覆われた導電層が形成され、絶縁保護層による静電容量を介して導電層に接近する指などの入力操作体の入力操作位置を検出する静電容量式タッチパネルが知られている。この静電容量式タッチパネルは、絶縁性基板とその表面に積層する導電層及び絶縁保護層を透明材料で形成することができるので、液晶表示装置などのディスプレー上に配置し、ディスプレーに表示されるアイコンを見ながら、入力やカーソルの移動操作を行うことができ、また、硬質の絶縁性基板によってディスプレーを機械的な外力から保護できる。
【0003】
静電容量式タッチパネルは、更に絶縁性基板上の検出方向に沿って複数の検出電極パターンを配置し、入力操作体が接近して静電容量が増加する検出電極パターンの配設位置から入力操作位置を検出する投影型と、入力操作面の表面に均一導電層をむらなく形成し、入力操作体に流れる固有発振信号を均一導電層の四隅に接続する検出電極においてその信号レベルを比較して、入力操作位置を検出する表面型(特許文献1)とに分かれる。
【0004】
投影型は、入力操作面が大型化すると、それに応じて検出電極パターン数も増大し、全てを走査して入力操作位置を検出するための検出時間が延びるので、入力操作面が大型化したタッチパネルでは、表面型静電容量式タッチパネルが用いられている。以下、特許文献1に記載の表面型静電容量式タッチパネル100を、図5を用いて説明する。
【0005】
この従来の表面型静電容量式タッチパネル100は、絶縁性基板101表面の入力操作面に単位長さあたりの抵抗値が一定の均一な透明導電層102が形成されている。透明導電層102の周囲の4隅には、検出電極103a、〜103dが接続され、また、表面の全体は絶縁保護層104によって覆われている。各検出電極103a、〜103dには、検出電極103a、〜103dに流れる信号電流Ia、〜Idを検出する電流検出回路105と、所定の基準ノード(例えば、タッチパネル100内に配線されたグランドパターン)106の電位に対して検出電極103a、〜103dへ所定周波数の交流電圧を印加するAC電源107が接続されている。
【0006】
従って、各検出電極103a、〜103dと透明導電層102の電位は、AC電源107から出力される交流電圧の電位で変動している。図示するように、入力操作体である指110を入力操作面に接近させて入力操作を行うと、絶縁保護層104の静電容量を介して透明導電層102の入力操作位置から指110に微少電流Iが流れる。この微少電流Iは、各検出電極103a、〜103dに流れる信号電流Ia、〜Idの総和であり、各検出電極103a、〜103dに接続する電流検出回路105やAC電源106の回路定数を同一とすれば、信号電流Ia、〜Idは、各検出電極103a、〜103dと入力操作位置間の距離に比例する透明導電層102の抵抗値Ra、〜Rdによって分流される。
【0007】
図示するXY方向の入力操作位置(x、y)は、例えば、k1、k2を定数として、
x=k1+k2・(Ib+Ic)/(Ia+Ib+Ic+Id)・・・(1)式と、
y=k1+k2・(Ia+Ib)/(Ia+Ib+Ic+Id)・・・(2)式とから得られるので、電流検出回路105を用いて信号電流Ia、〜Idを検出し、(1)式と(2)式を用いて入力操作位置(x、y)が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−262626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に例示される従来の静電容量式タッチパネル100では、入力操作面に接近させて入力操作体110に流れる電流Iは、インピーダンスが極めて高い操作者や操作者108と基準ノード106間をも流れるので、微小値であり、各検出電極103a、〜103dに流れる信号電流Ia、〜Idは、更にその微少電流Iが分流されたものなので、電流検出回路105によりその値を正確に検出することが困難であった。
【0010】
また、入力操作が行われていない状態であっても、透明導電層102はAC電源106から出力される交流電圧の電位で変動しているので、その表面から放射電磁波が放射され、放射電流が流れることによって電流検出回路105では、常時一定量の待機電流Ia’、〜Id’を検出している。従って、信号電流Ia、〜Idは、電流検出回路105で実際に検出した電流値と、この待機電流Ia’、〜Id’との差分から求める必要があり、入力操作体を接近させる入力操作自体や入力操作位置の検出精度が低下する原因となっていた。
【0011】
更に、各検出電極103a、〜103dを介して透明導電層102に交流電圧を印加するので、入力操作体が接近することにより各検出電極103a、〜103dに重畳して現れる信号電圧を検出することが困難であり、電流検出回路105により、信号電流Ia、〜Idを検出している。しかしながら、電流値自体の検出は困難であり、信号電流Ia、〜Idは、マイコンなどによる(1)式や(2)式を用いた演算処理にも不向きであるので、電流検出回路105では、結局、内部抵抗に信号電流Ia、〜Idを流して、信号電流Ia、〜Idを内部抵抗の両端の電圧に変換する複雑な構成とする必要があった。
【0012】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、入力操作自体や入力操作位置の検出精度が高い静電容量式タッチパネルを提供することを目的とする。
【0013】
また、電流検出回路を用いない簡単な構成で、入力操作位置が検出できる静電容量式タッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的を達成するため、請求項1の静電容量式タッチパネルは、入力操作面に、単位長さあたりの抵抗値が一定の均一導電層と均一導電層を覆う絶縁保護層が積層された絶縁性基板と、均一導電層の周囲の互いに離間する位置で均一導電層に接続された複数の検出電極と、固有周波数fの固有発振信号を出力し、均一導電層の電位を固有周波数fで振動させる信号出力回路と、基準ノードに対する各検出電極の電圧から、各検出電極に現れる固有発振信号の信号電圧を検出する信号検出回路とを備え、入力操作面へ入力操作体を接近させる入力操作の入力操作位置を、各検出電極について検出した固有発振信号の信号電圧と、各検出電極の均一導電層への接続位置とから検出する静電容量式タッチパネルであって、一方を接地若しくは定電位とした低圧基準電源線と高圧基準電源線を配線した基準電源回路と、基準電源回路の低圧基準電源線と高圧基準電源線間に直流電圧を出力する直流電源と、低圧振動電源線と高圧振動電源線を配線した振動電源回路と、低圧基準電源線と低圧振動電源線間に接続され、固有周波数fの固有発振信号に対してハイインピーダンスとなる第1インダクタと、高圧基準電源線と高圧振動電源線間に接続され、固有周波数fの固有発振信号に対してハイインピーダンスとなる第2インダクタと、を更に備え、全ての検出電極と基準ノードを、低圧振動電源線又は高圧振動電源線に接続するとともに、信号出力回路と信号検出回路を振動電源回路に接続し、第1インダクタと第2インダクタを介した直流電源の出力で駆動し、信号出力回路から出力される固有発振信号を、キャパシタを介して基準電源回路の低圧基準電源線と高圧基準電源線へ出力し、各検出電極が接続する均一導電層と信号検出回路の基準ノードの電位を固有周波数fで振動させることを特徴とする。
【0015】
基準電源回路と振動電源回路は、固有周波数fの固有発振信号に対してハイインピーダンスとなる第1インダクタと第2インダクタを介して接続するので、固有発振信号を基準電源回路へ出力すると、基準電源回路と振動電源回路間の電圧は、固有発振信号の固有周波数fで相対的に変動する。基準電源回路の低圧基準電源線と高圧基準電源線の一方は、接地若しくは定電位であるので、基準電源回路の電位は安定し、振動電源回路の電位が固有周波数fで変動する。従って、入力操作体が接近しない待機状態では、低圧振動電源線又は高圧振動電源線に接続する全ての検出電極と基準ノード間も等電位若しくは定電圧で固有周波数fで振動し、信号検出回路で検出する各検出電極の電圧に、固有周波数fの固有発振信号は現れない。一方、接地若しくは定電位にある入力操作体が、固有周波数fで振動する均一導電層に接近すると、基準ノードの電位に対し相対的に入力操作体が固有周波数fで振動するので、各検出電極に固有周波数fの固有発振信号が現れる。固有発振信号は、入力操作位置と各検出電極間の距離に応じて減衰するので、各検出電極に現れる固有周波数fの固有発振信号の信号電圧と各検出電極の配置位置から入力操作の入力操作位置が検出される。
【0016】
請求項2の静電容量式タッチパネルは、基準電源回路と振動電源回路間の第1インダクタと第2インダクタの合成インダクタンスをL/2、信号出力回路と基準電源回路の低圧側電源線間及び信号出力回路と基準電源回路の高圧側電源線間にそれぞれ介在されるキャパシタの合成キャパシタンスを2Cとしたときに、固有発振信号の固有周波数fを、
f=1/[2π(LC)1/2
とすることを特徴とする。
【0017】
基準電源回路と振動電源回路間の第1インダクタ及び第2インダクタと、信号出力回路と基準電源回路間のキャパシタは、直列に接続され、固有周波数fが1/[2π(LC)1/2]の固有発振信号が流れると、直列共振し、固有発振信号の電圧Viに対して振動する振動電源回路の電圧Voは、理論上無限大となる。従って、振動電源回路に接続する均一導電層の電位を拡大させて振動させることができ、相対的に入力操作体側に発生する固有発振信号の電流値が微小であっても、検出電極に現れる固有発振信号の信号電圧を検出容易なレベルに拡大させることができる。
【0018】
請求項3の静電容量式タッチパネルは、信号出力回路は、振動電源回路に接続して直流電源の出力で駆動するマイクロプロセッサで構成され、マイクロプロセッサを動作させるクロックの周波数fckを分周若しくは倍周して固有周波数fの固有発振信号を出力することを特徴とする。
【0019】
マイクロプロセッサを動作させるクロックの周波数fckを分周若しくは倍周して固有周波数fの固有発振信号とするので、マイクロプロセッサに簡単な分周回路若しくは倍周回路を加えるだけで、信号出力回路を兼ねて固有発振信号を出力できる。
【0020】
また、マイクロプロセッサにより、固有発振信号の固有周波数fや振幅を調整できる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明によれば、入力操作面側の均一導電層を固有周波数fで振動させて、相対的に入力操作体に固有周波数fの固有発振信号を発生させるので、操作者の入力操作体側で、固有周波数fの固有発振信号を出力する信号出力回路を用意する必要がない。
【0022】
入力操作の待機状態では、各検出電極と信号検出回路の基準ノード間の電位が定電圧に保たれるので、入力操作体が均一導電層に接近して各検出電極に現れる固有発振信号の信号電圧を、信号検出回路により、固有周波数fで振動する電圧から検出できる。従って、複雑構成の電流検出回路を用いて検出電極に流れる信号電流から信号電圧に変換する必要がない。
【0023】
また、入力操作体が入力操作面に接近しない状態で、信号検出回路で検出する各検出電極の電圧に、固有周波数fの固有発振信号は現れないので、入力操作体が接近して、各検出電極の電圧に現れる固有周波数fの固有発振信号の信号電圧を精度良く検出できる。
【0024】
また、直流電源が接続する基準電源回路と検出電極が接続する振動電源回路とを、絶縁型DC−DCコンバータなどの高価な絶縁部品を用いずに分離して、振動電源回路を独立に電圧変動させることができる。
【0025】
請求項2の発明によれば、固有発振信号が操作者と絶縁保護層を流れ、相対的に入力操作体に現れる固有発振信号の電流値が微小であっても、固有周波数fを調整して、検出電極に現れる固有発振信号の信号電圧を精度良く検出可能な電圧に調整できる。
【0026】
請求項3の発明によれば、固有周波数fの固有発振信号をマイクロプロセッサを動作させるクロックから生成することができ、信号出力回路をマイクロプロセッサと別に設ける必要がない。
【0027】
また、使用環境やインダクタ、キャパシタの回路定数に応じて調整する固有発振信号の固有周波数fや振幅を、マイクロプロセッサから容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態に係る静電容量式タッチパネル1を示すブロック図である。
【図2】静電容量式タッチパネル1の電源回路の等価回路図である。
【図3】静電容量式タッチパネル1の縦断面図である。
【図4】静電容量式タッチパネル1の平面図である。
【図5】従来の静電容量式タッチパネル100の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施の形態に係る静電容量式タッチパネル(以下、タッチパネルという)1を、図1乃至図4を用いて説明する。タッチパネル1は、図1に示すように、タッチパネル1を構成する主要回路部品が2種類の非振動側回路基板2と振動側回路基板3に分けて搭載されている。
【0030】
非振動回路基板2には、接地電位とした低圧基準電源線GNDと高圧基準電源線VCCとからなる基準電源回路4が配線され、低圧基準電源線GNDと高圧基準電源線VCC間に直流電圧Vccを印加するDC電源5が接続されている。これにより、非振動回路基板2に搭載されるインターフェース回路6等の各回路部品を基準電源回路4に接続し、DC電源5の出力電圧Vccにより駆動させている。
【0031】
また、振動側回路基板3には、低圧振動電源線SGNDと高圧振動電源線SVCCとからなる振動電源回路7が配線されている。低圧振動電源線SGNDは低圧基準電源線GNDと、高圧振動電源線SVCCは高圧基準電源線VCCと、それぞれコイル8、9を介して接続している。コイル8とコイル9のインダクタンスは、いずれも後述する固有周波数fの固有発振信号SGに対してハイインピーダンスとなる値に設定され、ここでは、同一のインダクタンスLのコイル8、9を用いている。これにより、図1に示すように、基準電源回路4の低圧基準電源線GNDと高圧基準電源線VCCへ、固有周波数fの固有発振信号SGを同期させて出力すると、基準電源回路4の低圧基準電源線GNDが接地されて安定した電位にあるので、振動電源回路7の低圧振動電源線SGNDと高圧振動電源線SVCCの電位が、同期して固有周波数fで変動し、両者間の電圧は、基準電源回路4と同じ直流出力電圧Vccとなる。
【0032】
振動電源回路7が配線された振動側回路基板3には、図1に示す4種類の検出電極E1E2、E3、E4が、振動電源回路7の低圧振動電源線SGNDと高圧振動電源線SVCCのいずれかの、ここでは高圧振動電源線SVCCに接続している。
【0033】
4種類の検出電極E1E2、E3、E4は、図3、図4に示すように、矩形状絶縁性基板11の入力操作面となる表面全体に形成された均一導電層21の4隅にそれぞれ接続し、均一導電層21を高圧振動電源線SVCCの電位としている。矩形状絶縁性基板11は、上述の振動側回路基板3の一部であっても良いが、ここでは、振動側回路基板3と別に設けている。均一導電層21は、絶縁性基板11の表面に10乃至均一の厚みの薄膜として形成され、絶縁性基板11の表面に沿った単位長さあたりの抵抗値を一定としている。均一導電層21の更に表面全体は、均一導電層21が変形したり損傷してその抵抗値が変化しないように、絶縁保護層22により覆われている。
【0034】
このように構成されたタッチパネル1を液晶表示素子等の表示装置上に配置して、タッチパネル1を通して表示装置の表示が目視できるように、絶縁性基板11、検出電極E、均一導電層21及び絶縁保護層22は、透明材料で形成される。
【0035】
振動側回路基板3には、更に、アナログマルチプレクサ12、信号検出回路13、A/Dコンバータ14、信号出力回路を兼ねたMPU(マイクロプロセッサユニット)10及び発振回路15の各回路素子が搭載され、いずれも振動電源回路7の低圧振動電源線SGNDと高圧振動電源線SVCCに接続し、DC電源5から出力電圧Vccを受けて動作している。また、信号検出回路13で各検出電極Eの電圧を比較する基準ノードも、振動電源回路7の低圧振動電源線SGNDと高圧振動電源線SVCCのいずれかの、ここでは高圧振動電源線SVCCに接続している。
【0036】
各検出電極E1、E2、E3、E4は、アナログマルチプレクサ12の4種類の入力に接続し、アナログマルチプレクサ12は、MPU10からの切り替え制御により、一定の走査周期で各検出電極E1、E2、E3、E4を図示しない増幅回路を介して信号検出回路13へ切り換え接続する。
【0037】
信号検出回路13は、固有発振信号SGの固有周波数fを中心とする周波数帯域の信号を通過させることにより、直流信号等の低周波成分とコモンモードノイズ等の高周波ノイズをカットするバンドパスフィルタと、バンドパスフィルタから出力される固有発振信号SGの基準ノードに対する信号電圧を検出するオペアンプを利用した積分回路とからなっている。
【0038】
バンドパスフィルタの出力は、プルアップ抵抗によりプルアップされると共に、低圧振動電源線SGNDの方向を順方向とするダイオードでクランプされ、積分回路を構成するオペアンプの反転入力端子に接続している。これにより、バンドパスフィルタから出力される固有発振信号SGは、基準ノードにダイオードの順電圧を加えた電位に、交流信号波形の最下点(最低電位)がクランプされ、オペアンプの反転入力端子に入力される。一方、オペアンプの非反転入力端子の基準電位も、基準ノードの電位に上記ダイオードの順電圧に相当する直流電圧を加えた電圧を加えて、反転入力端子のクランプした電位に一致させている。これにより、オペアンプの出力電圧は、経過時間とともに、固有発振信号SGの振幅(信号電圧)に比例して上昇するので、積分回路のリセット時から一定時間経過後のオペアンプの出力電圧を、固有発振信号SGの振幅を拡大させた信号電圧として検出できる。
【0039】
信号検出回路13が検出した固有発振信号SGの信号電圧は、MPU10において演算処理を実行するために、A/Dコンバータ14で、固有周波数fの少なくとも2倍以上の周波数でサンプリングされ、量子化データとしてMPU10へ出力される。
【0040】
A/Dコンバータ14から出力される量子化データは、その時にアナログマルチプレクサ12が選択接続した検出電極Eに現れる固有発振信号SGの信号電圧を二値化して表すので、MPU10では、一走査周期にA/Dコンバータ14から出力された各検出電極E1、E2、E3、E4に現れる信号電圧の総和を所定の閾値と比較し、所定の閾値以上である場合に、入力操作体である操作者の指20が入力操作面に接近して固有発振信号SGが検出電極Eに現れたものとして、入力操作と判定する。
【0041】
また、入力操作と判定した後は、一走査周期に入力された各検出電極E1、E2、E3、E4に現れる個々の信号電圧を比較し、後述する方法で、指20が接近する入力操作面上の入力操作位置(x,y)を検出する。MPU10で検出した入力操作位置(x,y)を含む入力操作データは、直流が絶縁された信号線16を介して、非振動回路基板2に搭載されるインターフェース回路6に出力され、インターフェース回路6からUSB通信、IC通信等で入力操作データを利用する上位機器に出力される。
【0042】
発振回路15は、固定周波数fckのクロックCKを、アナログマルチプレクサ12、信号検出回路13、A/Dコンバータ14、MPU10へ出力し、これらの回路による上述した一連の動作の同期をとっている。
【0043】
MPU10は、固有発振信号SGの固有周波数fを基準電源回路4の低圧基準電源線GNDと高圧基準電源線VCCへ出力する信号出力回路としても作用し、ここでは、MPU10から、有周波数fが187kHz、振幅(ピーク間の電圧Vp−p)が5Vの固有発振信号SGが出力される。固有発振信号SGの固有周波数fは、発振回路15から入力されるクロックCKの周波数fckを分周若しくは倍周し、また、振幅(信号電圧)は、低圧振動電源線SGNDと高圧振動電源線SVCC間の電圧Vccを昇圧若しくは降圧して、任意に調整することができる。
【0044】
固有発振信号SGを出力するMPU10の出力は、二股に分岐しそれぞれコンデンサ17、18を介して基準電源回路4の低圧基準電源線GNDと高圧基準電源線VCCに接続している。コンデンサ17とコンデンサ18は、電源線の直流電圧を遮断する目的で介在させるので、それぞれのキャパシタンスは任意であるが、ここでは、同一のキャパシタンスCのコンデンサ17、18を用いている。
【0045】
固有周波数fの固有発振信号SGが基準電源回路4と振動電源回路7に流れる場合に、低圧基準電源線GNDと高圧基準電源線VCC間及び低圧振動電源線SGNDと高圧振動電源線SVCC間が近接して配線され、固有周波数fの帯域でこれらの電源線間は短絡しているとすれば、図1の基準電源回路4と振動電源回路7は、図2の等価回路図で示される。
【0046】
図2に示すように、MPU10の出力と基準電源回路4間には、並列にキャパシタンスCのコンデンサ17、18が接続されているので、その合成キャパシタンスは、2Cであり、また、基準電源回路4と振動電源回路7間に並列に接続されるコイル8、9の合成インダクタンスは、L/2となる。これらのキャパシタとインダクタは、固有周波数fの固有発振信号SGが流れる閉回路において直列に接続され、固有発振信号SGの振幅(レベル)をVi、コイル8、9両端の基準電源回路4と振動電源回路7間の電圧をVo、2πfで表される角速度をω(rad/sec)とすれば、
Vo=[ωLC/(ωLC−1)]Vi・・・(3)式
で表される。
ここで、図2に示す回路は、ωLC=1で直列共振し、そのときの周波数fは、
=1/[2π(LC)1/2]・・・(4)式
となる。
【0047】
つまり、(4)式関係から得られる共振周波数fを、固有発振信号SGの固有周波数fとすれば、固有発振信号SGの信号電圧に対して、(3)式から理論上振動電源回路7の電位が無限大で振動し、振動電源回路7に接続する検出電極Eと均一導電層21の電位も無限大に振動させることができる。その結果、絶縁保護層22を介した均一導電層21と指20との間の静電容量が微小で、入力操作者と振動電源回路7間のインピーダンスが極めて高くても、検出電極Eと指20間に現れる信号電圧を理論上無限大まで任意に拡大することができるので、検出電極Eに現れる固有発振信号SGの信号電圧を、信号検出回路14により検出可能なレベルまで引き上げることができる。
【0048】
例えば、図1に示すタッチパネル1において、コイル8、9のインダクタンスが220μH、コンデンサ17、18のキャパシタンスが330pFであるとして、固有発振信号SGの振幅(Vp−p)が5Vで固有周波数fが187kHzをMPU10から出力すると、振動電源回路7と振動電源回路7に接続する検出電極Eは、4倍の20Vの振幅(Vp−p)で振動することが実測された。
【0049】
実際のタッチパネル1では、基準電源回路4と振動電源回路7のインダクタンス、浮遊容量などの影響から、(4)式から得る周波数fで共振せず、また、基準電源回路4と振動電源回路7に固有発振信号SGが流れる際のエネルギーロス等により、振動電源回路7は、固有発振信号SGのレベルに対して有限倍率に拡大された振幅で電位が振動する。一方、操作者の指20を介して大電流の固有発振信号SGを流すことはできないので、固有発振信号SGの固有周波数fを共振周波数fから外したり、MPU10から出力する固有発振信号SGの振幅を調整し、検出電極Eに現れる信号電圧の上限を、入力操作位置(x,y)を確実に検出できる信号電圧の範囲内としている。
【0050】
このように構成されたタッチパネル1により、指20の入力操作位置を検出する動作を以下に説明する。入力操作が行われない待機状態で、均一導電層21に接続する検出電極Eは、その電位が固有周波数fで振動するが、信号検出回路14も等電位差で共に固有周波数fで振動するので、信号検出回路14のバンドパスフィルタを通過する信号はない。積分回路を構成するオペアンプの一対の入力も共に、低圧振動電源線SGNDに接続する基準ノードに対してダイオードの順電圧Vfを加えた等電位となっているので、オペアンプの出力電圧は所定期間後も上昇せず、固有発振信号SGの信号電圧は検出されない。従って、一走査周期に信号検出回路14から出力される信号電圧の総和も所定の閾値未満であり、入力操作が行われていないと判定される。
【0051】
入力操作により入力操作面の均一導電層21に指20が接近すると、全ての検出電極Eが高圧振動電源線SVCCに接続することにより、均一導電層21の電位が固有周波数fで振動するのに対し、足下などの一部が接地している操作者の指20の電位は定電位であるので、図3に示すように、指20が接近する均一導電層21の位置(入力操作位置)から絶縁保護層22を介して指20へ固有周波数fの固有発振信号SGが出力される。これを、固有周波数fで振動する信号回路側回路基板3の各素子からみれば、指20から出力される固有周波数fの固有発振信号が均一導電層21の入力操作位置(x,y)に入力されたものとして現れ、振動電源回路7で駆動する信号検出回路13において、各検出電極Eに現れる固有周波数fの固有発振信号SGが検出される。従って、一走査周期に信号検出回路14から出力される信号電圧の総和が所定の閾値以上となった場合に、入力操作が行われたと判定し、次にその入力操作位置(x,y)を検出する。
【0052】
各検出電極Eに現れる固有発振信号SGの信号電圧は、各検出電極E1、E2、E3、E4から入力操作位置(x,y)までの距離に依存する。すなわち、各検出電極Eに現れる固有発振信号SGの信号電圧は、各検出電極Eと基準ノード間の内部抵抗r0と各検出電極Eと入力操作位置(x,y)間の抵抗値rの和に反比例し、図4に示す各検出電極E1、E2、E3、E4から入力操作位置(x,y)までの均一導電層21の抵抗値r1、r2、r3、r4は、その間の距離Lにほぼ比例するので、一走査周期にMPU10に入力された各検出電極E1、E2、E3、E4の信号電圧から、入力操作面の4隅の各検出電E1、E2、E3、E4から入力操作位置(x,y)までの距離Lを算出し、指20が接近する入力操作面上の入力操作位置(x,y)を検出する。
【0053】
上述の実施の形態では、4つの検出電極E1、E2、E3、E4を入力操作面の4隅に配置しているが、その数や配置位置は上述の例限らず、例えば、直線上の入力操作位置を検出する場合には、直線方向に沿って一対の検出電極Eを配置すればよい。
【0054】
また、PMU10に兼ねた信号出力回路は、振動電源回路7に接続して駆動するものであれば、振動側回路基板3にMPU10と別に搭載するものであってもよい。
【0055】
また、入力操作体20は、操作者が入力操作を行う指20で説明したが、操作者が握る専用入力ペンなど操作者と別の操作体であってもよい。
【0056】
また、低圧基準電源線GNDを接地させて基準電源回路4を定電位としたが、定電位とする手段は、この方法に限らず、低圧基準電源線GNDと高圧基準電源線VCCを入力操作者の指20や入力操作体に対して一定の電位に保たれれば、その方法は任意である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、絶縁保護層を介して非接触で入力操作体の入力操作位置を検出する静電容量式タッチパネルに適している。
【符号の説明】
【0058】
1 静電容量式タッチパネル
4 基準電源回路
5 直流電源(DC電源)
7 振動電源回路
8 第1インダクタ
9 第2インダクタ
10 信号出力回路(MPU)
11 絶縁性基板
13 信号検出回路
17 キャパシタ
18 キャパシタ
20 入力操作体(指)
21 均一導電層
22 絶縁保護層
E 検出電極
GND 低圧基準電源線
VCC 高圧基準電源線
SGND 低圧振動電源線
SVCC 高圧振動電源線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力操作面に、単位長さあたりの抵抗値が一定の均一導電層と均一導電層を覆う絶縁保護層が積層された絶縁性基板と、
均一導電層の周囲の互いに離間する位置で均一導電層に接続された複数の検出電極と、
固有周波数fの固有発振信号を出力し、均一導電層の電位を固有周波数fで振動させる信号出力回路と、
基準ノードに対する各検出電極の電圧から、各検出電極に表れる固有発振信号の信号電圧を検出する信号検出回路とを備え、
入力操作面へ入力操作体を接近させる入力操作の入力操作位置を、各検出電極について検出した固有発振信号の信号電圧と、各検出電極の均一導電層への接続位置とから検出する静電容量式タッチパネルであって、
一方を接地若しくは定電位とした低圧基準電源線と高圧基準電源線を配線した基準電源回路と、
基準電源回路の低圧基準電源線と高圧基準電源線間に直流電圧を出力する直流電源と、
低圧振動電源線と高圧振動電源線を配線した振動電源回路と、
低圧基準電源線と低圧振動電源線間に接続され、固有周波数fの固有発振信号に対してハイインピーダンスとなる第1インダクタと、
高圧基準電源線と高圧振動電源線間に接続され、固有周波数fの固有発振信号に対してハイインピーダンスとなる第2インダクタと、を更に備え、
全ての検出電極と基準ノードを、低圧振動電源線又は高圧振動電源線に接続するとともに、信号出力回路と信号検出回路を振動電源回路に接続し、第1インダクタと第2インダクタを介した直流電源の出力で駆動し、
信号出力回路から出力される固有発振信号を、キャパシタを介して基準電源回路の低圧基準電源線と高圧基準電源線へ出力し、各検出電極が接続する均一導電層と信号検出回路の基準ノードの電位を固有周波数fで振動させることを特徴とする静電容量式タッチパネル。
【請求項2】
基準電源回路と振動電源回路間の第1インダクタと第2インダクタの合成インダクタンスをL/2、信号出力回路と基準電源回路の低圧側電源線間及び信号出力回路と基準電源回路の高圧側電源線間にそれぞれ介在されるキャパシタの合成キャパシタンスを2Cとしたときに、固有発振信号の固有周波数fを、
f=1/[2π(LC)1/2
とすることを特徴とする請求項1に記載の静電容量式タッチパネル。
【請求項3】
信号出力回路は、振動電源回路に接続して直流電源の出力で駆動するマイクロプロセッサで構成され、
マイクロプロセッサを動作させるクロックの周波数fckを分周若しくは倍周して固有周波数fの固有発振信号を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の静電容量式タッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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