説明

静電容量式入力装置およびその製造方法、静電容量式入力装置の入力方法

【課題】入力者が指先の小さな者であっても、汎用的で先端の細い入力用部材を用いても目的通りに入力できる静電容量式入力装置を提供する。
【解決手段】本発明の静電容量式入力装置1は、可視光を透過可能な静電容量式のセンサ部100と、センサ部100の前面側に設けられた入力補助部200とを備え、入力補助部200は、透明絶縁基板211と、透明絶縁基板211の、センサ部100の反対側の面に均一に設けられた多数の点状透明導電部212とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置の前面に設けられる静電容量式入力装置およびその製造方法に関するものである。また、静電容量式入力装置の入力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル等の入力装置においては、画像表示装置の前面側に、指やスタイラスペンなどが接触した接触点の座標を検出する入力装置が備えられている。入力装置としては、従来、抵抗膜式のものが広く使用されていたが、近年、携帯端末等の分野において静電容量式のものが急速に普及しつつある。静電容量式入力装置は、一対の電極を備え、指やスタイラスペンが接近した際の電極間の電界変化によって生じる静電容量変化を検知して座標入力する装置である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところが、従来の静電容量式入力装置においては、入力者が、指先が小さい者(例えば幼児等)である場合には、指先を入力装置に接触させても、目的通りに入力できないことがあった。
また、入力装置においては、スタイラスペン等の入力用部材の先端を接触させることにより操作する方法が知られている。静電容量式入力装置用のスタイラスペンとしては、入力装置に容量結合させるため、導電性の先端部を有するものが使用されている(特許文献2,3)。
しかしながら、特許文献2,3に記載のスタイラスペンは特殊なものである上に、スタイラスペンを常に所持するのは煩わしかった。さらに、スタイラスペンにおいても先端が小さいと、目的通りに操作できなくなるため、接触面積を大きくする必要があった。接触面積を大きくすると、画像を隠す面積が大きくなり、静電容量式入力装置の操作性が低下する傾向にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−107091号公報
【特許文献2】特開平10−039989号公報
【特許文献3】特許第4142776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、入力者が指先の小さな者であっても、汎用的で先端の細い入力用部材を用いても目的通りに入力できる静電容量式入力装置およびその製造方法、入力方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
[1]可視光を透過可能な静電容量式のセンサ部と、該センサ部の前面側に設けられた入力補助部とを備え、前記入力補助部は、透明絶縁基板と、該透明絶縁基板の、センサ部の反対側の面に均一に設けられた多数の点状透明導電部とを有することを特徴とする静電容量式入力装置。
[2]前記入力補助部の点状透明導電部は、透明絶縁材料と該透明絶縁材料内に2次元ネットワーク状に配置された導電性繊維とを含み、点状透明導電部同士の間は、透明絶縁材料からなる絶縁部になっていることを特徴とする[1]に記載の静電容量式入力装置。
[3]透明絶縁基板の一方の面に透明導電層を形成する透明導電層形成工程と、前記透明導電層にレーザ光を所定のパターンで照射することにより絶縁部および点状透明導電部を形成して入力補助部を得る入力補助部作製工程と、可視光を透過可能な静電容量式のセンサ部の前面側に、前記入力補助部を取り付ける入力補助部取り付け工程とを有することを特徴とする静電容量式入力装置の製造方法。
[4]透明導電層が、透明絶縁材料と該透明絶縁材料内に2次元ネットワーク状に配置された導電性繊維とを含み、入力補助部作製工程では、レーザ光を照射した部分の導電性繊維を除去して絶縁部にすることを特徴とする[3]に記載の静電容量式入力装置の製造方法。
[5][1]または[2]に記載の静電容量式入力装置を入力操作する静電容量式入力装置の入力方法であって、前記入力補助部の表面に、先端部が導電材料からなるペン状の入力用部材を接触させることを特徴とする静電容量式入力装置の入力方法。
[6]前記入力用部材として、絶縁性の把持部を備えるものを用いることを特徴とする[5]に記載の静電容量式入力装置の入力方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の静電容量式入力装置によれば、入力者が指先の小さな者であっても、汎用的で先端の細い入力用部材を用いても目的通りに入力できる。
本発明の静電容量式入力装置の製造方法では、上記静電容量式入力装置を容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る静電容量式入力装置を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る静電容量式入力装置のセンサ部を示す上面図である。
【図3】図2のセンサ部のX側電極シートを示す上面図である。
【図4】図2のセンサ部のY側電極シートを示す上面図である。
【図5】図1の静電容量式入力装置の入力方法について説明する断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る入力装置の製造方法で使用するレーザ光照射装置を簡略化して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<静電容量式入力装置>
本発明の一実施形態に係る静電容量式入力装置(以下、「入力装置」と略す。)について、図1〜図4を参照して説明する。
図1に、本実施形態の入力装置の断面図を示す。本実施形態の静電容量式入力装置1は、画像表示装置(図示せず)の前面側に配置されるものであり、可視光を透過可能な透明な静電容量式のセンサ部100と、センサ部100の前面側に設けられた入力補助部200とを備える。なお、本明細書において、「前面側」とは、入力装置1の入力者側のことである。また、「透明」とは、JIS K7361−1に従って測定した全光線透過率が50%以上のことである。
【0010】
図2〜図4に示すように、センサ部100は、市松模様(互いに同一形状とされた正方形の角部同士を連結した状態、所謂チェックパターン状)の電極101aを形成したX側電極シート110と、このX側電極シート110に対して相補的な市松模様とされた電極101bを形成したY側電極シート120と、を備えている。ここで、各電極シート110、120は、透明絶縁基板111、121の前面側に透明導電層112、122が設けられたものである。
また、センサ部100は、X側電極シート110の前面側に絶縁層140が設けられている。
【0011】
透明絶縁基板111、121としては、透明で絶縁性を有するとともに、表面に透明導電層112、122を形成でき、かつ、後述するレーザ加工に対して、所定の照射条件において外観変化の生じにくいものを用いることが好ましい。具体的には、例えば、ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)を代表とするポリエステル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)などの絶縁性材料が挙げられる。また、透明絶縁基板111、121の形状としては、板状のもの、可撓性を有するフィルム状のもの、立体的(3次元)に成型された成型品等を用いることができる。
【0012】
透明導電層112、122は、透明絶縁材料と、該透明絶縁材料内に2次元ネットワーク状に配置された導電性繊維とを含んでいる。
各導電性繊維は、透明絶縁基板111、121の表面(透明導電層112、122が形成される面)の面方向に沿って互いに異なる向きに不規則に配置されているとともに、その少なくとも一部以上が互いに重なり合う(接触し合う)程度に密集しており、互いに電気的に接続されている。これにより、導電ネットワークを構成している。
【0013】
導電性繊維としては、銅、白金、金、銀、ニッケル等からなる金属ナノワイヤや金属ナノチューブが挙げられ、銀を主成分とする金属ナノワイヤ(銀ナノワイヤ)が好ましく用いられる。導電性繊維は、例えばその直径が0.3〜100nm、長さが1〜100μmに形成されている。
また、導電性繊維として、シリコンナノワイヤやシリコンナノチューブ、金属酸化物ナノチューブ、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラファイトフィブリル等を用いることもできる。
【0014】
また、透明導電層112、122は、導電性繊維を含まない絶縁部Iが形成されている。本実施形態における絶縁部Iでは、導電性繊維が除去されることにより透明絶縁材料に空隙が形成されて、導電ネットワークが断絶している。
【0015】
X側電極シート110においては、図3に示すように、電極101aは、X方向に沿って配列する複数の正方形の角部同士が互いに電気的に連結されて延びるように形成されている一方、Y方向に隣り合う正方形同士は互いに電気的に絶縁された状態で、Y方向に並列配置されている。
Y側電極シート120においては、図4に示すように、電極101bは、Y方向に沿って配列する複数の正方形の角部同士が互いに電気的に連結されて延びるように形成されている一方、X方向に隣り合う正方形同士は互いに電気的に絶縁された状態で、X方向に並列配置されている。
【0016】
図2に示されるように、X側電極シート110とY側電極シート120とは、互いの電極101a、101b同士を対面させることなく対向配置された状態で粘着剤層150を介して組み合わされている。
詳しくは、図1に示すように、X側電極シート110は、Y側電極シート120の上面(入力者側の面)に、透明な粘着剤層150を介して積層されるように接着されており、この状態で、双方の電極101a、101b同士が重なり合わない状態とされている。
【0017】
また、図3に示すように、X側電極シート110の透明導電層112において、Y側電極シート120の電極101bにおける正方形部分に対向する領域には、正方形状をなす孤立電極102aがそれぞれ形成されている。孤立電極102aの外周には、正方形環状をなす絶縁部Iが形成されている。
また、X側電極シート110の透明導電層112において、Y方向に隣り合う電極101aの正方形の対向する角部同士の間には、孤立電極102aよりも外形の小さな正方形状とされた小孤立電極103aがそれぞれ形成されている。小孤立電極103aの外周には、正方形環状をなす絶縁部Iがそれぞれ形成されている。
【0018】
また、図4に示すように、Y側電極シート120の透明導電層122において、X側電極シート110の電極101aにおける正方形部分に対向する領域には、正方形状をなす孤立電極102bがそれぞれ形成されている。孤立電極102bの外周には、正方形環状をなす絶縁部Iがそれぞれ形成されている。
また、Y側電極シート120の透明導電層122において、X方向に隣り合う電極101bの正方形の対向する角部同士の間には、孤立電極102bよりも外形の小さな正方形状とされた小孤立電極103bがそれぞれ形成されている。小孤立電極103bの外周には、正方形環状をなす絶縁部Iがそれぞれ形成されている。
【0019】
このように構成されるセンサ部100においては、電極101a、101b、及び、孤立電極102a、102bに2次元ネットワークの導電性繊維が配置されて、導電部とされている。
【0020】
入力補助部200は、透明絶縁基板211と、透明絶縁基板211の、センサ部100の反対側の面に均一に設けられた多数の点状透明導電部212とを有する。
透明絶縁基板211としては、電極シート110、120を構成する透明絶縁基板111、112と同様のものを使用することができる。
また、点状透明導電部212は、電極シート110、120を構成する透明導電層112、122と同様に、透明絶縁材料内に2次元ネットワーク状の導電性繊維が含まれて導電性を有している。
点状透明導電部212の平面視の形状としては、円形状、三角形状、四角形状、六角形状等が挙げられる。点状透明導電部212が四角形状である場合、その一辺の長さは、画像表示装置に表示されるボタン領域の一辺の長さよりも短いことが好ましく、画像表示装置に表示される隣接するボタン間のピッチの1/2以下であることがより好ましい。ここで、ピッチとは、ボタンの中心間の距離のことである。
【0021】
点状透明導電部212の周囲は透明絶縁材料からなる絶縁部Iになっている。具体的には、点状透明導電部212の周囲においては、導電性繊維が除去されて絶縁部Iになっている。
絶縁部Iの幅は0.01〜0.5μmであることが好ましく、0.05〜0.2μmであることがより好ましい。絶縁部Iの幅が前記下限値以上であれば、点状透明導電部212を充分に絶縁させることができ、前記上限値以下であれば、容易に絶縁部Iを形成できる。
【0022】
上記のように、本実施形態の入力装置1においては、電極シート110、120を構成する絶縁部I、入力補助部200を構成する絶縁部Iは導電性繊維が除去されて形成されている。このような絶縁部I、Iは、透明導電層112、122および点状透明導電部212と色調や透明性がほぼ同等になり、肉眼等では区別できない。そのため、絶縁パターンが視認されにくくなっている。
【0023】
<入力装置の入力方法>
次に、入力装置1の入力方法の一例について説明する。本例は、図5に示すように、入力に、導電材料からなる先端部310と絶縁性の把持部320とを備えるペン状の入力用部材300を用いる例である。先端部310が導電材料からなり、把持部320が絶縁材料からなるペン状の入力用部材300としてはスタイラスペンであってもよいし、鉛筆でも構わない。
図5に示すように、入力装置1の使用者は、画像表示装置(図示せず)によって表示されたボタン領域上の入力補助部200の表面(入力者側の表面)に、入力用部材300の先端部310を接触させて入力を行う。このとき、入力用部材300と点状透明導電部212と各電極101aの間に容量結合が形成される。その状態で、例えば、Y側電極シート120の電極101bの1つに、信号源160を利用して電圧を印加し、検出手段170により電流を検出することで、Y方向の入力用部材300の接触有無を検知することができる。また、X側電極シート110についても、Y側電極シート120と同様の方法により、X方向の入力用部材300の接触有無を検知することができる。そして、この操作を、Y方向とX方向とで繰り返すことで、Xの位置とYの位置を確定することができる。
【0024】
上記実施形態の入力装置1では、入力補助部200に入力用部材300を表面に接触させた際に、入力用部材300とセンサ部100の電極101aとに容量結合が形成されるのではなく、入力用部材300が接触した点状透明導電部212とセンサ部100の電極101aとに容量結合が形成される。点状透明導電部212の面積は入力用部材300の先端の面積よりも大きいため、点状透明導電部212と電極101aとの容量結合は充分に大きくなる。そのため、入力装置1では、先端の細い入力用部材300を用いても、目的通りに入力できる。
また、入力補助部200を用いることにより、入力用部材300として、絶縁性把持部を備えるものも使用でき、汎用的なもの、例えば鉛筆を使用することもできる。
【0025】
また、入力装置1への入力は、入力用部材300を用いずに、指先で行ってもよい。指先で入力を行った場合、指先が接触した点状透明導電部212とセンサ部100の電極101aとに容量結合が形成される。そのため、指先が小さい者であっても、点状透明導電部212と電極101aとの容量結合により、目的通りに入力できる。
【0026】
<入力装置の製造方法>
次に、本実施形態に係る入力装置1の製造方法について説明する。
本実施形態の入力装置1の製造方法は、透明導電層形成工程と入力補助部作製工程と入力補助部取り付け工程とを有する。
【0027】
本実施形態における透明導電層形成工程は、透明絶縁基板の一方の面に、透明絶縁材料と該透明絶縁材料内に2次元ネットワーク状に配置された導電性繊維とを含む透明導電層を形成する工程である。
透明導電層を形成する方法としては、透明絶縁基板の一方の面に、導電性繊維と分散媒(水又は有機溶剤)とを含む塗工液を塗工した後、透明絶縁材料と分散媒とを含む塗工液を塗工し、乾燥する方法、または、透明絶縁基板の一方の面に、透明絶縁材料と導電性繊維と分散媒とを含む塗工液を塗工し、乾燥する方法が挙げられる。
導電性繊維と分散媒とを含む塗工液を塗工した後、透明絶縁材料と分散媒とを含む塗工液を塗工した場合には、透明絶縁基板上の透明導電層内に、2次元ネットワークの導電性繊維を容易に設けることができるとともに、導電性繊維同士が電気的に確実に接続するため、電気的特性が安定する。
【0028】
透明絶縁材料としては、透明な熱可塑性樹脂(ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン)、熱や紫外線や電子線や放射線で硬化する透明な硬化性樹脂(メラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル変性シリケートなどのシリコーン樹脂)が挙げられる。
導電性繊維としては、銀、金、ニッケルなどの金属ナノワイヤが挙げられる。
【0029】
本実施形態における入力補助部作製工程は、透明絶縁基板の一方の面に形成された透明導電層に、レーザ光を所定のパターンで照射し、レーザ光が照射された導電性繊維を除去して、入力補助部を得る工程である。
なお、以下の説明において、レーザ加工前における透明絶縁基板と該透明絶縁基板の一方の面に形成された透明導電層とを有する積層体のことを、導電性基板という。
【0030】
本実施形態では、入力補助部作製工程にて、図6に示すような、レーザ光照射装置を使用する。レーザ光照射装置40は、レーザ光Lを発生させるレーザ光発生手段41と、レーザ光Lを集光する集光手段である凸レンズ等の集光レンズ42と、透明絶縁基板211および透明導電層aからなる導電性基板Aが載置されるステージ43と、を備えている。
そして、レーザ光発生手段41から集光レンズ42を介して透明導電層aにレーザ光Lを照射して、該透明導電層aに絶縁パターンを形成することで、均一な多数の点状透明導電部を形成する
【0031】
レーザ光発生手段41が発生するレーザ光Lは、パルス幅1p秒未満の極短パルスレーザ(フェムト秒レーザ)であることが好ましい。また、より好ましくは、パルス幅は0.01p秒以上である。パルス幅1p秒未満の極短パルスレーザを用いれば、レーザ加工後に導電性繊維を充分に除去して絶縁部Iのパターンを目立たなくすることができる。しかも、絶縁部Iを確実に絶縁させるために、透明導電層aの厚みを制御する必要がないから、簡便である。
【0032】
集光レンズ42の焦点Fは、透明導電層aから離れた位置に設定されていることが好ましい。詳しくは、集光レンズ42は、透明導電層aと集光レンズ42との間にレーザ光Lの焦点Fが位置するように配置される。すなわち、集光レンズ42(レーザ光L)の焦点Fを、透明導電層aと集光レンズ42との間に形成している。これにより、透明絶縁基板211に当たるレーザ光Lのスポット径は、透明導電層aに当たるレーザ光Lのスポット径より大きくなる。これにより、透明導電層aにおいてはレーザ光Lのエネルギ密度を確保して絶縁部Iを確実に形成しつつ、透明絶縁基板211においてはレーザ光Lのエネルギ密度を低減させて、該透明絶縁基板211の損傷を防止できる。
【0033】
集光レンズ42としては、低い開口数(NA<0.1)のものが好ましい。すなわち、集光レンズ42の開口数がNA<0.1とされることにより、レーザ光Lの照射条件設定が容易となり、特にレーザ光Lの焦点Fが透明導電層aと集光レンズ42との間に位置することによる、該焦点Fにおける空気のプラズマ化に伴うエネルギ損失とレーザ光Lの拡散を防止することができる。
【0034】
また、ステージ43は、水平方向に2次元的に移動可能になっている。ステージ43は、少なくとも上面側が透明な部材または光線吸収性を有する部材で構成されていることが好ましい。
ステージ43は、レーザ光Lの出力が1Wを超える場合、ナイロン系若しくはフッ素系の樹脂材料、又は、シリコーンゴム系の高分子材料を用いることが好ましい。
【0035】
次に、上記レーザ光照射装置40を用いた入力補助部の形成方法について説明する。
まず、ステージ43の上面に導電性基板Aを、透明導電層aが透明絶縁基板211より上に配置されるように載置する。ここで、導電性基板Aは、透明絶縁基板211と透明導電層aの透明絶縁材料とが、互いに同一材料又は同一系統の樹脂材料からなることが好ましい。例えば、透明絶縁基板211がポリエチレンテレフタレートフィルムの場合、透明絶縁材料にはポリエステル系樹脂を使用することが好ましい。
【0036】
次いで、レーザ光発生手段41よりレーザ光Lを出射させ、レーザ光Lを集光レンズ42により集光する。その集光したレーザ光Lの、焦点Fを過ぎてスポット径が広がった部分を透明導電層aに照射する。その際、ステージ43を、レーザ光Lの照射が所定のパターンになるように移動させる。ここで、所定のパターンとは、絶縁部Iの平面視の形状に応じて適宜選択される。
上記のように、透明導電層aにレーザ光Lを照射することにより、導電性繊維を除去して絶縁部Iを形成すると共に点状透明導電部212を形成する。なお、絶縁部Iにおいては、導電性繊維の存在した部分は空隙となっている。
【0037】
透明導電層aに照射するレーザ光Lのエネルギ密度は1×1016〜7×1017W/m、単位面積あたりの照射エネルギは1×10〜1×10J/mが好ましい。
すなわち、エネルギ密度・照射エネルギが上記数値範囲よりも小さな値に設定された場合、絶縁部Iの絶縁が不十分になるおそれがある。また、上記数値範囲よりも大きな値に設定された場合、加工痕が目立つようになり、透明タッチパネルや透明電磁波シールドなどの用途では不適当となる。
【0038】
また、これらの値は、加工エリアにおけるレーザビームの出力値を、加工エリアの集光スポット面積で除することにより定義されており、簡便には、出力はレーザ発振機からの出力値に光学系の損失係数を掛けることで求められる。
また、スポット径面積Sは、下記式により定義される。
S=S×D/FL
:レンズで集光されるレーザのビーム面積
FL:レンズの焦点距離
D:透明導電層aの表面(上面)と焦点との距離
【0039】
なお、前述した焦点Fは、レンズ等の集光手段42で、収差が十分に小さい場合を例に説明したが、例えば、焦点距離の短い球面レンズや、保護ガラスなどの収差が大きくなる要素が存在する場合には、前記焦点Fは、集光点のエネルギ密度が最も高くなる位置と定義される。
【0040】
ここで、距離Dは、通常のレーザ加工機では、焦点距離FLの0.2%〜3%の範囲内に設定される。好ましくは、距離Dは、焦点距離FLの0.5%〜2%の範囲内に設定される。さらに望ましくは、距離Dは、焦点距離FLの0.7%〜1.5%の範囲内に設定される。距離Dが上記数値範囲に設定されることにより、絶縁部Iにおける導電性繊維の除去(空隙の形成)が確実に行えるとともに電気的に高い信頼性を有する絶縁パターンを形成でき、かつ、透明絶縁基板211の損傷に起因する加工痕を確実に防止できる。
【0041】
また、精度の高い導電パターンを形成する点では、透明導電層a上にスポットの位置を移動させながらパルス状のレーザ光Lを断続的に複数回照射することで、隣り合うスポット位置同士に重複する部分を形成することが好ましい。具体的には、断続的に3〜500回照射することが好ましく、20〜200回照射することがより好ましい。3回以上の照射であれば、より確実に絶縁化でき、500回以下であれば、レーザ光Lが照射された透明絶縁材料部分の溶解又は蒸発による除去を防止できる。
【0042】
なお、上記説明においては、XYステージなどの移動式ステージ43に導電性基板Aを載せてパターニングを行うこととしたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、導電性基板Aを固定状態とし、集光系部材を相対的に移動させる方法、ガルバノミラー等を用いてレーザ光Lを走査しスキャンする方法、又は、上記したもの同士を組み合わせてパターニングを行うことが可能である。
【0043】
入力補助部取り付け工程は、センサ部100の前面側に入力補助部200を取り付ける工程である。
入力補助部200は、接着剤を用いてセンサ部100に隣接するように取り付けてもよいし、センサ部100との間に間隔をあけて取り付けてもよい。
センサ部100を構成するX側電極シート110およびY側電極シート120は、透明導電層112、122に電極101a、101bが設けられたものであり、入力補助部と同様に、透明導電層にレーザ光を照射することによって作製することができる。ただし、その照射パターンは、電極101a、101bを形成するためのパターンであり、入力補助部200の絶縁部Iを形成するためのパターンとは異なる。
【0044】
レーザ光Lを利用して絶縁部Iを形成する上記製造方法によれば、センサ部100の前面側に入力補助部200を取り付けた入力装置1を容易に製造できる。
また、上記レーザ光Lの照射によって透明導電層aをパターン状に絶縁化して得た入力補助部200では、静電気障害の原因となる電圧2500V以上の電荷を急速に減衰させる(例えば、静電気減衰測定機を用いた測定において、50%の減衰に要する時間が約0.2秒である。)一方で、静電容量式の入力装置の動作領域である50V以下では表面抵抗が実質的に絶縁状態(例えば、静電気減衰測定機を用いた測定において、1%の減衰に30秒以上要する。)になる。したがって、入力補助部200を用いることにより、入力を阻害することなく、静電気障害を抑制することができる。したがって、静電容量式の入力装置において最前面に配置される部材として適している。
【0045】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、上記の透明導電層112、122および点状透明導電部212は、透明絶縁材料内に2次元ネットワーク状の導電性繊維を含むものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、導電性を有する金属膜をエッチング等により格子状に形成してなるワイヤグリッドであってもよい。
また、上記の透明導電層112、122および点状透明導電部212は、金属粒子、カーボン材料(カーボンブラック等)、導電性金属酸化物(錫ドープ酸化インジウム等)、導電性高分子(ポリチオフェン、ポリピロール等)等の導電性材料を含むものであってもよい。レーザ光の照射によって前記導電性材料を除去することができるため、絶縁部を形成することができる。
また、絶縁部I、Iは空隙であっても構わない。レーザ光の照射条件によっては、透明導電層の、レーザ光を照射した部分が消失して空隙を形成することができる。
【0046】
また、電極シート110、120には、粘着、反射防止、ハードコート及びドットスペーサなどの機能層を任意で付加することとしてもよい。
また、本発明の入力装置は、必ずしも、上記製造方法で製造したものでなくてもよく、例えば、レーザ光の照射の代わりにサンドブラスト、エッチング、熱溶融を適用することにより絶縁部を形成して入力補助部および電極シートを作製してもよい。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0048】
(製造例1)銀ナノワイヤ導電フィルムの作製
厚さ100μmの透明なポリエステル(PET)フィルム(透明絶縁基板111、121)に、Cambrios社のOhm(商品名)インクを塗布乾燥後、紫外線硬化性のポリエステル樹脂インクを上塗りして、乾燥・紫外線処理を施すことにより、PETフィルム上に線径50nm程度、長さ15μm程度の銀繊維からなる導電性の2次元ネットワークを有する耐摩擦性の透明導電層を形成した。
【0049】
この銀ナノワイヤ導電フィルムの透明導電層aの表面抵抗は、230Ω/□、光線透過率は95%であった。
次いで、この銀ナノワイヤ導電フィルムを、A4版大の長方形に切断加工し、銀ナノワイヤ導電フィルムとした。
【0050】
(実施例1)
製造例1の導電フィルムを厚さ5mmの樹脂板(ジュラコン、ポリプラスチックス株式会社・登録商標)板上に、前記透明導電層が樹脂板とは反対側を向くように載置した。
図6に示すレーザ光照射装置40(キーエンス社製、波長1064nm、出力12W、パルス幅20n秒、繰り返し周波数100kHz、ビーム径6.7mmのYVOレーザ)を用い、焦点距離FL=300mmの集光レンズ42とガルバノミラーを利用して、導電フィルムにレーザ光を照射した。
具体的には、前記導電フィルムの透明導電層の表面に集光レンズ42(レーザ光L)の焦点が設定されるように調整した。次いで、150mm×150mmの領域に、幅0.1mm、間隔5mmの格子状にレーザ光Lを照射して、絶縁パターンを形成した。その際、繰り返し周波数100kHz、操作速度600mm/秒、出力30%とした。
これにより、四角形状の点状透明導電部と格子状の絶縁部とが透明絶縁基板上に設けられた入力補助部を得た。
この入力補助部は、全光線透過率が93.5%、ヘイズが0.68%、点状透明導電部同士間の電気抵抗が10MΩ以上であった。また、相対湿度50%の環境下、静電気減衰測定装置を用いて、5000Vの静電気を印加後、電圧が50%、10%、0.1%に減衰する時間を測定したところ、各々、0.1秒、4.78秒、30秒以上であった。また、入力補助部においては絶縁パターンが視認されなかった。
【0051】
静電容量式タッチパネルを備えた市販の携帯端末の前面に上記入力補助部を取り付けて、入力装置とした。この入力装置において、画像表示装置に配列ピッチ5mmのテンキー又は配列ピッチ10mmのメニュー画面を表示させ、その表示上の入力補助部の表面に指先および4Hの鉛筆先端を接触させて入力操作を行ったところ、目的通りに入力できた。
【0052】
(実施例2)
絶縁部のパターンを、互いに対向する辺の間隔が5mmの六角形に変更した以外は実施例1と同様にして入力補助部を作製した。
この入力補助部について、相対湿度50%の環境下、静電気減衰測定装置を用いて、5000Vの静電気を印加後、電圧が50%、10%、0.1%に減衰する時間を測定したところ、各々、0.1秒、5.72秒、30秒以上であった。また、入力補助部においては絶縁パターンが視認されなかった。
上記入力補助部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、入力装置を得た。この入力装置において、画像表示装置に配列ピッチ5mmのテンキー又は配列ピッチ10mmのメニュー画面を表示させ、その表示上の入力補助部の表面に指先又は4Hの鉛筆先端を接触させて入力操作を行ったところ、目的通りに入力できた。
【0053】
(比較例1)
製造例1で得た導電フィルムそのものを入力補助部として用いたこと以外は実施例1と同様にして入力装置を得た。この入力装置において、画像表示装置に配列ピッチ5mmのテンキー又は配列ピッチ10mmのメニュー画面を表示させ、その表示上の入力補助部の表面に指先又は4Hの鉛筆先端を接触させて入力操作を行ったところ、指先でも鉛筆でも目的通りに入力できなかった。
【0054】
(比較例2)
入力補助部として厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、入力装置を得た。なお、ポリエチレンテレフタレートフィルムについて、5000Vの静電気を印加後、電圧が50%減衰する時間を測定したところ30秒以上を有した。
この入力装置において、画像表示装置に配列ピッチ5mmのテンキー又は配列ピッチ10mmのメニュー画面を表示させ、その表示上の入力補助部の表面に指先又は4Hの鉛筆先端を接触させて入力操作を行ったところ、鉛筆では目的通りに入力できなかった。
【0055】
(比較例3)
市販の携帯端末において、鉛筆を入力用部材として入力操作したところ、入力できなかった。
【符号の説明】
【0056】
1 入力装置
100 センサ部
101a,101b 電極
102a,102b 孤立電極
103a,103b 小孤立電極
110 X側電極シート
111 透明絶縁基板
112 透明導電層
120 Y側電極シート
121 透明絶縁基板
122 透明導電層
170 検出手段
200 入力補助部
211 透明絶縁基板
212 点状透明導電部
300 入力用部材
310 先端部
320 把持部
a 透明導電層
、I 絶縁部
L レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光を透過可能な静電容量式のセンサ部と、該センサ部の前面側に設けられた入力補助部とを備え、
前記入力補助部は、透明絶縁基板と、該透明絶縁基板の、センサ部の反対側の面に均一に設けられた多数の点状透明導電部とを有することを特徴とする静電容量式入力装置。
【請求項2】
前記入力補助部の点状透明導電部は、透明絶縁材料と該透明絶縁材料内に2次元ネットワーク状に配置された導電性繊維とを含み、点状透明導電部同士の間は、透明絶縁材料からなる絶縁部になっていることを特徴とする請求項1に記載の静電容量式入力装置。
【請求項3】
透明絶縁基板の一方の面に透明導電層を形成する透明導電層形成工程と、
前記透明導電層にレーザ光を所定のパターンで照射することにより絶縁部および点状透明導電部を形成して入力補助部を得る入力補助部作製工程と、
可視光を透過可能な静電容量式のセンサ部の前面側に、前記入力補助部を取り付ける入力補助部取り付け工程とを有することを特徴とする静電容量式入力装置の製造方法。
【請求項4】
透明導電層が、透明絶縁材料と該透明絶縁材料内に2次元ネットワーク状に配置された導電性繊維とを含み、
入力補助部作製工程では、レーザ光を照射した部分の導電性繊維を除去して絶縁部にすることを特徴とする請求項3に記載の静電容量式入力装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の静電容量式入力装置を入力操作する静電容量式入力装置の入力方法であって、
前記入力補助部の表面に、先端部が導電材料からなるペン状の入力用部材を接触させることを特徴とする静電容量式入力装置の入力方法。
【請求項6】
前記入力用部材として、絶縁性の把持部を備えるものを用いることを特徴とする請求項5に記載の静電容量式入力装置の入力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−123744(P2012−123744A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276187(P2010−276187)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】