説明

静電容量式厚み多点測定方法及びその装置

【課題】被測定体の自重撓み変形がもたらす被測定体の測定部位により異なる傾きに応じて一対の静電容量式距離検出センサを傾斜配置して多点測定するようにし、各測定部位により被測定体の傾きが異なることにより生ずる測定部位の厚みの測定精度の低下を防ぐことができる。
【解決手段】被測定体Wの測定部位Pを境にして対向する位置に一対の静電容量式距離検出センサS1・S2を配置し、静電容量式距離検出センサのそれぞれが検出した静電容量による被測定体と静電容量式距離検出センサとの距離G1・G2及び静電容量式距離検出センサ間の対向距離Gsに基づいて被測定体の複数の測定部位P1・P2・・・・の厚みtを多点測定する静電容量式厚み多点測定方法において、被測定体の自重撓み変形がもたらす被測定体の測定部位により異なる傾きθに応じて静電容量式距離検出センサを傾斜配置して多点測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は静電容量式距離検出センサにより半導体ウエハーなどの被測定体の厚みを非接触にて測定する静電容量式厚み多点測定方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の静電容量式厚み多点測定方法として、図5、図6、図7の如く、例えば、半導体ウエハーである被測定体Wの測定部位Pを境にして対向する位置に所定の対向距離Gsを置いて一対の静電容量式距離検出センサS1・S2を配置し、被測定体Wに非接触状態でアース電極Qを配置し、一対の静電容量式距離検出センサS1・S2のそれぞれが検出した静電容量C(=センサーの電極面積A×電極と被測定体間の誘電率ε/電極と被測定体との距離G)によるところの被測定体Wと一対の静電容量式距離検出センサS1・S2との距離G1・G2及び一対の静電容量式距離検出センサS1・S2間の対向距離Gsに基づいて被測定体の複数の測定部位Pの厚みt(=Gs−[G1+G2])を多点測定する構造のものが知られている。
【特許文献1】特開2005−172700
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これら従来構造の場合、例えば、半導体ウエハーなどの比較的薄板状の被測定体の多点測定にあっては、図5の如く、外周部分数カ所を保持された被測定体の自重により中心部が外周部よりも下に凸に窪んだ撓み変形が生ずることがあり、例えば、外径300mmの半導体ウエハーにおいて中央部で90μm程度の撓み現象が生ずることがあり、このため、一対の静電容量式距離検出センサ又は被測定体を移動させて走査することにより測定部位P1・P2・・を多点測定するにあたり、被測定体Wの各測定部位Pにおける傾きθが異なり、この傾きθによって、それぞれの測定部位P1・P2・・と一対の静電容量式距離検出センサS1・S2との距離G1・G2が異なることになり、各測定部位Pにより被測定体Wの傾きθが異なることにより測定部位Pの厚みtの測定精度が低下することがあるという不都合を有している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はこれらの不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうちで、請求項1記載の方法の発明にあっては、被測定体の測定部位を境にして対向する位置に所定の対向距離を置いて一対の静電容量式距離検出センサを配置し、該一対の静電容量式距離検出センサのそれぞれが検出した静電容量による該被測定体と該一対の静電容量式距離検出センサとの距離及び該一対の静電容量式距離検出センサ間の対向距離に基づいて被測定体の複数の測定部位の厚みを多点測定する静電容量式厚み多点測定方法において、上記被測定体の自重撓み変形がもたらす被測定体の測定部位により異なる傾きに応じて上記一対の静電容量式距離検出センサを傾斜配置して多点測定することを特徴とする静電容量式厚み多点測定方法にある。
【0005】
又、請求項2記載の装置の発明にあっては、被測定体の測定部位を境にして対向する位置に所定の対向距離を置いて一対の静電容量式距離検出センサを配置し、該一対の静電容量式距離検出センサのそれぞれが検出した静電容量による該被測定体と該一対の静電容量式距離検出センサとの距離及び該一対の静電容量式距離検出センサ間の対向距離に基づいて被測定体の複数の測定部位の厚みを多点測定する静電容量式厚み多点測定装置において、上記被測定体の自重撓み変形がもたらす被測定体の測定部位により異なる傾きに応じて上記一対の静電容量式距離検出センサを傾斜配置可能な可変傾斜機構を設けてなることを特徴とする静電容量式厚み多点測定装置にある。
【0006】
又、請求項3記載の発明は、上記可変傾斜機構は勾配プレート及び移動ローラの組み合わせ構造からなることを特徴とするものであり、又、請求項4記載の発明は、上記勾配プレートは交換自在に設けられていることを特徴とするものであり、又、請求項5記載の発明にあっては、上記一対の静電容量式距離検出センサを上記被測定体の半径方向に走査可能な走査機構を設けてなることを特徴とするものであり、又、請求項6記載の発明は、上記被測定体の外周端部を載置保持する被測定体保持部と、該被測定体保持部を回転させる回転ステージとを備えてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上述の如く、請求項1又は2記載の発明にあっては、被測定体の測定部位を境にして対向する位置に所定の対向距離を置いて一対の静電容量式距離検出センサを配置し、一対の静電容量式距離検出センサのそれぞれが検出した静電容量によるところの被測定体と一対の静電容量式距離検出センサとの距離及び一対の静電容量式距離検出センサ間の対向距離に基づいて被測定体の複数の測定部位の厚みを多点測定することになり、この際、可変傾斜機構により、上記被測定体の自重撓み変形がもたらす被測定体の測定部位により異なる傾きに応じて一対の静電容量式距離検出センサを傾斜配置して多点測定するようにしているから、それぞれの測定部位と一対の静電容量式距離検出センサとの距離を被測定体の自重撓み変形がもたらす被測定体の測定部位により異なる傾きに対応することができ、各測定部位により被測定体の傾きが異なることにより生ずる測定部位の厚みの測定精度の低下を防ぐことができ、厚みの測定精度を高めることができる。
【0008】
又、請求項3記載の発明にあっては、上記可変傾斜機構は勾配プレート及び移動ローラの組み合わせ構造からなるので、構造を簡素化することができると共に確実に傾斜配置することができ、又、請求項4記載の発明にあっては、上記勾配プレートを交換自在に設けることにより、被測定体のサイズや種類に対応することができ、又、請求項5記載の発明にあっては、上記一対の静電容量式距離検出センサを上記被測定体の半径方向に走査可能な走査機構を設けてなるから、被測定体の複数の測定部位を円滑に多点測定することができ、又、請求項6記載の発明にあっては、上記被測定体の外周端部を載置保持する被測定体保持部と、被測定体保持部を回転させる回転ステージとを備えてなるから、被測定体の外周端部への傷付けを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1乃至図4は本発明の実施の形態例を示し、1は回転ステージであって、回転制御用モータ2により割出回転可能に設けられ、この回転ステージ1上に被測定体Wの外周端部を載置保持する被測定体保持部3が設けられ、一方、回転ステージ1上に可変傾斜機構4が設けられ、可変傾斜機構4を介して上下一対の測定アーム5・5が対向距離調節自在に設けられ、各測定アーム5・5の先端部に被測定体Wの測定部位Pを境にして対向する位置に所定の対向距離Gsを置いて一対の静電容量式距離検出センサS1・S2が配置され、かつ、回転ステージ1にアース電極9を被測定体Wの裏面下方位置に非接触状態で配置し、更に、一対の静電容量式距離検出センサS1・S2を被測定体Wの半径方向に走査可能な走査機構6を設けて構成している。
【0010】
この場合、被測定体保持部3は、上記被測定体Wの外周端部W1を載置保持可能に形成され、この被測定体保持部3を被測定体Wの中心方向に押圧可能な位置固定機構7が設けられている。尚、図示省略しているが、勿論、被測定体Wを回転方向の原点位置に位置決め固定する機構が設けられている。
【0011】
又、この場合、上記可変傾斜機構4及び上記走査機構6は、上記機台8に角度調整用アクチュエータ4cとしての制御用モータを取付けると共に制御用モータにより被測定体Wの半径方向に移動可能な移動ローラ4bを設け、一方、機台8に勾配プレート4aの先端部を支点軸4dにより角度回動自在に設け、このプレート4aの勾配面4eに移動ローラ4bを摺動自在に当接し、勾配プレート4a上に摺動ガイド6aを設け、摺動ガイド6aに制御用モータ6bにより進退走査動作可能に進退部材6cを設け、進退部材6cに上記上下一対の測定アーム5・5を対向距離調節自在に設け、この各測定アーム5・5の先端部に被測定体Wの測定部位Pを境にして対向する位置に所定の対向距離Gsを置いて一対の静電容量式距離検出センサS1・S2を配置して構成している。
【0012】
この勾配プレート4aの勾配面4eの角度αは被測定体Wの各測定部位Pにおける傾きθに基づいて定められることになる。尚、この勾配面4eの角度αが異なる勾配プレート4aを複数個用意し、交換自在に設けることにより、被測定体Wのサイズや種類に対応することができ、測定の融通性を図ることができる。
【0013】
しかして、可変傾斜機構4の制御用モータにより移動ローラ4bを進退動作させ、移動ローラ4bと勾配プレート4aの勾配面4eとの摺動により一対の静電容量式距離検出センサS1・S2を勾配面4eの水平面に対する勾配角度及び支点軸4dから双方の当接位置までの距離の関係により角度調節自在に設け、かつ、上記走査機構6の制御用モータ6bにより進退部材6cを進退動作させ、被測定体Wの半径方向の複数の測定部位P1・P2・・を一対の静電容量式距離検出センサS1・S2により走査可能に設けて構成している。
【0014】
この実施の形態例は上記構成であるから、被測定体Wの測定部位Pを境にして対向する位置に所定の対向距離を置いて一対の静電容量式距離検出センサS1・S2を配置し、一対の静電容量式距離検出センサS1・S2のそれぞれが検出した静電容量によるところの被測定体Wと一対の静電容量式距離検出センサS1・S2との距離G1・G2及び一対の静電容量式距離検出センサS1・S2間の対向距離Gsに基づいて被測定体の複数の測定部位P1・P2・・・・の厚みt(=Gs−[G1+G2])を多点測定することになり、この際、可変傾斜機構4により、上記被測定体Wの自重撓み変形がもたらす被測定体Wの測定部位P1・P2・・により異なる傾きθに応じて一対の静電容量式距離検出センサS1・S2を傾斜配置して多点測定するようにしているから、それぞれの測定部位P1・P2・・と一対の静電容量式距離検出センサS1・S2との距離G1・G2を被測定体Wの自重撓み変形がもたらす被測定体Wの測定部位P1・P2・・により異なる傾きθに対応することができ、各測定部位Pにより被測定体Wの傾きθが異なることにより生ずる測定部位Pの厚みtの測定精度の低下を防ぐことができ、厚みtの測定精度を高めることができる。
【0015】
又、この場合、上記可変傾斜機構4は勾配プレート4a及び移動ローラ4bの組み合わせ構造からなるので、構造を簡素化することができると共に確実に傾斜配置することができ、又、この場合、上記勾配プレート4aを交換自在に設けることにより、被測定体Wのサイズや種類に対応することができ、測定の融通性を図ることができ、又、この場合、上記一対の静電容量式距離検出センサS1・S2を上記被測定体Wの半径方向に走査可能な走査機構6を設けてなるから、被測定体Wの複数の測定部位Pを円滑に多点測定することができ、又、この場合、上記被測定体Wの外周端部W1を載置保持する被測定体保持部3と、被測定体保持部3を回転させる回転ステージ1とを備えてなるから、被測定体Wの外周端部W1への傷付けを防ぐことができる。
【0016】
尚、本発明は上記実施の形態例に限られるものではなく、例えば、勾配角度αは直線面であるが、曲面にすることもあり、又、可変傾斜機構4の構造等は適宜変更して設計されるものである。
【0017】
以上、所期の目的を充分達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態例の全体側面図である。
【図2】本発明の実施の形態例の全体平面図である。
【図3】本発明の実施の形態例の分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の部分側断面図である。
【図5】被測定体の部分拡大断面図である。
【図6】測定原理説明図である。
【図7】多点測定説明平面図である。
【符号の説明】
【0019】
W 被測定体
P 測定部位
S 対向距離
1 静電容量式距離検出センサ
2 静電容量式距離検出センサ
1 回転ステージ
3 被測定体保持部
4 可変傾斜機構
4a 勾配プレート
4b 移動ローラ
6 走査機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定体の測定部位を境にして対向する位置に所定の対向距離を置いて一対の静電容量式距離検出センサを配置し、該一対の静電容量式距離検出センサのそれぞれが検出した静電容量による該被測定体と該一対の静電容量式距離検出センサとの距離及び該一対の静電容量式距離検出センサ間の対向距離に基づいて被測定体の複数の測定部位の厚みを多点測定する静電容量式厚み多点測定方法において、上記被測定体の自重撓み変形がもたらす被測定体の測定部位により異なる傾きに応じて上記一対の静電容量式距離検出センサを傾斜配置して多点測定することを特徴とする静電容量式厚み多点測定方法。
【請求項2】
被測定体の測定部位を境にして対向する位置に所定の対向距離を置いて一対の静電容量式距離検出センサを配置し、該一対の静電容量式距離検出センサのそれぞれが検出した静電容量による該被測定体と該一対の静電容量式距離検出センサとの距離及び該一対の静電容量式距離検出センサ間の対向距離に基づいて被測定体の複数の測定部位の厚みを多点測定する静電容量式厚み多点測定装置において、上記被測定体の自重撓み変形がもたらす被測定体の測定部位により異なる傾きに応じて上記一対の静電容量式距離検出センサを傾斜配置可能な可変傾斜機構を設けてなることを特徴とする静電容量式厚み多点測定装置。
【請求項3】
上記可変傾斜機構は勾配プレート及び移動ローラの組み合わせ構造からなることを特徴とする請求項2記載の静電容量式厚み多点測定装置。
【請求項4】
上記勾配プレートは交換自在に設けられていることを特徴とする請求項3記載の静電容量式厚み多点測定装置。
【請求項5】
上記一対の静電容量式距離検出センサを上記被測定体の半径方向に走査可能な走査機構を設けてなることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の静電容量式厚み多点測定装置。
【請求項6】
上記被測定体の外周端部を載置保持する被測定体保持部と、該被測定体保持部を回転させる回転ステージとを備えてなることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の静電容量式厚み多点測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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