説明

静電容量式情報入力ユニット、携帯型端末装置、及び静電容量式情報入力ユニットの製造方法

【課題】センサ電極の検出感度を高めることでセンサ回路による静電容量の変化の検出を確実にして、使用者の入力操作を安定して処理すること。
【解決手段】 導光板4Aの下部には反射板4Bが配置し、導光板4Aの下部へ光が漏れるのを防ぐ。FPC3には表面パネル5に印刷されたアイコン6の位置に対向する位置に、抜き穴7を形成する。この抜き穴7からは、LED4Cから導光板4Aを通して上部に発せられた光が通過し、アイコン6を照光することを可能にする。センサ電極2は、検出電極及びGND電極から成る。FPC3と表面パネル5との間には、同体積の空気層よりも誘電率の高い接着剤8の層を配設し、これにより、静電容量式タッチセンサ1を表面パネル5に固定すると共に、センサ電極2の検出感度を高める。この接着剤8は、FPC3の抜き穴7を覆うことを回避するようにして配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式情報入力ユニット、携帯型端末装置、及び静電容量式情報入力ユニットの製造方法に関する。特に本発明は、照光機能を有する静電容量式情報入力ユニット、当該情報入力ユニットを備えた携帯型端末装置、並びに静電容量式情報入力ユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既に開発されている携帯型電子機器(例えば、携帯電話端末装置、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant))には、静電容量式タッチセンサと呼ばれる情報入力ユニットが搭載されているものがある。
この静電容量式タッチセンサは、センサ電極を有している。例えば使用者の指が静電容量式タッチセンサの上部(ユーザー側の面)に配置された操作面としての表面パネル越しに該センサ電極に触れたときに、該センサ電極が、この指の接触による静電容量の変化を検知する。そして、その検出に基づいて所定の処理を実行させることができる。
【0003】
この静電容量式タッチセンサの利便性を高めるため、暗い場所でも操作できるように、静電容量式タッチセンサに照光機能を付加させる場合がある。
この照光機能を使用すると、表面パネル上のアイコンを光らせることが可能となる。
図6は、照光機能を有する静電容量式タッチセンサの構成を示す断面図である。
静電容量式タッチセンサ91は、センサ電極92が形成されたフレキシブル回路基板93(以下「FPC」と呼ぶ)、光源としてのLED(Light Emitting Diode)94、及びLED94からの光を伝達させる導光板95を備える。
【0004】
導光板95は、FPC93の下部に設置され、また、LED94は導光板95の側面に設置される。
FPC93には、導光板95からの光を取り出すため、表面パネル96上のアイコン97に対応した位置に抜き穴98が設けられている。
静電容量式タッチセンサ91の表面パネル96への固定に際しては、図示していない両面テープ等の接着剤が用いられる。
この接着剤をFPC93の全面に貼り付けた場合、特に液体の接着剤の場合は、飛散した接着剤が導光板95に接触し、接触部分から光が漏れることで、導光効率が落ちてしまう。
【0005】
この導光効率の低下を防止するため、通常、この接着剤の位置と形状には、抜き穴98の上部には接着剤が存在しないようにするための設計がなされている。
例えば、FPC93の抜き穴の右側及び左側に接着剤が位置するように、その領域を分割する構成が考えられる。
FPC93上に形成されるセンサ電極92は、検出感度を安定させるために、使用者の指と最も近い箇所(即ち、表面パネル96のアイコン97と重なる箇所)に位置している方が望ましい。
【0006】
この分野の公知技術としては、例えば、特許文献1には、複数の表示部が形成された表示板と静電タッチパネルとを操作体に載置すると共に、制御手段が静電タッチパネルの接触操作に応じて、発光素子の発光を制御するようにした入力装置を開示している。
この装置によれば、表示板に使用者が指を触れた状態では、文字や記号、絵柄等の複数の表示部を照光すると共に、指の移動に伴って照光する表示部を変化させることによって、操作を行おうとしている機能が明確に判別できる。そのため、誤操作が生じづらく、操作の行い易い入力装置を得ることができる効果が得られるものとしている。
具体的には、ステアリングホイールを握りながら、例えば使用者が親指を伸ばして表示板に触れると、この接触操作した箇所の表示板下面の、静電タッチパネルの下導電層と上導電層との電圧が、使用者の指の静電容量によって変化する。そして、制御手段がこの接触した位置を検出するものとしている。
また、同時に複数の発光素子を発光させ、この光が導光体の導光孔や操作体の透光孔を通って、表示板の複数の表示部等を下方から照光する。その際、制御手段が、複数の発光素子の内、所定の発光素子のみを発光させ、文字や記号、絵柄等によって操作する機能を表示した表示部については、現在指を触れている位置の表示部だけでなく、全ての表示部を照光するものとしている。
【0007】
また、特許文献2には、検出基板と、配線基板と、制御手段とを備える静電容量式タッチパッド入力装置が開示されている。
この検出基板は、発光体が発する光の光路に対応する位置に切抜孔を有すると共に、駆動電極と検出電極とが切抜孔を避けるように敷設されている。
なお、検出基板と配線基板の間に設置され発光体から切抜孔に向かう光路に対応する位置に貫通孔を有する金属板を備えるものとしている。この装置によれば、検出基板には、駆動電極と検出電極とが並んで敷設されているので、制御手段では、検出領域に接近した物体を、これら駆動電極と検出電極との間の静電容量の変化に基づいて検出可能となるものとしている。
また、配線基板には発光体が搭載されている。検出基板は、その光路の対応位置に切抜孔を有し、更に、この切抜孔を避けるように駆動電極および検出電極を有している。したがって、発光体の光を検出基板に向けて効率良く導くことができて、しかも、切抜孔に相当する箇所では、電極密度が小さくなって物体の検出感度が低くなるのに対し、その周囲では電極密度が高く、物体の検出感度が高くなるものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−135059号公報
【特許文献2】特開2011−060170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図6に示すような照光機能付きの静電容量式タッチセンサは、接着剤をFPC93の全面に貼り付けると、特に液体の接着剤の場合、接着剤が導光板95に接触し、接触部分から光が漏れて、導光効率が落ちてしまう。
そこで、この導光効率の低下を防止するため、通常、抜き穴98の上部には接着剤が存在しないように接着剤の位置及び形状が設計される。例えば、FPC93の抜き穴98の右側及び左側に接着剤が位置するように、その領域を分割する構成が考えられた。
FPC93上に形成されるセンサ電極92は、検出を安定させるために、使用者の指と最も近い箇所、すなわち、表面パネル96のアイコン97と重なる箇所に位置している方が望ましい。
前述のとおり、当該箇所は、光を取り出すための抜き穴98の位置であるため、センサ電極92は抜き穴98を避けるように設置される。
【0010】
そのため、使用者の指の位置とセンサ電極92との位置がずれる可能性があり、使用者の指の接触による静電容量の変化が小さくなる。加えて、センサ電極92近辺に接着剤が設けられてない領域が存在すると、センサ電極92と表面パネル96との間に形成される空気層(抜き穴98に隣接する領域)が大きくなるため、静電容量の変化が一層小さくなる。
このような事情によって、使用者の指の接触/非接触の違いによる静電容量の変化が小さくなると、センサICによる検出が不安定動作となり、静電容量式タッチセンサ91が正常に機能しなくなってしまう。
しかしながら、前述の照光機能付きの静電容量式タッチセンサ91にあっては、例えば前述の特許文献1及び特許文献2も含めて、上記課題に対して、静電容量式タッチセンサ91のFPC93上のセンサ電極92と接着剤との位置関係が配慮されていない。
【0011】
本発明の目的は、上述した課題を解決する静電容量式情報入力ユニット、携帯型端末装置、及び静電容量式情報入力ユニットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る静電容量式情報入力ユニットは、
表面パネルの下部方向に位置し、表面パネル上の使用者が指を接触させる所定位置に対向する箇所に抜き穴を有する回路基板と、
回路基板の下部に設置され、表面パネル上の所定位置を照光する光源と、
回路基板の下部に設置され、光源からの発光を表面パネルに導く導光板と、
回路基板の上部に設置され、表面パネル上の所定位置と自己との間に形成される静電容量を検出するセンサ電極と、
表面パネルと回路基板との間に、抜き穴を回避して配設され、かつセンサ電極が備える検出電極の上面全体を覆う箇所を含めて配設されている接着剤層と、
表面パネル上の所定位置に使用者の指が有る場合と無い場合との静電容量の値の差を算出するセンサICと、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記の静電容量式情報入力ユニットを搭載した携帯型端末装置を提供するものである。
【0014】
更に、本発明に係る静電容量式情報入力ユニットの製造方法は、
表面パネルの下部方向に位置し、表面パネル上の使用者が指を接触させる所定位置に対向する箇所に抜き穴を有する回路基板を設置する設置工程と、
回路基板の下部に、表面パネル上の所定位置を照光する光源を設置する設置工程と、
回路基板の下部に、光源からの発光を表面パネルに導く導光板を設置する設置工程と、
回路基板の上部に、表面パネル上の所定位置と自己との間に形成される静電容量を検出するセンサ電極を設置する設置工程と、
設置工程に先立って、表面パネルと回路基板との間に、抜き穴を回避し、かつセンサ電極が備える検出電極の上面全体を覆う箇所を含めて接着剤層を配設する配設工程と、
表面パネル上の所定位置に使用者の指が有る場合と無い場合との静電容量の値の差を算出するセンサ回路を設置する設置工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の静電容量式情報入力ユニットによれば、使用者が指を接触させたときに、センサ回路による静電容量の変化の検出を確実にして、使用者の操作を安定して処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る静電容量式タッチセンサの構成を示す断面図であり、図1(a)は本発明に係る静電容量式情報入力ユニットの構成要件だけを示した断面図を示し、図(b)は、その実施例としての静電容量式タッチセンサの断面図を示すものである。
【図2】図1に示す静電容量式タッチセンサ1のFPC3を表面パネル5側から見た透視図である。
【図3】本発明を適用していない静電容量式タッチセンサの1例としてのFPCの構成を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る静電容量式タッチセンサの1実施例としてのFPCの構成を示す説明図である。
【図5】本発明の他の実施例の静電容量式タッチセンサのFPCの抜き穴付近を示した図である。
【図6】照光機能を有する静電容量式タッチセンサの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る静電容量式タッチセンサは、静電容量を検出する検出電極の検出能力を高めることができる構成を有する。
即ち、センサ電極が形成されたFPC(フレキシブル回路基板)と、表面パネルとの間に、アイコン等の部位(即ちLED光の照射を必要とする部位)を回避するようにして、同形状の空気層よりも誘電率の高い接着剤の層を配設する。このようにして、静電容量を検出する検出電極の検出感度を高めている。
より具体的には、本発明の静電容量式タッチセンサは、照光機能を有しており、照光のための導光板と、LEDと、それらが配置されるFPCとを備えている。
FPCにには、導光板からの光を取り出すための抜き穴が設けられている。そして、検出電極とGND電極から成るセンサ電極が抜き穴に隣接して配置され、FPC上に使用者の操作面である表面パネルに固定するための接着剤が抜き穴と重ならないように、かつ、接着剤が少なくともセンサ電極上の一部に形成されている。
【0018】
以下、本発明の静電容量式情報入力ユニット及び携帯型端末装置並びに静電容量式情報入力ユニットの製造方法の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る静電容量式情報入力ユニットの構成を示す。図1(a)は本発明に係る静電容量式情報入力ユニットの構成要件だけを示す。図(b)は、その実施例としての静電容量式タッチセンサの断面図を示す。
図1(a)に示す本発明に係る静電容量式情報入力ユニットは、照光機能付きの静電容量式情報入力ユニットであり、回路基板31と、センサ電極2と、センサ回路151と、導光板4Aと、光源41Cと、接着剤層81と、を具備する。
図(b)に示す本発明の実施の形態に係る静電容量式情報入力ユニット(静電容量式タッチセンサ1)は、例えば、携帯電話端末等の携帯型電子機器に限らず、他の装置(例えば、ゲーム機、タブレットPC、ノートPC)にも搭載可能である。
その機能は、後述するように、使用者の指による操作(接触)を静電容量の変化として安定かつ正確に検出するものである。
この静電容量式タッチセンサ1を搭載する携帯型電子機器では、この静電容量の変化の検出結果に対応して、予め設計された所定の処理を実行する。
【0019】
図1(b)に示す本実施形態に係る静電容量式タッチセンサ1は、導体部材から成り静電容量の変化を検知するセンサ電極2が形成されたFPC(フレキシブル回路基板)3と、その下に配置された導光板4A及び反射板4Bと、LED4Cと、を具備する。
なお、FPC3は、フレキシブル回路基板に限るものではなく、他の一般的な回路基板であって良い。
これらの各構成要素は、本発明の実施形態に係る静電容量式タッチセンサの製造方法において、対応する各製造工程によって設置または配設されたものである。
また、FPC3には、センサ電極2で検出された静電容量の変化を処理し、使用者の指による操作をこの静電容量式タッチセンサ1を搭載する携帯型電子機器のCPU(中央処理装置)に送信するためのセンサIC(センサ回路)が搭載されているものとする。ここではセンサIC15を搭載した場合を示しているが、同様の機能を有するものであればよく、必ずしもICに限定するものではない。
【0020】
導光板4Aは、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の導光性に優れた素材で構成され、表面パネル5に表示されるアイコン6(数字やマーク等)の下部に配置されている。
また、導光板4Aの片側側面には光源となるLED4Cが配置されている。
更に、導光板4Aの下部へ光が漏れるのを防ぎ、導光板4A内で光が進行するようにするために、導光板4Aの下部には反射板4Bが配置されている。
この反射板4Bも、本発明の実施形態に係る静電容量式タッチセンサの製造方法の1工程によって形成されたものであるが、必ずしも本発明の必須の構成要素ではない。
FPC3には表面パネル5に印刷等を用いて表記されたアイコン6の位置に対向する位置に、抜き穴7が形成されている。
この抜き穴7からは、LED4Cから導光板4Aを通して上部に発せられた光が通過し、アイコン6を照光することを可能にしている。
【0021】
センサ電極2は、後述する検出電極及びGND電極から成り、静電容量式タッチセンサ1の上部に配置される表面パネル5に印刷されたアイコン6の近傍、即ち、抜き穴7に隣接した位置に配置されている。
FPC3と表面パネル5との間の空気層部分には、同形状の空気層よりも誘電率の高い接着剤8の層を配設し、これにより、静電容量式タッチセンサ1を表面パネル5に固定すると共に、センサ電極2の検出感度を高めている(この原理については後述する)。
この接着剤8は、FPC3の抜き穴7を覆うことを回避するようにして設けられており、よって、導光板4Aの抜き穴7の上部には接着剤8が存在しない。
この接着剤8は、通常の塗布可能な接着剤であっても良いし、両面テープ等で代用しても良い。
この接着剤8も、本発明の実施形態に係る静電容量式タッチセンサの製造方法の1工程によって配設されたものである。
【0022】
このように構成することにより、LED4Cからの光の導光効率の低下を防止して、表面パネル5のアイコン6を効率良く照光することができるようにすると共に、センサ電極2の検出感度を高めることができるようにしている。
接着剤8の形状及びFPC3に対する位置は、接着剤8及びFPC3の抜き穴7の成型精度、及び接着剤8とFPC3を貼り合せる際の位置ずれを配慮して設定される。
更に、FPC3の抜き穴7に隣接した位置に形成されるセンサ電極2は、前述の通り検出電極及びGND電極から成るが(詳細は図3で後述する)、接着剤8が少なくとも該検出電極の上部に位置するように、接着剤8の位置及びFPC3に対する位置が設定される。
【0023】
図2は、図1に示す静電容量式タッチセンサ1のFPC3を表面パネル5側から見た透視図である。
以下、図2を用いて接着剤8の形状及びFPC3に対する接着剤8の配設領域について詳細に説明する。
同図に示すFPC3は、光を取り出すための抜き穴7が形成されており、この抜き穴7の下方に、センサ電極2を構成する矩形の検出電極2Aと、該検出電極2Aを取り囲むようにして「ロ」の字型のGND電極2Bが形成されている。
静電容量式タッチセンサ1は、主としてFPC3の抜き穴7の右側と左側とに配置される接着剤8によって、表面パネル5(図1)に固定される。接着剤8は、抜き穴7の下方のセンサ電極2を構成する検出電極2Aを覆う領域に配設し、かつ検出電極2Aの上辺より下方に配設している(これにより、検出電極2Aの上面も覆われる)。
【0024】
図3は、本発明を適用していない静電容量式タッチセンサの1例としてのFPCの構成を示す説明図である。
【0025】
図4は、本発明の実施の形態に係る静電容量式タッチセンサの1実施例としてのFPCの構成を示す説明図である。
以下、図3,4を参照して、本発明の静電容量式タッチセンサの動作原理を説明し、併せて機能も説明する。
まず、図3に示す本発明を適用しない静電容量式タッチセンサのFPCの1例について説明する。
図3に示す本発明を適用しない静電容量式タッチセンサのFPC(FPC40)では、形成されているセンサ電極41は、検出電極41AとGND電極41Bとから構成されている。
【0026】
GND電極41Bは、検出電極41AへのLED配線等からのノイズをシールドする役割を担うと共に、検出電極41Aとの間に寄生容量42を形成している。
検出電極41Aに形成される上記の寄生容量は、近似的にはGND電極41Bとの寄生容量42と見なすことができる。
ここで、この寄生容量の値をCpとする。
表面パネル43に使用者の指44が無い場合は、センサIC(図示は省略)が検知する検出電極41Aの静電容量の値をCxとすると、Cx=Cpとなる。
使用者が操作のために表面パネル43に指44を接触させた場合、指44と検出電極41Aの間に静電容量Cf45(その値はCfとする)が形成され、これにより、センサICが検知する検出電極41Aの静電容量であるCxは、Cx=Cp+Cfへと変化する。
【0027】
このセンサICは、表面パネル43に指44が無い場合と、指44が接触している場合とのCxの変化量を検知し、指44による操作が行われたか否かを判定する。
その後、このセンサICは、この判定結果を、この静電容量式タッチセンサを搭載する携帯型電子機器のCPUへと送信し、これにより、該電子機器が予め設計された所定の処理を実行する。
静電容量45が有する容量値Cfは、検出電極41Aと指44のオーバーラップ(重なり)面積に比例し、また、検出電極41Aと使用者の指44との間にある物体の比誘電率(物体の誘電率と真空の誘電率の比)に比例する。
【0028】
図3に示すように、FPC40の検出電極41Aと表面パネル43(特に使用者の指44が触れる部位)との間に空気層46だけが存在する場合、検出電極41Aと使用者の指44との間にある物体の比誘電率が小さくなるため、静電容量45の容量値は低下する。
静電容量45の容量値が低下すると、使用者の指44が表面パネル43上に有る場合と無い場合との、Cxの差分が小さくなり、センサICがCxの変化を検出できなくなる可能性が生じる。
次に、本発明の実施の形態に係る静電容量式タッチセンサの1実施例としてのFPCについて説明する。
【0029】
本発明の実施の形態に係る静電容量式タッチセンサの1実施例としてのFPC40の場合は、図4に示すように、検出電極41Aを覆うように接着剤47の層が存在する。この場合は、FPC40の検出電極41Aと表面パネル43(特に使用者の指44が触れる部位)との間にできる空気層46の領域が占める体積は小さくなる。
ここで、接着剤47の比誘電率は空気層46に対して大きく、更に空気層46の領域が占める体積を小さくすることができるので、Cf45の容量値の低下を抑制することができる。
従って、使用者の指44が表面パネル43上に有る場合と無い場合との、Cxの差分を十分な大きさに確保することができるので、センサICは静電容量の変化をより確実に検出することができる。
【0030】
以下、本発明の実施形態に係る静電容量式タッチセンサの効果面について述べる。
ここでは、図1に示す静電容量式タッチセンサにおいて、ガラスから成る表面パネル5の厚みを0.5〔mm〕、表面パネル5とFPC3との間のクリアランスを0.2〔mm〕とする。更に、FPC3上の検出電極2A(図2)は、縦4〔mm〕、横5〔mm〕の長方形とする。
これらの設計値は、検出電極2Aと使用者の指44との間で相対的に形成される静電容量の大きさを決める要素である。
表面パネル5とFPC3との間のクリアランスが0.2〔mm〕であるため、空気層及びアクリル系材料から成る接着剤8の厚さも0.2〔mm〕となる。
検出電極2AとGND電極2Bとで形成される寄生容量は、上述の設計値から、約10〔pF〕となるので、静電容量式タッチセンサに使用者が指44を接触させていない場合のセンサICの検出する静電容量Cxは10〔pF〕となることが見込まれる。但し、アクリル系材料の誘電率には幅が有るので、必ずしもこの値に限るものではない。
【0031】
本実施の形態のように検出電極2Aの上部に上記と同じ空気層及びアクリル系材料から成る接着剤8の層が存在するとき、使用者の指44と検出電極2Aとで形成される静電容量Cfは、上述の設計値からは、約4〔pF〕となる。また、Cxは寄生容量10〔pF〕を加えて、約14〔pF〕となる。
この場合の静電容量比Cf/Cx(即ち検出感度)は、約40〔%〕となる。
一方、図3に示すように、検出電極2Aの上部に接着剤8の層が無く、表面パネル5との間に空気層だけが存在する場合、静電容量Cfは約2.3〔pF〕となり、Cxは寄生容量10〔pF〕を加えて12.3〔pF〕となる。この場合の感度は約22.6%となる。
これにより、本実施形態の構成によれば、静電容量式タッチセンサ1を表面パネルに固定するための接着剤8の層形状及びFPC3に対する位置を工夫することで、検出の感度を約2倍まで高めることができることが理解される。
【0032】
本実施形態によれば、以上に述べたとおり、使用者が電子機器を操作するために、静電容量式タッチセンサ1に指を接触させたときに、使用者の指とセンサ電極2を構成する検出電極2Aとの間にある空気層が占める体積を小さくすることができる。そのため、使用者の指とセンサ電極2との間に形成される静電容量を減少させることがない。これにより、検出感度が高まるので、センサICによる静電容量の変化の検出を確実に行わせることが可能となり、使用者による入力操作を安定かつ確実に検出した上で、該検出結果に応じた処理を電子機器に行わせることができる効果が得られる。
【0033】
(他の実施の形態)
図5は、本発明の他の実施例の静電容量式タッチセンサのFPCの抜き穴付近を示した図である。
同図に示す本発明の他の実施形態に係る静電容量式タッチセンサの主な構成は、前述の実施形態に係る静電容量式タッチセンサ1の構成と同様であるが、LED4Cの位置と、FPC3に配設される接着剤64の材質を前述の実施形態とは変更されている。また、接着剤64の配設領域が前述の実施形態とは異なっている。
より具体的には、接着剤64は、検出電極2Aの上部の他、LED4Cの上部にも配設され、かつ、接着剤64が接着剤8(図1)とは違って透光性の無い素材で構成されているところが異なる。
【0034】
図2に示すFPC3に配設される接着剤8と同様に、図5に示すFPC3に配設される接着剤64は、FPC64の抜き穴7を避けるように設けられ、かつ、この接着剤64は少なくともセンサ電極2の検出電極2Aを覆うように設定されている。
更に、この接着剤64は、その配設領域が、FPC3上に搭載されたLED4Cの上部を覆うように設計されている。
通常、LED4Cからの発光は、LED4Cの側面から発生するが、LED4Cの上面及び下面からも光が漏れる。
このままでは、この上面及び下面からの光が、FPC3を通して漏れてくる可能性がある。しかしながら、本発明の他の実施形態に係る静電容量式タッチセンサにおいては、接着剤64がLED4Cの上部を覆っており、かつ、接着剤64は透光性の無い素材で構成されているため、FPC3から光が漏れてくるのを防ぐことができる。
【0035】
他の実施形態に係る静電容量式タッチセンサは、上記のとおり構成したので、表面パネル5のアイコン6以外には静電容量式タッチセンサからのLED光が到達しない。即ち、電子機器を暗い環境で使用した際でも表面パネルからの無駄な光漏れが防止され、使用者にとって一層使用し易くなり、また、接着剤64の材質と配設領域だけの工夫であるので、電子機器のデザイン性を損なうことも無くなる効果が有る。
【符号の説明】
【0036】
1 静電容量式タッチセンサ(本実施形態に係るタッチセンサ)
2 センサ電極
3 FPC(フレキシブル回路基板)
5 表面パネル
6 アイコン
7 抜き穴
8 接着剤
15 センサIC
2A 検出電極
2B GND電極
4A 導光板
4B 反射板
4C LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面パネルの下部方向に位置し、前記表面パネル上の使用者が指を接触させる所定位置に対向する箇所に抜き穴を有する回路基板と、
前記回路基板の下部に設置され、前記表面パネル上の前記所定位置を照光する光源と、
前記回路基板の下部に設置され、前記光源からの発光を前記表面パネルに導く導光板と、
前記回路基板の上部に設置され、前記表面パネル上の前記所定位置と自己との間に形成される静電容量を検出するセンサ電極と、
前記表面パネルと前記回路基板との間に、前記抜き穴を回避して配設され、かつ前記センサ電極が備える検出電極の上面全体を覆う箇所を含めて配設されている接着剤層と、
前記表面パネル上の前記所定位置に使用者の指が有る場合と無い場合との前記静電容量の値の差を算出するセンサ回路と、
を備えたことを特徴とする静電容量式情報入力ユニット。
【請求項2】
前記接着剤層の誘電率は、同形状の空気層よりも大きいものであることを特徴とする請求項1記載の静電容量式情報入力ユニット。
【請求項3】
前記接着剤層は、塗布可能な素材で形成されているか、若しくは両面接着テープで代用されているものであることを特徴とする請求項1及び請求項2記載の静電容量式情報入力ユニット。
【請求項4】
前記接着剤層は、前記光源の上部を覆う箇所も含めて配設されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の静電容量式情報入力ユニット。
【請求項5】
前記接着剤層は不透明な素材で形成されていることを特徴とする請求項4記載の静電容量式情報入力ユニット。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の静電容量式情報入力ユニットを搭載した携帯型端末装置。
【請求項7】
表面パネルの下部方向に位置し、前記表面パネル上の使用者が指を接触させる所定位置に対向する箇所に抜き穴を有する回路基板を設置する設置工程と、
前記回路基板の下部に、前記表面パネル上の前記所定位置を照光する光源を設置する設置工程と、
前記回路基板の下部に、前記光源からの発光を前記表面パネルに導く導光板を設置する設置工程と、
前記回路基板の上部に、前記表面パネル上の前記所定位置と自己との間に形成される静電容量を検出するセンサ電極を設置する設置工程と、
前記設置工程に先立って、前記表面パネルと前記回路基板との間に、前記抜き穴を回避し、かつ前記センサ電極が備える検出電極の上面全体を覆う箇所を含めて接着剤層を配設する配設工程と、
前記表面パネル上の前記所定位置に使用者の指が有る場合と無い場合との前記静電容量の値の差を算出するセンサ回路を設置する設置工程と、
を有することを特徴とする静電容量式情報入力ユニットの製造方法。
【請求項8】
前記接着剤層として、誘電率が、同形状の空気層よりも大きい素材を使用することを特徴とする請求項7記載の静電容量式情報入力ユニットの製造方法。
【請求項9】
前記接着剤層は、塗布可能な素材で形成するか、若しくは両面接着テープで代用するものであることを特徴とする請求項7及び請求項8記載の静電容量式情報入力ユニットの製造方法。
【請求項10】
前記接着剤層は前記光源の上部を覆う箇所も含めて配設し、かつ前記接着剤層として、不透明な素材を使用することを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の静電容量式情報入力ユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−65429(P2013−65429A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202863(P2011−202863)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】