説明

静電容量式検出装置

【課題】センサ面内の全域に亘って検出感度の差を低減でき、しかもマルチポイントの検出を精度よく実現できる静電容量式検出装置を実現すること。
【解決手段】本発明の静電容量式検出装置(1)は、隣接電極間で静電容量が形成されるように、センサ基板(11)に配設された複数の検出電極(12)を具備し、センサ基板(11)の相対的に検出感度が低い角部検出領域(A2)に形成される静電容量を、相対的に検出感度が高い中央検出領域(A1)に形成される静電容量に対して相対的に大きくしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量の変化により被検出体を検出する静電容量式検出装置に関し、例えば、検出対象領域内における被検出体の座標を検出する静電容量式検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種機器の入力装置として静電容量方式のタッチパネルが提案されている(例えば、特許文献1参照)。かかるタッチパネルは、隣接電極間で静電容量が形成されるように、センサ基板上に千鳥格子状に配設された複数の検出電極を備える。各検出電極は、平面視にて略菱形形状をなしており、センサ面内のX軸方向に直列に接続されたX軸電極と、センサ面内でX軸方向に直交するY軸方向に直列に接続されたY軸電極とを含む。オペレータが自身の指をタッチパネル上のセンサ面の任意の位置に押し当てると、複数の検出電極間に形成された電気力線の一部が指に引き抜かれ、各検出電極間の静電容量が減少する。そして、各検出電極間の静電容量の変化量に応じて各X軸電極及び各Y軸電極から出力される出力信号を、X軸方向及びY軸方向の一端側から他端側に向けて順次検出することにより、センサ面内におけるオペレータの指のタッチ位置を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4550221号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の静電容量方式のタッチパネルにおいては、センサ基板上に同一形状の複数の検出電極を配設するため、センサ基板外縁部に形成される検出電極間の静電容量が、センサ基板中央部に形成される検出電極間の静電容量より小さくなる。このため、センサ基板の外縁部にオペレータの指を押し当てた場合の静電容量の変化量が、センサ基板の中央部にオペレータの指を押し当てた場合の静電容量の変化量に対して相対的に小さくなり、センサ基板の外縁部における検出感度が、センサ基板の中央部における検出感度に対して相対的に小さくなる。
【0005】
このため、従来の静電容量方式のタッチパネルにおいては、センサ基板の中央部における静電容量の変化量を基準としてタッチパネルを設計した場合には、センサ基板の外縁部にタッチしたオペレータの指を精度よく検出できなくなる問題が生じる。一方、センサ基板の外縁部における静電容量の変化量を基準として所定の閾値を設定した場合には、センサ基板の中央部で誤検出(被検出体がセンサ面に非接触の状態で被検出体が検出される)が生じる問題がある。特に、複数の被検出体を共に検出するマルチポイント検出を行う場合、センサ基板の外縁部に接近した被検出体とセンサ基板の中央部に接近した被検出体とを共に精度よく検出することは困難であった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みて為されたものであり、検出対象領域内の検出感度の差を低減でき、しかもマルチポイントの検出を精度よく実現できる静電容量式検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の静電容量式検出装置は、隣接電極間で静電容量が形成されるように、検出対象領域に配設された複数の検出電極を具備し、前記検出対象領域の相対的に検出感度が低い低感度領域に形成される静電容量を、相対的に検出感度が高い高感度領域に形成される静電容量に対して相対的に大きくしたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、被検出体が低感度領域に接近した場合の静電容量の変化量と、高感度領域に接近した場合の静電容量の変化量との差が小さくなるので、低感度領域における被検出体の検出感度と、高感度領域における被検出体に検出感度との差が低減され、検出対象領域内の検出感度の差を低減できる。また、複数の被検出体が、検出対象領域の低感度領域及び高感度領域に、それぞれ接近した場合においても、低感度領域及び高感度領域の各被検出体をそれぞれ検出することが可能となるので、マルチポイント検出を精度よく実現できる。
【0009】
本発明の静電容量式検出装置においては、前記検出対象領域の外縁部に形成される静電容量を、前記検出対象領域の中央部に形成される静電容量に対して相対的に大きくすることが好ましい。この構成により、被検出体が検出対象領域の外縁部に接近した場合の静電容量の変化量と、検出対象領域の中央部に存在する接近した場合の静電容量の変化量との差が小さくなるので、検出対象領域の外縁部における被検出体の検出感度と、中央部における被検出体に検出感度との差を低減でき、検出対象領域内の検出感度の差を低減できる。
【0010】
本発明の静電容量式検出装置においては、前記検出対象領域のX軸方向における両端部に形成される静電容量及び前記X軸方向に直交するY軸方向における両端部に形成される静電容量を、前記X軸方向及び前記Y軸方向の中央部に形成される静電容量に対して相対的に大きくすることが好ましい。この構成により、被検出体が検出対象領域のX軸方向及びY軸方向の両端部に接近した場合の静電容量の変化量と、X軸方向及びY軸方向の中央部に接近した場合の静電容量の変化量との差が小さくなるので、検出対象領域内の検出感度の差を低減できる。
【0011】
本発明の静電容量式検出装置においては、前記低感度領域の前記検出電極の電極面積を、前記高感度領域の前記検出電極の電極面積に対して相対的に大きくすることが好ましい。この構成により、検出対象領域の低感度領域に形成される検出電極間の静電容量が、検出対象領域の高感度領域に形成される検出電極間の静電容量に対して相対的に大きくなるので、被検出体が検出対象領域の低感度領域に接近した場合の静電容量の変化量と、高感度領域に接近した場合の静電容量の変化量との差が小さくなる。これにより、検出対象領域の低感度領域における被検出体の検出感度と、高感度領域における被検出体に検出感度との差が低減されるので、検出対象領域内の検出感度の差を低減できる。
【0012】
本発明の静電容量式検出装置においては、前記低感度領域の前記検出電極の外周の長さを、前記高感度領域の前記検出電極の外周の長さに対して相対的に大きくすることが好ましい。この構成により、検出対象領域の低感度領域に形成される検出電極間の静電容量が、検出対象領域の高感度領域に形成される検出電極間の静電容量に対して相対的に大きくなるので、被検出体が検出対象領域の低感度領域に接近した場合の静電容量の変化量と、高感度領域に接近した場合の静電容量の変化量との差が小さくなる。これにより、検出対象領域の低感度領域における被検出体の検出感度と、高感度領域における被検出体に検出感度との差が低減されるので、検出対象領域内の検出感度の差を低減できる。
【0013】
本発明の静電容量式検出装置においては、前記複数の検出電極が配設されたセンサ基板と、当該センサ基板上に設けられ前記検出電極を被覆する被覆材とを具備し、前記被覆材の厚みが相対的に厚い領域に形成される静電容量が、前記被覆材の厚みが相対的に薄い領域に形成される静電容量に対して、相対的に大きくなるようにしたことが好ましい。この構成により、被覆材の厚みが相対的に厚い領域に被検出体が接近した場合の静電容量の変化量と、被覆材の厚みが相対的に薄い領域に被検出体が接近した場合の静電容量との差が小さくなるので、検出対象領域内の検出感度の差を低減することができる。
【0014】
本発明の静電容量式検出装置においては、前記高感度領域にグランド電極を配設することが好ましい。この構成により、検出電極間に形成される静電容量の一部がグランド電極を介して吸収されるので、検出電極間に形成される静電容量値が減少する。これにより、検出対象領域内における検出感度を任意に調整できるので、検出対象領域内における検出感度の差を低減できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、検出対象領域内の検出感度の差を低減でき、しかもマルチポイントの検出を精度よく実現できる静電容量式検出装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態に係る静電容量式検出装置の構成図である。
【図2】本実施の形態に係る静電容量式検出装置の検出電極の配置を示す図である。
【図3】本実施の形態に係る静電容量式検出装置の検出原理の概念図である。
【図4】静電容量式検出装置の静電容量変化量を示す概念図である。
【図5】検出電極の形状と外周の長さとの関係を示す平面模式図である。
【図6】被覆材を設けたセンサ基板の一例を示す断面模式図である。
【図7】グランド電極による静電容量を調整の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、複数の検出電極間に形成される静電容量の変化量を介して被検出体を検出する静電容量式検出装置において、検出対象領域内における被検出体の検出感度が、検出対象領域内に配設される複数の検出電極間に形成される静電容量の変化量に応じて変化することに着目した。そして、本発明者らは、検出対象領域内における被検出体の検出感度に応じて、検出対象領域内に形成される静電容量の大きさを変化させることにより、被検出体が検出領域内に接近した場合の静電容量の変化量を低減できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る静電容量式検出装置の構成図である。図1に示すように、本実施の形態に係る静電容量式検出装置1は、平面視にて略矩形形状のセンサ基板11と、隣接電極間で静電容量が形成されるように、検出対象領域となるセンサ基板11に配設された複数の検出電極12と、を具備する。複数の検出電極12は、センサ基板11の相対的に検出感度が低い低感度領域に形成される静電容量が、相対的に検出感度が高い高感度領域に形成される静電容量に対して相対的に大きくなるように配設される。また、複数の検出電極12は、センサ基板11外縁部に形成される静電容量が、センサ基板11中央部に形成される静電容量に対して相対的に大きくなるように配設される。
【0019】
図2は、検出電極12の配置を示す平面模式図である。なお、図2においては、センサ基板11の角部を拡大して示している。図2に示すように、複数の検出電極12は、平面視にて略斜方形形状(略菱形形状)をなしており、センサ基板11上に千鳥格子状に配設される。また、複数の検出電極12は、一対の対角線の一方の対角線がX軸方向に沿って配設され、他方の対角線がY軸方向に沿って配設される。複数の検出電極12は、X軸方向において互いに隣接する検出電極12に直列に接続されX軸電極列X1〜X4を構成する複数のX軸電極12Xと、Y軸方向において互いに隣接する検出電極12に直列に接続されY軸電極列Y1〜Y4を構成する複数のY軸電極12Yとを含む。各X軸電極列X1〜X4はX軸側検出部13X(図1参照)に接続され、各Y軸電極列Y1〜Y4はY軸側検出部13Y(図1参照)に接続される。
【0020】
複数の検出電極12は、センサ基板11外縁部(辺部及び角部)に形成される検出電極12間の静電容量が、センサ基板11中央部に形成される検出電極12間の静電容量に対して相対的に大きくなるように配設される。また、複数の検出電極12は、X軸方向における両端部に形成される静電容量及びY軸方向における両端部に形成される静電容量が、X軸方向及びY軸方向の中央部に形成される静電容量に対して相対的に大きくなるように配設される。本実施の形態においては、検出対象領域となるセンサ基板11外縁部に配設される検出電極12の電極面積が、センサ基板11中央部に配設される検出電極12の電極面積に対して相対的に大きくなるように配設される。これにより、センサ基板11外縁部に形成される検出電極12間の静電容量が、センサ基板11中央部に形成される検出電極12間の静電容量に対して相対的に大きくなるので、センサ基板11外縁部に被検出体が接近した場合の静電容量の変化量と、センサ基板11中央部に被検出体が接近した場合の静電容量の変化量との差が低減される。この結果、センサ基板11内における検出感度の差を低減することが可能となる。
【0021】
また、本実施の形態においては、図2の点線に示すように、検出対象領域となるセンサ基板11を、相対的に検出感度が高い高感度領域となるセンサ基板11中央部の中央検出領域A1と、センサ基板11角部の相対的に検出感度が低い低感度領域である角部検出領域A2と、センサ基板11のX軸方向及びY軸方向における両端部の中間感度領域である辺部検出領域A3とに分割する。そして、低感度領域である角部検出領域A2に配設される検出電極12(X軸電極12Xb、Y軸電極12Yb)の電極面積が、高感度領域である中央検出領域A1に配設される検出電極12(X軸電極12Xa、Y軸電極12Ya)の電極面積に対して相対的に大きくなるように配設される。また、複数の検出電極12は、中間感度領域である辺部検出領域A3間に配設された検出電極12(X軸電極12Xc、Y軸電極12Yc)の電極面積が、角部検出領域A2に配設された検出電極12(X軸電極12Xb、Y軸電極12Yb)の電極面積と、中央検出領域A1に配設された検出電極12(X軸電極12Xa、Y軸電極12Ya)の電極面積との間の電極面積になるように配設される。
【0022】
この構成により、角部検出領域A2に形成される静電容量が、中央検出領域A1に形成される静電容量に対して相対的に大きくなる。また、辺部検出領域A3に形成される静電容量が、中央検出領域A1に形成される静電容量と、角部検出領域A2に形成される静電容量との間の大きさとなる。これにより、被検出体としてのオペレータの指が、センサ基板11の中央検出領域A1に接近した場合の静電容量の変化量と、角部検出領域A2に接近した場合の静電容量の変化量と、辺部検出領域A3に接近した場合の静電容量の変化量との差が低減される。この結果、センサ基板11外縁部の角部検出領域A2及び辺部検出領域A3における被検出体の検出感度と、センサ基板11中央部の中央検出領域A1における被検出体の検出感度との差を低減することが可能となる。
【0023】
なお、図2に示した例では、センサ基板11内を3つの検出領域A1〜A3に分割し、検出感度に応じて各検出領域A1〜A3に形成される静電容量の大きさを変更する例について説明したが、センサ基板11に配置されるX軸電極列X1〜X4及びY軸電極列Y1〜Y4毎に電極面積を変更する構成としてもよい。この場合、図2に示すように、X軸方向におけるセンサ基板11の一辺部のY軸電極列Y1及びY2に属するY軸電極12Yの電極面積を、X軸方向におけるセンサ基板11の中央部のY軸電極列Y3及びY4に対して相対的に大きくすることにより、上述した例と同様に、センサ基板11面内における検出感度の差を低減できる。また、センサ基板11のY軸方向における一辺部のX軸電極列X1及びX2に属するX軸電極12Xの電極面積を、Y軸方向におけるセンサ基板11の中央部のX軸電極列X3及びX4に属するX軸電極12Xの電極面積に対して相対的に大きくすることにより、センサ基板11面内における検出感度の差を低減することが可能となる。この場合、センサ基板11の角部(X軸電極列X1及びX2及びY軸電極列Y1及びY2を含む領域)に属するX軸電極12X及びY軸電極12Yの電極面積を特に増大させることにより、検出対象領域内における検出感度の差を特に低減できる。なお、本実施例において、センサ基板11面内における低感度領域である角部検出領域A2及び中間感度領域である辺部検出領域A3の範囲を外縁部とし、この外縁部に配設される検出電極12(X軸電極12Xb、12Xc及びY軸電極12Yb、12Yc)の電極面積を、センサ基板11中央部の高感度領域である中央検出領域A1に配設される検出電極12(X軸電極12Xa及びY軸電極12Ya)の101%から150%の範囲にすることにより、センサ基板11面内における検出感度の差を低減できる。
【0024】
なお、複数の検出電極12は、必ずしも電極面積を変えて配設する必要はなく、被検出体の検出感度に応じて検出対象領域内に形成される静電容量の大きさを調整できるものであれば、どのように配設してもよい。例えば、各検出電極12の外周の長さを大きくすること、検出電極12間の距離を小さくすること、センサ基板11内における検出電極12の密度(占有率)を大きくすること、などにより各検出電極12間の静電容量を大きくすることができる。また、検出電極12を導電性の低い材料を用いることにより、検出電極12間の静電容量を大きくすることもできる。
【0025】
静電容量式検出装置1は、図1に示すように、センサ基板11面内のX軸方向における静電容量の変化量を検出するX軸側検出部13Xと、センサ基板11面内でX軸方向に直交するY軸方向における静電容量の変化量を検出するY軸側検出部13Yと、X軸側検出部13X及びY軸側検出部13Yから出力された出力信号をアナログ−デジタル変換するA/D変換部14と、X軸方向及びY軸方向における静電容量の変化量などを記憶する記憶部15と、検出した静電容量の変化量などを用いて演算処理を行う演算処理部16と、演算処理部16で算出した被検出体位置を出力するインターフェイス部17とを具備する。
【0026】
X軸側検出部13Xは、X軸方向の一端側(図2におけるX1側)から他端側(図2におけるX4側)に向けて各X軸電極列X1〜X4に属するX軸電極12の静電容量変化量を順次検出する。なお、X軸側検出部13Xは、X軸電極12の静電容量変化を順次検出できればよく、検出順序は特に限定されず、どのような順序で各X軸電極列X1〜X4に属するX軸電極12Xの静電容量の変化量を検出してもよい。
【0027】
Y軸側検出部13Yは、Y軸方向の一端側(図2におけるY1側)から他端側(図2におけるY4側)に向けて各Y軸電極列Y1〜Y4に属するY軸電極12Yの静電容量変化量を順次検出する。なお、Y軸側検出部13Yは、Y軸電極12Yの静電容量変化を順次検出できればよく、検出順序は特に限定されず、どのような順序で各Y軸電極列Y1〜Y4に属するY軸電極12Yの静電容量の変化量を検出してもよい。
【0028】
なお、ここでは、X軸側検出部13X、Y軸側検出部13Yにおいて、各検出電極12間の静電容量の変化量を直接検出する場合を示しているが、本実施の形態は、これに限られない。例えば、X軸側検出部13X及びY軸側検出部13Yで得られた静電容量値を、演算処理部18等の他の回路において基準容量値と比較して静電容量変化量を算出する構成としてもよい。
【0029】
A/D(アナログ/デジタル)変換部14は、X軸側検出部13Xの検出信号(X軸電極12Xの静電容量変化量に関するデータ)及びY軸側検出部13Yの検出信号(Y軸電極12Yの静電容量変化量に関するデータ)をデジタル信号に変換し、記憶部15、演算処理部16に供給する。
【0030】
記憶部15は、検出された電極の静電容量変化量を記憶するための記憶領域を有している。記憶部15は、X軸電極12Xの静電容量変化量の検出時に、各X軸電極列X1〜X4に属する全てのX軸電極12Xの静電容量変化量を同時に記憶領域に記憶する構成としてもよく、一部のX軸電極12X(少なくとも隣接する2つのX軸電極12X)の静電容量変化量を選択的に記憶する構成としてもよい。
【0031】
なお、X軸側検出部13X、Y軸側検出部13Yで検出されたデータは、演算処理部16を介して記憶部15に供給する構成としてもよく、X軸側検出部13X、Y軸側検出部13YからA/D変換部14を介して記憶部15に直接データが供給される構成としてもよい。
【0032】
演算処理部16は、検出された電極の静電容量の変化量を用いて演算処理を行うことにより、被検出体が接触した領域数や座標領域を決定する。演算処理部16は、X軸側検出部13Xが検出した所定のX軸電極12Xの静電容量の変化量と、当該所定のX軸電極12Xと隣接するX軸電極12Xの静電容量の変化量を比較し(差分をとり)、当該比較値及び検出されたX軸電極12Xの静電容量の変化量の大きさに基づいて、検出対象の座標領域を規定する開始電極及び終了電極等を決定する。
【0033】
次に、静電容量式検出装置1の測定原理について説明する。図3A,図3Bは、静電容量式検出装置1の測定原理を示す模式図であり、センサ基板11に接近した被検出体としてのオペレータの指20を模式的に示している。被検出体としてのオペレータの指20が接近していない状態では、センサ基板11上に配置された検出電極12間には、一定の静電容量が形成されている。
【0034】
図3Aに示すように、オペレータの指20がセンサ基板11の中央部に接近した場合、中央部に配設された一の検出電極12と、当該一の検出電極12の周囲に隣接して配設されたすべての検出電極12(図3Aに示す例では、8つの検出電極12)との間に形成される電気力線Eが、オペレータの指20によって引き抜かれて静電容量が減少する。
【0035】
一方で、図3Bに示すように、オペレータの指20がセンサ基板11の辺部に接触した場合、辺部に配設された一の検出電極12と、当該一の検出電極12の周囲に隣接して配設された検出電極12(図3Bに示す例では、5つの検出電極12)との間に形成される電気力線Eが、オペレータの指20によって引き抜かれて静電容量が減少する。このため、センサ基板11の辺部に指20が場合の静電容量が減少量は、センサ基板11の中央部に指20が接近した場合に対して相対的に小さくなる。
【0036】
図4は、検出対象領域となるセンサ基板11面内における静電容量の変化量を示す概念図である。なお、図4においては、複数の検出電極12を同一形状の検出電極で構成し、センサ基板11にオペレータの指20が接近した場合の静電容量の変化について示している。図4に示すように、各検出電極12を同一形状の検出電極で構成した場合、センサ基板11外縁部に接近するにつれて、静電容量の変化量が小さくなる。また、センサ基板11の一辺部から角部に接近するにつれて、静電容量の変化量が減少する。このように、センサ基板11に配設される検出電極12が全て同一形状の場合には、センサ基板11の辺部及び角部にオペレータの指20が接近した場合の静電容量の変化量が、センサ基板11中央部にオペレータの指20が接近した場合の静電容量の変化量に対して相対的に小さくなる。この結果、センサ基板11の辺部及び角部に配設されたX軸電極12X及びY軸電極12Yから出力される出力信号が、センサ基板11中央部に配設されたX軸電極12X及びY軸電極12Yから出力される出力信号に対して相対的に小さくなるので、センサ基板11の辺部及び角部における検出感度が低下する。このため、本実施の形態に係る静電容量式検出装置1においては、センサ基板11の外縁部に形成される静電容量が、センサ基板11の中央部に形成される静電容量に対して相対的に大きくなるように調整する。これにより、センサ基板11の角部検出領域A2及び辺部検出領域A3にオペレータの指20が接近した場合の静電容量の変化量が、中央検出領域A1にオペレータの指20が接近した場合の静電容量の変化量に対して相対的に大きくなる。この結果、センサ基板11の角部検出領域A2及び辺部検出領域A3におけるオペレータの指20の検出感度と、中央検出領域A1におけるオペレータの指20の検出感度との差が小さくなるので、センサ基板11内の全域に亘って検出感度の差を低減することが可能となる。
【0037】
本実施の形態に係る静電容量式検出装置1においては、センサ基板11上に配置されたガラス基板(不図示)などの操作面にオペレータの指20などの被検出体が際に変化する静電容量の変化量を検出して接触位置を特定する。本実施の形態に係る静電容量式検出装置1においては、被検出体がセンサ面に接触していない状態の電極の静電容量値を基準とし、この基準となる静電容量値から被検出体が接触した際に生じる静電容量の変化量を検出する。このような静電容量方式としては、電極とグランド(GND)と間に形成される自己容量を検出対象とする自己容量検出方式と、2つの検出電極12間に形成される相互容量を検出対象とする相互容量検出方式と、基準電極と2つのセンサ電極の間に形成される相互容量の差として定義される容量を検出対象とする差動型相互容量検出方式とがあるが、静電容量式検出装置1においては、いずれの方式を適用してもよい。なお、自己容量検出方式では、接触部分の静電容量が増加(プラス方向に変化)し、相互容量検出方式では、接触部分の静電容量が減少(マイナス方向に変化)し、図2は相互容量検出方式により検出した場合を示している。
【0038】
次に、検出電極12の総電極面積を変えずに検出電極12の外周の長さ(端面の長さ)を変更する例について説明する。図5は、検出電極12の形状と外周の長さとの関係を示す平面模式図である。図5においては、平面視略矩形形状の検出電極12を単一の検出電極12とする例、検出電極12を2分割して2つの検出電極12とする例、及び4分割して4つの検出電極12とする例について示している。これらの例では、検出電極12の外周の長さが大きくなるにつれて(すなわち、分割しない場合、2分割、4分割の順)、検出電極12間に形成される静電容量が大きくなる。このため、例えば、略同一面積を有する検出電極12をセンサ基板11上にパターニングし、X軸方向及びY軸方向における両辺部の辺部検出領域A3の検出電極12を2分割し、角部検出領域A2の検出電極12を4分割することにより、検出対象領域であるセンサ基板11外縁部の検出電極12の外周の長さを、センサ基板11中央部の検出電極12の外周の長さに対して相対的に大きくできる。この構成により、センサ基板11外縁部に形成される静電容量が、センサ基板11中央部に形成される静電容量に対して相対的に大きくなるので、被検出体がセンサ基板11外縁部に接近した場合の静電容量の変化量と、中央部に接近した場合の静電容量の変化量との差が小さくなる。この結果、検出対象領域の外縁部における被検出体の検出感度と、中央部における被検出体に検出感度との差が低減されるので、検出対象領域内の検出感度の差を低減できる。
【0039】
なお、上述した実施の形態においては、センサ基板11外縁部における静電容量の変化量と、センサ基板11中央部における静電容量の変化量とを考慮して検出電極12間に形成される静電容量を調整する例について説明したが、センサ基板11上に配置される被覆材の厚みを考慮して検出電極12間に形成される静電容量を調整してもよい。
【0040】
図6は、被覆材を設けたセンサ基板11の一例を示す断面模式図である。図6に示す静電容量式検出装置1は、複数の検出電極12が配設されたセンサ基板11と、このセンサ基板11上に設けられ検出電極12を被覆する被覆材としてオーバーレイ21とを具備する。オーバーレイ21は、センサ基板11中央部から上方に膨出する略ドーム状をなしており、センサ基板11中央部の厚みD1がセンサ基板11外縁部の厚みD2に対して相対的に大きくなるように設けられる。図6に示す静電容量式検出装置1においては、オーバーレイ21を介して被検出体を検出する。このため、オーバーレイ21の厚みD1が相対的に大きいセンサ基板11中央部に被検出体が接近した場合の静電容量の変化量が、オーバーレイ21の厚みD2が相対的に小さいセンサ基板11外縁部に被検出体が接近した場合の静電容量の変化量に対して相対的に小さくなるので、センサ基板11中央部における被検出体の検出感度が、センサ基板11外縁部における被検出体の検出感度に対して相対的に小さくなる。
【0041】
複数の検出電極12は、オーバーレイ21の厚みが相対的に厚い領域に形成される静電容量が、オーバーレイ21の厚みが相対的に薄い領域に形成される静電容量に対して、相対的に小さくなるように配設される。例えば、図6に示す例では、センサ基板11中央部のオーバーレイ21の厚みD1に対して、センサ基板11外縁部におけるオーバーレイ21の厚みD2が相対的に小さくなる。このため、オーバーレイ21の厚みが厚く、被検出体の検出感度が相対的に低下する中央検出領域A1に配設される検出電極12間に形成される静電容量が、オーバーレイ21の厚みが薄い角部検出領域A2及び辺部検出領域A3に配設された検出電極12間に形成される静電容量に対して大きくなるように検出電極12を配設することにより、オーバーレイ21の厚みが相対的に厚い領域に被検出体が接近した場合の静電容量の変化量と、オーバーレイ21の厚みが相対的に薄い領域に被検出体が接近した場合の静電容量との差が小さくなる。これにより、センサ基板11上に設けたオーバーレイ21の厚みによる検出対象領域内の検出感度の差を低減することができる。
【0042】
また、検出対象領域となるセンサ基板11に形成される静電容量は、センサ基板11の一部の領域にグランド電極を配設することによっても調整することもできる。
【0043】
図7は、グランド電極による静電容量の調整の一例を示す図である。図7Aに示すように、センサ基板11に配設される検出電極12間には、所定の静電容量C1が形成されている。ここで、図7Bに示すように、検出対象領域となるセンサ基板11の一部の領域にグランド電極22を配設した場合、検出電極12間に形成される静電容量C1の一部がグランド電極22に吸収されて静電容量C2に減少する。このため、例えば、相対的に検出感度が高い中央検出領域A1にグランド電極22を配設することにより、センサ基板11面内における検出感度を任意に調整できるので、センサ基板11面内における検出感度の差をより低減できる。なお、グランド電極22は、例えば、センサ基板11の高感度領域である中央検出領域A1に配設することにより、中央検出領域A1に形成される静電容量の一部がグランド電極22に吸収されて減少するので、検出対象領域となるセンサ基板11内における検出感度の差を低減することができる。
【0044】
以上説明したように、上記実施の形態に係る静電容量式検出装置1によれば、センサ基板11の低感度領域(角部検出領域A2及び辺部検出領域A3)に形成される検出電極12間の静電容量が、高感度領域(中央検出領域A1)に形成される検出電極12間の静電容量に対して相対的に大きくなるので、被検出体が低感度領域に接近した場合の静電容量の変化量と、高感度領域に接近した場合の静電容量の変化量との差が小さくなる。これにより、低感度領域における被検出体の検出感度と、高感度領域における被検出体に検出感度との差が低減されるので、検出対象領域内の検出感度の差を低減できる。また、複数の被検出体が、検出対象領域の低感度領域及び高感度領域に、それぞれ接近した場合においても、低感度領域及び高感度領域の各被検出体をそれぞれ検出することが可能となるので、マルチポイントの検出の検出を精度よく実現できる。
【0045】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0046】
例えば、上述した実施の形態においては、検出電極が平面視にて略斜方形状の例について説明したが、検出電極の形状は、隣接電極間に静電容量が形成されるものであれば、特に限定されず、適宜変更可能である。例えば、検出電極の形状としては、平面視において、略三角形形状、略矩形形状、略多角系形状、略円形形状、略楕円形状としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、被検出体との間の距離を検出でき、しかも被検出体によるタッチ位置を精度良く検出できるという効果を有し、特に、携帯機器、デジタルフォトフレーム、PC、オーディオの操作パネルなど、各種入力デバイスに適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 静電容量式検出装置
11 センサ基板
12 検出電極
12X X軸電極
12Y Y軸電極
13X X軸側検出部
13Y Y軸側検出部
14 A/D変換部
15 記憶部
16 演算処理部
17 インターフェイス部
20 指
21 オーバーレイ
22 グランド電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接電極間で静電容量が形成されるように、検出対象領域に配設された複数の検出電極を具備し、
前記検出対象領域の相対的に検出感度が低い低感度領域に形成される静電容量を、相対的に検出感度が高い高感度領域に形成される静電容量に対して相対的に大きくしたことを特徴とする静電容量式検出装置。
【請求項2】
前記検出対象領域の外縁部に形成される静電容量を、前記検出対象領域の中央部に形成される静電容量に対して相対的に大きくしたことを特徴とする請求項1記載の静電容量式検出装置。
【請求項3】
前記検出対象領域のX軸方向における両端部に形成される静電容量及び前記X軸方向に直交するY軸方向における両端部に形成される静電容量を、前記X軸方向及び前記Y軸方向の中央部に形成される静電容量に対して相対的に大きくしたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の静電容量式検出装置。
【請求項4】
前記低感度領域の前記検出電極の電極面積を、前記高感度領域の前記検出電極の電極面積に対して相対的に大きくしたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の静電容量式検出装置。
【請求項5】
前記低感度領域の前記検出電極の外周の長さを、前記高感度領域の前記検出電極の外周の長さに対して相対的に大きくしたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の静電容量式検出装置。
【請求項6】
前記複数の検出電極が配設されたセンサ基板と、当該センサ基板上に設けられ前記検出電極を被覆する被覆材とを具備し、前記被覆材の厚みが相対的に厚い領域に形成される静電容量が、前記被覆材の厚みが相対的に薄い領域に形成される静電容量に対して、相対的に大きくなるようにしたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の静電容量式検出装置。
【請求項7】
前記高感度領域にグランド電極を配設したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の静電容量式検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−20542(P2013−20542A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154955(P2011−154955)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】