説明

静電容量式液面センサー

【課題】シンプルな構成であるとともに製造や取り扱いが容易な静電容量式液面センサーを得る。
【解決手段】気密端子2に設けられた導電ピン6に液面検出用の電極板7が設けられた静電容量式液面センサー1において、気密端子上に取付けられる液面検出部は二枚の電極板7とその電極の位置関係を固定する電気絶縁性のスペーサー8からなる検出部ユニット3として構成し、前記検出部ユニットを気密端子の導電ピンに対して接続固定する少なくとも一つの接続端子9を前記電極が変形を起こすよりも弱い力で変形可能とした。検出部ユニットに対してかかる応力が、接続端子の変形によって分散・緩和されるため、検出部である電極の変形を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の量を検出する静電容量式液面センサーに関するものであり、特に電動圧縮機などに取付けるための気密端子を一体に有するものに好適な構成を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から液体の量を検出する方法はいくつもあるが、中でもオイル等の非導電性液体の量を検出する手段としては静電容量式のセンサーが提案されている。このセンサーは空間を挟んだ電極間に電気絶縁性の液体が入り込むことによって電極間の静電容量が変化することを利用して、液体の有無やその量を検出するものである。例えば電極を筒状の電気絶縁性筐体に配置、または一方の電極を筒状に構成し、この筒状部内に液体が出入りすることで変化する電極間の静電容量から容器内の液体の量を測定するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11‐311561
【0004】
【特許文献2】特開平07‐260549
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
静電容量式の液面センサーにおいては上記の先行技術文献に示すように液体の連続的な量の変動をリアルタイムで検出できるようにされているものもあるが、精密に測ろうとするほどに静電容量の微妙な変化を検出するための判定が難しくなり、また静電容量は液体の種類やセンサーが取り付けられる容器の種類や大きさなどによっても変化するためいわゆる現物合わせが必要となることもある。
【0006】
一方で液体の連続的な量ではなく、液体の有無の検出のみに使い方を限定することで構成を簡易化した液面センサーとして例えば図6から図8に示すようなものが提案されている。この液面センサー101においては基板102に固定された2本の導電ピン104の先端には、各々金属製の電極板105が溶接によって固定され互いにほぼ平行に向かい合うように配置されている。
【0007】
この液面センサーは構造がシンプルである一方で、電極と導電ピンとの溶接によるわずかな傾きにより電極間の距離が変化してしまうため、感度をそろえるためには溶接時に発生する傾きなどを取り除くために電極間距離の調整作業が不可欠となる。特に静電容量を得るため面積を増やすように電極を長くするほどに、溶接部のわずかな傾きが電極間距離に大きな影響を及ぼしてしまう。さらに片持ち固定された電極がむき出しになっているため、組付時などに力がかかると電極を変形させる可能性がある。また変形を防ぐために電極を厚くするなどして強度を上げた場合には、比較的弱い溶接部などに応力が集中するため電極の位置関係を変化させる可能性がある。そのため慎重な取扱いが必要とされる。
【0008】
さらに製造時に正しい位置関係に調整しても、例えば電動圧縮機などに取付けられた場合には内部の圧力が上昇することによって基板が膨張して導電ピンの角度がわずかに変化することで、導電ピン先端に取付けられた電極板間の距離がより大きく変化する。そのため電極冠の静電容量が変化してしまい、液面センサーとしての性能が低下してしまうと言う問題がある。
【0009】
また2枚の電極が導電ピンを結ぶ同一直線状で溶接されるため、一方の溶接電極は導電ピン間に挿入する必要がある。さらに2枚目の電極の溶接時には先に固定された電極が溶接作業の邪魔にもなる。またセンサーを小型化するほどに電極間の間隔が狭くなるため電極も細く薄くなり、溶接時にかける電極間の圧力が充分に得られないと言う問題がある。
【0010】
そのためシンプルな構成であるとともに製造や取り扱いが容易な静電容量式液面センサーが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本発明の静電容量式液面センサーにおいては、気密端子上に取付けられる液面検出部をあらかじめ2枚の電極とスペーサーによる検出部ユニットとして構成しておくことで電極間の距離を一定に保つことを容易にし、この検出部ユニットを導電ピンに対して接続固定する少なくとも一つの接続端子を前記電極が変形を起こすよりも弱い力で変形可能としたことで、検出部ユニットの電極に掛かる応力を分散・緩和する。さらに検出部ユニットは電動圧縮機用の気密端子に接続固定されているので、取扱いとともに密閉形電動圧縮機への取付け作業が容易になる。
【0012】
また接続端子を電極よりも薄い金属板で構成したり、屈曲部を大きく迂回させることで固着部間の実際の距離よりも接続端子の長さを長くとることによって、前記電極が変形を起こすよりも弱い力で変形可能とし、検出部ユニットにかかる応力を接続端子全体に広く分散させることができる。
【0013】
また、2個の接続端子の一方の剛性を高くするとともに、他方の接続端子を柔軟な構造とすることによって、密閉ガラス端子への強固な固定と応力の分散の両立をより容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の液面センサーによれば液面検出部としてあらかじめ電極間の位置関係を固定した検出部ユニットを構成しておくことにより、電極間の位置関係の調整作業が容易になる。さらに検出部ユニットを固定する接続端子を前記電極が変形を起こすよりも弱い力で変形可能な充分に弾性を有する構造としたことで、検出部ユニットの固定時に部品の組み付け誤差などによって発生する応力や気密端子の変形によって生ずる力の大半を接続端子によって分散・緩和することができ、応力集中による検出部ユニットの変形や破断を避けることができる。そのため厳しい条件化での使用においても液面センサーの性能を保つことができる。
【0015】
また接続端子の一方の剛性を高め、他方を充分に柔軟な構造としたことで、検出部ユニットの確実な保持とそこにかかる応力の分散・緩和を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の静電容量式液面センサーの俯瞰図
【図2】図1の液面センサーの断面図
【図3】図2のA‐A断面図
【図4】本発明の液面センサーにおける他の実施形態を示す部分断面図
【図5】本発明の液面センサーにおける他の実施形態を示す部分断面図
【図6】従来の液面センサーの俯瞰図
【図7】図6の液面センサーの断面図
【図8】図6の液面センサーの正面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の静電容量式液面センサー1は、密閉形電動圧縮機などに取付けるための金属製気密端子2と液面検出部である検出部ユニット3により構成されている。気密端子2は、カップ状の金属基板4と、この金属基板を貫通してガラスなどの電気絶縁性充填材5によって絶縁固定された導電ピン6とからなる。
【0018】
また検出部ユニット3は互いに平行に相対する2枚の金属製の液面検出用電極板7と、この電極板の両端部に固定された電気絶縁製のスペーサー8によって構成されている。スペーサー8には電極板7の端部が挿入される孔8Aがあらかじめ設けられており、2枚の電極板7の先端部が差し込み固定される。こうしてスペーサーとともに検出部ユニットを構成することにより、2枚の電極板の位置関係が固定される。電極板7は通常の使用において容易にしならない程度の強度を持つ厚さとされることにより、検出部ユニットの構成する箱型形状と2枚の電極板間の位置関係は確実に維持される。それぞれの電極板7には、あらかじめ接続端子9が溶接固定されている。
【0019】
検出部ユニット3は前記接続端子9を介して気密端子2の導電ピン6に溶接によって接続固定される。接続端子9は金属板を屈曲部9Aで曲げた概ねL字の断面形状をしており、前述のように検出部ユニットを構成する前に電極板7に溶接などの方法で固定されている。この接続端子9の導電ピン6への溶接は電極板7に対して平行に行われるため、溶接電極に電極板や導電ピンが干渉することなく溶接作業も容易になる。この接続端子9は電極板7よりも薄く弾力的に曲がる構造とされているため、溶接時に発生する位置ずれや検出部ユニットに通常の取扱いや使用においてかかる応力で電極が変形する前に接続端子が変形することで、電極の変形とそれに伴う電極間の静電容量の変化を抑えることができる。そのため密閉形電動圧縮機に取付けられた場合に、容器の圧力が上昇して金属製気密端子2の膨張の影響で導電ピンの位置関係が僅かにずれたとしても、電極間の距離に実質的な影響を及ぼすこと無く安定した基準値を得ることができる。
【実施例1】
【0020】
図4に示す液面センサー21においては、接続端子29の屈曲部29Aを大きく迂回させて固着部間の実際の距離よりも接続端子の長さを長くしたことで、接続端子全体が力に対してしなりやすくなるので端子にかかる応力が接続端子上の一部に集中せず広く分散されるようになる。
【実施例2】
【0021】
2枚の接続端子をそれぞれ強度と弾性を両立させた構造とした上で、2枚を合わせることで適正な検出部ユニットの保持力を得るには高い技術力が必要とされる。そこで図5に示す液面センサー31においては、一方の接続端子39Aは板厚を厚くした剛性の高い構造とされている。さらに、他方の接続端子39Bは前述の実施例と同様に屈曲部39B1を大きく迂回させて全長を伸ばすとともに、より薄く弾力のある構造とされている。そのため、接続端子39Aがリード端子6に対して検出部ユニット3を強固に固定する一方で、接続端子39Bは溶接時に発生するひずみや寸法変化を弾性的に吸収することができる。本実施例では接続端子39Bとして金属板を加工したものを示したが、例えばより柔軟な導線などによる塑性変形を利用する構造としてもよい。
【0022】
また、前述の各実施例においては検出部ユニットとして電極板の端部を電気絶縁性のスペーサーに差し込み固定するものを示したが、検出部ユニットの固定時や取り扱い時に電極の位置関係がずれないように扱うことができるのであれば、必ずしも先端部でなくてもよい。例えば、電極板の先端がスペーサーを貫通して突き出す構造であってもよい。
【符号の説明】
【0023】
1、21、31:静電容量式液面センサー
2:気密端子
3:検出部ユニット(液面検出部)
4:金属基板
5:電気絶縁性充填材
6:導電ピン
7:電極板
8:スペーサー
9、29、39:接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板とそこに貫通され気密に絶縁固定された導電ピンにより気密端子が構成され、
その気密端子上に静電容量による液面検出用の電極が設けられた静電容量式液面センサーにおいて、
気密端子上に取付けられる液面検出部は二枚の電極とその電極の位置関係を固定する電気絶縁性のスペーサーからなる検出部ユニットとして構成し、
前記検出部ユニットを二つの導電ピンに対して接続固定する少なくとも一つの接続端子を前記電極が変形を起こすよりも弱い力で変形可能としたことを特徴とする静電容量式液面センサー。
【請求項2】
前記接続端子は電極よりも薄い金属板で構成されたことにより変形可能としたことを特徴とする請求項1に記載の静電容量式液面センサー。
【請求項3】
前記接続端子は屈曲部を大きく迂回させて固着部間の実際の距離よりも接続端子の長さを長くとることによって変形可能としたことを特徴とする請求項1または2に記載の静電容量式液面センサー。
【請求項4】
一方の接続端子は検出部ユニットを充分に保持できるように剛性を高め、
他方の接続端子は充分に柔軟で変形可能としたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の静電容量式液面センサー。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−92491(P2013−92491A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235711(P2011−235711)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(591071274)株式会社生方製作所 (17)
【Fターム(参考)】