説明

静電式塵埃吸着具およびその製造方法

【課題】 多様な部位の埃を効率的に除去できる静電式塵埃吸着具およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 静電ハタキ1は、柄棒2の外周面に形成された房状の第1塵埃吸着部3と、第1塵埃吸着部3の先端から穂状に突出した第2塵埃吸着部4とを備えている。第1塵埃吸着部3は、ポリプロピレンを素材とする延伸解繊糸を捲縮加工した緯糸束10aと、緯糸束10aの端部を偏立する経糸10bとからなる房素材10からなっており、房素材10の経糸10bを柄棒2に螺旋状に巻き付けることにより形成されている。第2塵埃吸着部4は、ポリプロピレンを素材とする延伸解繊糸を捲縮加工した糸束4aと、糸束4aを粘着テープで捲き締めてなる基部4bとからなっており、基部4bが柄棒2の先端に嵌入/固着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電式塵埃吸着具とおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストアや雑貨品店等では、陳列棚に置かれた商品に付着した埃等を除去するために、静電式の塵埃吸着具(以下、静電ハタキと記す)が広く用いられている。静電ハタキは、静電気を帯びやすいポリプロピレンを素材とする延伸解繊糸や不織布(以下、これらを吸着材と記す)を柄棒に取り付けたものである。静電ハタキでは、物品の表面に軽く触れるだけで吸着材に埃が吸着されるため、電気掃除機や通常の埃除けブラシ等を用いた場合とは異なり、小型軽量な商品をはじき飛ばしたりすることなく微細な埃を除去することができる。静電ハタキの形態としては、吸着材の端部を偏立した経糸を柄棒に螺旋状に巻き付けて房状にしたもの(特許文献1参照)や、多数の切り込みを設けた帯状の吸着材を柄棒に螺旋状に巻き付けて穂状にしたもの(特許文献2参照)が公知となっている。
【特許文献1】特公昭61−19259号公報
【特許文献2】特開平10−286211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の静電ハタキには、物品の表面に付着した埃の除去は容易に行えるが、房の径が大きいために物品間の隙間や陳列棚の隅等に吸着材が届き難く、これらの部位に溜まった埃が除去できないという問題があった。また、特許文献2の静電ハタキには、狭い部位に溜まった埃の除去は比較的容易に行えるが、柄棒の先端を物品に向けるかたちで用いることになるために使い勝手が悪いだけでなく、吸着材の総量(すなわち、吸着できる埃の量)もあまり多くできないという問題があった。
【0004】
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、多様な部位の埃を効率的に除去できる静電式塵埃吸着具およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る静電式塵埃吸着具は、棒状の柄棒と、前記柄棒の外周面に固着された房状の第1塵埃吸着部と、前記柄棒の中空部にその基端が嵌挿/固着され、前記第1塵埃吸着部の先端から穂状に突出した第2塵埃吸着部とを備えたことを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に係る静電式塵埃吸着具は、請求項1に記載の静電式塵埃吸着具において、少なくとも前記第1塵埃吸着部が帯電性樹脂を素材とする延伸解繊糸からなることを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に係る静電式塵埃吸着具は、請求項1または請求項2に記載の静電式塵埃吸着具において、前記柄棒がその先端に開口を有し、前記第2塵埃吸着部が前記開口に着脱自在に取り付けられたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項4に係る静電式塵埃吸着具の製造方法は、先端側にスリットが形成された筒状の柄棒と、緯糸束の端部を経糸によって偏立してなる房素材と、糸束の基部をテープで捲き締めてなる穂素材とを用い、前記柄棒の先端側に前記穂素材の基部を嵌入させる工程と、前記房素材の経糸を前記柄棒の先端側から螺旋状に巻き付ける工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の静電式塵埃吸着具によれば、房状の第1塵埃吸着部を用いることで物品の表面等の埃を効率的に除去でき、穂状の第2塵埃吸着部を用いることで物品間の隙間や棚の隅等の埃を容易に除去できる。また、請求項2の静電式塵埃吸着具によれば、柔軟かつ強靱な塵埃吸着部が得られるとともに、ポリプロピレン等の強帯電性の樹脂を用いれば塵埃の吸着能力を非常に高くすることができる。また、請求項3の静電式塵埃吸着具によれば、用途に応じて第2塵埃吸着部の材質や硬さを変えることや、消耗時に第2塵埃吸着部のみを新しいものに交換することが可能となる。また、請求項4の静電式塵埃吸着具の製造方法によれば、高い生産効率をもって丈夫な静電式塵埃吸着具を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を適用した静電式塵埃吸着具を詳細に説明する。
図1は実施形態に係る静電ハタキの斜視図であり、図2は実施形態に係る静電ハタキの縦断面図であり、図3は実施形態に係る静電ハタキの部品構成を示す展開斜視図であり、図4は実施形態に係る静電ハタキの製造工程を示す斜視図である。
【0011】
≪静電ハタキの構成≫
図1,図2に示すように、本実施形態の静電ハタキ1は、円筒状の柄棒2と、柄棒2の外周面に形成された房状の第1塵埃吸着部3と、第1塵埃吸着部3の先端から穂状に突出した第2塵埃吸着部4と、柄棒2における第1塵埃吸着部3の基端側に嵌め込まれたカバー5と、柄棒2の他端に嵌め込まれたエンドキャップ6とを主要構成要素としている。
【0012】
図3に示すように、柄棒2は、硬質樹脂を素材とするパイプを所定の長さに切断したものであり、先端側にスリット2aと係止孔2bとが形成され、中間部にピン孔2cが形成され、後端側に吊下紐孔2dが形成されている。スリット2aは柄棒2の軸方向に延設されており、柄棒2の先端側がこのスリット2aから開くようになっている。また、係止孔2bには第2塵埃吸着部4の固定に供される樹脂ピン(いわゆる、スマートピン)7が嵌挿され、ピン孔2cにはカバー5の固定に供されるストッパピン8が圧入され、吊下紐孔2dには吊下紐9が通される。
【0013】
第1塵埃吸着部3は、ポリプロピレンを素材とする延伸解繊糸を捲縮加工した緯糸束10aと、緯糸束10aの端部を偏立する経糸10bとからなる房素材10からなっており、後述するように、房素材10の経糸10bを柄棒2に螺旋状に巻き付けることにより形成されている。
【0014】
第2塵埃吸着部4は、ポリプロピレンを素材とする延伸解繊糸を捲縮加工した糸束4aと、糸束4aを粘着テープで捲き締めてなる基部4bとからなっており、基部4bが柄棒2の先端に嵌入/固着されている。
【0015】
カバー5は、先端側が拡がったラッパ状を呈しており、ストッパピン8に係止される位置で第1塵埃吸着部3の後部を前方に付勢する。また、エンドキャップ6は、柄棒2に嵌挿される小径部6aと、柄棒2の後端に係止される大径部6bとからなっており、小径部6aには吊下紐9が通される吊下紐孔6cが形成されている。
【0016】
≪静電ハタキの製造方法≫
以下、図4(a),(b)を参照し、静電ハタキ1の製造方法を説明する。
静電ハタキ1の製造にあたり、組立作業者は、先ず、図4(a)に示すように、第2塵埃吸着部4の後端に両面粘着テープ12を巻き付け、この両面粘着テープ12を介して房素材10の経糸10bの端部を第2塵埃吸着部4に粘着させた後、スリット2aに経糸10bを進入させながら第2塵埃吸着部4の後部を柄棒2内に所定量嵌入させる。なお、柄棒2はスリット2aで図中左右方向に開くため、第2塵埃吸着部4の嵌入は容易に行える。組立作業者は、第2塵埃吸着部4の柄棒2への嵌入を終えると、図示しない工具を用いて樹脂ピン7を柄棒2の係止孔2bに打ち込む。係止孔2bから打ち込まれた樹脂ピン7は、第2塵埃吸着部4を貫通して柄棒2の反対側の面に突き抜け、これにより第2塵埃吸着部4が柄棒2に固定される。
【0017】
次に、組立作業者は、図4(b)に示すように、所定のピッチをもって、房素材10の経糸10bを柄棒2に螺旋状に巻き付けてゆく。これにより、柄棒2は捲き締められてスリット2aが閉じ、第2塵埃吸着部4が柄棒2により強固に固定される。経糸10bの巻き付けが進行すると、房素材10の緯糸束10aが柄棒2の周囲に密集した状態で立設され、第1塵埃吸着部3が房状に形成される。組立作業者は、房素材10の巻き付けを終了すると、房素材10の端部を粘着テープ(図示せず)で固定した後、柄棒2のピン孔2cにストッパピン8を圧入する。なお、ストッパピン8の圧入は、柄棒2に第2塵埃吸着部4を嵌入させる工程の前に(すなわち、単体の柄棒2に対して)行ってもよい。
【0018】
次に、組立作業者は、柄棒2の後端からカバー5を嵌め込み、このカバー5をストッパピン8によって固定される位置まで前進させる。これにより、第1塵埃吸着部3の後端がカバー5により前方に押し付けられ、房素材10の緯糸束10aが前方に倒れることで第1塵埃吸着部3の形状が整えられる。しかる後、組立作業者は、柄棒2の後端にエンドキャップ6を嵌め込み、柄棒2およびエンドキャップ6の吊下紐孔2d,6cに吊下紐9を通し、吊下紐9の端部を結ぶことにより組立作業を終了する。
【0019】
≪実施形態の作用≫
清掃作業者は、静電ハタキ1を用いて物品や棚板に付着した埃を除去する場合、第1塵埃吸着部3で物品や棚板の表面を撫で、生起された静電気によって第1塵埃吸着部3に埃を吸着させる。第1塵埃吸着部3は、房状となっているために物品等を撫でる作業が容易であり、また、緯糸束10a(吸着材)の総量が大きいために比較的大量の埃を吸着できる。一方、清掃作業者は、物品間の隙間や陳列棚の隅等に溜まった埃を除去する場合、第2塵埃吸着部4で該部を撫で、生起された静電気によって第2塵埃吸着部4に埃を吸着させる。第2塵埃吸着部4は、穂状となっているために狭い部位にも糸束4aが届きやすく、埃の除去が効率的に行える。
【0020】
本実施形態の場合、第1塵埃吸着部3を構成する緯糸束10aや第2塵埃吸着部4を構成する糸束4aは、ポリプロピレンを素材とする柔軟かつ強靱、軽量な延伸解繊糸であるため、埃を除去する際にちぎれ飛ぶようなことが無く、吸着した埃も中性洗剤等によって容易に落とすことができ、更に静電ハタキ1が軽量となって清掃作業者の疲労も少なくなる。
【0021】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態は、本発明を静電ハタキに適用したものであるが、自動車の埃を除去するダスター等に適用してもよい。また、上記実施形態では第1塵埃吸着部や第2塵埃吸着部の素材としてポリプロピレンの延伸解繊糸を用いたが、静電気を帯びやすいものであれば、他の帯電性樹脂や獣毛等を用いることもできるし、多数の切り込みを設けた帯状を呈するもの等であってもよい。上記実施形態では第2塵埃吸着部を柄棒に一体化するようにしたが、用途に応じて第2塵埃吸着部の材質や硬さや変えたり、消耗時に第2塵埃吸着部のみを新しいものに交換したりできるように、柄棒に対して第2塵埃吸着部を着脱可能としてもよい。また、第1塵埃吸着部や第2塵埃吸着部の具体的形状や静電ハタキの具体的構成等についても本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係る静電ハタキの斜視図である。
【図2】実施形態に係る静電ハタキの縦断面図である。
【図3】実施形態に係る静電ハタキの部品構成を示す展開斜視図である。
【図4】実施形態に係る静電ハタキの製造工程を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 静電ハタキ
2 柄棒
3 第1塵埃吸着部
4 第2塵埃吸着部(穂素材)
4a 糸束(延伸解繊糸)
5 カバー
6 エンドキャップ
7 樹脂ピン
8 ストッパピン
9 吊下紐
10 房素材
10a 緯糸束(延伸解繊糸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の柄棒と、
前記柄棒の外周面に固着された房状の第1塵埃吸着部と、
前記柄棒の中空部にその基端が嵌挿/固着され、前記第1塵埃吸着部の先端から穂状に突出した第2塵埃吸着部と
を備えたことを特徴とする静電式塵埃吸着具。
【請求項2】
少なくとも前記第1塵埃吸着部が帯電性樹脂を素材とする延伸解繊糸からなることを特徴とする、請求項1に記載の静電式塵埃吸着具。
【請求項3】
前記柄棒がその先端に開口を有し、
前記第2塵埃吸着部が前記開口に着脱自在に取り付けられたことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の静電式塵埃吸着具。
【請求項4】
先端側にスリットが形成された筒状の柄棒と、緯糸束の端部を経糸によって偏立してなる房素材と、糸束の基部をテープで捲き締めてなる穂素材とを用い、
前記柄棒の先端側に前記穂素材の基部を嵌入させる工程と、
前記房素材の経糸を前記柄棒の先端側から螺旋状に巻き付ける工程と
を含むことを特徴とする静電式塵埃吸着具の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−97826(P2007−97826A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291346(P2005−291346)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(305050432)株式会社コマ・ホームズ (1)