説明

静電気発生防止建築意匠材及び塗料

【課題】建築表面に粉塵、菌、カビ、藻などが付着しにくい静電気発生防止建築意匠材及び塗料を提供する。
【解決手段】
チタン酸バリウムを含有させた静電気発生防止塗料をタイル、金属サイディング又はガラス等の建築意匠材に塗布し、焼成又は乾燥させて建築意匠材の表面に固着させ、静電気の発生を防止する建築意匠材を得る。また、現場で既存壁に上記のチタン酸バリウム粒子を含有させた静電気発生防止塗料を塗布することにより、静電気の発生を防止する壁を構築できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気の発生を防止する建築意匠材及び塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1開示の複合材では、外気中の建築表面の防汚として、光触媒とアルカリ珪酸塩とを混合して焼き付け、nmオーダーの細孔を形成させ、粉塵、菌、カビ、藻などが細孔に浸入しないようにしていた。また、この複合材では、細孔により光触媒の表面積を大きくすることで光触媒の活性を向上させ、粉塵、菌、カビ、藻などの建築表面の防汚を行っていた。
【特許文献1】特開2000−237597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1開示の複合材にあっては、粉塵、菌、カビ、藻などが建築表面、すなわち光触媒の表面に付着した後、光が照射されることによって分解されなければならず、光が照射されない場所や分解されずに残った粉塵、菌、カビ、藻などは建築表面上に残ったままとなっていた。さらに、この複合材では雨などによりこれらの分解物などが流される、もしくは能動的に流す必要があった。加えて、この複合材では、湿度、気温、電気製品が多い場所などの条件によっては建築表面に静電気が起こりやすく、粉塵、菌、カビ、藻などが建築表面に吸着されやすいため、光触媒の機能が追いつかないという問題もあった。
本発明は、上記従来の問題点を解消し、建築表面に粉塵、菌、カビ、藻などが付着しにくい静電気発生防止建築意匠材及び塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の静電気発生防止建築意匠材はチタン酸バリウムを表面に有していることを特徴とするものである。
請求項2の静電気発生防止建築意匠材は、請求項1の静電気発生防止建築意匠材において、シリカ微粒子を表面に有していることを特徴とするものである。
請求項3の静電気発生防止建築意匠材は、請求項1又は2の静電気発生防止建築意匠材において基層と釉薬層とから成るタイルであって、釉薬に前記チタン酸バリウムが含有されていることを特徴とするものである。
請求項4の静電気発生防止塗料は、チタン酸バリウムを含有していることを特徴とするものである。
請求項5の静電気発生防止塗料は、請求項4の静電気発生防止塗料において、シリカ微粒子を含有していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
静電気とは、ある物質が放電により正電荷に帯電すること、若しくはある物質が放電により飛び出た電子を受け取り負電荷に帯電することをいう。建築表面が正の電荷に帯電すると周囲の物質、特に埃の原因となり、負の電荷をもつこととして知られているダニの糞、大腸菌、たんぱく質、カビの胞子、油性成分等を静電気的に引き付けるため、建築表面に埃が付着しやすくなる。また、負の電荷に帯電した建築表面は周囲の物質、例えば正の電荷を帯びたたんぱく質などを付着しやすくなる。
請求項1の静電気発生防止建築意匠材にあっては、誘電率の高いチタン酸バリウムを含有しているため、建築意匠材の表面が正若しくは負のどちらか一方に帯電しにくい。したがって、この静電気発生防止建築意匠材は、静電気をもちにくく、埃などを建築表面に寄せ付けず、防汚性能が極めて高くなる。
請求項2の静電気発生防止建築意匠材にあっては、シリカ微粒子が含有されているため、当該建築意匠材の表面に凹凸を付与し、表面積を大きくすることができる。さらに、シリカ微粒子は親水性を有するため、静電気発生防止建築意匠材は、親水性の表面の表面積が大きくなり、防汚機能が高まる。
請求項3の静電気発生防止建築意匠材にあっては、基層と釉薬層とからなるタイルにおいて、釉薬層にチタン酸バリウムが含有されているため、タイル表面にチタン酸バリウムを強固に固着することができる。
請求項4の静電気発生防止塗料にあっては、チタン酸バリウムを含有しているため、既存の建築表面に現場で施すことにより容易に静電気発生防止効果のある建築表面とすることができる。
請求項5の静電気発生防止塗料にあっては、シリカ微粒子を含有しているため、既存の外壁に塗るのみで、その外壁に親水機能を付与することができ、防汚機能を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の形態について詳細を示す。静電気発生防止建築意匠材の建築意匠材としては、タイル、窯業サイディング(セラミックパネル、ケイカル板、セメント成形押し出しパネル等)、金属サイディング、ガラスなどの建築意匠材を用いることが可能である。
チタン酸バリウムを混入した静電気発生防止塗料を、上記の建築意匠材表面に塗布し、静電気発生防止建築意匠材が得られる。この静電気発生防止建築意匠材は表面にあるチタン酸バリウムが高誘電物質であるため、電荷の移動を抑制し、静電気を防止する。
【0007】
したがって、埃の原因となるダニの糞、大腸菌、たんぱく質、カビの胞子、油性成分等を寄せ付け難く、防汚機能に優れた建築意匠材を提供することが可能である。
本発明に用いるチタン酸バリウムの平均粒径は、10nm〜200μm、特に50nm〜150μmであることが好ましい。チタン酸バリウムが10nm未満であるとバインダー成分から表面に露出する面積が小さくなるため、静電気の発生防止という機能が表れ難く、チタン酸バリウムが200μmを超えると塗装性が悪く、建築意匠材表面に均等にチタン酸バリウムを塗布することができないため、静電気発生防止建築意匠材全体として静電気防止機能が劣る。
【0008】
チタン酸バリウムを混入した静電気発生防止塗料の溶媒としては、水を用いることもできるが、建築意匠材がタイルや窯業サイディングの場合には、水ガラス(珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム)、リン酸アルミニウム、金属アルコキシド等を、建築意匠材が金属サイディングである場合にはアルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類等の揮発性溶媒等を用いことが好ましい。揮発性溶媒を用いた場合、その種類によっては、沸点が低いものもあるため、静電気発生防止塗料を塗布した建築意匠材を単に常温に放置するのみで乾燥を行うことができ、塗布後の処理を容易にすることができる。
【0009】
チタン酸バリウムを上記の溶媒と混合して静電気発生防止塗料とする。そのチタン酸バリウムの含有量は全体の1〜5重量%であることが好ましい。
【0010】
上記の静電気発生防止塗料にはシリカ微粒子が含有されていることが好ましい。シリカ微粒子としては、コロイダルシリカ等が用いられる。これらの粒子は、建築意匠材の表面に水酸基を露出するように結合、若しくは、付着するため、建築意匠材の表面に親水性能を与える。シリカ微粒子の粒径は、50nm以下、特に10〜30nmであることが好ましい。シリカ微粒子が50nmを超えると、表面積が減少するため、表面に露出される水酸基が減少し、親水性能が十分に発揮されない。このシリカ微粒子の静電気発生防止塗料中の含有量は0.1〜30重量%であることが好ましく、特に1〜10重量%であることがことが好ましい。
【0011】
静電気発生防止塗料には、上記の他の添加成分として、アルミナ、アルミニウム−マグネシウム複合酸化物などの無機微粒子、フッ素樹脂等を添加してもよい。
【0012】
静電気発生防止塗料の建築意匠材の表面への塗布方法としては、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、フローコーティング等を用いることができる。生産現場で塗布することはもちろん、施工現場で塗布することも可能である。コーティング液の硬化は常温(25°C)〜700°Cで、その建築意匠材の耐熱温度や塗布方法によって、適宜、温度設定して加熱することが好ましい。
なお、既存壁に静電気発生防止塗料を塗布することも可能である。ここでいう既存壁とは、タイル、金属サイディング、窯業系板材又はガラス等の建築意匠材として用いられている外装壁、若しくは内装壁をいう。
【0013】
(実施例1)
図1に示すように、タイル素地4に釉薬層3が施され、焼成されたタイル1(45×95×6mm)に、水500mLにチタン酸バリウム3重量%を懸濁した静電気発生防止塗料をスプレーにてタイル1の表面全体に吹き付け、300〜700°C、好ましくは最高温度600°C付近にて乾燥させ、タイル1の表面にチタン酸バリウム2を焼き付け、静電気発生防止建築意匠材を得た。
本実施例では、釉薬層3が施されたタイル1を用いたが、無釉タイルを用いてもよく、静電気発生防止塗料はハケなどを用いて塗布したり、上記の塗布方法を用いてもかまわない。
【0014】
(実施例2)
図2に示すように、長石15重量%、珪砂20重量%、亜鉛華15重量%、炭酸リチウム5重量%、粘土5重量%、フリット40重量%の釉薬6にチタン酸バリウム5重量%を加えて生釉薬を作成した。これをタイル5(45×95×6mm)にスプレーコーティングし、この生釉薬をコーティングしたタイルを焼成炉にて1100〜1200°Cで焼成し、タイル5の表面に釉薬6をバインダーとしてチタン酸バリウム2を固着した。
ここでは、チタン酸バリウムを含有した生釉薬を作成し、タイルに塗布したが、チタン酸バリウムが含有されていない通常の釉薬をタイルに塗布した後、実施例1に示す静電気発生防止塗料をスプレーにてタイルの表面全体に吹き付け、1100〜1200℃で焼成してもよい。
【0015】
(実施例3)
図3に示すように、アルカリ珪酸塩としての水ガラス0.1〜10重量%、チタン酸バリウム1〜5重量%、シリカ微粒子としてのコロイダルシリカ60〜99重量%及びアルミナ0.01〜10重量%を加え、静電気発生防止塗料を調整し、素焼きしたタイル5(45×95×6mm)にスプレーコーティングを行う。このタイル素地をコンベア−搬送式連続焼成炉にて最高温度600℃で焼成した。焼成後のタイルの表面には、コロイダルシリカ7とチタン酸バリウム2とを表面に有する防汚層が形成されている。この防汚層は孔径12〜42nmの微細孔を多数有する表面平均粗さ25nmの層であった。
【0016】
(実施例4)
アルカリ珪酸塩としての水ガラス0.1〜10重量%、シリカ微粒子としてのコロイダルシリカ60〜99重量%及びアルミナ0.01〜99重量%を加え、コーティング液を調整し、タイル(45×95×6mm)にスプレーコーティングを行う。このタイルをコンベアー搬送式連続焼成炉にて最高温度600°Cで焼成した。この焼成後のタイルにチタン酸バリウム3重量%を水500mLに溶かした静電気発生防止塗料をスプレーコーティングし、80〜100°Cにて乾燥させた。
また、アルカリ珪酸塩としての水ガラス0.1〜10重量%、シリカ微粒子としてのコロイダルシリカ60〜99重量%及びアルミナ0.01〜99重量%を加え、タイルにスプレーコーティングした後すぐに上記の静電気発生防止塗料をスプレーコーティングし、最高温度600度で焼成してもよい。
【0017】
(実施例5)
揮発性溶媒としてのアルコール類である水−エチルアルコール混合液98.56重量%、チタン酸バリウム3重量%及びアルミニウム−マグネシウム複合酸化物であるハイドロタルサイト0.00067〜0.00084重量%を加え、静電気発生防止塗料を調整する。さらに、既存壁を水で洗浄した後、乾燥させ、前記の静電気発生防止塗料を既存壁に15g/m2をスプレーにより塗布した。用いた水−エチルアルコール混合液はエチルアルコールを12重量%含むよう調整した。
なお、本実施例では無機微粒子として平均粒径10nmのシリカ微粒子と平均粒径30nmのアルミニウム−マグネシウム複合酸化物とを用いているため、静電気発生防止塗料を既存壁に塗布する際、無機微粒子が沈降することなく、均一に懸濁させておくことができた。
【0018】
(実施例6)
上記実施例5と同様に静電気発生防止塗料を調整し、金属サイディングに刷毛塗りした後、50〜100°Cで乾燥させて水−エチルアルコール混合液を揮発させ、チタン酸バリウムが最表面に付着した金属サイディングを形成した。
【0019】
(実施例7)
フッ素樹脂(粉末)25重量%、シリカ微粒子10重量%、チタン酸バリウム5重量%、水60重量%を混合して静電気発生防止塗料を作成し、これをタイル、金属サイディング又はガラスタイルに厚さ200μmになるよう塗布し、25〜100°Cにて乾燥させて、チタン酸バリウムが最表面にある静電気発生防止建築意匠材を作成した。ここでは粉末のフッ素樹脂を用いたが液状のものを用いてもよい。
【0020】
(実施例8)
アクリルエマルジョン85重量%、シリカ10重量%、チタン酸バリウム5重量%を混合して静電気発生防止塗料を作成し、これを金属サイディング又は窯業系板材に塗布し、常温にて乾燥させ、静電気発生防止建築意匠材を作成した。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】チタン酸バリウムを水に溶かした静電気発生防止塗料を塗布し、乾燥させた静電気発生防止建築意匠材の断面図
【図2】チタン酸バリウムを生釉薬に溶かした静電気発生防止塗料を塗布し、焼成した静電気発生防止建築意匠材の断面図
【図3】チタン酸バリウムとコロイダルシリカとを溶かした静電気発生防止塗料を塗布し、乾燥又は焼成した静電気発生防止建築意匠材の断面図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸バリウムを表面に有することを特徴とする静電気発生防止建築意匠材。
【請求項2】
請求項1において、シリカ微粒子を表面に有することを特徴とする静電気発生防止建築意匠材。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記静電気発生防止建築意匠材が基層と釉薬層とから成るタイルであって、当該釉薬層表面にチタン酸バリウムを有していることを特徴とする静電気発生防止建築意匠材。
【請求項4】
チタン酸バリウムを含有することを特徴とする静電気発生防止塗料。
【請求項5】
請求項4において、シリカ微粒子を含有することを特徴とする静電気発生防止塗料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−40035(P2007−40035A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227317(P2005−227317)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】