説明

静電気除去手袋

【課題】
本発明は、コロナ放電のみに除電に頼らずに、静電気によって手指に電撃を受けることのない除電性に優れた静電気除電手袋を提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
【解決手段】
生地を裁断縫製し、五指を包持する指包持部と、掌部及び甲部を包持する基部とを備え、導電性糸を有する静電気除去手袋において、指包持部の掌側生地における外表面及び内面を導電性糸で交互に連通して縫付した導電部を設けてなることを特徴とする静電気除去手袋を、解決手段とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気の除去を可能とする手袋(以下、静電気除去手袋という。)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、静電気の除去を可能とする導電性を備えた手袋としては、例えば、繊維製手袋基材の表面に、又は繊維製手袋基材を用いることなく、導電体の粉状物又は/及び粒状物を分散した合成樹脂又はゴムの樹脂層を形成し、この樹脂層に、導電性繊維の短繊維と導電性の粉状物又は/及び粒状物を混合して粉砕し導電性短繊維が表面に現れた微粒子を付着した静電気対策手袋(例えば、特許文献1参照。)が公知である。
【0003】
【特許文献1】特公平1−23565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の静電気対策手袋は、導電体の粉状物又は/及び粒状物を分散した合成樹脂又はゴムの樹脂層を形成し、この樹脂層に、導電性繊維の短繊維と導電性の粉状物又は/及び粒状物を混合して粉砕し導電性短繊維が表面に現れた微粒子を付着した構成を備えており、微粒子の表面に導電性繊維が現れてコロナ放電を可能とすることにより、コロナ放電性を有することで、当該静電気対策手袋の着用者が他物に触れることなく、電化を消失させることを目的とするものである。
【0005】
しかしながら、上記のようにコロナ放電によって静電気を除去することは、理論的には可能であるものの、現実的には除電が不十分となりがちであり、静電気対策手袋のみに蓄積した静電気を除去する程度の除電能では足りず、工場等において作業者が使用する場合等では、人体に蓄積した静電気を十分に除電できる必要がある。
【0006】
また、上記従来の静電気対策手袋は、当該コロナ放電性に加えて、織布又は編布に導電性繊維を織り込む(例えば、綿糸12本に1本の割合で導電性繊維を織り込んだメリヤス編布)が帯電防止の効果を上げることが記載されているが、手袋基体上に粉状物、粒状物、及び樹脂層、導電性繊維が積層されていることから、ある程度手袋自体の除電は可能であるものの、人体に帯電している静電気を除電するには、人体と静電気対策手袋の外表面とが殆ど接触していないことから、人体に蓄積した静電気を直接除電することができないのである。
【0007】
更に、仮に導電性繊維を外部へ露出させた場合であっても、導電性繊維自体は均一に織布又は編布に織り込まれているため、外部と接触可能な状態で露出する部分の密度が小さいことから、着用者が電撃を感じることのない程度に十分な除電を行うことは困難である。このため、特許文献1に係る静電気対策手袋は、静電気除去手段としては、結局コロナ放電により除電を行う構成としてしか、成立し得ないものであった。
【0008】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、コロナ放電のみの除電に依らずに、人体に蓄積した静電気を効率良く除電して、静電気によって手指に電撃を受けることのない静電気除去手袋を提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、生地を裁断縫製し、五指を包持する指包持部と、掌部及び甲部を包持する基部とを備え、導電性糸を有する静電気除去手袋において、指包持部の掌側生地における外表面及び内面を導電性糸で交互に連通して縫付した導電部を設けてなることを特徴とする静電気除去手袋を、課題を解決するための手段とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、皮革若しくは布帛を裁断縫製してなり、五指を包持する指包持部と、掌部及び甲部を包持する基部とからなり、導電性糸を有する静電気除去手袋において、導電性糸は指包持部の掌側生地における外表面及び内面を交互に連通して縫付した導電部を設けてなることによって、導電部の密度を部分的に高めることができることから、指包持部の掌側生地における内面に密集した導電性糸が、着用者の五指と十分な接触面積を有する状態で直接接触するとともに、外表面に密集して露出した前記導電性糸が前記他の導電性物品(例えば、ドアのノブや工場設備等)と直接接触することにより、人体に蓄積された静電気を、速やかに、電撃を感じることなく、除電することができる。
【0011】
また、指包持部の掌側生地に設けた導電部のうち、五指の指先から第二関節までの当接部位の導電性糸の表面積を、導電部の他の部位の導電性糸の表面積よりも大きくした構成を付加した場合には、特に指先に対する電撃を、より感じさせずに除電することができるのである。
【0012】
更に、基部の甲側生地における外表面及び内面を交互に連通して導電性糸を縫付した導電部を設けることによって、基部の甲側生地と他の導電性物品との接触によっても、電撃を感じずに除電することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、生地を裁断縫製し、五指を包持する指包持部と、掌部及び甲部を包持する基部とを備え、指包持部の掌側生地における外表面及び内面を導電性糸で交互に連通して縫付した導電部を設けた静電気除去手袋によって、着用者の五指と十分な接触面積を有する状態で直接接触するとともに、外表面に密集して露出した前記導電性糸が前記他の導電性物品と直接接触することにより、人体に蓄積された静電気を、速やかに、電撃を感じることなく、除電する目的を達成した。
【実施例】
【0014】
図1は本発明の実施例に係る静電気除去手袋の左手側を示す正面図、図2は図1の背面図、図3は同実施例に係る静電気除去手袋の拇指部分を開いた状態を示す正面図、図4は図1のA−A拡大断面図、図5は除電状態を示す説明断面図である。尚、本実施例に係る静電気除去手袋の左手側は右手側と左右対称であり、図示において省略している。
【0015】
本発明の実施例に係る静電気除去手袋は、図1乃至図5に示すように、合成皮革と通気性を有する布帛を裁断縫製してなる静電気除去手袋を基本とするものであり、五指を包持する指包持部10と、掌部及び甲部を包持する基部11を備えてなる。指包持部10と基部11とは、主として、いずれも合成皮革からなる掌側生地12及び甲側生地13の夫々の内側に、通気性を有する布帛を内側生地14、15として縫合した状態で、相互の内側生地14、15を重合せて、掌側生地12及び甲側生地13の縁部相互を、袋状に縫合する構成としている。
【0016】
ここで、図4及び図5に示すように、指包持部10の掌側生地12における外表面及び内面、具体的には、外表面側の合成皮革からなる掌側生地12及び内側生地14を、導電性糸20で交互に連通して、折れ線状の縫付ライン2a、2bとし、当該縫付ラインは複数形成することによって導電部2を形成してなる。
【0017】
前記縫付ラインは、第一指から第五指のいずれにおいても、略平行する三本の縫付ライン2a、2bとしており、三本のうち中央の一本の縫付ライン2aの長さを他の二本の縫付ライン2bよりも短くし、当該中央の一本の縫付ライン2aは、指先から第二関節部までの長さとしている。
【0018】
そして、拇指を除く四指では、縫付ライン2a、2bの幅は3ミリメートル程度、平行する縫付ライン2a、2b間の間隔は平均約5ミリメートル程度とし、拇指では、縫付ライン2a、2bの幅は3ミリメートル程度、平行する縫付ライン2a、2b間の間隔は平均約6ミリメートル程度としている。
【0019】
本実施例においては、上記のように、三本の縫付ライン2a、2bのうち、中央の一本の縫付ライン2aの長さを他の側方の二本の縫付けライン2bよりも短くし、当該中央の一本の縫付ライン2aは、指先から第二関節部までの長さとすることによって、拇指を除く四指の指先から第二関節までの当接部位、及び拇指の指先から第一関節までの当接部位の導電性糸20の表面積を、導電部2の他の部位の導電性糸20の表面積よりも大きくしている。
【0020】
また、本実施例においては、基部11の甲側生地13における外表面及び内面を交互に連通して導電性糸20を1.5ミリメートルの間隔で平行するニ直線として縫付した三箇所の縫付ライン2a、2bからなる導電部2を設けており、前記三箇所の縫付ライン2a、2bは、図2の背面図において上方側が広がるように形成している。
【0021】
以上に示した本発明の実施例に係る静電気除去手袋1によれば、図5に示すように、着用することによって、着用者の指4と導電性糸20の内面側に露呈する部分とが十分な接触面積を有する状態で直接接触し、また、導電性糸20の外表面に露呈する部分と他の導電性物品5とが十分な接触面積を有する状態で直接接触することによって、基部11の甲側生地13と他の導電性物品との接触によっても電撃を感じることなく、除電することができる。
【0022】
また、基部11の甲側生地13における外表面及び内面を交互に連通して導電性糸20を縫付した前記三箇所の縫付ライン2a、2bからなる導電部2は、背面図において上方側が広がるように形成することによって、第二指、第三指及び第四指における中手骨に沿って、手の甲のうち、最も突出する部位に縫付ラインが位置することとなり、手の甲と他の導電性物品5と接触する際に、効率良く除電を行うことができるのである。
【0023】
尚、上記実施例における縫付ライン2a、2bの外観は、直線状又は折れ線状として形成しているが、本発明においては、縫付ライン2a、2bの外観について特に限定するものではなく、例えば、幅方向に略平行する複数の線分状等、任意の形状とすることができる。しかしながら、特に実施例のように折線状とした場合には、導電性糸20の消費量の節約を実現しつつ、広範囲に導電性糸20を配置でき、非常に優れたものとすることができる。
【0024】
また、上記実施例においては、指包持部と基部とは一体に裁断しても相互に縫合するものであってもよいし、指包持部及び基部は、一枚の生地からなるものであっても複数の生地を重合するものであっても良い。
【0025】
また、重合する複数の生地の材質は、皮革、布帛、編物等種種の公知な生地を用いることができ、外表面と内面の双方に十分な接触面積を確保するように、導電性糸が連通縫付されていればよい。即ち、手袋としての基本構成のうち導電性に関わらない部分については、特に限定するものではない。
【0026】
更に、本発明は基本的に直接接触による除電を目的とするものであるが、例えば、コロナ放電可能な糸(例えば、アクリル、ナイロン、ガラス繊維等に金属を吸着してなるコロナ放電可能な糸等)を、本願発明における導電性糸として用いることによって、直接接触による除電に加えて、補助的にコロナ放電を利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例に係る静電気除去手袋の左手側を示す正面図である。
【図2】本発明の実施例に係る静電気除去手袋の左手側を示す背面図である。
【図3】本発明の実施例に係る静電気除去手袋の親指部分を開いた状態を示す正面図である。
【図4】本発明の実施例に係る静電気除去手袋の左手側を示すA−A拡大断面図である。
【図5】本発明の実施例に係る静電気除去手袋における除電状態を示す説明断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 静電気除去手袋
10 指包持部
11 基部
12 掌側生地
13 甲側生地
14 内側生地
15 内側生地
2 導電部
20 導電性糸
2a 縫付ライン(中央)
2b 縫付ライン(側方)
4 指
5 導電性物品


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地を裁断縫製し、五指を包持する指包持部と、掌部及び甲部を包持する基部とを備え、導電性糸を有する静電気除去手袋において、
指包持部の掌側生地における外表面及び内面を導電性糸で交互に連通して縫付した導電部を設けてなることを特徴とする静電気除去手袋。
【請求項2】
指包持部の掌側生地に設けた導電部のうち、拇指を除く四指の指先から第二関節までの当接部位と拇指の指先から第一関節までの当接部位における導電性糸の表面積を、導電部の他の部位の導電性糸の表面積よりも、大きくしたことを特徴とする請求項1記載の静電気除去手袋。
【請求項3】
基部の甲側生地における外表面及び内面を交互に連通して導電性糸を縫付した導電部を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の静電気除去手袋。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−63456(P2006−63456A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−243823(P2004−243823)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000114606)モリト株式会社 (198)
【Fターム(参考)】