説明

静電気除去装置

【課題】剥離紙を引き剥がす際に帯電により粘着剤付きフィルムへ粉塵が付着する事態を安価かつ容易に、しかも効率的に防止することが可能な静電気除去装置を提供する。
【解決手段】静電気除去装置1は、二つ折り可能な長尺帯状の支持板2の内面に、水分保持体として機能する2つのスポンジ3,3が、支持板2を二つ折りさせた際に対峙するように貼着されている。また、支持板2の内面に貼着された各スポンジ3,3の外側には、それぞれ、係合手段として機能する雄型布テープ(面ファスナー)9と雌型布テープ(面ファスナー)10とが貼着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の粘着剤付きフィルムやテープから剥離紙を引き剥がす際に発生する静電気を除去するための治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の保護フィルムや建築用の遮光フィルムとして、粘着剤を塗布した長尺帯状のフィルム上に剥離紙を積層したものが知られている。かかる粘着剤付きフィルム(テープ)は、剥離紙を引き剥がす際に帯電し易いために、露出した粘着剤の表面に粉塵が付着して、粘着剤付きフィルムの貼着面に凹凸が形成されたり、粘着剤付きフィルムの粘着力(接着力)が低下したりすることがある。そのような剥離紙の引き剥がし時の帯電による弊害を防止するために、粘着剤付きフィルム自体に導電性を持たせる技術が開発されている(特許文献1)。また、粘着剤付きフィルムを対象物に自動で貼着する貼着装置においては、吸引装置を利用して剥離紙を引き剥がす位置の周囲の雰囲気を吸引する技術も考案されている(特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−41977号公報
【特許文献2】特開2000−353472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、粘着剤付きフィルム自体に導電性を持たせる技術では、粘着剤付きフィルムのコストが高いものとなってしまう。一方、剥離紙を引き剥がす位置の周囲の雰囲気を吸引する方法は、大掛かりな吸引装置が必要となるため、多大な費用を要することとなる。その上、仕切られた空間の中で引き剥がし作業を行わなければ、粉塵を吸引除去する効果が発現されない、という不具合もある。
【0005】
本発明の目的は、上記した従来のフィルムの帯電防止方法、粉塵の付着防止方法における問題点を解消し、剥離紙を引き剥がす際に帯電により粘着剤付きフィルムへ粉塵が付着する事態を安価かつ容易に、しかも効率的に防止することが可能な静電気除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる本発明の内、請求項1に記載された発明の構成は、二つ折り可能な長尺帯状の支持板の内面に、水分を保持可能な2つの水分保持体が、支持板を二つ折りさせた際に対峙するように貼着されているとともに、支持板の長手方向における両端際に、支持板を二つ折りさせた状態で保持するための係合手段が設けられていることにある。
【0007】
請求項2に記載された発明の構成は、請求項1に記載された発明において、水分保持体が、1.0mm以上3.5mm未満の厚みを有する不織布あるいは合成樹脂製発泡体であることにある。水分保持体の厚みが1.0mm未満となると、使用中に水分保持体が乾燥し易くなり、帯電防止のために必要な量の水分を長時間に亘って保持することが困難となるので好ましくない。反対に、水分保持体の厚みが3.5mm以上となると、水分保持体に保持される水分が多くなりすぎて、水滴が落ち易くなる上、剥離紙を引き剥がした粘着剤付きフィルムの表面(粘着層と反対側の表面)に水滴が付着する事態が生じ易くなるので好ましくない。
【0008】
請求項3に記載された発明の構成は、請求項1、または請求項2に記載された発明において、係合手段が、多数の雄型の突起体を突設した布テープと、多数の雌型の突起体を突設した布テープとによって構成されていることにある。なお、多数の雄型の突起体を突設した布テープと多数の雌型の突起体を突設した布テープとからなる係合手段としては、市販の各種の面ファスナー(たとえば、株式会社クラレ製 マジックテープ(登録商標))を好適に用いることができる。
【0009】
請求項4に記載された発明の構成は、請求項1〜3のいずれかに記載された発明において、支持板が、0.5mm以上1.5mm未満の厚みを有する硬質の合成樹脂によって形成されていることにある。硬質の合成樹脂製の支持板の厚みが0.5mm未満となると、使用中に支持板が破損し易くなるので好ましくなく、反対に、硬質の合成樹脂製の支持板の厚みが1.5mm以上となると、支持板がほとんど撓まなくなり、係合手段の解除が困難となる場合があるので好ましくない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載された静電気除去装置によれば、二つ折りした支持板の間に、剥離紙が積層された粘着剤付きフィルムの先端際を挟み、水分保持体を剥離紙および粘着剤付きフィルムの表面(剥離紙と反対側の表面)に当接させて、係合手段によって支持板の端縁を係合させ、その状態で、粘着剤付きフィルムの端縁から剥離紙を順次引き剥がすことによって、剥離紙および粘着剤付フィルムの表面に付着している粉塵が水分保持体に掻き取られるとともに、粘着剤付きフィルムの表面および剥離紙に帯電した静電気が、水分保持体を介して速やかに外部へリークされる。したがって、請求項1に記載された静電気除去装置によれば、剥離紙を引き剥がした粘着剤付きフィルムの粘着剤面に粉塵が付着する事態をきわめて高い精度で防止することができる。
【0011】
請求項2に記載された静電気除去装置は、1.0mm以上3.5mm未満の厚みを有する不織布あるいは合成樹脂製発泡体によって水分保持体が形成されているため、帯電を防止するために十分な水分をきわめて長時間に亘って保持することができる上、使用中に水分保持体から水滴が落ちることがない。
【0012】
請求項3に記載された静電気除去装置は、多数の雄型の突起体を突設した布テープと多数の雌型の突起体を突設した布テープとによって係合手段が構成されているため、支持体の両端部分をきわめて容易に係合させることができるとともに、支持体の両端部分の係合状態をきわめて容易に解除することができる。
【0013】
請求項4に記載された静電気除去装置は、0.5mm以上1.5mm未満の厚みを有する硬質の合成樹脂によって支持板が形成されているため、支持板が適度に撓るため、支持体の両端部分の係合状態の解除が非常に容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の静電気除去装置の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。図1,2は、静電気除去装置を示したものであり、静電気除去装置1は、二つ折り可能な長尺帯状の支持板2の内面に、水分保持体として機能する約2.0mmの厚みを有する2つのスポンジ3,3が、支持板2を二つ折りさせた際に対峙するように貼着されている(接着剤によって接着されている)。なお、スポンジ3,3は、発泡ポリウレタンによって形成されており、絞っても水が滴り落ちない程度に湿った状態になっている。
【0015】
支持板2は、1.5mmの厚みを有する塩化ビニル製シートによって、縦×横=30mm×225mmの長尺帯状に形成されている。また、中央の内側の部分には、断面V字状の2本の折り曲げ溝4,4が縦方向に平行に設けられており、それらの折り曲げ溝4,4を内側に折り曲げることによって、コ字状に形成された状態になっている。なお、2本の折り曲げ溝4,4の間隔は、約5.0mmに調整されている。さらに、その中央の折り曲げ部分5の外側には、保護テープ6が貼着されている。加えて、その保護テープ6の貼着部分の上端縁際には、ヒモ挿通孔7,7が穿設されており、それらのヒモ挿通孔7,7を利用して、ループ状の吊り下げヒモ8が取り付けられている。
【0016】
一方、支持板2の内面に貼着された各スポンジ3,3の外側(支持板2の両端縁)には、それぞれ、係合手段として機能する雄型布テープ(面ファスナー)9と雌型布テープ(面ファスナー)10とが貼着されている(接着剤によって接着されている)。雄型布テープ9の表面には、先端がU字状に折れ曲がった柱状の突起体(雄型の突起体)が多数突設されており、雌型布テープ10の表面には、リング状の突起体(雌型の突起体)が多数突設されている。そして、雄型布テープ9と雌型布テープ10とを接合させると、雄型布テープ9の突起体と雌型布テープ10の突起体とが係合し合い、所定の力を加えなければ、引き離すことができないようになっている。
【0017】
上記の如く構成された静電気除去装置1を使用する場合には、図3の如く、剥離紙11が積層された粘着剤付きフィルム12の先端際を挟み込んで支持板2を二つ折りし、支持板2に貼着されたスポンジ3,3を剥離紙11および粘着剤付きフィルム12の表面(剥離紙11と反対側の表面)に当接させて、雄型布テープ9と雌型布テープ10とを利用して支持板2の端縁同士を係合させる。そして、その状態で、粘着剤付きフィルム12の端縁から剥離紙11を順次引き剥がす。そのようにして粘着剤付きフィルム12から剥離紙11を引き剥がすことにより、剥離紙11および粘着剤付フィルム12の表面に付着している粉塵がスポンジ3,3に掻き取られるとともに、剥離紙11および粘着剤付フィルム12の表面に帯電した静電気が、水分を含んだスポンジ3,3を介して速やかに外部へリークされる。
【実施例】
【0018】
以下、上記した静電気除去装置1を粘着剤付きフィルム(車両加飾用フィルム)からの剥離紙の剥離に利用した実施例について説明する。
【0019】
[実施例1]
静電気除去装置1を用い、剥離紙11を積層した厚み約280μmで住友スリーエム社製の粘着剤付きフィルム12の先端際を挟み込んで支持板2を二つ折りし、支持板2に貼着された一対の不織布(水を含んだもの)3,3を剥離紙11および粘着剤付きフィルム12の表面に当接させて、雄型布テープ9と雌型布テープ10とを利用して支持板2の端縁同士を係合させ、その状態で、粘着剤付きフィルム12の端縁から剥離紙11を順次引き剥がした。そして、引き剥がし直後に粘着剤付きフィルム12の表面に発生した静電気の帯電量を、キーエンス社製 高精度静電気センサによって測定した。また、剥離紙11を引き剥がした粘着剤付きフィルム12の表面(粘着剤面)への粉塵の付着状態を目視によって調べた。なお、剥離紙11の剥離および静電気の発生量の測定は、23℃50%RHの雰囲気において行った。評価結果を表1に示す。
【0020】
[実施例2]
支持板2に貼着された一対のスポンジ3,3を十分に乾燥させて静電気除去装置1を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤付きフィルム12からの剥離紙11の引き剥がしを行った。そして、実施例1と同様の方法により、剥離紙11の引き剥がし時に粘着剤付きフィルム12表面に発生した静電気の帯電量を測定するとともに、剥離紙11の引き剥がし後の粘着剤付きフィルム12の表面への粉塵の付着状態を調べた。評価結果を表1に示す。
【0021】
[比較例1]
静電気除去装置1を使用することなく粘着剤付きフィルム12からの剥離紙11の引き剥がしを行った。そして、実施例1と同様の方法により、剥離紙11の引き剥がし時に粘着剤付きフィルム12表面に発生した静電気の帯電量を測定するとともに、剥離紙11の引き剥がし後の粘着剤付きフィルム12の表面への粉塵の付着状態を調べた。評価結果を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
表1から、スポンジ3,3に水分を吸収させた静電気除去装置1を利用して、粘着剤付きフィルム12から剥離紙11を剥離した場合には、静電気除去装置1を使用しなかった場合に比べて静電気の発生量が非常に少なく、粘着剤付きフィルム12への粉塵の付着が見られないことが分かる。また、スポンジ3,3に水分を吸収させることなく静電気除去装置1を利用した場合には、静電気除去装置1を使用しなかった場合と同程度の静電気の発生量であるものの、粉塵の付着が見られないことが分かる。
【0024】
なお、本発明の静電気除去装置の構成は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、支持体、水分保持体、係合手段等の材質、形状、構造等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。たとえば、水分保持体は、発泡ポリウレタンからなるスポンジに限定されるものではなく、発泡ポリウレタン以外の合成樹脂製発泡体や不織布、あるいは織布等に変更することも可能である。また、支持板の材質は、硬質の合成樹脂板に限定されず、金属板等に変更することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の静電気除去装置は、上記の如く優れた効果を奏するものであるので、各種の粘着剤付きフィルムやテープから剥離紙を引き剥がす際の静電気の発生、粉塵の付着を防止するための治具として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】開放した静電気除去装置の内面を示す説明図である。
【図2】静電気除去装置を開放した状態を示す斜視説明図である。
【図3】静電気除去装置の使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1・・静電気除去装置、2・・支持板、3・・スポンジ(水分保持体)、9・・雄型布テープ、10・・雌型布テープ、11・・剥離紙、12・・粘着剤付きフィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つ折り可能な長尺帯状の支持板の内面に、水分を保持可能な2つの水分保持体が、支持板を二つ折りさせた際に対峙するように貼着されているとともに、
支持板の長手方向における両端際に、支持板を二つ折りさせた状態で保持するための係合手段が設けられていることを特徴とする静電気除去装置。
【請求項2】
水分保持体が、1.0mm以上3.5mm未満の厚みを有する不織布あるいは合成樹脂製発泡体であることを特徴とする請求項1に記載の静電気除去装置。
【請求項3】
係合手段が、多数の雄型の突起体を突設した布テープと、多数の雌型の突起体を突設した布テープとによって構成されていることを特徴とする請求項1、または請求項2に記載の静電気除去装置。
【請求項4】
支持板が、0.5mm以上1.5mm未満の厚みを有する硬質の合成樹脂によって形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の静電気除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−254673(P2007−254673A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83514(P2006−83514)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000150774)株式会社槌屋 (56)
【Fターム(参考)】