説明

静電潜像現像剤用キャリア、および静電潜像現像剤

【課題】直前画像のトナー消費履歴の影響を受けず、安定したトナー量を現像に供し、色再現性に優れた均一な画像を長期にわたり得ることができるキャリア及び二成分系現像剤を提供し、これを用いた画像形成方法を提供すること。また、長期に亘り安定した帯電付与能力を有し、膜の耐摩耗性(削れ・剥がれ)に優れて、かつキャリア抵抗の変化が少なく長期の実機での使用によってもキャリア付着による機内汚染・異常画像発生などを生じないという諸特性を同時に満足するキャリアを提供すること。
【解決手段】異形芯材の表面が、導電性微粒子を含有する樹脂からなる被覆層で被覆されており、芯材表面の算術平均粗さ係数Raは0.6〜0.9μmであり、被覆層中の導電性微粒子含有量が58wt%〜73wt%であり、被覆層の抵抗率が6.6〜8.6Ωcmであることを特徴とする静電像現像剤用キャリア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法に使用される二成分現像剤に用いられる静電潜像現像用キャリア、それを用いた静電潜像現像剤、カラートナー現像剤、補給用現像剤、画像形成方法、静電潜像現像剤を備えるプロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成では、光導電性物質等の像担持体上に静電荷による潜像を形成し、この静電潜像に対して、帯電したトナー粒子を付着させて可視像を形成した後、該トナー像を紙等の記録媒体に転写し、定着され、出力画像となる。従来画像形成装置で使用される現像方式としては、一成分現像方式、二成分現像方式、ハイブリッド現像方式などが用いられているが、色再現性に優れ、均一で鮮明なフルカラー画像を得るためには、静電潜像担持体上のトナー量を静電潜像に忠実に保つ必要がある。
静電潜像担持体上のトナー量が変動すると記録媒体上で画像濃度が変わったり、画像の色調が変動してしまう。
静電潜像担持体上のトナー量が変動する原因としては、トナー帯電量の変動などの要因もあるが、例えば、特許文献1の特許第3356948号公報に記載されるように、ハイブリッド現像において前画像履歴を次画像が引き継ぐ現象(ゴースト現象)が報告されている。
【0003】
前記特許文献1に記載のゴースト現象は、ハイブリッド現像方式固有の課題であり、トナー担持体上のトナー量が、直前画像のトナー消費パターンに応じて変化するために、次画像の画像濃度が変動する現象である。
これは、ハイブリッド現像方式では、常に一定量のトナーがトナー担持体へ供給されるため、トナー担持体上のトナー量がトナー供給を受ける回数によって変動してしまうことに起因する。
即ち、前画像がトナー消費の少ない画像を印刷時には、トナー担持体上の残トナー量は多く、トナー供給後にはトナー担持体上のトナー量は更に多くなってしまい画像濃度は濃くなる。一方、トナー消費の多い画像を印刷後には、トナー担持体上の残トナー量が少なく、トナー供給後にはトナー担持体上のトナー量が少なくなり画像濃度が薄くなる。
以上のように、ハイブリッド現像におけるゴースト現像は、二成分現像剤からトナー担持体上にトナーを転移させるときに、トナーが現像されトナー担持体上からトナーがなくなった部分と、トナーが現像されずトナー担持体上のトナーがそのまま残る部分のトナー量を均一になるように再塗布することが困難で、直前画像の履歴に応じて次画像印刷時のトナー担持体上のトナー量が変動してしまうことに起因している。
【0004】
これらを解決するために、例えば、前記特許文献1、特許文献2の特開2005−157002号公報、特許文献3の特開平11−231652号公報においては、トナー担持体上の残トナーを現像後かつトナー再供給前にスクレーパーやトナー回収ロールにより掻きとることが提案されている。
また、特許文献4の特開平7−72733号公報には、コピーとコピーの間や紙間を利用して、トナー担持体上の残トナーを電位差により磁気ロールに回収し、トナー担持体上のトナー量を安定させる方法が提案されている。
さらに磁気ブラシを用いた履歴現象の対応策として特許文献5の特開平7−128983号公報に、磁気ロールの磁束密度の半値幅領域を広く設定することにより、現像ロール上のトナーの回収と供給を図る提案がなされている。
また、特許文献6の特開平7−92813号公報には、二成分現像剤用のキャリアとして非球形状のキャリアを使用することで、磁気ブラシ先端のキャリアまで電荷注入し、現像剤担持体とトナー担持体との実質的な間隔を狭めることで、トナー担持体への一回でのトナー供給量を増やし、トナー担持体上のトナー飽和量までトナーを供給することで、直前画像の履歴の影響を受けずに、トナー担持体上のトナー量を一定に保つ方法が提案されている。
また、特許文献7の特開平11−65247号公報に記載されるように二成分現像方式においてもゴースト現象は報告されているが、二成分現像方式でゴースト現象が発生する理由について、発明者等は、二成分現像方式における現像剤離れ不良が原因であると考察している。
二成分現像剤の剥離は、現像スリーブ内のマグネットを奇数個とし現像スリーブの回転軸よりも下側の位置に同極のマグネット対を設けて磁力が殆どゼロとなる剥離領域を作り、その領域で重力を用いて現像後の現像剤を自然落下させることにより剥離を行っている。
しかし、直前画像でのトナー消費量時にキャリアにカウンターチャージが発生することで、キャリア/現像剤担持体間に鏡像力が発生し、剤離れ極において正常に剤離れされず、トナー消費によりトナー濃度の低下した剤が再度現像領域に搬送されることで、現像能力が低下し画像濃度が薄くなる現象である。即ちスリーブ一周分は正常濃度であるのに対し、二周目以降は濃度が薄くなる問題である。
【0005】
これらを解決するために、例えば、前記特許文献7には、内部にマグネットを有した汲上ロールを現像スリーブ上の剥離領域付近に配置し、その磁力をもって現像後の現像剤の剥離を行う構成が記載されている。剥離された現像剤は、さらにもう1本の汲上ロールによって汲み上げられた後、スクリューを有した現像剤攪拌室に搬送され、トナー濃度の再調整とトナーの帯電が行われる構成となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は上記の課題を解決することにある。
上記従来技術の現状に鑑み、本発明は、直前画像のトナー消費履歴の影響を受けず、安定したトナー量を現像に供し、色再現性に優れた均一な画像を長期にわたり得ることができるキャリア及び二成分系現像剤を提供し、これを用いた画像形成方法を提供することにある。
同時に、すなわち、本発明の目的は、長期に亘り安定した帯電付与能力を有し、膜の耐摩耗性(削れ・剥がれ)に優れて、かつキャリア抵抗の変化が少なく長期の実機での使用によってもキャリア付着による機内汚染・異常画像発生などを生じないという諸特性を同時に満足するキャリアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、算術平均表面粗さ係数Raが0.6〜0.9μmの芯材の表面に、導電性微粒子を含有するシリコーン樹脂からなる被覆層を形成するとともに、被覆層中の導電性微粒子含有量を58wt%〜73wt%として被覆層の抵抗率を6.6〜8.6Ωcmとした被覆層を形成とすることで、静電潜像現像用キャリアの諸特性をより一層充分に満足することを見出してさらに検討を加え、本発明を完成するに至った。
而して、本発明によれば、以下に示す静電潜像現像剤用キャリア、現像剤、現像方法、プロセスカートリッジ、補給用現像剤及び画像形成装置が提供される。
即ち、上記課題は以下の本発明の(1)〜(10)記載の「静電像現像剤用キャリア」、「静電像現像剤」、「画像形成装置」、「プロセスカートリッジ」及び「画像形成方法」を含む本発明により解決される。
(1)「異形芯材の表面が、導電性微粒子を含有する樹脂からなる被覆層で被覆されており、芯材表面の算術平均粗さ係数Raは0.6〜0.9μmであり、被覆層中の導電性微粒子含有量が58wt%〜73wt%であり、被覆層の抵抗率が6.6〜8.6Ωcmであることを特徴とする静電像現像剤用キャリア」。
(2)「前記導電性微粒子は、粒径が0.15〜0.5μmであることを特徴とする前記(1)項に記載のキャリア」。
(3)「前記導電性微粒子がアルミナを含む基体上に、少なくとも二酸化スズを含む導電性被覆層を有するものであることを特徴とする前記(1)項又は(2)項に記載のキャリア」。
(4)「前記芯材の嵩密度(AD)が1.8〜2.3g/cmであることを有することを特徴とする前記(1)項乃至(3)項のいずれかに記載のキャリア」。
(5)「前記被覆層は、前記導電性微粒子を含有するシリコーン樹脂からなる被覆層であることを特徴とする前記(1)項乃至(4)項のいずれかに記載のキャリア」。
(6)「前記被覆層の、前記導電性微粒子を除く樹脂分の平均膜厚が0.3μm以上0.5μm以下であることを特徴とする前記(1)項乃至(5)項のいずれかに記載のキャリア」。
(7)「前記該被覆層中の樹脂成分が、少なくとも下記二種のモノマーを含む共重合体を加熱処理して得られた樹脂を含むことを特徴とする前記(1)項乃至(6)項のいずれかに記載の静電潜像現像剤用キャリア:
【0008】
【化1】

【0009】
【化2】

(式中において、R1、m、R2、R3、X、及びYは以下に該当するものを示す。)
R1:水素原子、またはメチル基;
m:炭素原子数1〜8のアルキレン基;
R2:炭素原子数1〜4のアルキル基;
R3は、炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基;
X=10〜90モル%;
Y=10〜90モル%」。
【0010】
(8)「前記芯材粒子は、重量平均粒径が20μm以上50μm以下であることを特徴とする前記(1)項乃至(7)項のいずれかに記載のキャリア」。
(9)「前記(1)項1乃至(8)項のいずれかに記載のキャリアを含有すること特徴とする静電潜像現像剤」。
(10)「静電潜像担持体、該感光体の表面を帯電させる帯電部材と、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を前記(1)項乃至(8)項のいずれかに記載のキャリアとトナーからなる現像剤を用いて現像する現像部と、前記静電潜像担持体をクリーニングするクリーニング部材を有することを特徴とするプロセスカートリッジ」。
また、本発明は、次の(11)項乃至(13)項に記載の「画像形成装置」、「画像形成方法」及び「補給用現像剤」を包含する。
(11)「静電潜像担持体上に、静電潜像を形成する手段と、該静電潜像を現像剤にて現像する現像手段と、現像された画像を記録媒体に転写する転写手段と、転写された画像を記録媒体上に定着するための定着手段とを有する画像形成装置において、前記現像手段が前記(9)項に記載の現像剤を用いるものであることを特徴とする画像形成装置」。
(12)「静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程と、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、トナーと前記(1)項乃至(7)項のいずれかに記載のキャリアからなる現像剤を用いて現像してトナー像を形成する工程と、該静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する工程と、該記録媒体に転写されたトナー像を定着させる工程とを有することを特徴とする画像形成方法」。
(13)「トナーと前記(1)項乃至(8)項のいずれかに記載のキャリアからなる補給用現像剤」。
【発明の効果】
【0011】
以下の詳細かつ具体的な説明から理解されるように、本発明によれば、長期に亘り安定した帯電付与能力を有し、膜の耐摩耗性(削れ・剥がれ)に優れて、かつ抵抗の変化が少なく長期の実機での使用によってもキャリア付着による機内汚染・異常画像発生などを生じないという諸特性を同時に満足するキャリアが提供され、また、直前画像のトナー消費履歴の影響を受けず、安定したトナー量を現像に供し、色再現性に優れた均一な画像を長期にわたり得ることができるキャリア及び二成分系現像剤が提供され、また、これを用いた画像形成方法及び画像形成装置並びに画像形成装置用プロセスカートリッジが、提供されるという、極めて優れた効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の画像形成方法および画像形成装置の現像部を説明するための概略図である。
【図2】画像形成装置の一例を示す断面図である。
【図3】本発明による電子写真現像方法を用いた別のプロセス例である。
【図4】本発明のプロセスカートリッジの一例である。
【図5】本発明において経時でのキャリア体積固有抵抗を測定するのに使用するセルの一例である。
【図6】実機での使用による経時のコート層摩耗・剥離の進行を模式的にした図である。
【図7】本発明の実施例のゴースト画像評価用縦帯チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(ゴースト)
本発明が課題とするゴースト現象は、上記のいずれのゴースト現象とは発生メカニズムが異なる。本発明におけるゴースト現象の発生メカニズムは、詳細は明らかではないが以下のように考えている。直前の画像履歴に応じ現像剤担持体上へトナーが付着し、現像剤担持体上に付着したトナーが持つ電位に応じ、次画像のトナー現像量が変動する。つまり、直前の画像履歴によって次画像のトナー現像量が変動することに起因すると考えている。
より詳細に述べると、非画像部では、画像部とは逆に、静電潜像担持体から現像剤担持体方向へトナーが移動するポテンシャルが形成されるため、トナーが現像剤担持体上へ直接付着してしまう(現像剤担持体上へのトナー付着が発生する。)。このように現像剤担持体上にトナーが付着した状態で、次回現像時に画像部を現像する場合、現像担持体上へ直接付着したトナーは帯電しているため、現像剤担持体上のトナーによる電位分だけ現像ポテンシャルが嵩上げされ、トナー現像量が増加してしまう。
また、現像剤担持体上へ直接付着したトナーは、現像時に消費されるため、付着しているトナー量は一定ではなく、直前画像の履歴により変動する。
即ち、直前に、非画像部や用紙と用紙の間隔部がある場合は、その後の画像部の現像には、上述の現像ポテンシャルの嵩上げが起こり、その後の画像濃度は高くなる。一方、直前画像が画像面積の多い画像の場合には、現像剤担持体上に直接付着したトナーは、直前画像を現像した際に消費され、上述の現像ポテンシャルの嵩上げの効果は少なくなるため、その後の画像濃度は高くならない。
以上のように、本発明が課題とする履歴現象は、直前画像の影響により現像剤担持体上のトナー付着量が変動し、その変動の影響を受け、次画像の濃度変動が現れる現象である。
本課題に対し、鋭意検討した結果、前記(1)項の構成とすることで改善が確認された。
詳細は明らかではないが、芯材凹凸を利用し、局所的に芯材抵抗に近い低抵抗部を作ることで、非画像時に現像剤担持体上へ現像されたトナーが、印刷時に消費されにくくなるために、現像剤担持体上のトナー量が直前画像に寄らず安定し、画像の均一性が得られたと考えている。
【0014】
(凹凸芯材の算術平均表面粗さRa)
算術平均表面粗さRaが0.6〜0.9μmという凹凸度合いの大きな芯材を用いたキャリアの利点として、スペントトナーの掻き取り作用が働きトナースペントが起こりにくいという効果が期待できることが挙げられる。欠点としては凸部と凹部での塗布の容易さの差から、平滑な芯材に較べて樹脂膜厚が不均一になりやすいことが挙げられる。摩擦力、衝撃力の集中する凸部のみ膜削れが起こり芯材露出が起こり、さらにこの露出部が広がりつづけた場合には、電気的な導通路ができるためキャリア抵抗が急激に低下し、画像形成時にキャリア付着が発生する等の不具合が発生しうる。Raが0.6未満の場合は上記のような凹凸の存在による効果が現れにくく、Ra0.9μmより大きい場合は、表面の不均一さが顕著となり、流動性の悪化が生じやすい。
表面粗さRa(算術平均粗さ)の具体的な測定方法は、キャリア50個について、超深度カラー3D形状測定顕微鏡(VK−9500、キーエンス社製)を用い、倍率3000倍で粒子表面12×12μmの範囲を測定して求める方法である。
Ra(算術平均粗さ)は、観察したコア表面の3次元形状から、粗さ曲線を求め、該粗さ曲線の測定値と平均線までの偏差の絶対値を合計し、平均することで求める。
Ra(算術平均粗さ)を求める際の基準長さは、10μmであり、カットオフ値は、0.08mmである。これら表面粗さRa(算術平均粗さ)と表面粗さSm(凹凸の平均間隔)の測定は、JIS B 0601(1994年度版)に準じて行う。
【0015】
(凸部でのコート膜削れ抑制)
検討の結果、粒径が0.15〜0.5μmの大粒径導電性微粒子をコート樹脂中に分散させることで、凸部でのスペーサー効果が得られ、凸部の削れがより抑制されることがわかった。
本発明では凸部での芯材露出面積の拡大防止に対して大粒径フィラーによるスペーサー効果、フィラー効果による摩耗防止、芯材と樹脂の密着性向上による剥離防止により、芯材露出部の面積が経時で拡大せず、凹凸芯材での固有課題(摩擦衝撃力の集中する凸部の局所的な摩耗・破損防止⇒凸部芯材露出による急激な抵抗低下、キャリア付着発生)を防止している。
これを図示すると図6のようになる。図6は、実機での使用による経時のコート層摩耗・剥離の進行を模式的にした図である。この図において、劣化前(初期)キャリアを実機内で使用し、経時劣化が進んだ状態を劣化後キャリア1、さらに経時劣化が進んだ状態を劣化後キャリア2と示す。
A:コート層断面図、B:芯材断面図、C:芯材露出部上面図を示す。
従来のキャリアでは劣化キャリア1から劣化キャリア2へと芯材露出部が局所的に広がっていくが、本発明のキャリアでは上述の効果で劣化キャリア1程度で剥離・摩耗がとまり、芯材の露出面積が最小限にとどまり、経時で広がりにくい。
【0016】
(導電性微粒子)
次に本発明における導電性微粒子について説明する。
本発明のキャリアは、樹脂層の強度アップ及びキャリア抵抗調整のために導電性微粒子を含むものである。
本発明者らは、シラノール基及び/又は加水分解性官能基を有するシリコーン樹脂を加熱処理して得られた樹脂で被覆されたキャリアの抵抗を調整する導電性微粒子について鋭意検討したところ、アルミナ系基体の表面に導電性被覆層を有する導電性微粒子は、キャリアの体積固有抵抗を調節機能が高く、前記表面エネルギーが小さく強靭な共重合体との親和性が相俟って、長期間キャリア抵抗や現像剤の汲み上げ量が変化せず、画像濃度の変化を防止でき、長期にわたって高品質な画像を形成できることを見出した。
またトナーと摩擦帯電するキャリアは帯電能力の点から電気陰性度が離れている基体が好ましいと考えられる。トナーの添加剤であるシリカや酸化チタンは電気陰性度が大きく負帯電性が大きいため、キャリア基体は電気陰性度の小さい基体を用いる方が帯電能力が大きくなり、負帯電トナーを用いる場合には好ましい。基体を電気陰性度の小さいアルミナを用いる場合は長期間安定して帯電を維持でき高品質な画像を形成できるが、アルミナ以外の酸化チタン等電気陰性度が大きい基体を用いた場合は、初期には帯電調節ができても長期間の使用により帯電能力が維持できず、画像品質が低下する。
【0017】
前記アルミナとしては、αアルミナ、βアルミナ、γアルミナ、いずれも使用することができ、平均粒径は0.1μm〜0.5μm、比表面積は、5〜30m/gであリ、好ましくは0.15μm〜0.3μmものを使用できる。
前記導電性微粒子の導電性被覆層は、二酸化スズ、または二酸化スズ及び酸化インジウムを含むものであることが好ましい。前記二酸化スズ、または二酸化スズ及び酸化インジウムを含む導電性被覆層は、基体表面を均一に被覆することができ、基体の影響を受けずに良好な導電性が得られ、特に、導電性被覆層が二酸化スズであるものは、充分な抵抗調節能を有し安価であるため、好ましく使用できる。
導電性被覆層が二酸化スズである場合には、導電性微粒子全体で二酸化スズを4重量%以上80重量%以下含むことが好ましく、30重量%以上50重量部以下であることがさらに好ましい。
二酸化スズが4重量%未満であると導電性微粒子の体積固有抵抗が高くなるため、導電性微粒子の添加量が多くなって、キャリア粒子表面から脱離しやすくなり、また80重量%以上としても、導電性微粒子の体積固有抵抗はそれほど下がらず効率が低く、また不均一になることがある。
また、導電性被覆層が二酸化スズ及び酸化インジウムである場合には、二酸化スズの含有量は2重量%以上7重量%以下であり、酸化インジウムの含有量は、15重量%以上40重量%以下であることが好ましい。
導電性微粒子の平均一次粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、キャリア断面を観察し、キャリア表面を覆う被覆層内の導電性微粒子径を測定し、その平均値からを求めた。
具体的には、前記キャリア断面から任意の10点の導電性微粒子の短径を測定し、測定値の平均を求め平均一次粒径とした。なお、後述の具体例におけるアルミナ系基体の平均一次粒径はメーカーが公表しているカタログ値を用いた。
導電性粒子量は、芯材に対して3〜8重量%であることが好ましい。導電性粒子の添加量が3質量%未満であると、キャリアの体積固有抵抗を調整する効果が不十分となることがあり、8質量%を超えると、導電性微粒子を保持することが難しくなり、キャリアの表面層が破壊され易くなる。
【0018】
(被覆層抵抗)
本発明の静電潜像現像剤用キャリアの被覆層抵抗は6.6〜8.6Ωcmであることが好ましい。キャリア被覆層の抵抗を制御することによって、ゴースト現象がない、エッジ効果を抑えた、文字部などの細線の再現性が良い色汚れのない高精細な画像が得られる。
体積固有抵抗が6.6Ω・cm未満であると、非画像部でキャリア付着が発生することがあり、8.6Ω・cmを超えると、ゴースト現象が悪化し許容できないレベルになることがある。キャリアの被覆層抵抗は、芯材粒子上の樹脂層の抵抗調整(導電性微粒子の添加量等)、および膜厚の制御によって可能である。
発明者らの検討では、特にゴースト現象に対して、キャリアの抵抗(芯材と被覆層をあわせたキャリア全体の抵抗)、キャリアの被覆層抵抗いずれも低いほうが好ましいが、キャリアの抵抗よりもキャリアの被覆層抵抗の寄与が大きいことが明らかになっている。
被覆層の抵抗は次の方法で測定することができる。
コート層の抵抗はアルミ基板の上にアプリケータなどを用いて厚さ数μm程度のコート膜被覆層溶液(樹脂、導電性微粒子、触媒等の被覆層を構成する成分をトルエン等の有機溶媒に溶解分散させた溶液である。キャリア製造例で用いる被覆層溶液と同じ条件,固形分濃度、溶剤で作成されたものである)を0.2mmの厚さのアルミ基板上にワイヤーバーを使用して2〜4μmの被膜を形成する。形成した被膜をキャリア製造時と同じ温度・時間条件で乾燥・焼成しアルミ基板上に被覆層を形成する。焼成後の被覆層の厚みを表面粗さ形状測定機(サーフコム 1400G−LCD 東京精密社製)で測定する。次に、被覆層表面を金蒸着したのち導電性金属テープを貼り付け現極を形成し、印加電圧5Vの条件のもとで電流を測定し、被覆層厚み,電流値、印加電圧から被覆層抵抗を求める。
【0019】
(フィラー量)
被覆層中の導電性微粒子含有量が58wt%〜73wt%であることが好ましい。キャリアの被覆層抵抗の制御が可能でありかつ、フィラー効果による被覆層の強度維持の観点から好ましい数値範囲である。導電性微粒子の添加量が58wt%未満であると、樹脂層を充分強度アップできず、またキャリア抵抗の調整が不十分となることがあり、73wt%を超えると導電性微粒子が脱離し易くなり、実機内での経時変化により導電性フィラーが脱離しやすくなり、キャリアの体積固有抵抗が変化し易くなることがある。
【0020】
(被覆層強度、厚み)
本発明においては、樹脂層組成物をキャリア芯材に被覆した後、使用する芯材粒子のキューリー点未満の温度、好ましくは100〜350℃の温度で熱処理することにより、縮合による架橋反応が促進される。より好ましい熱処理温度は、150〜250℃である。
100℃より低いと、縮合による架橋反応が進まず、樹脂層の十分な強度が得られない。
一方、350℃より高い温度になると、前記共重合体が炭化してくる等の理由のため、樹脂層が削れ易くなる。
本発明において、キャリアの樹脂層は、平均膜厚が0.3〜0.5μmであることが好ましい。キャリアの被覆層抵抗の制御が可能でありかつ、フィラー効果による被覆層の強度維持の観点から好ましい数値範囲である。平均膜厚が0.3μm未満であると、樹脂層が剥離しやすくなり、0.5μmを超えると、樹脂層は磁性体でないため、キャリア抵抗の調整が不十分となることがある。
前記樹脂層の平均膜厚は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、キャリアの断面を観察し、樹脂層の平均膜厚を測定した。
【0021】
(芯材粒子)
本発明のキャリア芯材粒子としては、磁性体であれば、特に限定されないが、鉄、コバルト等の強磁性金属;マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の酸化鉄;各種合金や化合物;これらの磁性体を樹脂中に分散させた樹脂粒子等が挙げられる。中でも、環境面への配慮から、Mn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Mn−Mg−Srフェライト等が好ましい。
本発明において、芯材粒子は、重量平均粒径が20〜65μm、特に好ましくは20〜45μmであることが好ましい。
重量平均粒径Dwが前記範囲よりも大きいと、キャリア付着がより起こりにくくなるが、潜像に対してトナーが忠実に現像されなくなって、ドット径のバラツキが大きくなり粒状性が低下する。また、トナー濃度が高いと地汚れし易くなる。
前記キャリア付着は、静電潜像の画像部又は地肌部にキャリアが付着する現象を示す。それぞれの電界が強いほどキャリア付着し易い。画像部は、トナー現像されることにより電界が弱められるため、地肌部に比べ、キャリア付着は起こり難い。
本発明においてキャリア、キャリア芯材及びトナーに関して言う重量平均粒径Dwは、個数基準で測定された粒子の粒径分布(個数頻度と粒径との関係)に基づいて算出されたものである。
この場合の重量平均粒径Dwは次式で表わされる。
【0022】
【数1】

前式中、Dは各チャネルに存在する粒子の代表粒径(μm)を示し、nは各チャネルに存在する粒子の総数を示す。なお、チャネルとは、粒径分布図における粒径範囲を測定幅単位に分割するための長さを示すもので、本発明の場合には、2μmの等分長さ(粒径分布幅)0を採用した。
各チャネルに存在する粒子の代表粒径としては、各チャネルに保存する粒子粒径の下限値を採用した。
また、前記芯材の嵩密度(ここでは理論計算上のBulk Dencityでなく、測定による実務的なApparent Density AD(見掛密度)を云う)は1.8〜2.3g/cmであることが好ましい。
この嵩密度(AD)の測定方法は、金属粉−見掛密度試験方法(JIS−Z−2504)に従って、直径3.0mmのオリフィスからキャリアを自然に流出させ、その直下においた25cmのステンレス製の円柱状容器にキャリアをあふれるまで流し込んだのち、容器の上面を非磁性の水平なへらを用いて容器の上端に沿って一回の操作で平らに掻き取る。
この操作により、容器に流入したキャリア重量を、容器の体積25cmで割ることにより、1cm当りのキャリアの重量を求める。
【0023】
(キャリア形状、磁化)
本発明では、基本的には芯材の形状によってキャリアの形状を制御している。このため、キャリアの形状、具体的にはキャリアのRaは芯材のRaの0.9〜1.0倍の範囲となるが、特にフィラー量を多く含有させた場合にはRaがやや小さくなる場合がある。また、本発明のキャリアは、1kOe(10/4π[A/m])の磁場における磁化が、40〜90Am/kgであることが好ましい。この磁化が40Am/kg未満であると、画像にキャリアが付着することがあり、90Am/kgを超えると、磁性穂が硬くなり、画像カスレが発生することがある。
【0024】
(コート樹脂、シリコーン樹脂)
本発明の樹脂層組成物は、シラノール基、及び/又は加水分解によりシラノ−ル基を生成することが可能な官能基を有するシリコーン樹脂を含むことが好ましい。
シラノール基、及び/又は加水分解によりシラノ−ル基を生成することが可能な官能基(例えば、アルコキシ基やSi原子に結合するハロゲノ基等の陰性基)を有するシリコーン樹脂は、前記共重合体の架橋成分Bと直接的に、あるいはシラノール基に変化した状態の架橋成分Bと縮重合することができる。そして、前記共重合体に、シリコーン樹脂成分を含有させることにより、トナースペント性を更に改善される。
【0025】
本発明において、樹脂層を形成する際に用いられるシラノール基、及び/又は加水分解によりシラノ−ル基を生成することが可能な官能基を有するシリコーン樹脂は、下記一般式(I)で示される繰り返し単位の少なくとも一つを含有することが好ましい。
【0026】
【化3】

ここで、上記式(I)中、Aは水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、炭素数1〜4の低級アルキル基、またはアリール基(フェニル基、トリル基など)であり、Aは炭素数1〜4のアルキレン基、またはアリーレン基(フェニレン基など)である。
上記式のアリール基において、その炭素数は6〜20、好ましくは6〜14である。このアリール基には、ベンゼン由来のアリール基(フェニル基)の他、ナフタレンやフェナントレン、アントラセン等の縮合多環式芳香族炭化水素由来のアリール基及びビフェニルやターフェニル等の鎖状多環式芳香族炭化水素由来のアリール基等が包含される。なお、アリール基は、各種の置換基で置換されていてもよい。
アリーレン基の炭素数は、6〜20、好ましくは6〜14である。このアリーレン基としては、ベンゼン由来のアリーレン基(フェニレン基)の他、ナフタレンやフェナントレン、アントラセン等の縮合多環式芳香族炭化水素由来のアリーレン基及びビフェニルやターフェニル等の鎖状多環式芳香族炭化水素由来のアリーレン基等が包含される。なお、アリーレン基は、各種の置換基で置換されていてもよい。
本発明に使用できるシリコーン樹脂の市販品としては、特に限定されないが、KR251、KR271、KR272、KR282、KR252、KR255、KR152、KR155、KR211、KR216、KR213(以上、信越シリコーン社製)、AY42−170、SR2510、SR2400、SR2406、SR2410、SR2405、SR2411(東レ・ダウコーニング株式会社製)(東レ・シリコーン社製)等が挙げられる。
上述のように、種々のシリコーン樹脂が使用可能であるが、中でも、メチルシリコーン樹脂は、低トナースペント性、帯電量の環境変動が小さいことなどの理由から特に好ましい。
シリコーン樹脂の重量平均分子量としては、1000〜100,000、好ましくは、1000〜30000程度である。用いる樹脂の分子量が100,000より大きい場合、塗布時に塗布液の粘度が上昇しすぎ、塗膜の均一性が十分得られなかったり、硬化後に樹脂層の密度が十分上がらない場合がある。1000より小さいと硬化後の樹脂層がもろくなるなどの不具合が生じやすい。
シリコーン樹脂の含有比率としては、全被覆樹脂量に対して、5重量%〜80重量%、好ましくは、10重量%〜60重量%である。
5重量%より少ないとスペント性などの改良効果が得られず、80重量%より多いと樹脂層の強靭性が不足して、膜削れし易くなる。
また、本発明の樹脂層組成物は、前記シラノール基及び/又は加水分解性官能基を有するシリコーン樹脂以外の樹脂も含有することができ、そのような樹脂としては、特に限定されないが、アクリル樹脂、アミノ樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体のターポリマー等のフルオロターポリマー、シラノール基又は加水分解性官能基を有さないシリコーン樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、芯材粒子及び導電性微粒子との密着性が強く、脆性が低いことから、アクリル樹脂が好ましい。
【0027】
(共重合体、モノマーA、B、C成分)
また、本発明の樹脂層組成物として、該被覆層中の樹脂成分が、モノマーA成分とモノマーB成分をラジカル共重合して得られる下記の共重合体(I)を加水分解し、シラノール基を生成し縮合することにより架橋、被覆した構造のものが好ましい。
【0028】
【化4】

ここで、式中、R、m、R、R、X、Yは以下に該当するものを示す。
:水素原子、またはメチル基
m:炭素原子数1〜8のメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基
:炭素原子数1〜4のメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、及びブチル基等のアルキル基
:炭素数1〜8のメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、及びブチル基等のアルキル基、または炭素数1〜4のメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、
【0029】
【化5】

前式中、
:水素原子、またはメチル基、
m:炭素原子数1〜8のメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基、
:炭素原子数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基。
A成分において、X=10〜90モル%であり、より好ましくは、30〜70モル%である。
【0030】
A成分は、側鎖にメチル基が多数存在する原子団・トリス(トリメチルシロキシ)シランを有しており、樹脂全体に対してA成分の比率が高くなると表面エネルギーが小さくなり、トナーの樹脂成分、ワックス成分などの付着が少なくなる。A成分が10モル%未満だと十分な効果が得られず、トナー成分の付着が急増する。また、90モル%より多くなると、成分B、および成分Cが減り、架橋が進まず、強靭性が不足すると共に、芯材と樹脂層の接着性が低下し、キャリア被膜の耐久性が悪くなる。
は炭素原子数1〜4のアルキル基であり、このようなモノマー成分としては、次式で示されるトリス(トリアルキルシロキシ)シラン化合物が例示される。
下式中、Meはメチル基、Etはエチル基、Prはプロピル基である。
CH=CMe−COO−C−Si(OSiMe
CH=CH−COO−C−Si(OSiMe
CH=CMe−COO−C−Si(OSiMe
CH=CMe−COO−C−Si(OSiEt
CH=CH−COO−C−Si(OSiEt
CH=CMe−COO−C−Si(OSiEt
CH=CMe−COO−C−Si(OSiPr
CH=CH−COO−C−Si(OSiPr
CH=CMe−COO−C−Si(OSiPr
A成分の製造方法は特に限定されないが、トリス(トリアルキルシロキシ)シランを白金触媒の存在下にアリルアクリレートまたはアリルメタクリレートと反応させる方法や、特開平11−217389に記載されている、カルボン酸と酸触媒の存在下で、メタクリロキシアルキルトリアルコキシシランとヘキサアルキルジシロキサンとを反応させる方法などにより得られる。
【0031】
【化6】

前式中、
:水素原子、またはメチル基、
m:炭素原子数1〜8のメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基、
:炭素原子数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基、
:炭素数1〜8のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基など)、又は炭素数1〜4のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基)。すなわち、B成分は、ラジカル重合性の2官能、又は3官能性のシラン化合物であり、Y=10〜90モル%であるが、より好ましくは30〜70モル%である。
【0032】
B成分が10モル%未満だと、強靭さが十分得られない。一方、90モル%より多いと、被膜は固くて脆くなり、膜削れが発生し易くなる。また、環境特性が悪化する。加水分解した架橋成分がシラノール基として多数残り、環境特性(湿度依存性)を悪化させていることも考えられる。
このようなB成分としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリトキシプロピルトリ(イソプロペキシ)シラン、3−アクリロキシプロピルトリ(イソプロペキシ)シランが例示される。
【0033】
本発明は、前記A成分及びB成分にC成分としてアクリル系化合物(モノマー)に加えてもよい。
このようなC成分を加えたものとしては、下記の共重合体(II)が挙げられる。
【0034】
【化7】

(式中において、R、m、R、R、X、Y、及びZは以下に該当するものを示す。)
:水素原子、またはメチル基
m:炭素原子数1〜8のアルキレン基
:炭素原子数1〜4のアルキル基
は、炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基
【0035】
【化8】

X=10〜40モル%である。
【0036】
【化9】

Y=10〜40モル%である。
【0037】
【化10】

Z=30〜80モル%であり、
かつ、60モル%<Y+Z<90モル%である。
C成分は、被膜に可撓性を付与し、かつ、芯材と被膜との接着性を良好にするものであるが、C成分が30モル%未満だと十分な接着性が得られず、80モル%よりも大きくなると、X成分及びY成分のいずれかが10モル%以下となるため、キャリア被膜の撥水性、硬さと可撓性(膜削れ)を両立させることが難しくなる。
【0038】
C成分のアクリル系化合物(モノマー)としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが好ましく、具体的には、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、3−(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(ジメチルアミノ)プロピルアクリレートが例示される。これらの内ではアルキルメタクリレートが好ましく、特にメチルメタクリレートが好ましい。また、これらの化合物の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上の混合物を使用してもよい。
【0039】
被膜の架橋による高耐久化技術としては、特許第3691115号公報開示のものがある。特許第3691115号公報開示のものは、磁性粒子表面を、少なくとも末端にビニル基を有するオルガノポリシロキサンとヒドロキシル基、アミノ基、アミド基およびイミド基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有するラジカル共重合性単量体との共重合体をイソシアネート系化合物により架橋させた熱硬化性樹脂で被覆したことを特徴とする静電荷像現像用キャリアであるが、被膜の剥がれ・削れにおいて十分な耐久性が得られていないのが現状である。
その理由は十分明らかになっているとは言えないが、前述の共重合体をイソシアネート系化合物により架橋させた熱硬化性樹脂の場合、構造式からも分かるように、共重合体樹脂中のイソシアネート化合物と反応(架橋)する単位重量当りの官能基が少なく、架橋点において、二次元、あるいは三次元的な緻密な架橋構造を形成することが出来ない。そのために長時間使用すると、被膜剥がれ・削れなどが生じ(被膜の耐磨耗性が小さく)易く、十分な耐久性が得られていないと推察される。
被膜の剥がれ・削れが生じると、キャリア抵抗低下による画像品質の変化、キャリア付着が起こる。また、被膜の剥がれ・削れは、現像剤の流動性を低下させ、汲み上げ量低下を引き起こし、画像濃度低下、TCアップに伴う時汚れ、トナー飛散の原因となっている。
本発明の樹脂は、樹脂単位重量当たりでみても、二官能、あるいは三官能の架橋可能な官能基(点)を多数(単位重量当り、2倍〜3倍多い)有した共重合樹脂であり、これを更に、縮重合により架橋させたものであるため、被膜が極めて強靭で削れ難く、高耐久化がはかれていると考えられる。
また、イソシアネート化合物による架橋より、本発明のシロキサン結合による架橋の方が結合エネルギーが大きく熱ストレスに対しても安定しているため、被膜の経時安定性が保たれていると推察される。
【0040】
(アクリル樹脂)
アクリル樹脂は、ガラス転移点が20〜100℃であることが好ましく、25〜80℃がさらに好ましい。このようなアクリル樹脂は、適度な弾性を有しているため、現像剤を摩擦帯電させる際に、トナーとキャリアの摩擦あるいはキャリア同士の摩擦による樹脂層への強い衝撃を伴う場合に、衝撃を吸収することができ、樹脂層及び導電性微粒子の劣化を防止できる。
また、樹脂層組成物は、アクリル樹脂とアミノ樹脂の架橋物を含有することがさらに好ましい。これにより、適度な弾性を維持したまま、樹脂層同士の融着を抑制することができる。アミノ樹脂としては、特に限定されないが、キャリアの帯電付与能力を向上させることができるため、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂が好ましい。また、適度にキャリアの帯電付与能力を制御する必要がある場合には、メラミン樹脂及び/又はベンゾグアナミン樹脂と、他のアミノ樹脂を併用してもよい。
アミノ樹脂と架橋し得るアクリル樹脂としては、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有するものが好ましく、ヒドロキシル基を有するものがさらに好ましい。これにより、芯材粒子や導電性微粒子との密着性をさらに向上させることができ、導電性微粒子の分散安定性も向上させることができる。このとき、アクリル樹脂は、水酸基価が10mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上がさらに好ましい。
また、シラノール基及び/又は加水分解性官能基を有するシリコーン樹脂等の被覆樹脂中の架橋成分の縮合反応を促進するために、チタン系触媒、スズ系触媒、ジルコニウム系触媒、アルミニウム系触媒を使用できる。これら各種触媒のうち、優れた結果をもたらすチタン系触媒の中でも、特にチタンアルコキシドとチタンキレートが好ましい。
これは、架橋成分B由来するシラノール基の縮合反応を促進する効果が大きく、且つ触媒が失活しにくいためであると考えられる。チタンアルコキシド系触媒の例としては、下記構造式5で表されるチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)が挙げられ、また、チタンキレート系触媒の例としては、下記構造式6で表されるチタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)が挙げられる。
【0041】
【化11】

【0042】
【化12】

【0043】
前記樹脂層は、シラノール基及び/又は加水分解性官能基を有するシリコーン、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)触媒、必要に応じて、その樹脂、溶媒を含む樹脂層用組成物を用いて形成することができる。
具体的には、樹脂層用組成物で芯材粒子を被覆しながら、シラノール基を縮合させることにより形成してもよいし、樹脂層用組成物で芯材粒子を被覆した後に、シラノール基を縮合させることにより形成してもよい。
樹脂層用組成物で芯材粒子を被覆しながら、シラノール基を縮合させる方法としては、特に限定されないが、熱、光等を付与しながら、樹脂層用組成物で芯材粒子を被覆する方法等が挙げられる。また、樹脂層用組成物で芯材粒子を被覆した後に、シラノール基を縮合させる方法としては、特に限定されないが、樹脂層用組成物で芯材粒子を被覆した後に加熱する方法等が挙げられる。
【0044】
(シランカップリング剤)
シランカップリング剤としては特に、接着性、トナー帯電量調整の観点から、以下に示すアミノシランカップリング剤を適量(0.001〜30重量%)含有させることが有効である
アミノシランカップリング剤としては、以下のようなものが挙げられる。
N(CHSi(OCH MW 179.3
N(CHSi(OC MW 221.4
NCHCHCHSi(CH(OC) MW 161.3
NCHCHCHSi(CH)(OC MW 191.3
NCHCHNHCHSi(OCH MW 194.3
NCHCHNHCHCHCHSi(CH)(OCH MW 206.4
NCHCHNHCHCHCHSi(OCH MW 224.4
(CHNCHCHCHSi(CH)(OC MW 219.4
(CNCSi(OCH MW 291.6
また、これらのシランカップリング剤は芯材表面の被覆に加えて、シリコーン樹脂のコート層のトナー帯電量調整の観点からコート樹脂層に含有させてもよい
【0045】
(現像剤、トナー)
本発明のキャリアは、トナーと混合して二成分現像剤として用いられる。
本発明に使用されるトナーは、熱可塑性樹脂を主成分とするバインダー樹脂中に、着色剤、微粒子、そして帯電制御剤、離型剤等を含有させたものであり、従来公知の各種のトナーを用いることができる。このトナーは、重合法、造粒法などの各種のトナー製法によって作成された不定形または球形のトナーであることができる。また、磁性トナー及び非磁性トナーのいずれも使用可能である。
【0046】
トナーのバインダー樹脂としては以下のものを、単独あるいは混合して使用できる。
スチレン系バインダー樹脂として、ポリスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体、スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;アクリル系バインダーとして、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレートが挙げられ、その他、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂肪族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられる。
【0047】
ポリエステル樹脂は、トナーの保存時の安定性を確保しつつ、より溶融粘度を低下させることが可能であり好ましい。
また、ポリエステル樹脂は、スチレン系やアクリル系樹脂に比して、トナーの保存時の安定性を確保しつつ、より溶融粘度を低下させることが可能であるため、好ましく用いることができる。このようなポリエステル樹脂は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合反応によって得ることができる。
アルコール成分としては、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオールなどのジオール類、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノーAなどのエーテル化ビスフェノール類、これらを炭素数3〜22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した2価のアルコール単位体、その他の2価のアルコール単位体、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエスリトール、ジペンタエスリトール、トリペンタエスリトール、蔗糖、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の三価以上の高アルコール単量体を挙げることができる。
【0048】
また、ポリエステル樹脂を得るために用いられるカルボン酸成分としては、例えばパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、フマール酸、メサコン酸、シトラコン酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸、これらを炭素数3〜22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した2価の有機酸単量体、これらの酸の無水物、低級アルキルエステルと、リノレイン酸からの二量体酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸エンボール三量体酸、これら酸の無水物等の三価以上の多価カルボン酸単量体を挙げることができる。
【0049】
エポキシ系樹脂としては、ビスフェノールAとエポクロルヒドリンとの重縮合物等があり、例えば、エポミックR362、R364、R365、R366、R367、R369(以上、三井石油化学工業(株)製)、エポトートYD−011、YD−012、YD−014、YD−904、YD−017、(以上、東都化成(株)製)エポコ−ト1002、1004、1007(以上、シェル化学社製)等の市販のものが挙げられる。
【0050】
本発明に使用される着色剤としては、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、ハンザイエローG、ローダミン6Gレーキ、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、モノアゾ系、ジスアゾ系、染顔料など、従来公知の染顔料を単独あるいは混合して使用し得る。
また、ブラックトナーには、磁性体を含有させて磁性トナーとすることも可能である。
磁性体としては、鉄、コバルトなどの強磁性体、マグネタイト、ヘマタイト、Li系フェライト、Mn−Zn系フェライト、Cu−Zn系フェライト、Ni−Znフェライト、Baフェライトなどの微粉末が使用できる。
トナーの摩擦帯電性を充分に制御する目的で、いわゆる帯電制御剤、例えばモノアゾ染料の金属錯塩、ニトロフミン酸およびその塩、サリチル酸、ナフトエ塩、ジカルボン酸のCo、Cr、Fe等の金属錯体アミノ化合物、第4級アンモニウム化合物、有機染料などを含有させることができる。
なお、ブラック以外のカラートナーにおいては、白色のサリチル酸誘導体の金属塩等が好ましい。
【0051】
さらにまた、本発明で用いるトナーには必要に応じて離型剤を添加してもよい。
離型剤材料としては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、カルナウバワックス、マイクロクリスタリンワックス、ホホバワックス、ライスワックス、モンタン酸ワックス等を単独または混合して用いることができるが、これらに限定されるものではない。
トナーには、添加剤を添加することができる。良好な画像を得るためには、トナーに充分な流動性を付与することが肝要である。これには、一般に流動性向上材として疎水化された金属酸化物の微粒子や、滑剤などの微粒子を外添することが有効であり、金属酸化物、有機樹脂微粒子、金属石鹸などを添加剤として用いることが可能である。これら添加物の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ステアリン酸亜鉛のごとき滑剤や、酸化セリウム、炭化ケイ素などの研磨剤;例えば表面を疎水化したSiO、TiO等の無機酸化物などの流動性付与剤;ケーキング防止剤として知られるもの、および、それらの表面処理物などが挙げられる。トナーの流動性を向上させるためには、特に、疎水性シリカが好ましく用いられる。
本発明のトナーとキャリアとからなる静電潜像現像剤で用いるトナーは、その重量平均粒径は3.0〜9.0μm、より好ましくは3.0〜6.0μmである。
なお、トナー粒径はコールターマルチサイザーII(コールターカウンター社製)を用いて測定した。
【0052】
また、本発明のキャリアを、キャリアとトナーから成る補給用現像剤とし、現像装置内の余剰の現像剤を排出しながら画像形成を行う画像形成装置に適用することで、極めて長期に渡って安定した画像品質が得られる。
つまり、現像装置内の劣化したキャリアと、補給用現像剤中の劣化していないキャリアを入れ替え、長期間に渡って帯電量を安定に保ち、安定した画像が得られる。本方式は、特に高画像面積印字時に有効である。高画像面積印字時の劣化は、キャリアへのトナースペントによるキャリア帯電能力低下が主なキャリアの劣化であるが、本方式を用いることで、高画像面積時には、キャリア補給量も多くなるため、劣化したキャリアが入れ替わる頻度が高くなる。これにより、極めて長期間に渡って安定した画像を得られる。
補給用現像剤の混合比率は、キャリア1質量部に対してトナーを2〜50質量部、好ましくは、5〜12質量部の配合割合とすることが好ましい。トナーが2質量部未満の場合には、補給キャリア量が多すぎ、キャリア供給過多となり現像装置中のキャリア濃度が高くなりすぎるため、トナーの帯電量が増加しやすい。又、トナーの帯電量が上がることにより、現像能力が下がり画像濃度が低下してしまう。また50質量部を超えると、補給用現像剤中のキャリア割合が少なくなるため、画像形成装置中のキャリアの入れ替わりが少なくなり、キャリア劣化に対する効果が期待できなくなる。
【0053】
(画像形成方法、画像形成装置)
次に、図面により本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置の例を詳しく説明するが、これらの例は、本発明を説明するためのものであって、本発明を限定するためのものではない。
図1は、本発明の画像形成方法および画像形成装置の現像部を説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図1において、潜像担持体である感光体ドラム(20)に対向して配設された現像装置(40)は、現像剤担持体としての現像スリーブ(41)、現像剤収容部材(42)、規制部材としてのドクターブレード(43)、支持ケース(44)等から主に構成されている。
感光体ドラム(20)側に開口を有する支持ケース(44)には、内部にトナー(21)を収容するトナー収容部としてのトナーホッパー(45)が接合されている。トナーホッパー(45)に隣接した、トナー(21)とキャリア粒子(23)とからなる現像剤を収容する現像剤収容部(46)には、トナー粒子(21)とキャリア粒子(23)を撹拌し、トナー粒子に摩擦/剥離電荷を付与するための、現像剤撹拌機構(47)が設けられている。
トナーホッパー(45)の内部には、図示しない駆動手段によって回動されるトナー供給手段としてのトナーアジテータ(48)及びトナー補給機構(49)が配設されている。トナーアジテータ(48)及びトナー補給機構(49)は、トナーホッパー(45)内のトナー(21)を現像剤収容部(46)に向けて撹拌しながら送り出す。
感光体ドラム(20)とトナーホッパー(45)との間の空間には、現像スリーブ(41)が配設されている。図示しない駆動手段で図の矢印方向に回転駆動される現像スリーブ(41)は、キャリア粒子(23)による磁気ブラシを形成するために、その内部に現像装置(40)に対して相対位置不変に配設された、磁界発生手段としての図示しない磁石を有する。
現像剤収容部材(42)の、支持ケース(44)に取り付けられた側と対向する側には、規制部材(ドクターブレード)(43)が一体的に取り付けられている。規制部材(ドクターブレード)(43)は、この例では、その先端と現像スリーブ(41)の外周面との間に一定の隙間を保った状態で配設されている。
このような装置を非限定的に用い、本発明の現像方法は、次のように遂行される。即ち、上記構成により、トナーホッパー(45)の内部からトナーアジテータ(48)、トナー補給機構(49)によって送り出されたトナー(21)は、現像剤収容部(46)へ運ばれ、現像剤撹拌機構(47)で撹拌されることによって、所望の摩擦/剥離電荷が付与され、キャリア粒子(23)と共に現像剤として、現像スリーブ(41)に担持されて感光体ドラム(20)の外周面と対向する位置まで搬送され、トナー(21)のみが感光体ドラム(20)上に形成された静電潜像と静電的に結合することにより、感光体ドラム(20)上にトナー像が形成される。
【0054】
図2は画像形成装置の一例を示す断面図である。
ドラム状の像担持体すなわち感光体ドラム(20)の周囲に、像担持体帯電部材(32)、像露光系(33)、現像(装置)機構(40)、転写機構(50)、クリーニング機構(60)、除電ランプ(70)が配置されていて、この例の場合、像担持体帯電部材(32)の表面は感光体(20)の表面とは約0.2mmの間隙を置いて非接触状態にあり、帯電用部材(32)により感光体(20)に帯電を施す際、帯電部材(32)に図示してない電圧印加手段によって直流成分に交流成分を重畳した電界により感光体に帯電を与えることにより、帯電ムラを低減することが可能であり、効果的である。現像方法を含む画像形成方法は、以下の動作で行なわれる。
画像形成の一連のプロセスは、ネガ−ポジプロセスで説明を行なうことができる。有機光導電層を有する感光体(OPC)に代表される像担持体(20)は除電ランプ(70)で除電され、帯電チャージャや帯電ローラといった帯電部材(32)で均一にマイナスに帯電され、レーザー光学系(33)より照射されるレーザー光で潜像形成(この例では露光部電位の絶対値は、非露光部電位の絶対値より低電位となる)が行なわれる。
レーザー光は半導体レーザーから発せられて、高速で回転する多角柱の多面鏡(ポリゴン)等により像担持体すなわち感光体(20)の表面を、像担持体(20)の回転軸方向に走査する。このようにして形成された潜像が、現像装置、現像手段又は現像装置(40)にある現像剤担持体である現像スリーブ(41)上に供給されたトナー粒子及びキャリア粒子の混合物からなる現像剤により現像され、トナー可視像が形成される。潜像の現像時には、電圧印加機構(図示せず)から現像スリーブ(41)に、像担持体(20)の露光部と非露光部の間に、ある適当な大きさの電圧またはこれに交流電圧を重畳した現像バイアスが印加される。
一方、転写媒体(例えば紙)(80)が、給紙機構(図示せず)から給送され、上下一対のレジストローラ(図示せず)で画像先端と同期をとって像担持体(20)と転写部材(50)との間に給送され、トナー像が転写される。このとき、転写部材(50)には、転写バイアスとして、トナー帯電の極性と逆極性の電位が印加されることが好ましい。その後、転写媒体または中間転写媒体(80)は像担持体(20)より分離され、転写像が得られる。
また、像担持体上に残存するトナー粒子は、クリーニング部材としてのクリーニングブレード(61)にて、クリーニング機構(60)内のトナー回収室(62)へ回収される。
回収されたトナー粒子は、トナーリサイクル手段(図示せず)により現像部および/またはトナー補給部に搬送され、再使用されても良い。
画像形成装置は、上述の現像装置を複数配置し、転写媒体上へトナー像を順次転写した後、定着機構へ送り、熱等によってトナーを定着する装置であっても良く、一端中間転写媒体上へ複数のトナー像を転写し、これを一括して転写媒体に転写後同様の定着を行なう装置であっても良い。
【0055】
図3には、本発明による電子写真現像方法を用いた別のプロセス例を示す。
感光体(20)は導電性支持体上に少なくとも感光層が設けてなり、駆動ローラ(24a)、(24b)により駆動され、帯電ローラ(32)による帯電、光源(33)による像露光、現像装置(40)による現像、帯電器(50)を用いる転写、光源(26)によるクリーニング前露光、ブラシ状クリーニング手段(64)及びクリーニングブレード(61)によるクリーニング、除電光源(70)による除電が繰返し行なわれる。図3においては、感光体(20)(勿論この場合は支持体が透光性である)に支持体側よりクリーニング前露光の光照射が行なわれる。
【0056】
図4には、本発明のプロセスカートリッジの1例が示される。
このプロセスカートリッジは、本発明のキャリアを使用し、感光体(20)と、近接型のブラシ状接触帯電手段(32)、本発明の現像剤を収納する現像手段(40)、クリーニング手段としてのクリーニングブレード(61)を少なくとも有するクリーニング手段を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジである。本発明においては、上述の各構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やプリンタ等の画像形成装置本体に対して着脱可能に構成することができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。なお、「部」は、重量部を表わす。
【0058】
<導電性微粒子の製造>
(導電性微粒子製造例1)
平均一次粒径0.3μmの酸化アルミニウム(住友化学社製 AKP−30)100gを水1リットルに分散させ懸濁液とし、この液を70℃に加温した。その懸濁液に塩化第二錫100gと五酸化リン3gを2N塩酸1リットルに溶かした溶液と12重量%アンモニア水とを懸濁液のpHが7〜8になるように2時間かけて滴下した。滴下後、懸濁液を濾過、洗浄して得られたケーキを110℃で乾燥した。次にこの乾燥粉末を窒素気流中で500℃1時間処理し、二酸化スズを37%含む導電性微粒子1を得た。
【0059】
(導電性微粒子製造例2)
平均一次粒径0.15μmの酸化アルミニウム(住友化学社製 HIT−70)100gを水1リットルに分散させ懸濁液とし、この液を70℃に加温した。その懸濁液に塩化第二錫100gと五酸化リン3gを2N塩酸1リットルに溶かした溶液と12重量%アンモニア水とを懸濁液のpHが7〜8になるように2時間かけて滴下した。滴下後、懸濁液を濾過、洗浄して得られたケーキを110℃で乾燥した。次にこの乾燥粉末を窒素気流中で500℃1時間処理し二酸化スズを37%含む導電性微粒子2を得た。
【0060】
(導電性微粒子製造例3)
一次粒径0.5μmの酸化アルミニウム(住友化学社製 AKP−20)100gを水1リットルに分散させ懸濁液とし、この液を70℃に加温した。その懸濁液に塩化第二錫100gと五酸化リン3gを2N塩酸1リットルに溶かした溶液と12重量%アンモニア水とを懸濁液のpHが7〜8になるように2時間かけて滴下した。滴下後、懸濁液を濾過、洗浄して得られたケーキを110℃で乾燥した。次にこの乾燥粉末を窒素気流中で500℃1時間処理し二酸化スズを37%含む導電性微粒子3を得た。
【0061】
(導電性微粒子製造例4)
一次粒径0.3μmの酸化アルミニウム(住友化学社製 AKP−30)100gを、二酸化スズを含まない(すなわち0%)導電性微粒子4とした。
【0062】
(導電性微粒子製造例5)
一次粒径0.02μmの酸化アルミニウム(DEGUSSA AEROXIDE AluC)100gを水1リットルに分散させ懸濁液とし、この液を70℃に加温した。その懸濁液に塩化第二錫100gと五酸化リン3gを2N塩酸1リットルに溶かした溶液と12重量%アンモニア水とを懸濁液のpHが7〜8になるように2時間かけて滴下した。滴下後、懸濁液を濾過、洗浄して得られたケーキを110℃で乾燥した。次にこの乾燥粉末を窒素気流中で500℃1時間処理し二酸化スズを37%含む導電性微粒子5を得た。
【0063】
<芯材製造例>
(芯材製造例1)
MnCO、Mg(OH)、およびFe粉を秤量し混合して混合粉を得た。
この混合粉を、加熱炉により900℃、3時間、大気雰囲気下で仮焼し、得られた仮焼物を冷却後、粉砕して、ほぼ粒径7μm径の粉体とした。
この粉体を1wt%の分散剤を水と共に加えてスラリーとし、このスラリーをスプレードライヤに供給して造粒し、平均粒径約40μmの造粒物を得た。
この造粒物を焼成炉に装填し、窒素雰囲気下で、1250℃、5時間焼成した。
得られた焼成物を解砕機で解砕した後、篩い分けにより粒度調整を行い、体積平均粒径が約35μmの球形フェライト粒子を得た。
この造粒物の成分分析を行ったところMnO 46.2mol%、MgO 0.7mol%、Fe 53mol%であった。
また、このときの算術平均表面粗さRaは0.7μm、見掛嵩密度ADは2.4g/cmであった。
【0064】
(芯材製造例2)
MnCO、Mg(OH)、Fe、及びSrCO粉を秤量し混合して混合粉を得た。
この混合粉を、加熱炉により850℃、1体とした。
この粉体を1wt%の分散剤を水と共に加時間、大気雰囲気下で仮焼し、得られた仮焼物を冷却後、粉砕して、粒径3μm以下の粉えてスラリーとし、このスラリーをスプレードライヤに供給して造粒し、平均粒径約40μmの造粒物を得た。
この造粒物を焼成炉に装填し、窒素雰囲気下で、1120℃、4時間焼成した。
得られた焼成物を解砕機で解砕した後、篩い分けにより粒度調整を行い、体積平均粒径が約35μmの球形フェライト粒子を得た。
この造粒物の成分分析を行ったところMnO 40.0mol%、MgO 10.0mol%、Fe 50mol%、SrO 0.4mol%であった。
また、このときのRaは0.85μm、ADは2.0g/cmであった。
【0065】
(芯材製造例3)
芯材製造方法1と同様に混合粉を仮焼成し、得られた仮焼物を冷却後、粉砕して、ほぼ粒径1μm径の粉体とした。
それ以降は芯材製造方法1と同様に焼成し球形フェライト粒子を得た。
また、このときのRaは0.45μm、ADは2.4g/cmであった
【0066】
(芯材製造例4)
芯材製造方法2と同様に仮焼成し、造粒して平均粒径約40μmの造粒物を得たのち、この造粒物を焼成炉に装填し、窒素雰囲気下で、1080℃、4時間焼成した。得られた焼成物を解砕機で解砕した後、篩い分けにより粒度調整を行い、体積平均粒径が約35μmの球形フェライト粒子を得た。
また、このときのRaは1.03μm、ADは1.8g/cmであった。
【0067】
(芯材製造例5)
芯材製造方法2と同様に仮焼成し、造粒して平均粒径約40μmの造粒物を得たのち、この造粒物を焼成炉に装填し、窒素雰囲気下で、1180℃、4時間焼成した。得られた焼成物を解砕機で解砕した後、篩い分けにより粒度調整を行い、体積平均粒径が約35μmの球形フェライト粒子を得た。
また、このときのRaは0.63μm、ADは2.3g/cmであった。
【0068】
<キャリア製造例>
(キャリア製造例1)
芯材製造例1の芯材に、シリコーン樹脂(SR2411 固形分20wt%、トーレダウコーニングシリコーン社製)(205部)と、導電性微粒子製造例1の導電性微粒子58部と、触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトネート1部とをトルエンで希釈した固形分10wt%の被覆層溶液を芯材表面において平均膜厚が0.3μmになるように、流動床型コーティング装置を使用して塗布した。流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥し、得られたキャリアを電気炉中にて、230℃/2時間焼成し、キャリア製造例1にあたるキャリアを得た。被覆層中の導電性微粒子含有量は58wt%であり、被覆層の抵抗率が8.0Ωcmであった。
【0069】
(キャリア製造例2)
芯材製造例1の芯材に、シリコーン樹脂(SR2411 固形分20wt%、トーレダウコーニングシリコーン社製)(130部)と、導電性微粒子製造例1の導電性微粒子73部と、触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトネート1部とをトルエンで希釈した固形分10wt%の被覆層溶液を芯材表面において平均膜厚が0.3μmになるように、流動床型コーティング装置を使用して塗布した。流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥し、得られたキャリアを電気炉中にて、230℃/2時間焼成し、キャリア製造例2にあたるキャリアを得た。被覆層中の導電性微粒子含有量は73wt%であり、被覆層の抵抗率が6.9Ωcmであった。
【0070】
(キャリア製造例3)
キャリア製造例1の芯材製造例1の芯材を芯材製造例2の芯材に変更した以外はキャリア製造例1と同様の条件でキャリアを製造しキャリア製造例3にあたるキャリアを得た。
被覆層中の導電性微粒子含有量は58wt%であり、被覆層の抵抗率が8.1Ωcmであった。
【0071】
(キャリア製造例4)
キャリア製造例1の、芯材製造例1の芯材を芯材製造例5の芯材に変更し、導電性微粒子製造例1の導電性微粒子を導電性微粒子製造例2の導電性微粒子に変更した以外は、キャリア製造例1と同様の条件でキャリアを製造しキャリア製造例4にあたるキャリアを得た。被覆層中の導電性微粒子含有量は58wt%であり、被覆層の抵抗率が7.8Ωcmであった。
【0072】
(キャリア製造例5)
キャリア製造例1の、芯材製造例1の芯材を芯材製造例5の芯材に変更し、導電性微粒子製造例1の導電性微粒子を導電性微粒子製造例3の導電性微粒子に変更した以外は、キャリア製造例1と同様の条件でキャリアを製造しキャリア製造例5にあたるキャリアを得た。被覆層中の導電性微粒子含有量は58wt%であり、被覆層の抵抗率が8.3Ωcmであった。
【0073】
(キャリア製造例6)
キャリア製造例1の、芯材製造例1の芯材を芯材製造例5の芯材に変更し、導電性微粒子製造例1の導電性微粒子を導電性微粒子製造例4の導電性微粒子に変更した以外は、キャリア製造例1と同様の条件でキャリアを製造しキャリア製造例6にあたるキャリアを得た。被覆層中の導電性微粒子含有量は58wt%であり、被覆層の抵抗率が7.2Ωcmであった。
【0074】
(キャリア製造例7)
キャリア製造例1の、芯材製造例1の芯材を芯材製造例5の芯材に変更し、平均膜厚を0.3μmから0.5μmに変更した以外は、キャリア製造例1と同様の条件でキャリアを製造しキャリア製造例7にあたるキャリアを得た。被覆層中の導電性微粒子含有量は58wt%であり、被覆層の抵抗率が8.4Ωcmであった。
【0075】
(キャリア製造例8)
キャリア製造例1の、芯材製造例1の芯材を芯材製造例5の芯材に変更し、平均膜厚を0.3μmから0.2μmに変更した以外は、キャリア製造例1と同様の条件でキャリアを製造しキャリア製造例8にあたるキャリアを得た。被覆層中の導電性微粒子含有量は58wt%であり、被覆層の抵抗率が6.6Ωcmであった。
【0076】
(キャリア製造例9)
キャリア製造例1の、芯材製造例1の芯材を芯材製造例5の芯材に変更し、平均膜厚を0.3μmから0.6μmに変更した以外は、キャリア製造例1と同様の条件でキャリアを製造しキャリア製造例9にあたるキャリアを得た。被覆層中の導電性微粒子含有量は58wt%であり、被覆層の抵抗率が8.6Ωcmであった。
【0077】
(キャリア製造例10)
芯材製造例5の芯材に、シリコーン樹脂(SR2411 固形分20wt%、トーレダウコーニングシリコーン社製)(245部)と、導電性微粒子製造例1の導電性微粒子50部と、触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトネート1部とをトルエンで希釈した固形分10wt%の被覆層溶液を芯材表面において平均膜厚が0.3μmになるように、流動床型コーティング装置を使用して塗布した。流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥し、得られたキャリアを電気炉中にて、230℃/2時間焼成し、キャリア製造例10にあたるキャリアを得た。被覆層中の導電性微粒子含有量は50wt%であり、被覆層の抵抗率が9.2Ωcmであった。
【0078】
(キャリア製造例11)
芯材製造例5の芯材に、シリコーン樹脂(SR2411 固形分20wt%、トーレダウコーニングシリコーン社製)(95部)と、導電性微粒子製造例1の導電性微粒子80部と、触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトネート1部とをトルエンで希釈した固形分10wt%の被覆層溶液を芯材表面において平均膜厚が0.3μmになるように、流動床型コーティング装置を使用して塗布した。流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥し、得られたキャリアを電気炉中にて、230℃/2時間焼成し、キャリア製造例11にあたるキャリアを得た。被覆層中の導電性微粒子含有量は80wt%であり、被覆層の抵抗率が6.0Ωcmであった。
【0079】
(キャリア製造例12)
キャリア製造例1の、芯材製造例1の芯材を芯材製造例3の芯材に変更した以外は、キャリア製造例1と同様の条件でキャリアを製造しキャリア製造例12にあたるキャリアを得た。被覆層中の導電性微粒子含有量は58wt%であり、被覆層の抵抗率が8.1Ωcmであった。
【0080】
(キャリア製造例13)
キャリア製造例1の、芯材製造例1の芯材を芯材製造例4の芯材に変更した以外は、キャリア製造例1と同様の条件でキャリアを製造しキャリア製造例13にあたるキャリアを得た。被覆層中の導電性微粒子含有量は58wt%であり、被覆層の抵抗率が8.0Ωcmであった。
【0081】
(キャリア製造例14)
キャリア製造例1の、芯材製造例1の芯材を芯材製造例5の芯材に変更し、導電性微粒子製造例1の導電性微粒子を導電性微粒子製造例5の導電性微粒子に変更した以外は、キャリア製造例1と同様の条件でキャリアを製造しキャリア製造例4にあたるキャリアを得た。被覆層中の導電性微粒子含有量は58wt%であり、被覆層の抵抗率が6.0Ωcmであった
【0082】
(キャリア製造例15)
キャリア製造例1のシリコーン樹脂(SR2411 固形分20wt%、トーレダウコーニングシリコーン社製)(205部)を樹脂合成例1の樹脂 164部(固形分25wt%)に変更した以外はキャリア製造例1と同様の条件でキャリアを製造し、キャリア製造例15にあたるキャリアを得た。被覆層中の導電性微粒子含有量は58wt%であり、被覆層の抵抗率が8.0Ωcmであった
【0083】
(樹脂合成例1)
撹拌機付きフラスコにトルエン300gを投入して、窒素ガス気流下で90℃まで昇温した。次いでこれに、
CH=CMe−COO−CH6−Si(OSiMe
(式中、Meはメチル基である。)
で示される3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン84.4g(200ミリモル:サイラプレーン TM−0701T/チッソ株式会社製)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン37.2g(150ミリモル)、メタクリル酸メチル65.0g(650ミリモル)、および、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.58g(3ミリモル)の混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.06g(0.3ミリモル)をトルエン15gに溶解した溶液を加えて(2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリルの合計量0.64g=3.3ミリモル)、90〜100℃で3時間混合してラジカル共重合させてメタクリル系共重合体を得た。
得られたメタクリル系共重合体の重量平均分子量は34,000であった。次いで、このメタクリル系共重合体溶液の不揮発分が25重量%になるようにトルエンで希釈した。
このようにして得られた共重合体溶液の粘度は8.7mm/sであり、比重は0.91であった。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて標準ポリスチレン換算で求めた。粘度は25℃でJIS−K2283に準じて測定した。また、不揮発分はコーティング剤組成物1gをアルミ皿に秤取り、150℃で1時間加熱した後の重量を測定して、次式に従って算出した。
不揮発分(%)=(加熱後の重量×100)/加熱前の重量
【0084】
<キャリア特性評価>
以下、キャリアの特性の評価方法を示す。
【0085】
[芯材粒子の重量平均粒径]
本発明において粒径分布を測定するための粒度分析計としては、マイクロトラック粒度分析計(モデルHRA9320−X100:Honewell社製)を用いた。
その測定条件は以下のとおりである。
[1]粒径範囲:100〜8μm
[2]チャネル長さ(チャネル幅):2μm
[3]チャネル数:46
[4]屈折率:2.42
【0086】
[キャリアコート樹脂層の平均膜厚]
被覆層の厚みhは、透過型電子顕微鏡(TEM(倍率二千倍))を用いて、キャリア断面を観察し、キャリア表面を覆う被覆層の樹脂部の厚みを測定し、その平均値からを求めた。具体的には、前記キャリア断面から任意の50点の芯材表面とコート層表面までの距離を測定し、測定値の平均を求め厚みh(μm)とした。
【0087】
<トナー製造例>
ポリエステル樹脂 100部
[重量平均分子量(Mw)18,000、数平均分子量(Mn)4000、ガラス転移点(Tg)59℃、軟化点;120℃]
離型剤:カルナウバワックス 5部
カーボンブラック(#44 三菱化学社製) 10部
含フッ素4級アンモニウム塩 4部
以上の各成分をヘンシェルミキサーにより十分混合し、2軸式押出し機にて溶融混練し、混練物を圧延冷却した。放冷後カッターミルで粗粉砕し、ついでジェット気流式微粉砕機で微粉砕し、さらに風力分級機を用いて分級して、重量平均粒径7.4μmのトナー母体粒子を得た。
更に、このトナー母体粒子100部に対して、疎水性シリカ微粒子(R972:日本アエロジル社製)1.0部を加え、ヘンシェルミキサーで混合して、トナーIを得た。
【0088】
<現像剤の作成>
キャリア製造例実施例およびキャリア製造例比較例で得られたキャリア(93部)に対して、トナー製造例で得られたトナー1(7.2μm)を7.0部加えて、ボールミルで20分攪拌して、現像剤実施例および現像剤比較例を作成した。
以下、実施例及び比較例の現像剤に関し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。なお、「部」は、重量部を表わす。
【0089】
(実施例及び比較例)
現像剤実施例、現像剤比較例を用いて初期の画像出しをした後、この現像剤をImagio Color 4000(リコー社製デジタルカラー複写機・プリンタ複合機)に装着し、単色モードで10分間攪拌した。その後、画像面積7%のチャートを使用して10万枚のランニングを行い、試験終了後、画像濃度、ハイライト部の画像濃度、画像の粒状性、地汚れ時汚れ、キャリア付着、環境での画像濃度変動、およびトナー飛散を評価し、表1に示すとおり、実施例及び比較例とした。
また、実施例11において、実施例1のトナーの変わりに、実施例1のトナー90部に対して10部のキャリア製造実施例1を添加したプレミックストナーを使用し、余剰の現像剤を排出した以外は実施例1と同様に10万枚のランニングを行ったものを実施例11とした。
【0090】
(実機品質評価)
なお、画像品質確認および信頼性試験等の特性試験は、Imagio Color 4000(リコー社製)を使用し、次の現像条件で作成した。
・現像ギャップ(感光体−現像スリーブ):0.3mm
・ドクターギャップ(現像スリーブ−ドクター):0.65mm
・感光体線速度:200mm/sec
・(現像スリーブ線速度)/(感光体線速度):1.80
・書込み密度:600dpi
・帯電電位(Vd):−600V
・画像部(ベタ原稿)にあたる部分の感光後の電位:−100V
・現像バイアス:DC−500V/交流バイアス成分:2KHz、−100V〜−900V、50%duty
品質評価は転写紙上で実施、但しキャリア付着は現像後転写前の状態を感光体上から粘着テープに転写して観察した。
【0091】
(実機評価後のキャリア評価項目)
「現像剤汲み上げ量の変動」
下記式およびランクにより評価した
現像剤汲み上げ量の変動率(%)={(初期における現像剤汲み上げ量−10万枚ランニング後の現像剤汲み上げ量)/初期における現像剤汲み上げ量}×100
但し、現像スリーブ上の現像剤汲み上げ量=mg/cmとする。
±5%未満 :◎大変良好
±5以上〜±10%未満 :○良好
±10以上〜±20%未満:△使用可能
±20%以上 :×不良
【0092】
「スペントトナー量」
初期剤および10万枚ランニングした現像剤6gを、両端に金属メッシュを備えた導体容器(ケージ)に入れる。メッシュ(ステンレス製)の目開きはトナーとキャリアの粒径の中間のもの(目開き20μm)選び、トナーがメッシュの間を通過するように設定する。
ノズルから圧縮窒素ガス(1kgf/cm)を60秒間吹き付けて、トナーをゲージの外へ飛び出させると、ケージ内にトナーの電荷と逆極性を持ったキャリアが残される。
こうして回収したキャリアについて、トナー成分をメチルエチルケトンで抽出し、その差をスペントトナー量(キャリア重量に対するwt%で表示)とする。
0以上〜0.03Wt%未満 :◎大変良好
0.03Wt%以上〜0.07t%未満 :○良好
0.07Wt%以上〜0.15Wt%未満:△使用可能
0.15Wt%以上 :×不良
【0093】
[キャリアコート樹脂膜のはがれ]
10万枚ランニングした現像剤6gを、両端に金属メッシュを備えた導体容器(ケージ)に入れる。メッシュ(ステンレス製)の目開きはトナーとキャリアの粒径の中間のもの(目開き20μm)選び、トナーがメッシュの間を通過するように設定する。ノズルから圧縮窒素ガス(1kgf/cm)を60秒間吹き付けて、トナーをゲージの外へ飛び出させると、ケージ内にトナーの電荷と逆極性を持ったキャリアが残される。こうして回収したキャリアについて、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、10個のキャリアの断面を観察して(倍率二千倍)、キャリア表層のコート樹脂剥離部(=芯材露出部)の存在度合いを下記のランクに分類し評価した。
◎:コート樹脂剥離部(=芯材露出部)が見られない
○:コート樹脂剥離部(=芯材露出部)がキャリア1粒子当たり5箇所未満確認される
△:コート樹脂剥離部(=芯材露出部)がキャリア1粒子当たり10箇所未満確認される
×:コート樹脂剥離部(=芯材露出部)がキャリア1粒子当たり10箇所以上確認される
【0094】
[経時でのキャリア体積固有抵抗の低下]
初期の現像剤および10万枚ランニングした現像剤6gを、両端に金属メッシュを備えた導体容器(ケージ)に入れる。メッシュ(ステンレス製)の目開きはトナーとキャリアの粒径の中間のもの(目開き20μm)選び、トナーがメッシュの間を通過するように設定する。ノズルから圧縮窒素ガス(1kgf/cm)を60秒間吹き付けて、トナーをゲージの外へ飛び出させると、ケージ内にトナーの電荷と逆極性を持ったキャリアが残される。こうして回収したキャリアについて体積固有抵抗を測定し下記のランクに分類し評価した。
尚、体積固有抵抗は、図5に示すセルを用いて測定した。
具体的には、まず、表面積2.5cm×4cmの電極(12a)及び電極(12b)を、0.2cmの距離を隔てて収容したフッ素樹脂製容器からなるセル(11)に、キャリア(13)を充填し、落下高さ1cm、タッピングスピード30回/分で、10回のタッピングを行った。次に、電極(12a)及び(12b)の間に1000Vの直流電圧を印加して30秒後の抵抗r[Ω]を、ハイレジスタンスメーター4329A(横川ヒューレットパッカード社製)を用いて測定し、下記計算式(2)
R=r×(2.5×4)/0.2・・・計算式(2)
から、求めたLogRを体積固有抵抗[LogΩcm]を算出した。
◎:初期の現像剤と10万枚ランニングした現像剤都から回収したキャリアのLogRの差が0.5未満
○:初期の現像剤と10万枚ランニングした現像剤都から回収したキャリアのLogRの差が1未満
△:初期の現像剤と10万枚ランニングした現像剤都から回収したキャリアのLogRの差が2未満
×:初期の現像剤と10万枚ランニングした現像剤都から回収したキャリアのLogRの差が2以上
【0095】
(画像品質評価)
上記の画像形成において画像の評価に採用した試験方法および評価基準は以下のとおりである。
画像品質評価は転写紙上で実施、但しキャリア付着は現像後、転写前の状態を感光体上から粘着テープに転写して観察した。
【0096】
「ベタ部画像濃度」
上記現像条件における、30mm×30mmのベタ部(注1)の中心をX−Rite938分光測色濃度計で、5個所測定し平均値を出した。
注1;
現像ポテンシャル400V相当箇所=(露光部電位−現像バイアスDC)=−100V−(−500V)
1.55以上 :◎(大変良好)
1.50〜1.55:○(良好)
1.45〜1.50:△(使用可能)
1.45未満 :×(不良)
【0097】
「地汚れ」
地汚れは画像上の地肌部の汚れを目視で評価した。
◎:大変良好
○:良好
△:使用可能
×:不良
とした。
【0098】
「キャリア付着(ベタ部)」
キャリア付着が発生すると、感光体ドラムや定着ローラの傷の原因となり、画像品質の低下を招く。感光体上にキャリア付着が発生しても、一部のキャリアしか紙に転写しないため、以下の方法で評価した。
前述の現像条件(帯電電位(Vd):−600V、画像部(ベタ原稿)にあたる部分の感光後の電位:−100V、現像バイアス:DC−500V)における、Imagio Color 4000(リコー社製)のベタ画像(30mm×30mm)に付着したキャリアの個数を、感光体上でカウントしてベタキャリア付着の評価を行った。
◎:大変良好
○:良好
△:使用可能
×:不良とした。
【0099】
<ゴースト画像の評価方法>
ゴーストについては、市販のデジタルフルカラープリンター(リコー社製 RICOH Pro C901)に現像剤をセットし、画像面積8%の文字チャート(1文字の大きさ;2mm×2mm程度)を100K枚出力後に、下図に示す縦帯チャートを印刷し、スリーブ一周分(a)と一周後(b)の濃度差をX−Rite938(X−Rite社製)により、センター、リア、フロントの3箇所測定の平均濃度差をΔIDとし、以下ランク分けした。
◎:非常に良好
○:良好
△:許容
×:実用上使用できないレベル
◎、○、△を合格とし×を不合格とした。
◎:0.01≧ΔID
○:0.01<ΔID≦0.03
△:0.03<ΔID≦0.06
×:0.06<ΔID
評価結果を表1に示す
【0100】
【表1】

【符号の説明】
【0101】
11 セル
12a 電極
12b 電極
13 キャリア
20 感光体ドラム
21 トナー
23 キャリア
24a 駆動ローラ
24b 駆動ローラ
26 クリーニング前露光光源
32 像担持体帯電部材
33 像露光系
40 現像装置
41 現像スリーブ
42 現像剤収容部材
43 現像剤供給規制部材(ドクターブレード)
44 支持ケース
45 トナーホッパー
46 現像剤収容部
47 現像剤撹拌機構
48 トナーアジテータ
49 トナー補給機構
50 転写機構
60 クリーニング機構
61 クリーニングブレード
62 トナー回収室
64 ブラシ状クリーニング手段
70 除電ランプ
80 中間転写媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0102】
【特許文献1】特許第3356948号公報
【特許文献2】特開2005−157002号公報
【特許文献3】特開平11−231652号公報
【特許文献4】特開平7−72733号公報
【特許文献5】特開平7−128983号公報
【特許文献6】特開平7−92813号公報
【特許文献7】特開平11−65247号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異形芯材の表面が、導電性微粒子を含有する樹脂からなる被覆層で被覆されており、芯材表面の算術平均粗さ係数Raは0.6〜0.9μmであり、被覆層中の導電性微粒子含有量が58wt%〜73wt%であり、被覆層の抵抗率が6.6〜8.6Ωcmであることを特徴とする静電像現像剤用キャリア。
【請求項2】
前記導電性微粒子は、粒径が0.15〜0.5μmであることを特徴とする請求項1に記載のキャリア。
【請求項3】
前記導電性微粒子がアルミナを含む基体上に、少なくとも二酸化スズを含む導電性被覆層を有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のキャリア。
【請求項4】
前記芯材の嵩密度(AD)が1.8〜2.3g/cmであることを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のキャリア。
【請求項5】
前記被覆層は、前記導電性微粒子を含有するシリコーン樹脂からなる被覆層であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のキャリア。
【請求項6】
前記被覆層の、前記導電性微粒子を除く樹脂分の平均膜厚が0.3μm以上0.5μm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のキャリア。
【請求項7】
前記該被覆層中の樹脂成分が、少なくとも下記二種のモノマーを含む共重合体を加熱処理して得られた樹脂を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の静電潜像現像剤用キャリア。
【化1】

【化2】

(式中において、R1、m、R2、R3、X、及びYは以下に該当するものを示す。)
R1:水素原子、またはメチル基
m:炭素原子数1〜8のアルキレン基
R2:炭素原子数1〜4のアルキル基
R3は、炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基
X=10〜90モル%
Y=10〜90モル%
【請求項8】
前記芯材粒子は、重量平均粒径が20μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のキャリア。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のキャリアを含有すること特徴とする静電潜像現像剤。
【請求項10】
静電潜像担持体、該感光体の表面を帯電させる帯電部材と、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を請求項1乃至8のいずれかに記載のキャリアとトナーからなる現像剤を用いて現像する現像部と、前記静電潜像担持体をクリーニングするクリーニング部材を有することを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−109197(P2013−109197A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254753(P2011−254753)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】