説明

静電潜像現像用キャリア、現像剤、及び画像形成装置

【課題】長期に亘って履歴現象による影響を受けず、安定したトナー量を現像し、色再現性に優れ、鮮明な画像を得ることができ、また、長期に亘ってトナースペントによる帯電性の低下及びキャリア抵抗の変化が少なく、かつ、地肌汚れ、トナー飛散による機内汚染などを生じないという諸特性を同時に満足する静電潜像現像用キャリアの提供。
【解決手段】本発明の静電潜像現像用キャリアは、芯材と、前記芯材を被覆する被覆層とを含み、前記被覆層が、樹脂及び微粒子を含有し、前記被覆層の平均層厚差が、0.02μm〜3.0μmであり、キャリアの算術平均表面粗さRa1が、0.5μm〜0.9μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法に使用される静電潜像現像用キャリア、並びに該静電潜像現像用キャリアを用いた現像剤、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を用いた複写機やプリンタの技術は、モノクロからフルカラーへの展開が急速になりつつあり、フルカラーの市場が拡大する傾向にある。フルカラー電子写真法によるカラー画像形成では、静電潜像担持体上に静電潜像を形成し、この静電潜像に対して、帯電したイエロー、マゼンタ、シアンの3色のカラートナー又はそれに黒色を加えた4色のカラートナーを現像してトナー像を形成させた後、このトナー像を記録媒体に転写して定着させることにより行っている。
【0003】
このようなフルカラー電子写真方式による画像形成において、色再現性に優れ、鮮明なフルカラー画像を得るためには、静電潜像担持体上のトナー量を静電潜像に忠実に保つ必要がある。これは、静電潜像担持体上のトナー量が変動すると、記録媒体上で画像濃度が変わったり、画像の色調が変わったりしてしまうからである。
静電潜像担持体上のトナー量が変動する原因としては、トナー帯電量の変動などの要因もあるが、特に、ハイブリッド現像方式においては、トナー担持体上のトナー量の差が、次の現像時の画像上に濃度差として現れる所謂履歴現象(ゴースト現象)によることが報告されている(特許文献1参照)。
【0004】
ハイブリッド現像方式において、履歴現象を解消する方法としては、前記静電潜像担持体上の静電潜像を現像した後にトナー担持体上の残トナーを一旦除去して、該トナー担持体の表面に新たなトナーを供給し、上述のようなトナー担持体上のトナー量の差を解消することが有効である。例えば、トナー担持体上の残トナーを現像後かつトナー再供給前にスクレーパーやトナー回収ロールにより掻きとることにより履歴現象を解消する方法が提案されている(特許文献2〜4参照)。また、コピーとコピーの間や紙間を利用して、トナー担持体上の残トナーを電位差により磁気ロールに回収し、トナー担持体上のトナー量を安定させることにより履歴現象を解消する方法が提案されている(特許文献5参照)。また、磁気ブラシを用いた履歴現象の対応策として、磁気ロールの磁束密度の半値幅領域を広く設定することにより、現像ロール上のトナーの回収と供給の安定化を図ることにより履歴現象を解消する提案がなされている(特許文献6参照)。更に、二成分現像剤用のキャリアとして非球形状のキャリアを使用して、磁気ブラシ先端のキャリアまで電荷注入し、現像剤担持体とトナー担持体との実質的な間隔を狭めて、トナー担持体への一回でのトナー供給量を増やし、トナー担持体上のトナー飽和量までトナーを供給することで、直前画像の履歴の影響を受けずに、トナー担持体上のトナー量を一定に保つことにより履歴現象を解消する方法が提案されている(特許文献7参照)。
【0005】
上述した履歴現象は、ハイブリッド現像方式に特有の課題であるとされているが、二成分現像方式においても、現像剤を長期間使用すると、現像能力が低下して、画像濃度が減少する履歴現象が生じることが報告されている(特許文献8参照)。
【0006】
前記二成分現像方式における履歴現象は、二成分現像剤の剥離が正常に行われないことに起因する。前記現像剤の剥離は、現像スリーブ内のマグネットを奇数個とし現像スリーブの回転軸よりも下側の位置に同極のマグネット対を設けて磁力が殆どゼロとなる剥離領域を作り、その領域で重力を用いて現像後の現像剤を自然落下させることにより行う。
しかし、直前画像でのトナー消費時にキャリアにカウンターチャージが発生することで、キャリアと現像剤担持体との間に鏡像力が発生し、前記剥離領域において現像剤が正常に離れない。そのため、トナー消費によりトナー濃度の低下した現像剤が再度現像領域に搬送され、現像能力が低下する。即ち、スリーブ一周分は正常濃度であるのに対し、二周目以降は濃度が薄くなるという問題である。
【0007】
二成分現像方式における履歴現象を解消する方法として、例えば、内部にマグネットを有した汲上ロールを現像スリーブ上の剥離領域付近に配置し、その磁力をもって現像後の現像剤の剥離を行うことが提案されている(特許文献8参照)。剥離された現像剤は、別の汲上ロールによって汲み上げられた後、スクリューを有した現像剤攪拌室に搬送され、トナー濃度の再調整とトナーの帯電が行われる。
【0008】
しかしながら、上記提案によっても、長期間連続使用すると、履歴現象による影響を受けるため、安定したトナー量を静電潜像担持体に供給することできず、色再現性に優れ、鮮明な画像を得ることができないという問題がある。また、上記提案によっては、二成分現像方式に特有の課題である、トナースペントの堆積によるキャリア抵抗の変化が大きく、キャリアの帯電性の低下が大きいという問題がある。更に、前記問題を解決するためには、地肌汚れ、トナー飛散による機内汚染などを生じないというキャリアの諸特性は維持されている必要がある。したがって、このような問題を同時に解決することが強く望まれているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、長期に亘って履歴現象による影響を受けず、安定したトナー量を現像し、色再現性に優れ、鮮明な画像を得ることができ、また、長期に亘ってトナースペントによる帯電性の低下及びキャリア抵抗の変化が少なく、かつ、地肌汚れ、トナー飛散による機内汚染などを生じないという諸特性を同時に満足する静電潜像現像用キャリアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明が課題とする履歴現象は、上記履歴現象における発生メカニズムと異なる。
本発明における履歴現象(ゴースト現象)の発生メカニズムは、詳細は明らかではないが以下のように考えている。直前の画像履歴に応じ現像剤担持体上へトナーが付着し、現像剤担持体上に付着したトナーが持つ電位に応じ、次画像のトナー現像量が変動する。つまり、直前の画像履歴によって次画像のトナー現像量が変動することに起因すると考えている。
より詳細に述べると、非画像部では、画像部とは逆に、静電潜像担持体から現像スリーブ方向へトナーが移動するポテンシャルが形成されるため、トナーが現像剤担持体上へ付着してしまう(現像剤担持体上へのトナー付着が発生する)。このように現像担持体上にトナーが付着した状態で、次回現像時に画像部を現像する場合、現像剤担持体上へ付着したトナーは帯電しているため、現像剤担持体上のトナーによる電位分だけ現像ポテンシャルが嵩上げされ、トナー現像量が増加してしまう。また、現像剤担持体上へ付着したトナーは、現像時に消費されるため、付着しているトナー量は一定ではなく、直前画像の履歴により変動する。即ち、直前に、非画像部や用紙と用紙の間隔部がある場合は、その後の画像部の現像には、上述の現像ポテンシャルの嵩上げが起こり、その後の画像濃度は高くなる。一方、直前画像が画像面積の多い画像の場合には、現像剤担持体上に付着したトナーは、直前画像を現像した際に消費され、上述の現像ポテンシャルの嵩上げの効果は少なくなるため、その後の画像濃度は高くならない。
以上のように、本発明が課題とする履歴現象は、直前画像の影響により現像剤担持体上のトナー付着量が変動し、その変動の影響を受け、次画像の濃度変動が現れる現象である。
【0011】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討した結果、キャリアの凹凸形状及び被覆層の凹凸を規定の範囲とすることで、非画像時に現像剤担持体上でキャリアが転がりにくくなるために、現像担持体上へのトナー付着量が安定すること、更に、キャリア凹凸が所定の値であることで、被覆後のキャリアは部分的に芯材抵抗に近い低抵抗部を作ることが可能であり、非画像時に現像剤担持体上に付着したトナーが、印刷時に消費されにくくなることを知見した。そして、長期間連続で使用しても、履歴現象の影響を受けることなく、安定したトナー量を供給することができ、画像の均一性が得られ、更に、キャリアの前記諸特性をより一層充分に満足し、長期間にわたりトナースペントを防止して帯電安定性に優れ、抵抗変化の少ない静電潜像現像用キャリアが得られることを知見した。
【0012】
即ち、本発明の構成とすることにより、長期に亘って直前画像のトナー消費履歴の影響を受けず、安定したトナー量を現像し、色再現性に優れ、鮮明な画像を得ることができ、また、長期に亘ってトナースペントによる帯電性の低下及びキャリア抵抗の変化が少なく、かつ、地肌汚れ、トナー飛散による機内汚染などを生じないという諸特性を同時に満足する静電潜像現像用キャリアとなることを知見した。
【0013】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決する手段としては、以下の通りである。即ち、
本発明の静電潜像現像用キャリアは、芯材と、前記芯材を被覆する被覆層とを含み、
前記被覆層が、結着樹脂及び微粒子を含有し、
前記被覆層の平均層厚差が、0.02μm〜3.0μmであり、
キャリアの算術平均表面粗さRa1が、0.50μm〜0.90μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、長期に亘って履歴現象による影響を受けず、安定したトナー量を現像し、色再現性に優れ、鮮明な画像を得ることができ、また、長期に亘ってトナースペントによる帯電性の低下及びキャリア抵抗の変化が少なく、かつ、地肌汚れ、トナー飛散による機内汚染などを生じないという諸特性を同時に満足する静電潜像現像用キャリアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】図1Aは、トナーがキャリア表面に接近した状態を示す模式図である。
【図1B】図1Bは、トナーがキャリア表面に保持された状態を示す模式図である。
【図2】図2は、通常のトナーを示す模式図である。
【図3】図3は、トナーの外添剤がトナー母体粒子の凹部へ転動された様子を示す模式図である。
【図4】図4は、図3に示すトナーとキャリアとが接触する様子を示す模式図である。
【図5】図5は、Ra1/Ra2が小さい(0.60未満)場合のキャリアとトナーの外添剤との接触状態を示す模式図である。
【図6】図6は、Ra1/Ra2が1.00に近い場合のキャリアとトナーの外添剤との接触状態を示す模式図である(微粒子が少ない場合)。
【図7】図7は、Ra1/Ra2が1.00に近い場合のキャリアとトナーの外添剤との接触状態を示す模式図である(微粒子が小さい場合)。
【図8】図8は、本発明の静電潜像現像用キャリアの電気抵抗率の測定に用いる抵抗測定セルの一例を表す斜視図である。
【図9A】図9Aは、球形の外添剤を含有するトナーの模式図である。
【図9B】図9Bは、球形の外添剤を含有するトナーにおいて外添剤が転動した様子を示す模式図である。
【図10A】図10Aは、非球形(紡錘形)の外添剤を含有するトナーの模式図である。
【図10B】図10Bは、非球形(紡錘形)の外添剤を含有するトナーにおいて外添剤が転動しにくい様子を示す模式図である。
【図11A】図11Aは、非球形の外添剤(合着粒子)を含有するトナーの模式図である。
【図11B】図11Bは、非球形の外添剤(合着粒子)を含有するトナーにおいて外添剤が転動しにくい様子を示す模式図である。
【図12】図12は、外添剤の転動により、トナーとキャリアとの接触が低減した様子を示す模式図である。
【図13】図13は、トナー母体粒子と現像剤担持体との距離が短くなった様子を示す模式図である。
【図14】図14は、トナー母体粒子と現像剤担持体との距離が保たれている様子を示す模式図である。
【図15】図15は、本発明の現像剤のトナーにおける外添剤の一例を示す写真である。
【図16】図16は、本発明の現像剤のトナーにおける外添剤の一例を示す写真である。
【図17】図17は、合着粒子を乾式法で製造する際の装置の一例を示す概略図である。
【図18】図18は、本発明における現像装置の一例を表す図である。
【図19】図19は、本発明の画像形成装置の一例を表す図である。
【図20】図20は、本発明の画像形成装置の他の一例を表す図である。
【図21】図21は、本発明におけるプロセスカートリッジの一例を表す図である。
【図22】図22は、縦帯チャートにおける正常な画像、及び異常画像の一例を表す図である。
【図23】図23は、本発明の現像剤の帯電量を測定する測定方法(ブローオフ法)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(静電潜像現像用キャリア)
本発明の静電潜像現像用キャリアは、芯材と、前記芯材を被覆する被覆層とを含み、更に必要に応じてその他の成分を含む。
【0017】
本発明は、キャリアの凹凸とトナーの外添剤の凹凸との間に働く相互作用によって非静電的な結びつきを強くすることで、キャリアのトナー保持力を上げることを狙うものである。
詳しくは、本発明は、前記キャリアにおいて、キャリアの芯材に由来するキャリア表面の凹凸によりキャリアとトナーとの接点を増やすこと、及び被覆層中に含有したキャリアフィラー(微粒子)による微細な凹凸を被覆層表面に設けてキャリアがトナーの外添剤と接触することで、キャリアのトナー保持力を上げることを狙うものである。
本発明においては、キャリアのトナー保持力を上げることで、非画像部において、静電潜像担持体から現像剤担持体(現像スリーブ)方向へバイアスが掛かった際に、トナーが現像剤担持体へ付着してしまうことを抑制し、画像履歴によるゴースト現象を抑制しているものと考える。
【0018】
以下に、前記キャリアによるトナー保持力の向上について、図を用いて説明する。図1Aは、トナーがキャリア表面に接近した状態を示す模式図である。図1Bは、トナーがキャリア表面に保持された状態を示す模式図である。
図1Bにおいて、2つの丸い破線うち、右側の丸い破線の示す範囲においては、キャリアの芯材111に由来する凹凸によってトナー101とキャリアとが複数個所で接触している。また、左側の丸い破線の示す範囲においては、キャリアの被覆層に含まれる樹脂112と微粒子113とが形成する微細な凹凸により、キャリアとトナー101の外添剤とが接触している。このように、キャリアとトナーとが多くの接点を有することにより、キャリアの凹凸とトナーの凹凸との間に働く相互作用によって非静電的な結びつきが強くなり、キャリアのトナー保持力が高くなるものと考えられる。
【0019】
−キャリアの算術平均表面粗さRa1−
本発明のキャリアにおける算術平均表面粗さRa1としては、0.50μm〜0.90μmであり、0.60μm〜0.85μmが好ましい。
ここで、前記表面粗さRa1とは、キャリア表面における凹凸を表し、現像剤担持体上へのトナー付着量に寄与する。
前記表面粗さRa1が0.50μm未満であると、現像剤担持体上でのキャリアが回転し易く、現像剤担持体の回転速度に対し、現像剤が追従しないため、現像担持体上で現像剤が滑ってしまうことがある。これにより、現像剤担持体と現像剤が速度差を持ち、現像剤担持体上への非画像時のトナー付着量が増えてしまうことがある。また、低抵抗部、即ち樹脂層が薄く芯材露出に近い部分、が少ないために、非画像時に現像剤担持体上に付着したトナーが、印刷時に消費されてしまい、現像剤担持体上のトナー量が大きく変動してしまうことがある。
一方、前記表面粗さRa1が0.90μmを超えると、キャリア自体の凹凸が大きすぎ、キャリアの磨耗が凸部に偏ってしまうため、被覆層の磨耗が顕著となることがある。
【0020】
またトナーとの関係においては、前記表面粗さRa1が0.90μmを超えると、キャリア自体の凹凸が大きすぎるために、トナーに対するハザードが高くなってしまい、トナーの外添剤がトナー母体粒子へ埋め込まれること及びトナーの外添剤がトナー母体粒子の凹部へ転がることを促進してしまい、トナーの外添剤の機能が失われやすくなる。
ここで、図2は、通常のトナーを示す模式図である。図3は、トナーの外添剤がトナー母体粒子の凹部へ転動された様子を示す模式図である。図4は、図3に示すトナーとキャリアとが接触する様子を示す模式図である。
図2に示す通常のトナー101は、トナー母体粒子102の表面に外添剤103が均一に分布している。一方、図3に示すトナー101は、トナー母体粒子102の凹部へ外添剤103が転動された結果、トナー母体粒子102表面の外添剤103の分布が不均一になっている。図3に示すトナーは、凹凸が大きいキャリア(前記表面粗さRa1が0.9μmを超えるキャリア)との接触により得られやすい。図3に示すトナーは、トナー母体粒子102表面の外添剤103の分布が不均一であるために、図4に示すように、キャリアとトナー101とが近接する丸い破線で示す範囲において、トナーの外添剤とキャリアとの良好な接触状態が得られにくい。また、外添剤がトナーに埋没する場合にも、トナーとキャリアとの良好な接触状態は得られにくい。球形の外添剤を用いると、トナーの転動や埋没はより起こりやすくなり、良好な接触状態が得られにくい傾向はより大きくなる。
【0021】
前記算術平均表面粗さRa1の値は、以下の測定方法により求めることができる。LASERTEC社製のOPTELICS C130を用いて、対物レンズ倍率を50倍、Resolutionを0.20μmとして画像を取り込んだ後、キャリアの頂点部を中心にして観察エリアを10μm×10μmとし、キャリア100個を測定した値を用いる。
【0022】
<芯材>
前記芯材としては、磁性体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄、コバルト等の強磁性金属;マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の酸化鉄;各種合金、化合物等の磁性体を樹脂中に分散させた樹脂粒子などが挙げられる。これらの中でも、環境面への配慮から、Mn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Mn−Mg−Srフェライト、Mn−Mg−Caフェライトが好ましい。
【0023】
−芯材の算術平均表面粗さRa2−
前記芯材の算術平均表面粗さRa2は、前記芯材の表面粗さを規定する。
前記芯材の算術平均表面粗さRa2としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.50μm〜1.50μmが好ましく、0.60μm〜1.30μmがより好ましい。前記算術平均表面粗さRa2が、0.50μm未満であると、キャリアを製造する際に所望の前記Ra1を得ることが難しくなることがあり、1.50μmを超えると、キャリアを製造する際に前記Ra1が大きくなりすぎることがある。一方、前記算術平均表面粗さRa2が、前記より好ましい範囲内であると、キャリアを製造する際に、現像剤担持体上へのトナー付着量をより制御できる点で有利である。
なお、前記算術平均表面粗さRa2の値は、前記算術平均表面粗さRa1の測定方法と同様の方法によって求めることができる。
【0024】
前記キャリアの算術平均表面粗さRa1と前記芯材の算術平均表面粗さRa2との比Ra1/Ra2としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.60〜1.00が好ましく、0.70〜0.90がより好ましい。前記Ra1/Ra2が、0.60未満であると、キャリアを製造する際に芯材の凹凸を埋めてしまい、現像剤担持体上へのトナー付着量が増加することがある。前記Ra1/Ra2が1.00に近いことは、芯材の凹凸とキャリアの凹凸の程度が近いことを意味している。この場合、芯材に由来するキャリアの凹凸では、トナーとキャリアとが複数点で接触することによるキャリアのトナー保持ができにくいため、現像剤担持体上へのトナーの付着量が増加してしまうことがある。また、被覆層中の耐久性を担うフィラーが十分に添加されていない、あるいは添加されていてもその粒径が小さい為に、耐久性の効果が不十分になることがある。一方、前記Ra1/Ra2が、前記より好ましい範囲内であると、現像剤担持体上へのトナー付着量の制御、及び耐久性の両立の点で有利である。
ここで、図5は、前記Ra1/Ra2が小さい(0.60未満)場合のキャリアとトナーの外添剤との接触状態を示す模式図である。図5に示すように、前記Ra1/Ra2が小さい(0.60未満)場合には、キャリアを製造する(被覆層を形成する)際に被覆層が芯材の凹凸を埋めてしまっており、キャリアとトナーの外添剤との接触が少なくなる。そのため、現像剤担持体上へのトナー付着量が増加することがある。
また、図6及び図7は、前記Ra1/Ra2が1.00に近い場合のキャリアとトナーの外添剤との接触状態を示す模式図である。図6は、微粒子が少ない場合であり、図7は、微粒子が小さい場合である。図6及び図7に示すように、前記Ra1/Ra2が1.00に近い場合には、芯材に由来するキャリアの凹凸では、トナーとキャリアとが複数点で接触することによるキャリアのトナー保持ができにくいため、現像剤担持体上へのトナーの付着量が増加してしまうことがある。
【0025】
<被覆層>
前記被覆層は、樹脂及び微粒子を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
前記被覆層は、例えば、樹脂及び微粒子を含有する被覆層形成溶液を前記芯材の塗布することにより形成することができる。
【0026】
前記被覆層の厚みは、前記樹脂の前記芯材に対する含有量により制御することができる。前記キャリアにおける前記樹脂の前記芯材に対する含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、被覆層の厚みにより局所的な低抵抗状態を形成することができる点で、0.5質量%〜3.0質量%が好ましい。
【0027】
前記被覆層の平均厚みhとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.2μm〜2μmが好ましく、0.2μm〜0.5μmがより好ましい。前記平均厚みが、0.2μm未満であると、現像装置内で現像剤を攪拌する際、容易に前記芯材が前記被覆層の表面に露出してしまい、抵抗値の変化が大きくなることがあり、2μmを超えると、前記芯材の凸部は露出せず、局所的な低抵抗状態を作ることが難しくなることがある。前記平均厚みが、前記好ましい範囲内であると、局所的な低抵抗状態を有するキャリアを製造することができる点で有利である。
前記被覆層の厚みは、前記樹脂の前記芯材に対する含有量により制御することができる。
【0028】
前記被覆層の平均厚みhは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、キャリア断面を観察し、キャリア表面を覆う被覆層の樹脂部の厚みを測定し、その平均値から求めることができる。具体的には、前記キャリア断面から任意の50点について芯材表面から被覆層表面までの距離を測定し、測定値の平均を求める。
【0029】
−平均層厚差−
前記被覆層の平均層厚差は、0.02μm〜3.0μmであり、0.15μm〜0.40μmが好ましい。
ここで、前記被覆層の平均層厚差とは、前記被覆層に含有される微粒子によって生じる凹凸を表し、トナーの外添剤との接触によるトナー保持力を利用した現像剤担持体上へのトナー移動の抑制、キャリアの抵抗調整、耐磨耗性、及びトナースペントの掻き取りに寄与している。
前記平均層厚差が0.02μm未満であると、キャリア表面に微粒子による凹凸が殆どないため、キャリアとトナーの外添剤との微小な接触による付着力が生じにくいため、現像剤担持体上へトナーが移行し易くなってしまい、ゴースト現象の原因となってしまうことがある。また、所謂フィラー効果が十分でないため、被覆層の耐磨耗性が悪化することがある。更に、キャリア表面に凹凸が殆どないため、トナースペント物の掻き取りが十分でなく、帯電の安定性も課題となることがある。
前記平均層厚差が3.0μmを超えると、樹脂が微粒子を拘束する力が十分でないために、微粒子の離脱、それに基づく樹脂の磨耗が課題となることがある。また、キャリアのトナー保持力の低下による現像剤担持体へのトナー移行が増加することによって、ゴースト現象が悪化することがある。
【0030】
前記平均層厚差の測定は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、キャリア断面を観察し、キャリア表面を覆う被覆層の樹脂部の厚みを測定することで求めることができる。具体的には、前記キャリア断面において、任意の50点について芯材表面から被覆層表面までの距離を測定し、得られた測定値の数値の大きい値から5点の平均値と数値の小さい値から5点の平均値との差とする。
【0031】
<<樹脂>>
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル樹脂、アミノ樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シリコーン樹脂が好ましい。
【0032】
また、前記樹脂としては、シランカップリング剤及びシリコーン樹脂を含有する混合物の硬化物を含む樹脂も好適に用いることができる。
【0033】
前記シリコーン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記シリコーン樹脂は、市販品であってもよい。前記市販品としては、例えば、SR2410(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少なくとも下記一般式(A)で表されるA部分、及び下記一般式(B)で表されるB部分を含む共重合体を加水分解し、シラノール基を生成して縮合することにより得られる架橋物を含有する樹脂が好ましい。
【化1】

ただし、前記一般式(A)中、Rは、水素原子及びメチル基のいずれかを表し、Rは、炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、mは、1〜8の整数を表し、Xは、前記共重合体におけるモル比を表し、10モル%〜90モル%を表す。
【化2】

ただし、前記一般式(B)中、Rは、水素原子及びメチル基のいずれかを表し、Rは、炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、Rは、炭素原子数1〜8のアルキル基及び炭素原子数1〜4のアルコキシ基のいずれかを表し、mは、1〜8の整数を表し、Yは、前記共重合体におけるモル比を表し、10モル%〜90モル%を表す。
【0035】
前記シランカップリング剤は、前記微粒子を安定して分散させることができる。
前記シランカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、γ−クロルプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロルシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、1,3−ジビニルテトラメチルジシラザン、メタクリルオキシエチルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記シランカップリング剤は、適宜調製したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよく、該市販品としては、例えば、AY43−059、SR6020、SZ6023、SH6020、SH6026、SZ6032、SZ6050、AY43−310M、SZ6030、SH6040、AY43−026、AY43−031、sh6062、Z−6911、sz6300、sz6075、sz6079、sz6083、sz6070、sz6072、Z−6721、AY43−004、Z−6187、AY43−021、AY43−043、AY43−040、AY43−047、Z−6265、AY43−204M、AY43−048、Z−6403、AY43−206M、AY43−206E、Z6341、AY43−210MC、AY43−083、AY43−101、AY43−013、AY43−158E、Z−6920、Z−6940(以上、東レ・シリコーン社製)などが挙げられる。
【0037】
前記シランカップリング剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂に対して、0.1質量%〜10質量%が好ましい。前記含有量が、0.1質量%未満であると、前記芯材乃至前記微粒子と前記樹脂との接着性が低下して、長期間の使用中に被覆層が脱落することがあり、10質量%を超えると、長期間の使用中にトナーのフィルミングが発生することがある。
【0038】
前記被覆層は、例えば、前記シラノール基及び/又は加水分解性官能基を有するシリコーン樹脂、重合触媒、必要に応じて、シラノール基及び/又は加水分解性官能基を有するシリコーン樹脂以外の樹脂、溶剤を含む被覆層用組成物を用いて形成することができる。
具体的には、前記被覆層用組成物で芯材を被覆しながら、シラノール基を縮合させることにより形成してもよいし、前記被覆層用組成物で芯材を被覆した後に、シラノール基を縮合させることにより形成してもよい。
前記被覆層用組成物で芯材を被覆しながら、シラノール基を縮合させる方法としては、特に限定されないが、例えば、熱、光等を付与しながら、被覆層用組成物で芯材を被覆する方法などが挙げられる。
また、前記被覆層用組成物で芯材を被覆した後に、シラノール基を縮合させる方法としては、特に限定はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記被覆層用組成物で芯材を被覆した後に加熱する方法などが挙げられる。
【0039】
<<微粒子>>
前記微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アルミナ、シリカ、チタン、バリウム、スズ、及びカーボンの少なくともいずれかを含むことが好ましい。
前記微粒子としては、導電性微粒子及び非導電性微粒子のいずれも用いることができ、導電性微粒子と非導電性微粒子とを併用してもよい。
【0040】
ここで、前記導電性微粒子とは、粉体比抵抗が100Ω・cm以下である微粒子を指し、前記非導電性微粒子とは、粉体比抵抗が100Ω・cmを超える微粒子を指す。
【0041】
前記粉体比抵抗は、例えば、次のようにして測定することができる。内径1インチの円筒状の塩化ビニル管の中に、試料を5g入れ、その上下を電極で挟む。これら電極をプレス機により、10kg/cmの圧力を加える。続いて、この加圧した状態で、LCRメータ(4216A、横河−HEWLETT−PACKARD社製)を接続する。接続直後の抵抗r(Ω)を読み取りノギスで全長L(cm)を測定し粉体比抵抗(Ω・cm)を算出する。計算式は、以下の式に示すものである。
粉体比抵抗(Ω・cm)=
{(2.54/2)2×π}×r/(L−11.35)
r :接続直後の抵抗
L :試料を充填した場合の全長
11.35:試料を充填しない場合の全長
【0042】
前記導電性微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、二酸化珪素、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム等の基体に二酸化スズ、酸化インジウム等を層として形成した導電性微粒子;カーボンブラックを用いて形成する導電性微粒子などが挙げられる。これらの中でも、酸化アルミニウム、二酸化チタン、又は硫酸バリウムの基体に二酸化スズ、又は酸化インジウムを層として形成した導電性微粒子が好ましい。
【0043】
前記非導電性微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、二酸化珪素、硫酸バリウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。
【0044】
前記微粒子の粉体比抵抗としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、−3Log(Ω・cm)〜3Log(Ω・cm)が好ましい。前記粉体比抵抗が、−3Log(Ω・cm)未満であると、微粒子の抵抗が低すぎるため、トナーとの摩擦帯電の際に十分に帯電することができないことがあり、3Log(Ω・cm)を超えると、キャリア抵抗調整能力が十分でないため、エッジ効果及び画像の精細性が悪化することがある。
【0045】
前記微粒子の体積平均粒径Dとしては、50nm〜500nmが好ましく、100nm〜400nmがより好ましい。前記範囲内の粒径を有することで、樹脂被覆層の表面から微粒子が出やすくなり、部分的な低抵抗を作りやすく、更にはキャリア表面のスペント物を掻き取り易く、耐摩耗性にも優れる。
【0046】
前記微粒子の体積平均粒径Dは、例えば、超遠心式自動粒度分布測定装置CAPA−700(株式会社堀場製作所製)を用いて測定することができる。具体的には、以下の手順で測定を行う。
ジューサーミキサーにアミノシラン(SH6020、東レ・ダウコーニング株式会社製)30mLにトルエン溶液300mLを入れる。試料を6.0gを加え、ミキサー回転速度をlowにセットし3分間分散する。1,000mLビーカーに予め用意されたトルエン溶液500mLの中に分散液を適量加えて希釈する。得られた希釈液はホモジナイザーにて常に攪拌を続ける。超遠心式自動粒度分布測定装置CAPA−700(株式会社堀場製作所製)にて体積平均粒径を測定する。
−測定条件−
測定条件回転速度:2,000rpm
最大粒度:2.0μm
最小粒度:0.1μm
粒度間隔:0.1μm
分散媒粘度:0.59mPa・s
分散媒密度:0.87g/cm
粒子密度:乾式自動嵩密度計アキュピック1330(株式会社島津製作所製)を用いて測定した真比重値
【0047】
前記被覆層における前記微粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、樹脂100質量部に対して、50質量部〜500質量部が好ましく、100質量部〜300質量部がより好ましい。
前記含有量が、50質量部未満であると、被覆層の削れや剥れを防止する効果が減少することがあり、500質量部を超えると、キャリア表面に出てくる樹脂の割合が相対的に小さくなり、トナーがキャリア表面にスペントし易くなることがある。一方、前記含有量が前記好ましい範囲内であると、現像装置で長期間使用した際の被覆層の削れや剥れを抑制することが可能になる。
【0048】
前記被覆層の平均厚みh(μm)に対する前記微粒子の体積平均粒径D(μm)の比(D/h)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01〜1.00が好ましく、0.10〜1.00がより好ましい。
前記D/hが、0.01未満であると、微粒子に起因する凹凸はほとんど見られず、被覆層の表面が平らになり、トナーの固着による帯電性能の低下等が発生し、画像品質が低下することがあり、1.00を超えると、低画像面積でのランニングを行った場合に、被覆層の微粒子に起因する凸部が削れることにより抵抗の低下等が発生し、画像品質が低下することがある。一方、前記D/hが前記より好ましい範囲内であると、耐久性が良好であり、キャリア付着を抑制することが可能である点で有利である。
【0049】
前記微粒子の被覆層における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%〜90質量%が好ましく、40質量%〜85質量%がより好ましく、50質量%〜80質量%が特に好ましい。
前記含有量が、10質量%未満であると、キャリアの表面における微粒子の割合が少ないため、樹脂への強い衝撃を伴う接触を緩和する効果が小さくなることがあり、90質量%を超えると、キャリアの表面における樹脂の割合が少ないため、帯電性能が低下すること、樹脂による微粒子の保持能力が不十分となることがある。
なお、前記微粒子の含有量は、下記式で表される。
微粒子の含有量(質量%)={微粒子/(微粒子+樹脂固形分総量)}
【0050】
<静電潜像現像用キャリアの製造方法>
前記静電潜像現像用キャリアの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、流動床型コーティング装置を使用して、前記芯材の表面に、前記樹脂及び前記微粒子を含有する被覆層形成溶液を塗布することにより製造する方法が好ましい。なお、前記被覆層形成溶液を塗布する際に、前記被覆層に含有される樹脂の縮合を進めてもよいし、前記被覆層形成溶液を塗布した後に、前記被覆層に含有される樹脂の縮合を進めてもよい。前記樹脂の縮合方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記被覆層形成溶液に、熱、光等を付与して樹脂を縮合する方法などが挙げられる。
【0051】
<静電潜像現像用キャリアの体積固有抵抗値>
前記キャリアの体積固有抵抗値としては、体積固有抵抗値が1×10Ω・cm以上1×1017Ω・cm以下が好ましく、1×10Ω・cm以上1×1012Ω・cm以下がより好ましい。前記体積固有抵抗値が1×10Ω・cm未満であると、非画像時に現像剤担持体上に付着するトナー量(例えば、現像スリーブ方向へのバイアスによって、現像スリーブに付着するトナー量)が増えてしまい、画像の均一性が得られないことがある。前記体積固有抵抗値が1×1017Ω・cmを超えると、印刷時に現像剤担持体上に付着したトナーが消費されてしまい、画像の均一性が得られないことがある。なお、ハイレジスト計の測定可能下限を下回った場合には、実質的には体積固有抵抗値は得られず、ブレークダウンしたものとして扱うことにする。
【0052】
前記体積固有抵抗値は、以下の方法により測定することができる。
まず、電極間距離2mm、表面積2cm×4cmの電極、電極を収容したフッ素樹脂製容器からなるセルにキャリアを充填し、タッピングマシンPTM−1型(三協パイオテク社製)を用いて、タッピングスピード30回/minにて1分間タッピング操作を行う。次いで、両極間に1,000Vの直流電圧を印加し、ハイレジスタンスメーター4329A(4329A+LJK5HVLVWDQFH 0HWHU;横川ヒューレットパッカード株式会社製)により直流抵抗を測定して電気抵抗率RΩ・cmを求め、LogRを算出する。
【0053】
<静電潜像現像用キャリアの重量平均粒径Dw>
前記静電潜像現像用キャリアの重量平均粒径Dwは、レーザー回折・散乱法によって求めた前記芯材の粒度分布における積算値50%での粒径をいう。
前記キャリアの重量平均粒径Dwとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20μm〜65μmであることが好ましい。前記重量平均粒径が前記範囲内であることにより、キャリア付着や画質などに対する改善効果が顕著である。これは、重量平均粒径が20μm未満の場合は、粒子の均一性が低下することと、20μm未満の微粉は現像時の遠心力や現像バイアスの注入によるベタキャリア付着が起こりやすくマシン側で充分使いこなす技術が確立できていないことにより、キャリア付着などの問題が生じることがある。一方、65μmを超える場合には、画像細部の再現性が悪く精細な画像が得られないことがある。
【0054】
前記重量平均粒径Dwは、個数基準で測定された粒子の粒径分布(個数頻度と粒径との関係)に基づいて算出されるものである。
この場合の重量平均粒径Dwは次式(1)で表される。
Dw = {1/Σ(nD)}×{Σ(nD)}・・・(1)
(式(1)中、Dは各チャネルに存在する粒子の代表粒径(μm)を示し、nは各チャネルに存在する粒子の総数を示す)
なお、チャネルとは、粒径分布図における粒径範囲を測定幅単位に分割するための長さを示すもので、本発明の場合には、2μmの等分長さ(粒径分布幅)を採用する。
また、各チャネルに存在する粒子の代表粒径としては、各チャネルに保存する粒子粒径の下限値を採用する。
【0055】
また、本発明において個数平均粒径Dpは、個数基準で測定された粒子の粒径分布に基づいて算出されるものである。
この場合の個数平均粒径Dpは以下の式(2)で表される。
Dp = (1/N)×(ΣnD) ・・・(2)
ただし、上記式(2)中、Nは計測した全粒子数を示し、nは各チャネルに存在する粒子の総数を示し、Dは各チャネル(2μm)に存在する粒子粒径の下限値を示す。
【0056】
本発明において粒径分布を測定するための粒度分析計としては、マイクロトラック粒度分析計(モデルHRA9320−X100、Honewell社製)を用いる。その測定条件は以下の通りである。
−測定条件−
[1]粒径範囲:100nm〜8μm
[2]チャネル長さ(チャネル幅):2μm
[3]チャネル数:46
[4]屈折率:2.42
【0057】
<静電潜像現像用キャリアの磁化>
前記静電潜像現像用キャリアの磁化(磁気モーメント)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1kOeの磁場において、40Am/kg〜90Am/kgが好ましい。
なお、前記磁化の測定には、例えば、高感度振動試料型磁力計(VSM−P7−15、東英工業株式会社製)を用いることができる。具体的な測定方法としては、キャリア約0.15gを秤量し、内径2.4mm、高さ8.5mmのセル(図8参照)に前記キャリアを充填し、1,000エルステット(Oe)の磁場下で測定する。図8に示すセルは、電極間距離0.2cm、表面積2.5cm×4cmの電極1a、電極1bを収容したフッ素樹脂製容器2からなるセルであり、キャリア3が充填されている。
【0058】
(現像剤)
本発明の現像剤は、本発明の静電潜像現像用キャリアとトナーとを含む。
【0059】
<トナー>
前記トナーは、少なくともトナー母体粒子と、外添剤とを含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0060】
前記外添剤は、非球形の外添剤を含有することが好ましい。
前記トナーは、前記非球形の外添剤を含有することにより、高流動性を実現し、現像装置内で攪拌されるなどしてトナーに負荷が与えられた場合においても、外添剤の埋没や転動が抑制されることで、キャリアのトナー保持力を経時で保つことに優れる。
【0061】
ここで、図を用いて外添剤の転動の一例について説明する。図9A、図10A、及び図11Aは、外添剤を含有するトナーの模式図である。図9Aに示すトナー101の外添剤103の形状は、球形である。図10Aに示すトナー101の外添剤103の形状は、非球形(紡錘形)である。図11Aに示すトナー101の外添剤103は、非球形の合着粒子である。
図9Aに示すトナー101は、外添剤103の形状が球形であるため、トナー101に負荷が与えられた場合、外添剤103が、トナー母体粒子102表面を矢印の方向に転動し、トナー母体粒子102の凹部などに集まり、結果として、外添剤103が不均一になる(図9B参照)。
図10A及び図11Aに示すトナー101は、外添剤103の形状が非球形であるため、トナー101に負荷が与えられた場合でも、外添剤103は転動しにしくい(図10B及び図11B参照)。
【0062】
外添剤の埋没、又は転動が起こると、図12に示すようにキャリアの被覆層(樹脂112と微粒子113を含む被覆層)の微細な凹凸と、外添剤との接触が十分に得られにくい(図12の丸い破線部分参照)。
また、外添剤の埋没、又は転動が起こることで、トナー母体粒子と現像剤担持体との距離が短くなり(図13参照)、トナーと現像剤担持体との付着力が上がってしまうことがある。
一方、外添剤の埋没、又は転動が抑制されると、トナー母体粒子と現像剤担持体との距離を保つことができ(図14参照)、トナーと現像剤担持体との非静電的な付着力を低く保つことができる。
【0063】
即ち、トナーにおける外添剤の埋没、又は転動を抑制し、トナーとキャリアとの間の保持力(付着力)を大きく保ち、かつ現像剤担持体との付着力を低く保つことで、非画像部において、静電潜像担持体(以下、「感光体」と称することがある)から現像剤担持体(例えば、現像スリーブ)方向へバイアスが掛かった際に、トナーが現像剤担持体へ付着してしまうことを抑制し、画像履歴によるゴースト現象をより抑制することができる。
更に、前記非球形の外添剤が、合着粒子であって、前記合着粒子の合着度Gが1.5〜4.0であることで上記効果は顕著となる。
【0064】
通常、電子写真式の画像形成装置において、小粒径トナーを用いた場合には、トナーと電子写真感光体、又はトナーと中間転写体との非静電的付着力が増加するため、転写効率が低下する。特に、高速機において小粒径トナーを使用した場合には、トナーの小粒径化により中間転写体との非静電的付着力が増加した上に、高速化に伴い転写のニップ部、特に二次転写のニップ部においてトナーが転写電界を受ける時間が短くなるため、二次転写での転写効率の低下が顕著となることが知られている。
【0065】
しかし、前記非球形の外添剤を含有するトナーを用いることにより、トナーの非静電的付着力が低減され、高速機のように転写時間が短くなった場合においても、定着性を阻害することなく十分な転写効率を得ることができる。更に、高速機のように経時での機械的ストレスの大きい場合においても、外添剤が凹部に転がり、外添剤の機能が消失することが無くなり、長期的にも十分な転写効率を維持することが可能である。
【0066】
<<外添剤>>
前記外添剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、非球形の外添剤を含有することが好ましい。
前記非球形の外添剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、紡錘形の外添剤、合着粒子などが挙げられる。
【0067】
−合着粒子−
前記合着粒子は、一次粒子同士が合着されてなる非球形の粒子(二次粒子)である。
なお、前記外添剤は、少なくとも前記合着粒子(二次粒子)を含むことが好ましく、前記合着粒子(二次粒子)の他に、その他の外添剤や、前記合着粒子の一次粒子の状態のものを含有していてもよい。
【0068】
−−一次粒子−−
前記一次粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等の無機微粒子、有機微粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シリカが、トナー母体粒子への外添剤の埋没及び離脱を防ぐことができる点で好ましい。
【0069】
前記一次粒子の平均粒子径(Da)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20nm〜150nmが好ましく、35nm〜150nmがより好ましい。前記平均粒子径(Da)が、20nm未満であると、スペーサー効果の機能を果たすことができず、外部ストレスによるトナー母体粒子への外添剤の埋没を抑制できないことがあり、150nmを超えると、トナーからの遊離が発生しやすく、感光体フィルミングを引き起こしやすくなることがある。
【0070】
前記一次粒子の平均粒子径(Da)は、前記合着粒子中の一次粒子の粒子径(図15に示す全ての矢印の長さ)をもとに測定する。前記測定は、前記合着粒子を適切な溶剤(テトラヒドロフラン(THF)等)に分散させた後、基板上で溶剤を除去して乾固させたサンプルを、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM、加速電圧:5kV〜8kV、観察倍率:8,000倍〜10,000倍)にて視野中の一次粒子の粒子径を計測することにより行う。前記一次粒子の粒子径の測定は、凝集した各粒子の最長長さ(図15に示す全ての矢印の長さ)の平均値を計測(計測した粒子数:100個以上200個以下)することにより行う。
【0071】
−−二次粒子−−
前記二次粒子とは、上述のとおり、即ち合着粒子を指す。
前記二次粒子としては、例えば、前記一次粒子を後述する処理剤により化学結合させ、二次凝集させた粒子であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゾルゲルシリカが好ましい。
【0072】
前記二次粒子の平均粒子径(Db)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、80nm〜200nmが好ましく、100nm〜180nmがより好ましく、100nm〜160nmが特に好ましい。前記平均粒子径(Db)が、80nm未満であると、スペーサー効果の機能を果たしにくく、外部ストレスによる埋没を抑制しにくいことがあり、200nmを超えると、トナーからの遊離が発生しやすく、感光体フィルミングを引き起こしやすくなることがある。
【0073】
前記二次粒子の平均粒子径(Db)の測定は、前記二次粒子を適切な溶剤(テトラヒドロフラン(THF)等)に分散させた後、基板上で溶剤を除去して乾固させたサンプルを、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM、加速電圧:5kV〜8kV、観察倍率:8,000倍〜10,000倍)にて視野中の合着粒子の粒子径を計測することにより行う。前記二次粒子の粒子径の測定は、凝集した粒子の最長長さ(図16に示す矢印の長さ)を計測(計測した粒子数:100個以上200個以下)することにより行う。
【0074】
−−合着粒子の合着度−−
前記合着粒子の前記合着度(G)は、前記合着粒子(二次粒子)の平均粒子径と、前記合着粒子に含まれる一次粒子の平均粒子径との比(二次粒子の平均粒子径/一次粒子の平均粒子径)で表され、各平均粒子径は、上述の方法により測定されて算出される。
【0075】
前記合着粒子の合着度(G)(二次粒子の平均粒子径/一次粒子の平均粒子径)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.5〜4.0が好ましく、3.0〜4.0がより好ましく、3.4〜3.9が特に好ましい。前記合着度(G)が、1.5未満であると、前記外添剤が前記トナー母体粒子表面の凹部へ転がり埋没しやすく、転写性に優れないことがあり、4.0を超えると、トナーから前記外添剤が剥がれやすく、キャリア汚染や感光体に対して傷付けたりするため、経時での劣化にやや弱い。
【0076】
−−合着粒子の形状−−
前記合着粒子の形状としては、粒子同士が合着されてなる非球形の形状を有すれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、図15〜図16に示すように、粒子同士が2個以上合着されてなる非球形の形状などが挙げられる。前記合着粒子を用いることにより、トナーの高流動性を実現し、現像器内にて攪拌されるなどトナーに負荷が与えられた場合においても外添剤の埋没や転動が抑制されることで経時での高転写率を維持することが可能となる。また、前記合着粒子は、一定の攪拌条件下においても、粒子同士の凝集力(合着力)が維持されるため、トナーの耐久性が高い。
【0077】
前記合着粒子の粒子同士が合着されていることを確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)にて観察することにより、確認する方法が好ましい。
【0078】
−−合着粒子の製造方法−−
前記合着粒子の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゾルゲル法、乾式法などが挙げられる。
【0079】
−−−ゾルゲル法−−−
前記ゾルゲル法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記一次粒子と、下記に説明する処理剤とを混合乃至焼成することにより化学結合させて二次凝集させ、前記二次粒子(合着粒子)とすることにより製造する方法が好ましい。なお、前記ゾルゲル法により合成する際には、前記処理剤を共存させて、一段反応にて合着粒子を調製してもよい。
【0080】
−−−−処理剤−−−−
前記処理剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シラン系処理剤、エポキシ系処理剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記一次粒子として、シリカを用いた場合には、前記シラン系処理剤が形成するSi−O−Si結合の方が、前記エポキシ系処理剤が形成するSi−O−C結合よりも、熱に対して安定である点で、シラン系処理剤が好ましい。また、必要に応じて、処理助剤(水、1質量%酢酸水溶液等)を使用してもよい。
【0081】
−−−−−シラン系処理剤−−−−−
前記シラン系処理剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコキシシラン化合物、シランカップリング剤、クロロシラン化合物、シラザン化合物、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ジメチルトリメチルシリルアミンなどが挙げられる。
前記アルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシランなどが挙げられる。
前記シランカップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシランなどが挙げられる。
前記クロロシラン化合物としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、フェニルトリクロロシランなどが挙げられる。
前記シラザン化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、サイクリックシラザンの混合物などが挙げられる。
【0082】
前記シラン系処理剤は、以下に示すように、前記一次粒子(例えば、シリカ一次粒子)を化学結合にさせて二次凝集を形成させる。
前記シラン系処理剤として、前記アルコキシシラン化合物、前記シランカップリング剤等を用いて前記シリカ一次粒子を処理した場合、下記式(A)に示すように、前記シリカ一次粒子に結合するシラノール基とシラン系処理剤に結合するアルコキシ基が反応し、脱アルコールにより、新たなSi−O−Si結合を形成して二次凝集する。
前記シラン系処理剤として、前記クロロシラン化合物を用いて前記シリカ一次粒子を処理した場合、前記クロロシラン化合物のクロロ基と、前記シリカ一次粒子に結合するシラノール基とが脱塩化水素反応により、新たなSi−O−Si結合を形成して二次凝集する。また、前記シラン系処理剤として、前記クロロシラン化合物を用いて前記シリカ一次粒子を処理した場合、系に水が共存する際には、まずクロロシラン化合物が水に加水分解してシラノール基を生成し、該シラノール基とシリカ一次粒子に結合するシラノール基が脱水反応により、新たなSi−O−Si結合を形成して二次凝集する。
前記シラン系処理剤として、シラザン化合物を用いて前記シリカ一次粒子を処理した場合、アミノ基とシリカ一次粒子に結合するシラノール基が脱アンモニアすることにより、新たなSi−O−Si結合を形成して二次凝集する。
【化3】

ただし、前記式(A)中、Rは、アルキル基を示す。
【0083】
−−−−−エポキシ系処理剤−−−−−
前記エポキシ系処理剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0084】
前記エポキシ系処理剤は、下記式(B)に示すように、前記シリカ一次粒子を化学結合させて二次凝集を形成させる。前記エポキシ系処理剤を用いて前記シリカ一次粒子を処理した場合、前記シリカ一次粒子に結合するシラノール基が、前記エポキシ系処理剤のエポキシ基酸素原子及びエポキシ基に結合する炭素原子を付加することにより、新たなSi−O−C結合を形成して二次凝集する。
【0085】
【化4】

【0086】
前記処理剤と前記一次粒子との混合質量比(一次粒子:処理剤)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100:0.01〜100:50が好ましい。なお、前記処理剤の量が多いほど、合着度が高くなる傾向にある。
【0087】
前記処理剤と前記一次粒子との混合方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の混合機(スプレードライヤー等)により混合する方法などが挙げられる。なお、前記混合する際は、前記一次粒子を調製した後に前記処理剤を混合して調製してもよいし、前記一次粒子を調製する際に前記処理剤を共存させて、一段反応にて調製してもよい。
【0088】
前記処理剤と前記一次粒子との焼成温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100℃〜2,500℃が好ましい。なお、前記焼成温度が高いほど、合着度が高くなる傾向にある。
【0089】
前記処理剤と前記一次粒子との焼成時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5時間〜30時間が好ましい。
【0090】
−−−乾式法−−−
前記乾式法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、図17に示すような装置を用いて行うことができる。
図17に示す装置は、原料の珪素化合物を気化して供給するための蒸発器501、原料の珪素化合物ガスを供給するための供給管502、可燃性ガスを供給するための供給管503、支燃性ガスを供給するための供給管504、これらの供給管502、503、504に接続したバーナー505、反応器506(火炎加水分解反応を行う)、反応器506の下流側に連結された冷却管507A、507B、507C、製造されたシリカ粉末を回収する回収装置508、回収装置508の下流に設置された排ガス処理装置509A、及び排風機509Bを有する。
例えば、供給管504を開いて酸素ガスをバーナーに供給し、着火用バーナーに点火した後、供給管503を開いて水素ガスをバーナーに供給して火炎を形成し、これに四塩化珪素を蒸発器501にてガス化して供給して、火炎加水分解反応を行わせ、生成したシリカ粉末を回収装置508のバグフィルターで回収する。粉末回収後の排ガスは排ガス処理装置509Aで処理し、排風機509Bを通じて排気する。
【0091】
前記外添剤における前記非球形の外添剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%〜90質量%が好ましく、25質量%〜60質量%がより好ましく、35質量%〜55質量%が特に好ましい。
【0092】
前記トナーにおける前記外添剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー母体粒子100質量部に対して、0.5質量部〜8.0質量部が好ましく、2.0質量部〜7.0質量部がより好ましく、3.5質量部〜5.5質量部が特に好ましい。
【0093】
<<トナー母体粒子>>
前記トナー母体粒子としては、例えば、少なくとも結着樹脂及び着色剤を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有するトナー母体粒子が挙げられる。
【0094】
<<<結着樹脂>>>
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、スチレン・アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ジエン系樹脂、フェノール樹脂、テルペン樹脂、クマリン樹脂、アミドイミド樹脂、ブチラール樹脂、ウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、低温定着性に優れ、画像表面を平滑化できる点、及び低分子量化しても十分な可撓性を有する点で、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂と上記他の結着樹脂とを組み合わせた樹脂が好ましい。
【0095】
−ポリエステル樹脂−
前記ポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、非晶性ポリエステル樹脂(未変性ポリエステル樹脂)、結晶性ポリエステル樹脂、変性ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0096】
−−非晶性ポリエステル樹脂−−
前記非晶性ポリエステル樹脂は、多価アルコール成分と、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステルなどの多価カルボン酸成分とを用いて得られる。
なお、本発明において非晶性ポリエステル樹脂とは、上記のごとく、多価アルコール成分と、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステルなどの多価カルボン酸成分とを用いて得られるものを指し、ポリエステル樹脂を変性したもの、例えば、後述するグラフト変性ポリマー、後述するプレポリマー、及びそのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる樹脂は、前記非晶性ポリエステル樹脂には属さない。
【0097】
前記多価アルコール成分としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド(平均付加モル数1〜10)付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、水添ビスフェノールA、ソルビトール、又はそれらのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド(平均付加モル数1〜10)付加物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0098】
前記多価カルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸等のジカルボン酸;ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸;トリメリット酸、ピロメリット酸;それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜8)エステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0099】
前記非晶性ポリエステル樹脂と、後述するプレポリマー並びにこのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる樹脂とは、少なくとも一部が相溶していることが好ましい。これらが相溶していることにより、低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させることができる。このため、非晶性ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分及び多価カルボン酸成分と、後述するプレポリマーを構成する多価アルコール成分及び多価カルボン酸成分とは、類似の組成であることが好ましい。
【0100】
前記非晶性ポリエステル樹脂の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、分子量が低すぎる場合、トナーの耐熱保存性、現像器内での攪拌等のストレスに対する耐久性に劣る場合があり、分子量が高すぎる場合、トナーの溶融時の粘弾性が高くなり低温定着性に劣る場合があることから、GPC測定において、重量平均分子量(Mw)2,500〜10,000、数平均分子量(Mn)1,000〜4,000、Mw/Mn1.0〜4.0であることが好ましい。
さらには、重量平均分子量(Mw)3,000〜6,000、数平均分子量(Mn)1,500〜3,000、Mw/Mn1.0〜3.5であることが好ましい。
【0101】
前記非晶性ポリエステル樹脂の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mgKOH/g〜50mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/g〜30mgKOH/gがより好ましい。前記酸価が、1mgKOH/g以上であることにより、トナーが負帯電性となりやすく、さらには、紙への定着時に、紙とトナーの親和性が良くなり、低温定着性を向上させることができる。前記酸価が、50mgKOH/gを超えると、帯電安定性、特に環境変動に対する帯電安定性が低下することがある。
【0102】
前記非晶性ポリエステル樹脂の水酸基価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5mgKOH/g以上であることが好ましい。
【0103】
前記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、Tgが低すぎる場合、トナーの耐熱保存性、現像器内での攪拌等のストレスに対する耐久性に劣る場合があり、Tgが高すぎる場合、トナーの溶融時の粘弾性が高くなり低温定着性に劣る場合があることから、40℃〜70℃が好ましく、45℃〜60℃がより好ましい。
【0104】
前記非晶性ポリエステル樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、50質量部〜95質量部が好ましく、60質量部〜90質量部がより好ましい。前記含有量が、50質量部未満であると、トナー中の顔料、離型剤の分散性が悪化し、画像のかぶり、乱れを生じやすくなることがあり、95質量部を越えると、結晶性ポリエステルの含有量が少なくなるため、低温定着性に劣ることがある。前記含有量が、前記より好ましい範囲であると、高画質、高安定、低温定着性の全てに優れる点で有利である。
【0105】
前記非晶性ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液や固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができる。簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm−1及び990±10cm−1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有しないものを非晶性ポリエステル樹脂として検出する方法が挙げられる。
【0106】
−−結晶性ポリエステル樹脂−−
前記結晶性ポリエステル樹脂は、高い結晶性をもつために、定着開始温度付近において急激な粘度低下を示す熱溶融特性を示す。このような特性を有する前記結晶性ポリエステル樹脂を前記トナーに用いることで、溶融開始温度直前までは結晶性による耐熱保存性がよく、溶融開始温度では急激な粘度低下(シャープメルト性)を起こし定着することから、良好な耐熱保存性と低温定着性とを兼ね備えたトナーが得られる。また、離型幅(定着下限温度とホットオフセット発生温度との差)についても、良好な結果を示す。
【0107】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、多価アルコール成分と、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステルなどの多価カルボン酸成分とを用いて得られる。
なお、本発明において結晶性ポリエステル樹脂とは、上記のごとく、多価アルコール成分と、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステルなどの多価カルボン酸成分とを用いて得られるものを指し、ポリエステル樹脂を変性したもの、例えば、後述するグラフト変性ポリマー、後述するプレポリマー、及びそのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる樹脂は、前記結晶性ポリエステル樹脂には属さない。
【0108】
−−−多価アルコール成分−−−
前記多価アルコール成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、3価以上のアルコールが挙げられる。
前記ジオールとしては、例えば、飽和脂肪族ジオールが挙げられる。前記飽和脂肪族ジオールとしては、直鎖型飽和脂肪族ジオール、分岐型飽和脂肪族ジオールが挙げられるが、これらの中でも、直鎖型飽和脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が4〜12である直鎖型飽和脂肪族ジオールがより好ましい。前記飽和脂肪族ジオールが分岐型であると、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が低下してしまうことがある。また、主鎖部分の炭素数が4未満であると、芳香族ジカルボン酸と縮重合させる場合に、融解温度が高くなり、低温定着が困難となることがある。一方、炭素数が12を超えると、実用上の材料の入手が困難となる。炭素数としては12以下であることがより好ましい。
前記飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,14−エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、前記結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が高く、シャープメルト性に優れる点で、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールが好ましい。
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、ト
リメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0109】
−−−多価カルボン酸成分−−−
前記多価カルボン酸成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2価のカルボン酸、3価以上のカルボン酸が挙げられる。
前記2価のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸等の芳香族ジカルボン酸;などが挙げられ、さらに、これらの無水物やこれらの低級アルキルエステルも挙げられる。
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等、及び
これらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。
また、多価カルボン酸成分としては、前記飽和脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、スルホン酸基を持つジカルボン酸成分が含まれていてもよい。さらに、前記飽和脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、2重結合を持つジカルボン酸成分を含有してもよい。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0110】
前記結晶性ポリエステル樹脂としては、飽和脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位と、飽和脂肪族ジオールに由来する構成単位とを有することが、結晶性が高く、シャープメルト性に優れることから、優れた低温定着性を発揮できる点で好ましい。
【0111】
前記結晶性ポリエステル樹脂の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上80℃未満であることが好ましい。前記融点が、60℃未満であると、結晶性ポリエステル樹脂が低温で溶融しやすく、トナーの耐熱保存性が低下することがあり、80℃以上であると、定着時の加熱による結晶性ポリエステル樹脂の溶融が不十分で、低温定着性が低下することがある。
前記融点は、示差走査熱量計(DSC)測定におけるDSCチャートの吸熱ピーク値により測定することができる。
【0112】
前記結晶性ポリエステル樹脂の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、分子量分布がシャープで低分子量のものが低温定着性に優れ、かつ分子量が低い成分が多いと耐熱保存性が悪化するという観点から、前記結晶性ポリエステル樹脂のオルトジクロロベンゼンの可溶分が、GPC測定において、重量平均分子量(Mw)3,000〜30,000、数平均分子量(Mn)1,000〜10,000、Mw/Mn1.0〜10であることが好ましい。
さらには、重量平均分子量(Mw)5,000〜15,000、数平均分子量(Mn)2,000〜10,000、Mw/Mn1.0〜5.0であることが好ましい。
【0113】
前記結晶性ポリエステル樹脂の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、紙と樹脂との親和性の観点から、所望の低温定着性を達成するためには、5mgKOH/g以上が好ましく、10mgKOH/g以上がより好ましい。一方、耐高温オフセット性を向上させるには、45mgKOH/g以下が好ましい。
【0114】
前記結晶性ポリエステル樹脂の水酸基価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、所望の低温定着性を達成し、かつ良好な帯電特性を達成するためには、0mgKOH/g〜50mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/g〜50mgKOH/gがより好ましい。
【0115】
前記結晶性ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液や固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができる。簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm−1又は990±10cm−1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有するものを結晶性ポリエステル樹脂として検出する方法が挙げられる。
【0116】
前記結晶性ポリエステル樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、2質量部〜20質量部が好ましく、5質量部〜15質量部がより好ましい。前記含有量が、2質量部未満であると、結晶性ポリエステル樹脂によるシャープメルト化が不十分なため低温定着性に劣ることがあり、20質量部を超えると、耐熱保存性が悪化すること、及び画像のかぶりが生じやすくなることがある。前記含有量が、前記より好ましい範囲内であると、高画質、高安定、及び低温定着性の全てに優れる点で有利である。
【0117】
−−変性ポリエステル樹脂−−
前記変性ポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレア変性ポリエステル樹脂などが挙げられる。
前記変性ポリエステル樹脂は、例えば、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体と、活性水素基含有化合物とを反応させて得られる。
【0118】
−−−活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体(プレポリマー)−−−
前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体(以下、「プレポリマー」と称することがある。)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオール樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、これらの誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、溶融時の高流動性及び透明性の点で、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0119】
前記プレポリマーが有する活性水素基含有化合物と反応可能な部位としては、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、カルボンキシル基、−COClで示される官能基などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、イソシアネート基が好ましい。
【0120】
前記プレポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高分子成分の分子量を調節し易く、乾式トナーにおけるオイルレス低温定着特性、特に、定着用加熱媒体への離型オイル塗布機構が無い場合でも、良好な離型性及び定着性を確保できる点で、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーが好ましい。
【0121】
−−−活性水素基含有化合物−−−
前記活性水素基含有化合物は、前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体が、水系媒体中で伸長反応、架橋反応等する際の伸長剤、架橋剤等として作用する。
【0122】
前記活性水素基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0123】
前記活性水素基含有化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体がイソシアネート基を含有するポリエステル樹脂である場合には、該ポリエステル樹脂と伸長反応、架橋反応等により高分子量化できる点で、アミン類が好ましい。
前記アミン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアミン、三価以上のアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸、これらのアミノ基をブロックしたものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ジアミン、ジアミンと少量の三価以上のアミンとの混合物が好ましい。
【0124】
前記ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミンなどが挙げられる。前記芳香族ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。前記脂環式ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。前記脂肪族ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。
前記三価以上のアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
前記アミノアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。
前記アミノメルカプタンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。
前記アミノ酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。
前記アミノ基をブロックしたものとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ基を、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類でブロックすることにより得られるケチミン化合物、オキサゾリゾン化合物などが挙げられる。
【0125】
−−イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂−−
前記イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂(以下、「イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー」と称することがある)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオールとポリカルボン酸を重縮合することにより得られる活性水素基を有するポリエステル樹脂とポリイソシアネートとの反応生成物などが挙げられる。
【0126】
−−−−ポリオール−−−−
前記ポリオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、三価以上のアルコール、ジオールと三価以上のアルコールの混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ジオール、ジオールと少量の三価以上のアルコールとの混合物が好ましい。
【0127】
前記ジオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキレングリコール、オキシアルキレン基を有するジオール、脂環式ジオール、脂環式ジオールにアルキレンオキシドを付加したジオール、ビスフェノール類、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
前記アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられる。
前記オキシアルキレン基を有するジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
前記脂環式ジオールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなどが挙げられる。
前記脂環式ジオールにアルキレンオキシドを付加したジオールとしては、例えば、前記脂環式ジオールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したジオールが挙げられる。
前記ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどが挙げられる。
前記ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物としては、例えば、前記ビスフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したジオールなどが挙げられる。
なお、前記アルキレングリコールの炭素数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2〜12が好ましい。
これらの中でも、炭素数が2〜12であるアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物と炭素数が2〜12のアルキレングリコールとの混合物がより好ましい。
【0128】
前記三価以上のアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、三価以上の脂肪族アルコール、三価以上のポリフェノール類、三価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
前記三価以上の脂肪族アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。
前記三価以上のポリフェノール類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどが挙げられる。
前記三価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物としては、三価以上のポリフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したものなどが挙げられる。
前記ジオールと前記三価以上のアルコールを混合して用いる場合、ジオールに対する三価以上のアルコールの質量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01質量%〜10質量%が好ましく、0.01質量%〜1質量%がより好ましい。
【0129】
−−−−−ポリカルボン酸−−−−−
前記ポリカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジカルボン酸、三価以上のカルボン酸、ジカルボン酸と三価以上のカルボン酸の混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ジカルボン酸、ジカルボン酸と少量の三価以上のポリカルボン酸との混合物が好ましい。
【0130】
前記ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、二価のアルカン酸、二価のアルケン酸、芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
前記二価のアルカン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などが挙げられる。
前記二価のアルケン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数4〜20の二価のアルケン酸が好ましい。前記炭素数4〜20の二価のアルケン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
前記芳香族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。前記炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
【0131】
前記三価以上のカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、三価以上の芳香族カルボン酸などが挙げられる。
前記三価以上の芳香族カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数9〜20の三価以上の芳香族カルボン酸が好ましい。前記炭素数9〜20の三価以上の芳香族カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。
【0132】
前記ポリカルボン酸として、ジカルボン酸、三価以上のカルボン酸、及びジカルボン酸と三価以上のカルボン酸との混合物のいずれかの酸無水物又は低級アルキルエステルを用いることもできる。
前記低級アルキルエステルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなどが挙げられる。
前記ジカルボン酸と前記三価以上のカルボン酸とを混合して用いる場合、ジカルボン酸に対する三価以上のカルボン酸の質量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01質量%〜10質量%が好ましく、0.01質量%〜1質量%がより好ましい。
【0133】
前記ポリオールと前記ポリカルボン酸とを重縮合させる際の、前記ポリカルボン酸のカルボキシル基に対するポリオールの水酸基の当量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1〜2が好ましく、1〜1.5がより好ましく、1.02〜1.3が特に好ましい。
【0134】
前記イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー中のポリオール由来の構成単位の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%〜40質量%が好ましく、1質量%〜30質量%がより好ましく、2質量%〜20質量%が特に好ましい。
前記含有量が、0.5質量%未満であると、耐高温オフセット性が低下し、トナーの耐熱保存性と低温定着性との両立が困難となることがあり、40質量%を超えると、低温定着性が低下することがある。
【0135】
−−−−ポリイソシアネート−−−−
前記ポリイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、イソシアヌレート類、これらをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたものなどが挙げられる。
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトカプロン酸メチル、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネートなどが挙げられる。
前記脂環式ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
前記芳香族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジフェニル、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルジフェニル、4,4’−ジイソシアナト−3−メチルジフェニルメタン、4,4’−ジイソシアナト−ジフェニルエーテルなどが挙げられる。
前記芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
前記イソシアヌレート類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリス(イソシアナトアルキル)イソシアヌレート、トリス(イソシアナトシクロアルキル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0136】
前記ポリイソシアネートと、水酸基を有するポリエステル樹脂を反応させる場合、前記ポリエステル樹脂の水酸基に対する前記ポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1〜5が好ましく、1.2〜4がより好ましく、1.5〜3が特に好ましい。前記当量比が、1未満であると、耐オフセット性が低下することがあり、5を超えると、低温定着性が低下することがある。
【0137】
前記イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー中のポリイソシアネート由来の構成単位の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%〜40質量%が好ましく、1質量%〜30質量%がより好ましく、2質量%〜20質量%が特に好ましい。前記含有量が、0.5質量%未満であると、耐高温オフセット性が低下することがあり、40質量%を超えると、低温定着性が低下することがある。
【0138】
前記イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーが一分子当たりに有するイソシアネート基の平均数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1以上が好ましく、1.2〜5がより好ましく、1.5〜4が特に好ましい。前記平均数が、1未満であると、ウレア変性ポリエステル樹脂の分子量が低くなり、耐高温オフセット性が低下することがある。
【0139】
前記多価アルコール成分中にビスフェノール類のプロピレンオキサイド付加物を50モル%以上含有し、特定の水酸基価と酸価を有するポリエステル樹脂に対する、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーの質量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5未満/95超〜25超/75未満が好ましく、10/90〜25/75がより好ましい。前記質量比が、5/95未満であると、耐高温オフセット性が低下することがあり、25/75を超えると、低温定着性や画像の光沢性が低下することがある。
【0140】
<<<着色剤>>>
前記着色剤としては、特に制限はなく、公知の染料、顔料等、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントレッド、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトポンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0141】
前記着色剤の前記トナーに対する含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1質量%〜15質量%が好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましい。前記含有量が、1質量%未満であると、トナーの着色力の低下が見られ、15質量%を超えると、トナー中での顔料の分散不良、着色力の低下、及びトナーの電気特性の低下を招くことがある。
【0142】
前記着色剤としては、前記樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂、スチレン又はその置換体の重合体(ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等)、スチレン系共重合体(スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレンービニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレンーアクリロニトリルーインデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等)、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0143】
前記マスターバッチの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記マスターバッチ用の樹脂、前記着色剤、及び有機溶剤等を高せん断力で混合乃至混練して製造する方法などが挙げられる。なお、前記有機溶剤は、前記着色剤と前記結着樹脂との相互作用を高めるために添加される。また、前記マスターバッチの他の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができ、乾燥させる必要がない点で、フラッシング法と呼ばれる着色剤の水を含んだ水性ペーストを、前記結着樹脂及び有機溶剤とともに混合乃至混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去して製造する方法が好ましい。なお、前記混合乃至混練する際には、3本ロールミル等の高せん断分散装置が好ましく用いられる。
【0144】
<<<その他の成分>>>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、離型剤、層状無機鉱物、磁性材料、クリーニング性向上剤、流動性向上剤、帯電制御剤などが挙げられる。
【0145】
−離型剤−
前記離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、植物系ワックス(カルナバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等)、動物系ワックス(ミツロウ、ラノリン等)、鉱物系ワックス(オゾケライト、セルシン等)、石油ワックス(パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等)等のロウ類及びワックス類;合成炭化水素ワックス(フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等)、合成ワックス(エステル、ケトン、エーテル等)等の天然ワックス以外のもの;1,2−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド;低分子量の結晶性高分子であるポリメタクリル酸n−ステアリル、ポリメタクリル酸n−ラウリル等のポリアクリレートのホモポリマー又はコポリマー(アクリル酸n−ステアリルーメタクリル酸エチル共重合体等)等の側鎖に長鎖アルキル基を有する結晶性高分子;などが挙げられる。これらの中でも、定着ローラとトナー界面の間で離型剤として効果的に作用することができるため、定着ローラにオイル等の離型剤を塗布しなくても高温耐オフセット性を向上させることができる点で、融点が50℃〜120℃のワックスが好ましい。
【0146】
前記離型剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃〜120℃が好ましく、60℃〜90℃がより好ましい。前記融点が、50℃未満であると、保存性に悪影響を与えることがあり、120℃を超えると、低温での定着時にコールドオフセットを起こし易いことがある。なお、前記離型剤の融点は、示差走査熱量計(TG−DSCシステム、TAS−100、理学電機社製)を用いて、最大吸熱ピークを測定することにより求められる。
【0147】
前記離型剤の溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記離型剤の融点より20℃高い温度での測定値として、5cps〜1,000cpsが好ましく、10cps〜100cpsがより好ましい。前記溶融粘度が、5cps未満であると、離型性が低下することがあり、1,000cpsを超えると、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果が得られなくなることがある。
【0148】
前記離型剤の前記トナーにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40質量%以下が好ましく、3質量%〜30質量%がより好ましい。前記含有量が、40質量%を超えると、トナーの流動性が悪化することがある。
【0149】
前記離型剤は、前記トナー母体粒子中に分散した状態で存在することが好ましく、そのためには、前記離型剤と前記結着樹脂とは相溶しないことが好ましい。前記離型剤が、前記トナー母体粒子中に微分散する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トナー製造時の混練の剪断力をかけて分散させる方法などが挙げられる。
【0150】
前記離型剤の分散状態は、トナー粒子の薄膜切片を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより確認することができる。前記離型剤の分散径は、小さい方が好ましいが、小さすぎると定着時の染み出しが不十分な場合がある。したがって、倍率1万倍で前記離型剤を確認することができれば、前記離型剤が分散した状態で存在していることになる。1万倍で前記離型剤が確認できない場合、微分散していたとしても、定着時の染出しが不十分となる。
【0151】
−層状無機鉱物−
前記層状無機鉱物としては、数nmの厚みの層が積層された無機鉱物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、アタパルジャイト、セピオライト、これらの混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、トナーを造粒する際に異形化でき、電荷調節機能を果たすと共に、低温定着に優れる点で、変性層状無機鉱物が好ましく、モンモリロナイト系の基本結晶構造を持つ層状無機鉱物を有機カチオンで変性させた変性層状無機鉱物がより好ましく、トナー特性に影響を与えず、容易に粘度調整ができる点で、有機変性モンモリロナイト、ベントナイトが特に好ましい。
【0152】
前記変性層状無機化合物は、前記層状無機鉱物を少なくとも一部を有機物イオンにより変性させることが好ましい。前記層状無機鉱物を少なくとも一部を有機物イオンで変性することにより、適度な疎水性を持ち、トナー組成物及び/又はトナー組成物前駆体を含む油相が非ニュ−トニアン粘性を持ち、トナーを異形化することができる。
【0153】
前記変性層状無機鉱物の前記トナー母体粒子中における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05質量%〜5質量%が好ましい。
【0154】
−磁性材料−
磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライトなどが挙げられる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
【0155】
−クリーニング性向上剤−
前記クリーニング性向上剤としては、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためにトナーに添加される剤であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子などが挙げられる。前記ポリマー微粒子の体積平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、0.01μm〜1μmがより好ましい。
【0156】
−流動性向上剤−
流動性向上剤とは、表面処理を行って疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止する剤のことであり、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが挙げられる。なお、前記流動性向上剤を、シリカ、酸化チタン等により表面処理してもよく、この場合、疎水性シリカ、疎水性酸化チタン等として使用することが好ましい。
【0157】
−帯電制御剤−
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系化合物などが挙げられる。
【0158】
前記帯電制御剤の商品名としては、例えば、ニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージNEG VP2036、NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、LR−147(以上、日本カーリット社製)などが挙げられる。
【0159】
前記帯電制御剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.2質量部〜5質量部がより好ましい。前記含有量が、10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招くことがある。前記帯電制御剤は、マスターバッチ、樹脂とともに溶融混練した後、溶解分散させてもよく、前記有機溶剤に、直接溶解乃至分散する際に加えてもよく、トナー表面にトナー粒子を作成した後に固定化させてもよい。
【0160】
前記トナー母体粒子は、前記変性ポリエステル樹脂、前記未変性ポリエステル樹脂及び前記着色剤を含有し、かつ前記トナー母体粒子は、前記変性ポリエステル樹脂の前駆体である前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体、前記活性水素基含有化合物、前記未変性ポリエステル樹脂、並びに前記着色剤を有機溶剤中に添加し乳化乃至分散させて乳化乃至分散液を得た後、前記乳化乃至分散液中で前記活性水素基含有化合物及び前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体を伸長乃至架橋反応させて得られることが好ましい。
【0161】
<<トナーの製造方法>>
前記トナーの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粉砕法により製造する方法、重合法により製造する方法などが挙げられる。これらの中でも、トナーを小粒径化することができる点で、重合法により製造する方法が好ましい。
【0162】
<<粉砕法>>
前記粉砕法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トナー材料を溶融乃至混練し、粉砕乃至分級することによりトナー母体粒子を製造する方法などが挙げられる。なお、前記トナーの平均円形度を0.97〜1.0にする目的で、得られたトナーの母体粒子に対し、機械的衝撃力を与えて形状を制御してもよい。この場合、該機械的衝撃力を与える方法としては、例えば、ハイブリタイザー、メカノフュージョンなどの装置を用いる方法などが挙げられる。また、このようにして製造されたトナー母体粒子に対し、外添剤で処理することにより、本発明のトナーが得られる。
【0163】
<<重合法>>
前記重合法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、懸濁重合法、溶解懸濁重合法、乳化重合凝集法などが挙げられる。これらの中でも、乳化重合凝集法が好ましく、溶解懸濁法がより好ましい。
【0164】
−溶解懸濁法−
前記溶解懸濁法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水系造粒により製造する方法が好ましく、油相調製工程、水相調製工程、乳化乃至分散工程、溶剤除去工程、洗浄乃至乾燥工程、及び外添剤処理工程を含むことにより製造する方法がより好ましい。
【0165】
前記溶解懸濁法の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少なくとも前記結着樹脂及び前記着色剤を有機溶剤中に溶解乃至分散させて得られるトナー材料の溶解乃至分散液を水相中に添加し乳化乃至分散させて乳化乃至分散液を得た後、前記乳化乃至分散液中から前記有機溶剤を除去して得られるトナー母体粒子と、外添剤とを混合して、トナーを製造する方法が好ましい。
【0166】
前記溶解懸濁法の中でも、エステル伸長法が好ましく、該エステル伸長法の具体例としては、少なくとも前記活性水素基含有化合物、前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体、前記結着樹脂、及び前記着色剤を有機溶剤中に溶解乃至分散させて得られるトナー材料の溶解乃至分散液を、水相中に添加し乳化乃至分散させて乳化乃至分散液を得た後、前記乳化乃至分散液中で前記活性水素基含有化合物及び前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体を伸長乃至架橋反応させ、該乳化乃至分散液から前記有機溶剤を除去して得られるトナー母体粒子と、外添剤とを混合して、トナーを製造する方法が好ましい。
【0167】
−−油相調製工程−−
前記油相調製工程は、少なくとも前記結着樹脂、及び前記着色剤などを含むトナー材料を、有機溶剤に溶解乃至分散させて油相(トナー材料の溶解乃至分散液)を調製する工程である。また、前記トナー材料における前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体な部位を有する重合体以外の成分は、後述する水相の調製において、水系媒体中に添加混合してもよいし、トナー材料の溶解乃至分散液を水系媒体に添加する際に、溶解乃至分散液と共に水系媒体に添加してもよい。
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、溶剤除去が容易である点で、沸点が150℃未満の有機溶剤が好ましい。前記沸点が150℃未満の有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、酢酸エチル、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等が好ましく、酢酸エチルが好ましい。前記有機溶剤の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー材料100質量部に対し40質量部〜300質量部が好ましく、60質量部〜140質量部がより好ましく、80質量部〜120質量部が特に好ましい。
【0168】
−−水相調製工程−−
前記水相調製工程は、水相(水系媒体)を調製する工程である。前記水相としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、水と混和可能な溶剤、これらの混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水が好ましい。前記混和可能な溶剤としては、例えば、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブ(登録商標)等)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)などが挙げられる。
【0169】
−−乳化乃至分散工程−−
前記乳化乃至分散工程は、前記油相を、前記水相中に分散させて乳化乃至分散物を得る工程である。前記トナー材料は、必ずしも、前記水相中で粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後、添加してもよく、例えば、前記着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。前記トナー材料100質量部に対する水相の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50質量部〜2,000質量部が好ましく、100質量部〜1,000質量部がより好ましい。前記使用量が、50質量部未満であると、前記トナー材料の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られないことがあり、2,000質量部を超えると、経済的でないことがある。また、必要に応じて、分散剤を用いることもできる。分散剤を用いたほうが、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。
【0170】
前記乳化乃至分散工程において使用される分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤、フルオロアルキル基を有するカチオン界面活性剤、無機化合物(リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等)、微粒子ポリマー(MMAポリマー微粒子1μm、MMAポリマー微粒子3μm、スチレン微粒子0.5μm、スチレン微粒子2μm、スチレン−アクリロニトリル微粒子ポリマー1μm等)などが挙げられる。これらの中でも、非常に少量でその効果をあげることができる点で、フルオロアルキル基を有する界面活性剤が好ましい。
【0171】
前記分散剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、樹脂微粒子分散液の場合、0.01質量%〜1質量%が好ましく、0.02質量%〜0.5質量%がより好ましく、0.1質量%〜0.2質量%が特に好ましい。前記含有量が、0.01質量%未満の場合、乳化乃至分散物のpHが十分に塩基性でない状態で凝集が生じることがある。前記分散剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、着色剤分散液又は離型剤分散液の場合、0.01質量%〜10質量%が好ましく、0.1質量%〜5質量%がより好ましく、0.5質量%〜0.2質量%が特に好ましい。前記含有量が、0.01質量%未満では、凝集時に各粒子間の安定性が異なるため、特定粒子の遊離が生じることがあり、10質量%を超えると、粒子の粒度分布が広くなったり、粒子径の制御が困難になることがある。
【0172】
前記分散剤の商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113、S−l21(以上、旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−l29、FC−135(以上、住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−l02、DS−202(以上、ダイキン工業社製)、メガファックF−ll0、F−l20、F−113、F−150、F−191、F−812、F−824、F−833(以上、大日本インキ社製)、エクトップEF−102、l03、104、105、112、123A、123B、132、306A、501、201、204、(以上、トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F−300、F150(以上、ネオス社製)、SGP、SGP−3G(以上、総研社製)、PB−200H(花王社製)、テクノポリマーSB(積水化成品工業社製)、ミクロパール(積水ファインケミカル社製)などが挙げられる。
【0173】
前記分散剤を使用した場合には、該分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、トナーの帯電面の点で、反応後、洗浄除去することが好ましい。更に、粒度分布がシャープとなり、トナー材料の粘度を低くする点で、ポリエステルプレポリマーの反応後の変性ポリエステル樹脂を可溶する溶剤を使用することが好ましい。前記溶剤としては、除去が容易である点で、沸点が100℃未満の揮発性の溶剤が好ましく、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、メタノールなどの水混和性溶剤が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。
【0174】
前記乳化乃至分散工程において使用される分散機としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機などが挙げられる。これらの中でも、分散体(油滴)の粒子径を2μm〜20μmに制御することができる点で、高速せん断式分散機が好ましい。
前記高速せん断式分散機を用いた場合、回転数、分散時間、分散温度等の条件は、目的に応じて適宜選択することができる。
前記回転数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1,000rpm〜30,000rpmが好ましく、5,000rpm〜20,000rpmがより好ましい。
前記分散時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、バッチ方式の場合、0.1分間〜5分間が好ましい。
前記分散温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、加圧下において、0℃〜150℃が好ましく、40℃〜98℃がより好ましい。なお、一般に、前記分散温度が高温である方が分散は容易である。
【0175】
−−溶剤除去工程−−
前記溶剤除去工程は、前記乳化乃至分散物(乳化スラリー等の分散液)から有機溶剤を除去する工程である。前記有機溶剤を除去する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、反応系全体を徐々に昇温させて油滴中の有機溶剤を蒸発させる方法、分散液を乾燥雰囲気(空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体)中に噴霧(スプレードライヤー、ベルトドライアー、ロータリーキルン等)して油滴中の有機溶剤を除去する方法などが挙げられる。この方法により短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。前記有機溶剤が除去されると、トナー母体粒子が形成される。
【0176】
−−洗浄乃至乾燥工程−−
前記洗浄乃至乾燥工程は、前記トナー母体粒子を洗浄乃至乾燥する工程である。前記トナー母体粒子は、更に分級等を行ってもよい。前記分級は、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離などにより、微粒子部分を取り除くことにより行ってもよいし、乾燥後に分級操作を行ってもよい。なお、得られた不要の微粒子又は粗粒子は、再び微粒子の形成に用いることができる。その際、微粒子又は粗粒子は、ウェット状態でも構わない。
【0177】
−−外添剤処理工程−−
前記外添剤処理工程は、乾燥後の前記トナー母体粒子と、前記外添剤とを混合して処理する工程である。前記トナー母体粒子と、前記外添剤とを混合することにより、前記トナーが得られる。前記混合に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)が好ましい。なお、前記トナー母体粒子の表面から前記外添剤等の粒子が脱離することを抑制するために、機械的衝撃力を印加してもよい。前記機械的衝撃力を印加する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高速で回転する羽根を用いて混合物に衝撃力を印加する方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させて粒子同士又は粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などが挙げられる。前記方法に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して粉砕エアー圧力を下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などが挙げられる。
【0178】
<<トナーの特性>>
前記トナーにおける体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.30以下が好ましく、1.00〜1.30がより好ましい。前記比(Dv/Dn)が、1.00未満であると、現像装置における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力の低下やクリーニング性の悪化につながり易くなることがある。前記比(Dv/Dn)が、1.30を超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
【0179】
前記トナーの平均円形度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.95〜0.98が好ましい。前記平均円形度が、0.95未満であると、現像時の画像均一性が悪化し、静電潜像担持体から中間転写体又は中間転写体から記録材へのトナー転写効率が低下し均一転写が得られなくなることがある。溶解懸濁法による製造方法は、水系媒体中で乳化処理をしてトナーを作製するものであり、特にカラートナーにおける小粒径化や、平均円形度が上記の範囲の形状を得るために効果的である。
前記平均円形度の測定は、例えば、フロー式粒子像分析装置(FPIA−2000;シスメックス社製)を用いて測定を行うことができる。所定の容器に、予め不純固形物を除去した水100mL〜150mLを入れ、分散剤として界面活性剤0.1mL〜0.5mLを加え、更に、測定試料0.1g〜9.5g程度を加える。試料を分散した懸濁液を超音波分散器で約1分間〜3分間、分散処理を行ない、分散液濃度を3,000個/μL〜10,000個/μLにしてトナーの形状及び分布を測定する。
【0180】
<現像剤の製造方法>
前記現像剤の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記静電潜像現像用キャリアと、前記トナーとを混合して、タービュラーミキサーにより攪拌することにより製造する方法などが挙げられる。
【0181】
(補給用現像剤)
前記補給用現像剤は、上述した本発明の静電潜像現像用キャリアと、前記トナーとを含む。また、前記補給用現像剤は、現像装置内の余剰の現像剤を排出しながら画像形成を行う画像形成装置に適用することができる。また、前記補給用現像剤を用いる現像装置は、極めて長期に渡って安定した画像品質が得ることができる。即ち、前記補給用現像剤を用いた画像形成装置は、現像装置内の劣化したキャリアと、補給用現像剤中の劣化していないキャリアを入れ替え、長期間に渡って帯電量を安定に保つことができるため、安定した画像を得ることができる。本方式は、特に高画像面積印字時に有効である。高画像面積印字時の劣化は、キャリアへのトナースペントによるキャリア帯電能力低下が主なキャリアの劣化であるが、本方式を用いることで、高画像面積時には、キャリア補給量も多くなるため、劣化したキャリアが入れ替わる頻度が高くなる。
前記補給用現像剤中のキャリアの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3質量%以上30質量%未満が好ましい。
補給用現像剤の混合比率は、キャリア1質量部に対してトナーを2質量部〜50質量部、好ましくは、5質量部〜12質量部の配合割合とすることが好ましい。トナーが2質量部未満の場合には、補給キャリア量が多すぎ、キャリア供給過多となり現像装置中のキャリア濃度が高くなりすぎるため、トナーの帯電量が増加しやすい。又、トナーの帯電量が上がることにより、現像能力が下がり画像濃度が低下してしまう。また50質量部を超えると、補給用現像剤中のキャリア割合が少なくなるため、画像形成装置中のキャリアの入れ替わりが少なくなり、キャリア劣化に対する効果が期待できなくなる。
【0182】
(現像装置)
前記現像装置は、本発明の現像剤を備えてなり、必要に応じて適宜その他の構造を有してなる。前記現像剤が、形状が容易に変形する収納容器に充填されてなり、前記補給用現像剤を吸引ポンプで吸引して前記現像装置に供給する現像剤補給装置を有することが好ましい。
【0183】
図18は、本発明における現像装置の一例を表す図である。潜像担持体である感光体20に対向して配設された現像装置40は、現像剤担持体としての現像スリーブ41、現像剤収容部材42、規制部材としてのドクターブレード43、支持ケース44等からなる。
感光体20側に開口を有する支持ケース44には、内部にトナー21を収容するトナー収容部としてのトナーホッパー45が接合されている。トナーホッパー45に隣接した、トナー21と、キャリア23からなる現像剤を収容する現像剤収容部46には、トナー21とキャリア23を撹拌し、トナー21に摩擦/剥離電荷を付与するための、現像剤撹拌機構47が設けられている。トナーホッパー45の内部には、図示しない駆動手段によって回動されるトナー供給手段としてのトナーアジテータ48及びトナー補給機構49が配設されている。トナーアジテータ48及びトナー補給機構49は、トナーホッパー45内のトナー21を現像剤収容部46に向けて撹拌しながら送り出す。感光体20とトナーホッパー45との間の空間には、現像スリーブ41が配設されている。図示を省略している駆動手段で図の矢印方向に回転駆動される現像スリーブ41は、キャリア23による磁気ブラシを形成するために、その内部に現像装置40に対して相対位置不変に配設された、磁界発生手段としての図示しない磁石を有する。現像剤収容部材42の、支持ケース44に取り付けられた側と対向する側には、ドクターブレード43が一体的に取り付けられている。ドクターブレード43は、この例では、その先端と現像スリーブ41の外周面との間に一定の隙間を保った状態で配設されている。
【0184】
(画像形成装置及び画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、上述した本発明の静電潜像現像用キャリア及びトナーを含む現像剤を用いて現像してトナー像を形成する、前記現像剤を収容する現像手段と、前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着手段とを含む。前記現像手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、磁気ブラシが形成された現像剤を用いて現像し、トナー像を形成する手段が好ましい。前記現像手段としては、例えば、前記現像装置などが挙げられる。
【0185】
本発明の画像形成方法は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、上述した本発明の静電潜像現像用キャリア及びトナーを含む現像剤を用いて現像し、トナー像を形成する現像工程と、前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着工程とを含む。前記現像工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、磁気ブラシが形成された現像剤を用いて現像し、トナー像を形成する工程が好ましい。
【0186】
本発明の画像形成装置の実施形態について、図19を用いて説明する。
図19に示されるように、まず、静電潜像担持体20が所定の周速度で回転駆動され、帯電装置32により、静電潜像担持体20の周面が正又は負の所定電位に均一に帯電される。次に、露光装置33により静電潜像担持体20の周面が露光され、静電潜像が順次形成される。更に、静電潜像担持体20の周面に形成された静電潜像は、現像装置40により、本発明の静電潜像現像用キャリア及びトナーを含む現像剤を用いて現像され、トナー像が形成される。次に、静電潜像担持体20の周面に形成されたトナー像は、静電潜像担持体20の回転と同期され、給紙部から静電潜像担持体20と転写装置50との間に給紙された転写紙に、順次転写される。更に、トナー像が転写された転写紙は、静電潜像担持体20の周面から分離されて定着装置に導入されて定着された後、複写物(コピー)として、画像形成装置の外部へプリントアウトされる。一方、トナー像が転写された後の静電潜像担持体20の表面は、クリーニング装置60により、残留したトナーが除去されて清浄化された後、除電装置70により除電され、繰り返し画像形成に使用される。
【0187】
本発明の画像形成装置は、本発明の補給用現像剤を前記現像装置に補給するとともに、前記現像装置内の余剰となった現像剤を排出しながら現像を行うことが好ましい。また、前記補給用現像剤が、形状が容易に変形する収納容器に充填されてなり、前記補給用現像剤を吸引ポンプで吸引して前記現像装置に供給する現像剤補給装置を備えることが好ましい。
【0188】
図20は、本発明の画像形成装置の他の一例を示す図である。感光体20は、導電性支持体上に少なくとも感光層が設けられており、駆動ローラ24a、24bにより駆動され、帯電装置32による帯電、露光装置33による像露光、現像装置40による現像、コロナ帯電器を有する転写装置50を用いる転写、クリーニング前露光光源26によるクリーニング前露光、ブラシ状クリーニング手段64及びクリーニングブレード61によるクリーニング、除電装置70による除電が繰り返し行われる。感光体20(勿論この場合は支持体が透光性である)に支持体側よりクリーニング前露光が行われる。
【0189】
(プロセスカートリッジ)
本発明に関するプロセスカートリッジは、静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、上述した本発明の静電潜像現像用キャリア及びトナーを含む現像剤を用いて現像する現像手段とを有し、画像形成装置に支持される。
【0190】
本発明におけるプロセスカートリッジの実施形態について、図21を用いて説明する。
図21に示されるように、プロセスカートリッジ10は、静電潜像担持体11、該静電潜像担持体を帯電する帯電装置12、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を本発明の現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像装置13、及び該静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写した後、該静電潜像担持体上に残留したトナーを除去するクリーニング装置14を有し、複写機、プリンタ等の画像形成装置の本体に対して着脱可能である。
【0191】
前記プロセスカートリッジとしては、余剰の現像剤を排出し、新たに現像剤が補充されるものであることが好ましく、静電潜像を担持する静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体上の静電潜像を可視像化する現像装置とが一体に支持されてなり、前記補給用現像剤を前記現像装置に補給するとともに、前記現像装置から現像剤を排出する画像形成装置本体に着脱可能に備えられることが好ましい。また、プロセスカートリッジ内の現像装置が、前記現像装置内現像剤を有することが好ましい。
【実施例】
【0192】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、実施例及び比較例において測定された算術平均表面粗さRa1及びRa2、被覆層の平均層厚差、微粒子の粉体比抵抗値、芯材の重量平均粒径、微粒子の平均粒径、トナーの平均粒径などは、上述した測定方法により測定して得られた値である。
【0193】
<製造例1−1:芯材1の製造>
MnCO、Mg(OH)、Fe、及びSrCOの粉体を秤量し、混合して混合粉を得た。
前記混合粉を、加熱炉により850℃、1時間、大気雰囲気下で仮焼し、得られた仮焼物を冷却後、粉砕して、平均粒径3μm以下の粉体とした。
前記粉体に分散剤(1質量%)及び水を加えてスラリーとし、このスラリーをスプレードライヤーに供給して造粒し、平均粒径約40μmの造粒物を得た。
この造粒物を焼成炉に装填し、窒素雰囲気下で、1,180℃、4時間焼成した。得られた焼成物を解砕機で解砕した後、篩い分けにより粒度調整を行い、体積平均粒径約35μmの球形フェライト粒子(芯材1)を得た。芯材1の成分分析を行ったところ、MnO:40.0mol%、MgO:10.0mol%、Fe:50mol%、SrO:0.4mol%であった。また、算術平均表面粗さRa2は、0.63μmであった。
【0194】
<製造例1−2:芯材2の製造>
製造例1と同様に、平均粒径約40μmの造粒物を得た。前記造粒物を焼成炉に装填し、窒素雰囲気下で、1,120℃、4時間焼成した。得られた焼成物を解砕機で解砕した後、篩い分けにより粒度調整を行い、体積平均粒径約35μmの球形フェライト粒子(芯材2)を得た。
また、算術平均表面粗さRa2は、0.85μmであった。
【0195】
<製造例1−3:芯材3の製造>
製造例1と同様にして平均粒径約40μmの造粒物を得た。前記造粒物を焼成炉に装填し、窒素雰囲気下で、1,080℃、4時間焼成した。得られた焼成物を解砕機で解砕した後、篩い分けにより粒度調整を行い、体積平均粒径約35μmの球形フェライト粒子(芯材3)を得た。このときの算術平均表面粗さRa2は、1.03μmであった。
【0196】
<製造例1−4:芯材4の製造>
MnCO、Mg(OH)、Fe、及びCaCOの粉体を秤量し、混合して混合粉を得た。
前記混合粉を、加熱炉により850℃、1時間、大気雰囲気下で仮焼し、得られた仮焼物を冷却後、粉砕して、平均粒径3μm以下の粉体とした。
前記粉体に分散剤(1質量%)及び水を加えてスラリーとし、このスラリーをスプレードライヤーに供給して造粒し、平均粒径約40μmの造粒物を得た。
前記造粒物を焼成炉に装填し、窒素雰囲気下で、1,200℃、5時間焼成した。
得られた焼成物を解砕機で解砕した後、篩い分けにより粒度調整を行い、体積平均粒径約35μmの球形フェライト粒子(芯材4)を得た。
芯材4の成分分析を行ったところ、MnO:44.3mol%、MgO:0.7mol%、Fe:53mol%、CaO:2.0mol%であった。また、算術平均表面粗さRa2は、0.68μmであった。
【0197】
<製造例1−5:芯材5の製造>
MnCO、Mg(OH)、及びFeを秤量し、混合して混合粉を得た。
前記混合粉を、加熱炉により900℃、3時間、大気雰囲気下で仮焼し、得られた仮焼物を冷却後、粉砕して、平均粒径1μmの粉体とした。
前記粉体に分散剤(1質量%)及び水を加えてスラリーとし、このスラリーをスプレードライヤに供給して造粒し、平均粒径約40μmの造粒物を得た。
前記造粒物を焼成炉に装填し、窒素雰囲気下で、1,250℃、5時間焼成した。
得られた焼成物を解砕機で解砕した後、篩い分けにより粒度調整を行い、体積平均粒径約35μmの球形フェライト粒子(芯材5)を得た。
芯材5の成分分析を行ったところ、MnO:46.2mol%、MgO:0.7mol%、Fe:53mol%であった。また、算術平均表面粗さRa2は、0.45μmであった。
【0198】
<製造例2−1:導電性微粒子1の製造>
酸化アルミニウム(住友化学株式会社製、AKP−30)100gを水1リットルに分散させ懸濁液とし、この液を70℃に加温した。その懸濁液に塩化第二錫100g及び五酸化りん3gを2N塩酸1リットルに溶かした溶液と12質量%アンモニア水とを懸濁液のpHが7〜8になるように2時間かけて滴下した。滴下後、懸濁液を濾過、洗浄して得られたケーキを110℃で乾燥した。次いで、この乾燥粉末を窒素気流中、500℃で1時間処理して導電性微粒子1を得た。
得られた導電性微粒子1の体積固有抵抗値は8Ω・cmであった。
【0199】
<製造例2−2:導電性微粒子2の製造>
酸化アルミニウム(住友化学株式会社製、AKP−30)100gを水1リットルに分散させ懸濁液とし、この液を70℃に加温した。その懸濁液に塩化第二錫10g及び五酸化りん0.30gを2N塩酸100mLに溶かした溶液と12質量%アンモニア水とを懸濁液のpHが7〜8になるように12分間かけて滴下した。滴下後、懸濁液を濾過、洗浄して得られたケーキを110℃で乾燥した。次いで、この乾燥粉末を窒素気流中で500℃1時間処理して導電性微粒子2を得た。
得られた導電性微粒子2は、体積平均粒径が300nmで、体積固有抵抗が1,200Ω・cmであった。
【0200】
<製造例2−3:導電性微粒子3の製造>
酸化アルミニウム(住友化学株式会社製、AKP−30)100gを水1リットルに分散させ懸濁液とし、この液を70℃に加温した。その懸濁液に塩化第二錫150g及び五酸化りん4.5gを2N塩酸1.5リットルに溶かした溶液と12質量%アンモニア水とを懸濁液のpHが7〜8になるように3時間かけて滴下した。滴下後、懸濁液を濾過、洗浄して得られたケーキを110℃で乾燥した。次いで、この乾燥粉末を窒素気流中、500℃で1時間処理して導電性微粒子3を得た。
得られた導電性微粒子3は、体積平均粒径が300nmで、体積固有抵抗が3Ω・cmであった。
【0201】
<製造例2−4:導電性微粒子4の製造>
BET表面積50m/gの酸化スズ微粉末(一次粒径50nm)を窒素雰囲気下、アセトンガスと接触させながら加熱し、300℃の温度下で2時間保持することによって表面改質処理を行い、導電性微粒子4を得た。
【0202】
<導電性微粒子5>
導電性微粒子5としてBlack Pearls−2000(Cabot社製、比表面積1,500mm/g、アスペクト比3)を用いた。
【0203】
<製造例3−1:樹脂1の合成>
撹拌機付きフラスコにトルエン300gを投入して、窒素ガス気流下で90℃まで昇温した。次いで、これに下記構造式
CH=CMe−COO−C−Si(OSiMe
(上記構造式中、Meはメチル基である)で示される3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン84.4g(200mmol、サイラプレーン TM−0701T、チッソ株式会社製)、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン39g(150mmol)、メタクリル酸メチル65.0g(650mmol)、及び2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.58g(3mmol)の混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、更に、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.06g(0.3mmol)をトルエン15gに溶解した溶液を加えて(2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリルの合計量0.64g、3.3mmol)、90℃〜100℃で3時間混合してラジカル共重合させてメタクリル系共重合体(樹脂1)を得た。
得られた樹脂1の重量平均分子量は、33,000であった。次いで、この樹脂1の不揮発分が25質量%になるようにトルエンで希釈した。このようにして得られた樹脂1溶液の粘度は、8.8mm/sであり、比重は、0.91であった。
【0204】
<製造例3−2:樹脂2の合成>
製造例3−1において、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン39g(150mmol)を3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン37.2g(150mmol)に代えた以外は、製造例3−1と同様にして、ラジカル共重合させてメタクリル系共重合体(樹脂2)を得た。
得られたメタクリル系共重合体の重量平均分子量は、34,000であった。次いで、このメタクリル系共重合体溶液の不揮発分が25質量%になるようにトルエンで希釈した。このようにして得られた共重合体溶液の粘度は、8.7mm/sであり、比重は、0.91であった。
【0205】
<樹脂3>
樹脂3としてシリコーン樹脂溶液(SR2410、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)を用いた。
【0206】
<製造例3−3:樹脂4の調製>
118.69質量部の50質量%のアクリル樹脂溶液(ヒタロイド3001、日立化成工業株式会社製)と、37.18質量部の70質量%のグアナミン溶液(マイコート106、三井サイテック株式会社製)と、0.68質量部の40質量%の酸性触媒(キャタリスト4040、三井サイテック株式会社製)とを混合し、被覆層塗布液(樹脂4の塗布液)を得た。
【0207】
<製造例4−1:トナー母体粒子Aの調製>
<<トナー材料の溶解乃至分散液の調製>>
−未変性ポリエステル樹脂(低分子量ポリエステル樹脂)の合成−
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物67質量部、ビスフェノールAプロピオンオキサイド3モル付加物84質量部、テレフタル酸274質量部、及びジブチルチンオキサイド2質量部を投入し、常圧下、230℃にて8時間反応させた。次いで、得られた反応液を10mmHg〜15mmHgの減圧下にて5時間反応させて、未変性ポリエステル樹脂を合成した。
得られた未変性ポリエステル樹脂は、数平均分子量(Mn)が2,100、重量平均分子量(Mw)が5,600、ガラス転移温度(Tg)が55℃であった。
【0208】
−マスターバッチ(MB)の調製−
水1,000質量部、及びカーボンブラック(「Printex35」;デグサ社製、DBP吸油量=42mL/100g、pH=9.5)540質量部、及び前記未変性ポリエステル樹脂1,200質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合した。該混合物を二本ロールで150℃にて30分混練した後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン社製)で粉砕して、マスターバッチを調製した。
【0209】
−トナー材料相の調製−
ビーカー内に前記未変性ポリエステル樹脂100質量部、及び酢酸エチル130質量部を、攪拌し溶解させた。次いで、カルナウバワックス(分子量=1,800、酸価=2.5、針入度=1.5mm(40℃))10質量部、及び前記マスターバッチ10質量部を仕込み、ビーズミル(「ウルトラビスコミル」;アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/s、及び0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスして原料溶解液を調製し、トナー材料の溶解乃至分散液(トナー材料相)を調製した。
【0210】
<<樹脂微粒子1の調製>>
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、水683質量部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業株式会社製)16質量部、スチレン83質量部、メタクリル酸83質量部、アクリル酸ブチル110質量部、及び過硫酸アンモニウム1質量部を仕込み、400回転/分間で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。更に、1質量%過硫酸アンモニウム水溶液30質量部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[樹脂微粒子分散液1]を得た。[樹脂微粒子分散液1]の体積平均粒径をLA−920(株式会社堀場製作所製)で測定したところ、9nmであった。
【0211】
<<トナー母体粒子Aの調製>>
−水系媒体相の調製−
水660質量部、前記[樹脂微粒子分散液1]25質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5質量%の水溶液(「エレミノールMON−7」;三洋化成工業株式会社製)25質量部、及び酢酸エチル60質量部を混合撹拌し、乳白色の液体(水系媒体相1)を得た。
【0212】
−乳化乃至分散液の調製−
水系媒体相1 150質量部を容器に入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用い、回転数12,000rpmで攪拌し、これに前記トナー材料の溶解乃至分散液100質量部を添加し、10分間混合して乳化乃至分散液(乳化スラリーA)を得た。
【0213】
−有機溶剤の除去−
脱気用配管、攪拌機及び温度計をセットしたフラスコに、乳化スラリーA100質量部を仕込み、攪拌周速20m/分で攪拌しながら30℃にて12時間減圧下、脱溶剤し脱溶剤スラリーAを得た。
【0214】
−洗浄−
脱溶剤スラリーAの全量を減圧濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合、再分散(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を3回行い、洗浄スラリーAを得た。
【0215】
−加熱処理−
得られた洗浄スラリーAを45℃で10時間熟成を行い、濾過して加熱処理後ケーキを得た。
【0216】
−乾燥−
上記加熱処理後ケーキを順風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmのメッシュで篩い、トナー母体粒子Aを得た。
【0217】
<製造例4−2:トナー母体粒子Bの調製>
<<結晶性ポリエステル樹脂の合成>>
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5リットルの四つ口フラスコに1,6−ヘキサンジオール2,300g、フマル酸2,530g、無水トリメリット酸291g、及びハイドロキノン4.9gを入れ、160℃で5時間反応させた後、200℃に昇温して1時間反応させ、さらに8.3kPaにて1時間反応させて結晶性ポリエステル樹脂1を得た。
【0218】
<<非晶性ポリエステル樹脂(低分子ポリエステル樹脂)樹脂の合成>>
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5リットルの四つ口フラスコに、ビスフェノールAエチレンオキサイドサイド2モル付加物229質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物529質量部、テレフタル酸208質量部、アジピン酸46質量部及びジブチルチンオキサイド2質量部を入れ、常圧で230℃で7時間反応し、さらに10mmHg〜15mmHgの減圧で4時間反応した後、反応容器に無水トリメリット酸44質量部を入れ、180℃、常圧で2時間反応し、非晶性ポリエステル樹脂を得た。
【0219】
<<ポリエステルプレポリマー(プレポリマー)の合成>>
冷却管、撹拌機及び窒索導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81質量部、テレフタル酸283質量部、無水トリメリット酸22質量部及びジブチルチンオキサイド2質量部を入れ、常圧で230℃で8時間反応し、さらに10mmHg〜15mmHgの減圧で5時間反応し、[中間体ポリエステル]を得た。[中間体ポリエステル]は、数平均分子量2,100、重量平均分子量9,500、Tg55℃、酸価0.5mgKOH/g、水酸基価51mgKOH/gであった。
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル]410質量部、イソホロンジイソシアネート89質量部、及び酢酸エチル500質量部を入れ100℃で5時間反応し、[プレポリマー]を得た。[プレポリマー]の遊離イソシアネート質量%は、1.53%であった。
【0220】
<<ケチミン化合物の合成>>
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、イソホロンジアミン170質量部及びメチルエチルケトン75質量部を仕込み、50℃で5時間反応を行い、[ケチミン化合物]を得た。[ケチミン化合物]のアミン価は418であった。
【0221】
<<マスターバッチ(MB)の合成>>
水1,200質量部、カーボンブラック(Printex35デクサ製)〔DBP吸油量=42mL/100mg、pH=9.5〕540質量部、上記で合成した非晶性ポリエステル樹脂1,200質量部を加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合し、混合物を2本ロールを用いて150℃で30分間混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕して、[マスターバッチ]を得た。
【0222】
<<顔料・WAX分散液の調製>>
撹拌棒及び温度計をセットした容器に、[非晶性ポリエステル樹脂]378質量部、カルナバWAX110質量部、及びCCA(サリチル酸金属錯体E−84:オリエント化学工業株式会社製)22質量部、及び酢酸エチル947質量部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時問で30℃に冷却した。次いで容器に[マスターバッチ]500質量部、及び酢酸エチル500質量部を仕込み、1時間混合し[原料溶解液]を得た。
[原料溶解液]1,324質量部を容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、カーボンブラック、WAXの分散を行った。次いで、[非晶性ポリエステル樹脂]の65質量%酢酸エチル溶液1,042.3質量部を加え、上記条件のビーズミルで1パスし、[顔料・WAX分散液]を得た。[顔料・WAX分散液]の固形分濃度(130℃、30分)は50質量%であった。
【0223】
<<結晶性ポリエステル分散液の作製>>
金属製2L容器に[結晶性ポリエステル樹脂]を100g、及び酢酸エチル400gを入れ、75℃で加熱溶解させた後、氷水浴中で27℃/分間の速度で急冷した。これにガラスビーズ(直径3mm)500mLを加え、バッチ式サンドミル装置(カンペハピオ株式会社製)で10時間粉砕を行い、[結晶性ポリエステル分散液]を得た。
【0224】
<<有機微粒子エマルションの合成>>
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、水683質量部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30:三洋化成工業株式会社製)11質量部、スチレン138質量部、メタクリル酸138質量部、及び過硫酸アンモニウム1質量部を仕込み、400回転/分間で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し、5時間反応させた。さらに、1質量%過硫酸アンモニウム水溶液30質量部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[樹脂微粒子分散液2]を得た。[樹脂微粒子分散液2]をLA−920で測定した体積平均粒径は、0.14μmであった。
【0225】
<<水系媒体相2の調製>>
水990質量部、[樹脂微粒子分散液2]83質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(エレミノールMON−7:三洋化成工業株式会社製)37質量部、及び酢酸エチル90質量部を混合撹拌し、乳白色の液体(水系媒体相2)を得た。
【0226】
<<乳化・脱溶剤>>
[顔料・WAX分散液2]664質量部、[プレポリマー]109.4質量部、[結晶性ポリエステル分散液]73.9質量部、及び[ケチミン化合物]4.6質量部を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)で5,000rpmで1分間混合した後、容器に[水系媒体相2]1,200質量部を加え、TKホモミキサーで、回転数13,000rpmで20分間混合し[乳化スラリー2]を得た。
撹拌機及び温度計をセットした容器に、[乳化スラリー2]を投入し、30℃で8時間脱溶剤した後、45℃で4時間熟成を行い、[分散スラリー2]を得た。
【0227】
<<洗浄・乾燥>>
[分散スラリー2]100質量部を減圧濾過した後、
(1):濾過ケーキにイオン交換水100質量部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキに10質量%水酸化ナトリウム水溶液100質量部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。
(3):(2)の濾過ケーキに10質量%塩酸100質量部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水300質量部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過する操作を2回行い[濾過ケーキ2]を得た。
[濾過ケーキ2]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmのメッシュで篩い[トナー母体粒子B]を得た。
【0228】
<製造例5:外添剤の作製>
−合着粒子(シラン系処理シリカ)(シリカ1〜3及びシリカ6〜8)の調製−
合着粒子の作製では、種々の平均粒径を有するシリカ1次粒子を用いて種々の処理剤により2次凝集させた合着シリカを製造した。合着度の調整は、使用したシリカ1次粒子の平均粒子径、処理剤、シリカ1次粒子と処理剤の混合比、処理条件(焼成温度、焼成時間)により行った。シリカ1次粒子と処理剤との混合はスプレードライヤーを用いて行った。本製造例で作製した合着粒子(シリカ)は、表1に示した。
【0229】
−合着粒子(非球形乾式シリカ)(シリカ4及び5)の調製−
図17に示す装置を用いて乾式法により合着粒子を製造した。
シリカ4及び5の製造において用いた原料の四塩化珪素ガス量、水素ガスの量、酸素ガスの量、火炎中のシリカ濃度、及び滞留時間を表2に示した。作製したシリカを表1に示した。
【0230】
【表1】

表1中、RX50とは、アエロジル社製のRX50(シラン系処理)である。
【0231】
【表2】

【0232】
<製造例6−1:トナーAの調製>
トナー母体粒子A 100質量部に対して、表1における合着シリカ(シリカ1)2.0質量部と、平均粒子径10nm〜20nmのシリカ2.0質量部と、平均粒径20nmの酸化チタン0.6質量部とをヘンシェルミキサーにて混合し、目開き500メッシュの篩を通過させ、トナーAを得た。
【0233】
<製造例6−2:トナーB〜E、G〜Jの調製>
製造例6−1において、シリカ1を表3に記載のシリカに代えた以外は、製造例6−1と同様にして、トナーB〜E、G〜Jを得た。
【0234】
<製造例6−3:トナーFの調製>
製造例6−1において、トナー母体粒子Aをトナー母体粒子Bに代え、シリカ1をシリカ4に代えた以外は、製造例6−1と同様にして、トナーFを得た。
【0235】
【表3】

【0236】
(実施例1)
<キャリアの製造>
静電潜像現像用キャリア1の被覆層の形成のため、下記組成の被覆層形成溶液A(固形分10質量%)を調製した。この被覆層形成溶液Aを1,000質量部の芯材1に塗布して乾燥させた。ここで、塗布乃至乾燥は、流動槽内の温度を各70℃に制御した流動床型コーティング装置を使用して行った。得られたキャリアを電気炉中にて、180℃/2時間焼成し、キャリア1を得た。キャリア1の特性を、表4−1に示す。
−被覆層形成溶液Aの組成−
・被覆層用樹脂(樹脂1、固形分75質量%) ・・・ 30質量部
・導電性微粒子1 ・・・ 56質量部
・触媒 ・・・ 4質量部
(チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート))
(オルガチックスTC−750、マツモトファインケミカル社製)
・シランカップリング剤 ・・・ 0.6質量部
(SH6020、東レ・ダウコーニング社製)
・トルエン ・・・ 残部
【0237】
<現像剤の作製>
上記で得られたキャリア(930質量部)、及び市販のデジタルフルカラープリンター(RICOH Pro C901、株式会社リコー製)用のトナー(70質量部)を混合して、タービュラーミキサーを用いて81rpmで5分間攪拌し、評価用現像剤を作製した。また、補給用現像剤は、表4−1のプレミックス率(補給用現像剤中のキャリアの含有割合(質量%))となるように、前記キャリア及び前記トナーを用いて作製した。
【0238】
(評価)
実施例及び比較例で得られた静電潜像現像用キャリアを以下に示す各種評価項目により評価した。結果を表6−1に示す。
【0239】
<ゴースト画像の評価>
作製した各現像剤及び各補給用現像剤を、市販のデジタルフルカラープリンター(株式会社リコー製、RICOH Pro C901)にセットし、画像面積8%の文字チャート(1文字の大きさ:2mm×2mm程度)を100,000枚出力した。その後、図22に示す縦帯チャートを印刷し、スリーブ一周分(a)と一周後(b)の濃度差を測定することにより、直前画像履歴による影響を評価した。前記測定は、色彩値測定器(X−Rite938、X−Rite社製)を用いた。前記スリーブのセンター、リア、及びフロントの3箇所について測定してその平均濃度差をΔIDとした。なお、評価基準は以下の通りとした。
<<評価基準>>
◎:ΔIDが0.01以下である
○:ΔIDが0.01超、0.03以下である
△:ΔIDが0.03超、0.06以下である
×:ΔIDが0.06超である
ここで、◎、○、△、及び×は、それぞれ、◎:非常に良好、○:良好、△:許容、×:実用上使用できないレベルであり、◎、○及び△を合格とし、×を不合格とした。
【0240】
<初期キャリア付着の評価>
市販のデジタルフルカラープリンター(株式会社リコー製、RICOH Pro C901)を改造した改造機に前記各現像剤をセットし、地肌ポテンシャルを150Vに固定し、無画像チャートを現像した。
感光体表面に付着しているキャリアの個数をルーペ観察により、5視野カウントし、その平均の100cm当たりのキャリア付着個数をもってキャリア付着量とした。
<<評価基準>>
◎:20個以下
○:21個以上60個以下
△:61個以上80個以下
×:81個以上
◎、○及び△を合格とし、×を不合格とした。
【0241】
<エッジ効果の評価>
市販のデジタルフルカラープリンター(株式会社リコー製、RICOH Pro C901)を改造した改造機に前記各現像剤をセットし、大面積の画像を有するテストパターンを出力した。得られた画像パターンにおいて、中央部の画像濃度と端部の画像濃度との差を目視により下記評価基準に従って評価した。
<<評価基準>>
◎:差がない
○:若干差がある
△:差はあるが許容できる
×:許容できないレベルまで差が生じている
◎、○及び△を合格とし、×を不合格とした。
【0242】
<画像の精細性の評価>
作製した各現像剤を市販のデジタルフルカラープリンター(株式会社リコー製、RICOH Pro C901)改造機にセットし、画像面積5%の文字チャート(1文字の大きさ:2mm×2mm程度)を出力し、その文字画像部の再現性により評価し、次のようにランク分けした。
<<評価基準>>
◎:非常に良好
○:良好
△:許容できるレベル
×:実用できないレベル
◎、○及び△を合格とし、×を不合格とした。
【0243】
<トナーチリの評価>
画像の精細性の評価と同じ画像形成条件で画像形成した際の、文字部以外(白部)へのトナーチリについて、目視により観察し、以下の評価基準で評価した。
<<評価基準>>
◎:トナー汚れがまったく観察されず良好な状態である。
○:トナー汚れがわずかに観察されるが良好な状態である。
△:わずかに汚れが観察される程度であり問題とならない。
×:許容範囲外で非常に汚れがあり問題となる。
◎、○及び△を合格とし、×を不合格とした。
【0244】
<混色の評価>
色汚れ(混色)評価は、市販のデジタルフルカラープリンター(株式会社リコー製、RICOH Pro C901)に前記各現像剤をセットし、現像ユニット単独で1時間攪拌することで実施した。こうして得た現像剤を現像及び定着し、画像濃度が1.5となる箇所のCIE表色系のL*1、a*1、b*1値を求めた。一方、色汚れのない画像を得るために、キャリアと接触させることなくトナー単独で画像化(定着を含む)したものを作成し、前記と同様に画像濃度が1.5となる箇所のCIE表色系のL*0、a*0、b*0値を求めた。こうして得た2つの画像の色差ΔEを下式により求め、ΔE≦3.0であれば実使用上問題ないので合格(○)とし、ΔE>3.0は実使用上問題であるので不合格(×)とした。
ΔE=√(L*0−L*1)+(a*0−a*1)+(b*0−b*1)
【0245】
<耐久性の評価>
作製した各現像剤を、市販のデジタルフルカラープリンター(株式会社リコー製、RICOH Pro C901)を改造した改造機にセットし、単色による100,000枚のランニング評価を行った。このランニングを終えた後のキャリアのキャリア付着、帯電低下量、及び抵抗低下量を評価した。なお、前記キャリア付着は、前述した初期キャリア付着の評価と同様の方法及び評価基準で評価した。
【0246】
<<抵抗低下量の評価>>
前記抵抗低下量は、ランニング前のキャリアを抵抗計測平行電極(ギャップ2mm)の電極間に投入し、直流1,000Vを印加し、30秒間後の抵抗値をハイレジスト計(4329A+LJK 5HVLVWDQFH 0HWHU;横川ヒューレットパッカード株式会社製)で計測した値を体積抵抗率に変換した値(R1)から、ランニング後の現像剤中のトナーを前記ブローオフ装置(図23参照)にて除去し得たキャリアを、前記抵抗測定方法と同様の方法で測定した値(R2)を差し引いた量とした。図23において、符号3はキャリアを示し、符号5はトナーを示し、符号7はブローゲージを示す。
前記抵抗低下量は、絶対値で3.0Log(Ω・cm)以内であれば、実使用上問題ないレベルである。
また、抵抗変化の原因は、キャリアの樹脂膜の削れ、トナー成分のスペント、キャリア被覆膜中の大きな粒径の微粒子脱離などであるため、抵抗変化量によりこれらの発生を評価することができる。
【0247】
<<帯電低下量の評価>>
前記帯電低下量は、ランニング前のキャリア93質量%に対しトナー7質量%の割合で混合し摩擦帯電させたサンプルを、一般的なブローオフ法(東芝ケミカル株式会社製、TB−200)にて測定した帯電量(Q1)から、ランニング後の現像剤中のトナーを前記ブローオフ装置にて除去し得たキャリアを、前記方法と同様の方法で測定した帯電量(Q2)を差し引いた量とした。
前記帯電低下量は、10.0μc/g以内であれば、実使用上問題ないレベルである。また、帯電量の低下の原因は、キャリア表面へのトナースペントであるため、トナースペントを帯電低下量により評価することができる。
【0248】
(実施例2〜21及び比較例1〜10)
実施例1のキャリアの製造において、芯材の種類、微粒子の種類、分散方法、製造方法などを表4−1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、キャリアを作製した。
実施例1において、表4−1に示すキャリアを用いた以外は、実施例1と同様にして、現像剤を作製し、評価を行った。結果を表6−1に示す。
【0249】
(実施例22〜50及び比較例11〜21)
実施例22〜50及び比較例11〜21では、表5に示すトナーを用いた。
実施例1のキャリアの製造において、芯材の種類、微粒子の種類、分散方法、製造方法などを表4−2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、キャリアを作製した。
実施例1において、表5に示すトナー及び表4−2に示すキャリアを用いた以外は、実施例1と同様にして、現像剤を作製し、評価を行った。結果を表6−2に示す。なお、実施例22〜50及び比較例11〜21では、以下に示す評価も行った。
【0250】
<クリーニング性>
作製した各現像剤を市販のデジタルフルカラープリンター(株式会社リコー製、RICOH Pro C901)改造機にセットし、初期、1,000枚及び10万枚印刷した後に、クリーニング工程を通過した感光体上の残存するトナーを、スコッチテープ(住友スリーエム社製)を用いて白紙に移し、マクベス反射濃度計RD514型で測定し、ブランクとの差(ΔID)を下記評価基準で評価した。
◎:ΔIDが0.01以下である。
○:ΔIDが0.01超、0.02以下である。
△:ΔIDが0.02超、0.03以下である。
×:ΔIDが0.03超である。
【0251】
<転写性>
作製した各現像剤を市販のデジタルフルカラープリンター(株式会社リコー製、RICOH Pro C901)改造機にセットし、画像面積率20%チャートを感光体から紙に転写後、クリーニングの直前における感光体上の転写残トナーをスコッチテープ(住友スリーエム株式会社製)で白紙に移し、それをマクベス反射濃度計RD514型で測定し、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
◎:ブランクとの差が0.005未満である。
○:ブランクとの差が0.005〜0.010である。
△:ブランクとの差が0.011〜0.02である。
×:ブランクとの差が0.02を超える。
【0252】
【表4−1】

【0253】
【表4−2】

表4−1及び表4−2において、分散手段とは、被覆層形成溶液中に導電性微粒子を分散させる際の分散手段を表す。
【0254】
【表5】

【0255】
【表6−1】

【0256】
【表6−2】

【0257】
キャリアのRa1が0.60μm〜0.85μmであり、かつトナーにおける合着粒子の合着度が3.0〜4.0である実施例47〜50では、ゴースト画像の発生がほとんどなく、また、他の評価結果も非常に良好であり、非常に優れた結果が得られた。
【0258】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 芯材と、前記芯材を被覆する被覆層とを含み、
前記被覆層が、樹脂及び微粒子を含有し、
前記被覆層の平均層厚差が、0.02μm〜3.0μmであり、
キャリアの算術平均表面粗さRa1が、0.50μm〜0.90μmであることを特徴とする静電潜像現像用キャリアである。
<2> キャリアの算術平均表面粗さRa1が、0.60μm〜0.85μmである前記<1>に記載の静電潜像現像用キャリアである。
<3> 被覆層の平均厚みhに対する微粒子の体積平均粒径Dの比D/hが、0.01〜1.00である前記<1>から<2>のいずれかに記載の静電潜像現像用キャリアである。
<4> 微粒子の被覆層における含有量が、40質量%〜85質量%である前記<1>から<3>のいずれかに記載の静電潜像現像用キャリアである。
<5> 微粒子の粉体比抵抗が、−3Log(Ω・cm)〜3Log(Ω・cm)である前記<1>から<4>のいずれかに記載の静電潜像現像用キャリアである。
<6> 微粒子が、アルミナ、シリカ、チタン、バリウム、スズ、及びカーボンの少なくともいずれかを含有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の静電潜像現像用キャリアである。
<7> キャリアの算術平均表面粗さRa1と芯材の算術平均表面粗さRa2との比Ra1/Ra2が、0.70〜0.90である前記<1>から<6>のいずれかに記載の静電潜像現像用キャリアである。
<8> 樹脂が、シリコーン樹脂を含有する前記<1>から<7>のいずれかに記載の静電潜像現像用キャリアである。
<9> 樹脂が、シランカップリング剤及びシリコーン樹脂を含有する混合物の硬化物を含む前記<1>から<8>のいずれかに記載の静電潜像現像用キャリアである。
<10> 樹脂が、少なくとも下記一般式(A)で表されるA部分、及び下記一般式(B)で表されるB部分を含む共重合体を加水分解し、シラノール基を生成して縮合することにより得られる架橋物を含有する前記<1>から<9>のいずれかに記載の静電潜像現像用キャリアである。
【化5】

ただし、前記一般式(A)中、Rは、水素原子及びメチル基のいずれかを表し、Rは、炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、mは、1〜8の整数を表し、Xは、前記共重合体におけるモル比を表し、10モル%〜90モル%を表す。
【化6】

ただし、前記一般式(B)中、Rは、水素原子及びメチル基のいずれかを表し、Rは、炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、Rは、炭素原子数1〜8のアルキル基及び炭素原子数1〜4のアルコキシ基のいずれかを表し、mは、1〜8の整数を表し、Yは、前記共重合体におけるモル比を表し、10モル%〜90モル%を表す。
<11> 被覆層が、流動床型コーティング装置によって芯材の表面に塗布されてなる前記<1>から<10>のいずれかに記載の静電潜像現像用キャリアである。
<12> 前記<1>から<11>のいずれかに記載の静電潜像現像用キャリアと、トナーとを含むことを特徴とする現像剤である。
<13> トナーが、トナー母体粒子と、外添剤とを含有し、
前記外添剤が、非球形の外添剤を含有する前記<12>に記載の現像剤である。
<14> 非球形の外添剤が、一次粒子同士が合着されてなる非球形の合着粒子である前記<13>に記載の現像剤である。
<15> 合着粒子の合着度(二次粒子の平均粒子径/一次粒子の平均粒子径)が、1.5〜4.0である前記<14>に記載の現像剤である。
<16> 合着粒子の合着度(二次粒子の平均粒子径/一次粒子の平均粒子径)が、3.0〜4.0である前記<14>から<15>のいずれかに記載の現像剤である。
<17> トナー母体粒子が、変性ポリエステル樹脂、未変性ポリエステル樹脂及び着色剤を含有し、
前記トナー母体粒子が、変性ポリエステル樹脂の前駆体である活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体、活性水素基含有化合物、未変性ポリエステル樹脂、並びに着色剤を有機溶剤中に添加し乳化乃至分散させて乳化乃至分散液を得た後、前記乳化乃至分散液中で前記活性水素基含有化合物及び前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体を伸長乃至架橋反応させて得られる前記<12>から<16>のいずれかに記載の現像剤である。
<18> 静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、現像剤を用いて現像してトナー像を形成する、前記現像剤を収容する現像手段と、前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、
前記現像剤を前記現像手段に補給するとともに、前記現像手段内の余剰となった現像剤を排出しながら現像を行い、
前記現像剤が前記<12>から<17>のいずれかに記載の現像剤であることを特徴とする画像形成装置である。
【符号の説明】
【0259】
1a 電極
1b 電極
2 フッ素樹脂製容器
3 キャリア
5 トナー
7 ブローケージ
10 プロセスカートリッジ
11 静電潜像担持体
12 帯電装置
13 現像装置
14 クリーニング装置
20 静電潜像担持体(感光体)
21 トナー
23 キャリア
24a、24b 駆動ローラ
26 クリーニング前露光光源
32 帯電装置
33 露光装置
40 現像装置
41 現像スリーブ
42 現像剤収容部材
43 ドクターブレード
44 支持ケース
45 トナーホッパー
46 現像剤収容部
47 現像剤撹拌機構
48 トナーアジテータ
49 トナー補給機構
50 転写装置
60 クリーニング装置
61 クリーニングブレード
64 ブラシ状クリーニング手段
70 除電装置
101 トナー
102 トナー母体粒子
103 外添剤
111 芯材
112 樹脂
113 微粒子
120 現像剤担持体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0260】
【特許文献1】特開2007−25693号公報
【特許文献2】特許第3356948号公報
【特許文献3】特開2005−157002号公報
【特許文献4】特開平11−231652号公報
【特許文献5】特開平7−72733号公報
【特許文献6】特開平7−128983号公報
【特許文献7】特開平7−92813号公報
【特許文献8】特開平11−65247号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、前記芯材を被覆する被覆層とを含み、
前記被覆層が、樹脂及び微粒子を含有し、
前記被覆層の平均層厚差が、0.02μm〜3.0μmであり、
キャリアの算術平均表面粗さRa1が、0.50μm〜0.90μmであることを特徴とする静電潜像現像用キャリア。
【請求項2】
キャリアの算術平均表面粗さRa1が、0.60μm〜0.85μmである請求項1に記載の静電潜像現像用キャリア。
【請求項3】
被覆層の平均厚みhに対する微粒子の体積平均粒径Dの比D/hが、0.01〜1.00である請求項1から2のいずれかに記載の静電潜像現像用キャリア。
【請求項4】
微粒子の被覆層における含有量が、40質量%〜85質量%である請求項1から3のいずれかに記載の静電潜像現像用キャリア。
【請求項5】
微粒子の粉体比抵抗が、−3Log(Ω・cm)〜3Log(Ω・cm)である請求項1から4のいずれかに記載の静電潜像現像用キャリア。
【請求項6】
微粒子が、アルミナ、シリカ、チタン、バリウム、スズ、及びカーボンの少なくともいずれかを含有する請求項1から5のいずれかに記載の静電潜像現像用キャリア。
【請求項7】
キャリアの算術平均表面粗さRa1と芯材の算術平均表面粗さRa2との比Ra1/Ra2が、0.70〜0.90である請求項1から6のいずれかに記載の静電潜像現像用キャリア。
【請求項8】
樹脂が、シリコーン樹脂を含有する請求項1から7のいずれかに記載の静電潜像現像用キャリア。
【請求項9】
樹脂が、シランカップリング剤及びシリコーン樹脂を含有する混合物の硬化物を含む請求項1から8のいずれかに記載の静電潜像現像用キャリア。
【請求項10】
樹脂が、少なくとも下記一般式(A)で表されるA部分、及び下記一般式(B)で表されるB部分を含む共重合体を加水分解し、シラノール基を生成して縮合することにより得られる架橋物を含有する請求項1から9のいずれかに記載の静電潜像現像用キャリア。
【化1】

ただし、前記一般式(A)中、Rは、水素原子及びメチル基のいずれかを表し、Rは、炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、mは、1〜8の整数を表し、Xは、前記共重合体におけるモル比を表し、10モル%〜90モル%を表す。
【化2】

ただし、前記一般式(B)中、Rは、水素原子及びメチル基のいずれかを表し、Rは、炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、Rは、炭素原子数1〜8のアルキル基及び炭素原子数1〜4のアルコキシ基のいずれかを表し、mは、1〜8の整数を表し、Yは、前記共重合体におけるモル比を表し、10モル%〜90モル%を表す。
【請求項11】
被覆層が、流動床型コーティング装置によって芯材の表面に塗布されてなる請求項1から10のいずれかに記載の静電潜像現像用キャリア。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の静電潜像現像用キャリアと、トナーとを含むことを特徴とする現像剤。
【請求項13】
トナーが、トナー母体粒子と、外添剤とを含有し、
前記外添剤が、非球形の外添剤を含有する請求項12に記載の現像剤。
【請求項14】
非球形の外添剤が、一次粒子同士が合着されてなる非球形の合着粒子である請求項13に記載の現像剤。
【請求項15】
合着粒子の合着度(二次粒子の平均粒子径/一次粒子の平均粒子径)が、1.5〜4.0である請求項14に記載の現像剤。
【請求項16】
合着粒子の合着度(二次粒子の平均粒子径/一次粒子の平均粒子径)が、3.0〜4.0である請求項14から15のいずれかに記載の現像剤。
【請求項17】
トナー母体粒子が、変性ポリエステル樹脂、未変性ポリエステル樹脂及び着色剤を含有し、
前記トナー母体粒子が、変性ポリエステル樹脂の前駆体である活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体、活性水素基含有化合物、未変性ポリエステル樹脂、並びに着色剤を有機溶剤中に添加し乳化乃至分散させて乳化乃至分散液を得た後、前記乳化乃至分散液中で前記活性水素基含有化合物及び前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有する重合体を伸長乃至架橋反応させて得られる請求項12から16のいずれかに記載の現像剤。
【請求項18】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、現像剤を用いて現像してトナー像を形成する、前記現像剤を収容する現像手段と、前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、
前記現像剤を前記現像手段に補給するとともに、前記現像手段内の余剰となった現像剤を排出しながら現像を行い、
前記現像剤が請求項12から17のいずれかに記載の現像剤であることを特徴とする画像形成装置。


【図20】
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【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−76999(P2013−76999A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−200393(P2012−200393)
【出願日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】