説明

静電潜像現像用トナー外添剤

【課題】基材として低硬度、低コストの炭酸カルシウムを用いつつ、温湿度が変化する環境の下においても安定性した帯電性能を発現することができる静電潜像現像用トナー外添剤が望まれていた。
【解決手段】本発明に係る静電潜像現像用トナー外添剤は、基材である炭酸カルシウムの表面がシリカ層で覆われており、さらにシリカコート炭酸カルシウムの表面全体が反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物層で覆われていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンターなどの電子写真機器に用いられるトナー外添剤に係り、更に詳しくは、基材として低硬度、低コストの炭酸カルシウムを用いつつ、温湿度が変化する環境の下においても安定性した帯電性能を発現することができる静電潜像現像用トナー外添剤に関するものである。
また、流動性、鮮鋭性に優れる静電潜像現像用トナー外添剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンターなどの電子写真機器において、静電画像の高精細化、高画質化への要求が高まっている。従前においては、トナーの小粒径化やトナーの結着樹脂にポリエステル系樹脂を用いることなどによって、高精細化、高画質化への検討が行われてきた。なお、静電画像の高精細化、高画質化を実現する際には、温湿度などの環境の変化に対応できる帯電性能や流動性が必要になってくる。
しかし、ポリエステル系樹脂を用いる手法では、トナーの帯電性能が湿度の影響を受けやすくなってしまうという問題があった。具体的には、低湿度下では帯電量が高くなりすぎて画像欠陥が生じやすくなり、高湿度下では帯電量が不足して現像性が悪化し、鮮鋭性の高い画像が得られなくなるという問題があった。
【0003】
また、従来より、トナーに対して帯電性能や流動性を付与し、さらにクリーニング性を向上させる目的で、シリカや酸化チタンなどの無機酸化物粉体を外添することが行われている。
しかしながら、一般的に、シリカは流動性が優れているものの、帯電性能の環境安定性が依然として充分でないという問題があり、酸化チタンは帯電性能の環境安定性に優れているものの、流動性が充分ではなく、また高価であるという問題があった。
【0004】
また、特許文献1または特許文献2には、シリコーンオイルにより表面処理された、モース硬度2〜4.5の炭酸カルシウムを外添剤として用いるトナー組成物が記載されている。ここで、特許文献1または特許文献2に記載のトナー組成物は、表面処理剤としてシリコーンオイルを使用していることから、基材となる炭酸カルシウムの表面と化学反応をしなくても物理的な吸着作用により表面処理をすることが可能であるという利点がある。
しかしながら、本来、トナーの外添剤に用いられる表面処理剤としては、シリコーンオイルよりもアルキルアルコキシシランやフッ素シラン等の反応性のシラン系表面処理剤を使用した方が流動性や帯電性能が向上し、トナー外添剤として特性の高いものとなることが知られている。
従って、特許文献1または特許文献2に記載のトナー組成物においても、帯電性能の環境安定性が依然として充分ではないという問題があった。また、正帯電性を付与する場合は疎水性を付与しつつ、アミノ基を表面に導入することが不可欠であることから、この点においてもアミノシランを表面に導入することができない特許文献1または特許文献2に記載のトナー組成物は問題点を有していた。
【0005】
さらに、特許文献3には無機粒子を有機化合物で疎水処理した帯電微粒子を用いるトナーが記載されており、無機粒子の一例として炭酸カルシウムが、有機化合物の一例としてトリメチルメトキシシラン等の反応性表面処理剤が記載されている。
しかしながら、本来、炭酸カルシウムは酸化物ではなく炭酸塩であるため、シリカ、酸化チタン、アルミナ等の様に表面に水酸基が存在しているものではない。
従って、シリカや酸化チタンのような反応性表面処理剤と表面水酸基との化学反応が起こらないことから、炭酸カルシウムの表面を直接、トリメチルメトキシシラン等で処理することは困難である。そのため特許文献3に記載のトナーにおいても、実施例においてはシリカや酸化マグネシウム等の無機酸化物粒子のみが記載されており、炭酸カルシウムの表面に反応性表面処理剤を処理する技術の記載は無いのが実情である。
【0006】
一方、特許文献4または特許文献5には、炭酸カルシウムをシリカおよびシランカップリング剤で表面処理した、ゴムやプラスチックなどに使用されるポリマー用補強充填材が記載されている。
しかしながら、特許文献4または特許文献5に記載の補強充填材は、シランカップリング剤の好ましい表面処理量が炭酸カルシウム100重量部に対して0.05〜10重量部、より好ましくは0.1〜3重量部の範囲となっており、表面のごく一部しか処理されていないこととなる。従って、補強充填材としての特性は発現するものの、トナー外添剤としては疎水性や帯電性能の付与という点から使用できないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−287151号公報
【特許文献2】特開2004−287103号公報
【特許文献3】特開2000−122345号公報
【特許文献4】特開昭52−30852号公報
【特許文献5】WO2004/009711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、基材として低硬度、低コストの炭酸カルシウムを用いつつ、温湿度が変化する環境の下においても安定した帯電性能を発現することができる静電潜像現像用トナー外添剤の提供を目的とするものである。また、流動性、鮮鋭性に優れる静電潜像現像用トナー外添剤の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る静電潜像現像用トナー外添剤は、基材である炭酸カルシウムの表面がシリカ層で覆われており、さらにシリカコート炭酸カルシウムの表面全体が反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物層で覆われていることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2に係る静電潜像現像用トナー外添剤は、基材である炭酸カルシウムの表面がシリカ層で覆われており、さらにシリカコート炭酸カルシウムの表面が、反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物層によって、以下の方法で測定した疎水化度が50%以上となるように覆われていることを特徴とする。
(1)250mlのビーカーに純水70mlを入れ、トナー外添剤0.03gを水面上に浮かべる
(2)300rpmの回転数で攪拌しながら、メタノールを2.6ml/minの速度で滴下する
(3)粉体濡れ性試験機WET−100P(レスカ社製)にてメタノール滴下開始直後からの分散液の透過率を測定し、透過率が最小となった時点の分散液中のメタノール濃度(疎水化度)を測定する
【0011】
本発明の請求項3に係る静電潜像現像用トナー外添剤は、シリカコート炭酸カルシウムが、炭酸カルシウムのBET比表面積をC(m/g)、炭酸カルシウム100重量部に対するシリカの処理量をA(重量部)とするとき、0.05≦(A/C)≦0.40の関係を満たしていることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4に係る静電潜像現像用トナー外添剤は、シリカ層で表面が覆われた炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、シリカコート炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)とするとき、0.10≦(B/S)≦0.30の関係を満たしていることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項5に係る静電潜像現像用トナー外添剤は、反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物が、シランカップリング剤及び/又は反応性官能基を持つシリコーンオイル及び/又はシラザンであることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項6に係る静電潜像現像用トナー外添剤は、下記計算式で求められる環境変動率が0〜25%であることを特徴とする。
計算式:環境変動率(%)=[帯電量(L/L)−帯電量(H/H)]/帯電量(L/L)×100
(計算式中の帯電量(L/L)及び帯電量(H/H)は、以下の方法にて測定したブローオフ帯電量
(1)L/L:温度10℃、湿度20%、H/H:温度30℃、湿度80%の条件で12時間暴露したトナー外添剤0.4gとフェライト96gを混合
(2)混合物0.05gを窒素ブロー圧:0.5kg/cm、ブロー時間:20秒の条件でブローオフ粉体帯電量測定装置TB−200(東芝ケミカル社製)にて測定)
【0015】
本発明の請求項7に係る静電潜像現像用トナー外添剤の製造方法は、基材である炭酸カルシウムの表面をシリカ層で覆う工程と、さらにシリカコート炭酸カルシウムの表面全体を反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物層で覆う工程とを備えることを特徴とする。
【0016】
以下にそれぞれの構成要件について説明する。
【0017】
(炭酸カルシウム)
本発明の静電潜像現像用トナー外添剤に用いられる炭酸カルシウムは特に種類などについて限定されることはなく、重質、軽質のいずれの炭酸カルシウムも用いることができる。
ここで、重質炭酸カルシウムは天然に存在する炭酸カルシウムの原石を粉砕、洗浄することによって製造されるものである。また軽質炭酸カルシウムは沈降性炭酸カルシウムや合成炭酸カルシウムと呼ばれるものでもあり、石灰乳−炭酸ガス反応法、塩化カルシウム−ソーダ灰反応法、石灰乳−ソーダ灰反応法等の公知の方法によって得ることができるものである。
【0018】
本発明における炭酸カルシウムの比表面積は特に限定されないが、静電画像の高精細化、高画質化の点から、BET比表面積で5〜120m/gのものを用いることが好ましい。なお、より好ましい範囲は7〜90m/gであり、さらに好ましい範囲は10〜70m/gである。ここで、BET比表面積は、気体吸着法に基づいて、炭酸カルシウムへの窒素ガスの吸着量を検出することにより算出するものである。
【0019】
また、炭酸カルシウムの粒径についても特に限定されないが、静電画像の高精細化、高画質化の点から、平均一次粒子径が0.01〜0.5μmであることが好ましく、より好ましい範囲は0.02〜0.2μmである。
ここで上記の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定したものを指す。具体的には、粉体を一次粒子まで分散後、透過型電子顕微鏡で撮影し(撮影個数は1,000個以上)、撮影された個々の粒子を画像解析式粒度分布測定装置で画像処理を行い、円相当径を測定したものである。
【0020】
(シリカ層)
本発明の静電潜像現像用トナー外添剤のシリカ層は、各種の方法によって形成することができるが、代表的なものとしては、炭酸カルシウムスラリーにケイ酸ナトリウム(水ガラス)の水溶液を添加した後、無機酸あるいは有機酸などの酸性物質を用いて中和し、乾燥することによって形成する方法が挙げられる。また、炭酸カルシウムに金属アルコキシドの溶液を添加した後、加水分解することで金属アルコキシドゾルを経て金属アルコキシドゲルであるシリカ層を形成する、いわゆるゾル−ゲル法によっても形成することができる。
そして、このシリカ層が形成されることによって、本来、表面水酸基を有さない炭酸カルシウムに後記する有機ケイ素化合物を化学結合させることができるのである。
【0021】
なお、炭酸カルシウムに形成するシリカ層の処理量については特に限定されず、必ずしも炭酸カルシウムの表面全体を覆う必要はなく、有機ケイ素化合物層が安定した帯電性能、流動性などの効果を発現するために必要最低限の処理量が確保されていればよい。具体的には、シリカ層の表面処理後の分析によって算出される炭酸カルシウム100重量部に対するシリカコート量をA(重量部)とし、炭酸カルシウムのBET比表面積をC(m/g)とするとき、0.05≦(A/C)≦0.40となる処理量であることが好ましい。なお、より好ましくは0.06≦(A/C)≦0.30である。
ここで、シリカの処理量がA/C=0.05よりも少ない場合には、基材となる炭酸カルシウム表面に有機ケイ素化合物層が十分結合されず、安定した帯電性能、流動性などの効果を発現させることができず、一方、シリカの処理量がA/C=0.40を超える場合には、これを超える増量による効果の向上が認められない。
また、シリカのコート量については、たとえば蛍光X線分析によってCaおよびSiを定量することによって算出することができる。
【0022】
(有機ケイ素化合物層)
本発明の静電潜像現像用トナー外添剤の有機ケイ素化合物層は、上記したシリカ層が形成された後に形成されるものであり、シリカ層と化学結合することによってシリカ層表面を覆うものである。ここで、有機ケイ素化合物層については例えば下記の様な方法によって形成することができる。
高分散湿式表面処理方法:シリカコート炭酸カルシウムをトルエン、アルコール等の溶媒に分散し、有機ケイ素化合物としてシランカップリング剤等を添加し、撹拌混合する。得られたスラリーをサンドグラインダーミルにより湿式解砕してシリカコート炭酸カルシウムの凝集を解し、その後、減圧加熱下で溶媒を留去する。得られた乾燥物を解砕して静電潜像現像用トナー外添剤を得る。
湿式表面処理方法:シリカコート炭酸カルシウムをトルエン、アルコール等の溶媒に分散し、有機ケイ素化合物としてシランカップリング剤等を添加し、撹拌混合する。その後、混合物中の溶媒を減圧加熱下で留去、またはろ過・乾燥を行うことによって除去する。得られた乾燥物を解砕して静電潜像現像用トナー外添剤を得る。
乾式表面処理方法:ヘンシェルミキサーにシリカコート炭酸カルシウムを仕込み、撹拌を行う。撹拌中に有機ケイ素化合物としてシランカップリング剤等を添加し、更に撹拌混合を継続する。得られた撹拌混合物を解砕して静電潜像現像用トナー外添剤を得る。
【0023】
また、使用される有機ケイ素化合物には、シランカップリング剤、反応性官能基を持つシリコーンオイル、シラザンなどが挙げられる。
【0024】
シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシランなどのアルキルシラン類、トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどのフッ素シラン類や、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
【0025】
反応性官能基を持つシリコーンオイルとしては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体、アミノ変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、シラノール変性シリコーンオイルなどの変性シリコーンオイルが挙げられる。
【0026】
シラザンとしては、ヘキサメチルジシラザンなど挙げることができる。
【0027】
そして、これらの中でも、安定した帯電性能、流動性を発現するという点から、イソブチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ヘキサメチルジシラザンを用いることが好ましい。
【0028】
なお、有機ケイ素化合物の処理量については、有機ケイ素化合物層が静電潜像現像用トナー外添剤の最外殻を形成するように表面全体を覆うものであることが好ましいが、安定した帯電性能、流動性などの効果が発現する必要最低限の処理量が確保されていれば、必ずしも炭酸カルシウムの表面全体を覆う必要はない。
具体的には、シリカ層で表面が覆われた炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、シリカコート炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理剤量をB(重量部)とするとき、0.10≦(B/S)≦0.30の関係を満たすような量で覆われていることが好ましい。
ここで、有機ケイ素化合物の処理量がB/S=0.10よりも少ない場合には安定した帯電性能、流動性などの効果を発現させることができず、一方、有機ケイ素化合物の処理量がB/S=0.30を超える場合には表面処理の際に未反応処理剤の残留により粉体がペースト状や湿潤状態になり静電潜像現像用トナー外添剤を作製することができなくなる。
【0029】
また、有機ケイ素化合物が良好に処理できているかどうかの目安としては以下に記載する疎水化度によって確認することができる。
【0030】
そして、疎水化度としては、以下の方法で測定した疎水化度が50%以上となるように覆われていることが好ましい。
(1)250mlのビーカーに純水70mlを入れ、トナー外添剤0.03gを水面上に浮かべる。
(2)300rpmの回転数で攪拌しながら、メタノールを2.6ml/minの速度で滴下する。
(3)粉体濡れ性試験機WET−100P(レスカ社製)にてメタノール滴下開始直後からの分散液の透過率を測定し、透過率が最小となった時点の分散液中のメタノール濃度(疎水化度)を測定する。
【0031】
本発明の静電潜像現像用トナー外添剤は上記構成を有することによって、温湿度が変化する環境の下においても安定性した帯電性能を発現することができるが、具体的には、下記計算式で求められる環境変動率が0〜25%であることが好ましい。
計算式:環境変動率(%)=[帯電量(L/L)−帯電量(H/H)]/帯電量(L/L)×100
(計算式中の帯電量(L/L)及び帯電量(H/H)は、以下の方法にて測定したブローオフ帯電量。
(1)L/L:温度10℃、湿度20%、H/H:温度30℃、湿度80%の条件で12時間暴露したトナー外添剤0.4gとフェライト96gを混合。
(2)前記混合物0.05gを窒素ブロー圧:0.5kg/cm、ブロー時間:20秒の条件でブローオフ粉体帯電量測定装置TB−200(東芝ケミカル社製)にて測定。)
【0032】
(静電潜像現像用トナー外添剤の製造方法)
本発明の静電潜像現像用トナー外添剤の製造方法としては、基材である炭酸カルシウムの表面をシリカ層で覆う工程と、さらにシリカコート炭酸カルシウムの表面全体を反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物層で覆う工程とを備えることが必要である。
ここで、各層の表面処理の方法に関しては上記した通りであるが、シリカ層の処理工程の際に乾燥を行ってシリカコート炭酸カルシウムを乾燥状態で得た後に、再度、水や有機溶剤に分散させて有機ケイ素化合物層の処理を行ってもよいし、乾燥作業を行わず、シリカ層の処理工程の際に処理粒子を懸濁液の状態で得ておき、そのままの状態で有機ケイ素化合物層の処理を行ってもよい。
なお、表面処理を湿式で行った場合には、残存している溶媒を減圧蒸留や、ろ過・乾燥などの方法で除去することが必要である。
【発明の効果】
【0033】
本発明の静電潜像現像用トナー外添剤および静電潜像現像用トナー外添剤の製造方法によれば、炭酸カルシウムの表面をシリカ層で覆い、かつシリカコート炭酸カルシウムの表面全体を、反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物層で覆い、特定範囲の疎水化度を持つ構成とすることによって、帯電性能の環境安定性、流動性に優れた静電潜像現像用トナー外添剤を得ることができる。
【0034】
また、本発明の請求項3、4に係る静電潜像現像用トナー外添剤によれば、シリカの処理量および反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量を特定の範囲とすることによって、より安定した帯電性能の環境安定性、流動性を発現させることができる。
【0035】
さらに、本発明の請求項5に係る静電潜像現像用トナー外添剤によれば、反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物にシランカップリング剤及び/又は反応性官能基を持つシリコーンオイル及び/又はシラザンを用いることによって、さらに高い帯電性能の環境安定性、流動性を発現させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、実施例と比較例とを対比させて、本発明の静電潜像現像用トナー外添剤および静電潜像現像用トナー外添剤の製造方法を説明する。なお、以下に述べる実施例は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0037】
(シリカコート炭酸カルシウムの作製)
まず、基材となる炭酸カルシウム(平均一次粒子径20nm)のスラリーに、3%ケイ酸ナトリウム水溶液を、炭酸カルシウム100重量部に対してシリカ換算で5重量部添加し、撹拌、混合した。その後、3.5%希塩酸水溶液を、ケイ酸ナトリウムを中和するのに必要な量だけ添加した。そして、中和後のスラリーをろ過することによって脱水し、80℃の雰囲気下で乾燥し、粉砕することによってシリカコート炭酸カルシウムを得た。
なお、基材の炭酸カルシウムのBET比表面積をC(m/g)、蛍光X線分析装置ZSX(リガク社製)を用いて、CaおよびSiを定量することによって算出された炭酸カルシウム100重量部に対するシリカのコート量をA(重量部)としたときに求められるA/Cの値は0.06であった。
【0038】
次に、上記において作製したシリカコート炭酸カルシウム100重量部をトルエン300重量部に分散し、有機ケイ素化合物としてオクチルトリエトキシシランを10重量部添加し、撹拌混合した。そして、得られたスラリーをサンドグラインダーミルにより湿式解砕してシリカコート炭酸カルシウムの凝集を解し、その後、減圧加熱下でトルエンを留去した。得られた乾燥物を解砕して、実施例1の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、シリカコート炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、シリカコート炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.13であった。
【実施例2】
【0039】
オクチルトリエトキシシランの表面処理量を7.5重量部に変更した以外は実施例1と同様の処理を行い、実施例2の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、シリカコート炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、シリカコート炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.10であった。
【実施例3】
【0040】
オクチルトリエトキシシランの表面処理量を22.5重量部に変更した以外は実施例1と同様の処理を行い、実施例3の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、シリカコート炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、シリカコート炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.30であった。
【実施例4】
【0041】
有機ケイ素化合物として3−アミノプロピルトリエトキシシランを7重量部とオクチルトリエトキシシランを7重量部使用した以外は実施例1と同様の処理を行い、実施例4の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、シリカコート炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、シリカコート炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.19であった。
【実施例5】
【0042】
平均一次粒子径が45nmの炭酸カルシウムを使用し、有機ケイ素化合物として3−アミノプロピルトリエトキシシランを5重量部とメチルハイドロジェンポリシロキサンを5重量部使用した以外は実施例1と同様の処理を行い、実施例5の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、基材の炭酸カルシウムのBET比表面積をC(m/g)、蛍光X線分析装置ZSX(リガク社製)を用いて、CaおよびSiを定量することによって算出されたシリカのコート量をA(重量部)としたときに求められるA/Cの値は0.09であった。
また、シリカコート炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、シリカコート炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.18であった。
【実施例6】
【0043】
有機ケイ素化合物としてイソブチルトリメトキシシランを15重量部使用した以外は実施例5と同様の処理を行い、実施例6の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、シリカコート炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、シリカコート炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.27であった。
【実施例7】
【0044】
有機ケイ素化合物としてオクチルトリエトキシシランを5.5重量部使用した以外は実施例5と同様の処理を行い、実施例7の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、シリカコート炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、シリカコート炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.10であった。
【実施例8】
【0045】
有機ケイ素化合物としてヘキサメチルジシラザンを10重量部使用した以外は実施例5と同様の処理を行い、実施例8の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、シリカコート炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、シリカコート炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.18であった。
【実施例9】
【0046】
有機ケイ素化合物としてトリフルオロプロピルトリメトキシシランを7.5重量部とイソブチルトリメトキシシランを7.5重量部使用した以外は実施例5と同様の処理を行い、実施例9の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、シリカコート炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、シリカコート炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.27であった。
【実施例10】
【0047】
平均一次粒子径が80nmの炭酸カルシウムを使用し、3%ケイ酸ナトリウム水溶液を、炭酸カルシウム100重量部に対してシリカ換算で2重量部添加し、撹拌、混合した。その後、3.5%希塩酸水溶液を、ケイ酸ナトリウムを中和するのに必要な量だけ添加した。そして、中和後のスラリーをろ過することによって脱水し、80℃の雰囲気下で乾燥し、粉砕することによってシリカコート炭酸カルシウムを得た。
なお、基材の炭酸カルシウムのBET比表面積をC(m/g)、蛍光X線分析装置ZSX(リガク社製)を用いて、CaおよびSiを定量することによって算出されたシリカのコート量をA(重量部)としたときに求められるA/Cの値は0.09であった。
【0048】
次に、上記において作製したシリカコート炭酸カルシウム100重量部をトルエン150重量部に分散し、有機ケイ素化合物として3−アミノプロピルトリエトキシシランを1.5重量部とメチルハイドロジェンポリシロキサンを1.5重量部添加し、撹拌混合した。そして、得られた混合物を減圧加熱下でトルエンを留去した。得られた乾燥物を解砕して、実施例10の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、シリカコート炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、シリカコート炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.18であった。
【実施例11】
【0049】
有機ケイ素化合物としてオクチルトリエトキシシランを5重量部使用した以外は実施例10と同様の処理を行い、実施例11の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、シリカコート炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、シリカコート炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.29であった。
【実施例12】
【0050】
平均一次粒子径が100nmの炭酸カルシウムを使用し、3%ケイ酸ナトリウム水溶液を、炭酸カルシウム100重量部に対してシリカ換算で2重量部添加し、撹拌、混合した。その後、3.5%希塩酸水溶液を、ケイ酸ナトリウムを中和するのに必要な量だけ添加した。そして、中和後のスラリーをろ過することによって脱水し、80℃の雰囲気下で乾燥し、粉砕することによってシリカコート炭酸カルシウムを得た。
なお、基材の炭酸カルシウムのBET比表面積をC(m/g)、蛍光X線分析装置ZSX(リガク社製)を用いて、CaおよびSiを定量することによって算出されたシリカのコート量をA(重量部)としたときに求められるA/Cの値は0.17であった。
【0051】
次に、上記において作製したシリカコート炭酸カルシウムを100重量部使用し、有機ケイ素化合物としてオクチルトリエトキシシランを2.5重量部使用した以外は実施例1と同様の処理を行い、実施例12の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、シリカコート炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、シリカコート炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.16であった。
【実施例13】
【0052】
有機ケイ素化合物としてオクチルトリエトキシシランを1.6重量部使用した以外は実施例12と同様の処理を行い、実施例13の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、シリカコート炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、シリカコート炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.10であった。
【実施例14】
【0053】
有機ケイ素化合物としてオクチルトリエトキシシランを4.8重量部使用した以外は実施例12と同様の処理を行い、実施例14の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、シリカコート炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、シリカコート炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.30であった。
【実施例15】
【0054】
平均一次粒子径が150nmの炭酸カルシウムを使用し、3%ケイ酸ナトリウム水溶液を、炭酸カルシウム100重量部に対してシリカ換算で2重量部添加し、撹拌、混合した。その後、3.5%希塩酸水溶液を、ケイ酸ナトリウムを中和するのに必要な量だけ添加した。そして、中和後のスラリーをろ過することによって脱水し、80℃の雰囲気下で乾燥し、粉砕することによってシリカコート炭酸カルシウムを得た。
なお、基材の炭酸カルシウムのBET比表面積をC(m/g)、蛍光X線分析装置ZSX(リガク社製)を用いて、CaおよびSiを定量することによって算出されたシリカのコート量をA(重量部)としたときに求められるA/Cの値は0.18であった。
【0055】
次に、上記において作製したシリカコート炭酸カルシウム100重量部使用し、有機ケイ素化合物として3−アミノプロピルトリエトキシシランを1重量部とメチルハイドロジェンポリシロキサンを1重量部使用した以外は実施例1と同様の処理を行い、実施例15の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、シリカコート炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、シリカコート炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.17であった。
【実施例16】
【0056】
実施例15において作製したシリカコート炭酸カルシウム100重量部をヘンシェルミキサーに仕込み、500rpmで撹拌しながら有機ケイ素化合物として3−アミノプロピルトリエトキシシランを1重量部とメチルハイドロジェンポリシロキサンを1重量部添加した。その後、回転数を1,000rpmに変更し、60分撹拌混合を継続した。得られた処理物を解砕して、実施例16の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、シリカコート炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、シリカコート炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.17であった。
【実施例17】
【0057】
平均一次粒子径が150nmの炭酸カルシウムを使用し、3%ケイ酸ナトリウム水溶液を、炭酸カルシウム100重量部に対してシリカ換算で3重量部添加し、撹拌、混合した。その後、3.5%希塩酸水溶液を、ケイ酸ナトリウムを中和するのに必要な量だけ添加した。そして、中和後のスラリーをろ過することによって脱水し、80℃の雰囲気下で乾燥し、粉砕することによってシリカコート炭酸カルシウムを得た。
なお、基材の炭酸カルシウムのBET比表面積をC(m/g)、蛍光X線分析装置ZSX(リガク社製)を用いて、CaおよびSiを定量することによって算出されたシリカのコート量をA(重量部)としたときに求められるA/Cの値は0.25であった。
【0058】
次に、上記において作製したシリカコート炭酸カルシウムを100重量部使用し、有機ケイ素化合物としてオクチルトリエトキシシランを3重量部使用した以外は実施例1と同様の処理を行い、実施例17の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、シリカコート炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、シリカコート炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.23であった。
【実施例18】
【0059】
平均一次粒子径が150nmの炭酸カルシウムを使用し、3%ケイ酸ナトリウム水溶液を、炭酸カルシウム100重量部に対してシリカ換算で3.5重量部添加し、撹拌、混合した。その後、3.5%希塩酸水溶液を、ケイ酸ナトリウムを中和するのに必要な量だけ添加した。そして、中和後のスラリーをろ過することによって脱水し、80℃の雰囲気下で乾燥し、粉砕することによってシリカコート炭酸カルシウムを得た。
なお、基材の炭酸カルシウムのBET比表面積をC(m/g)、蛍光X線分析装置ZSX(リガク社製)を用いて、CaおよびSiを定量することによって算出されたシリカのコート量をA(重量部)としたときに求められるA/Cの値は0.30であった。
【0060】
次に、上記において作製したシリカコート炭酸カルシウムを100重量部使用し、有機ケイ素化合物としてオクチルトリエトキシシランを3重量部使用した以外は実施例1と同様の処理を行い、実施例18の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、シリカコート炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、シリカコート炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.23であった。
【実施例19】
【0061】
平均一次粒子径が150nmの炭酸カルシウムを使用し、3%ケイ酸ナトリウム水溶液を、炭酸カルシウム100重量部に対してシリカ換算で4重量部添加し、撹拌、混合した。その後、3.5%希塩酸水溶液を、ケイ酸ナトリウムを中和するのに必要な量だけ添加した。そして、中和後のスラリーをろ過することによって脱水し、80℃の雰囲気下で乾燥し、粉砕することによってシリカコート炭酸カルシウムを得た。
なお、基材の炭酸カルシウムのBET比表面積をC(m/g)、蛍光X線分析装置ZSX(リガク社製)を用いて、CaおよびSiを定量することによって算出されたシリカのコート量をA(重量部)としたときに求められるA/Cの値は0.40であった。
【0062】
次に、上記において作製したシリカコート炭酸カルシウムを100重量部使用し、有機ケイ素化合物としてオクチルトリエトキシシランを3重量部使用した以外は実施例1と同様の処理を行い、実施例17の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、シリカコート炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、シリカコート炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.21であった。
【比較例1】
【0063】
シリカコートを行わなかったこと以外は実施例1と同様の処理を行い、比較例1の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.14であった。
【比較例2】
【0064】
シリカコートを行わなかったこと以外は実施例5と同様の処理を行い、比較例2の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.20であった。
【比較例3】
【0065】
シリカコートを行わなかったこと以外は実施例10と同様の処理を行い、比較例3の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.20であった。
【比較例4】
【0066】
シリカコートを行わなかったこと以外は実施例12と同様の処理を行い、比較例4の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.19であった。
【比較例5】
【0067】
シリカコートを行わずに有機ケイ素化合物としてオクチルトリエトキシシランを2重量部使用した以外は実施例15と同様の処理を行い、比較例5の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.18であった。
【比較例6】
【0068】
有機ケイ素化合物として3−アミノプロピルトリエトキシシランを0.5重量部とメチルハイドロジェンポリシロキサンを0.5重量部使用した以外は実施例5と同様の処理を行い、比較例6の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、シリカコート炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、シリカコート炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.02であった。
【比較例7】
【0069】
有機ケイ素化合物として3−アミノプロピルトリエトキシシランを10重量部とメチルハイドロジェンポリシロキサンを10重量部使用した以外は実施例5と同様の処理を行った。しかしながら、トルエン留去後も余剰の処理剤が液体として残留してペースト化してしまい乾燥物を得ることができなかったため、静電潜像現像用トナー外添剤を得ることができなかった。
なお、シリカコート炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、シリカコート炭酸カルシウム100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.36であった。
【0070】
(参考例1)
平均一次粒子径16nmのシリカ(日本アエロジル社製、品番:#130)100重量部をトルエン1500重量部に分散し、3−アミノプロピルトリエトキシシランを14重量部とオクチルトリエトキシシランを14重量部添加し、撹拌混合後した。その後、減圧加熱下でトルエンを留去し、得られた乾燥物を解砕して参考例1の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、シリカのBET比表面積をS(m/g)、シリカ100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.22であった。
【0071】
(参考例2)
平均一次粒子径15nmの酸化チタン(テイカ社製、品番:MT−150A)100重量部をトルエン300重量部に分散し、オクチルトリエトキシシランを16重量部添加し、撹拌混合後した。そして、得られたスラリーをサンドグラインダーミルにより湿式解砕して酸化チタンの凝集を解し、その後、減圧加熱下でトルエンを留去した。得られた乾燥物を解砕して、参考例2の静電潜像現像用トナー外添剤を得た。
なお、酸化チタンのBET比表面積をS(m/g)、酸化チタン100重量部に対する反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)としたときに求められるB/Sの値は0.16であった。
【0072】
(各特性の評価)
次に、各実施例、比較例、参考例で得られた静電潜像現像用トナー外添剤の各特性について評価を行った。なお、各特性の評価方法は下記に示す通りである。
【0073】
(ブローオフ帯電量測定:帯電性能の環境安定性(環境変動率)の評価)
ブローオフ粉体帯電量測定装置TB−200(東芝ケミカル社製)を使用して下記の方法で測定した。なお、静電潜像現像用トナー外添剤は、3水準の温湿度環境下(L/L:10℃/20%、M/M:20℃/50%、H/H:30℃/80%)に12時間暴露した物を使用した。
1)各静電潜像現像用トナー外添剤0.4gとフェライト96gをポリプロピレン製の容器に量り取り、2軸のローター上で100rpmの速度で15分間回転して混合。
2)その後、上記混合物0.05gを500メッシュの金網上に量り取り、窒素ブロー圧:0.5kg/cm、ブロー時間:20秒の条件でブローオフ帯電量を測定。
【0074】
さらに、測定した帯電量から下記計算式を用いて、帯電性能の環境安定性(環境変動率)を求めた。計算式:環境変動率(%)=[帯電量(L/L)−帯電量(H/H)]/帯電量(L/L)×100
【0075】
(疎水化度評価)
粉体濡れ性試験機WET−100P(レスカ社製)を使用して下記の方法で測定した。
1)250mlのトールビーカーに純水70mlを入れ、静電潜像現像用トナー外添剤0.03gを水面上に浮かべる。
2)スターラーにより300rpmで攪拌しながら、定量ポンプでメタノールを2.6ml/minで滴下。
3)滴下直後からこの分散液の透過率を測定し、透過率が最小となった時点のメタノール濃度(疎水化度)を測定。
【0076】
(流動性(分散性)の評価)
架橋ポリスチレン樹脂SBX−8(積水化成品工業社製)50gに静電潜像現像用トナー外添剤0.5gを添加し、スピードブレンダーで10,300rpm×5分間撹拌することによって、静電潜像現像用トナー外添剤を外添した疑似トナーを作製した。
【0077】
次に、Powder Tester MODEL PT−S(ホソカワミクロン社製)に、下から目開き25μm、32μm、45μmのふるいを順番にセットし、最上段の45μmメッシュのふるい上に上記疑似トナーを2g量り取り、振動目盛り1mmで30秒振動した。振動後、各ふるいに残ったトナー重量を量り、下記計算式を用いて凝集度を求めた。なお、凝集度の数字が小さいほど、凝集が少ない、すなわち流動性が良好となる。
計算式:(45μmのふるいに残ったトナー重量/2)×100+(32μmのふるいに残ったトナー重量/2)×100×(3/5)+(25μmのふるいに残ったトナー重量/2)×100×(1/5)
【0078】
さらに、上記疑似トナーを、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて7,000倍および30,000倍の倍率で写真撮影し、撮影した写真から、樹脂表面に外添された粒子の凝集状態を観察した。凝集少ない:○、凝集やや多い:△、凝集多い:×、という3つの基準にて目視評価することによって、分散性(凝集状態)を評価した。
【0079】
評価結果を表1〜3に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【0083】
まず、表1のブローオフ帯電量から求められる環境変動率の結果から、シリカ層と有機ケイ素化合物層を有する実施例の静電潜像現像用トナー外添剤は、温湿度が変化する環境の下においてもいずれも0〜25%と安定した帯電性能を発現することがわかる。
一方、シリカ層がない比較例1〜5の静電潜像現像用トナー外添剤では、環境変動率が38〜100%と著しく悪化することがわかる。これは、シリカ層がないことによって有機ケイ素化合物を添加したにもかかわらず、有機ケイ素化合物が表面に化学結合せずに有機ケイ素化合物層が形成されなかったことが原因と考えられる。
また、シリカ層を有している場合でも、有機ケイ素化合物の処理量が少ない(B/S=0.02)、すなわちシリカコート炭酸カルシウムの表面に必要最低限の有機ケイ素化合物層が形成されていない比較例6の静電潜像現像用トナー外添剤では、環境変動率が67%と悪くなることがわかる。
【0084】
次に、疎水化度についても表1の結果から、上記の環境変動率の評価結果と同様のことがわかり、シリカ層と有機ケイ素化合物層を有する実施例の静電潜像現像用トナー外添剤は、疎水化度がいずれも50%以上と安定した疎水性を発現することがわかる。
一方、シリカ層がない比較例1〜5の静電潜像現像用トナー外添剤では、疎水化度が7〜26%と著しく悪化することがわかる。これは、シリカ層がないことによって有機ケイ素化合物を添加したにもかかわらず、有機ケイ素化合物が表面に化学結合せずに有機ケイ素化合物層が形成されなかったことが原因と考えられる。
また、シリカ層を有している場合でも、有機ケイ素化合物の処理量が少ない(B/S=0.02)、すなわちシリカコート炭酸カルシウムの表面に必要最低限の有機ケイ素化合物層が形成されていない比較例6の静電潜像現像用トナー外添剤では、疎水化度が0%となり疎水性を示さなくなることがわかる。
【0085】
次に、凝集度、分散性についても表1の結果から、上記の環境変動率の評価結果と同様のことがわかる。特に、表1の凝集度、分散性の結果を同じ平均一次粒子径ごとに整理した表2、3の結果を見ると、炭酸カルシウムの平均一次粒子径が共に20nmである、実施例1〜4と比較例1の静電潜像現像用トナー外添剤では、凝集度、分散性ともに実施例1〜4の静電潜像現像用トナー外添剤が良好であることがわかる。また、この結果は平均一次粒子径が45nm、80nm、100nm、150nmになってもほぼ同様であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の静電潜像現像用トナー外添剤および静電潜像現像用トナー外添剤の製造方法は、複写機やプリンターなどの電子写真機器に用いられるトナー外添剤に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材である炭酸カルシウムの表面がシリカ層で覆われており、さらにシリカコート炭酸カルシウムの表面全体が反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物層で覆われていることを特徴とする静電潜像現像用トナー外添剤。
【請求項2】
基材である炭酸カルシウムの表面がシリカ層で覆われており、
さらにシリカコート炭酸カルシウムの表面が、
反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物層によって、
以下の方法で測定した疎水化度が50%以上となるように覆われていることを特徴とする静電潜像現像用トナー外添剤。
(1)250mlのビーカーに純水70mlを入れ、トナー外添剤0.03gを水面上に浮かべる
(2)300rpmの回転数で攪拌しながら、メタノールを2.6ml/minの速度で滴下する
(3)粉体濡れ性試験機WET−100P(レスカ社製)にてメタノール滴下開始直後からの分散液の透過率を測定し、透過率が最小となった時点の分散液中のメタノール濃度(疎水化度)を測定
【請求項3】
前記シリカコート炭酸カルシウムが、
前記炭酸カルシウムのBET比表面積をC(m/g)、炭酸カルシウム100重量部に対するシリカの処理量をA(重量部)とするとき、0.05≦(A/C)≦0.40の関係を満たしていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の静電潜像現像用トナー外添剤。
【請求項4】
前記シリカ層で表面が覆われた炭酸カルシウムのBET比表面積をS(m/g)、前記シリカコート炭酸カルシウム100重量部に対する前記反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物の処理量をB(重量部)とするとき、0.10≦(B/S)≦0.30の関係を満たしていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー外添剤。
【請求項5】
前記反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物が、
シランカップリング剤及び/又は反応性官能基を持つシリコーンオイル及び/又はシラザンであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー外添剤。
【請求項6】
下記計算式で求められる環境変動率が、
0〜25%であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー外添剤。
計算式:環境変動率(%)=[帯電量(L/L)−帯電量(H/H)]/帯電量(L/L)×100
(計算式中の帯電量(L/L)及び帯電量(H/H)は、以下の方法にて測定したブローオフ帯電量
(1)L/L:温度10℃、湿度20%、H/H:温度30℃、湿度80%の条件で12時間暴露したトナー外添剤0.4gとフェライト96gを混合
(2)前記混合物0.05gを窒素ブロー圧:0.5kg/cm、ブロー時間:20秒の条件でブローオフ粉体帯電量測定装置TB−200(東芝ケミカル社製)にて測定)
【請求項7】
基材である炭酸カルシウムの表面をシリカ層で覆う工程と、さらにシリカコート炭酸カルシウムの表面全体を反応性官能基を持つ有機ケイ素化合物層で覆う工程とを備えることを特徴とする静電潜像現像用トナー外添剤の製造方法。

【公開番号】特開2012−88462(P2012−88462A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234151(P2010−234151)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000215800)テイカ株式会社 (108)
【出願人】(391009187)株式会社白石中央研究所 (9)
【Fターム(参考)】