説明

静電潜像評価方法、静電潜像評価装置および画像形成装置

【課題】耐ノイズ性が高く,僅かな解像力の差異が抽出可能な静電潜像評価方法、静電潜像評価装置、画像形成装置を得る。
【解決手段】静電潜像パターンが形成された光導電性試料の面を荷電粒子ビームにより走査し,パターンによる電気的影響を受けた荷電粒子を捕獲して強度信号を検出し,強度信号から潜像パターンを含む断面プロファイルを抽出し,露光部,非露光部の強度信号から基準量,特徴量を抽出し,光導電性試料の潜像解像力を算出する。空間周波数の異なる複数の静電潜像パターンを光導電性試料の面に形成し,それらの断面プロファイルにおける露光部,非露光部の強度信号のうち,最も空間周波数の低いパターンの露光部における強度信号値,パターン外の非露光部における強度信号値を基準量として,各空間周波数において潜像の解像力を算出し,潜像のレスポンス関数を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に用いられる感光体の静電潜像評価方法、静電潜像評価装置に関するものであり、さらに、これらの評価方法、評価装置によって評価された感光体を用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やレーザプリンタといった電子写真方式の画像形成装置では,画像の出力に際して,通常,以下の作像工程を経る。
a.光導電性の感光体の表面を均一に帯電させる帯電工程
b.感光体の表面に光を照射して光導電性により静電潜像を形成する露光工程
c.帯電したトナー粒子を用いて,感光体表面に可視画像を形成する現像工程
d.現像された可視画像を紙片等の転写材に転写する転写工程
e.転写された画像を転写材上に融着・固定する定着工程
f.可視画像転写後の感光体上の残留トナーを清掃するクリーニング工程
g.感光体上の残留電荷を除電する除電工程
【0003】
これらの工程それぞれでのプロセスファクタやプロセスクオリティは,最終的な出力画像の品質に大きく影響を与える。近年は,高画質に加え,高耐久性,高安定性,さらには省エネルギ化など環境に優しい作像プロセスの要求がより高まって来ており,各工程のプロセスクオリティの向上が強く求められている。作像工程において,帯電・露光により感光体上に形成される静電潜像は「トナー粒子の挙動に直接影響を与えるファクタ」であり,感光体上における静電潜像の品質評価が重要となる。感光体上の静電潜像を観測し,その結果を設計にフィードバックすることにより,帯電工程や露光工程のプロセスクオリティの向上を図ることができ,その結果,画質・耐久性・安定性や省エネルギ化のさらなる向上が期待できる。
【0004】
光導電性の感光体等の誘電体における表面電荷分布あるいは表面電位分布をミクロンオーダーで高分解能に計測する方法として,特許文献1,2記載のものが知られている。これら特許文献に記載された測定方法では,測定試料の表面が荷電粒子ビームにより走査され,測定試料表面で発生する2次電子が検出される。この方法の場合,直接に測定されるのは測定試料表面の電界分布であり,この電界分布に基づいて表面電位分布が演算的に求められる。
また,上記表面電位分布の計測方法を用い,光導電性の感光体等の評価を行う方法として特許文献3記載のものが知られている。特許文献3記載のものは,解像度検査用のマスクパターンの光像を投影することにより静電潜像パターンを形成し,そのパターンに含まれるピッチの異なる複数の基本パターンにおいて,どのピッチの基本パターンまで識別可能かを観測することにより,光導電性の感光体等の解像力を評価するものである。
【0005】
【特許文献1】特開2003−295696
【特許文献2】特開2003−305881
【特許文献3】特開2004−233261
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3に記載されている評価方法においては,基本パターン対の識別の可否を,人間が画像を目視することより判断し解像力を評価するが,人間の定性的な判断のプロセスが介在していることで,判断結果にばらつきが生じる。また,画像によっては識別の可否の判断が難しい場合が多く,判断結果が判断実施者毎に異なる,あるいは判断する者が同一であっても,判断する者の肉体的および精神的な状態(疲労度など)如何により判断結果が異なる,といった問題が生じる。
【0007】
さらに,パターンが解像できているか否かの2値での判断であるが故に,潜像パターンの解像レベルの情報(すなわち「つぶれ度合い」や「かすれ度合い」といった中間的な情報)を判断結果に反映させることができない。このことにより,例えば,わずかに解像力の異なる感光体に関してパターンの比較を行った際に,その差異を抽出することが困難となる。
【0008】
以上のことを鑑み,本発明は,耐ノイズ性が高く,僅かな解像力の差異が抽出可能な静電潜像評価方法、静電潜像評価装置を提供することを目的とする。
また,上記評価方法または評価装置で評価されて所定の性能を有する感光体を備えることで、より高い画像品質を得ることができる画像形成装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、帯電と光像の露光により静電潜像パターンが形成された光導電性試料の面を荷電粒子ビームにより2次元的に走査し,上記静電潜像パターンによる電気的影響を受けた荷電粒子を捕獲して,その強度信号を上記面上の位置に対応させて検出し,検出した強度信号から静電潜像パターンを含む断面プロファイルを抽出し,上記断面プロファイルにおける露光部,非露光部の強度信号から基準量および特徴量を抽出し,光導電性試料の潜像解像力を算出する静電潜像評価方法であって,空間周波数の異なる複数の静電潜像パターンを光導電性試料の面に形成し,各静電潜像パターンの断面プロファイルにおける露光部,非露光部の強度信号のうち,最も空間周波数の低い静電潜像パターンの露光部における強度信号値,および上記静電潜像パターン外の非露光部における強度信号値,を基準量として用い,各空間周波数において上記潜像の解像力を算出することにより,潜像のレスポンス関数を算出することを最も主要な特徴とする。
【0010】
本発明はまた、静電潜像パターンを形成するための帯電手段及び光像露光手段と,静電潜像パターンが形成された光導電性試料の上記静電潜像パターン形成面を荷電粒子ビームで2次元的に走査する荷電粒子ビーム走査手段と,上記静電潜像パターンによる電気的影響を受けた荷電粒子を捕獲してその強度信号を上記静電潜像パターン形成面上の位置に対応させて検出し,上記静電潜像パターンにおける電荷分布状態を観測する評価手段と,を備えた静電潜像評価装置であって,空間周波数の異なる複数の静電潜像パターンを形成する上記光像露光手段と,各パターンの断面プロファイルにおける露光部,非露光部の強度信号から特徴量を抽出する特徴量抽出手段と,各静電潜像パターンの断面プロファイルにおける露光部,非露光部の強度信号のうち,最も空間周波数の低い静電潜像パターンの露光部における強度信号値,および上記静電潜像パターン外の非露光部における強度信号値を基準量として抽出する基準量抽出手段と,上記特徴量および基準量を用い,各空間周波数において解像力を算出することにより,静電潜像のレスポンス関数を算出する解像力算出手段と,を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
解像力評価手段として,各静電潜像パターンの断面プロファイルにおける露光部,非露光部の強度信号のうち,最も空間周波数の低い静電潜像パターンの露光部における強度信号値,および静電潜像パターン外の非露光部における強度信号値を基準量として抽出し,これを潜像解像力算出に用いることにより,強度画像の輝度調整ばらつきの影響を受けることなく,かつ僅かな静電潜像解像力の差異に関して評価が可能な評価方法または評価装置を得ることができる。
【0012】
静電潜像評価方法または静電潜像評価装置において,最も空間周波数の低い静電潜像パターンの露光部における強度信号値との差分をとって補正した特徴量を用いて静電潜像パターンの解像力を算出することにより,強度画像の輝度調整ばらつきの影響を受けることなく,僅かな静電潜像解像力の差異に関して評価が可能な評価方法または評価装置を得ることができる。
【0013】
静電潜像評価方法または静電潜像評価装置において,潜像パターンの断面プロファイルと露光パターンとの一致度を,異なる複数の光像露光エネルギ条件において算出し比較することにより,解像力が最高になる光像露光エネルギ条件を特定することができる。
【0014】
上記静電潜像評価方法または静電潜像評価装置を用いて感光体の解像力の高低を判別し、所定の高解像力が得られるものと評価された感光体を画像形成装置に搭載することにより,画像品質の高い画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明にかかる静電潜像評価方法、静電潜像評価装置および画像形成装置の実施例を、図面を用いて説明する。
まず、静電潜像評価装置の概要,および静電潜像評価方法に基づく評価過程を,図1(a)を基に説明する。図1(a)は静電潜像評価装置の実施の1形態を示す図である。符号11は荷電粒子銃,12はアパーチャ,13は荷電粒子に対するコンデンサレンズ,14はビームブランカ,15は荷電粒子ビームに対する走査レンズ,16は荷電粒子ビームに対する対物レンズをそれぞれ示している。これら,荷電粒子銃11,アパーチャ12,コンデンサレンズ13,ビームブランカ14,走査レンズ15および対物レンズ16は,荷電粒子ビーム照射部10bを構成し,荷電粒子ビーム照射部10bの各構成部は荷電粒子ビーム制御部10aにより制御されるようになっている。荷電粒子ビーム照射部10bと荷電粒子ビーム制御部10aとは「荷電粒子ビーム走査手段」を構成している。
【0016】
図1(a)において符号17bは光源である半導体レーザ(以下「LD」ともいう),17aは光源を駆動するLD制御部,18はコリメートレンズ,19はアパーチャ,20はマスクパターン,21,22,23は「結像レンズ」を構成するレンズをそれぞれ示している。これら半導体レーザ17aから各結像レンズまでを含む構成部分は「光像露光手段」を構成している。この光像露光手段においては,半導体レーザ17aの発光の点滅や発光強度の調整・設定を司るほか,結像レンズ21,22,23とマスク20との位置関係の調整によるフォーカシングや倍率変換を行い得るようになっている。
【0017】
図1(a)において符号24は荷電粒子検出器,25aは荷電粒子検出器24からの検出信号を入力とする信号処理部,25bは解像力演算部,26はモニタ,27はプリンタ等のアウトプット装置を示している。荷電粒子検出器24,信号処理部25a,解像力演算部25b,モニタ26,アウトプット装置27は「評価手段」を構成する。
【0018】
解像力演算部25bの内部構成を図1(b)に示す。解像力演算部25bには,特徴量抽出部41a,基準量抽出部41b,特徴量補正部41c,解像力出力部41dを包含している。ここで,特徴量抽出部41aは「特徴量抽出手段」,基準量抽出部41bは「基準量抽出手段」,特徴量補正部41cは「特徴量補正手段」,解像力出力部41dは「解像力算出手段」をそれぞれ構成している。
【0019】
図1(a)において符号28は試料載置台,00は光導電性試料,29は除電用の発光素子を示す。試料載置台28は接地された金属板である。上記各部は,図示の如くケーシング30内に配設され,ケーシング内部は,真空制御部31により高度に減圧できるようになっている。すなわち,ケーシング30は「真空チャンバ」としての機能を有している。また,装置の全体はホストコンピュータ(以下「PC」という)32により制御されるようになっている。上述の,荷電粒子ビーム制御部10aや信号処理部25a等は,ホストPC32に、このホストPC32の機能の一部として設定することもできる。
【0020】
図1に示す状態において,表面が均一に帯電された光導電性試料00は試料載置台28上に載置され,ケーシング30内部は高度に減圧されている。この状態で,半導体レーザ17を点灯し,マスクパターン20の光像を光導電性試料00の均一帯電された表面上に結像させて露光する。この露光により光導電性試料00に,照射された光像に応じた、したがってマスクパターン20のパターンに対応した静電潜像パターンが形成される。
【0021】
このように、光導電性試料00の静電潜像パターンが形成された面を,荷電粒子ビームにより2次元的に走査する。即ち,荷電粒子銃11から荷電粒子のビームを放射させると,放射された荷電粒子ビームはアパーチャ12を通過してビーム径を規制されたのち,コンデンサレンズ13により集束されつつビームブランカ14を通過する。コンデンサレンズ13により集束された荷電粒子ビームは,対物レンズ16により光導電性試料00の表面上に集束される。このとき,走査レンズ15により荷電粒子ビームの向きを偏向させることにより,荷電粒子ビームが集束する位置を,光導電性試料00面上で2次元的(例えば,図面の左右方向と図面に直交する方向)に変位させることができる。
【0022】
このようにして,光導電性試料00の静電潜像パターン形成面が,荷電粒子ビームにより2次元的に走査される。走査レンズの倍率設定により,荷電粒子ビームで走査される領域のサイズを変えることが可能である。例えば,5mm×5mm程度の低倍率や,1μm×1μm程度の高倍率等,様々な倍率で観察することができる。この荷電粒子ビームにより走査するとき,荷電粒子検出器24には,所定極性の捕獲電圧が印加されている。そしてこの捕獲電圧の作用により,「静電潜像パターンによる電気的影響を受けた荷電粒子」が荷電粒子検出器24に捕獲され,その強度(単位時間当たりの捕獲粒子数)が検出され,電気信号に変換される。
【0023】
光導電性試料00の「荷電粒子ビームにより2次元的に走査される領域:S」を,2次元座標を用いてS(X,Y)で表すと,例えば,0mm≦X≦1mm,0mm≦Y≦1mmである。この領域:S(X,Y)に形成されている静電潜像パターンを,その表面電位分布:V(X,Y)とする。荷電粒子ビームによる上記領域の2次元的な走査は所定の条件のもとで行われるので,2次元的な走査の開始から終了に至る時間をT0≦T≦TFとすると,走査が行われているときの時間:Tは,走査領域:S(X,Y)内の各走査位置と1:1に対応する。
【0024】
荷電粒子検出器24に捕獲される荷電粒子は静電潜像パターンの表面電位分布:V(X,Y)の電気的影響を受けているので,時間:Tにおいて捕獲される荷電粒子の強度:F(T)は,時間:Tをパラメータとした表面電位分布:V{X(T),Y(T)}と対応関係にある。この対応関係は,基準の電位:VNにより影響される荷電粒子の強度を観測することにより知ることができ,このように知られた対応関係に基づき,荷電粒子の強度:Fを較正することにより,強度:Fに対応する電位:Vを知ることができる。従って,荷電粒子検出器24から得られる検出信号を適当な間隔でサンプリングすることにより,表面電位分布:V(X,Y)を「サンプリングに対応した微小領域」ごとに特定できる。
【0025】
上記の荷電粒子ビームは,先にも述べたように,電子ビームやイオンビーム等,電界や磁界の影響を受ける粒子のビームである。電子ビームを用いる場合であれば荷電粒子銃11としては「電子銃」が用いられ,イオンビームを用いる場合であれば「イオン銃」等が用いられる。
【0026】
以下,荷電粒子ビームとして電子ビームを用いる場合につき,具体的に説明する。このとき,荷電粒子銃11は「電子銃」であり,光導電性試料00の「静電潜像パターンの形成された面」は,電子ビームにより2次元的に走査される。光導電性試料00に静電潜像パターンを形成するには,光像による露光に先立ち,その表面を均一に帯電する必要がある。光導電性試料00の均一帯電については,帯電を観測装置外で行い,均一帯電された光導電性試料00を試料載置台28上に載置するようにしても良い。しかし,前述したように,ケーシング30の内部は高度に減圧する必要があり,光導電性試料00をセットからケーシング30内を減圧すると,電子ビームによる走査が可能になるまでに暗減衰により帯電電位が減衰し,場合によっては静電潜像パターンを観測できなくなる場合もある。この観点からすると,光導電性試料00の均一帯電はケーシング30内で「高度の減圧を実現した後」に行うことが好ましい。
【0027】
図1に示す実施の形態においては,荷電粒子ビーム走査手段を用いて,電子ビームにより光導電性試料00の表面に帯電させる。電子ビームを光導電性試料00に照射すると,照射される電子による衝撃で,光導電性試料00から「2次電子」が発生する。電子ビームとして光導電性試料00に照射される電子量と発生する2次電子の量との収支において,2次電子の放出量:R2に対する照射電子量:R1の比であるR1/R2が1以上であれば,差し引きで照射される電子の量が2次電子量を上回り,両者の差が光導電性試料00に蓄積して光導電性資料00を帯電させる。
【0028】
従って,電子銃11から放射される電子の量とその加速電圧を調整し,「比:R1/R2が1より大きくなる条件」を設定して電子ビームを2次元的に走査することにより,光導電性試料00を均一帯電させることができる。このような放出電子量と加速電圧の調整は,荷電粒子ビーム制御部10aにより行われる。また,電子ビームの走査に伴う電子ビームのオン・オフは荷電粒子ビーム制御部10aによりビームブランカ14を制御して行う。
【0029】
図2は,光導電性試料00の表面を,上記の如く電子ビームにより帯電させた状態を模型的に示している。図2に示されている光導電性試料00は,いわゆる「機能分離型感光体」と呼ばれるものであり,導電層41上に電荷発生層42を設け,その上に電荷輸送層43を形成したものである。電子銃により照射される電子は,電荷輸送層43の表面に撃ち込まれ,電荷輸送層43の表面にある電荷輸送層43の材料分子の電子軌道に捕獲され,上記分子をマイナスイオン化した状態で電荷輸送層43の表面部に留まる。この状態が光導電性試料00を帯電させた状態である。
【0030】
このように帯電した状態の光導電性試料00に光LTが照射されると,照射された光LTは電荷輸送層43を透過して電荷発生層42に至り,そのエネルギにより電荷発生層42内に正・負の電荷キャリヤを発生させる。発生した正・負の電荷キャリヤのうち,負キャリヤは,電荷輸送層43の表面の負電荷による反発力の作用で導電層41へ移動し,正キャリヤは電荷輸送層43を輸送されて同層43の表面部の負電荷(捕獲された電子)と相殺しあう。
このようにして,光導電性試料00において光LTで照射された部分では帯電電荷が減衰し,光LTの強度分布に従う電荷分布が形成される。この電荷分布のパターンが静電潜像パターンに他ならない。
【0031】
上記の如く均一に帯電された光導電性試料00に対して光像の露光を施して静電潜像パターンを形成する。この露光は,前述の「光像露光手段」により行う。すなわち,半導体レーザ17bを点灯し,マスクパターン20の像を結像レンズ21,22,23の作用により光導電性試料00の表面に結像させる。
【0032】
良好な結像特性を得るため,光像露光手段に含まれるマスクパターン20および結像レンズ21,22,23は,公知の結像光学技術に基づき,適切な位置に配置される。さらに,図1のように光像露光手段の光軸33が光導電性試料00に対し垂直でない場合,マスクパターン20は光軸33に対し適宜傾きをもって配置される。
半導体レーザ17bとしては、もちろん,光導電性試料00が感度を持つ波長領域内に発光波長を持つものが用いられる。また,露光エネルギは,光導電性試料00の面での光強度の時間積分となるので,半導体レーザ17bの点灯時間をLD制御部17aにおいて制御することにより,光導電性試料00に所望の露光エネルギによる露光を行うことができる。LD制御部17a及び半導体レーザ17bにて「露光エネルギ制御手段」とする。
【0033】
マスク20のマスクパターンは,「解像力検査用のマスクパターン」である。説明中の実施の形態においては,光導電性資料にネガ潜像を形成できるように,マスクパターンもネガパターンであり,静電潜像の形成に際して光照射される部分に対応する部分が光透過性で,他の部分が遮光性である。図3にマスクパターンの1例を示す。このマスクパターンは,遮光性部分に解像力検査用のパターンを透過部として形成したものである。解像力検査用のパターンは,図示の如く「長方形形状が所定ピッチで周期的に3本並列した基本パターン」を,上記長方形の大きさ・ピッチを段階的に異ならせた複数組の基本パターン対P1〜P6として配置してなるものである。各基本パターン対の空間周波数は10〜100LinePair/mmの範囲で分布している。マスクパターンの幅Wpと空間周波数fとの関係は,f=1/(W/2)[LP/mm]として表される。一例として上記の空間周波数帯域を挙げたが,当然ながら,後述する光像露光手段での投影解像力の許す限り,上記の空間周波数帯域に限らず,さらに高い,あるいは低い,任意の空間周波数帯域の基本パターン対が使用可能である。ここでは,3本の並列パターンを基本パターンとするマスクパターンを用いているが,基本パターンは周期的な透過率変化を伴うパターンつまり2本以上の並列パターンを含むものであればよい。
【0034】
光導電性試料00に上記の如くして静電潜像パターンを形成した状態において,光導電性試料00の走査領域を,電子ビームにより2次元的に走査する。この走査により発生する2次電子を,荷電粒子検出器24により検出する。検出の対象が2次電子で負電荷であるので,荷電粒子検出器24は2次電子捕獲用に正電圧(捕獲電圧)を印加し,電子ビームの走査に伴って発生する2次電子を正電圧により吸引して捕獲する。捕獲された電子はシンチレータによりシンチレーション輝度に変換し,これをさらに電気信号に変換する。
【0035】
光導電性試料00の表面と荷電粒子検出器24の間の空間部分には,光導電性試料00表面の電荷(静電潜像を形成する負電荷)と荷電粒子検出器24に印加されている正極性の捕獲電圧とにより「電位勾配」が形成されている。上記電位勾配により,前述の特許文献3において公知の原理に基づき,上記静電潜像パターンの分布に応じた強度信号が得られる。ここでいう強度とは,2次電子の検出強度(2次電子数)のことであり,静電潜像パターンが形成されている箇所では強度が低く,形成されていない箇所では強度が高い信号となる。
【0036】
荷電粒子検出器24で得られる上記強度信号を信号処理部25aで,適当なサンプリング時間でサンプリングすれば,前述の如く,サンプリング時刻:Tをパラメータとして,表面電位分布:V(X,Y)を「サンプリングに対応した微小領域」ごとに特定でき,信号処理部25aにより上記表面電荷分布(電位コントラスト像):V(X,Y)を,図4(a)に示すような2次元的な強度画像データとして構成できる。
上記の如くして得られる強度画像データは,図3に示した基本パターンP1〜P6を含むマスクパターン20により形成された静電潜像パターンL1〜L6を含むものとなる。ただし,光像露光手段における露光エネルギが過剰な場合には,図4(b)に示すように,3本のパターンを識別することができない,つぶれた状態の強度画像データとなる。
【0037】
以下,解像力演算部25bにおける解像力の算出過程について説明する。ここで言う解像力とは,静電潜像の空間的分解能を表す指標、例えば、後に述べる,コントラスト,レスポンス関数などの総称と定義する。解像力算出に先立ち,前述の光像露光手段によりマスクパターン露光を行い,評価対象となる図4(a)の強度画像データを取得しておく。
【0038】
解像力演算部25bでは,図4(a)の強度画像データから抽出できる静電潜像パターンを含む断面プロファイルよりコントラストの算出を行う。図5(a)に,図4(a)に示す直線CS1,すなわち静電潜像パターン対L1の断面プロファイルを示す。図5(a)より,解像力の指標となる特徴量である,露光部の強度Imin,非露光部の強度Imax,さらに,高輝度側の基準量となるパターン外の非露光部の強度ISTD−T,を抽出する。また,低輝度側の基準量ISTD−Bについては,形成された静電潜像パターンL1〜L6のうち,最も空間周波数の低いパターン,すなわちパターンL1の露光部の強度IminをISTD−Bとして用いる。若しくは,上記マスクパターン露光の際に,露光エネルギ制御手段により露光エネルギを高出力側に調整し,パターンがつぶれた状態の図4(b)に示す強度画像データの断面プロファイルである図5(b)からISTD−T,ISTD−Bを抽出しても構わない。
【0039】
また,高輝度側の基準量について,パターン外の非露光部の強度ではなく,図5a-2(c)に示すように,最も空間周波数の低いパターンにおけるImaxを,ISTD−Tとして用いることも可能である。また,特徴量として抽出したImax,Iminに関して,図5(a)においては複数の露光部,非露光部の強度がそれぞれ一定である例を示したが,図5(d)のように一定でない場合には,各々の強度Imax(n),Imin(n)(但しn=1,2,3,・・・)を抽出した上で、式1により平均化して用いることができる。
式1

【0040】
さらに,図4(a)に示す静電潜像パターン対L1〜L6においてコントラストを算出し,それを静電潜像パターン対L1〜L6に対応したマスクパターン20の基本パターン対P1〜P6の空間周波数毎にプロットすることにより,図6に示すようなレスポンス関数(解像力の空間周波数特性)を得ることができる。コントラストの算出には,先に述べた方法により抽出した特徴量Imin,Imax,基準量ISTD−T,ISTD−Bと,式2を用いる。
式2

【0041】
式2では,Imax,Iminそれぞれについて高輝度側の基準量ISTD−Bとの差分値を求め,更にISTD−TとISTD−Bの差分値で除すことにより補正した特徴量Imax−c1,Imin−c1を用いてコントラストを算出している。この値を用いることにより,強度画像の画像コントラストおよび輝度調整ばらつきによってIminが変動する影響を回避することができ,安定的にコントラストを算出することができる。
【0042】
図8(a)に,同一の解像力を有する感光体サンプルを用い,異なる画像コントラスト,画像輝度を設定して取得した2つの断面プロファイル1,2を示す。これらの断面プロファイルをもとに,従来のコントラスト算出式を用いた場合のレスポンス関数を以下に示す。
C=(Imax−Imin)/(Imax+Imin)
また,式2を用いた場合のレスポンス関数を図8(b)に示す。従来の算出式を用いた場合では,図8(a)のように,断面プロファイル1,2でレスポンス関数に違いが生じてしまうのに対し,式2を用いた場合には,図8(b)のように,画像コントラスト及び画像輝度の設定に関わらず一致させることができる。
【0043】
もう一つのコントラストの算出式として,式3がある。
式3

式3では,Imax,Iminに対し高輝度側の基準量ISTD−Bの差分をとり,さらに固定値NFを加算することにより補正した特徴量Imax−c2,Imin−c2を算出している。固定値NFには,0より大きく,1より小さい値を用いる。特に好適な範囲は0.02〜0.5程度であり,この範囲で適宜選択するとよい。
【0044】
複数のサンプルについて解像力を比較する際に,同一の固定値NFを用いることにより,式2と同様に,先の強度画像の輝度調整ばらつきによってIminが変動する影響を回避できる。また,図9に示す断面プロファイルのように,複数のパターン対においてIminが同一となる場合,式2を用いてコントラストの算出を行なうと,図10に示すように、算出されるコントラストが同一値をなってしまうが,式3を用いた場合には,Iminが同一であっても,Imaxの違いに基づき異なるコントラストを算出することが可能となる。
式2,式3のいずれにおいても,安定的にコントラストおよびレスポンス関数を算出するものであり,複数の光導電性試料の解像力特性を比較する際の評価指標として有効である。
【0045】
以上述べた解像力算出過程のフローチャートを図11に示す。これまで説明してきた手順のまとめの意味で,図11のフローを説明する。まず,強度画像データより断面プロファイルを取得する(S1)。次に、全パターン対のコントラスト算出を終了したかどうかを判定し(S2),未終了のであれば、コントラスト未算出のパターン対について,算出を開始する(S3)。次に、断面強度分布から基準量ISTD−TとISTD−Bを抽出し(S4),さらに,断面強度分布から特徴量Imax,Iminを抽出する(S5)。上記基準量、特徴量から特徴量を補正し(S6),補正した特徴量からコントラストを算出する(S7)。次に,ステップS2に戻り,全パターン対のコントラスト算出が終了していなければステップS3からステップS7を繰り返し、全パターン対のコントラスト算出が終了すれば,ステップS8に飛び,全パターン対のコントラストからレスポンス関数を算出して終了する。
【0046】
次に,解像力の算出結果に関して数値例を示す。先に述べた図8(a)は,感光体サンプルに対し,光像露光手段により空間周波数32〜57lp/mmの6つのパターン対を投影した場合の潜像の断面プロファイルである。2つのプロットは,同一の解像力を有する感光体に形成された潜像画像において,異なる画像コントラスト,画像輝度設定にて取得した2つの断面プロファイル1,2を示している。これらの2つの断面プロファイル1,2から各パターン対において特徴量Imin,Imaxを抽出した結果を表1に示す。基準量として抽出したISTD−TとISTD−Bも併せて表1外の下部に示す。
表1

【0047】
表1の数値をもとに,式2,式3をそれぞれ用いて補正した特徴量Imax−c1,Imin−c1,Imax−c2,Imin−c2を表2に示す。
表2


表2中の数値より,式2を用いた場合,および式3を用いた場合,それぞれの場合において,断面プロファイル1,2の補正後の各特徴量が一致していることがわかる。式3における固定値NFについては,0.1としている。
【0048】
表3に,表2の補正した特徴量を用いて各パターン対のコントラストを算出した結果と,特徴量を補正することなく、前記従来の算出式を用いてコントラストを算出した結果を併せて示す。
表3



従来の算出式を用いた場合では,断面プロファイル1,2で全てのパターン対のコントラストに差異があるのに対し,式2を用いた場合,および式3を用いた場合においては一致していることが確認できる。
【0049】
このように,従来の算出式を用いた場合では,断面プロファイル1,2でレスポンス関数に違いが生じてしまうのに対し,式2,式3を用いた場合には,画像コントラストおよび画像輝度の設定に関わらず一致させることが可能である。
また,表3において,式2,式3を用いた場合のパターン対L1,L2のコントラストを比較すると,式2を用いた場合の数値ではいずれも1.0で同一値であるが,式3を用いた場合の数値ではL1→0.87,L2→0.86,と異なる値となっている。式2を用いた場合,各パターン対におけるIminの値が同一であると,コントラストも同一値として出力されてしまうが,式3を用いた場合には,Iminの値が同一であっても,Imaxの値の違いを反映してコントラストの解像力の差異を抽出できる。
【0050】
以上により,式2,式3のいずれかを用いることで,画像コントラスト及び画像輝度の設定に違いに関わらずコントラスト算出結果を一致させられることが確認できる。また,式3を用いれば,特徴量に関わらず,解像力をレスポンス関数として抽出できる。
【0051】
ちなみに,上記静電潜像パターン対のコントラストは,半導体レーザ17bの露光エネルギによっても変化することにも留意する必要がある。図7に露光エネルギの高低とその際の静電潜像パターン対における断面プロファイル変化の概略を示す。露光エネルギが高い場合には実線で示すようにパターンの幅が広がる。また露光エネルギが低い場合には点線で示すようにパターンの幅が細り,Iminの強度が高くなる。すなわち,潜像が浅くなり,パターンがかすれている状態となる。この変化に対応して,露光エネルギの変化に伴う静電潜像パターン対のコントラストは,概ね図12に示すようなピークをもった曲線として変化する。このことを利用し,露光エネルギをある幅を持って変化させた際のコントラストを算出することで,図12におけるCのピーク値Cmaxをとる露光エネルギE1を見出すことが可能となる。
【0052】
露光エネルギは,先に述べたように,LD制御部17aにより点灯時間を変更することにより容易に制御することがきる。例えば複数の光導電性試料のコントラストを比較する際には,図12に示すような露光エネルギ依存性があることを考慮し,予め最適露光エネルギ(図12における露光エネルギE1)で露光した際のコントラストCmaxの値を以って比較を行う方法をとってもよい。この方法により,各光導電性試料の露光エネルギ依存性がキャンセルされた比較結果を出力することもできる。
【0053】
以上のようにして得た評価結果は、これを図1に示す表示部26に表示し,あるいは出力部27で出力する。こうすることにより,数値的指標に基づく定量的な評価結果を目視,あるいはデータとして取得することができる。
【0054】
なお,図1において、ケーシング30内にセットされた光導電性試料00が当初,何らかの原因によりその表面が不均一に帯電しているような場合には,このような帯電状態が観測乃至は評価のノイズとなる。そこで,観測における帯電工程の前に,除電用の発光素子29(半導体レーザあるいは発光ダイオードなどからなる)からの光を光導電性試料00の表面に照射し,光導電性試料00の光除電を行うことが望ましい。
発光素子29による光除電はまた,同一の光導電性試料00に対し,静電潜像パターンの形成条件を変えて複数回の観測を行うような場合,各観測に先立って行う。光除電用の発光素子29は,場合によっては省略してもよい。
【0055】
以上説明した本発明にかかる静電潜像評価方法、静電潜像評価装置を用いることにより,耐ノイズ性に優れた信頼性の高い評価を行うことができる。
上記の数値的指標に基づく定量的な評価方法および評価装置を用いることにより,潜像パターンの解像レベルの情報を反映した評価結果を得ることができる。また,このことにより,例えば,解像力の異なる光導電性試料に関して比較を行った際に,その僅かな差異を抽出することが容易となる。
【0056】
上記静電潜像評価装置を用いて評価された感光体を搭載した複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置,および上記評価に基づいて感光体の露光条件を設定した画像形成装置について説明する。図13に一般的な画像形成装置の例を示す。この画像形成装置の例においては,中心軸線の周りに一方向に回転するドラム状の感光体の周囲およびその周辺に、以下のような各ユニットが配置され、これらのユニットによりにおいて以下の工程を経ることによって画像が形成される。
a.帯電ユニット:光導電性の感光体を均一に帯電させる帯電工程
b.露光ユニット:感光体に光を照射して光導電性により静電潜像を形成する露光工程
c.現像ユニット:帯電したトナー粒子を用いて,感光体上に可視画像を形成する現像工程
d.転写ユニット:現像された可視画像を紙片等の転写材に転写する転写工程
e.定着ユニット:転写された画像を転写材上に融着・固定する定着工程
f.クリーニングユニット:可視画像転写後の感光体上の残留トナーを清掃するクリーニング工程
g.除電ユニット:感光体上の残留電荷を除電する除電工程
【0057】
前記本発明にかかる静電潜像評価方法、静電潜像評価装置を用いることによって感光体を評価し、高解像力の感光体を画像形成装置に搭載することができる。高解像力の感光体を搭載した画像形成装置について以下に説明する。画像形成装置に搭載される電子写真用感光体としては,出力画像の高品質化の観点から,静電潜像においても,ミクロンオーダーの高解像力を備えていることが望ましい。良好な品質の出力画像を得るために必要な,電子写真用感光体の解像力として好適な値は,これまでの画像形成実験の結果より以下のような範囲に収まる値であることがわかっている。先に述べた式2による評価で出力されるレスポンス関数において,「空間周波数45LP/mm以下の帯域にて,コントラスト0.9以上」であること,もしくは,式3による評価で出力されるレスポンス関数において,上記固定値を0.05とした場合に,「空間周波数45LP/mm以下の帯域にて,コントラスト0.75以上」であること,である。
【0058】
本発明の静電潜像評価方法及び装置を用いて感光体の解像力を検査することにより,上記の値を以って感光体の解像力の高低を判別することができる。このことにより,高解像力であることを明確にした上で,感光体を画像形成装置に搭載することができ,結果として,画像形成装置の高品質化に貢献できる。
【0059】
次に、感光体を露光する露光条件を設定する過程の一例を説明する。図13に示されている感光体,もしくはそれと同種の感光体について,先に述べた静電潜像評価装置,および評価方法を用いて評価し,図12に示した「露光エネルギをある幅を持って変化させた際のコントラスト変化」を算出する。これにより画像形成装置に搭載される上記感光体において潜像のコントラストを最高とすることが可能な露光エネルギE1の値を取得できる。取得した値E1に基づき,図示された露光ユニットにおいて,感光体上に到達する露光エネルギが上記E1と一致するように露光ユニットに含まれる不図示の光源の出力を調整する。
【0060】
静電潜像評価方法および静電潜像評価装置を用い,上記の過程を経ることにより,画像形成装置へ搭載される各感光体において,解像力を最高とする光像露光エネルギ条件値を特定することができる。この特定した値に基づき,画像形成装置の露光光量値を調整,決定することにより,画像形成装置の解像度を向上させ,画像品質向上に資することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明にかかる静電潜像評価装置の実施例を示すもので、(a)は光学配置図、(b)は制御系統のブロック図である。
【図2】光導電性試料の表面を電子ビームにより帯電させたときの状態を示す模式図である。
【図3】本発明に用いるマスクパターンの例を示す正面図である。
【図4】上記静電潜像評価装置の実施例の信号処理部により得られる2次元的な強度画像データをイメージ化した図であって、(a)は解像力が高い場合、(b)は解像力が低い場合の強度画像データ図である。
【図5】光導電性試料に形成される静電潜像パターンの断面プロファイルの各種例を示す線図である。
【図6】光導電性試料の解像力の空間周波数特性例を示すグラフである。
【図7】光導電性試料における露光エネルギの高低とその際の静電潜像パターン対に対する断面プロファイル変化の例を示す線図である。
【図8】光導電性試料に形成される静電潜像の二つの断面プロファイルを示すグラフで、(a)は従来のコントラスト算出式を用いた場合、(b)は本発明で採用したコントラスト算出式を用いた場合である。
【図9】光導電性試料における静電潜像の断面プロファイルの例を示す線図である。
【図10】光導電性試料に形成される静電潜像の断面プロファイルを互いに異なるコントラスト算出式を用いた場合を対比して示すグラフである。
【図11】本発明の実施例における解像力算出過程の例を示すフローチャートである。
【図12】光導電性試料における露光エネルギの変化に伴う静電潜像パターン対のコントラストの変化を示すグラフである。
【図13】本発明にかかる画像形成装置の実施例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0062】
00 光導電性試料
10a 荷電粒子ビーム制御部
10b 荷電粒子ビーム照射部
11 荷電粒子銃
12 アパーチャ
13 コンデンサレンズ
14 ビームブランカ
15 走査レンズ
16 対物レンズ
17a LD制御部
18 コリメートレンズ
19 アパーチャ
20 マスクパターン
21 結像レンズ
22 結像レンズ
23 結像レンズ
24 荷電粒子検出器
25a 信号処理部
25b 解像力演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電と光像の露光により静電潜像パターンが形成された光導電性試料の面を荷電粒子ビームにより2次元的に走査し,上記静電潜像パターンによる電気的影響を受けた荷電粒子を捕獲して,その強度信号を上記面上の位置に対応させて検出し,
検出した強度信号から静電潜像パターンを含む断面プロファイルを抽出し,
上記断面プロファイルにおける露光部,非露光部の強度信号から基準量および特徴量を抽出し,光導電性試料の潜像解像力を算出する静電潜像評価方法であって,
空間周波数の異なる複数の静電潜像パターンを光導電性試料の面に形成し,
各静電潜像パターンの断面プロファイルにおける露光部,非露光部の強度信号のうち,最も空間周波数の低い静電潜像パターンの露光部における強度信号値,および上記静電潜像パターン外の非露光部における強度信号値,を基準量として用い,
各空間周波数において上記潜像の解像力を算出することにより,潜像のレスポンス関数を算出することを特徴とする静電潜像評価方法。
【請求項2】
請求項1記載の静電潜像評価方法であって,上記特徴量と,上記最も空間周波数の低い静電潜像パターンの露光部における強度信号値との差分をとり,この差分を、上記2つの基準量すなわち最も空間周波数の低い静電潜像パターンの露光部における強度信号値と上記静電潜像パターン外の非露光部における強度信号値の差で除してこれを補正した特徴量とし,この特徴量を用いて光導電性試料の静電潜像の解像力を算出することを特徴とする静電潜像評価方法。
【請求項3】
請求項2記載の静電潜像評価方法であって,上記補正した特徴量に固定値を加算することで特徴量をさらに補正し、この補正した特徴量を用いて光導電性試料の潜像解像力を算出することを特徴とする静電潜像評価方法。
【請求項4】
請求項3記載の静電潜像評価方法であって,露光エネルギの異なる複数の静電潜像パターンを形成し,各露光エネルギにおける解像力を算出し比較することにより,解像力が最高になる露光エネルギを求めることを特徴とする静電潜像評価方法。
【請求項5】
静電潜像パターンを形成するための帯電手段および光像露光手段と,
静電潜像パターンが形成された光導電性試料の上記静電潜像パターン形成面を荷電粒子ビームで2次元的に走査する荷電粒子ビーム走査手段と,
上記静電潜像パターンによる電気的影響を受けた荷電粒子を捕獲してその強度信号を上記静電潜像パターン形成面上の位置に対応させて検出し,上記静電潜像パターンにおける電荷分布状態を観測する評価手段と,を備えた静電潜像評価装置であって,
空間周波数の異なる複数の静電潜像パターンを形成する上記光像露光手段と,
各パターンの断面プロファイルにおける露光部,非露光部の強度信号から特徴量を抽出する特徴量抽出手段と,
各静電潜像パターンの断面プロファイルにおける露光部,非露光部の強度信号のうち,最も空間周波数の低い静電潜像パターンの露光部における強度信号値,および上記静電潜像パターン外の非露光部における強度信号値を基準量として抽出する基準量抽出手段と,
上記特徴量および基準量を用い,各空間周波数において解像力を算出することにより,静電潜像のレスポンス関数を算出する解像力算出手段と,を備えることを特徴とする静電潜像評価装置。
【請求項6】
請求項5記載の静電潜像評価装置であって,上記特徴量と,上記最も空間周波数の低いパターンの露光部における強度信号値との差分をとり,この差分を、上記2つの基準量すなわち最も空間周波数の低い静電潜像パターンの露光部における強度信号値と上記静電潜像パターン外の非露光部における強度信号値の差で除してこれを補正した特徴量とする特徴量補正手段を備えていることを特徴とする静電潜像評価装置。
【請求項7】
請求項6記載の静電潜像評価装置であって,上記補正した特徴量に対し,さらに固定値を加算することで特徴量をさらに補正する,特徴量補正手段を備えていることを特徴とする静電潜像評価装置。
【請求項8】
請求項7記載の静電潜像評価装置であって,露光エネルギの異なる複数の静電潜像パターンを形成する露光エネルギ制御手段を備え,各露光エネルギにおける解像力を算出し比較することにより解像力が最高になる露光エネルギを求め、前記光像露光手段は,解像力が最高になる露光エネルギで露光すること特徴とする静電潜像評価装置。
【請求項9】
感光体に形成された静電潜像を現像し定着して可視画像を得る画像形成装置であって,請求項2記載の静電潜像評価方法を用いて評価された上記レスポンス関数が,空間周波数45LP/mm以下の帯域にて,コントラスト0.9以上である感光体を搭載していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
感光体に形成された静電潜像を現像し定着して可視画像を得る画像形成装置であって,請求項6記載の静電潜像評価装置を用いて評価された上記レスポンス関数が,空間周波数45LP/mm以下の帯域にて,コントラスト0.9以上である感光体を搭載していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
感光体に形成された静電潜像を現像し定着して可視画像を得る画像形成装置であって,請求項3記載の静電潜像評価方法を用いて評価された上記レスポンス関数が,上記固定値を0.05とした場合に,空間周波数45LP/mm以下の帯域にて,コントラスト0.75以上である感光体を搭載していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
感光体に形成された静電潜像を現像し定着して可視画像を得る画像形成装置であって,請求項7記載の静電潜像評価装置を用いて評価された上記レスポンス関数が,上記固定値を0.05とした場合に,空間周波数45LP/mm以下の帯域にて,コントラスト0.75以上である感光体を搭載していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
感光体に形成された静電潜像を現像し定着して可視画像を得る画像形成装置であって,請求項1乃至4のいずれかに記載の静電潜像評価方法を用いて感光体の露光条件を設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
感光体に形成された静電潜像を現像し定着して可視画像を得る画像形成装置であって,請求項5乃至8のいずれかに記載の静電潜像評価装置を用いて感光体の露光条件を設定することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−210335(P2009−210335A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52254(P2008−52254)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】