説明

静電的ステアリング(electrostaticsteering)効果を用いた抗体Fcヘテロ二量体分子を作製するための方法

本発明は、Fcヘテロ二量体タンパク質またはポリペプチドを作製する方法に関する。本発明はまた、ヘテロ二量体を構成する個々のポリペプチド構成要素を含む、Fcヘテロ二量体タンパク質またはポリペプチド自体にも関する。こうしたポリペプチドをコードする核酸、発現ベクター、および宿主細胞。さらに、本発明は、1以上のFcヘテロ二量体タンパク質またはポリペプチドを含む薬学的組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
抗体は、療法分子を開発しようとするものにとって魅力的ないくつかの特性を所持するため、生物薬剤産業内で選択される様式となってきている。特定の構造または細胞をターゲティングする能力とともに、抗体は、そのターゲットをFc受容体細胞仲介性食作用および殺傷に感受性にする(RaghavanおよびBjorkman 1996)。さらに、抗体が、pH依存方式で、新生児Fc受容体(neonatal Fc−receptor)(FcRn)と相互作用する能力によって、血清半減期が延長される(GhetieおよびWard 2000)。抗体のこのユニークな特徴のため、Fc融合分子を操作することによって、血清における療法タンパク質またはペプチドの半減期を延長することが可能になる。
【0002】
抗体は、IgG、IgA、IgE、IgM、およびIgDを含むタンパク質の免疫グロブリンクラスに属する。ヒト血清において最も豊富な免疫グロブリンクラスはIgGであり、その模式的構造を図1に示す(Deisenhofer 1981; Huber 1984; Roux 1999)。IgG構造は、4つの鎖、2つの軽鎖および2つの重鎖を有し;各軽鎖は2つのドメインを有し、そして各重鎖は4つのドメインを有する。抗原結合部位は、Fab領域(抗原結合性断片)中に位置し、該領域は、可変軽(VL)鎖および可変重(VH)鎖ドメイン、ならびに定常軽(LC)鎖および定常重(CH1)鎖ドメインを含有する。重鎖のCH2およびCH3ドメイン領域は、Fc(結晶化可能断片)と呼ばれる。IgG分子は、ヒンジ領域でのジスルフィド結合(−S−S−)によって一緒に保持される2つの重鎖および2つの軽鎖を有するヘテロ四量体と見なされうる。ヒンジジスルフィド結合の数は、免疫グロブリンサブクラス間で多様である(PapadeaおよびCheck 1989)。FcRn結合部位は抗体のFc領域中に位置し(Martin, Westら 2001)、そしてしたがって抗体の血清半減期延長特性は、Fc断片中に保持される。Fc領域は、単独では、CH2およびCH3ドメインを含む重鎖のホモ二量体と考えられうる。
【0003】
特定の例において、抗体のFc部分を含有するがヘテロ二量体を含む分子を生成することが望ましい。Fcヘテロ二量体分子の重要な適用は、二重特異性抗体(BsAb)の生成である。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する特異性を有する抗体を指す(NolanおよびO’Kennedy 1990; de Leij, Molemaら 1998; Carter 2001)。両方のFabにおいて同一の配列を持つ代わりに、二重特異性抗体は、2つのFab中に異なる配列を所持し、したがってY型の分子の各アームは、異なる抗原に結合可能である。
【0004】
癌の免疫療法のための二重特異性抗体の使用は、文献中に広範囲に概説されてきている(例えば、NolanおよびO’Kennedy 1990; de Leij, Molemaら 1998; Carter 2001を参照されたい)。2つの異なるエピトープまたは分子に結合する能力を有することによって、BsAbは、免疫エフェクター細胞を誘発し、そしてかつ腫瘍ターゲット細胞上の表面抗原に結合する手段を提供する。これは、免疫系を利用して癌細胞を破壊するのを補助する。二重特異性抗体の他の適用は、米国特許第5,731,168号および第7,183,076号に広範囲に含まれる。
【0005】
ハイブリッドハイブリドーマにおいて、2つの異なるIgGを同時発現することによって、BsAbを産生する古典的な方法によって、重鎖および軽鎖の最大10のありうる組み合わせが導かれる。これは収量を損ない、そして精製を困難にする。Carterおよび同僚らは、「ノブを穴に(knobs−into−holes)」戦略を用いて、ヘテロ二量体化のため、重鎖を操作した(Ridgway, Prestaら 1996; Atwell, Ridgwayら 1997; Merchant, Zhuら 1998; Carter 2001)。「ノブを穴に」概念は、元来、隣接するαらせん間のアミノ酸側鎖のパッキングのためのモデルとして、Crickによって提唱された(Crick 1952)。カーターおよび同僚らは、より小さいアミノ酸側鎖をより大きいもので置き換えることによって、第一の鎖のCH3ドメイン接合部分(interface)にノブを生成し(例えば、T366Y);そして、より大きいアミノ酸側鎖をより小さいもので置き換えることによって、第二の鎖のCH3接合部分の並置される位に穴を生成した(例えば、Y407T)。並置される位にノブおよび穴を生成するための基礎は、ノブおよび穴の相互作用がヘテロ二量体形成に有利であり、一方、ノブ−ノブおよび穴−穴相互作用が、それぞれ、立体衝突、および有利な相互作用の欠失のため、ホモ二量体形成を妨害することである。「ノブを穴に」突然変異はまた、ヘテロ二量体形成を増進するため、CH3ドメイン間ジスルフィド結合操作と組み合わされた(Sowdhamini, Srinivasanら 1989; Atwell, Ridgwayら 1997)。これらの突然変異に加えて、投入DNA比もまた、収量を最大にするために多様にされた(Merchant, Zhuら 1998)。「ノブを穴に」技術は、米国特許第5,731,168号および第7,183,076号に開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,731,168号
【特許文献2】米国特許第7,183,076号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】RaghavanおよびBjorkman 1996
【非特許文献2】GhetieおよびWard 2000
【非特許文献3】Deisenhofer 1981
【非特許文献4】Huber 1984
【非特許文献5】Roux 1999
【非特許文献6】PapadeaおよびCheck 1989
【非特許文献7】Martin, Westら 2001
【非特許文献8】NolanおよびO’Kennedy 1990
【非特許文献9】de Leij, Molemaら 1998
【非特許文献10】Carter 2001
【非特許文献11】Ridgway, Prestaら 1996
【非特許文献12】Atwell, Ridgwayら 1997
【非特許文献13】Merchant, Zhuら 1998
【非特許文献14】Crick 1952
【非特許文献15】Sowdhamini, Srinivasanら 1989
【発明の概要】
【0008】
本出願は、抗体ドメインの相互作用を改変するための戦略、例えば、ドメインがそれ自体と相互作用する能力、すなわちホモ二量体を形成する能力を減少させるようにCH3ドメインを改変するための戦略を記載する。特に、CH3−CH3接合部分を構成する1以上の残基を、相互作用が静電的に不利になるように、荷電アミノ酸で置換する。好ましい態様において、接合部分中の正電荷アミノ酸、例えばリジン、アルギニン、またはヒスチジンを、負電荷アミノ酸、例えばアスパラギン酸またはグルタミン酸で置換する。他の態様において、接合部分中の負電荷アミノ酸を正電荷アミノ酸で置換する。特定の態様において、アミノ酸を、所望の電荷特性を有する非天然アミノ酸で置換する。
【0009】
各ドメインがそれ自体と相互作用する能力を減少させるが、ドメインが互いに相互作用する能力、すなわちヘテロ二量体を形成する能力を増加させるように、CH3ドメインの対を改変するための戦略を、本明細書にさらに記載する。これは、ホモ二量体形成が静電的に不利であるが、ヘテロ二量体化が静電的に有利であるように、両方のCH3ドメインにおいてCH3−CH3接合部分を構成する1以上の残基を荷電アミノ酸で置換することによって達成可能である。特定の態様において、各CH3ドメイン中の荷電アミノ酸を反対の電荷を持つアミノ酸で置換する。例えば、第一のCH3ドメインにおいて、正電荷アミノ酸を負電荷アミノ酸で置換してもよく、そして第二のCH3ドメインにおいて、負電荷アミノ酸を正電荷アミノ酸で置換してもよい。アミノ酸の電荷を逆転させることによって、ホモ二量体形成が減少する。置換が適切にコーディネートされた場合、逆転した電荷は静電的に有利であり、すなわちヘテロ二量体化形成のため、接合部分中に反対の電荷がある。
【0010】
特定の側面において、本発明は、ヘテロ二量体タンパク質を調製する方法を提供する。ヘテロ二量体は、集合して、ヘテロ二量体形成を促進するように操作された接合部分を形成する、第一のCH3含有ポリペプチドおよび第二のCH3含有ポリペプチドを含んでもよい。第一のCH3含有ポリペプチドおよび第二のCH3含有ポリペプチドは、接合部分内に、ホモ二量体形成にとって静電的に不利であるが、ヘテロ二量体形成にとって静電的に有利である、1以上の荷電アミノ酸を含むように操作される。
【0011】
こうした方法には、第一および第二のCH3含有ポリペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞を、こうしたポリペプチドが細胞によって同時発現されるように培養する工程が含まれてもよい。特定の態様において、第一および第二のCH3含有ポリペプチドは、例えば1:1、1:2、2:1、1:3、3:1、1:4、4:1、1:5、5:1、1:6、6:1、1:7、7:1、1:8、8:1、1:9、9:1、1:10、10:1の比で、宿主細胞に提供される。核酸の比を改変すると、ホモ二量体分子に対してヘテロ二量体分子の産生が増加しうると意図される。
【0012】
標準的技術を用いて、宿主細胞培養からヘテロ二量体分子を精製してもよい。例えば、ヘテロ二量体タンパク質がFcを含む場合、プロテインAカラムを用いてタンパク質を精製してもよい。精製技術には、限定されるわけではないが、サイズ排除、イオン交換およびアフィニティに基づくクロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー法、ならびに超遠心が含まれる。
【0013】
特定の態様において、CH3含有ポリペプチドはIgG Fc領域、好ましくは野生型ヒトIgG Fc領域に由来するものを含む。「野生型」ヒトIgG Fcによって、ヒト集団内に天然に存在するアミノ酸配列を意味する。もちろん、Fc配列は個体間でわずかに異なりうると同時に、野生型配列に1以上の改変を行い、そしてなお本発明の範囲内にあることも可能である。例えば、Fc領域は、本発明に関連しないさらなる改変、例えばグリコシル化部位における突然変異、非天然アミノ酸の包含、または「ノブを穴に」突然変異を含有してもよい。
【0014】
特定の態様において、CH3領域を含有するポリペプチドはIgG分子であり、そしてCH1およびCH2ドメインをさらに含有する。例示的なヒトIgG配列は、IgG1(例えば、配列番号3; CH1=アミノ酸1〜98、CH2=アミノ酸111〜223、CH3=224〜330)、IgG2(例えば、配列番号4; CH1=アミノ酸1〜94、CH2=アミノ酸111〜219、CH3=220〜326)、IgG3(例えば、配列番号5; CH1=アミノ酸1〜98、CH2=アミノ酸161〜270、CH3=271〜377)、およびIgG4(例えば、配列番号6; CH1=アミノ酸1〜98、CH2=アミノ酸111〜220、CH3=221〜327)の定常領域を含む。当業者の間では、IgG分子の多様なドメインに対応する正確なアミノ酸の理解に相違がありうる。したがって、上記に要約するドメインのN末端またはC末端は、1、2、3、4、5、6、7、8、9アミノ酸、伸長または短縮され、または10アミノ酸さえ、伸長または短縮されうる。また、ドメインを指定するための本明細書に用いる番号付けスキームは、本特許出願の他の部分で用いるKabatのEU番号付けスキームとは異なる。例えば、IgG1「CH3=224〜330」は、EU番号付けスキームにおける「CH3=341〜447」に対応する。
【0015】
Fc領域はまた、IgA(例えば、配列番号7)、IgD(例えば、配列番号8)、IgE(例えば、配列番号9)、およびIgM(例えば、配列番号10)重鎖の定常領域内でも構成されうる。
【0016】
CH3領域を含有するポリペプチドは抗体重鎖であってもよく、そして宿主細胞は1以上の抗体軽鎖をさらに発現してもよい。1より多い重鎖および軽鎖が同時発現される態様(例えば二価抗体)において、優先的に互いに結合するが、それぞれ、他の軽鎖または重鎖に結合しないように、各重鎖はCH1領域中に突然変異を含んでもよく、そして各軽鎖は定常領域中に突然変異を含んでもよい。好ましい態様において、こうした突然変異は、CH1領域および軽鎖の定常領域の間の接合部分において、1以上のアミノ酸の電荷を改変することを伴う。
【0017】
本発明の好ましい態様には、限定されるわけではないが、抗体、二重特異性抗体、単一特異性一価抗体、二重特異性マキシボディ(マキシボディはscFv−Fcを指す)、モノボディ、ペプチボディ、二重特異性ペプチボディ、一価ペプチボディ(ヘテロ二量体Fc分子の1つのアームに融合したペプチド)、および受容体−Fc融合タンパク質が含まれる。図2を参照されたい。
【0018】
使用可能な哺乳動物宿主細胞の例には、限定されるわけではないが、CHO、293、および骨髄腫細胞株が含まれる。宿主細胞はまた、酵母または原核生物、例えば大腸菌(E. coli)であってもよい。
【0019】
ヘテロ二量体タンパク質は、療法組成物において特に有用でありうる。特定の態様において、ヘテロ二量体タンパク質は、1以上の薬学的に許容されうる緩衝剤または賦形剤を含む組成物中に配合されてもよい。こうした療法組成物を被験体に投与して、疾患を治療してもよいし、あるいは投与して、疾患を防止するか、または疾患の症状が進行するのを防止してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ドメインを示したIgG1抗体の模式図。IgG1抗体は、2つの重鎖(より長い長さ)および2つの軽鎖(より短い長さ)を含むY型の四量体である。2つの重鎖は、ヒンジ領域で、ジスルフィド結合(−S−S−)によってともに連結される。Fab−抗原結合性断片、Fc−結晶化可能断片、VL−可変軽鎖ドメイン、VH−可変重鎖ドメイン、CL−定常(配列変動なし)軽鎖ドメイン、CH1−定常重鎖ドメイン1、CH2−定常重鎖ドメイン2、CH3−定常重鎖ドメイン3。
【図2】Fc−ヘテロ二量体分子を含む態様のいくつかを示す。これらには、二重特異性抗体(2以上の抗原に特異性を有する)から受容体−Fc融合分子が含まれる。好ましくは、Fcは、Fabドメインがなくてさえ、FcRn受容体と相互作用する能力を保持し、Fc重鎖と融合しているタンパク質/ドメインの、より長い血清半減期を導く。scFv−一本鎖可変断片、Pep.−ペプチボディ、AおよびBは、タンパク質または受容体またはドメインを示す。
【図3】ドメイン−ドメイン相互作用に関与する残基を示した、CH3ドメイン接合部分構造。距離カットオフ法を用いて、接合部分残基を同定した。構造的に保存されそして埋め込まれた(buried)(溶媒アクセス可能表面積<10%)残基を球棒モデルで示す。溶媒に曝露されるかまたは構造的に保存されていない残基を、棒提示で示す。分析は、高解像度(1.65Å)で決定されている、IgG1結晶構造(PDBコード: 1L6X)に基づく(Idusogie, Prestaら 2000)。
【図4−1】(a)ヒトおよび(b)マウス由来のIgGサブクラス配列の比較。CH3ドメインに対応する重鎖配列のみを示す。星()は、IgG1ヒトFc結晶構造(1L6X)に基づいて同定されたCH3−CH3ドメイン相互作用に関与する残基位を示す。長方形で示す位は、ヘテロ二量体形成を増進する突然変異に好ましい残基である。ここで、荷電残基はIgG間で非常に保存されていることが注目されうる。(c)抗体の他のクラス(IgA、IgE、IgD、およびIgM)のCH3ドメイン配列比較。(b)および(c)中の接合部分残基位(「」によって示される)は、同様に示すHu IgG1配列との配列比較に基づいて同定された。(a)において、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4由来の配列は、それぞれ、配列番号11、配列番号12、配列番号13、および配列番号14に対応する。(b)において、ヒトIgG1、マウスIgG1、マウスIgG2a、マウスIgG2b、およびマウスIgG3由来の配列は、それぞれ、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、および配列番号19に対応する。(c)において、ヒトIgG1、ヒトIgA、ヒトIgE、ヒトIgD、およびヒトIgM由来の配列は、それぞれ、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、および配列番号24に対応する。
【図4−2】(a)ヒトおよび(b)マウス由来のIgGサブクラス配列の比較。CH3ドメインに対応する重鎖配列のみを示す。星()は、IgG1ヒトFc結晶構造(1L6X)に基づいて同定されたCH3−CH3ドメイン相互作用に関与する残基位を示す。長方形で示す位は、ヘテロ二量体形成を増進する突然変異に好ましい残基である。ここで、荷電残基はIgG間で非常に保存されていることが注目されうる。(c)抗体の他のクラス(IgA、IgE、IgD、およびIgM)のCH3ドメイン配列比較。(b)および(c)中の接合部分残基位(「」によって示される)は、同様に示すHu IgG1配列との配列比較に基づいて同定された。(a)において、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4由来の配列は、それぞれ、配列番号11、配列番号12、配列番号13、および配列番号14に対応する。(b)において、ヒトIgG1、マウスIgG1、マウスIgG2a、マウスIgG2b、およびマウスIgG3由来の配列は、それぞれ、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、および配列番号19に対応する。(c)において、ヒトIgG1、ヒトIgA、ヒトIgE、ヒトIgD、およびヒトIgM由来の配列は、それぞれ、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、および配列番号24に対応する。
【図5】一方のドメインをリボン提示で示し、そしてもう一方のドメインを針金モデルで示す、CH3ドメインホモ二量体の結晶構造。対の各相互作用が構造中で二回示されることを例示するため、Lys409(第二のドメインではLys409’)およびAsp399(第二のドメインではAsp399’)残基を球棒モデルで示す。これは、CH3−CH3ドメイン相互作用に存在する二倍対称のためである。PDBに寄託される1L6X座標を用いてこの図を生成した。
【図6】野生型における、およびヘテロ二量体形成を増進し、そしてホモ二量体形成を妨害する例として設計された突然変異体における、静電相互作用を示す図。(a)WTの場合、静電相互作用は、ヘテロ二量体およびホモ二量体形成両方に有利であり、これらを等しい可能性で生じる。(b)単一突然変異体(K409E)の場合、ホモ二量体の一方が両方の相互作用によって阻止され、そして同時に、ヘテロ二量体もまた、相互作用の一方によって阻止される。(c)二重突然変異体の場合、両方の静電相互作用がヘテロ二量体に有利であり、そしてホモ二量体形成に不利である。(d)電荷変化を伴うさらなる突然変異(例えばK360E)もまた、ヘテロ二量体およびホモ二量体の形成に対する静電的ステアリング効果を増進するために使用可能であった。
【図7】この図は、2つの異なる鎖を同時発現させた際に、静電相互作用を用いて、ホモ二量体に有利であり、そしてヘテロ二量体形成に不利になるようにすることも可能であることを示す。
【図8】図(a)は、実施例に用いる構築物の模式図を示す。Fcの第一の鎖は、共有結合するマキシボディ(一本鎖可変断片、scFv)を有し、そしてダミーFcと呼ばれる第二の鎖は、付着するいかなるドメインまたは官能性も持たない。(b)SDS−PAGE上で予期される相対移動度の図。マキシボディに付着したFc鎖は、ダミーFcより高い分子量を有するため、ホモ二量体およびヘテロ二量体は、SDS−PAGE上で異なる移動度を有する。SDS−PAGE上のバンドの厚みを、ヘテロ二量体およびホモ二量体収量の割合の測定値として用いてもよい。野生型を、対照として、そして多様な突然変異によるヘテロ二量体収量に対する相対的改善を監視するために含む。
【図9】D399’−−−K409相互作用対に対する突然変異の影響を示す、SDS−PAGE分析。
【図10】D399’K−−−K409D対突然変異に加えた電荷残基突然変異(表6に列挙する)のSDS−PAGE分析。野生型(最初のレーン)および「ノブを穴に」突然変異(最後のレーン)もまた比較のために示す。ここでは、ダミーFcおよびM315マキシボディの1:2投入DNA比を用いた。
【図11】突然変異体の特定の組み合わせが、ヘテロ二量体形成の高い選択性を達成することを立証するウェスタンブロット。1:10,000でコンジュゲート化されたヤギ抗ヒトFc HRPを用いて、Fc分子を検出した。
【発明を実施するための形態】
【0021】
構造に基づく検索アルゴリズム(YeおよびGodzik 2004)を用いて、タンパク質データバンク(PDB)(Bernstein, Koetzleら 1977)より、Fc領域に対応する座標を有する総数48の抗体結晶構造を同定した。同定されたFc結晶構造を調べると、最高解像度で決定された構造が、Z34C(PDBコード: 1L6X)と呼ばれる、プロテインA由来のBドメインの最小型に結合したRITUXIMABのFc断片に対応することが明らかになった。寄託されるFc単量体座標および結晶対称性を用いて、1L6Xの生物学的Fcホモ二量体構造を生成した。2つの方法を用いて、CH3−CH3ドメイン相互作用に関与する残基を同定した:(i)距離限界基準によって決定されるような接触および(ii)溶媒アクセス可能表面積分析。
【0022】
接触に基づく方法にしたがって、その側鎖重原子が、第二の鎖における任意の残基の重原子から、明記する限界より近くに位置する残基として、接合部分残基を定義する。4.5Åの距離限界が好ましいが、接合部分残基を同定するため、より長い距離限界(例えば、5.5Å)もまた使用可能である(BaharおよびJernigan 1997)。
【0023】
第二の方法は、第二の鎖の存在下および非存在下で、CH3ドメイン残基の溶媒アクセス可能表面積(ASA)を計算することを伴う(LeeおよびRichards 1971)。ASAにおいて、2つの計算間で相違(>1Å)を示す残基が接合部分残基と同定される。どちらの方法も、類似のセットの接合部分残基を同定した。さらに、これらは公表される研究(Miller 1990)と一致した。
【0024】
表1は、4.5Åの距離限界を用いた、接触基準法に基づいて同定された24の接合部分残基を列挙する。構造保存に関して、これらの残基をさらに調べた。この目的のため、PDBから同定される48のFc結晶構造を重ね合わせて、そして側鎖重原子に関して、標準偏差を計算することによって分析した。残基指定は、KabatのEU番号付けスキームに基づき、これはまた、タンパク質データバンク(PDB)の番号付けにも対応する。
【0025】
図3は、構造的に保存された位、埋め込まれた位(%ASA≦10)、および曝露された位(%ASA>10)(%ASAは、アミノ酸の標準的ASAに対する、観察されるASAの比を指す(LeeおよびRichards 1971))とともに、CH3ドメイン接合部分を示す。配列比較を通じて、ヒトおよびマウスIgGサブクラス間、ならびに他のIgクラス間での接合部分残基の保存もまた調べた(図4)。
【0026】
表1:第一の鎖(A)におけるCH3ドメイン接合部分残基および第二の鎖(B)におけるその接触残基のリスト
【0027】
【表1】

【0028】
反対に荷電された残基間の相互作用を伴う位を太字で示す。CH3−CH3ドメイン相互作用には、2倍の対称性が存在するため、対の各相互作用は、構造中に2回示される(例えば、Asp A 356−−−Lys B 439’およびLys A 439−−−Asp B 356’;図5)。
【0029】
Arg355およびLys360位(斜字で示す)は、反対に荷電した残基との相互作用には関与していないが、これらもまた静電的ステアリング効果を増進するために使用可能である。
【0030】
中性pH(=7.0)で、AspおよびGlu残基は負に荷電し、そしてLys、ArgおよびHisは正に荷電する。これらの荷電残基を用いて、ヘテロ二量体形成を促進し、そしてそれと同時にホモ二量体を妨害することも可能である。反対の電荷の間では誘因性の相互作用が起こり、そして同種の電荷の間では反発性の相互作用が起こる。本明細書に提示する方法は、荷電する接合部分残基の部位特異的突然変異誘発を実行することによって、ヘテロ二量体を促進し、そしてホモ二量体を妨害するために、それぞれ、誘因性および反発性の相互作用を利用する。
【0031】
同定されたCH3ドメイン接合部分残基を調べると(表1)、ドメイン−ドメイン相互作用に関与する4つのユニークな電荷残基対が明らかになる(Asp356−−−Lys439’、Glu357−−−Lys370’、Lys392−−−Asp399’、Asp399−−−Lys409’;第二の鎖における残基番号付けを、ダッシュ’によって示す)。これらの電荷対は、本明細書で用いる結晶構造(1L6X)において、電荷−電荷相互作用に必ずしも関与してはおらず、これは結晶構造がタンパク質フォールティング反応経路の最終産物であり、そしてこれが結晶状態での構造を示すためである。本明細書において、静電的ステアリング効果を有するためには、距離限界基準(4.5Å)によって定義されるように、空間中で残基が近くにあれば十分であると仮定する。CH3−CH3ドメイン相互作用に2倍の対称性が存在するため、ユニークな相互作用は、各々、構造において2回提示されることにも注目しなければならない(例えば、Asp399−−−Lys409’およびLys409−−−Asp399’;図5)。
【0032】
溶媒アクセス可能性(ASA分析)(LeeおよびRichards 1971)の度合いにしたがって、4対をランク付けした。Lys409−−−Asp399’の場合、どちらの残基も構造的に保存されるとともに埋め込まれていた。他の3つの対の場合、パートナーの少なくとも一方が溶媒に曝露されている(%ASA>10)。したがって、本明細書の実施例のため、部位特異的突然変異誘発にLys409−−−Asp399’対を選択した。図6に戦略を図式的に示す。
【0033】
野生型において、K409−−−D399’相互作用は、ヘテロ二量体およびホモ二量体形成両方に有利である。第一の鎖における電荷極性をスイッチする単一の突然変異(K409E;正電荷を負電荷に)によって、第一の鎖のホモ二量体の形成に不利な相互作用が導かれる。不利な相互作用は、同じ電荷間(負−−−負;D399−−−K409EおよびK409E−−−D399)で起こる反発性相互作用のために生じる。第二の鎖における電荷極性をスイッチする同様の突然変異(D399’K;負電荷を正電荷に)によって、第二の鎖のホモ二量体の形成に不利な相互作用(K409’−−−D399’KおよびD399’K−−−K409’)が導かれる。しかし同時に、これらの2つの突然変異(K409EおよびD399’K)は、ヘテロ二量体形成に有利な相互作用(K409E−−−D399’KおよびD399−−−K409’)を導く。
【0034】
ヘテロ二量体形成およびホモ二量体阻止に対する静電的ステアリング効果は、図6dに示すようなArg355およびLys360などの、第二の鎖において反対に荷電する残基と対を形成してもまたはしなくてもよいさらなる電荷残基の突然変異によってさらに増進されうる。図6に示す突然変異は、例示のみの目的のためのものである。表2は、電荷変化を伴う多くのありうる突然変異を列挙し、そして突然変異を組み合わせて、静電効果を増進することも可能である。
【0035】
表2a:ヘテロ二量体形成を増進する、いくつかのありうる対電荷残基突然変異のリスト
【0036】
【表2】

【0037】
上記の対電荷残基突然変異の組み合わせもまた使用可能である。例えば、Lys409−−−Asp399’相互作用対突然変異を、Lys439−−−Asp356’対突然変異と組み合わせてもよい。
【0038】
正電荷残基のこのリストに、ヒスチジン(His)もまた加えてもよいが、設計において、側鎖体積の増加およびpH依存性を考慮に入れるべきである。
表2b:静電的ステアリング効果を増進するためのさらなる単一電荷残基突然変異
【0039】
【表3】

【0040】
これらの単一残基突然変異を、表2aの対突然変異と組み合わせて、ヘテロ二量体形成を増進してもよい(図6d)。
各正電荷残基(LysおよびArg)を2つの負電荷残基(AspまたはGlu)に突然変異させてもよいし、そして逆も可能であり、そしてその結果、本明細書に記載する方法は、多くの組み合わせを提供する。本明細書において、突然変異部位を取り巻く残基および水分子の役割に応じて、異なる組み合わせが四次(ホモ二量体/ヘテロ二量体)構造形成に多様な影響を及ぼすであろうことを述べなければならない。アミノ酸ヒスチジン(His)は、中性pHでは正電荷であり、そしてしたがってHisに対する突然変異もまた意図される。しかし、負電荷残基(AspまたはGlu)をHisに突然変異させると、側鎖体積が増加し、これが立体問題を引き起こす可能性もある。さらに、ヒスチジン・プロトンドナーおよびアクセプター型は、局所環境に応じる。設計戦略中、これらの問題を考慮に入れなければならない。
【0041】
接合部分残基は、ヒトおよびマウスIgGサブクラスにおいて非常に保存されているため、静電的ステアリング効果を、ヒトまたはマウスのIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4に適用してもよい。この戦略を拡張して、CH3ドメイン接合部分で、非荷電残基を修飾して荷電残基にしてもよい。また、電荷残基突然変異を伴う同様の戦略を用いて、2つの異なる重鎖を同時発現する際に、ホモ二量体形成を増進し、そしてヘテロ二量体形成を妨害することも可能である(図7)。
【0042】
電荷残基突然変異体の安定性を評価するため、EGADソフトウェアを用いて、CH3−CH3ドメイン結合自由エネルギーを概算した。計算に用いるパラメーターを最適化することによって、PokalaおよびHandelは、タンパク質−タンパク質複合体形成に対するほぼ400の突然変異の効果を1.0kcal/molの誤差以内で予測可能であった(PokalaおよびHandel 2005)。EGADを用いて、CH3ドメイン接合部分で作製される多様な突然変異の結合自由エネルギーを大まかに比較した。
【0043】
表3は、接合部分電荷残基突然変異体に関して計算した結合自由エネルギー(ΔΔG)を列挙する。突然変異体の結合自由エネルギーは、ΔΔGmut=μ(ΔGmut−ΔGwt)と定義される。式中、μ(一般的に=0.1)は、実験エネルギーと比較した際、結合アフィニティにおける予測される変化が1の傾斜を有するように標準化するのに用いる倍率である(PokalaおよびHandel 2005)。解離の自由エネルギー(ΔG)は、複合体(ΔG結合)および遊離状態(ΔG遊離)の間のエネルギー相違と定義される。この比較は、荷電残基突然変異が、「ノブを穴に」突然変異に比較して、はるかにより低い度合いで安定性に影響を及ぼすことを示す。比較のため、野生型および「ノブを穴に」突然変異体に関して報告される融点を提供する。CH3ドメイン構築物のみを用いて、Carterおよび同僚らが融点を測定した(Atwell, Ridgwayら 1997)。「ノブを穴に」突然変異体に関しては、示差走査熱量測定実験において、エンタルピーの減少もまた観察された。
【0044】
表3: EGADプログラムを用いて計算された、ヘテロ二量体形成を増進するために設計された多様な突然変異体に関するCH3−CH3ドメイン結合自由エネルギー(PokalaおよびHandel 2005)
【0045】
【表4】

【0046】
結合自由エネルギー計算に関して、すべてのありうる電荷−電荷対を考慮したわけではなかった。野生型を比較のために列挙する。ΔGは、複合体および遊離状態の間のエネルギー相違と定義される。突然変異体の結合自由エネルギー(ΔΔGmut)は、突然変異体(ΔGmut)および野生型(ΔGWT)自由エネルギー間の相違と定義される。
【0047】
図2は、二重特異性抗体からヘテロ二量体受容体複合体までの、Fcヘテロ二量体分子を含むいくつかの態様を示す。ヘテロ二量体Fc分子の2つの重鎖を、異なる官能性を有するタンパク質および/またはドメインと融合させてもよい。例えば、異なる抗原に結合するFabを融合させると、二重特異性抗体(BsAb)が導かれる。2つの異なる一本鎖Fv(scFv;柔軟なペプチドリンカーによって連結される可変軽鎖および重鎖)ドメインを融合させると、二重特異性マキシボディが導かれるであろう。さらに、機能的理由のために相互作用するドメインまたはタンパク質もまた、機能アッセイを発展させる目的のため、または療法的使用のため、ヘテロ二量体Fcと融合させてもよい。例えば、造血受容体ファミリーにおいて、gp130は、白血病阻害因子受容体(LIFR)などの他の受容体と相互作用することが知られる。gp130の細胞外ドメイン(ECD)をFcの第一の重鎖に融合させてもよく、そしてLIFRのECDを第二のFc重鎖に融合させてもよく、これらは、生物学的状態を模倣する可能性がある、gp130−LIFR複合体の形成を導くであろう。FcRn結合部位はFc領域中に位置するため、Fc融合分子は、延長された血清半減期を有する可能性があり、これは、ロイシンジッパー融合タンパク質などの他のヘテロ二量体分子と、Fcヘテロ二量体分子を区別する特徴である(Liu, Caderasら 2001)。Fcヘテロ二量体の2つの重鎖に、異なる官能性を付着させることは本質的ではない。モノボディもまた、生成してもよい(図2)。
【0048】
特定の態様において、例えば二重特異性抗体を産生する際、多数の異なる軽鎖を、多数の異なる重鎖とともに同時発現してもよい。適切な重鎖に対する各軽鎖の結合の忠実性を増加させ、それによって抗体「アーム」の特異性を維持するため、1以上の重鎖のCH1ドメインおよび1以上の軽鎖の定常領域を、二量体化に有利であるように操作してもよい。好ましくは、CH3ドメインに関して上述するものと類似の静電的ステアリング技術を用いて、これを達成する。
【0049】
タンパク質データバンク(PDB)寄託コード1N0Xに対応するカッパ軽鎖配列(配列番号25)および(PDB)寄託コード7FABに対応するラムダ軽鎖(配列番号26)と、IgG1のCH1ドメインに対応する重鎖配列(配列番号27)の相互作用を分析した。接合部分内のラムダ軽鎖−重鎖の接触を、表4に示す。
【0050】
表4:ラムダ軽鎖接合部分残基および重鎖におけるその接触残基のリスト
【0051】
【表5】

【0052】
4.5Å距離限界基準を用いて、接触残基を同定した。軽鎖および重鎖番号付けスキームは、寄託される座標ファイル中のものに対応する(PDBコード: 7FAB)。
接合部分内のカッパ軽鎖−重鎖接触を表5に示す。
【0053】
表5:カッパ軽鎖接合部分残基および重鎖におけるその接触残基のリスト
【0054】
【表6】

【0055】
4.5Å距離限界基準を用いて、接触残基を同定した。軽鎖番号付けスキームは、寄託される座標ファイル中のものに対応する(PDBコード: 1N0X)。重鎖番号付けスキームは、表4におけるものに対応する。
【0056】
特定の態様において、ラムダ鎖のLys125を負電荷アミノ酸に突然変異させて、そして重鎖においてAsp148で対応する突然変異を作製して、残基を正電荷アミノ酸に変化させる。あるいは、またはさらに、ラムダ鎖のGlu119を正電荷アミノ酸に突然変異させて、対応する突然変異を重鎖においてLys213で作製し、この残基を負電荷アミノ酸に変化させる。
【0057】
軽鎖−重鎖相互作用の分析によって、特定の軽鎖および重鎖対の結合を増進させるため、電荷対を配列内に導入してもよい位が明らかになった。これらの位には、ラムダのThr112および重鎖のAla141、ラムダのGlu156および重鎖のSer176、ならびにラムダのSer171および重鎖のSer183、ならびに表4および表5に太字で示す他の位が含まれる。
【実施例】
【0058】
実施例1
本実施例は、静電的ステアリング効果を用いて、ホモ二量体化を不利にしつつ、ヘテロ二量体化を有利にするように、CH3ドメインを操作可能であることを立証する。CH3ドメイン接合部分に電荷残基突然変異を有する、図8(a)に示すようなマキシボディ−ダミーFc構築物を作製した。SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を通じて、ホモ二量体およびヘテロ二量体収量の形成を評価した。マキシボディは、ダミーFcに比較して、より高い分子量を有するため、ヘテロ二量体(マキシボディ−ダミーFc)およびホモ二量体(マキシボディ−マキシボディおよびダミーFc−ダミーFc)は、SDS−PAGE上で異なる移動度を有し、これによって、多様な対形成の同定が容易になる(図8(b))。
【0059】
慣用的ハイブリドーマ融合を通じて、M315と称されるラット抗マウスNKG2D抗体を生成し、そして先に記載する方法(Gilliland, Norrisら 1996)を用い、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)をコードするDNA配列を用いて、M315scFv−Fcを構築した。
【0060】
M315scFv−Fc(配列番号1)およびhuIgG1Fc(配列番号2)の配列をpTT5哺乳動物発現ベクター内にクローニングして、そして2つの構築物を用いて、293−6E細胞を同時トランスフェクションして、Fcホモ二量体およびscFv−Fcホモ二量体に比較したFc/scFv−Fcヘテロ二量体の形成を評価した。
【0061】
【化1】

【0062】
ヒトIgG1Fc(ダミー)またはM315scFv−Fc(mxb)構築物いずれか上の、計算分析を通じて同定されたCH3領域中の電荷残基対を、逆の電荷極性のアミノ酸に変化させた。StratageneのQuikChange(登録商標)突然変異誘発キットを用いて、表6に列挙する突然変異を生成し、そしてDNA配列決定によって検証した。野生型残基、その後、結晶構造(PDBコード: 1L6X)番号付けスキームと一致するKabat番号付け系(Kabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest, National Institutes of Health, Bethesda, Md., 第5版, [1991])を用いた位、そして次いで一文字暗号で示す置換残基によって、突然変異を示す。これらの2つの構築物中で用いるFc配列は、ヒトIgG1非(a)アロタイプに由来し、これは356位でGluおよび358位でMetを有する。結晶構造由来のCH3配列は異なるIgG1アロタイプ由来であり、これは356位でAspおよび368位でLeuを有する。
【0063】
表6:電荷残基突然変異のリスト
【0064】
【表7】

【0065】
LipofectamineTM2000試薬(Invitrogen)を用いて、ヒト胎児性腎臓細胞株293−6E内にDNAをトランスフェクションした。細胞培養上清をトランスフェクションの3〜4日後に採取し、そして非還元条件下でSDS−PAGEゲル上で分析した。次いで、ゲルをニトロセルロース膜にトランスファーし、そしてペルオキシダーゼ・コンジュゲート化ヤギ抗ヒトIgG抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)を用いたウェスタン分析に供し、そして結果を図10に示す。
【0066】
ダミーFcと一緒にM315scFv−Fc(mxb)の発現ベクターを同時トランスフェクションすると、scFv−Fc/Fcヘテロ二量体ならびにscFv−Fcホモ二量体およびFcホモ二量体の形成が生じた。scFv−Fcホモ二量体およびFcホモ二量体に対するscFv−Fc/Fcヘテロ二量体の比は、野生型CH3配列を用いると、1:1:1に近い。
【0067】
ダミーFc上に1つの電荷対突然変異K409Dを、そしてM315マキシボディ上にD399’Kを導入すると、scFv−Fcホモ二量体ならびにFcホモ二量体に対するscFv−Fc/Fcヘテロ二量体の比が有意に増加した。K409D/D399’R、K409E/D399’KおよびK409E/D399’Rなどの他の突然変異体に関してもまた、ヘテロ二量体形成の類似の増進が観察され(図9)、Fcヘテロ二量体の形成のため、電荷極性相補性が重要であることがさらに強調される。(この研究で用いたこの野生型M315scFv−Fc構築物は、Fcのカルボキシル末端で余分なタグを有し、したがってSDS−PAGEゲル上でより遅く移動する。)
K409近くに位置する電荷残基、例えばK360およびK392で、さらなる突然変異を導入した際、ヘテロ二量体形成のさらなる増加が観察された(図10)。例えば、ダミーFc上のK409D;K392DとM315マキシボディ上のD399’Kを組み合わせると、ホモ二量体に対するヘテロ二量体の比の増加が示され、これはおそらくFcホモ二量体の破壊のためである。Fc単量体のサイズに対応する25KDのバンドが、K409D;K392DダミーFcを用いたすべてのトランスフェクション上で検出された(データ未提示)。M315マキシボディのD399’K変異体に加えてD356’KまたはD357’Kなどの別の突然変異を付加すると、さらなる改善が示された。ダミーFc上のK409D;K392DとM315マキシボディ上のD399’K;D356’Kを組み合わせると、ヘテロ二量体がほぼ排他的に形成された。K409D;K392D/D399’K;D357’KおよびK409D;K370D/D399’K;D357’Kなどの他の組み合わせもまた、K409D/D399’K変異体より有意な改善を提供した。
【0068】
表7:図10に示すSDS−PAGEのホモ二量体およびヘテロ二量体収量パーセントの定量化
【0069】
【表8】

【0070】
NDは、密度に基づく分析において検出不能であることを示す。
実施例2
本実施例は、特定の三重電荷対突然変異が、単独で発現された場合にホモ二量体を形成不能であるが、同時発現された場合にヘテロ二量体を形成可能であったことを立証する。実施例1に記載するように、突然変異体を作製し、そして細胞をトランスフェクションした。構築物を同時トランスフェクションする際には、1:1のプラスミド比を用いた。結果を図11に示す。ヤギ抗ヒトFc HRPコンジュゲート化抗体を用いたウェスタンブロットによって、ヘテロ二量体およびホモ二量体を検出した。興味深いことに、正電荷残基を負電荷残基に変化させた(K409D、K392D、K370DまたはK409D、K392D、K439D)三重突然変異を有するFc含有分子は、単独で発現させた際、検出不能であった。同様に、負電荷残基を正電荷残基に変化させた(D399K、E356K、E357K)三重突然変異を有するFc含有分子は、単独で発現させた際、検出不能であった。しかし、反対の電荷極性の突然変異を有するFc含有分子と同時発現させると、ヘテロ二量体のみが検出された。
【0071】
本発明の出願全体で、単数形の用語の使用は、適切な場合、それぞれの用語の複数での使用を暗示することも可能であり、そして逆も可能である。
【0072】
【化2−1】

【0073】
【化2−2】

【0074】
【化2−3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合して、ヘテロ二量体形成を促進するように操作された接合部分(interface)を形成する、第一のCH3含有ポリペプチドおよび第二のCH3含有ポリペプチドを含むヘテロ二量体タンパク質を調製する方法であって、前記の第一のCH3含有ポリペプチドおよび前記の第二のCH3含有ポリペプチドが、接合部分内に、ホモ二量体形成にとって静電的に不利であるが、ヘテロ二量体形成にとって静電的に有利である、1以上の荷電アミノ酸を含み:
(a)第一のCH3含有ポリペプチドをコードする核酸および第二のCH3含有ポリペプチドを含む核酸を含む宿主細胞を培養し、ここで培養された宿主細胞が第一および第二のCH3含有ポリペプチドを発現し;そして
(b)宿主細胞培養からヘテロ二量体タンパク質を回収する
工程を含む、前記方法。
【請求項2】
ヘテロ二量体タンパク質がFc領域を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
Fc領域がIgG Fc領域を含む、請求項2の方法。
【請求項4】
IgG Fc領域がヒトIgG Fc領域を含む、請求項3の方法。
【請求項5】
ヒトIgG領域がIgG1 Fc領域を含む、請求項4の方法。
【請求項6】
IgG領域がIgG2 Fc領域を含む、請求項4の方法。
【請求項7】
IgG領域がIgG3 Fc領域を含む、請求項4の方法。
【請求項8】
IgG領域がIgG4 Fc領域を含む、請求項4の方法。
【請求項9】
Fc領域が、IgA、IgE、IgD、またはIgM Fc領域を含む、請求項2の方法。
【請求項10】
野生型ヒトIgG配列中の1以上の正電荷アミノ酸が1以上の負電荷アミノ酸で置き換えられるように、第一のCH3含有ポリペプチドまたは第二のCH3含有ポリペプチドが、野生型ヒトIgGと異なるポリペプチド配列を含む、請求項4の方法。
【請求項11】
正電荷アミノ酸が、リジン、ヒスチジン、およびアルギニンからなる群より選択される、請求項10の方法。
【請求項12】
負電荷アミノ酸が、アスパラギン酸およびグルタミン酸からなる群より選択される、請求項10の方法。
【請求項13】
野生型ヒトIgG配列中の1以上の負電荷アミノ酸が1以上の正電荷アミノ酸で置き換えられるように、第一のCH3含有ポリペプチドまたは第二のCH3含有ポリペプチドが、野生型ヒトIgGと異なるポリペプチド配列を含む、請求項10の方法。
【請求項14】
正電荷アミノ酸が、リジン、ヒスチジン、およびアルギニンからなる群より選択される、請求項13の方法。
【請求項15】
負電荷アミノ酸が、アスパラギン酸およびグルタミン酸からなる群より選択される、請求項13の方法。
【請求項16】
野生型ヒトIgG1配列中の1以上の正電荷アミノ酸が1以上の負電荷アミノ酸で置き換えられるように、IgG1 Fcが、野生型ヒトIgG1と異なるポリペプチド配列を有する第一のCH3含有ポリペプチドまたは第二のCH3含有ポリペプチドを含む、請求項5の方法。
【請求項17】
第一のCH3含有ポリペプチドが負電荷アミノ酸でのリジンの置換を含む、請求項16の方法。
【請求項18】
リジンが、Lys409、Lys392、Lys439、およびLys370からなる群より選択される、請求項17の方法。
【請求項19】
野生型ヒトIgG1配列中の1以上の負電荷アミノ酸が1以上の正電荷アミノ酸で置き換えられるように、IgG1 Fcが、野生型ヒトIgG1と異なるポリペプチド配列を有する第一のCH3含有ポリペプチドまたは第二のCH3含有ポリペプチドを含む、請求項5の方法。
【請求項20】
第一のCH3含有ポリペプチドが正電荷アミノ酸でのアスパラギン酸の置換を含む、請求項19の方法。
【請求項21】
アスパラギン酸が、Asp399およびAsp356からなる群より選択される、請求項20の方法。
【請求項22】
第一のCH3含有ポリペプチドが正電荷アミノ酸でのグルタミン酸の置換を含む、請求項19の方法。
【請求項23】
グルタミン酸がGlu357である、請求項22の方法。
【請求項24】
第一のCH3含有ポリペプチドが負電荷アミノ酸でのLys409の置換を含み、そして第二のCH3含有ポリペプチドが、正電荷アミノ酸でのAsp399、Asp356、またはGlu357の置換を含む、請求項18の方法。
【請求項25】
第一のCH3含有ポリペプチドが負電荷アミノ酸でのLys392の置換を含み、そして第二のCH3含有ポリペプチドが、正電荷アミノ酸でのAsp399、Asp356、またはGlu357の置換を含む、請求項18の方法。
【請求項26】
第一のCH3含有ポリペプチドが負電荷アミノ酸でのLys439の置換を含み、そして第二のCH3含有ポリペプチドが、正電荷アミノ酸でのAsp399、Asp356、またはGlu357の置換を含む、請求項18の方法。
【請求項27】
第一のCH3含有ポリペプチドが負電荷アミノ酸でのLys370の置換を含み、そして第二のCH3含有ポリペプチドが、正電荷アミノ酸でのAsp399、Asp356、またはGlu357の置換を含む、請求項18の方法。
【請求項28】
第一のCH3含有ポリペプチドが正電荷アミノ酸でのAsp399の置換を含み、そして第二のCH3含有ポリペプチドが、負電荷アミノ酸でのLys409、Lys439、Lys370、またはLys392の置換を含む、請求項20の方法。
【請求項29】
第一のCH3含有ポリペプチドが正電荷アミノ酸でのAsp356の置換を含み、そして第二のCH3含有ポリペプチドが、負電荷アミノ酸でのLys409、Lys439、Lys370、またはLys392の置換を含む、請求項20の方法。
【請求項30】
第一のCH3含有ポリペプチドが正電荷アミノ酸でのGlu357の置換を含み、そして第二のCH3含有ポリペプチドが、負電荷アミノ酸でのLys409、Lys439、Lys370、またはLys392の置換を含む、請求項23の方法。
【請求項31】
第一のCH3含有ポリペプチドが抗体重鎖である、請求項1の方法。
【請求項32】
第二のCH3含有ポリペプチドが抗体重鎖である、請求項1の方法。
【請求項33】
宿主細胞が1以上の抗体軽鎖を発現する、請求項1の方法。
【請求項34】
ヘテロ二量体タンパク質が、抗体、二重特異性抗体、単一特異性一価抗体、二重特異性マキシボディ、モノボディ、ペプチボディ、二重特異性ペプチボディ、一価ペプチボディ、および受容体融合タンパク質からなる群より選択される、請求項1の方法。
【請求項35】
第一のCH3含有ポリペプチドをコードする核酸および第二のCH3含有ポリペプチドを含む核酸を含む宿主細胞であって、第一のCH3含有ポリペプチドおよび第二のCH3含有ポリペプチドが集合して、ヘテロ二量体形成を促進するように操作された接合部分を形成し、そして前記の第一のCH3含有ポリペプチドおよび前記の第二のCH3含有ポリペプチドが、接合部分内に、ホモ二量体形成にとって静電的に不利であるが、ヘテロ二量体形成にとって静電的に有利である、1以上の荷電アミノ酸を含む、前記宿主細胞。
【請求項36】
第一のCH3含有ポリペプチドをコードする核酸および第二のCH3含有ポリペプチドを含む核酸を含む組成物であって、第一のCH3含有ポリペプチドおよび第二のCH3含有ポリペプチドが集合して、ヘテロ二量体形成を促進するように操作された接合部分を形成し、そして前記の第一のCH3含有ポリペプチドおよび前記の第二のCH3含有ポリペプチドが、接合部分内に、ホモ二量体形成にとって静電的に不利であるが、ヘテロ二量体形成にとって静電的に有利である、1以上の荷電アミノ酸を含む、前記組成物。
【請求項37】
集合して、ヘテロ二量体形成を促進するように操作された接合部分を形成する、第一のCH3含有ポリペプチドおよび第二のCH3含有ポリペプチドを含むヘテロ二量体タンパク質であって、前記の第一のCH3含有ポリペプチドおよび前記の第二のCH3含有ポリペプチドが、接合部分内に、ホモ二量体形成にとって静電的に不利であるが、ヘテロ二量体形成にとって静電的に有利である、1以上の荷電アミノ酸を含む、前記ヘテロ二量体タンパク質。
【請求項38】
Fc領域を含む、請求項37のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項39】
Fc領域がIgG Fc領域を含む、請求項38のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項40】
IgG Fc領域がヒトIgG Fc領域を含む、請求項39のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項41】
ヒトIgG領域がIgG1 Fc領域を含む、請求項40のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項42】
IgG領域がIgG2 Fc領域を含む、請求項40のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項43】
IgG領域がIgG3 Fc領域を含む、請求項40のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項44】
IgG領域がIgG4 Fc領域を含む、請求項40のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項45】
Fc領域が、IgA、IgE、IgD、またはIgM Fc領域を含む、請求項38のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項46】
野生型ヒトIgG配列中の1以上の正電荷アミノ酸が1以上の負電荷アミノ酸で置き換えられるように、第一のCH3含有ポリペプチドまたは第二のCH3含有ポリペプチドが、野生型ヒトIgGと異なるポリペプチド配列を含む、請求項40のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項47】
正電荷アミノ酸が、リジン、ヒスチジン、およびアルギニンからなる群より選択される、請求項46のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項48】
負電荷アミノ酸が、アスパラギン酸およびグルタミン酸からなる群より選択される、請求項46のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項49】
野生型ヒトIgG配列中の1以上の負電荷アミノ酸が1以上の正電荷アミノ酸で置き換えられるように、第一のCH3含有ポリペプチドまたは第二のCH3含有ポリペプチドが、野生型ヒトIgGと異なるポリペプチド配列を含む、請求項46のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項50】
正電荷アミノ酸が、リジン、ヒスチジン、およびアルギニンからなる群より選択される、請求項49のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項51】
負電荷アミノ酸が、アスパラギン酸およびグルタミン酸からなる群より選択される、請求項49のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項52】
野生型ヒトIgG1配列中の1以上の正電荷アミノ酸が1以上の負電荷アミノ酸で置き換えられるように、IgG1 Fcが、野生型ヒトIgG1と異なるポリペプチド配列を有する第一のCH3含有ポリペプチドまたは第二のCH3含有ポリペプチドを含む、請求項41のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項53】
第一のCH3含有ポリペプチドが負電荷アミノ酸でのリジンの置換を含む、請求項52のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項54】
リジンが、Lys409、Lys392、Lys439、およびLys370からなる群より選択される、請求項53のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項55】
野生型ヒトIgG1配列中の1以上の負電荷アミノ酸が1以上の正電荷アミノ酸で置き換えられるように、IgG1 Fcが、野生型ヒトIgG1と異なるポリペプチド配列を有する第一のCH3含有ポリペプチドまたは第二のCH3含有ポリペプチドを含む、請求項41のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項56】
第一のCH3含有ポリペプチドが正電荷アミノ酸でのアスパラギン酸の置換を含む、請求項55のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項57】
アスパラギン酸が、Asp399およびAsp356からなる群より選択される、請求項56のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項58】
第一のCH3含有ポリペプチドが正電荷アミノ酸でのグルタミン酸の置換を含む、請求項55のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項59】
グルタミン酸がGlu357である、請求項58のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項60】
第一のCH3含有ポリペプチドが負電荷アミノ酸でのLys409の置換を含み、そして第二のCH3含有ポリペプチドが、正電荷アミノ酸でのAsp399、Asp356、またはGlu357の置換を含む、請求項54のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項61】
第一のCH3含有ポリペプチドが負電荷アミノ酸でのLys392の置換を含み、そして第二のCH3含有ポリペプチドが、正電荷アミノ酸でのAsp399、Asp356、またはGlu357の置換を含む、請求項54のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項62】
第一のCH3含有ポリペプチドが負電荷アミノ酸でのLys439の置換を含み、そして第二のCH3含有ポリペプチドが、正電荷アミノ酸でのAsp399、Asp356、またはGlu357の置換を含む、請求項54のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項63】
第一のCH3含有ポリペプチドが負電荷アミノ酸でのLys370の置換を含み、そして第二のCH3含有ポリペプチドが、正電荷アミノ酸でのAsp399、Asp356、またはGlu357の置換を含む、請求項54のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項64】
第一のCH3含有ポリペプチドが正電荷アミノ酸でのAsp399の置換を含み、そして第二のCH3含有ポリペプチドが、負電荷アミノ酸でのLys409、Lys439、Lys370、またはLys392の置換を含む、請求項57のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項65】
第一のCH3含有ポリペプチドが正電荷アミノ酸でのAsp356の置換を含み、そして第二のCH3含有ポリペプチドが、負電荷アミノ酸でのLys409、Lys439、Lys370、またはLys392の置換を含む、請求項57のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項66】
第一のCH3含有ポリペプチドが正電荷アミノ酸でのGlu357の置換を含み、そして第二のCH3含有ポリペプチドが、負電荷アミノ酸でのLys409、Lys439、Lys370、またはLys392の置換を含む、請求項59のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項67】
第一のCH3含有ポリペプチドが抗体重鎖である、請求項37のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項68】
第二のCH3含有ポリペプチドが抗体重鎖である、請求項37のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項69】
ヘテロ二量体タンパク質が1以上の抗体軽鎖をさらに含む、請求項37のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項70】
抗体、二重特異性抗体、単一特異性一価抗体、二重特異性マキシボディ、モノボディ、ペプチボディ、二重特異性ペプチボディ、一価ペプチボディ、および受容体融合タンパク質からなる群より選択される、請求項37のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項71】
抗体のCH3領域を含むポリペプチドであって、野生型CH3中の1以上の正電荷アミノ酸が1以上の負電荷アミノ酸で置き換えられるように、CH3領域が、野生型CH3領域と異なるポリペプチド配列を含み、野生型CH3領域を含むポリペプチドに比較して、ホモ二量体を形成する能力が減少している、前記ポリペプチド。
【請求項72】
抗体のCH3領域を含むポリペプチドであって、野生型CH3中の1以上の負電荷アミノ酸が1以上の正電荷アミノ酸で置き換えられるように、CH3領域が、野生型CH3領域と異なるポリペプチド配列を含み、野生型CH3領域を含むポリペプチドに比較して、ホモ二量体を形成する能力が減少している、前記ポリペプチド。
【請求項73】
CH2領域をさらに含む、請求項71のポリペプチド。
【請求項74】
CH2領域をさらに含む、請求項72のポリペプチド。
【請求項75】
抗体重鎖を含む、請求項73のポリペプチド。
【請求項76】
抗体重鎖を含む、請求項74のポリペプチド。
【請求項77】
請求項75のポリペプチドを含む抗体。
【請求項78】
請求項76のポリペプチドを含む抗体。
【請求項79】
請求項71〜76のいずれかのポリペプチドをコードする単離核酸。
【請求項80】
プロモーターに機能可能であるように連結された請求項79の単離核酸を含む、発現ベクター。
【請求項81】
請求項80の発現ベクターを含有する宿主細胞。
【請求項82】
請求項71〜76のいずれかのポリペプチドを含む、薬学的組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−508604(P2011−508604A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541564(P2010−541564)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/000071
【国際公開番号】WO2009/089004
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(500203709)アムジェン インコーポレイテッド (76)
【Fターム(参考)】