説明

静電粉体散布装置

【課題】静電力を利用して食品や工業製品などの対象物の全体に粉体を散布することができる静電粉体散布装置を提供する。
【解決手段】静電粉体散布装置は、メッシュを有するスクリーン2と、粉体をスクリーン2に擦り込むスクリーンブラシ3と、スクリーンブラシ3に粉体を供給するホッパ40と、スクリーン2の下方に配置され、対象物1を運ぶコンベヤ10と、対象物1の下から対象物1に粉体を散布する粉体散布部20と、スクリーン2と対象物1との間、および粉体散布部20と対象物1との間に電圧を印加する直流電圧源DCとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電力を利用して粉体を対象物の表面に均一に散布する静電粉体散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
饅頭などの立体的な食品に可食性粉体(例えば小麦粉)を散布する一般的な方法は、食品を散布室内にコンベヤで搬入し、回転するブラシにより粉体を散布室内に舞い上がらせて食品の表面に粉体を付着させるという方法である。しかしながら、この方法では、舞い上がった粉体がコンベヤと散布室の壁部との間から外部に漏れ出して、周囲雰囲気を汚染してしまう。粉体は空気中に容易に拡散しやすく、また一旦空気中に拡散した粉体を捕獲することは極めて困難であるため、粉体を漏洩しない粉体散布装置が要請されている。
【0003】
静電力を利用して粉体を対象物に付着させる静電粉体散布装置は、粉体が周囲雰囲気中に拡散することを防止する1つの解決策を提供する。この静電粉体散布装置の原理について、図1を参照して説明する。図1に示すように、静電粉体散布装置は、食品などの粉体散布対象物200が載置されるパレット201と、メッシュを有するスクリーン202と、スクリーン202上のロールブラシ203とを備える。
【0004】
スクリーン202は直流電圧源DCの負極に接続され、パレット201は直流電圧源DCの正極に接続されるとともに接地される。直流電圧源DCによってスクリーン202とパレット201との間には高電圧が印加され、これによりスクリーン202とパレット201との間には静電界が形成される。スクリーン202上に供給された粉体は、回転するロールブラシ203によってスクリーン202のメッシュに擦り込まれ、スクリーン202の下側に押し出される。このとき、粉体は、回転するロールブラシ203との摩擦によって負に帯電する。したがって、粉体は、接地されている対象物200に引き付けられて対象物200の表面に付着する。
【0005】
このような静電粉体散布装置は、粉体をブラシで舞い上がらせる必要がないので、周囲雰囲気を清浄に保ちながら粉体を対象物に散布することができるという利点を有する。通常、饅頭などの食品は、その底面に予め粉体が付着された状態で静電粉体散布装置に運ばれるため、静電粉体散布装置では、対象物の底面を除く表面全体に粉体が散布される。しかしながら、この静電粉体散布装置は、対象物の側面の下部に粉体が付着しにくいという問題がある。
【0006】
図2は、粉体が対象物に付着する様子を説明する模式図である。上述したように、負に帯電した粉体は、対象物200に引き付けられる。ところが、対象物200の側面の近傍を進行する粉体は、対象物200に付着する前にパレット201に引き付けられてしまう。これは、粉体と対象物200との間に作用するクーロン力よりも、粉体とパレット201との間に作用するクーロン力と粉体の重力との合力が勝るからである。このような現象が対象物200の側面の周辺で起こり、その結果、粉体を対象物200の側面全体に付着させることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−347221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたもので、静電力を利用して食品などの対象物の全体に粉体を均一に散布することができる静電粉体散布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、粉体を対象物に散布する静電粉体散布装置であって、メッシュを有するスクリーンと、前記粉体を前記スクリーンに擦り込むスクリーンブラシと、前記スクリーンブラシに前記粉体を供給するホッパと、前記スクリーンの下方に配置され、前記対象物を運ぶコンベヤと、前記対象物の下から前記対象物に前記粉体を散布する粉体散布部と、前記スクリーンと前記対象物との間、および前記粉体散布部と前記対象物との間に電圧を印加する直流電圧源とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の好ましい態様は、前記対象物を前記スクリーンに向かって持ち上げるリフト機構をさらに有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記粉体散布部は、前記粉体をはね上げる回転ブラシを有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記粉体散布部は、前記回転ブラシが収容される半円筒部材と、前記回転ブラシの毛に接触するブラシ接触部をさらに有することを特徴とする。
【0011】
本発明の好ましい態様は、前記コンベヤは、前記対象物が載置されるベルトを有し、前記粉体散布部は、前記ベルトから前記粉体を掻き取って前記回転ブラシ上に落とすスクレーパを有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記粉体散布部から散布された前記粉体を受ける粉体カバーをさらに備え、前記粉体カバーは、前記対象物を囲む形状を有していることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記粉体散布部は、前記スクリーンの下方に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、粉体散布部と対象物との間に電圧が印加されることにより、粉体散布部と対象物との間には静電界が形成される。したがって、粉体散布部から飛び出した粉体は静電界の作用により対象物に向かって進行し、対象物の表面に付着する。粉体散布部は、粉体物の下方から粉体を散布するので、対象物の底面および側面の下部に粉体が付着する。一方、スクリーンとスクリーンブラシとにより、対象物の上面および側面の上部に粉体が散布される。このように、本発明によれば、上面、側面、および底面を含む対象物の全体に粉体を均一に散布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】静電粉体散布装置の原理を説明する模式図である。
【図2】粉体が食品に付着する様子を説明する模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る静電粉体散布装置を示す側面図である。
【図4】図3に示す静電粉体散布装置を矢印A方向から見た図である。
【図5】図3に示す静電粉体散布装置のB−B線矢視図である。
【図6】図6(a)はスクリーンブラシを示す断面図であり、図6(b)はスクリーンブラシを示す平面図である。
【図7】図7(a)は、スクリーンブラシの変形例を示す断面図であり、図7(b)は、図7(a)に示すスクリーンブラシの平面図である。
【図8】ワイパーブラシを下から見た図である。
【図9】スクリーンを示す平面図である。
【図10】粉体散布部を示す正面図である。
【図11】粉体散布部を示す断面図である。
【図12】粉体カバーを備えた静電粉体散布装置の例を示す図である。
【図13】図13(a)は、粉体カバーの断面図であり、図13(b)は、粉体カバーの側面図である。
【図14】リフト機構を備えた静電粉体散布装置の例を示す図である。
【図15】図12に示す粉体カバーと図14に示すリフト機構とを組み合わせた例を示す図である。
【図16】本発明の他の実施形態に係る静電粉体散布装置を示す図である。
【図17】複数の粉体散布部を有する静電粉体散布装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る静電粉体散布装置を示す側面図である。図4は、図3に示す静電粉体散布装置を矢印A方向から見た図である。図5は、図3に示す静電粉体散布装置のB−B線矢視図である。この静電粉体散布装置は、粉体が通過する細かいメッシュが形成されたスクリーン2と、このスクリーン2の上面に接触するスクリーンブラシ3とを備えている。スクリーンブラシ3は、スクリーン2に対して略垂直に延びる駆動軸5に連結されており、この駆動軸5はユニバーサルジョイント6を介してモータM1に連結されている。したがって、モータM1を駆動すると、スクリーンブラシ3は、スクリーン2上でその中心軸周りに回転する。
【0015】
スクリーン2の下方には、食品などの粉体散布対象物1(以下、単に対象物1という)を搬送するコンベヤ10が設けられている。このコンベヤ10は、図4および図5に示すように、対象物1が載置されるベルト11と、このベルト11を駆動するモータM2と、ベルト11を支持する搬送プレート13とを備えている。ベルト11は、複数のガイドローラによって移動自在に支持されており、モータM2を駆動することによってベルト11が循環する。
【0016】
スクリーン2の下方には、平坦な上面を有する搬送プレート13が水平に配置されている。この搬送プレート13は金属から構成されており、直流電圧源DCに接続されている。ベルト11の一部はこの搬送プレート13の上面上に位置し、対象物1はベルト11によって水平方向に移動される。搬送プレート13は支持部材32に固定されており、支持部材32はボルト34によって支持フレーム30に固定されている。
【0017】
スクリーンブラシ3の上方には、図4に示すように、粉体をスクリーンブラシ3の上面に供給するホッパ40が設けられている。このホッパ40は、粉体が収容されるホッパ容器41と、このホッパ容器41内に配置されるホッパブラシ42と、このホッパブラシ42を回転させるモータM3とを備えている。ホッパ容器41の底部にはスリット(図示せず)が形成されており、ホッパブラシ42はスリットに沿って配置されている。スクリーンブラシ3はスリットの下方に配置されている。モータM3によりホッパブラシ42をその軸心周りに回転させると、ホッパ容器41内の粉体がスリットを通ってスクリーンブラシ3の上面に供給される。
【0018】
図6(a)はスクリーンブラシ3を示す断面図であり、図6(b)はスクリーンブラシ3を示す平面図である。スクリーンブラシ3は、略円盤状の形状を有するスポンジブラシ50と、スポンジブラシ50の上面に配置された円形のブラシ押さえ53とを備えている。スポンジブラシ50は、連続気泡が内部に形成されたウレタンから構成されている。スポンジブラシ50の上面および下面は円形であり、スポンジブラシ50の下面がスクリーン2の上面に接触する。スポンジブラシ50の直径は、対象物1の幅よりも大きく設定されている。
【0019】
ブラシ押さえ53は、スポンジブラシ50の上面と一致する下面を有し、ブラシ押さえ53の周縁部には環状の堰53aが形成されている。この堰53aは上方に張り出し、スポンジブラシ50の外周部に沿って延びている。この堰53aは、スクリーンブラシ3の上面に供給された粉体が、遠心力によってスクリーンブラシ3から飛び出してしまうことを防止する役割を持つ。図6(a)および図6(b)に示すように、スポンジブラシ50およびブラシ押さえ53には、縦方向に貫通する複数の通孔60が形成されている。これらの通孔60は、スクリーンブラシ3の中心軸周りに等間隔に配列されている。
【0020】
駆動軸5の外周面には雄ねじ(図示せず)が形成されており、この雄ねじにはナット54が係合している。ナット54はワッシャ55を介してブラシ押さえ53を下方に押圧している。したがって、ナット54を回転させることにより、ブラシ押さえ53がスポンジブラシ50をスクリーン2に押し付ける力を調整することができる。また、ナット54を緩めることにより、スクリーンブラシ3を駆動軸5から取り外すことができる。スポンジブラシ50の中央部には、縦方向に延びるキー溝58aを有するコア58が配置されている。このコア58はスポンジブラシ50に固定されている。駆動軸5の先端近傍にはキー59が形成されており、このキー59はキー溝58aに挿入されている。キー59とキー溝58aとの係合により駆動軸5のトルクはスポンジブラシ50に伝達され、これによりスポンジブラシ50およびブラシ押さえ53は、駆動軸5を中心に回転する。
【0021】
ブラシ押さえ53の上面には、粉体ワイパー56が配置されている。この粉体ワイパー56はスクリーンブラシ3の径方向に沿って延びており、通孔60の上側開口端を横切るように配置されている。粉体ワイパー56は図示しない支持部材によって支持されており、その位置は固定されている。すなわち、粉体ワイパー56は、スクリーンブラシ3の上面に接触しているだけであり、スクリーンブラシ3とともには回転しない。粉体ワイパー56の位置は、ホッパ40(図4参照)からの粉体の供給位置から離れた位置である。ホッパ40から供給された粉体のほとんどは、通孔60を通ってスクリーン2に落下する一方、粉体の一部はブラシ押さえ53の上にとどまる。スクリーンブラシ3が回転すると、ブラシ押さえ53上の粉体は、粉体ワイパー56によってかき集められ、そして通孔60に落とされる。このようにして、スクリーンブラシ3に供給されたほぼ全ての粉体は、通孔60を通ってスクリーン2上に供給される。
【0022】
図7(a)は、スクリーンブラシ3の変形例を示す断面図であり、図7(b)は、図7(a)に示すスクリーンブラシ3の平面図である。この例のスクリーンブラシ3は、図6(a)および図6(b)に示すスクリーンブラシ3と同じ基本構成を有するが、この例のスクリーンブラシ3には、スリット状の上側開口端を持つ複数の通孔60が形成されている。これら通孔60は、スクリーンブラシ3の半径方向に延び、かつスクリーンブラシ3を縦方向に貫通している。より具体的には、ブラシ押さえ53には、スクリーンブラシ3の半径方向に延びる複数のスリット53bが形成されており、スポンジブラシ50にはスリット53bに連通する長孔50aが形成されている。スポンジブラシ50の長孔50aは、ブラシ押さえ53のスリット53bに対応する位置にあり、長孔50aは、スリット53bと同じか、またはスリット53bよりも大きい水平断面形状を有している。これらスリット53bと長孔50aとにより各通孔60が形成される。
【0023】
また、この例では、スクリーンブラシ3の上面に配置される粉体ワイパーとして、可撓性がある多数の毛56aを有するワイパーブラシ56が使用されている。毛56aはナイロンやポリプロピレンなどの樹脂からなり、スクリーンブラシ3の上面に対して略垂直に延びている。毛56aの下端はスクリーンブラシ3の上面(すなわち、ブラシ押さえ53の上面)に接触しており、上端は基台板56bに固定されている。
【0024】
図8は、ワイパーブラシ56を下から見た図である。ワイパーブラシ56の毛56aは、基台板56b上の円形の領域内に固定されている。この円形の領域の大きさは、スクリーンブラシ3の上面よりもやや小さい。ワイパーブラシ56の一部には、ホッパ40から供給された粉体がスクリーンブラシ3の上面に落下することを許容する切り欠き56cが形成されている。この切り欠き56cは、ワイパーブラシ56の中心から径方向外側に延びており、ホッパブラシ42の下方に位置している。基台板56bは、図示しない支持部材に支持されており、ワイパーブラシ56の位置は固定されている。
【0025】
ワイパーブラシ56の毛56aは、切り欠き56cが形成されている部分を除き、スクリーンブラシ3の上面のほぼ全体に接触している。切り欠き56cを通ってスクリーンブラシ3の上面に落下した粉体は、スクリーンブラシ3の回転に伴ってワイパーブラシ56によって通孔60に落とされる。毛56aは所定の間隔で基台板56b上に配列されており、スクリーンブラシ3が1回転する間にスクリーンブラシ3の上面に供給された粉体が、ワイパーブラシ56の毛56aによって複数の通孔60に落とされるようになっている。すなわち、スクリーンブラシ3の上面に供給された粉体が、スクリーンブラシ3が1回転する間に全ての通孔60にほぼ均等の量で落とされるように、通孔60の上側開口部であるスリット53bの幅および毛56aの間隔が設定されている。したがって、粉体は、スクリーンブラシ3の下面全体で均一にスクリーン2に擦り込まれ、これにより粉体が対象物1に均一に付着する。
【0026】
図9は、本実施形態に使用されるスクリーン2を示す平面図である。図9に示すように、スクリーン2は、粉体が通過するメッシュ2aを有している。このメッシュ2aのサイズは、スクリーンブラシ3の下面よりも大きく、図9に示すように、スクリーンブラシ3の下面全体がメッシュ2aに接触している。ホッパ40から供給される粉体は、スクリーンブラシ3によってスクリーン2のメッシュ2aに摺り込まれる。
【0027】
図3に示すように、スクリーン2は、絶縁材からなる絶縁フレーム8によって水平に支持されている。スクリーン2およびコンベヤ10はそれぞれ直流電圧源(直流電圧発生器)DCに電気的に接続されている。より具体的には、スクリーン2は直流電圧源DCの負極に接続されており、コンベヤ10の搬送プレート13は直流電圧源DCの正極に電気的に接続されている。さらに搬送プレート13は接地されている。ベルト11は、その内部に組み込まれた導電線(図示せず)を有しており、この導電線を介してベルト11は搬送プレート13に電気的に接触している。したがって、ベルト11は搬送プレート13を介して直流電圧源DCの正極に電気的に接続される。なお、ベルト11を直流電圧源DCの正極に直接接続してもよい。スクリーン2と搬送プレート13(およびベルト11上の対象物1)との間には直流電圧源DCによって電圧(例えば、5000V〜6000Vの直流高電圧)が印加され、これによりスクリーン2と対象物1との間には、静電界が形成される。
【0028】
静電粉体散布装置は、通常、工場などの施設に設置されているコンベヤに隣接して設置される。例えば、図3に示すように、静電粉体散布装置は、上流側コンベヤ100Aと、下流側コンベヤ100Bとの間に設置される。静電粉体散布装置は、上流側コンベヤ100Aから対象物1を受け取ってその表面に粉体を散布する。粉体が散布された対象物1は下流側コンベヤ100Bに受け取られる。
【0029】
図3に示すように、ベルト11の下流側端部の下方には、コンベヤ10によって搬送される対象物1の下から該対象物1に粉体を散布する粉体散布部(補助粉体散布部)20が配置されている。この粉体散布部20は、ベルト11と、下流側コンベヤ100Bとの間の微小な隙間を通じて、対象物1の下方から該対象物1に粉体を散布する。
【0030】
図10は、粉体散布部20を示す正面図である。図11は、粉体散布部20を示す断面図である。粉体散布部20は、粉体をはね上げる回転ブラシ21と、この回転ブラシ21を回転させるモータM4と、回転ブラシ21が収容される半円筒部材22とを備えている。半円筒部材22は、回転ブラシ21の下半分を囲む形状を有しており、半円筒部材22の上半分は切り欠かれている。モータM4は、絶縁材からなる継手29を介して回転ブラシ21に連結されている。回転ブラシ21の軸方向は、ベルト11によって搬送される対象物1の進行方向と略垂直である(図5参照)。回転ブラシ21と半円筒部材22の内周面との間には微小な隙間が形成されている。なお、回転ブラシ21と半円筒部材22の内周面とを接触させてもよい。
【0031】
回転ブラシ21は、中心軸21aと、この中心軸21aに固定された多数の毛21bとを備えている。中心軸21aは軸受24により回転自在に支持されている。毛21bは、中心軸21aの径方向に延びている。中心軸21aは、金属などの導電性材料から構成されている。毛21bは弾力を有し、ナイロンやポリプロピレンなどの樹脂から構成されている。半円筒部材22の切り欠き端部には、回転ブラシ21の毛21bに接触するブラシ接触部25が設けられている。このブラシ接触部25は半円筒部材22と一体に構成してもよく、または半円筒部材22とは別体として設けてもよい。半円筒部材22およびブラシ接触部25は、金属などの導電性材料から構成されている。
【0032】
ブラシ接触部25の先端は、半円筒部材22の内周面からわずかに径方向内側に位置している。したがって、回転ブラシ21が回転すると、毛21bの先端がブラシ接触部25に順次接触する。このブラシ接触部25は、回転する回転ブラシ21の毛21bの先端に接触することで、毛21bを撓ませる。毛21bは、元の形状に戻るときに生じる力(反動)によって粉体を上方に飛ばす。粉体散布部20は、直流電圧源DCの負極に電気的に接続されている。より具体的には、回転ブラシ21の中心軸21aと、ブラシ接触部25は、直流電圧源DCの負極に電気的に接続されている。したがって、ベルト11上の対象物1と粉体散布部20との間には静電界が形成される。
【0033】
粉体散布部20は、ベルト11上に落下した粉体を掻き取るスクレーパ26を有している。このスクレーパ26は、回転ブラシ21に近接して配置されており、スクレーパ26によってベルト11から掻き取られた粉体が回転ブラシ21の上に落下するようになっている。回転ブラシ21の上に落下した粉体は、回転ブラシ21の回転により半円筒部材22の内周面上をブラシ接触部25に向かって運ばれる。このとき、粉体は、回転ブラシ21との摩擦により負に帯電する。そして、粉体は、回転ブラシ21の回転および毛21bの弾性により与えられる機械的エネルギーと、ベルト11上の対象物1と粉体散布部20との間に形成される静電界の作用とにより、ベルト11上の対象物1に向かって上方に飛び、対象物1に付着する。
【0034】
次に、静電粉体散布装置の全体の動作について説明する。まず、モータM1を駆動させてスクリーンブラシ3をその中心軸周りに回転させる。この状態で、ホッパ40は、回転するスクリーンブラシ3の上面(すなわちブラシ押さえ53の上面)に粉体を連続的に供給する。粉体は、スクリーンブラシ3の通孔60を通ってスクリーン2の上面に落下し、回転するスクリーンブラシ3によってスクリーン2のメッシュ2aに擦り込まれる。粉体は、スクリーンブラシ3との摩擦によって負に帯電し、スクリーンブラシ3によりメッシュ2aに押し込まれてスクリーン2の下面に移動する。スクリーン2とベルト11との間には電圧が印加されており、これにより粉体はベルト11上の対象物1に向かって進行する。
【0035】
対象物1はコンベヤ10によって水平方向に搬送され、スクリーン2を横切って移動する。負に帯電している粉体は、直流電圧源DCの正極に電気的に接続されている対象物1に引き寄せられ、これにより粉体が対象物1に付着する。なお、粉体の種類によっては、スクリーンブラシ3でスクリーン2に擦り込まれるときに粉体が正に帯電することがある。このような粉体を使用するときは、スクリーン2および粉体散布部20は直流電圧源DCの正極に接続され、コンベヤ10(すなわち、搬送プレート13および/またはベルト11)は直流電圧源DCの負極に接続される。
【0036】
スクリーンブラシ3とスクリーン2との相対位置は固定されており、スクリーンブラシ3はスクリーン2上で駆動軸5の周りを回転する。スクリーンブラシ3の回転により、粉体はスクリーン2上に均等にならされ、そしてスクリーン2のメッシュ2aに擦り込まれる。したがって、粉体をならすためにスクリーンブラシ3の全体をスクリーン2上で移動させる必要がない。したがって、スクリーンブラシ3の移動機構を不要とすることができ、装置全体がコンパクトとなる。
【0037】
スクリーン2に対するスクリーンブラシ3の相対速度は、スクリーンブラシ3の中央で小さく、スクリーンブラシ3の周縁部で大きい。このため、スクリーンブラシ3の中央での粉体のスクリーン2への擦り込み量は、周縁部での量に比べて少なくなる。しかしながら、粉体を散布している間、対象物1は、上から見たときにスクリーンブラシ3およびスクリーン2を横切って移動するので、対象物1に均一に粉体が付着する。
【0038】
対象物1は、さらにスクリーン2の下流側に配置されている粉体散布部20の上方の位置までベルト11によって運ばれる。粉体散布部20は、上述したように、対象物1の下から粉体を対象物1に散布し、これにより粉体を対象物1の底面および側面の下部に付着させる。ブラシ接触部25と回転ブラシ21の中心軸21aとの電位差は0であるので、ブラシ接触部25と中心軸21aとの間には静電界が形成されない。したがって、粉体は、中心軸21aに引き寄せられることなく、ベルト11上の対象物1に向かって進行する。
【0039】
このように、第1の静電粉体散布部であるスクリーンブラシ3およびスクリーン2により対象物1の上面および側面の上部に粉体が散布され、第2の静電粉体散布部である粉体散布部20により対象物1の底面および側面の下部に粉体が散布される。したがって、対象物1の全体に粉体を散布することができる。粉体が付着した対象物1は、下流側コンベヤ100Bに受け取られ、さらに下流側に運ばれる。
【0040】
粉体散布対象物1の例としては、饅頭などの食品や、化粧品などの工業製品が挙げられる。また、粉体としては、天然色素又は合成色素を含んだ可食性粉体、ココア粉、小麦粉、抹茶粉、シュガー粉、コーンスターチ、あるいは工業用の粉体など、用途に応じて種々な粉体を用いることができる。
【0041】
図12は、本実施形態の変形例を示す図である。この例では、粉体散布部20から散布された粉体を受ける粉体カバー70がベルト11の一部を覆うように設けられている。この粉体カバー70は、粉体散布部20の上方に位置している。粉体カバー70は、ベルト11に沿って延び、ベルト11によって運ばれてくる対象物1を囲むトンネルのような形状を有している。図12の矢印で示すように、対象物1は、ベルト11と粉体カバー70との間に形成された空間を通り抜ける。図13(a)は、粉体カバー70の断面図であり、図13(b)は、粉体カバー70の側面図である。粉体カバー70は、略半円筒形状を有している。粉体カバー70の下流側端部は、図13(b)に示すように、ベルト11から突出している。
【0042】
粉体カバー70の内周面の頂部には粉体を分散させる突起部71が設けられている。この突起部71の断面は逆三角形であり、図13(a)の矢印に示すように、突起部71は、下方から進行してくる粉体の流れを分散させる。さらに、粉体カバー70の内周面には、粉体を粉体カバー70内に滞留させるための複数のバッフル72が配置されている。これらバッフル72は、粉体カバー70の長手方向に沿って略等間隔に配列されている。
【0043】
対象物1は、粉体散布部20からの粉体の上昇流と、粉体カバー70内に形成される粉体の旋回流との中を通過し、これにより粉体は対象物1の底面および側面に付着する。さらに、粉体の流れはバッフル72に衝突するので、粉体は粉体カバー70からはほとんど流出しない。しがって、粉体の周囲雰囲気中への拡散を防止することができる。また、バッフル72により粉体が粉体カバー70内に長時間滞留するため、対象物1の全体に粉体を付着させることができる。なお、粉体の周囲雰囲気中への拡散を確実に防止するために、粉体吸引器を粉体カバー70に接続してもよい。
【0044】
図14は、静電粉体散布装置の変形例を示す図である。この例の静電粉体散布装置は、ベルト11上の対象物1をスクリーン2の下面に向かって持ち上げるリフト機構としてのリフトローラ73をさらに備えている。このリフトローラ73は、スクリーン2の下に配置されており、支持部材(図示せず)により回転自在に支持されている。ベルト11は、リフトローラ73によって下から支持されており、これによりリフトローラ73の最上部を頂点とする対象物1の搬送経路が構成される。すなわち、ベルト11には、リフトローラ73に向かって上方に傾斜する登り傾斜部と、リフトローラ73から下方に傾斜する下り傾斜部が形成される。図14では、直流電圧源DCの正極は搬送プレート13を介してベルト11に接続されているが、ベルト11に直流電圧源DCの正極が直接接続されていてもよい。
【0045】
ベルト11によって移動される対象物1がリフトローラ73を乗り越えるとき、対象物1の底面の一部がベルト11から離間する。したがって、スクリーン2から供給される粉体の一部は、対象物1の底面に回り込み、底面および側面の下部に付着する。対象物1の底面および側面の下部には、さらに粉体散布部20によって粉体が散布される。したがって、より確実に対象物1の全体に粉体を散布することができる。なお、リフトローラに代えて、上面が滑らかな曲面を有するベルト支持部材をリフト機構として使用してもよい。
【0046】
図15は、図12に示す粉体カバー70と図14に示すリフトローラ73とを組み合わせた例を示す図である。図15に示すように、粉体カバー70とリフトローラ73(すなわちリフト機構)とを組み合わせることにより、さらに確実に粉体を対象物1の全体に散布することができる。
【0047】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図16は、本発明の他の実施形態に係る静電粉体散布装置を示す図である。なお、図16においては、説明のために、支持部材32および支持フレーム30は省略されている。図16に示すように、粉体散布部20は、スクリーン2およびベルト11の下方に配置されている。本実施形態では、ベルト11は、粉体の通過を許容する網構造を有している。このような網構造を有するベルト11として、例えばワイヤで編まれたワイヤベルトまたはネットベルトを使用することができる。この実施形態では、搬送プレート13は設けられていなく、直流電圧源DCの正極はベルト11に接続されている。ベルト11と粉体散布部20との間には直流電圧源DCにより電圧が印加されている。
【0048】
粉体散布部20の位置は、スクリーン2の下方である。したがって、スクリーン2から供給される粉体の一部は、ベルト11を通過し、粉体散布部20の上に落下する。回転ブラシ21は、粉体散布部20上に落下した粉体を受け取り、該粉体を上方に飛ばす。したがって、対象物1の上面、側面、及び底面に同時に粉体を散布することができる。なお、この実施形態では、上述したスクレーパ26は不要である。図17に示すように、複数の粉体散布部20をベルト11およびスクリーン2の下方に配置してもよい。
【0049】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0050】
1 対象物
2 スクリーン
3 スクリーンブラシ
10 コンベヤ
11 ベルト
13 搬送プレート
20 粉体散布部
21 回転ブラシ
22 半円筒部材
25 ブラシ接触部
26 スクレーパ
40 ホッパ
70 粉体カバー
73 リフトローラ(リフト機構)
DC 直流電圧源(直流電圧発生器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を対象物に散布する静電粉体散布装置であって、
メッシュを有するスクリーンと、
前記粉体を前記スクリーンに擦り込むスクリーンブラシと、
前記スクリーンブラシに前記粉体を供給するホッパと、
前記スクリーンの下方に配置され、前記対象物を運ぶコンベヤと、
前記対象物の下から前記対象物に前記粉体を散布する粉体散布部と、
前記スクリーンと前記対象物との間、および前記粉体散布部と前記対象物との間に電圧を印加する直流電圧源とを備えたことを特徴とする静電粉体散布装置。
【請求項2】
前記対象物を前記スクリーンに向かって持ち上げるリフト機構をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の静電粉体散布装置。
【請求項3】
前記粉体散布部は、前記粉体をはね上げる回転ブラシを有することを特徴とする請求項1に記載の静電粉体散布装置。
【請求項4】
前記粉体散布部は、前記回転ブラシが収容される半円筒部材と、前記回転ブラシの毛に接触するブラシ接触部をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の静電粉体散布装置。
【請求項5】
前記コンベヤは、前記対象物が載置されるベルトを有し、
前記粉体散布部は、前記ベルトから前記粉体を掻き取って前記回転ブラシ上に落とすスクレーパを有することを特徴とする請求項3に記載の静電粉体散布装置。
【請求項6】
前記粉体散布部から散布された前記粉体を受ける粉体カバーをさらに備え、
前記粉体カバーは、前記対象物を囲む形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の静電粉体散布装置。
【請求項7】
前記粉体散布部は、前記スクリーンの下方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の静電粉体散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−143669(P2012−143669A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1774(P2011−1774)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(596159153)ベルク工業有限会社 (6)
【Fターム(参考)】