説明

静電紡糸法によりポリマー溶液からナノファイバーを製造する方法およびその実施装置

本発明は、帯電電極と対向電極の間の電位差により形成される電界中で、静電紡糸法によりポリマー溶液からナノファイバーを製造する方法に関する。対向電極(40)近くの帯電電極(30)の外周の一部に紡糸表面を作り出しながら、回転する帯電電極(30)の表面を利用して、紡糸のためにポリマー溶液(2)を電界中に供給し、これによって高い紡糸能力を達成する。さらに、本発明は前記方法を実施する装置に関し、帯電電極(30)外周の自由部に対向して対向電極(40)を位置させた状態で、帯電電極(30)が枢支されると共に、その外周の一部(底部)がポリマー溶液(2)に浸漬される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電電極と対向電極との間の電位差により形成される電界中で、静電紡糸法によりポリマー溶液からナノファイバーを製造する方法に関するものである。
また、本発明は、電位差のある帯電電極と対向電極とで構成され、両電極間に電界を形成する前記方法を実施する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直径10nm〜1000nmのポリマー繊維は、極めて価値のある幾つかの特性を有する新たなグレードの材料を示す。かかるポリマー繊維層を用いた典型的な分野としては、ガスおよび液体の濾過、サブミクロン粒子、バクテリアおよび化学品の捕捉用バリア材料があり、非常に高い濾過効率を達成する。ナノファイバーは、電池のセパレータ、複合材の強化剤や、医学における製薬用担体および組織インプラント用担体として、使用されている。気液媒体に容易にアクセスし得るナノファイバーの特異性の高い表面は、特殊な吸収特性を前もって決定したり、例えば触媒等の種々の活性成分の担体としての使用が約束されている。ナノファイバー層の極めて小さな孔は、耐熱性が極めて高い状態にある。
【0003】
ナノファイバーは、広範囲のポリマーやポリマーブレンドで形成され、ポリマー溶液フォーミング法により低分子量の添加剤を含有するポリマーブレンドから製造される。原理的に同様のポリマー溶融フォーミング法と異なり、溶液処理では、低い溶液粘度に起因してより小さな直径の繊維が得られる。溶液フォーミングには、ガス媒体を流す機械的な力または静電界のクーロン力が用いられる。静電紡糸では、1回の繊維形成が、多数のフィラメント断片の各容積における等しい電荷分布に依存しているので、より小さな直径の繊維が得られる。
【0004】
空気流によるポリマー溶液フォーミング法によってナノファイバーを製造する今日まで公知の方法および装置が、例えば、米国特許第6382526号明細書(特許文献1)および米国特許第6520425号明細書(特許文献2)に記載されている。ポリマー溶液は環状部分の紡糸ジェットに射出される。次に、溶液は、環状部分の内側(場合によっては、環状部分の外側であってもよい)に供給される空気流の機械的な作用によって成形され、直径200nm〜3000nmの繊維が作られる。
【0005】
平均強度50000V/m〜500000V/mの静電界を用いたポリマー溶液のフォーミングが、WO−0127365(特許文献3)、WO−0250346(特許文献4)、US−2002/0175449−A1(特許文献5)、US−2002/084178−A1(特許文献6)に記載されている。これらの解決法によれば、ポリマー溶液が内径0.5nm〜1.5nmの円筒状紡糸ジェットに分配される。これらのジェットはDC電源に接続されている。溶出溶媒は、静電力により通常接地された対向電極に引きつけられ、同時に、この静電力により細いフィラメントに成形され、引き続き、対応するより小さな直径のフィラメントの束にバラバラに分けられる。紡糸は、1つのジェットから行われるか、あるいは、装置の能力を高め、さらに対向電極の被覆率または対向電極の表面もしくはその表面近傍を移動する平坦な支持材料の被覆率さえも高める目的で、多数の固定式または可動式ジェットから行われる。
【特許文献1】米国特許第6382526号明細書
【特許文献2】米国特許第6520425号明細書
【特許文献3】WO−0127365
【特許文献4】WO−0250346
【特許文献5】US−2002/0175449−A1
【特許文献6】US−2002/084178−A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記全てのナノファイバーの製造方法および装置の欠点は、時間内に処理されるポリマー材料が非常に少量であることである。機械的な力によるナノファイバーのフォーミングの場合は、製造されるナノファイバーの直径が、とりわけ空気量の割合と紡糸ジェットを流れるポリマー溶液とに依存する。一方、静電界のクーロン力によるフォーミングでは、紡糸ジェットの喉部にいわゆるテイラー円錐(Taylor cone)が形成されなければならず、その存在は繊維形成の必要要件であり、紡糸ジェットからのポリマー溶媒の放出速度と静電界強度の比の比較的狭い範囲で調整される。静電界の調整可能な最大強度は空気の絶縁耐力および前記の範囲により制限され、この制限帯電が電極間に生じる。前記事情および紡糸ポリマー溶液の達成可能な濃度のために、1つの紡糸ジェットに付き1時間当たり約0.1g〜1gのポリマー処理が可能であり、産業上の観点からナノファイバーの製造に非常に問題を残す。
本発明の目的は、産業上適用可能であり、高い紡糸能力を達成できる方法および装置を創出することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、本発明のナノファイバーの製造方法により達成され、その原理は、対向電極近くの帯電電極の外周の一部に紡糸表面を作るとともに、回転する帯電電極の表面により、紡糸用ポリマー溶液を静電界中に供給することから成る。ポリマー溶液は、紡糸ジェットからの放出中だけでなく、その液位表面にも、特に有利には前記溶液を入れた容器に部分的に浸漬された回転体の表面上の薄層に、電界中でテイラー円錐を良好な状態で作り出すことができる。この良好な状態とは、ポリマーの分子量、その濃度と温度により規定される適切な溶液粘度、ポリマーの種類と表面活性成分の存在により規定される適切な表面張力、および、低分子電解質の存在により得られる溶液の適切な導電率を意味する。紡糸表面の面積は、帯電電極および対向電極の面積と形状に対応する。ナノファイバーの成形数は、紡糸表面の面積と形状に対応する。
【0008】
請求項2によれば、好適には、静電界の作用によりポリマー溶液から帯電電極の紡糸表面に製造されるナノファイバーが、電界によって対向電極に吹き寄せられ、対向電極の前のナノファイバー蓄積手段上に蓄積され、対向電極上に層を形成する。この方法では、基本的に装置の幅に対応した任意の幅で、高品質かつ均一なナノファイバー層を作ることができる。
次の改良は請求項3により達成される。電界と協働する空気流の作用が、帯電電極からの繊維の流出を促進する。
【0009】
しかし、好適には、ナノファイバーが、対向電極に向かって吹き寄せられ、対向電極の前面の空気透過性ナノファイバー蓄積手段上に蓄積されて、ナノファイバー蓄積手段上に層を形成する。
対向電極に向かう空気流が、請求項5による空気の吸引によって作り出される。この簡単な方法を用いて、対向電極への繊維の流出が促進され、生産性が向上する。
請求項6によれば、ナノファイバーは、帯電電極と対向電極の間の空間で、空気流によりそのコースから対向電極に向かって偏向され、ポリマー溶液の紡糸をもたらす電界の範囲外に位置する空気透過性のナノファイバー蓄積手段に導かれる。
帯電電極から対向電極に向かってナノファイバーをそのコースから偏向する空気流は、請求項7によれば、電極間の空間から帯電電極に関して空気を透過するナノファイバー蓄積手段の背後の空間に、空気を吸引することによって生じることが好都合である。
【0010】
装置の生産性の向上に関して、請求項8によれば、ナノファイバーが吹き寄せられる空間に補助乾燥空気を供給することが好都合であり、これにより、ナノファイバーからポリマー溶媒の蒸発が加速されて、ナノファイバーが静電紡糸により製造され、電極間の空間で移動する。
一方、ポリマー溶媒の蒸発を加速する乾燥効率を向上させるために、帯電電極に関して空気を透過する支持装置前面の空間から、当該装置を通過させることなく補助乾燥空気の少なくとも一部を取り出すと、好都合である。
また、請求項10の方法は、供給される補助乾燥空気の加熱がナノファイバーの乾燥中に生じる、より大量の溶媒蒸気の取り出しを可能にするので、装置の生産性の向上に役立つ。
【0011】
前記方法の全実施の態様については、装置の全体構成が簡易であり、かつ、ポリマー溶媒から有害かつ危険なガスを除去する必要がないため、ポリマー水溶液の使用が好適である。
【0012】
請求項12の装置は、前記方法を実施するための装置の基本的な特徴を記述したものであり、その要点は、帯電電極外周の自由部に対向して対向電極を位置させた状態で、帯電電極が枢支されると共に、その外周の一部がポリマー溶液に浸漬されるというものである。このように取り計られた装置によれば、十分な量のポリマー溶媒を電界中に供給することができる。
請求項13の実施の態様では、電極間の全空間に同じ強度の電界を生じさせた状態で、対向電極がその全長に沿って帯電電極外周の自由部を取り囲む。
【0013】
両電極間にナノファイバー蓄積手段が位置し、その表面にナノファイバーが層状に蓄えられる。
請求項15および請求項16の装置の実施形態は好都合であり、ナノファイバー蓄積手段は空気を透過し、当該装置を通過する空気流が生じる。
請求項17の代替の実施の態様では、電極間の空間の外部に空気を透過するナノファイバー蓄積手段が位置し、その背後に、電極間の空間から少なくとも一部の空気が通過するナノファイバー蓄積手段に向かって、ナノファイバーを吹き寄せる空気流を形成する真空が作られる。前記装置の実施の態様において、請求項18〜請求項22のいずれかに記載のナノファイバー蓄積手段を形成することが好都合である。
【0014】
ナノファイバーから溶媒の蒸発を増大させるために、請求項23〜請求項25のいずれかによれば、補助乾燥空気が装置内に供給される。
帯電電極の好都合な実施の態様が請求項26〜請求項28に記載されており、その目的は前記実施の態様を用いようとする装置の最良と考えられる紡糸効率を達成することにある。
【0015】
本発明の装置の具体例が、添付図に模式的に示されている。
帯電電極と対向電極の間の電位差により形成される電界中で、静電紡糸法によりポリマー溶液からナノファイバーを製造する装置が、枢支された円筒体3外周の一部を浸漬するポリマー溶液2が少なくとも部分的に充填された容器1から構成され、円筒体3は、図示されていないが周知の方法により、DC電源に接続され、帯電電極30を形成する。帯電電極30外周の自由部に対向して電位差を有する対向電極40が位置し、対向電極40は、図1に示されるように通常アースに接続される(接地される)か、あるいは、図示されていないが周知の方法により、電気的に異なった極のDC電源に接続される。
【0016】
非典型例では、円筒体3が、その外周の底部がポリマー溶液2に浸漬される。このような配置については、帯電電極表面にポリマー溶液を分配する閉鎖容器がポリマー溶液で充填されるか、または、帯電電極としての円筒体が前記密閉容器内に配置され、一方、適当量のポリマー溶液を容器から円筒体の外周に引き出して、ポリマー溶液が、例えば円筒体外周の頂部を濡らすという、非図示例により変化させることができる。
【0017】
図1に示される実施形態の実施例において、穿孔された例えばシートメタル等の導電性材料から成る対向電極40が、真空源6に接続された真空室5の前面端部を形成する円筒状の表面に成形されている。帯電電極30近い、対向電極40の表面の一部が、真空室5の一側に配置された巻戻し装置81および真空室5の他側に配置された巻取り装置82に配置された、空気透過性のナノファイバーの面支持材料72(例えば、裏当て布で形成される)の搬送部41として働く。図示の実施形態において、ナノファイバーの平坦な支持材料72は、それ自体、空気を透過するナノファイバー蓄積手段7を形成する。
【0018】
ポリマー溶液2の容器1は、開放されていて、少なくとも1つのポリマー溶液2の入口11および少なくとも1つのポリマー溶液2の出口12を備えている。前記ポリマー溶液の入口11および出口12は、ポリマー溶液2の循環を提供すると共に、容器1内の液位を一定の高さに維持するのに役立つ。
帯電電極30と対向電極40の間の空間に補助乾燥空気9の供給部90が割り当てられ、必要に応じて、例えば補助乾燥空気9の供給部90に配置される加熱装置91を用いて、周知の方法に従って供給部90を加熱することができる。補助乾燥空気9は、帯電電極30と対向電極40の間の空間から全部または一部が真空室5に吸引されるか、あるいは、補助乾燥空気が供給される側とは反対側から排出される。
【0019】
一部の外周がポリマー溶液2に浸漬されている帯電電極30を回転させることによって、帯電電極30の外周により、ポリマー溶液2が、容器1から電界が形成されている帯電電極30と対向電極40の間の空間に取り出される。この帯電電極30表面に、ポリマー溶液2から安定性の高いテイラー円錐が形成され、これらはナノファイバー20の主要な形成位置を与える。形成されたナノファイバー20は、電界効果により対向電極40に吹き寄せられ、引き続き、ナノファイバーから成る平坦な支持材料72を呈する裏当て布の表面に層状に堆積し、その厚さは巻戻し装置81および巻取り装置82の速度を利用して調整される。
帯電電極30から対向電極40へのナノファイバー20の取り出しは、外部空間から真空室5に吸引され、ポリマー溶液2に沿って容器1および帯電電極30を通過し、ナノファイバーから成る平坦な支持材料72を呈する裏当て布および対向電極40を通過する空気の流れによって促進される。
【0020】
図4に示される実施形態において、対向電極40が、別の適当な方法を用いて、例えば、帯電電極30を示す枢支された円筒体3に平行なロッド400から製作される。対向電極40を形成するロッド400間に、ナノファイバー蓄積手段7を形成するナノファイバーから成る平坦な支持材料72の搬送部41を形成する補助ロッド410が配置されている。しかし、補助ロッド410の幾つかまたは全てを低摩擦抵抗として回転可能にさせ、ナノファイバーから成る支持材料72を搬送することができる。本実施形態では、ナノファイバーから成る支持材料72の搬送部を対向電極40を形成するロッド400から構成することもできる。記載された装置において、ナノファイバー20が数多く製造されるため、紡糸装置の能力を制限する因子は、製造されるナノファイバー20からのポリマー溶媒の蒸発速度と、帯電電極30と対向電極40の間の空間に別の溶媒の蒸発を不可能にする飽和蒸気の状態を短期間に作り出す蒸発した溶媒の除去速度とである。したがって、装置には、特に帯電電極30と対向電極40の間の空間から溶媒蒸気の除去をもたらす、補助乾燥空気9の供給部90が備えられている。前記効果を高めるために、補助乾燥空気9を加熱することができる。
【0021】
本発明の次の実施例が図2に示されており、図1に示す実施形態と同様に、帯電電極30が枢支されていると共に、その外周の一部が容器1に存在するポリマー溶液2の中に位置し、その循環および容器1内の液位が入口11および出口12を通るポリマー溶液2の流れによって維持される。枢支された帯電電極30外周の自由部に対向して対向電極40が位置し、対向電極40は、アースに接続される(接地される)か、あるいは、図示されていないが周知の方法により、帯電電極30と反対の極のDC電源に接続された電線またはロッドの系から構成される。静電界が形成され、かつ、静電紡糸によりポリマー溶液2からナノファイバー20が製造される電極(30,40)間の空間の外部に、ナノファイバー蓄積装置7を形成する空気透過性のコンベヤー71が位置し、その背後に真空源6に接続された真空室5が配置される。
【0022】
電界の作用により帯電電極30から対向電極40に向かうナノファイバー20が、真空室5に吸引される空気流の作用によりそのコースから偏向されて、空気を透過するコンベヤー71上に吹き寄せられ、その表面に、コンベヤー71の運動により装置から運ばれ、引き続き、図示されていないが適当な方法により、処理され、調節され、または蓄えられて、層状に蓄積される。電極30,40間の空間に空気量を増加させる目的で、空気を透過するコンベヤー71の方向に向かって装置ケーシングに流入し、かつ、空気を透過するコンベヤー71の方向に向かってコースから対向電極40への偏向を更に促進する、補助乾燥空気9の入口91が装置に備えられている。
また、本実施形態では、対向電極の配置および形状を種々変形し得る可能性がある。また、空気を透過するコンベヤー71の前面に裏当て布または別の平坦な支持材料72を挿入変形し得る可能性もあり、ナノファイバー20の層をこの平坦な支持材料72上に蓄積することができる。
【0023】
図3には、外周の底部がポリマー溶液2に浸漬される枢支された帯電電極30から構成される装置の実施形態が示されている。枢支された帯電電極30外周の自由部に対向して、帯電電極30の回転軸に平行な一連のロッドで構成される対向電極40が位置し、押広げ要素42から構成された搬送部41を利用して、ナノファイバーから成る平坦な支持材料72が電極30,40間の空間を通って搬送される。
【0024】
帯電電極30は、例えば円筒形、四角柱または多角柱等の回転可能な本体で構成され、ここで、回転軸が同時に軸線対称体であれば好都合である。円筒体3には、その外周に突起31および/または凹部32が設けられている。帯電電極に適した円筒体表面の形状の例が図5a〜5eに示されているが、これらの形状は、全ての可能な実施形態を制限するものではなく、一例としてのみの役目を果たす。今まで説明してきた実施形態では、電極間に安定した電界が形成される。ナノファイバー20の層の形成または蓄積が必要であるならば、装置は間欠的な電界を形成する手段を備えることが可能である。
【実施例】
【0025】
以下、特殊な具体例について説明する。
具体例1
ポリマーの構造単位に関係する架橋剤として5モル%のクエン酸を含有し、鹸化度88%で重量分子量Mw85000の12%ポリビニルアルコール水溶液が、図1の装置におけるポリマー溶液2の容器1に充填されている。溶液の粘度は20℃で230mPa.sであり、電気伝導率が31mS/cm、表面張力が38mN/mある。ポリマー溶液2は、入口11を通って容器1内に流入し、出口12を通って流出し、一方、容器1内のポリマー溶液2の液位は出口12の位置を利用して維持される。帯電電極30は、図5cの実施形態において直径30nmの円筒体3から構成され、2.5rpmで時計回りに回転している。円筒体3は+40kVのDC電源に接続されている。装置は図1に準拠して製作され、その全体にナノファイバーから成る平坦な支持材料72を形成する裏当て布が案内される。空気を透過する対向電極40の背後の低圧室5が低圧のため、このようにして平坦な材料の搬送部を形成する平坦な材料が対向電極40に当接する。回転する円筒体3の表面は容器1からポリマー溶液2を引き出し、電極30,40間の電界のため、テイラー円錐および直径50〜200nmのナノファイバー20を形成する。ナノファイバー20が、対向電極40に吹き寄せられ、裏当て布の移動速度により厚さが調整されることの可能な層を形成する走行中の裏当て布上に蓄積される。電極間の空間に温度50℃の補助乾燥空気9が供給される。ナノファイバー層が、回転する円筒体3の長さ1m当たり1.5g/分の量で製造される。
【0026】
具体例2
ポリマーの構造単位に関係する架橋剤として5モル%のクエン酸を含有し、鹸化度98%で重量分子量Mw120000の10%ポリビニルアルコール水溶液が、図2の装置におけるポリマー溶液2の容器1に充填されている。溶液の粘度は20℃で260mPa.sであり、電気伝導率は少量のNaCl水溶液を添加して25mS/cmに調整され、表面張力は0.25%のノニオン性(nonionogene)表面活性剤を添加して36mN/mに調整された。ポリマー溶液2は、入口11を通って容器1内に流入し、出口12を通って流出し、出口の位置で容器1内のポリマー溶液2の液位を定める。帯電電極を示す円筒体3は、直径が50nmであり、図5aに図示された平滑な表面をなす。円筒体3は+40kVのDC電源に接続され、対向電極40の電線は−5kVのDC電源に接続されている。空気が電極30,40間の空間から真空室5に吸引されると共に、空気を透過するコンベヤー71の表面に吹き溜める補助乾燥空気9を用いて、帯電電極30と40対向電極の間の空間に直径50〜200nmのナノファイバー20が製造され、ナノファイバーは回転する円筒体の長さ1m当たり1.8g/分の量で繊維層に蓄積される。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の方法および装置は、直径が50〜200nmのナノファイバー層の製造に適用可能である。この層は、濾過用に、電池のセパレータとして、特殊な複合材の製造に、極めて低い時間定数を有するセンサの製作に、保護服の製造に、医薬に、およびその他の分野に使用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】帯電電極の外周の一部を取り囲む対向電極を有する装置の断面図。
【図2】電極間の空間の外部にナノファイバー蓄積手段を有する装置の実施例の断面図。
【図3】ナノファイバー蓄積手段が押広げ要素から成る搬送部の電極間に位置する平坦な支持材料で形成された装置の断面図。
【図4】長手方向のロッドとその間に配列されたナノファイバーの平坦な支持材料の搬送部とから成る固定電極を有する図1と同様の実施例。
【図5a】帯電電極を示す円筒体表面の実施例における正面図と側面図。
【図5b】帯電電極を示す円筒体表面の実施例における正面図と側面図。
【図5c】帯電電極を示す円筒体表面の実施例における正面図と側面図。
【図5d】帯電電極を示す円筒体表面の実施例における正面図と側面図。
【図5e】帯電電極を示す円筒体表面の実施例における正面図と側面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電電極と対向電極の間の電位差により形成される電界中で、静電紡糸法によりポリマー溶液からナノファイバーを製造する方法において、対向電極(40)に近い帯電電極(30)の外周の一部に紡糸表面(31)を作り出しながら、ポリマー溶液(2)を電界中に供給して、回転する帯電電極(30)の表面を利用して紡糸し、これによって高い紡糸能力を達成することを特徴とするナノファイバーの製造方法。
【請求項2】
導入する前記ポリマー溶液(2)から前記帯電電極(30)の紡糸表面(31)への静電界の作用により製造されるナノファイバー(8)が、電界によって前記対向電極(40)に吹き寄せられ、前記対向電極(40)の前でナノファイバー蓄積装置(7)上に蓄えられて、前記ナノファイバー蓄積装置(7)の上に層を形成することを特徴とする請求項1に記載されたナノファイバーの製造方法。
【請求項3】
空気流が前記帯電電極(30)と前記対向電極(40)の間の空間内のナノファイバー(8)に作用して、帯電電極(30)からのナノファイバー(8)の吹き寄せを促進することを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたナノファイバーの製造方法。
【請求項4】
前記ナノファイバー(8)が、空気流により前記対向電極(40)に向かって吹き寄せられ、前記対向電極(40) の前で、ナノファイバーを蓄積して層を形成するために前記ナノファイバー蓄積手段上にナノファイバーが蓄積されることによって特徴づけられる請求項3に記載されたナノファイバーの製造方法。
【請求項5】
前記空気流が、前記電極(30,40)の間の空間から前記対向電極(40)の背後の空間に、空気を吸引することによって生じることを特徴とする請求項4に記載されたナノファイバーの製造方法。
【請求項6】
前記ナノファイバーが、そのコースから前記対向電極(40)に前記空気流により偏向されて、空気を透過する前記ナノファイバー蓄積装置(7)に導かれ、ナノファイバーが製造される前記電極(30,40)の間の電界が届く範囲から外れた空間内の前記装置(7)表面に、層状に蓄積されることを特徴とする請求項3に記載されたナノファイバーの製造方法。
【請求項7】
前記空気流が、前記電極(30,40)の間の空間から前記帯電電極(30)に関して空気を透過する前記ナノファイバー蓄積装置(7)の背後の空間に、空気を吸引することによって生じることを特徴とする請求項6に記載されたナノファイバーの製造方法。
【請求項8】
前記ナノファイバーが吹き寄せられる空間に、補助乾燥空気(9)を供給することを特徴とする請求項4から請求項7までのいずれか一項に記載されたナノファイバーの製造方法。
【請求項9】
前記補助乾燥空気(9)の少なくとも一部が、前記装置(7)を通過することなく、前記帯電電極(30)に関して空気透過性の前記ナノファイバー蓄積装置(7)前面の空間から取り出されることを特徴とする請求項8に記載されたナノファイバーの製造方法。
【請求項10】
前記ナノファイバー(8)が吹き寄せられる空間に流入する前に、少なくとも補助乾燥空気(9)を加熱することを特徴とする請求項3から請求項9までのいずれか一項に記載されたナノファイバーの製造方法。
【請求項11】
前記ポリマー溶液(2)が水溶液から成ることを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載されたナノファイバーの製造方法。
【請求項12】
電界を形成する電位差のある前記帯電電極および前記対向電極を含む、請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載された方法を実施する方法において、
前記帯電電極(30)外周の自由部に対向して前記対向電極(40)を位置させた状態で、前記帯電電極(30)が枢支されると共に、その外周の一部が前記ポリマー溶液(2)に浸漬されていることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記対向電極(40)が、その全長に沿って前記帯電電極(30)外周の自由部を取り囲んでいることを特徴とする請求項12に記載された方法。
【請求項14】
前記両電極(30,40)の間に、ナノファイバー蓄積装置(7)が位置することを特徴とする請求項12または請求項13に記載された装置。
【請求項15】
前記ナノファイバー蓄積装置(7)が空気透過性であり、一方、前記帯電電極(30)に関して前記装置(7)の背後の空間が、前記電極(30,40)の間の空間から前記装置(7)に向かう空気流を作り出すのに役立つ、真空源(6)に接続されていることを特徴とする請求項14に記載された装置。
【請求項16】
前記真空源(6)が、前記帯電電極(30)に関して空気を透過する前記対向電極(40)の背後の空間に接続されていることを特徴とする請求項15に記載された装置。
【請求項17】
前記電極(30,40)の間の空間の外部に空気を透過するナノファイバー蓄積装置(7)が位置し、一方、前記帯電電極(30)に関して前記装置(7)の背後の空間が、前記装置(7)に向かう空気流を作り出すのに役立つ、真空源(6)に接続されていることを特徴とする請求項12に記載された装置。
【請求項18】
ナノファイバー蓄積装置(7)が、空気を透過するコンベヤー(71)から構成されることを特徴とする請求項13から請求項17までのいずれか一項に記載された装置。
【請求項19】
ナノファイバー蓄積装置(7)が、ナノファイバーから成る平坦な支持材料(72)で構成されることを特徴とする請求項13から請求項17までのいずれか一項に記載された装置。
【請求項20】
前記平坦な支持材料(72)が搬送部(41)上に位置することを特徴とする請求項19に記載された装置。
【請求項21】
前記搬送部(41)が前記対向電極(40)から構成されることを特徴とする請求項20に記載された装置。
【請求項22】
前記搬送部(41)が、ナノファイバーから成る前記平坦な支持材料(72)の押し広げ要素(42)で構成されることを特徴とする請求項20に記載された装置。
【請求項23】
前記電極(30,40)の間の空間に、補助乾燥空気(9)の入口(90)が通じることを特徴とする請求項15から請求項22までのいずれか一項に記載された装置。
【請求項24】
前記補助乾燥空気(9)の入口(90)内に、空気加熱装置(91)が位置することを特徴とする請求項23に記載された装置。
【請求項25】
空気の少なくとも一部が、前記装置(7)を通過することなく、前記帯電電極(30)に関して前記ナノファイバー蓄積装置(7)前面の空間から取り出されることを特徴とする請求項23または請求項24に記載された装置。
【請求項26】
前記帯電電極(30)が、軸線が同時に回転軸線である軸線対称体から構成されることを特徴とする請求項12から請求項25までのいずれか一項に記載された装置。
【請求項27】
前記帯電電極(30)がロール(3)から構成されることを特徴とする請求項26に記載された装置。
【請求項28】
前記ロール(3)が、その外周に突起(31)および/または凹部(32)を備えていることを特徴とする請求項27に記載された装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図5e】
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【公表番号】特表2007−505224(P2007−505224A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525030(P2006−525030)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【国際出願番号】PCT/CZ2004/000056
【国際公開番号】WO2005/024101
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(506078507)テクニカ ウニヴェルズィタ ブイ リベルシー (1)
【Fターム(参考)】