説明

静電荷像現像トナー用結着樹脂、静電荷像現像トナー用結着樹脂分散液、静電荷像現像トナー及びその製造方法、静電荷像現像剤、並びに、画像形成方法

【課題】熱特性が良好であり、分子量が適切に制御された静電荷像現像トナー用結着樹脂を提供する。
【解決手段】ポリカルボン酸とポリオール式(1)及び式(2)との重縮合反応により得られるトナー用結着樹脂。 HOX1h−Ph−Y−Ph−X1'kOH(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法又は静電記録法等により形成される静電潜像を現像剤により現像する際に用いられる静電荷像現像トナー用結着樹脂及び該結着樹脂を混練粉砕して製造される静電荷像現像トナーに関する。さらに、該結着樹脂より製造される静電荷像現像トナー用結着樹脂分散液及び、これを用いて製造される静電荷像現像トナーに関する。また、本発明は、前記静電荷像現像トナーを用いた静電荷像現像剤、及び、画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル化技術の急速な普及により、一般家庭、オフィス、パブリッシング領域のユーザーにおけるプリント、コピーなどのアウトプットにおける高画質化が要求されているが、その一方で、持続可能な社会の実現に向け、企業活動及び、その活動の成果である製品に対する低エネルギー、省エネルギー化要求が高まっている。そこで、電子写真法又は静電記録法等による画像形成法においても多くのエネルギーを消費する定着工程の省電力化や、その材料を使用して製品を製造する工程の低環境負荷活動を実施することが必要となっている。前者に対応する対策としては、トナーの定着温度をより低温化させる等の対策を挙げることができる。トナー定着温度を低温化させることにより、省電力化に加え、電源入力時の定着部材表面の定着可能温度までの待ち時間、ウォームアップタイムの短時間化、定着部材の長寿命化が可能である。
【0003】
トナーの結着樹脂としては、従来よりビニル系重合体が広く使用されてきたが、高分子量のビニル系重合体はその軟化点が高いため、優れた光沢性を備えた定着像を得るために、ヒートローラの温度を高く設定する必要があり、省エネルギーに逆行する。
一方、ポリエステル樹脂は、ビニル系重合体にくらべ可撓性を有し、機械強度を同一にした際の分子量を低く設定することができる。特にポリエステル樹脂が鎖中に剛直な芳香環を有する場合に、この傾向が顕著である。さらに分子鎖の絡み合い性、限界分子量等の点で低温定着用樹脂としてビニル系結着樹脂とに比べ設計し易いという利点を有するため、ポリエステルが省エネルギートナーの結着樹脂として多く使用されている。
【0004】
通常ポリエステルの重縮合法は、200℃を越す高温下で大動力による撹拌下、かつ高減圧下で10時間以上の時間に及ぶ反応が必要であり、大量のエネルギーを必要とする。またそのために反応設備の耐久性を得るために膨大な設備投資を必要とする場合が多い。
しかし、近年ポリエステル樹脂を低温で製造する方法に関する研究が報告されている。例えば、特許文献1には、酵素を触媒としたポリエステルの製造方法が開示され、特許文献2には、スカンジウムトリフラート触媒による160〜200℃でのポリエステル合成が報告されている。
しかし、このような低温での反応は、ポリエステルの重縮合が十分に進行せず分子量が増加しにくいという点、使用できる単量体が一部に制限されること、低分子量に起因する熱特性の制御が困難であるなどの問題があった。
【0005】
ポリエステル樹脂としてフルオレン骨格を有するビスフェノール構造のモノマーを使用した例が報告されている。
例えば特許文献3には、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とジヒドロキシ化合物からなるポリエステル重合体であって、ジカルボン酸が脂環族ジカルボン酸を含み、ジヒドロキシ化合物がフルオレン系化合物を含むことを特徴とするポリエステル重合体が開示されている。しかし、この発明はジヒドロキシ化合物の量やジカルボン酸量、さらに、その他に配合するモノマーをトナー用樹脂として適切に選択していない。特に、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−1−フェニルエタン等の主鎖及び側鎖に芳香環を有するジヒドロキシ化合物、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルフォン等の主鎖に芳香環と硫黄を有する化合物等に関しては、全ジオール成分の10モル%を限度として併用してもよいとしている。さらに、金属触媒を使用し、高温で重縮合反応を行う製法である。
【0006】
特許文献4においては、脂環族ジカルボン酸又はその酸無水物と所定のジヒドロキシ化合物(例えば、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン)とをエステル化反応させる発明が開示されているが、これは上記のモノマーの1:1での反応であり、その他の配合物については、言及されていない。
【0007】
特許文献5、6には、ジカルボン酸が脂環族ジカルボン酸を含み、ジヒドロキシ化合物がフルオレン骨格を含む化合物を含むポリエステル重合体から成形されてなることを特徴とするポリエステル重合体光学素子や重合体が開示されているが、この重合体もトナー用樹脂としての熱特性を制御できていない。
【0008】
【特許文献1】特開平11−313692号公報
【特許文献2】特開2003−306535号公報
【特許文献3】特開平9−302077号公報
【特許文献4】特開平11−60706号公報
【特許文献5】特開2000−119379号公報
【特許文献6】特開2004−315676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、静電荷像現像トナー用結着樹脂において、熱特性が良好であり、分子量が適切に制御された静電荷像現像トナー用結着樹脂を提供することを目的とする。さらに、本発明は前記静電荷像現像トナー用結着樹脂を使用し、低温定着性と画像強度に優れ、帯電性が安定した静電荷像現像トナー及びその製造方法並びに静電荷像現像剤を提供することを目的とする。また、本発明は前記静電荷像現像トナー又は前記静電荷像現像剤を用いた画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の前記課題は下記の<1>、<3>〜<8>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>と共に以下に記載する。
<1> ポリカルボン酸とポリオールの重縮合反応により得られる静電荷像現像トナー用結着樹脂であって、該ポリオールの10mol%以上95mol%以下が式(1)で表される化合物よりなり、かつ該ポリオールの5mol%以上90mol%以下が式(2)で表される化合物よりなることを特徴とする静電荷像現像トナー用結着樹脂、
HOX1h−Ph−Y−Ph−X1'kOH (1)
(X1、X1':アルキレンオキシド基、Y:C(CH32又はSO2、1≦h≦3、1≦k≦3)
【0011】
【化1】

(X2、X2':アルキレン基、R1〜R4:水素原子又は1価の置換基、R5、R6:1価の置換基、1≦m≦3、1≦n≦3、0≦p≦4、0≦q≦4)
【0012】
<2> 該ポリカルボン酸の50mol%以上100mol%以下が式(3)及び/又は式(4)で表される化合物よりなる、<1>に記載の静電荷像現像トナー用結着樹脂、
1OOCA1m1n1'lCOOQ1' (3)
(A1、A1'メチレン基、B1:芳香族炭化水素基、Q1、Q1':水素原子又は1価の炭化水素基、1≦m+l≦12、1≦n≦3)
2OOCA2p2q2'rCOOQ2' (4)
(A2、A2':メチレン基、B2:脂環式炭化水素基、Q2、Q2':水素原子又は1価の炭化水素基、0≦p≦6、0≦r≦6、1≦q≦3)
<3> <1>又は<2>に記載の静電荷像現像トナー用結着樹脂を分散した静電荷像現像トナー用結着樹脂分散液、
<4> 少なくとも結着樹脂分散液を含む分散液中で該結着樹脂を凝集して凝集粒子を得る工程、及び、該凝集粒子を加熱して融合させる工程を含む静電荷像現像トナーの製造方法であって、前記結着樹脂分散液が<3>に記載の静電荷像現像トナー用結着樹脂分散液であることを特徴とする静電荷像現像トナーの製造方法、
<5> <4>に記載の製造方法により製造された静電荷像現像トナー、
<6> <1>に記載の静電荷像現像トナー用結着樹脂を混練粉砕して作製した静電荷像現像トナー、
<7> <5>又は<6>に記載の静電荷像現像トナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤、
<8> 潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、前記潜像保持体表面に形成された静電潜像をトナー又は静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、前記潜像保持体表面に形成されたトナー像を被記録体表面に転写する工程と、前記被被記録体表面に転写されたトナー像を熱定着する定着工程とを含む画像形成方法であって、前記トナーとして<5>又は<6>に記載の静電荷像現像トナー、又は、前記現像剤として<7>に記載の静電荷像現像剤を用いることを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、静電荷像現像トナー用結着樹脂において、熱特性が良好であり、分子量が適切に制御された静電荷像現像トナー用結着樹脂を提供することができる。さらに、本発明によれば前記静電荷像現像トナー用結着樹脂を使用し、低温定着性と画像強度に優れ、帯電性が安定した静電荷像現像トナー及びその製造方法並びに静電荷像現像剤を提供することができる。また、本発明は前記静電荷像現像トナー又は前記静電荷像現像剤を用いた画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(静電荷像現像トナー用結着樹脂)
本発明の静電荷像現像トナー用結着樹脂はポリカルボン酸とポリオールの重縮合反応により得られる静電荷像現像トナー用結着樹脂であって、該ポリオールの10mol%以上95mol%以下が式(1)で表される化合物よりなり、かつ該ポリオールの5mol%以上90mol%以下が式(2)で表される化合物よりなることを特徴とする。
HOX1h−Ph−Y−Ph−X1'kOH (1)
(X1、X1':アルキレンオキシド基、Y:C(CH32又はSO2、1≦h≦3、1≦k≦3)
【0015】
【化2】

(X2、X2':アルキレン基、R1〜R4:水素原子又は1価の置換基、R5、R6:1価の置換基、1≦m≦3、1≦n≦3、0≦p≦4、0≦q≦4)
なお、本発明において、「静電荷像現像トナー」を単に「トナー」ともいうこととし、「静電荷像現像トナー用結着樹脂」を単に「結着樹脂」ともいうこととする。
【0016】
本発明のような重縮合性単量体の構成を用いると、これを重縮合して得られる非結晶性ポリエステル樹脂は、トナー用結着樹脂として望ましい物性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
ここで、本発明において、「非結晶性ポリエステル樹脂」における「非結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化を示したり、明確な吸熱ピークが認められないことを示し、具体的には、昇温速度10℃/minで測定した際の吸熱ピークの半値幅が15℃を超えることを意味する。一方、吸熱ピークの半値幅が15℃以内である樹脂は、結晶性であることを意味する。
【0018】
本発明に使用する式(2)で表される化合物は、剛直なフルオレン環と二つのベンゼン環を有することにより、これを重縮合して得られるポリエステル重合体の耐熱性を向上させる。さらにベンゼン環とヒドロキシル基の間に存在するアルキレンオキシド基の影響により、式(2)で表される化合物は融点が比較的低く、従来よりも低温において高い反応性を有する。つまり、その化学構造により低温反応性と良好な熱特性を両立することができることを見出したものである。
【0019】
このような反応性、融点などの物性により、低温重縮合法においても迅速に均質な反応が実現するために、反応速度が上昇し、残存低分子量成分も低減できるものと考えられる。
また、特に他のビニル系非結晶性樹脂分散液や結晶性ポリエステル樹脂分散液と混合して凝集合一法により静電荷像現像トナーを作製する場合に、本発明の結着樹脂は嵩高い芳香環構造を有し、さらに他の低温重縮合反応性を有する構成のポリエステルよりも溶解性パラメータが低いという点で、混合する樹脂との相溶性が向上し、凝集時の小粒径成分などを減少させることができると考えられる。
【0020】
また、これまで、フルオレン骨格を有するビスフェノール構造のモノマーをトナー用ポリエステル結着樹脂として使用した例は見当たらない。これまでは、屈折率等の光学特性を確保する光学材料、又は熱特性を制御する目的で成型材料に使用されるのみであり、トナー用結着樹脂として物性を制御したものではなかった。
【0021】
通常トナーにおいて熱特性を制御するために使用されるテレフタル酸やイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸は、フェノール性ヒドロキシル基を有するために、電子の非局在化による安定化が起こり、低温での重縮合反応性が比較的低い。これに対し、本発明の構成を用いると、トナー用結着樹脂に適切な特性を有するポリエステルを低温で製造することができる。
【0022】
さらに、前記結着樹脂を用いて製造されるトナーは、製造される結着樹脂の熱特性制御により、低温定着性の確保と画像強度を向上させることができ、さらに重合体中に低分子量成分が少ないため凝集性や帯電性の安定した均一なトナーを得られる。また本結着樹脂を特に疎水性度の高い他の結着樹脂やワックスと混合した場合に、その相溶性が向上し、トナーにおける着色剤やワックスの偏在、表面への露出、凝集を減少させ、画質を向上させることができる。
【0023】
<式(1)で表される化合物>
本発明の静電荷像現像トナー用結着樹脂は、ポリカルボン酸とポリオールの重縮合反応により得られるトナー用結着樹脂であり、該ポリオールの10mol%以上95mol%以下が式(1)で表される化合物(式(1)で表されるジオール)よりなる。
HOX1h−Ph−Y−Ph−X1'kOH (1)
(X1、X1':アルキレンオキシド基、Y:C(CH32又はSO2、1≦h≦3、1≦k≦3)
上記式(1)で表されるジオールは、ビスフェノールS誘導体(Y=SO2)又はビスフェノールA誘導体(Y=C(CH32)である。
式(1)で表されるジオールを1種単独で含むこともできるが、式(1)で表されるジオールを2種以上含むこともできる。この場合、式(1)で表されるジオールの総量がポリオール全体の10mol%以上95mol%以下である。
【0024】
本発明において、ポリオール成分としてビスフェノールS誘導体及び/又はビスフェノールA誘導体を10mol%以上95mol%以下使用することによって、機械的強度に優れた静電荷像現像トナーを得ることができる。
【0025】
本発明において、式(1)で表されるジオールは少なくとも一つのアルキレンオキシド基を有する。アルキレンオキシド基はエチレンオキシド基、プロピレンオキシド基、ブチレンオキシド等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。好適には、エチレンオキシド、プロピレンオキシドであり、特に好適にはエチレンオキシドが例示できる。
アルキレンオキシド基数h及びkは1分子中に1個以上3個以下である。アルキレンオキシドが1個未満、即ちアルキレンオキシド基が付加されていない場合、水酸基とフェニル基との共鳴安定化により電子が非局在化し、式(1)で表されるジオールによるポリカルボン酸への求核攻撃性が弱められ、分子量の伸長や重合度の進展が抑制される。一方、アルキレンオキシド基が3個を超えて付加されていると、式(1)で表されるジオール中の直鎖部分が長くなりすぎ、製造されるポリエステルが結晶性の性質を有する他、式(1)で表されるジオール中の反応性官能基数が減り、反応確率が減少する。
また、アルキレンオキシド基数hとkが同数であることが、均等な反応を促進する上で好ましい。また、アルキレンオキシド基数h、kが各2、又は各1である場合が好ましい。また、2個以上のアルキレンオキシド基を有する場合は、2種以上のアルキレンオキシド基を1分子中に有することもできる。
【0026】
本発明に使用する式(1)で表されるジオールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールSのアルキレンオキシド付加物(h及びkが1〜3)が挙げられる。特にアルキレンオキシド付加物としては、1モルエチレンオキシド付加物(h、k各1)、1モルプロピレンオキシド付加物(h、k各1)が好ましい。
ビスフェノールAアルキレンオキシド付加物は、その構造から低温での重縮合反応性が高い。また融点が比較的低く、低温での重縮合に適しているため好ましい。本モノマーを含有することにより式(2)で表される化合物を含む他の成分を溶解する効果に優れ、反応が迅速に進行すると考えられる。またビスフェノールSアルキレンオキシド付加物も低温での反応性を有するため、本発明で好ましく使用することができる。
式(1)で表されるジオールの使用量は10〜95mol%であり、好ましくは10molを超え、95mol%以下であり、より好ましくは20〜95mol%である。10mol%以上含む場合に低温での重縮合反応を円滑に進める効果があり、トナーに適する分子量を得ることができる。また95mol%以下である場合に、熱特性を改善することができ、耐オフセット性や常温での強度、粉体流動性を制御することができる。
【0027】
<式(2)で表される化合物>
本発明の静電荷像現像トナー用結着樹脂は、ポリカルボン酸とポリオールの重縮合反応により得られるトナー用結着樹脂であり、該ポリオールの5mol%以上90mol%以下が式(2)で表される化合物(式(2)で表されるジオール)よりなる。
【0028】
【化3】

(X2、X2':アルキレン基、R1〜R4:水素原子又は1価の置換基、R5、R6:1価の置換基、1≦m≦3、1≦n≦3、0≦p≦4、0≦q≦4)
【0029】
式(2)で表される化合物は、フルオレン構造及びアルキレンオキシド鎖を2つ有する化合物である。
式(2)で表される化合物を1種単独で含むこともできるが、式(2)で表される化合物を2種以上含むこともできる。この場合、式(2)で表される化合物の総量がポリオール全体の5mol%以上90mol%以下である。
【0030】
式(2)中、X2、X2'はアルキレン基を表す。アルキレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキレン基であることが好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基であることがより好ましく、エチレン基、プロピレン基であることがさらに好ましく、エチレン基であることが特に好ましい。また、X2、X2'はそれぞれ独立に選択することができ、同じであっても異なっていても良い。
式(2)中、m及びnは1以上3以下である。m及びnはアルキレンオキシド基(OX2)、(OX2')の付加モル数を表す。m及びnは1又は2であることが好ましく、1であることがさらに好ましい。また、m及びnはそれぞれ独立に選択することができるが、m及びnは同じであることが好ましく、m及びnが1であることがさらに好ましい。
なお、ここでいうアルキレンオキシド基の付加モル数(m及びn)は最大値を意味し、分布を有していてもよい。
すなわち、式(2)で表される化合物はエチレンオキシド鎖を2つ有することが好ましい。
【0031】
式(2)中、−O−(X2O)m−H、−O−(X2'O)n−Hの置換位置は特に限定されないが、4位に置換していることが好ましい。
【0032】
式(2)中、R1〜R4はそれぞれ独立に水素原子又は1価の置換基である。1価の置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、−NO2基、又は−OR7基が例示でき、R7はアルキル基を表す。さらに、上記1価の置換基はさらにアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が例示できる。炭素数は1〜7であることが好ましく、1〜6であることがより好ましく、1〜4であることがさらに好ましい。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜12のアリール基が例示できる。
アラルキル基としては、ベンジル基が例示でき、炭素数6〜12のアリール基と炭素数1〜4のアルキル基からなるアラルキル基が好ましい。
これらの中でもR1〜R4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、アラルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることがさらに好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0033】
1〜R4の置換位置は特に制限されないが、2位、3位、4位、2位及び6位、並びに、3位及び5位であることが好ましい。
【0034】
式(2)中、R5、R6はそれぞれ独立に1価の置換基である。1価の置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、−NO2基、又は−OR7基が例示でき、R7はアルキル基を表す。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が例示できる。炭素数は1〜7であることが好ましく、1〜6であることがより好ましく、1〜4であることがさらに好ましい。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜12のアリール基が例示できる。
アラルキル基としては、ベンジル基が例示でき、炭素数6〜12のアリール基と炭素数1〜4のアルキル基からなるアラルキル基が好ましい。
これらの中でも式(2)で表される化合物がR5、R6を有する場合、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基又はアラルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
p個のR5及びq個のR6はそれぞれ独立に選択することができる。p及びqは0以上4以下の整数である。p及びqは0〜3であることが好ましく、0〜2であることがより好ましく、p及びqは0すなわち置換基を有していないことが特に好ましい。
【0035】
式(2)で表される化合物としては、例えば9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(本発明において、ビスフェノキシエタノールフルオレンともいう。)、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−エチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジエチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−プロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジイソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−n−ブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジ−n−ブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジイソブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−(1−メチルプロピル)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ビス(1−メチルプロピル)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジフェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−ベンジルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジベンジルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(4−ヒドロキシブトキシ)フェニル]フルオレン等が挙げられ、これらは単独でも2種類以上を組み合わせて使用しても良い。これらの中でも9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンが最も好ましい。
【0036】
9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンは、例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンにエチレンオキシド(以下、EOと略する)を付加して得られる。この際、フェノールの両水酸基にエチレンオキシドが1分子ずつ付加した2EO付加体(9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン)の他に、さらに数分子過剰に付加した、3EO付加体、4EO付加体等の不純物が含まれる事がある。すなわち、付加しているエチレンオキシドは分布を有する物であり、2EO付加体とは、その分布の最大値が2EO付加体であればよい。ポリエステル重合体の耐熱性を向上させるためには、2EO付加体の純度が85%以上であることが好ましく、さらに好ましくは95%以上である。
【0037】
式(2)で表される化合物の使用量は、重縮合性樹脂の全ポリオール中5〜90mol%、好ましくは5〜80mol%である。5mol%以上含む場合に熱特性を改善する効果を発揮し、低分子量成分を削減することができる。また90mol%以下である場合には、反応中の粘度を適性に保つことができ、特に低温でも重縮合反応を十分に進行させることができる。
【0038】
本発明において、式(1)及び式(2)で表されるジオールの他に、他のポリオールを併用することもできる。
例えば、併用される脂肪族ジオール及び脂環族ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,14−エイコサンデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが例示できる。
また併用される芳香族ジオールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールP、ビスフェノールS、ビスフェノールZ、ビフェノール、ナフタレンジオール、アダマンタンジオール、アダマンタンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等も挙げることができる。
また二価以上の多価アルコールを併用することもできる。例えば、グリコール、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミン等を挙げることができる。
上記ビスフェノール類は少なくとも一つのアルキレンオキシド基を有することが好ましい。アルキレンオキシド基としては、エチレンオキシド基、プロピレンオキシド基、ブチレンオキシド等を挙げることができるが、これらに限定されない。好適には、エチレンオキシド、プロピレンオキシドであり、その付加モル数は1〜3が好ましい。この範囲である場合、作製するポリエステルの粘弾性やガラス転移温度をトナーとして使用するために適切に制御することができる。
【0039】
併用されるポリオールの添加量は、全ポリオール成分の85mol%より少なく、75mol%以下であることが好ましく、50mol%以下であることがより好ましい。
併用するポリオールの添加量が上記範囲内であると熱特性及び分子量制御に優れた結着樹脂を得ることができるので好ましい。
【0040】
本発明に使用されるポリカルボン酸の50mol%以上、100mol%以下は、式(3)及び/又は式(4)で表される化合物(ジカルボン酸)よりなることが好ましい。なお、本発明において、「カルボン酸」とはそのエステル化物及び酸無水物をも含む意である。
1OOCA1m1n1'lCOOQ1' (3)
(A1、A1'メチレン基、B1:芳香族炭化水素基、Q1、Q1':水素原子又は1価の炭化水素基、1≦m+l≦12、1≦n≦3)
2OOCA2p2q2'rCOOQ2' (4)
(A2、A2':メチレン基、B2:脂環式炭化水素基、Q2、Q2':水素原子又は1価の炭化水素基、0≦p≦6、0≦r≦6、1≦q≦3)
ここで、1価の炭化水素基とは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、炭化水素基、又は複素環基を表し、これらの基は任意の置換基を有していても良い。R1、R1'、R2及びR2'としては、水素原子又は低級アルキル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基がより好ましく、水素原子が最も好ましい。
また、式(3)中の芳香族炭化水素基及び式(4)中の脂環式炭化水素基は、置換されていても良い。
【0041】
<式(3)で表されるジカルボン酸>
式(3)で表されるジカルボン酸は、少なくとも一つの芳香族炭化水素基B1を有するが、その構造は特に限定されない。芳香族炭化水素基B1としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アセナフチレン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、フルオランセン、ピレン、ベンゾフルオレン、ベンゾフェナントレン、クリセン、トリフェニレン、ベンゾピレン、ペリレン、アントラスレン、ベンゾナフタセン、ベンゾクリセン、ペンタセン、ペンタフェン、コロネン骨格等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの構造にはさらに置換基が付加していてもよい。
【0042】
式(3)で表されるジカルボン酸中に含まれる芳香族炭化水素基B1の数は、1個以上、3個以下である。1個未満であると、製造されるポリエステルの非結晶性が失われ、3個を超えて芳香族炭化水素基を有する場合は、そのようなジカルボン酸の合成が困難であるために費用、製造効率が低下するばかりでなく、式(3)で表されるジカルボン酸の融点や粘度の上昇や、ジカルボン酸の大きさ、嵩高さに起因する反応性の低下が起こる。
【0043】
式(3)で表されるジカルボン酸が、複数の芳香族炭化水素基を含む場合、その芳香族炭化水素基同士は直接結合していてもよく、間に他の飽和脂肪族炭化水素基等の骨格を有する構造をとることもできる。前者の例としてはビフェニル骨格等、後者の例としてはビスフェノールA骨格、ベンゾフェノン、ジフェニルエテン骨格などを挙げることができるがこれに限定されるものではない。
【0044】
芳香族炭化水素基B1として好適な基は、その主骨格の炭素数がC6〜C18の構造である。この主骨格の炭素数には、主骨格に結合する官能基に含まれる炭素数を含まない。例えば、ベンゼン、ナフタレン、アセナフチレン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、フルオランセン、ピレン、ベンゾフルオレン、ベンゾフェナントレン、クリセン、トリフェニレン、ビスフェノールA骨格等を挙げることができる。これらの中で特に好適な骨格としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレンが例示できる。最も好適には、ベンゼン、ナフタレン構造が用いられる。
主骨格の炭素数が6以上であると、モノマーの製造が容易であるので好ましい。また、主骨格の炭素数が18以下であると、モノマー分子の大きさが適当で、分子運動の制限による反応性の低下が生じないので好ましい。さらに、モノマー分子中における反応性官能基の割合が適切であり、反応性が低下することがないので好ましい。
【0045】
式(3)で表されるジカルボン酸は、少なくとも1個以上のメチレン基A1又はA1'を含む。式(3)中、A1及びA1'はそれぞれ独立に選択することができるがA1及びA1'は同じであることが好ましい。メチレン基は、直鎖、分岐のどちらでもよく、例えば、メチレン鎖、分岐メチレン鎖、置換メチレン鎖等を用いることができる。分岐メチレン鎖の場合、分岐部の構造は問わず、不飽和結合やさらなる分岐、環状構造等を有していてもよい。
メチレン基A1及びA1'の基数は、分子内の合計m+lとして、少なくとも1個以上12個以下である。好適にはm+lが2個以上、6個以下であり、mとlは同数であることがさらに好ましい。m+lが0個である場合、つまり式(3)で表されるジカルボン酸中にメチレン基を有さない場合、芳香族炭化水素と両末端のカルボキシル基が直接結合する構造となる。この場合、触媒と式(3)で表されるジカルボン酸とが形成する反応中間体が共鳴安定化し、反応性が低下することとなる。また、m+lが12個より大きい場合、式(3)で表されるジカルボン酸に対し直鎖部分が大きくなりすぎるため、製造されるポリマーが結晶性の特性を有したり、ガラス転移温度Tgが低下することがある。
【0046】
メチレン基A1、A1'又はカルボキシル基と、芳香族炭化水素基B1の結合箇所は特に限定されず、o−位、m−位、p−位のいずれでもよい。
式(3)で表されるジカルボン酸としては、1,4−フェニレンジ酢酸、1,4−フェニレンジプロピオン酸、1,3−フェニレンジ酢酸、1,3−フェニレンジプロピオン酸,1,2−フェニレンジ酢酸、1,2−フェニレンジプロピオン酸等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。好適には、1,4−フェニレンジプロピオン酸、1,3−フェニレンジプロピオン酸、1,4−フェニレンジ酢酸、1,3−フェニレンジ酢酸を挙げることができる。
【0047】
式(3)で表されるジカルボン酸には、その構造のいずれかに各種官能基が付加していてもよい。また、重縮合反応性官能基であるカルボン酸基は、酸無水物、酸エステル化物、酸塩化物であってもよい。しかし、酸エステル化物とプロトンとの中間体が安定化しやすく、反応性を抑制する傾向があるため、好適には、カルボン酸、又はカルボン酸無水物、カルボン酸塩化物が使用される。
【0048】
<式(4)で表されるジカルボン酸>
式(4)で表されるジカルボン酸は脂環式炭化水素基B2を含む。脂環式炭化水素構造には特に限定はなく、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ノルボルネン、アダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタン、アイセアン、ツイスタン骨格等を挙げることができるが、これに限定されない。またこれらの物質には置換基が付加していてもよい。その構造の安定性、分子の大きさや嵩高さなどを考慮すると、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルネン、アダマンタンなどが好ましい。
このモノマー中に含まれる脂環式炭化水素基の数は、少なくとも1個以上、3個以下である。1個未満であると、製造されるポリエステルの非結晶性が失われ、3個を超えて脂環式炭化水素基を有する場合は、式(4)で表されるジカルボン酸の融点の上昇や分子の大きさや嵩高さにより、反応性が低下する。
複数の脂環式炭化水素基を含む場合は、芳香族炭化水素基同士が直接結合する構造、間に他の飽和脂肪族炭化水素等の骨格を有する構造のどちらもとることができる。前者の例としては、ジシクロヘキシル骨格等であり、後者の例としては、水素添加ビスフェノールA骨格などを挙げることができるがこれに限定されない。
【0049】
脂環式炭化水素基で好適なものは、炭素数C3〜C12の物質である。この主骨格の炭素数には、主骨格に結合する官能基に含まれる炭素数を含まない。例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルネン、アダマンタン骨格等を有する物質を挙げることができる。これらの中で特に好適な骨格としては、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルネン、アダマンタンが例示できる。
【0050】
式(4)で表されるジカルボン酸は、メチレン基A2及び/又はA2'をその構造の中に有してもよい。メチレン基は、直鎖、分岐のどちらでもよく、例えば、メチレン鎖、分岐メチレン鎖、置換メチレン鎖等を用いることができる。分岐メチレン鎖の場合、分岐部の構造は問わず、不飽和結合やさらなる分岐、環状構造等を有していてもよい。
メチレン基A2及びA2'の基数は、p、rがそれぞれ6以下である。p,rのいずれか、又は両方が6より大きい場合、式(4)で表されるジカルボン酸に対し直鎖部分が大きくなりすぎるため、製造されるポリマーが結晶性の特性を有したり、ガラス転移温度Tgが低下することがある。
【0051】
メチレン基A2、A2'又はカルボキシル基と、脂環式炭化水素基B2の結合箇所は特に限定されず、o−位、m−位、p−位のいずれでもよい。
式(4)で表されるジカルボン酸としては、1,1−シクロプロパンジカルボン酸、1,1−シクロブタンジカルボン酸、1,2−シクロブタンジカルボン酸、1,1−シクロペンテンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸、ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。この中で好ましく用いられるのは、シクロブタン、シクロヘキサン、シクロヘキサン骨格を有する物質であり、特に好ましくは、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。
また、式(4)で表されるジカルボン酸は、その構造のいずれかに各種官能基が付加していてもよい。また、重縮合反応性官能基であるカルボン酸基は、酸無水物、酸エステル化物、酸塩化物であってもよい。しかし、酸エステル化物とプロトンとの中間体が安定化しやすく、反応性を抑制する傾向があるため、好適には、カルボン酸、又はカルボン酸無水物、カルボン酸塩化物が使用される。
【0052】
本発明において、ポリカルボン酸成分の全体に対して、上記の式(3)及び/又は式(4)で表される化合物(ジカルボン酸)を50mol%以上、100mol%以下含むことが好ましい。上記式(3)で表される化合物と式(4)で表される化合物は単独で使用することもでき、組み合わせて使用することもできる。
式(3)及び/又は式(4)で表される化合物の割合が50mol%以上であると、低温重縮合時においても反応性を十分に発揮することができ、分子量が伸長し、重合度の高いポリエステルとなるので好ましい。また、残留重縮合成分が少なくなるので好ましい。これにより、硬化物の常温でのべたつきなどがなく、硬化物の良好な性能が得られ、良好な粘弾性やガラス転移温度が得られるので好ましい。上記式(3)及び/又は式(4)で表される化合物を60〜100mol%含むことが好ましく、上記式(3)及び/又は式(4)で表される化合物を80〜100mol%含むことがより好ましい。
【0053】
本発明において、式(3)及び/又は式(4)で表されるポリカルボン酸と共に、他のポリカルボン酸を併用することもできる。
併用するポリカルボン酸としては、1分子中にカルボキシル基を2個以上含有する多価カルボン酸を用いることができる。このうち、2価のカルボン酸は1分子中にカルボキシル基を2個含有する化合物であり、例えば、シュウ酸、コハク酸、イタコン酸、グルタコン酸、グルタル酸、マレイン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマール酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタール酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロルフタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸、ビフェニル−p,p’−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸等を挙げることができる。また、2価のカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等を挙げることができる。
また、これらの酸無水物あるいは酸塩化物、酸エステル化物を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
併用するポリカルボン酸は、ポリカルボン酸総量の50mol%未満であることが好ましく、40mol%未満であることがより好ましく、20mol%未満であることがさらに好ましい。
【0054】
本発明において、ポリカルボン酸成分とポリオール成分としては、ジカルボン酸とジオールを使用することが好ましく、ジカルボン酸とジオールとの割合(モル比)は、前者(ジカルボン酸)/後者(ジオール)=0.75/1〜1.25/1であることが好ましく、より好ましくは0.9/1〜1.1/1である。ジカルボン酸成分とジオール成分のモル比が上記範囲内であると重合性が向上するであるので好ましい。
【0055】
本発明において、ポリカルボン酸及びポリオールは触媒の存在下に重縮合することが好ましく、触媒としてはブレンステッド酸系触媒を使用することが好ましく、硫黄元素を含むブレンステッド酸系触媒(硫黄酸)を使用することがより好ましい。
<触媒>
ブレンステッド酸系触媒の例としては、例えばドデシルベンゼンスルホン酸、イソプロピルベンゼンスルホン酸、しょうのうスルホン酸、などのアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルジスルホン酸、アルキルフェノールスルホン酸、アルキルナフタリンスルホン酸、アルキルテトラリンスルホン酸、アルキルアリルスルホン酸、石油スルホン酸、アルキルベンゾイミダゾールスルホン酸、高級アルコールエーテルスルホン酸、アルキルジフェニルスルホン酸、モノブチルフェニルフェノール硫酸、ジブチルフェニルフェノール硫酸、ドデシル硫酸などの高級脂肪酸硫酸エステル、高級アルコール硫酸エステル、高級アルコールエーテル硫酸エステル、高級脂肪酸アミドアルキロール硫酸エステル、高級脂肪酸アミドアルキル化硫酸エステル、ナフテニルアルコール硫酸、硫酸化脂肪、スルホ琥珀酸エステル、各種脂肪酸、スルホン化高級脂肪酸、高級アルキルリン酸エステル、樹脂酸、樹脂酸アルコール硫酸、ナフテン酸、ニオブ酸、及びこれらすべての塩化合物などが使用できるが、これに限定されない。またこれらの触媒は、構造中に官能基を有していてもよい。これらの触媒は必要に応じて複数を組み合わせることもできる。好ましく使用されるブレンステッド酸系触媒としては、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、しょうのうスルホン酸等を挙げることができる。
【0056】
上記触媒とともに、又は単独で、一般的に使用される他の重縮合触媒を用いることもできる。具体的には、金属触媒、加水分解酵素型触媒、塩基性触媒が例示できる。
金属触媒としては以下のものを挙げることができるが、これに限定されるものではない。例えば、有機スズ化合物、有機チタン化合物、有機ハロゲン化スズ化合物、希土類含有触媒を挙げられる。
希土類含有触媒としては具体的には、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイド元素として、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)などを含むものが有効である。これらは、特にアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、トリフラート構造を有するものが有効であり、前記トリフラートとしては、構造式では、X(OSO2CF33が例示できる。ここでXは、希土類元素であり、これらの中でも、Xは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、イッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)などであることが好ましい。
また、ランタノイドトリフラートについては、有機合成化学協会誌、第53巻第5号、p44−54)に詳しい。
【0057】
触媒として金属触媒を使用する場合には、得られる樹脂中の触媒由来の金属含有量を100ppm以下とする。75ppm以下とすることが好ましく、50ppm以下とすることがより好ましい。したがって、金属触媒は使用しないか、又は金属触媒を使用する場合であっても、極少量使用することが好ましい。
【0058】
加水分解酵素型触媒としてはエステル合成反応を触媒するものであれば特に制限はない。本発明における加水分解酵素としては、例えば、カルボキシエステラーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、アセチルエステラーゼ、ペクチンエステラーゼ、コレステロールエステラーゼ、タンナーゼ、モノアシルグリセロールリパーゼ、ラクトナーゼ、リポプロテインリパーゼ等のEC(酵素番号)3.1群(丸尾・田宮監修「酵素ハンドブック」朝倉書店、(1982)、等参照)に分類されるエステラーゼ、グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルクロニダーゼ、キシロシダーゼ等のグリコシル化合物に作用するEC3.2群に分類される加水分解酵素、エポキシドヒドラーゼ等のEC3.3群に分類される加水分解酵素、アミノペプチダーゼ、キモトリプシン、トリプシン、プラスミン、ズブチリシン等のペプチド結合に作用するEC3.4群に分類される加水分解酵素、フロレチンヒドラーゼ等のEC3.7群に分類される加水分解酵素等を挙げることができる。
上記のエステラーゼのうち、グリセロールエステルを加水分解し脂肪酸を遊離する酵素を特にリパーゼと呼ぶが、リパーゼは有機溶媒中での安定性が高く、収率良くエステル合成反応を触媒し、さらに安価に入手できることなどの利点がある。したがって、本発明においても、収率やコストの面からリパーゼを用いることが望ましい。
リパーゼには種々の起源のものを使用できるが、好ましいものとして、シュードモナス(Pseudomonas)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、カンジダ(Candida)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、リゾプス(Rhizopus)属、ムコール(Mucor)属等の微生物から得られるリパーゼ、植物種子から得られるリパーゼ、動物組織から得られるリパーゼ、さらに、パンクレアチン、ステアプシン等を挙げることができる。このうち、シュードモナス属、カンジダ属、アスペルギルス属の微生物由来のリパーゼを用いることが望ましい。
【0059】
塩基性触媒としては、一般の有機塩基化合物、含窒素塩基性化合物、テトラブチルホスホニウムヒドロキシドなどのテトラアルキル又はアリールホスホニウムヒドロキシドを挙げることができるがこれに限定されない。有機塩基化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のアンモニウムヒドロキシド類、含窒素塩基性化合物としては、トリエチルアミン、ジベンジルメチルアミン等のアミン類、ピリジン、メチルピリジン、メトキシピリジン、キノリン、イミダゾールなど、さらにナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム等のアルカリ金属類及びカルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属類の水酸化物、ハイドライド、アミドや、アルカリ、アルカリ土類金属と酸との塩、たとえば炭酸塩、燐酸塩、ほう酸塩、カルボン酸塩、フェノール性水酸基との塩を挙げることができる。
また、アルコール性水酸基との化合物やアセチルアセトンとのキレート化合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
触媒の総添加量としては、重縮合成分に対して0.001〜10重量%の割合で添加することが好ましく、0.01〜5重量%の割合で添加することがより好ましい。触媒は1種類又は複数添加することができる。
【0061】
本発明においては、従来の反応温度よりも低温で重縮合反応させても、結着樹脂を得ることができる。反応温度(重縮合温度)は70℃以上150℃以下であることが好ましい。より好ましくは、80℃以上140℃以下である。
反応温度が70℃以上であると、モノマーの溶解性、触媒活性度の低下に起因する反応性の低下が生じず、分子量の伸長が抑制されることがないので好ましい。また、反応温度が150℃以下であると、低エネルギーで製造することができるので好ましい。また、樹脂の着色や、生成したポリエステルの分解等を生じることがないので好ましい。
【0062】
この重縮合反応は、バルク重合、乳化重合、懸濁重合等の水中重合、溶液重合、界面重合等一般の重縮合法で実施することが可能であるが、好適にはバルク重合が用いられる。また大気圧下で反応が可能であるが、得られるポリエステル分子の高分子量化等を目的とした場合、減圧、窒素気流下等の一般的な条件を用いることができる。
【0063】
本発明のトナー用結着樹脂としては、ガラス転移温度(ガラス転移点)Tgは35℃〜95℃が好ましい。より好ましくは40〜90℃であり、さらに好ましくは45〜85℃である。Tgが上記範囲内であると、高温度域での結着樹脂自体の凝集力が良好であるため、定着の際にホットオフセットが生じ難く、さらに十分な溶融が得られ、最低定着温度が上昇しにくく好ましい。
ここで、非結晶性樹脂のガラス転移温度は、ASTM D3418−82に規定された方法(DSC法)で測定した値のことをいう。
また、本発明におけるガラス転移温度の測定は、例えば、示差走査熱量測定法(DSC)に従い、例えば、「DSC−20」(セイコー電子工業社製)によって測定でき、具体的には、試料約10mgを一定の昇温速度(10℃/min)で加熱し、ベースラインと吸熱ピークの傾線との交点よりガラス転移温度を得ることができる。
【0064】
分子量はテトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による分子量測定で、重量平均分子量は1,000〜60,000であることが好ましく、1,500〜50,000であることがより好ましく、2,000〜40,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であると、耐オフセット性が向上するので好ましい。
本発明において、樹脂の分子量は、THF可溶物を、TSK−GEL、GMH(東ソー(株)製)等を使用し、THF溶媒で測定し、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して分子量を算出することができる。
【0065】
本発明においては、重縮合工程として、既述の重縮合成分であるポリカルボン酸及びポリオールと、予め作製しておいたプレポリマーとの重合反応とを含むこともできる。プレポリマーは、上記単量体に溶融又は均一混合できるポリマーであれば限定されない。
さらに本発明の結着樹脂は、上述した重縮合成分の単独重合体、上述した重合性成分を含む2種以上の単量体を組み合せた共重合体、又はそれらの混合物、グラフト重合体、一部枝分かれや架橋構造などを有していても良い。
【0066】
(静電荷像現像トナー)
本発明により製造されたトナー用結着樹脂を使用して、溶融混練粉砕法等の機械的製法、又は該ポリエステルを使用して結着樹脂分散液(本発明において、「結着樹脂粒子分散液」又は「樹脂粒子分散液」ともいう。)を製造し、結着樹脂分散液からトナーを製造するいわゆる化学製法によりトナーを製造することができる。
【0067】
本発明の結着樹脂を使用して、溶融混練法などの機械的製法でトナーを製造すると、顔料等の分散性や粉砕性が良好である。これは、低温で高反応性を有する重縮合成分を主成分として含み、さらに重縮合を従来の重縮合よりも低温で実施することができるために、副反応や未反応物の生成を抑制し、物性の均一な結着樹脂が得られるためであると考えられる。
【0068】
溶融混練粉砕法によりトナーを製造する場合は、上記のように製造したポリエステル樹脂を予め他のトナー原材料と、溶融混練前に、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等で撹拌混合させることが好ましい。このとき、撹拌機容量、撹拌機の回転速度、撹拌時間等を組み合わせて選択しなければならない。
【0069】
次いで、トナー用結着樹脂と他のトナー原材料との撹拌物は、公知の方法により溶融状態での混練を行う。一軸又は多軸押出し機による混練が分散性が向上するため好ましい。このとき混練装置のニーディングスクリュウゾーン数、シリンダー温度、混練速度等を全て適切な値に設定し、制御する必要がある。混練時の各制御因子のうち、混練状態に特に大きな影響を与えるのは、混練機の回転数と、ニーディングスクリュウゾーン数、シリンダー温度である。一般に、回転数は300〜1,000rpmが望ましく、ニーディングスクリュウゾーン数は1段よりも2段スクリュウ等、多段ゾーンを用いたほうがよりよく混練される。シリンダー設定温度は、結着樹脂の主成分となる非結晶性ポリエステルの軟化温度により決定することが好ましく、通常軟化温度よりも−20〜+100℃程度が好ましい。シリンダー設定温度が上記範囲内であると、十分な混練分散が得られ、凝集が生じないので好ましい。さらに、混練シェアが掛かり、十分な分散が得られるとともに、混練後の冷却が容易であるので好ましい。
溶融混練された混練物は十分に冷却した後、ボールミル、サンドミル、ハンマーミル等の機械的粉砕方法、気流式粉砕方法等の公知の方法で粉砕する。常法での冷却が充分できない場合は、冷却又は凍結粉砕法も選択できる。
【0070】
トナーの粒度分布を制御する目的で、粉砕後のトナーを分級することもある。分級によって不適切な径の粒子を排除することにより、トナーの定着性や画像品質を向上する効果がある。
【0071】
一方、近年の高画質要求に伴い、トナーの小径化、低エネルギー製法対応技術として、トナーの化学的製法も多く採用されている。本発明のトナー用結着樹脂を用いるトナーの化学製法としては、汎用の製法を用いることができるが、凝集合一法が好ましい。凝集合一法とは、水に結着樹脂を分散させたラテックスを作製し、他のトナー原材料とともに凝集(会合)させる既知の凝集法である。
【0072】
上述のように製造した結着樹脂を水に分散させる方法は、特に限定されない。強制乳化法、自己乳化法、転相乳化法など、既知の方法から選択することができる。これらのうち、乳化に要するエネルギー、得られる乳化物の粒径制御性、安定性等を考慮すると、強制乳化法、自己乳化法、転相乳化法が好ましく適用され、より好ましくは自己乳化法、転相乳化法が適用される。
自己乳化法、転相乳化法に関しては、「超微粒子ポリマーの応用技術」(シーエムシー出版)に記載されている。自己乳化法に用いる極性基としては、カルボキシル基、スルホン基等を用いることができるが、本発明において、トナー用非結晶性ポリエステル結着樹脂に適用する場合、カルボキシル基が好ましく用いられる。
【0073】
上記のように作製した結着樹脂分散液、所謂ラテックスを使用し、凝集(会合)法を用いてトナー粒子径及び分布を制御したトナーを製造する事が可能である。少なくとも上述のようにして得られた結着樹脂分散液を含む分散液中で該結着樹脂を凝集して凝集粒子を得る工程(凝集工程)、及び、該凝集粒子を加熱して融合させる工程(融合工程)を含む静電荷像現像トナーの製造方法であって、前記結着樹脂分散液が本発明の結着樹脂を含むことを特徴とする。
より詳細には、上記のように作製したラテックス(樹脂粒子分散液)を、必要に応じて着色剤粒子分散液及び離型剤粒子分散液と混合し、さらに凝集剤を添加し、ヘテロ凝集を生じさせることによりトナー径の凝集粒子を形成し、その後、結着樹脂粒子のガラス転移点以上又は融点以上の温度に加熱して前記凝集粒子を融合し、洗浄、乾燥することにより得られる。この製法は加熱温度条件を選択することでトナー形状を不定形から球形まで制御できる。
【0074】
凝集粒子の融合工程を終了した後、任意の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て所望のトナー粒子を得るが、洗浄工程は帯電性を考慮すると、イオン交換水で十分に置換洗浄することが望ましい。また、固液分離工程には特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等が好適である。さらに、乾燥工程も特に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等が好ましく用いられる。
【0075】
凝集剤としては、界面活性剤のほか、無機塩、2価以上の金属塩を好適に用いることができる。特に、金属塩を用いる場合、凝集性制御及びトナー帯電性などの特性において好ましい。凝集に用いる金属塩化合物としては、一般の無機金属化合物又はその重合体を樹脂粒子分散液中に溶解して得られるが、無機金属塩を構成する金属元素は周期律表(長周期律表)における2A、3A、4A、5A、6A、7A、8、1B、2B、3B族に属する2価以上の電荷を有するものが好ましく、樹脂粒子の凝集系においてイオンの形で溶解するものであればよい。好ましい無機金属塩を具体的に挙げると、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシム等の無機金属塩重合体などである。その中でも特に、アルミニウム塩及びその重合体が好適である。一般的に、よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価以上で、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方がより適している。
【0076】
本発明においては、必要に応じて、本発明の結果に影響を与えない範囲で公知の添加剤を、1種又は複数を組み合わせて配合することができる。例えば、難燃剤、難燃助剤、光沢剤、防水剤、撥水剤、無機充填剤(表面改質剤)、離型剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤、分散剤、滑剤、充填剤、体質顔料、結着剤、帯電制御剤等である。これらの添加物は、静電荷像現像トナーを製造するいずれの工程においても配合することができる。
【0077】
内添剤の例としては、帯電制御剤として4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物など通常使用される種々の帯電制御剤を使用することが出来るが、製造時の安定性と廃水汚染減少の点から水に溶解しにくい材料が好適である。
【0078】
離型剤の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪酸アミド類やエステルワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が使用できる。
これらのワックス類は、水中にイオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質とともに分散し、融点以上に加熱するとともに強い剪断をかけられるホモジナイザーや圧力吐出型分散機により微粒子化し、1ミクロン以下の粒子の分散液を作製することができる。
【0079】
また、上記の重縮合性樹脂粒子分散液以外にも、従来から知られる乳化重合などを用いて作製された付加重合系樹脂粒子分散液を合わせて用いることができる。
これらの樹脂粒子分散液を作製するための付加重合系単量体の例としては、スチレン、パラクロルスチレンなどのスチレン類、ビニルナフタレン、塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのメチレン脂肪族カルボン酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリルロニトリル、アクリルアミド、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類、例えばN−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物などの含N極性基を有する単量体やメタクリル酸、アクリル酸、桂皮酸、カルボキシエチルアクリレートなどのビニルカルボン酸類などビニル系モノマーの単独重合体及び共重合体など、さらには各種ワックス類もあわせて使用可能である。
【0080】
付加重合系単量体の場合は、イオン性界面活性剤などを用いて乳化重合を実施して樹脂粒子分散液を作製することができ、その他の樹脂の場合は油性で水への溶解度の比較的低い溶剤に溶解するものであれば、樹脂をそれらの溶剤に解かし、イオン性の界面活性剤や高分子電解質とともにホモジナイザーなどの分散機により水系媒体中に粒子状に分散し、その後加熱又は減圧して溶剤を蒸散することにより、樹脂粒子分散液を得ることができる。
【0081】
ここで用いる界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキシド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの中でもアニオン界面活性剤、カチオン系界面活性剤が好ましい。前記非イオン系界面活性剤は、前記アニオン界面活性剤又はカチオン系界面活性剤と併用することが好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アニオン界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等などが挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。非イオン系界面活性剤としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリプロピレンオキシドとポリエチレンオキシドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキシド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキシドのエステル、ソルビタンエステル等を挙げることができる。
また高分子分散剤としては、ポリカルボン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、無機分散剤としては、炭酸カルシウムなどを例示することが出来るが、これらはなんら本発明を制限するものではない。さらに通常水系媒体中での単量体エマルジョン粒子のOstwald Ripning現象を防ぐためにしばしば、ヘプタノールやオクタノールに代表される高級アルコール類、ヘキサデカンに代表される高級脂肪族炭化水素類を安定助剤として配合することも可能である。
【0082】
これら重合性化合物はその重合法としては、重合開始剤を用いる方法、熱による自己重合、紫外線照射を用いる方法等の、既知の重合方法を採用する事が出来る。重合開始剤を使用する方法が好ましく、重合性化合物としてラジカル重合性化合物を使用する場合には、ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。ラジカル重合開始剤は、油溶性、水溶性のものがあるが、どちらの重合開始剤を使用しても構わない。
具体的には、例えば、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ヒドロクロリド等のアゾビスニトリル類、アセチルパーオキシド、オクタノイルパーオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、デカノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチル−α−クミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド、t−ブチルパーオキシアセテート、α−クミルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート等のパーオキシエステル、t−ブチルヒドロパーオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、ジ−イソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシカーボネート等の有機過酸化物類、過酸化水素等の無機過酸化物類、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類等のラジカル重合開始剤が挙げられる。なお、レドックス重合開始剤を併用することもできる。
重合開始剤は、油相に添加することもできるが、水系媒体中に添加することもできる。乳化分散前に油相又は水系媒体のいずれかに添加することもでき、双方に添加しても良い。また、乳化分散後に添加することも好ましい。
これらの中でも、油相を水系媒体に乳化分散させた後、重合開始剤を添加することが好ましい。
【0083】
難燃剤、難燃助剤としては、すでに汎用されている臭素系難燃剤や、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ポリリン酸アンモニウムを例示できるがこれに限定されるものではない。
【0084】
着色成分(着色剤)としては、既知の顔料及び染料のいずれも使用することができる。具体的には、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、ベンガラ、紺青、酸化チタン等の無機顔料、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、ピラゾロンレッド、キレートレッド、ブリリアントカーミン、パラブラウン等のアゾ顔料、銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン顔料、フラバントロンイエロー、ジブロモアントロンオレンジ、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料があげられる。クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラロゾンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、デュポンオイルレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレート、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3などの種々の顔料などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を併せて使用することができる。
【0085】
本発明の静電荷像現像トナーの製造方法において、離型剤粒子分散液や顔料分散液等を調製する際に用いる界面活性剤の例としては、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤、アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン系界面活性剤、またポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキシド付加物系、多価アルコール系等の非イオン性界面活性剤を併用することも効果的であり、分散のため手段としては、回転せん断型ホモジナイザーやメデイアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的なものが使用可能である。
【0086】
また通常のトナーと同様に乾燥後、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウムなどの無機粒子やビニル系樹脂、ポリエステル、シリコーンなどの樹脂微粒子を乾燥状態で剪断をかけて表面へ添加(外添)して流動性助剤やクリーニング助剤として用いることもできる。本発明の静電荷像現像トナーが外添剤を有する場合、外添前のトナー粒子をトナー母粒子ということとする。すなわち、本発明の静電荷像現像トナーが外添剤を有する場合、静電荷像現像トナーは、トナー母粒子に外添剤を外添してなる。
【0087】
本発明のトナーは累積体積平均粒子径(体積メジアン径)(D50)が3.0μm〜20.0μmであることが好ましい。さらに好ましくは、累積体積平均粒子径が3.0μm〜9.0μmの場合である。D50が3.0μm以上であると、付着力が適切であり、現像性が低下することがないので好ましい。また、20.0μm以下であると、十分な画像解像性が得られるので好ましい。累積体積平均粒子径(D50)はレーザー回折式粒度分布測定装置等を用いて測定することができる。
【0088】
また、本発明のトナーは、体積平均粒度分布指標GSDvが1.4以下であることが好ましい。特に化学製法トナーの場合、GSDvが1.3以下がさらに望ましい。
GSDvは、粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対する体積について、それぞれ小径側から累積分布を描き、累積16%となる粒径を体積D16v、累積84%となる粒径を体積D84vと定義する。これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は、下記式により算出される。
体積平均粒度分布指標GSDv=(D84v/D16v0.5
GSDvが1.4以下であると、粒子径が均一となり、良好な定着性が得られ、また定着不良に起因する装置故障が生じないので好ましい。また、トナーの飛散による機内汚染や現像剤の劣化などを生じないので好ましい。
体積平均粒度分布指標GSDvはレーザー回折式粒度分布測定装置等を用いて測定することができる。
【0089】
本発明のトナーが化学製法で製造される場合、形状係数SF1は画像形成性の点から100〜140であることが好ましく、110〜135であることがより好ましい。このときSF1は以下のように計算される。
【0090】
【数1】

ここでMLは粒子の絶対最大長、Aは粒子の投影面積である。
これらは、主に顕微鏡画像又は走査電子顕微鏡画像をルーゼックス画像解析装置によって取り込み、解析することによって数値化される。
なお、本発明において、静電荷像現像トナーの平均体積粒子径、GSDv及び形状係数は、上述したトナー母粒子の平均粒子径及び形状係数によって近似することもできる。
【0091】
(静電荷像現像剤)
本発明の静電荷像現像トナーは、静電荷像現像剤として使用される。この現像剤は、この静電荷像現像トナーを含有することの外は特に制限はなく、目的に応じて適宜の成分組成をとることができる。静電荷像現像トナーを、単独で用いると一成分系の静電荷像現像剤として調製され、また、キャリアと組み合わせて用いると二成分系の静電荷像現像剤として調製される。
キャリアとしては、特に限定されないが、通常、鉄粉、フェライト、酸化鉄粉、ニッケル等の磁性体粒子;磁性体粒子を芯材としてその表面をスチレン系樹脂、ビニル系樹脂、エチレン系樹脂、ロジン系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂などの樹脂やステアリン酸等のワックスで被覆し、樹脂被覆層を形成させてなる樹脂被覆キャリア;結着樹脂中に磁性体粒子を分散させてなる磁性体分散型キャリア等が挙げられる。中でも、樹脂被覆キャリアは、トナーの帯電性やキャリア全体の抵抗を樹脂被覆層の構成により制御可能となるため特に好ましい。
二成分系の静電荷像現像剤における本発明のトナーとキャリアとの混合割合は、通常、キャリア100重量部に対して、トナー2〜10重量部である。また、現像剤の調製方法は、特に限定されないが、例えば、Vブレンダー等で混合する方法等が挙げられる。
【0092】
(画像形成方法)
以下に、本発明の画像形成方法について詳細に説明する。本発明の画像形成方法は、潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程、前記潜像保持体表面に形成された静電潜像をトナー又は静電荷像現像剤により現像してトナー像(現像像)を形成する現像工程、前記潜像保持体表面に形成されたトナー像を被記録体表面に転写する転写工程及び、前記被記録体表面に転写されたトナー像を熱定着する定着工程を含み、必要に応じて、さらに潜像担持体表面に残ったトナーをクリーニングするクリーニング工程を含むものであって、前記トナーとして、本発明の静電荷像現像トナーを用いることを特徴とするものである。なお、現像剤担持体に担持されるトナーの代わりに本発明の静電荷像現像剤を使用しても同様の効果を得ることができる。
【0093】
前記潜像形成工程とは、潜像担持体の表面を、帯電手段により一様に帯電した後、レーザー光学系やLEDアレイなどで潜像担持体に露光し、静電潜像を形成する工程である。前記帯電手段としては、コロトロン、スコロトロンなどの非接触方式の帯電器、及び、潜像担持体表面に接触させた導電性部材に電圧を印加することにより、潜像担持体表面を帯電させる接触方式の帯電器が挙げられ、いかなる方式の帯電器でもよい。しかし、オゾンの発生量が少なく、環境に優しく、かつ耐刷性に優れるという効果を発揮するという観点から、接触帯電方式の帯電器が好ましい。前記接触帯電方式の帯電器においては、導電性部材の形状はブラシ状、ブレード状、ピン電極状、ローラー状等の何れでもよいが、ローラー状部材が好ましい。本発明の画像形成方法は、潜像形成工程においてなんら特別の制限を受けるものではない。
【0094】
前記現像工程とは、潜像担持体表面に、少なくともトナーを含む現像剤層を表面に形成させた現像剤担持体を接触若しくは近接させて、前記潜像担持体表面の静電潜像にトナーの粒子を付着させ、潜像担持体表面にトナー画像(現像像)を形成する工程である。現像方式は、既知の方式を用いて行うことができるが、二成分現像剤による現像方式としては、カスケード方式、磁気ブラシ方式などがある。本発明の画像形成方法は、現像方式に関し、特に制限を受けるものではない。
【0095】
前記転写工程とは、潜像担持体表面に形成されたトナー画像を、被記録体に直接転写、或いは中間転写体に一度転写した画像を被記録体に再度転写して転写画像を形成する工程である。
潜像担持体からのトナー画像を紙等に転写する転写装置としては、コロトロンが利用できる。コロトロンは用紙を均一に帯電する手段としては有効であるが、被記録体である用紙に所定の電荷を与えるために、数kVという高圧を印加しなければならず、高圧電源を必要とする。また、コロナ放電によってオゾンが発生するため、ゴム部品や潜像担持体の劣化を引き起こすので、弾性材料からなる導電性の転写ロールを潜像担持体に圧接して、用紙にトナー画像を転写する接触転写方式が好ましい。本発明の画像形成方法においては、転写装置に関し、特に制限を受けるものではない。
【0096】
前記クリーニング工程とは、ブレード、ブラシ、ロール等を潜像担持体表面に直接接触させ、潜像担持体表面に付着しているトナー、紙粉、ゴミなどを除去する工程である。
最も一般的に採用されている方式として、ポリウレタン等のゴム製のブレードを潜像担持体に圧接させるブレードクリーニング方式である。これに対し、内部に磁石を固定配置し、その外周に回転可能な円筒状の非磁性体のスリーブを設け、そのスリーブ表面に磁性キャリアを担持させてトナーを回収する磁気ブラシ方式や、半導電性の樹脂繊維や動物の毛をロール状に回転可能にし、トナーと反対極性のバイアスをそのロールに印加してトナーを除去する方式でもよい。前者の磁気ブラシ方式では、クリーニングの前処理用コロトロンを設置してもよい。本発明の画像形成方法においては、クリーニング方式については少なくともブレードを有するクリーニング工程であることが好ましい。
【0097】
前記定着工程とは、被記録体表面に転写されたトナー画像を定着装置にて定着する工程である。定着装置としては、ヒートロールを用いる加熱定着装置が好ましく用いられる。加熱定着装置は、円筒状芯金の内部に加熱用のヒータランプを備え、その外周面に耐熱性樹脂被膜層あるいは耐熱性ゴム被膜層により、いわゆる離型層を形成した定着ローラと、この定着ローラに対し圧接して配置され、円筒状芯金の外周面あるいはベルト状基材表面に耐熱弾性体層を形成した加圧ローラあるいは加圧ベルトと、で構成される。未定着トナー画像の定着プロセスは、定着ローラと加圧ローラあるいは加圧ベルトとの間に未定着トナー画像が形成された被記録体を挿通させて、トナー中の結着樹脂、添加剤等の熱溶融による定着を行う。本発明の画像形成方法においては、定着方式については特に制限を受けるものではない。
【0098】
なお、本発明の画像形成方法において、フルカラー画像を作製する場合には、複数の潜像担持体がそれぞれ各色の現像剤担持体を有しており、その複数の潜像担持体及び現像剤担持体それぞれによる潜像形成工程、現像工程、転写工程及びクリーニング工程からなる一連の工程により、同一の被記録体表面に前記工程ごとの各色トナー画像が順次積層形成され、その積層されたフルカラーのトナー画像を、定着工程で熱定着する画像形成方法が好ましく用いられる。そして、前記静電荷像現像剤を、上記画像形成方法に用いることにより、例えば、小型化、カラー高速化に適したタンデム方式においても、安定した現像、転写、定着性能を得ることができる。
【0099】
トナー画像を転写する被記録体としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、前記被記録体の表面もできるだけ平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等を好適に使用することができる。
本発明の静電荷像現像トナーを用いた画像形成方法によると、高転写効率・高画質を維持しつつ、経時による現像、転写工程の安定化を図り、且つ、外添剤の脱離による機内汚染を生じることなく、高画質、特に中間色再現性、階調性に優れた画像を安定して得る高転写効率による高画質の画像を得ることができる。
【実施例】
【0100】
以下、本発明を実施例で詳しく説明するが、本発明を何ら限定するものではない。なお、実施例中の部とは、特に断りの無い限り、すべて重量部を示す。
(1)結着樹脂及び結着樹脂粒子分散液の調製
[実施例1−1]
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸 17.5重量部
ビスフェノールA エチレンオキシド1モル付加物(両末端換算2モル付加物)
25.5重量部(80mol%)
ビスフェノキシエタノールフルオレン 9.0重量部(20mol%)
直鎖型ドデシルベンゼンスルホン酸 0.15重量部
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターに投入し、120℃で24時間重縮合を実施したところ、均一透明な非結晶性ポリエステル樹脂(1)を得た。
GPCによる重量平均分子量 18,000
GPCによる数平均分子量 5,900
ガラス転移温度(オンセット) 65℃
【0101】
また得られたGPC曲線において、10分以降に出現したピーク面積を、検出した全ピークに対する面積で割った面積比は1.0%であった。10分以降に出現した小ピークはその換算分子量から推論してモノマー又は重合度が2〜3のオリゴマーを示唆している。よって、この面積比が小さいほど、重縮合反応が均一に進行し、超低分子量成分の残存が少ないと予測することができる。
面積比が5%以下であることが実用上問題がなく、3%以下であることがより好ましい。面積比が5%以下であると、低分子量成分の残存が少なく、好ましい。
【0102】
このようにして得た樹脂を撹拌機及び冷却管に付いた三口フラスコに投入し、95℃に保ちながら1N NaOHを徐々に添加しながら撹拌を続けた。NaOH水溶液を総量で50重量部投入すると、樹脂はスラリー状を呈した。85℃に調整したイオン交換水180重量部の入ったフラスコ中に本スラリーを投入し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)で10分間乳化した後、さらに超高圧ホモジナイザー(吉田機械興業社製ナノマイザー)にて、10パス乳化し、その後分散液を氷冷することにより樹脂粒子分散液(1)を得た。樹脂メジアン径は180nmであった。
なお、固形分濃度は28%であった。
【0103】
[実施例1−2]
1,4−フェニレンジ酢酸 20重量部
ビスフェノールA プロピレンオキシド1モル付加物(両末端換算2モル付加物)
22.5重量部(65mol%)
ビスフェノールS エチレンオキシド1モル付加物(両末端換算2モル付加物)
8.5重量部(25mol%)
ビスフェノキシエタノールフルオレン 4.5重量部(10mol%)
p−クロロベンゼンスルホン酸 0.1重量部
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターに投入し、120℃で24時間重縮合を実施したところ、均一透明な非結晶性ポリエステル樹脂(2)を得た。
GPCによる重量平均分子量 16,500
GPCによる数平均分子量 5,450
ガラス転移温度(オンセット) 61.0℃
また得られたGPC曲線において、10分以降に出現したピーク面積の、ポリマー由来ピークに対する面積比は2.0%であった。
実施例1−1と同様の方法で、メジアン径220nmの樹脂粒子分散液(2)を作製した。
なお、固形分濃度は31%であった。
【0104】
[実施例1−3]
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸 17.5重量部
ビスフェノールA エチレンオキシド1モル付加物(両末端換算2モル付加物)
25.5重量部(80mol%)
9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン
9.1重量部(20mol%)
直鎖型ドデシルベンゼンスルホン酸 0.15重量部
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターに投入し、120℃で24時間重縮合を実施したところ、均一透明な非結晶性ポリエステル樹脂(3)を得た。
GPCによる重量平均分子量 18,700
GPCによる数平均分子量 6,450
ガラス転移温度(オンセット) 63.5℃
また得られたGPC曲線において、10分以降に出現したピーク面積の、ポリマー由来ピークに対する面積比は3.1%であった。
実施例1−1と同様の方法で、メジアン径199nmの樹脂粒子分散液(3)を作製した。
なお、固形分濃度は29%であった。
【0105】
[実施例1−4]
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸 17.5重量部
ビスフェノールA エチレンオキシド1モル付加物(両末端換算2モル付加物)
25.5重量部(80mol%)
ビスフェノキシエタノールフルオレン 9.0重量部(20mol%)
スカンジウムトリフラート 0.2重量部
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターに投入し、120℃で24時間重縮合を実施したところ、均一透明な非結晶性ポリエステル樹脂(4)を得た。
GPCによる重量平均分子量 15,200
GPCによる数平均分子量 5,100
ガラス転移温度(オンセット) 62℃
また得られたGPC曲線において、10分以降に出現したピーク面積の、ポリマー由来ピークに対する面積比は2.9%であった。
実施例1−1と同様の方法で、メジアン径196nmの樹脂粒子分散液(4)を作製した。
なお、固形分濃度は30%であった。
【0106】
[比較例1−1]
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸 17.5重量部
ビスフェノールA エチレンオキシド1モル付加物(両末端換算2モル付加物)
31.0重量部
直鎖型ドデシルベンゼンスルホン酸 0.15重量部
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターにを投入し、120℃で24時間重縮合を実施したところ、均一透明な非結晶性ポリエステル樹脂(5)を得た。
GPCによる重量平均分子量 11,500
GPCによる重量平均分子量 3,850
ガラス転移温度(オンセット) 50℃
また得られたGPC曲線において、10分以降に出現したピーク面積の、ポリマー由来ピークに対する面積比は3.0%であった。
実施例1−1と同様の方法で、メジアン径180nmの樹脂粒子分散液(5)を作製した。
なお、固形分濃度は30%であった。
【0107】
[比較例1−2]
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸 17.0重量部
ビスフェノールA エチレンオキシド1モル付加物(両末端換算2モル付加物)
1.5重量部(5mol%)
ビスフェノキシエタノールフルオレン 41.5重量部(95mol%)
直鎖型ドデシルベンゼンスルホン酸 0.15重量部
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターに投入し、140℃で24時間重縮合を実施したところ、均一透明な非結晶性ポリエステル樹脂(6)を得た。
GPCによる重量平均分子量 29,000
GPCによる重量平均分子量 6,800
ガラス転移温度(オンセット) 90.0℃
また得られたGPC曲線において、10分以降に出現したピーク面積の、ポリマー由来ピークに対する面積比は2.7%であった。
このようにして得た樹脂を撹拌機及び冷却管に付いた三口フラスコに投入し、98度に保ちながら1N NaOHを徐々に添加しながら撹拌を続けた。NaOH水溶液を総量で50g投入すると、樹脂はスラリー状を呈した。98℃に調整したイオン交換水180gの入ったフラスコ中に本スラリーを投入し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)で10分間乳化した後、さらに超高圧ホモジナイザー(吉田機械興業社製ナノマイザー)にて、10パス乳化し、その後分散液を氷冷することにより樹脂粒子分散液(6)を得た。樹脂メジアン径は450nmであった。
なお、固形分濃度は29%であった。
【0108】
[比較例1−3]
1,4−フェニレンジプロピオン酸 22.0重量部
ビスフェノールA プロピレンオキシド1モル付加物(両末端換算2モル付加物)
34.0重量部(98.5mol%)
ビスフェノキシエタノールフルオレン 0.7重量部(1.5mol%)
p−クロロベンゼンスルホン酸 0.1重量部
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターに投入し、120℃で24時間重縮合を実施したところ、均一透明な非結晶性ポリエステル樹脂(7)を得た。
GPCによる重量平均分子量 13,500
GPCによる重量平均分子量 4,050
ガラス転移温度(オンセット) 50.5℃
また得られたGPC曲線において、10分以降に出現したピーク面積の、ポリマー由来ピークに対する面積比は2.9%であった。
実施例1−1と同様の方法で、メジアン径190nmの樹脂粒子分散液(7)を作製した。
なお、固形分濃度は33%であった。
【0109】
[比較例1−4]
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸 17.0重量部
ビスフェノールA エチレンオキシド1モル付加物(両末端換算2モル付加物)
1.5重量部(5mol%)
ビスフェノキシエタノールフルオレン 9.0重量部(20mol%)
ビスフェノールZ 1モル付加物 26.5重量部(75mol%)
直鎖型ドデシルベンゼンスルホン酸 0.15重量部
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターに投入し、120℃で24時間重縮合を実施したところ、淡黄濁色の非結晶性ポリエステル樹脂(8)を得た。
GPCによる重量平均分子量 7,500
GPCによる重量平均分子量 2,600
ガラス転移温度(オンセット) 53.5℃
また得られたGPC曲線において、10分以降に出現したピーク面積の、ポリマー由来ピークに対する面積比は6.2%であった。
実施例1−1と同様の方法で樹脂粒子分散液(8)を作製すると、メジアン径は470nmであったが1μm付近にもピークが出現し、粒子の凝集が認められた。
なお、固形分濃度は25%であった。
【0110】
[比較例1−5]
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸 5.5重量部(30mol%)
テレフタル酸 11.5重量部(70mol%)
ビスフェノールA エチレンオキシド1モル付加物(両末端換算2モル付加物)
1.5重量部(5mol%)
ビスフェノキシエタノールフルオレン 9.0重量部(20mol%)
ビスフェノールZ 1モル付加物(両末端換算2モル付加物)
26.5重量部(75mol%)
直鎖型ドデシルベンゼンスルホン酸 0.15重量部
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターに投入し、120℃で24時間重縮合を実施したところ、白濁状態の低粘性液体を得、重合が進行していないことが確認された。
GPCによる重量平均分子量 3,600
GPCによる数平均分子量 1,060
ガラス転移温度(オンセット) 30℃
また得られたGPC曲線において、10分以降に出現したピーク面積の、ポリマー由来ピークに対する面積比は26.2%であった。
実施例1−1と同様の方法で樹脂粒子分散液(9)を作製すると、メジアン径は560nmであったが1μm付近にもピークが出現し、粒子の凝集が認められた。
なお、固形分濃度は29%であった。
【0111】
(2)離型剤粒子分散液(W1)の調製
ポリエチレンワックス 30重量部
(東洋ペトロライト社製、Polywax725、融点103℃)
カチオン性界面活性剤 3重量部
(花王社製、サニゾールB50)
イオン交換水 67重量部
上記成分をホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で95℃に加熱しながら十分に分散した後、圧力吐出型ホモジナイザー(ゴーリン社製、ゴーリンホモジナイザー)で分散処理し、離型剤粒子分散液(W1)を調整した。得られた分散液中の離型剤粒子の個数平均粒子径D50nは4,600nmであった。その後イオン交換水を加えて、分散液の固形分濃度を30%に調整した。
【0112】
(3)シアン顔料分散液(C1)の調製
シアン顔料 20重量部
(大日精化工業社製、C.I.Pigment Blue15:3)
アニオン系界面活性剤 2重量部
(第一工業製薬社製、ネオゲンR)
イオン交換水 78重量部
上記成分を、混合溶解し、ホモジナイザー(IKA 社製、ウルトラタラックス)5分と超音波バスにより10分間分散し、シアン顔料分散液を得た。分散液中の顔料の数平均粒子径D50nは121nmであった。その後イオン交換水を加えて分散液の固形分濃度を20%に調整した。
【0113】
(4)樹脂粒子分散液Aの調製
スチレン 460重量部
n−ブチルアクリレート 140重量部
アクリル酸 12重量部
ドデカンチオール 9重量部
前記成分を混合溶解して溶液を調製した。
他方、アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス)12重量部をイオン交換水250重量部に溶解し、前記溶液を加えてフラスコ中で分散し乳化した。(単量体乳化液A)
さらに、同じくアニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス)1重量部を555重量部のイオン交換水に溶解し、重合用フラスコに仕込んだ。
重合用フラスコを密栓し、還流管を設置し、窒素を注入しながら、ゆっくりと撹拌しながら、75℃まで重合用フラスコをウオーターバスで加熱し、保持した。
過硫酸アンモニウム9重量部をイオン交換水43重量部に溶解し、重合用フラスコ中に定量ポンプを介して、20分かけて滴下した後、単量体乳化液Aをやはり定量ポンプを介して200分かけて滴下した。
その後、ゆっくりと撹拌を続けながら重合用フラスコを75℃に、3時間保持して重合を終了した。
これにより微粒子のメジアン径が290nm、ガラス転移温度が52.0℃、重量平均分子量が30,000、固形分量が42%のアニオン性樹脂粒子分散液Aを得た。
【0114】
(5)静電荷像現像トナー及び静電荷像現像剤の作製
[実施例2−1]
(シアントナー(トナーC1)の作製)
樹脂粒子分散液(1) 120重量部
樹脂粒子分散液A 40重量部
離型剤粒子分散液(W1) 33重量部
シアン顔料分散液(C1) 60重量部
ポリ塩化アルミニウム10質量%水溶液 15重量部
(浅田化学社製、PAC1000W)
1%硝酸水溶液 3重量部
上記成分を、丸型ステンレス鋼製フラスコ中で、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて5,000rpmで3分間分散した後、前記フラスコに磁力シールを有した撹拌装置、温度計とpH計を具備した蓋をしてから、加熱用マントルヒーターをセットし、フラスコ中の分散液全体が撹拌される最低の回転数に適宜調節して撹拌しながら62℃まで1℃/1minで加熱し、62℃で30分間保持し、凝集粒子の粒径をコールターカウンター(ベックマン−コールター社製、コールターマルチサイザーII)で確認した。昇温停止後ただちに樹脂微粒子分散液(1)を50重量部追加し、30分間保持したのち、系内のpHが6.5になるまで水酸化ナトリウム水溶液を加えてから、1℃/1minで97℃まで加熱した。昇温後、硝酸水溶液を加えて系内のpHを5.0にして、10時間保持して凝集粒子を加熱融合した。この後系内を50℃まで降温、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを12.0に調節して10分間保持した。その後フラスコから取り出し、イオン交換水を用いて充分にろ過、通水洗浄した後、さらに固形分量が10重量%となるようにイオン交換水中に分散し、硝酸を加えてpH3.0で10分間撹拌した後、再びイオン交換水を用いて充分にろ過、通水洗浄して得られたスラリーを凍結乾燥してシアントナー母粒子(トナー母粒子C1)を得た。
【0115】
前記シアントナー母粒子(トナー母粒子C1)に、ヘキサメチルジシラザン(以下、「HMDS」と略す場合がある)で表面疎水化処理した一次粒子平均粒径40nmのシリカ(SiO2)粒子と、メタチタン酸とイソブチルトリメトキシシランの反応生成物である一次粒子平均粒径20nmのメタチタン酸化合物微粒子とを、それぞれ1重量%ずつ添加し、ヘンシェルミキサーで混合し、シアン外添トナー(トナーC1)を作製した。
このようにして作製したトナーの累積体積平均粒子径D50は、5.8μm、体積平均粒度分布指標GSDvは、1.22、トナー粒子の形状係数は128であった。
トナーの累積体積平均粒径D50と体積平均粒度分布指標GSDvはレーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)、また形状係数はルーゼックスによる形状観察でそれぞれ求めた。
【0116】
[実施例2−2〜2−4比較例2−1〜2−5]
同様の方法で、実施例1−2〜1−4比較例1−1〜1−5で得られた結着樹脂粒子分散液を用いて静電荷像現像トナー(トナー母粒子C2〜トナー母粒子C9)及び外添トナー(トナーC2〜トナーC9)を作製した(実施例2−2〜2−4及び比較例2−1〜2−5)。比較例2−2に関しては、凝集温度を91℃とした。
【0117】
<トナーの凝集性の評価>
トナーの凝集合一が不適切・不十分である場合、同時に粒子内部に配合させる顔料や疎水性度の高い離型剤(ワックス)が粒子外に出てしまったり、凝集したりする。
(着色剤及び離型剤分散性の評価)
実施例2−1〜2−4及び比較例2−1〜2−5で得られた各トナー母粒子(トナー母粒子C1〜トナー母粒子C9)について、クライオにて超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:着色剤、離型剤の一次粒子径程度まで細かく、且つ、トナー内部に万遍なくに分散しており、非常に良いレベル。
○:わずかな着色剤や離型剤の凝集が確認されるものの、トナー内部の偏在はなくとトナーの着色剤、離型剤分散としては問題無いレベル。
△:着色剤、離型剤の凝集及び偏在が確認されるが実用には耐え得るレベル。
×:大きな着色剤、離型剤の凝集がトナーの粒子中に観察され、しかもトナー表面に局在化してしまう為、実用上使用に耐えない状態。
【0118】
<文書の低温定着性評価>
トナー母粒子(トナーC1〜トナーC9)それぞれに外添剤としてチタニア粉末をトナー100重量部に対して1.2重量部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して静電荷像現像トナーを得た。ついで、これらトナーそれぞれ5重量部とジメチルシリコーン樹脂(SR2410、東レ−ダウコーニングシリコーン社製)で1.5%被覆されたフェライト粒子(体積平均粒子径35μm)100重量部を混合して二成分現像剤を調製し、これをFuji Xerox社製Docu Centre Color500を用いて画像出しを行い、未定着画像を得た。
ついで、ベルトニップ方式の外部定着機を用いて、定着温度を90℃から220℃の間で段階的に上昇させながら画像の最低定着温度、ホットオフセット性を評価した。なお、低温定着性は、未定着のソリッド画像(25mm×25mm)を定着した後、これを折り曲げた後、250g/cm2の荷重を10秒間かけ、戻した後、折り曲げた部分の画像欠損度合いグレード付けし、画像欠陥の最大幅が0.5mm以下となる定着温度を最低定着温度として、低温定着性の指標とした。
【0119】
<文書の耐熱保存性評価>
ドキュメント耐熱保存性の評価については、上記定着評価の際に作成した未定着像2枚を、外部定着機で150℃にて定着した後、画像部と、非画像部及び画像部とが重なるように向かい合わせて重ね、重ねた部分に対して80g/cm2相当になるように重りを載せ、60℃、湿度50%の恒温恒湿槽で3日間放置した。放置後、重ねた2枚の定着像の画像欠損度合いを以下に示す「G1」〜「G5」の5段階でグレード付けした。
G1:互いの画像部が接着した為、画像が定着されている紙ごと剥がれて、画像欠損が激しく、また非画像部へ明らかな画像の移行が見られる。
G2:画像同士が接着していた為、画像部のところどころに画像欠損の白抜けが発生している。
G3:重ねた2枚の画像を離す際、互いの定着表面に画像のあれやグロス低下は発生するが、画像としては画像欠損は殆どなく許容できるレベル。非画像部に若干の移行が見られる。
G4:重ねた2枚の画像を離す時に、非画像部にわずかに画像移行が見られるが、画像欠損はなく、全く問題無いレベル
G5:画像部、非画像ともに全く画像欠損や画像移行が見られない。
【0120】
<帯電安定性評価>
Fuji Xerox社製Docu Centre Color500の現像機に前記各現像剤を収容して、高温高湿環境(30℃、90%RH)、低温低湿環境(5℃、10%RH)で各々長期使用テストを実施し、帯電量の推移を評価した。
各評価項目の判断基準は以下の通りとした。
(帯電維持性)
高温高湿、低温低湿環境下において、帯電変化量を同一環境での初期帯電量から4万枚プリント後の帯電量を引いた絶対値を求め、両環境での帯電変化量の値のうち、大きい方の値が3μC/g未満を○、3〜7μC/gの範囲を△、7μC/gより大きい場合を×として判定を行った。
結果を下記の表に示す。
【0121】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカルボン酸とポリオールの重縮合反応により得られる静電荷像現像トナー用結着樹脂であって、
該ポリオールの10mol%以上95mol%以下が式(1)で表される化合物よりなり、かつ
該ポリオールの5mol%以上90mol%以下が式(2)で表される化合物よりなることを特徴とする
静電荷像現像トナー用結着樹脂。
HOX1h−Ph−Y−Ph−X1'kOH (1)
(X1、X1':アルキレンオキシド基、Y:C(CH32又はSO2、1≦h≦3、1≦k≦3)
【化1】

(X2、X2':アルキレン基、R1〜R4:水素原子又は1価の置換基、R5、R6:1価の置換基、1≦m≦3、1≦n≦3、0≦p≦4、0≦q≦4)
【請求項2】
該ポリカルボン酸の50mol%以上100mol%以下が式(3)及び/又は式(4)で表される化合物よりなる、請求項1に記載の静電荷像現像トナー用結着樹脂。
1OOCA1m1n1'lCOOQ1' (3)
(A1、A1'メチレン基、B1:芳香族炭化水素基、Q1、Q1':水素原子又は1価の炭化水素基、1≦m+l≦12、1≦n≦3)
2OOCA2p2q2'rCOOQ2' (4)
(A2、A2':メチレン基、B2:脂環式炭化水素基、Q2、Q2':水素原子又は1価の炭化水素基、0≦p≦6、0≦r≦6、1≦q≦3)
【請求項3】
請求項1又は2に記載の静電荷像現像トナー用結着樹脂を分散した静電荷像現像トナー用結着樹脂分散液。
【請求項4】
少なくとも結着樹脂分散液を含む分散液中で該結着樹脂を凝集して凝集粒子を得る工程、及び、
該凝集粒子を加熱して融合させる工程
を含む静電荷像現像トナーの製造方法であって、
前記結着樹脂分散液が請求項3に記載の静電荷像現像トナー用結着樹脂分散液であることを特徴とする
静電荷像現像トナーの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法により製造された静電荷像現像トナー。
【請求項6】
請求項1に記載の静電荷像現像トナー用結着樹脂を混練粉砕して作製した静電荷像現像トナー。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の静電荷像現像トナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤。
【請求項8】
潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、
前記潜像保持体表面に形成された静電潜像をトナー又は静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記潜像保持体表面に形成されたトナー像を被記録体表面に転写する工程と、
前記被被記録体表面に転写されたトナー像を熱定着する定着工程と
を含む画像形成方法であって、
前記トナーとして請求項5又は6に記載の静電荷像現像トナー、又は、前記現像剤として請求項7に記載の静電荷像現像剤を用いることを特徴とする
画像形成方法。

【公開番号】特開2007−310257(P2007−310257A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141058(P2006−141058)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】