説明

静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、画像形成方法及び画像形成装置

【課題】得られる画像の発色性に優れ、かつ、高い発色保持性を有する静電荷像現像用トナーを提供すること。
【解決手段】結着樹脂、及び、着色剤を含有し、更に、(A)ユーロピウム、及び、(B)ビスマスを含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。蛍光X線分析により測定されたユーロピウムのトナー中における含有量が0.2重量%以上7.0重量%以下であり、蛍光X線分析により測定されたビスマスのトナー中における含有量が0.02重量%以上0.7重量%以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、画像形成方法及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法など、静電荷像を経て画像情報を可視化する方法は、現在さまざまな分野で利用されている。
従来電子写真法においては、感光体や静電記録体上に種々の手段を用いて静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーと呼ばれる検電性粒子を付着させて静電潜像(トナー像)を現像し、被転写体表面に転写し、加熱等により定着する、という複数の工程を経て、可視化する方法が一般的に使用されている。
【0003】
近年、複写機やプリンターなどにおいてもカラー化が図られており、色再現性に優れたカラートナーが求められている。
特許文献1には、高い色再現性等を目的として、少なくとも結着樹脂及びマゼンタ着色剤を含有するマゼンタトナー粒子よりなる静電荷像現像用マゼンタトナーであって、前記マゼンタトナー粒子が、波長380〜500nmの領域に蛍光スペクトルのピークを有する色調調整剤を少なくとも1種含有するものであることを特徴とする静電荷像現像用マゼンタトナーが開示されている。
また、特許文献2には、ランタニドイオンと配位子とを含むランタニド錯体を含む、少なくとも1つの蛍光剤と、随意のワックスとを含むことを特徴とするトナーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−287239号公報
【特許文献2】特開2009−205157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、得られる画像の発色性に優れ、かつ、高い発色保持性を有する静電荷像現像用トナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、以下の<1>及び<10>〜<14>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<9>とともに以下に記載する。
<1> 結着樹脂、及び、着色剤を含有し、更に、(A)ユーロピウム、及び、(B)ビスマスを含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー、
<2> 蛍光X線分析により測定されたユーロピウムのトナー中における含有量が0.2重量%以上7.0重量%以下であり、蛍光X線分析により測定されたビスマスのトナー中における含有量が0.02重量%以上0.7重量%以下である、<1>に記載の静電荷像現像用トナー、
<3> 蛍光X線分析により測定されたユーロピウムのトナー中における含有量をA(重量%)、蛍光X線分析により測定されたビスマスのトナー中における含有量をB(重量%)としたとき、A/Bが3以上20以下である、<1>又は<2>に記載の静電荷像現像用トナー、
<4> 体積平均粒径Dvが2μm以上20μm以下である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、
<5> 前記結着樹脂がポリエステル樹脂を含有する、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、
<6> (C)スズ及び/又はチタンを更に含有する、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、
<7> 蛍光X線分析により測定されたユーロピウムのトナー中における含有量をA(重量%)、透過型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分析にて測定されたトナー断面における前記スズ及び/又はチタンの含有量をC(重量%)としたとき、A/Cが3以上20以下である、<6>に記載の静電荷像現像用トナー、
<8> YVO4:Eu,Bi錯体、Y23:Eu,Bi錯体、及び、Y22S:Eu,Bi錯体よりなる群から選択された錯体を含有する、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、
<9> 前記着色剤がマゼンタ着色剤である、<1>〜<8>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、
<10> 結着樹脂、着色剤、及び、ユーロピウムとビスマスとを含む化合物を含むトナー形成材料を混錬する混錬工程、混錬工程により形成された混錬物を冷却する冷却工程、冷却工程により冷却された混錬物を粉砕する粉砕工程、並びに、粉砕工程により粉砕された混錬物を分級する分級工程を有することを特徴とする、<1>〜<9>のいずれか1つに記載の静電荷現像用トナーの製造方法、
<11> <1>〜<9>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、及び、キャリアを含むことを特徴とする静電荷像現像剤、
<12> 画像形成装置に着脱可能であり、<1>〜<9>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーを収容することを特徴とするトナーカートリッジ、
<13> 像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程、前記像保持体表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像工程、前記トナー像を被転写体表面に転写する転写工程、及び、前記被転写体表面に転写されたトナー像を定着する定着工程、を含み、前記トナーが<1>〜<9>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーであることを特徴とする画像形成方法、
<14> 像保持体と、前記像保持体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記像保持体を露光して前記像保持体表面に静電潜像を形成させる露光手段と、トナーにより前記静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、前記トナー像を前記像保持体から被転写体表面に転写する転写手段と、前記被転写体表面に転写されたトナー像を定着する定着手段と、を有し、前記トナーが<1>〜<9>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーであることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0007】
上記<1>に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比して、得られる画像の発色性に優れ、かつ、高い発色保持性を有する静電荷像現像用トナーが提供される。
上記<2>に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比して、より得られる画像の発色性に優れ、かつ、高い発色保持性を有する静電荷像現像用トナーが提供される。
上記<3>に記載の発明によれば、A/Bが3未満、又は、20を超える場合に比して、より得られる画像の発色性に優れ、かつ、高い発色保持性を有する静電荷像現像用トナーが提供される。
上記<4>に記載の発明によれば、体積平均粒径Dvが2μm未満、又は、20μmを超える場合に比して、より得られる画像が高い発色保持性に有する静電荷像現像用トナーが提供される。
上記<5>に記載の発明によれば、結着樹脂がポリエステル樹脂を含有しない場合に比して、より得られる画像が高い発色保持性に有する静電荷像現像用トナーが提供される。
上記<6>に記載の発明によれば、スズ及びチタンを含有しない場合に比して、より得られる画像の発色性に優れ、かつ、高い発色保持性を有する静電荷像現像用トナーが提供される。
上記<7>に記載の発明によれば、A/Cが3未満又は20を超える場合に比して、より得られる画像の発色性に優れ、かつ、高い発色保持性を有する静電荷像現像用トナーが提供される。
上記<8>に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比して、より得られる画像の発色性に優れ、かつ、高い発色保持性を有する静電荷像現像用トナーが提供される。
上記<9>に記載の発明によれば、着色剤がマゼンタ着色剤ではない場合に比して、より得られる画像の発色性に優れ、かつ、高い発色保持性を有する静電荷像現像用トナーが提供される。
上記<10>に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比して、より容易に静電荷像現像用トナーが製造される。
上記<11>に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比して、得られる画像の発色性に優れ、かつ、高い発色保持性を有する静電荷像現像剤が提供される。
上記<12>に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比して、得られる画像の発色性に優れ、かつ、高い発色保持性を有するトナーカートリッジが提供される。
上記<13>に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比して、得られる画像の発色性に優れ、かつ、高い発色保持性を有する画像形成方法が提供される。
上記<14>に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比して、得られる画像の発色性に優れ、かつ、高い発色保持性を有する画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態の静電荷像現像用トナーの製造に好適に用いられるスクリュー押出機の一例について、スクリューの状態を説明する図である。
【図2】本実施形態に好適に使用される画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】本実施形態に好適に使用されるプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(静電荷像現像用トナー)
本実施形態の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)は、結着樹脂、及び、着色剤を含有し、更に、(A)ユーロピウム、及び、(B)ビスマスを含有することを特徴とする。
なお、本実施形態において、「X〜Y」との記載は、XからYの間の範囲だけでなく、その両端であるX及びYも含む範囲を表す。例えば、「X〜Y」が数値範囲であれば、数値の大小に応じて「X以上Y以下」又は「X以上Y以下」を表す。
【0010】
従来、画像の色再現域を広げるために、特許文献1及び2に記載されているように、蛍光剤を内添させたトナーが開発されていた。しかし、特許文献1で使用されているクマリン誘導体等は、発光寿命が短く、発色の保持性が不十分であった。また、特許文献2で使用されているランタニド錯体は、クマリン誘導体に比べて発光寿命は長いものの、発色性が不十分である。
本発明者等は鋭意検討した結果、トナー中に特定の元素を含有させることによって、発色性に優れ、かつ、高い発色保持性を有する静電荷像現像用トナーが得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
そのメカニズムについては必ずしも明確ではないものの、以下のような機構が作用しているものと推測される。すなわち、通常、マゼンタトナーに使用される着色剤は、紫外波長の光に弱く、褪色が生じる。ユーロピウムを含有することにより、これらの元素は紫外波長の光を吸収して発光することから、着色剤の発色が長期にわたり維持されると考えられる。一方、ユーロピウムは、可視光領域の光に対し、褪色の問題を有する。本実施形態では、ビスマスを適度に添加することにより、これらの可視光領域の光を反射し、ユーロピウムへの可視光の到達を阻害することで、ユーロピウムの安定性が向上すると考えられる。
また、ユーロピウムは紫外波長の光により発光することから、ビスマスによる発光の阻害は問題とならない。更に、ユーロピウム等が発光する光をビスマスが反射することにより、発光輝度が増幅され、発色性の向上に繋がることが想定される。
【0012】
なお、実施形態において、発色性とは、「アウトプットイメージにおける色再現性を示し、ここでは松葉印刷用ジャパンカラー標準印刷のパッチをコピーした画像が元のパッチに対して近い値(ΔE)を示すほど高発色、高色域、色再現性が高いこと。」を意味し、高発色保持性とは、「形成画像が示す発色度合いをいかに保つことができるかを示す。ここでは松葉印刷用ジャパンカラー標準印刷のパッチをコピーした画像を、高強度の白色ランプ下で10日間放置した後のΔEが元のコピー画像のΔEに近い値を示すほど発色保持性が高いこと。」を意味する。
以下、トナーを構成する各成分について詳述する。
【0013】
<(A)ユーロピウム、及び、(B)ビスマス>
本実施形態のトナーは、(A)ユーロピウム(以下、元素Aともいう。)、及び、(B)ビスマス(以下、元素Bともいう。)を含有することを必須とする。
【0014】
蛍光X線分析により測定された元素Aのトナー中の含有量をA(重量%)としたとき、Aは0.2重量%以上7.0重量%以下であることが好ましい。元素Aのトナー中の含有量(A)が0.2重量%以上であると、得られる画像の発色性に優れ、かつ、高い発色保持性を有するので好ましい。また、7.0重量%以下であると、トナーの形成が容易である。
前記Aは0.7〜1.5重量%であることがより好ましく、1.0〜1.2重量%であることが更に好ましい。前記Aが上記範囲内であると、より得られる画像の発色性に優れ、かつ、高い発色保持性を有する。更に、トナーの形成がより容易である。
【0015】
蛍光X線分析により測定された元素Bのトナー中の含有量をB(重量%)としたとき、Bは0.02重量%以上0.7重量%以下であることが好ましい。元素Bのトナー中の含有量(B)が0.02重量%以上であると、得られる画像の発色性に優れ、かつ、高い発色保持性を有するので好ましい。また、0.7重量%以下であると、トナーの形成が容易であるので好ましい。
前記Bは、0.04〜0.4重量%であることがより好ましく、0.06〜0.2重量%であることが更に好ましい。前記Bが上記範囲内であると、より得られる画像の発色性に優れ、かつ、高い発色保持性を有する。更に、トナーの形成がより容易である。
【0016】
蛍光X線分析により測定された元素Aのトナー中の含有量をA(重量%)、元素Bのトナー中の含有量をB(重量%)としたとき、A/Bは3以上20以下であることが好ましい。A/Bが上記範囲内であると、より発色保持性に優れるので好ましい。
前記A/Bは5〜15であることがより好ましく、8〜11であることが更に好ましい。
【0017】
ここで、蛍光X線分析による元素Aのトナー中の含有量A(重量%)、及び、元素Bのトナー中の含有量B(重量%)は、以下の方法により測定される。走査型蛍光X線分析装置(リガク ZSX PrimusII)を用いて、トナー量0.130gのディスクを成型し、X線出力40−70mA、測定面積10mmφ、測定時間15分の条件で、定性定量全元素分析法にて測定し、このデータのEuLα、BiLαの分析値を本実施形態の元素量とする。なお、このピークに他の元素のピークが重なる場合には、ICP発光分光法や、原子吸光法にて、解析した上でユーロピウム分、ビスマス分の分析値を求める。
【0018】
本実施形態のトナーは、元素A及び元素Bを含有すれば、含有の形態は特に限定されないが、元素A及び元素Bを含む錯体を含有することが好ましい。
前記錯体は、元素Aを発光中心(付活剤)とする付活酸化物に、更に元素B(ビスマス)が共付活されている錯体であることが好ましい。元素Aを付活剤とする付活酸化物は、結晶性酸化物母体に元素Aを付活したものである。結晶性酸化物母体として、化学的に安定なものであれば特に限定されず、例えば、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、珪素(Si)、ホウ素(B)、燐(P)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、鉄(Fe)、銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、コバルト(Co)、錫(Sn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、インジウム(In)、ランタン(La)、希土類元素等の各酸化物、複合酸化物を使用することができる。
このような結晶性酸化物母体に付活される元素Aは、発光中心イオンであり、結晶性酸化物母体中の金属イオンの総数に対し、1.0〜20.0atm%の範囲で置換されることが好ましい。元素Aの含有量が上記範囲内であると、十分な発光効率が得られる。より好ましくは、3.0〜10.0atm%であり、更に好ましくは、5.0〜8.0atm%である。
【0019】
元素A及び元素Bを含む錯体は、特に限定されないが、例えば、Y23:A,B、Y(Px、V1-x)O4:A,B、(0≦x<1)、Y22S:A,B、Y2SiO5:A,B、Y3Al512:A,B、YBO3:A,B、YxGdyBO3:A,B(x+y=1)、GdBO3:A,B、ScBO3:A,B、LuBO3:A,B、LaPO4:A,Bが例示される。なお、Aはユーロピウムを表し、Bはビスマスを表す。
これらの中でも、Y23:A,B又はY(Px、V1-x)O4:A,Bが好ましく、下記式(1)で表される錯体が特に好ましい。
YVO4:A,B (1)
【0020】
元素A及び元素Bを含む錯体の製造方法としては特に限定されず、乾式にて合成してもよく、また、湿式にて合成してもよい。
以下に、乾式での製造方法について、Y23:Eu,Biを例に挙げて説明する。Y23、Eu23、Bi23の各原料粉末を所定の組成となるように所定量秤量した後、これらをBaF2等の適当な融剤と共に、ボールミルなどを用いて十分に混合する。そして、この原料混合物をアルミナ坩堝に入れ、大気中にて1,000〜1,600℃程度の温度で1〜6時間程度焼成すると、Eu3+とBi3+が共付活したイットリウム酸化物の蛍光体を得ることができる。
【0021】
また、湿式での製造方法について、YVO4:A,Bを例に挙げて説明する。水の存在下に溶いて、イットリウム化合物及び元素Aを含む化合物を錯形性化合物で溶解して第1の溶液を形成し、バナジウム化合物を水に溶解又は分散させて、第2の溶液又は分散液を形成し、前記第1の溶液及び第2の溶液又は分散液を混合して反応させる方法が例示され、例えば、WO2008/093845パンフレットが参照される。
また、Y23:A,Bの湿式での製造方法としては、アルコール類やそれらのモノメチルエーテル等の溶媒、及び、ポリビニルアルコール等の粒径調整剤の存在下で、イットリウム化合物、元素Aを含む化合物、及び、元素Bを含む化合物を反応させる方法が例示され、例えば、特開2008−189762号公報が参照される。
【0022】
本実施形態において、特にトナーがマゼンタ色を呈することが好ましい。元素Aがユーロピウムであると、紫外光の吸収により発する蛍光が赤色であるため、マゼンタ色の発色性を向上させることができる。また、マゼンタ顔料は紫外光を吸収してしまうため、形成画像における青みの弱さに問題があった。そこで、より紫外光吸収能の高いユーロピウムを含有させることにより、マゼンタ顔料による紫外光吸収を抑えることが可能となり、色鮮やかな画像が形成される。
ユーロピウム及びビスマスを含む錯体としては、Y23:Eu,Bi、YVO4:Eu,Bi、Y22S:Eu,Biが例示され、これらの中でも、Y23:Eu,Bi、YVO4:Eu,Biが好ましく、YVO4:Eu3+,Bi3+がより好ましい。
【0023】
元素A及び元素Bを含む錯体からなる粒子(以下、「錯体粉末」、「錯体粒子」ともいう。)は、その体積平均粒径が5〜2,000nmであることが好ましく、5〜1,000nmであることがより好ましく、5〜500nmであることが更に好ましい。
錯体粉末の体積平均粒径が上記範囲内であると、トナー中での分散性に優れ、粒子の表面積が増えるため、発光効率が増加するので好ましい。
【0024】
<(C)スズ及び/又はチタン>
本実施形態の静電荷像現像用トナーは、上記の(A)ユーロピウム及び(B)ビスマスに加え、(C)スズ及び/又はチタン(以下、元素Cともいう。)を含有することが好ましい。スズ及び/又はチタンをトナー中に含有させることにより、ユーロピウム錯体の発光効率が向上する。
ユーロピウムが紫外光により発光する一方で、トナーを構成する結着樹脂(好ましくはポリエステル樹脂)も紫外領域に光吸収をもつ官能基(炭素−炭素二重結合、炭素−酸素二重結合など)を有するため紫外光を吸収する性質をもつ。このため、トナー組成の多くを占めるポリエステル樹脂が紫外光を吸収することで、ユーロピウム錯体の紫外光による蛍光発光が阻害されてしまう。そこで、スズ及び/又はチタンをポリエステル樹脂中に含有させることにより、ポリエステル樹脂の紫外光吸収が拡散され、これによりユーロピウム錯体は紫外光を効率的に吸収し、蛍光の発光効率増加につながる。
【0025】
蛍光X線分析により測定された、トナー中のユーロピウム含有量をA(重量%)、透過型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分析にて観察されたトナー断面における元素Cの含有量をC(重量%)としたとき、A/Cは3以上20以下であることが好ましい。A/Cが上記範囲内であると、元素Cが均一に樹脂中に分散し、樹脂の紫外光吸収が効果的に阻害される。
前記A/Cは5〜15であることがより好ましく、8〜11であることが更に好ましい。
【0026】
透過型顕微鏡エネルギー分散型X線分析による元素Cのトナー中の含有量C(重量%)は以下の方法により測定される。トナーをエポキシ樹脂に包埋し、クライオスタットにて凍結し、薄膜に切り出したものを透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析(TEM−EDX)を用いて加速電圧10kV、積算時間30分にて観察する。得られたトナー断面観察写真(1万倍)から、画像解析装置にて元素C量を分析する。
【0027】
元素Cは、トナー中にどのような化合物として含有させてもよいが、後述する結着樹脂としてポリエステル樹脂を使用する場合には、ポリエステル樹脂を合成する際の触媒として添加することが好適である。
触媒として好適なスズ含有化合物としては、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジオクチルスズオキシド、モノブチルスズオキシドが例示され、チタン含有化合物としては、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシドが例示される。
【0028】
<結着樹脂>
前記トナーは、結着樹脂を含有する。
結着樹脂としては、本実施形態ではポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂が親水性であるため、トナー形成時に良好に分散し、より均一に近い状態でユーロピウム錯体をトナー母粒子中に取り込むことができるため好ましい。
【0029】
重縮合樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、及び、ポリアミド樹脂等が好ましく例示できるが、特に、重縮合性単量体としてポリカルボン酸とポリオールと含んだものを用いて得られたポリエステル樹脂であることが好ましい。
本実施形態に用いることのできる重縮合性単量体としては、例えば、多価カルボン酸、ポリオール、ヒドロキシカルボン酸、ポリアミン、又は、それらの混合物が挙げられる。特に、重縮合性単量体としては、多価カルボン酸とポリオールと更にはこれらのエステル化合物(オリゴマー及び/又はプレポリマー)であることが好ましく、直接エステル反応、又はエステル交換反応を経て、ポリエステル樹脂を得るものがよい。この場合、重合されるポリエステル樹脂としてはアモルファス(無定形)ポリエステル樹脂(非結晶性ポリエステル樹脂)、結晶性ポリエステル樹脂などのいずれかの形態、又はそれらの混合形態をとることができる。
本実施形態において、重縮合樹脂は、重縮合性単量体、それらのオリゴマー及びプレポリマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種を重縮合して得られるが、これらの中でも重縮合性単量体を使用することが好ましい。
【0030】
多価カルボン酸は、1分子中にカルボキシル基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジカルボン酸は1分子中にカルボキシル基を2個含有する化合物であり、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−カルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、スペリン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレン二酢酸、o−フェニレン二酢酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等を挙げることができる。
また、ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸、イタコン酸、グルタコン酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸等、更にまたこれらの低級エステルなどが挙げられる。更にまた、酸ハロゲン化物、酸無水物もこの限りではない。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、低級エステルとは、エステルのアルコキシ部分の炭素数が1〜8であることを示す。具体的には、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル及びイソブチルエステル等が挙げられる。
【0031】
ポリオールは、1分子中に水酸基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジオールは1分子中に水酸基を2個含有する化合物であり、具体的には例えば、ジオールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,14−エイコサンデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、ポリテトラメチレングリコール、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコール及びビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、及び、これと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。
また、水分散性を容易にするため、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール吉草酸等が例示される。
【0032】
三価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミン、ソルビトール、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、上記三価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、これらの重縮合性単量体の組み合わせにより非結晶性樹脂や結晶性樹脂を容易に得ることができる。
【0033】
結着樹脂に結晶性のポリエステル樹脂を用いる場合、1,9−ノナンジオールと1,10−デカンジカルボン酸、又はシクロヘキサンジオールとアジピン酸とを反応して得られるポリエステル、1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸とを反応して得られるポリエステル、エチレングリコールとコハク酸とを反応して得られるポリエステル、エチレングリコールとセバシン酸とを反応して得られるポリエステル、1,4−ブタンジオールとコハク酸とを反応して得られるポリエステルを挙げることができる。これらの中でも特に1,9−ノナンジオールと1,10−デカンジカルボン酸及び1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸とを反応させて得られるポリエステルなどが更に好ましいがこの限りではない。
【0034】
また、ヒドロキシカルボン酸を用いることもできる。前記ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸、ヒドロキシデカン酸、ヒドロキシウンデカン酸、リンゴ酸、酒石酸、粘液酸、クエン酸等を挙げることができる。
【0035】
また、ポリアミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,4−ブテンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)等を挙げることができる。
【0036】
また、重縮合性単量体を重縮合して得られる重縮合樹脂の重量平均分子量は、1,500以上40,000以下であることが好ましく、3,000以上30,000以下であることがより好ましい。重量平均分子量が1,500以上であると、結着樹脂の凝集力が良好であり、ホットオフセット性に優れ、40,000以下であると、ホットオフセット性に優れ、かつ、最低定着温度が優れた値を示し好ましい。また、単量体のカルボン酸価数、アルコール価数の選択などによって一部枝分かれや架橋などを有していてもよい。
【0037】
また、得られるポリエステル樹脂の酸価は、1mg・KOH/g以上50mg・KOH/g以下であることが好ましい。この第一の理由は、高画質トナーとして実用に供するためには、水系媒体中でのトナーの粒子径、分布の制御が必要不可欠であり、酸価が1mg・KOH/g以上であると、造粒工程において、十分な粒子径及び分布が達成でき、更にトナーに使用した場合、十分な帯電性を得ることができる。また重縮合されるポリエステルの酸価が50mg・KOH/g以下であると、重縮合の際トナーとして画質強度を得るための十分な分子量を得ることができ、また、トナーの高湿度下での帯電性の環境依存も小さく、画像信頼性に優れる。
【0038】
非結晶性ポリエステル樹脂を使用する場合、該非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは、50〜80℃であることが好ましく、50〜65℃であることがより好ましい。Tgが50℃以上であると、高温度域での結着樹脂自体の凝集力が良好であるため、定着の際にホットオフセット性に優れる。また、Tgが80℃以下であると、十分な溶融が得られ、最低定着温度が上昇しにくい。
結着樹脂のガラス転移温度は、ASTM D3418−82に規定された方法(DSC法)で測定した値をいう。
【0039】
付加重合型樹脂の作製に使用する付加重合性単量体としては、カチオン重合性単量体及びラジカル重合性単量体が挙げられるが、ラジカル重合性単量体であることが好ましい。
ラジカル重合性単量体としては、スチレン系単量体類、不飽和カルボン酸類、(メタ)アクリレート類(なお、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味するものとし、以下も同様とする。)、N−ビニル化合物類、ビニルエステル類、ハロゲン化ビニル化合物類、N−置換不飽和アミド類、共役ジエン類、多官能ビニル化合物類、多官能(メタ)アクリレート類等が挙げられる。なお、これらの中で、N−置換不飽和アミド類、共役ジエン類、多官能ビニル化合物類、及び、多官能(メタ)アクリレート類等は、生成された重合体に架橋反応を生起させることもできる。これらを、単独で、あるいは組み合わせて使用できる。
【0040】
本実施形態に用いることができる付加重合性単量体としては、ラジカル重合性単量体、カチオン重合性単量体、又は、アニオン重合性単量体が挙げられ、ラジカル重合性単量体であることが好ましい。
ラジカル重合性単量体としては、エチレン性不飽和結合を有する化合物であることが好ましく、芳香族エチレン性不飽和化合物(以下、「ビニル芳香族」ともいう。)、エチレン性不飽和結合を有するカルボン酸(不飽和カルボン酸)、エステルやアルデヒド、ニトリル若しくはアミドなどの不飽和カルボン酸の誘導体、N−ビニル化合物、ビニルエステル類、ハロゲン化ビニル化合物、N−置換不飽和アミド、共役ジエン、多官能ビニル化合物、又は、多官能(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
【0041】
具体的には、例えば、スチレン、p−ビニルピリジン等の無置換ビニル芳香族類、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン等のα−置換スチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン等の芳香核置換スチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、ジブロモスチレン等の芳香核ハロゲン置換スチレン等のビニル芳香族類、(メタ)アクリル酸(なお、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味するものとし、以下も同様とする。)、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸エステル類、(メタ)アクリルアルデヒド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等の不飽和カルボン酸誘導体類、N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル化合物類、N−メチロールアクリルアミド、N−エチロールアクリルアミド、N−プロパノールアクリルアミド、N−メチロールマレインアミド酸、N−メチロールマレインアミド酸エステル、N−メチロールマレイミド、N−エチロールマレイミド等のN−置換不飽和アミド類、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルシクロヘキサン等の多官能ビニル化合物類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレート類等が挙げられる。また、エチレン性不飽和結合を有するスルホン酸やホスホン酸、及び、それらの誘導体も用いることができる。なお、これらの中で、N−置換不飽和アミド類、共役ジエン類、多官能ビニル化合物類、及び、多官能アクリレート類等は、生成された重合体に架橋反応を生起させることもできる。また、これら付加重合性単量体を、1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
また、本実施形態のトナーにおける結着樹脂の含有量は、トナーの全重量に対し、10〜90重量%であることが好ましく、30〜85重量%であることがより好ましく、50〜80重量%であることが更に好ましい。
【0043】
<着色剤>
本実施形態において、トナーは着色剤を含有する。
着色剤としては、公知のものを用いることができ、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透過性、トナー中での分散性の観点から任意に選択すればよい。
具体的には、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デイポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドCローズベンガル、などの種々の顔料や、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、チオインジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアジン系、チアゾール系、キサンテン系などの各種染料などが例示できる。
【0044】
また、前記着色剤として、具体的には、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、アニリンブルー(C.I.No.50405)、カルコオイルブルー(C.I.No.azoic Blue3)、クロムイエロー(C.I.No.14090)、ウルトラマリンブルー(C.I.No.77103)、デュポンオイルレッド(C.I.No.26105)、キノリンイエロー(C.I.No.47005)、メチレンブルークロライド(C.I.No.52015)、フタロシアニンブルー(C.I.No.74160)、マラカイトグリーンオクサレート(C.I.No.42000)、ランプブラック(C.I.No.77266)、ローズベンガル(C.I.No.45435)、これらの混合物などを好ましく用いることができる。
【0045】
なお、本実施形態において、着色剤としては、マゼンタ着色剤を含有することが好ましい。
【0046】
着色剤の使用量は、トナー100重量部に対して、0.1〜20重量部であることが好ましく、0.5〜10重量部であることがより好ましい。また、着色剤として、これらの顔料や染料等を1種単独で使用する、又は、2種以上を併せて使用することができる。
着色剤の分散方法としては、任意の方法、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的な分散方法を使用することができ、何ら制限されるものではない。また、これらの着色剤粒子は、その他の粒子成分と共に混合溶媒中に一度に添加してもよいし、分割して多段階で添加してもよい。
【0047】
<離型剤>
本実施形態の静電荷像現像用トナーは、離型剤を含有することが好ましい。
離型剤の具体例としては、例えば、エステルワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリエチレンとポリプロピレンの共重合物が望ましいが、ポリグリセリンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックス、脱酸カルナバワックス、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、ブランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベフェニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコール類などの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどの、不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0048】
前記離型剤は、1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。結着樹脂100重量%に対して、1〜20重量%の範囲で含有することが好ましく、3〜15重量%の範囲で含有することがより好ましい。上記範囲であると、良好な定着及び画質特性の両立が可能である。
【0049】
<その他の成分>
トナーには、上記成分以外にも、更に必要に応じて内添剤、帯電制御剤、無機粉体(無機粒子)、有機粒子等の種々の成分を添加してもよい。
内添剤としては、例えば、フェライト、マグネタイト、還元鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属、合金、又はこれら金属を含む化合物などの磁性体等が挙げられる。上記磁性体等を含有させて磁性トナーとして用いる場合、これらの強磁性体は平均粒子が2μm以下が望ましく、0.1〜0.5μm程度のものがより望ましい。トナー中に含有させる量としては樹脂成分100重量部に対し20〜200重量部が好ましく、特に樹脂成分100重量部に対し40〜150重量部が好ましい。また、10Kエルステッド印加での磁気特性が保磁力(Hc)が20〜300エルステッド、飽和磁化(σs)が50〜200emu/g、残留磁化(σr)が2〜20emu/gのものが好ましい。
【0050】
帯電制御剤としては、例えば4フッ素系界面活性剤、サリチル酸金属錯体、アゾ系金属化合物の様な含金属染料、マレイン酸を単量体成分として含む重合体の如き高分子酸、四級アンモニウム塩、ニグロシン等のアジン系染料等が挙げられる。
【0051】
トナーは、粘弾性調整を目的として、無機粉体を含んでもよい。無機粉体としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、燐酸カルシウム、酸化セリウム等の下記に詳細に列挙する、通常トナー表面の外添剤として使用されるすべての無機粒子が挙げられる。
【0052】
<外添剤>
トナーは、必要に応じて外添剤が表面に外添されていてもよい。表面に外添される外添剤としては、無機粒子や有機粒子が挙げられ、具体的には以下に挙げられたものの他、後述するトナーの製造方法において用いられる外添剤も含まれる。
無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、塩化セリウム、ベンガラ、酸化クロム、酸化セリウム、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。
無機粒子は、一般に流動性を向上させる目的で使用される。前記無機粒子の1次粒径としては、1〜200nmの範囲が望ましく、その添加量としては、トナー100重量部に対して、0.01〜20重量部の範囲が好ましい。
【0053】
有機粒子は、一般にクリーニング性や転写性を向上させる目的で使用され、具体的には例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂粉末、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0054】
上記外添剤の中でも、流動性や帯電特性を良好にする観点から、チタニアやシリカ等の無機酸化物を用いることが好ましい。特に無機酸化物のトナー構成材料に対する親和性に差がある場合(例えば、離型剤に対する親和性と結着樹脂に対する親和性との差が大きい場合)には、トナー表面に露出した離型剤又は結晶性樹脂の量が多いと、トナー表面において外添剤が偏在しやすくなる場合がある。しかし、本実施形態のトナーでは、上記の通り、トナー表面における離型剤及び結晶性樹脂の露出が抑制されているため、上記外添剤の偏在も抑制される。
上記外添剤の偏在が特に起こりやすい無機酸化物(トナー構成材料に対する親和性に差がある無機酸化物)としては、具体的には、例えば、チタニアもしくはシリカの未処理品、又はチタニアもしくはシリカのシランカップリング剤もしくはシリコンオイル等による処理品等が挙げられるが、特に一次粒径が30nmを越える無機酸化物が特に偏在を起こしやすい。
無機酸化物の外添量は、外添前のトナー粒子100重量部に対し、無機酸化物1種類あたり0.1重量部以上5重量部以下が好ましい。外添量が0.1重量部より少ないと、外添剤の流動性及び帯電性向上の機能が十分発揮されない場合がある。また外添量が5重量部より多いと、特に外添剤がチタニアである場合、十分な帯電性が付与されない場合がある。
【0055】
<トナーの物性>
本実施形態のトナーの体積平均粒径(D50v)は、2μm以上20μm以下が好ましく、3μm以上15μm以下がより好ましく、3μm以上12μm以下が更に好ましい。
また、本実施形態のトナーにおけるトナー母粒子の体積平均粒径(D50v)は、2μm以上20μm以下が好ましく、3μm以上15μm以下がより好ましく、3μm以上12μm以下が更に好ましい。
トナーの粒度分布としては狭いほうが好ましく、より具体的にはトナーの個数粒径の小さい方から換算して16%径(D16p)と84%径(D84p)の比を平方根として示したもの(GSDp)、すなわち、下式で表されるGSDpが1.40以下であることが好ましく、1.31以下であることがより好ましく、1.27以下であることが特に好ましい。また、GSDpは1.15以上であることが好ましい。
GSDp={(D84p)/(D16p)}0.5
体積平均粒径、GSDpともに上記範囲であれば、極端に小さな粒子が存在しないため、小粒径トナーの帯電量が過剰になることによる現像性の低下を抑制できる。
【0056】
トナー等の粒子の平均粒径測定には、コールターマルチサイザーII型(ベックマン・コールター社製)を用いることができる。この場合、粒子の粒径レベルにより、最適なアパーチャーを用いて測定することができる。測定した粒子の粒径は体積平均粒径で表す。
粒子の粒径がおよそ5μm以下の場合は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(LA−700、(株)堀場製作所製)を用いて測定することができる。
更に、粒径がナノメーターオーダーの場合は、BET式の比表面積測定装置(Flow SorbII2300、(株)島津製作所製)を用いて測定することができる。
【0057】
本実施形態において、トナーの形状係数SF1は、110以上145以下の範囲が好ましく、120以上140以下の範囲がより好ましい。
形状係数SF1は、粒子表面の凹凸の度合いを示す形状係数であり、以下の式により算出される。
【0058】
【数1】

【0059】
式中、MLは粒子の最大長を示し、Aは粒子の投影面積を示す。
SF1の具体的な測定方法としては、例えば、まずスライドグラス上に散布したトナーの光学顕微鏡像を、ビデオカメラを通じて画像解析装置に取り込み、50個のトナーについてSF1を計算し、平均値を求める方法が挙げられる。
【0060】
<トナーの作製方法>
本実施形態のトナーの製造方法は特に限定されず、公知である混練粉砕法等の乾式法や、乳化凝集法や懸濁重合法等の湿式法等によってトナー粒子を作製し、必要に応じてトナー粒子に外添剤を外添する。これらの方法の中でも、混練粉砕法が好ましい。
【0061】
混練粉砕法は、着色剤及び結着樹脂を含むトナー形成材料を混錬して混錬物を得た後、前記混錬物を粉砕することによりトナー粒子を作製する方法である。混練粉砕法でトナー粒子を作製し、トナーを得ることで、錯体粉末が良好に分散され、高発色保持性が向上する。
混練粉砕法は、より詳細には、着色剤及び結着樹脂を含むトナー形成材料を混錬する混錬工程と、前記混錬物を粉砕する粉砕工程とに分けられる。必要に応じて、混錬工程により形成された混錬物を冷却する冷却工程等、他の工程を有してもよい。
各工程について詳しく説明する。
【0062】
[混錬工程]
混錬工程は、着色剤及び結着樹脂を含むトナー形成材料を混錬する工程である。
混錬工程においては、トナー形成材料100重量部に対し、0.5重量部以上5重量部以下の水系媒体(例えば、蒸留水やイオン交換水等の水、アルコール類等)を添加することが望ましい。
【0063】
混錬工程に用いられる混錬機としては、例えば、1軸押出し機、2軸押出し機等が挙げられる。以下、混錬機の一例として、送りスクリュー部と2箇所のニーディング部とを有する混錬機について図を用いて説明するが、これに限られるわけではない。
【0064】
図1は、本実施形態のトナーの製造方法における混錬工程で用いるスクリュー押出機の一例について、スクリューの状態を説明する図である。
スクリュー押出し機11は、スクリュー(図示せず)を備えたバレル12と、バレル12にトナーの原料であるトナー形成材料を注入する注入口14と、バレル12中のトナー形成材料に水系媒体を添加するための液体添加口16と、バレル12中でトナー形成材料が混錬されて形成された混錬物を排出する排出口18と、から構成されている。
バレル12は、注入口14に近いほうから順に、注入口14から注入されたトナー形成材料をニーディング部NAに輸送する送りスクリュー部SA、トナー形成材料を第1の混錬工程により溶融混錬するためのニーディング部NA、ニーディング部NAにおいて溶融混錬されたトナー形成材料をニーディング部NBに輸送する送りスクリュー部SB、トナー形成材料を第2の混錬工程により溶融混錬し混錬物を形成するニーディング部NB、及び形成された混錬物を排出口18に輸送する送りスクリュー部SCに分かれている。
【0065】
またバレル12の内部には、ブロックごとに異なる温度制御手段(図示せず)が備えられている。すなわち、ブロック12Aからブロック12Jまで、それぞれ異なる温度に制御してもよい構成となっている。なお図1は、ブロック12A及びブロック12Bの温度をt0℃に、ブロック12Cからブロック12Eの温度をt1℃に、ブロック12Fからブロック12Jの温度をt2℃に、それぞれ制御している状態を示している。そのため、ニーディング部NAのトナー形成材料はt1℃に加熱され、ニーディング部NBのトナー形成材料はt2℃に加熱される。
【0066】
結着樹脂、着色剤、及び必要に応じて離型剤等を含むトナー形成材料を、注入口14からバレル12へ供給すると、送りスクリュー部SAによりニーディング部NAへトナー形成材料が送られる。このとき、ブロック12Cの温度がt1℃に設定されているため、トナー形成材料は加熱されて溶融状態へと変化した状態で、ニーディング部NAに送り込まれる。そして、ブロック12D及びブロック12Eの温度もt1℃に設定されているため、ニーディング部NAではt1℃の温度でトナー形成材料が溶融混錬される。結着樹脂及び離型剤は、ニーディング部NAにおいて溶融状態となり、スクリューによりせん断を受ける。
【0067】
次に、ニーディング部NAにおける混錬を経たトナー形成材料は、送りスクリュー部SBによりニーディング部NBへと送られる。
ついで、送りスクリュー部SBにおいて、液体添加口16からバレル12に水系媒体を注入することにより、トナー形成材料に水系媒体を添加する。また図1では、送りスクリュー部SBにおいて水系媒体を注入する形態を示しているが、これに限られず、ニーディング部NBにおいて水系媒体が注入されてもよく、送りスクリュー部SB及びニーディング部NBの両方において水系媒体が注入されてもよい。すなわち、水系媒体を注入する位置及び注入箇所は、必要に応じて選択される。
【0068】
上記のように、液体添加口16からバレル12に水系媒体が注入されることにより、バレル12中のトナー形成材料と水系媒体とが混合し、水系媒体の蒸発潜熱によりトナー形成材料が冷却され、トナー形成材料の温度が適切に保たれる。
最後に、ニーディング部NBにより溶融混錬されて形成された混錬物は、送りスクリュー部SCにより排出口18に輸送され、排出口18から排出される。
以上のようにして、図1に示したスクリュー押出機11を用いた混錬工程が行われる。
【0069】
[冷却工程]
冷却工程は、上記混錬工程において形成された混錬物を冷却する工程であり、冷却工程では、混錬工程終了の際における混錬物の温度から4℃/sec以上の平均降温速度で40℃以下まで冷却することが好ましい。混錬物の冷却速度が遅い場合、混錬工程において結着樹脂中に細かく分散された混合物(着色剤と、必要に応じてトナー粒子内に内添される離型剤等の内添剤との混合物)が再結晶化し、分散径が大きくなる場合がある。一方、上記平均降温速度で急冷すると、混錬工程終了直後の分散状態がそのまま保たれるため好ましい。なお上記平均降温速度とは、混錬工程終了の際における混錬物の温度(例えば図1のスクリュー押出し機11を用いた場合は、t2℃)から40℃まで降温させる速度の平均値をいう。
冷却工程における冷却方法としては、具体的には、例えば、冷水又はブラインを循環させた圧延ロール及び挟み込み式冷却ベルト等を用いる方法が挙げられる。なお、前記方法により冷却を行う場合、その冷却速度は、圧延ロールの速度、ブラインの流量、混錬物の供給量、混錬物の圧延時のスラブ厚等で決定される。スラブ厚は、1〜3mmの薄さであることが好ましい。
【0070】
[粉砕工程]
冷却工程により冷却された混錬物は、粉砕工程により粉砕され、トナー粒子が形成される。粉砕工程では、例えば、機械式粉砕機、ジェット式粉砕機等が使用される。
【0071】
[分級工程]
粉砕工程により得られたトナー粒子は、必要に応じて、目的とする範囲の体積平均粒子径のトナー粒子を得るため、分級工程により分級を行ってもよい。分級工程においては、従来から使用されている遠心式分級機、慣性式分級機等が使用され、微粉(目的とする範囲の粒径よりも小さいトナー粒子)及び粗粉(目的とする範囲の粒径よりも大きいトナー粒子)が除去される。
【0072】
[外添工程]
得られたトナー粒子は、帯電調整、流動性付与、電荷交換性付与等を目的として、既述の特定シリカ、チタニア、酸化アルミに代表される無機粒子を添加付着してもよい。これらは、例えばV型ブレンダーやヘンシェルミキサー、レディゲミキサー等によって行われ、段階を分けて付着される。
【0073】
[篩分工程]
上記外添工程の後に、必要に応じて篩分工程を設けてもよい。篩分方法としては、具体的には、例えば、ジャイロシフター、振動篩分機、風力篩分機等が挙げられる。篩分することにより、外添剤の粗粉等が取り除かれ、筋の発生、ぼた汚れなどが抑制される。
【0074】
(静電荷像現像剤)
本実施形態の静電荷像現像剤(以下、「現像剤」という場合がある。)は、上記本実施形態のトナーを含有するものであれば特に制限はなく、トナーを単独で用いる一成分系の現像剤であってもよく、トナーとキャリアとを含む二成分系の現像剤であってもよい。なお、一成分系の現像剤の場合には、磁性金属粒子を含むトナーであっても磁性金属粒子を含まない非磁性一成分トナーであっても構わない。
【0075】
キャリアは、公知のキャリアであれば特に制限されるものではなく、鉄粉系キャリア、フェライト系キャリア、表面コートフェライトキャリア等が使用される。また、それぞれの表面添加粉末は所望の表面処理を施して用いてもよい。
【0076】
キャリアの具体例としては、以下の樹脂被覆キャリアが挙げられる。キャリアの核体粒子としては、通常の鉄粉、フェライト、マグネタイト造型物などが挙げられ、その体積平均粒径は、30〜200μmであることが好ましい。
【0077】
また、上記樹脂被覆キャリアの被覆樹脂としては、例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のα−メチレン脂肪酸モノカルボン酸類;ジメチルアミノエチルメタクリレート等の含窒素アクリル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のビニルピリジン類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;弗化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン等のビニル系フッ素含有モノマー;などの単独重合体、又は2種類以上のモノマーからなる共重合体、更に、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン等を含むシリコーン樹脂類、ビスフェノール、グリコール等を含有するポリエステル類、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよいし、あるいは2種以上併用してもよい。被覆樹脂の被覆量としては、前記核体粒子100重量部に対して0.1〜10重量部程度の範囲が好ましく、0.5〜3.0重量部の範囲がより好ましい。
【0078】
キャリアの製造には、加熱型ニーダー、加熱型ヘンシェルミキサー、UMミキサーなどが使用され、前記被覆樹脂の量によっては、加熱型流動転動床、加熱型キルンなどが使用される。
【0079】
キャリアとして、フェライト粒子を核体としてアクリル酸メチル又はアクリル酸エチル及びスチレン等に導電剤としてカーボンブラック等及び又は帯電制御剤としてメラミンビーズ等を分散した樹脂をコートしたキャリアを用いると、コート層を厚膜化しても抵抗制御性に優れるため、画質及び画質維持性に優れ、より好ましい
現像剤におけるトナーとキャリアとの混合比としては特に制限はなく、目的に応じて選択される。
【0080】
(画像形成装置)
次に、本実施形態の静電荷像現像用トナーを用いた画像形成装置について説明する。
本実施形態の画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記像保持体を露光して前記像保持体表面に静電潜像を形成させる露光手段と、トナーにより前記静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、前記トナー像を前記像保持体から被転写体表面に転写する転写手段と、前記被転写体表面に転写されたトナー像を定着する定着手段と、を有し、前記トナーが本実施形態の静電荷像現像用トナーであることを特徴とする。また、像保持体をクリーニング部材で摺擦し転写残留成分を除去するクリーニング手段(トナー除去手段)を有し、前記現像剤として本実施形態の静電荷像現像用現像剤を用いるものである。
【0081】
なお、この画像形成装置において、例えば前記現像手段を含む部分が、画像形成装置本体に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよく、該プロセスカートリッジとしては、現像剤保持体を少なくとも備え、本実施形態の静電荷像現像用現像剤を収容する本実施形態のプロセスカートリッジが好適に用いられる。
以下、本実施形態の画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0082】
図2は、4連タンデム方式のフルカラー画像形成装置を示す概略構成図である。図2に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1から第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して脱着されるプロセスカートリッジであってもよい。
【0083】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ローラ22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24に巻回されて設けられ、第1ユニット10Yから第4ユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。なお、支持ローラ24は、図示しないバネ等により駆動ローラ22から離れる方向に付勢されており、両者に巻回された中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ローラ22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給される。
【0084】
上述した第1から第4ユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1ユニット10Yについて代表して説明する。なお、第1ユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2から第4ユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0085】
第1ユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を帯電させる帯電ローラ2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電潜像を形成する露光装置3、静電潜像に帯電したトナーを供給して静電潜像を現像する現像装置(現像手段)4Y、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ローラ5Y(1次転写手段)、及び1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段)6Yが順に配設されている。
なお、1次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ローラに印加する転写バイアスを可変する。
【0086】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ローラ2Yによって感光体1Yの表面が−600V〜−800V程度の電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(20℃における体積抵抗率:1×10-6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電潜像が感光体1Yの表面に形成される。
【0087】
静電潜像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
このようにして感光体1Y上に形成された静電潜像は、感光体1Yの走行に従って現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電潜像が、現像装置4Yによって可視像(現像像)化される。
【0088】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロー着色剤と結晶性樹脂及び非結晶性樹脂とを含む体積平均粒径が7μmのイエロートナーが収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で撹拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が1次転写位置へ搬送される。
【0089】
感光体1Y上のイエロートナー像が1次転写へ搬送されると、1次転写ローラ5Yに1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ローラ5Yに向う静電気力がトナー像に作用され、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0090】
また、第2ユニット10M以降の1次転写ローラ5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1ユニットに準じて制御されている。
こうして、第1ユニット10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写ベルト20は、第2から第4ユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ねられて多重転写される。
【0091】
第1から第4ユニットを通して4色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ローラ(2次転写手段)26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録紙(被転写体)Pが供給機構を介して2次転写ローラ26と中間転写ベルト20とが圧接されている隙間に給紙され、2次転写バイアスが支持ローラ24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー像が記録紙P上に転写される。なお、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0092】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段)28へと送り込まれトナー像が加熱され、色重ねしたトナー像が溶融されて、記録紙P上へ定着される。カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
なお、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介してトナー像を記録紙Pに転写する構成となっているが、この構成に限定されるものではなく、感光体から直接トナー像が記録紙に転写される構造であってもよい。
【0093】
<プロセスカートリッジ、トナーカートリッジ>
図3は、本実施形態の静電荷像現像用現像剤を収容するプロセスカートリッジの好適な一例を示す概略構成図である。プロセスカートリッジ200は、感光体107とともに、帯電ローラ108、現像剤保持体111Aを備えた現像装置111、感光体クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を取り付けレール116を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。
そして、このプロセスカートリッジ200は、転写装置112と、定着装置115と、図示しない他の構成部分とから構成される画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに、記録紙300に画像を形成する画像形成装置を構成するものである。
【0094】
図3で示すプロセスカートリッジでは、帯電ローラ108、現像装置111、クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を備えているが、これら装置は選択的に組み合わせられる。本実施形態のプロセルカートリッジでは、現像剤保持体111Aを備えた現像装置111を少なくとも備え、感光体107、帯電装置108、クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117から構成される群から選択される少なくとも1種を備えてもよい。
【0095】
次に、本実施形態のトナーカートリッジについて説明する。トナーカートリッジは、画像形成装置に着脱されるように装着され、少なくとも、前記画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するためのトナーを収納するトナーカートリッジにおいて、前記トナーが既述した本実施形態のトナーであることを特徴とする。なお、本実施形態のトナーカートリッジには少なくともトナーが収容されればよく、画像形成装置の機構によっては、例えば現像剤が収容されてもよい。
【0096】
従って、トナーカートリッジが着脱される構成を有する画像形成装置においては、本実施形態のトナーを収納したトナーカートリッジを利用することにより、本実施形態のトナーが容易に現像装置に供給される。
【0097】
なお、図2に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kが着脱される構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収納されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジを交換してもよい。
【0098】
(画像形成方法)
次に、本実施形態のトナーを用いた画像形成方法について説明する。本実施形態のトナーは、公知の電子写真方式を利用した画像形成方法に利用される。具体的には以下の工程を有する画像形成方法において利用される。
すなわち、好ましい画像形成方法は、静電荷像保持体表面を一様に帯電させる帯電工程と、帯電した前記静電荷像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成工程と、前記静電荷像保持体の表面に形成された潜像を少なくともトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、前記静電荷像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体に転写する転写工程と、前記被転写体に転写されたトナー像を定着する定着工程と、転写後の前記静電荷像保持体表面の残留トナーを除去するクリーニング工程と、を有するもので、前記トナーとして、既述の本実施形態のトナーを用いる。また、転写工程は、静電荷潜像保持体から被転写体へのトナー像の転写を媒介する中間転写体を用いたものであってもよい。
【実施例】
【0099】
以下に実施例及び比較例を挙げて本実施形態について更に詳述するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下に実施例において、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を意味し、「%」は「重量%」を意味する。
【0100】
(測定方法)
<元素分析>
トナー中の元素A及び元素Bの含有量は、下記方法により測定することができる。すなわち、走査型蛍光X線分析装置(リガク ZSX PrimusII)を用いて、トナー量0.130gのディスクを成型し、X線出力40−70mA、測定面積10mmφ、測定時間15分の条件で、定性定量全元素分析法にて測定し、このデータのEuLα、BiLαの分析値を本実施形態の元素量とした。なお、このピークに他の元素のピークが重なる場合には、ICP発光分光法や、原子吸光法にて、解析した上でユーロピウム分、ビスマス分の分析値を求めることができる。
また、Sn、Tiに関しては、エネルギー分散型X線分析により測定した。トナーをエポキシ樹脂に包埋し、クライオスタットにて凍結し、薄膜に切り出したものを透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析(TEM−EDX)を用いて加速電圧10kV、積算時間30分にて観察した。得られたトナー断面観察写真(1万倍)から、画像解析装置における分析値を元素量とした。
【0101】
<キャリアの体積平均粒子径及びトナーの体積平均粒子径の測定方法>
キャリアの体積平均粒子径は、電子顕微鏡(SEM)を用いて行った。より具体的にはSEMにより画像を得た後、粒子一つにつき粒子の径(最長部分)r1を測定した。これを100個につき測定した後、r1〜r100を球径換算し体積を求め、1番目から100番目までの50%となったときの値を体積平均粒子径とした。
トナーの体積平均粒子径は、コールターマルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)を用いて測定した。電解液としては、ISOTON−II(ベックマン−コールター社製)を使用した。
測定法としては、まず、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液2ml中に、測定試料を0.5mg以上50mg以下加え、これを前記電解液100ml以上150ml以下中に添加した。この測定試料を懸濁させた電解液を超音波分散器で約1分間分散処理を行い、前記コールターマルチサイザーII型により、アパーチャー径が100μmのアパーチャーを用いて、粒径が2.0μm以上60μm以下の範囲の粒子の粒度分布を測定した。測定する粒子数は50,000とした。
測定された粒度分布を、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、重量又は体積について小径側から累積分布を描き、累積50%となる粒径をそれぞれ重量平均粒子径又は体積平均粒子径と定義する。
【0102】
(錯体粉末Aの合成)
酸化バナジウムアセチルアセトナート0.5部を含むエタノール溶液(A液)40部を得た。A液を窒素置換した後、加熱を開始し、90℃に保った。イットリウムアセチルアセトナート・三水和物1部、シュウ酸ユーロピウム・六水和物0.09部を含むエタノール溶液(B液)40部を調製し、A液へ添加した。15分撹拌後、硝酸ビスマス0.05部を純水へ溶解させた溶液(C液)10部を30分かけてA液へ滴下した。系を90℃に保ったまま撹拌し、5時間熟成させた後、減圧留去にて溶媒を除去した。これにより得られた粉末を真空乾燥させることにより錯体粉末Aを得た。得られた錯体粉末Aの体積平均粒子径は241nmであり、粉末を蛍光X線分析により測定したところ、ユーロピウム、ビスマス、イットリウムの元素を含む物質であることが確認された。結果を表1に示す。
【0103】
(錯体粉末Bの合成)
酸化イットリウム0.8部を含むエタノール溶液(A液)40部を得た。A液を窒素置換した後、加熱を開始し、85℃に保った。シュウ酸ユーロピウム・六水和物0.12部を含むエタノール溶液(B液)40部を調製し、A液へ添加した。15分撹拌後、硝酸ビスマス0.08部を純水へ溶解させた溶液(C液)10部を30分かけてA液へ滴下した。系を85℃に保ったまま撹拌し、5時間熟成させた後、減圧留去にて溶媒を除去した。これにより得られた粉末を真空乾燥させることにより錯体粉末B得た。得られた錯体粉末Bの体積平均粒子径は299nmであり、粉末を蛍光X線分析により測定したところ、ユーロピウム、ビスマス、イットリウムの元素を含む物質であることが確認された。結果を表1に示す。
【0104】
(錯体粉末Cの合成)
錯体粉末Bの合成において、A液を窒素置換する代わりに、硫黄雰囲気下に変更してB液及びC液の添加、及び、熟成を行った以外は錯体粉末Bと同様の方法で、錯体粉末Cを得た。得られた錯体粉末Cの体積平均粒子径は309nmであり、粉末を蛍光X線分析により測定したところ、ユーロピウム、ビスマス、イットリウムの元素を含む物質であることが確認された。結果を表1に示す。
【0105】
(錯体粉末Dの合成)
錯体粉末Aの合成において、A液を酸化バナジウムアセチルアセトナート6.5部を含むエタノール溶液(A液)100部、に変更し、B液をイットリウムアセチルアセトナート・三水和物13部、及び、シュウ酸ユーロピウム・六水和物1.2部を含むエタノール溶液100部に変更した以外は錯体粉末Aと同様の方法で、錯体粉末Dを得た。得られた錯体粉末Dの体積平均粒子径は256nmであり、粉末を蛍光X線分析により測定したところ、ユーロピウム、ビスマス、イットリウム、硫黄の元素を含む物質であることが確認された。結果を表1に示す。
【0106】
(錯体粉末Eの合成)
錯体粉末Aの合成において、A液を酸化バナジウムアセチルアセトナート0.09部を含むエタノール溶液40部に変更し、B液をイットリウムアセチルアセトナート・三水和物0.2部及びシュウ酸ユーロピウム・六水和物0.015部を含むエタノール溶液40部に変更した以外は錯体粉末Aと同様の方法で、錯体粉末Eを得た。得られた錯体粉末Eの体積平均粒子径は235nmであり、粉末を蛍光X線分析により測定したところ、ユーロピウム、ビスマス、イットリウムの元素を含む物質であることが確認された。結果を表1に示す。
【0107】
(錯体粉末Fの合成)
錯体粉末Aの合成において、A液を酸化バナジウムアセチルアセトナート3部を含むエタノール溶液(A液)60部に変更し、B液をイットリウムアセチルアセトナート・三水和物6部及びシュウ酸ユーロピウム・六水和物0.54部を含むエタノール溶液60部に変更し、更に、C液を硝酸ビスマス0.4部を純水へ溶解させた溶液(C液)30部に変更した以外は錯体粉末Aと同様の方法で、錯体粉末Fを得た。得られた錯体粉末Fの体積平均粒子径は288nmであり、粉末を蛍光X線分析により測定したところ、ユーロピウム、ビスマス、イットリウムの元素を含む物質であることが確認された。結果を表1に示す。
【0108】
(錯体粉末Gの合成)
錯体粉末Aの合成において、A液を酸化バナジウムアセチルアセトナート0.15部を含むエタノール溶液40部に変更し、B液をイットリウムアセチルアセトナート・三水和物0.4部及びシュウ酸ユーロピウム・六水和物0.03部を含むエタノール溶液40部に変更し、更に、C液を硝酸ビスマス0.5部を純水に溶解させた溶液10部に変更した以外は錯体粉末Aと同様の方法で、錯体粉末Gを得た。得られた錯体粉末Gの体積平均粒子径は354nmであり、粉末を蛍光X線分析により測定したところ、ユーロピウム、ビスマス、イットリウムの元素を含む物質であることが確認された。結果を表1に示す。
【0109】
(錯体粉末H)
錯体粉末Aの合成において、A液を酸化バナジウムアセチルアセトナート1部を含むエタノール溶液40部に変更し、B液をイットリウムアセチルアセトナート・三水和物2部及びシュウ酸ユーロピウム・六水和物0.18部を含むエタノール溶液40部に変更し、C液を硝酸ビスマス0.35部を純水に溶解させた溶液10部に変更した以外は錯体粉末Aと同様の方法で、錯体粉末Hを得た。得られた錯体粉末Hの体積平均粒子径は198nmであり、粉末を蛍光X線分析により測定したところ、ユーロピウム、ビスマス、イットリウムの元素を含む物質であることが確認された。結果を表1に示す。
【0110】
(錯体粉末I)
錯体粉末Aの合成において、A液を酸化バナジウムアセチルアセトナート0.3部を含むエタノール溶液40部に変更し、B液をイットリウムアセチルアセトナート・三水和物1.2部及びシュウ酸ユーロピウム・六水和物0.045部を含むエタノール溶液40部に変更し、C液を硝酸ビスマス0.35部を純水へ溶解させた溶液10部に変更した以外は錯体粉末Aと同様の方法で、錯体粉末Iを得た。得られた錯体粉末Iの体積平均粒子径は276nmであり、粉末を蛍光X線分析により測定したところ、ユーロピウム、ビスマス、イットリウムの元素を含む物質であることが確認された。結果を表1に示す。
【0111】
(錯体粉末J)
錯体粉末Aの合成において、A液を酸化バナジウムアセチルアセトナート1部を含むエタノール溶液40部に変更し、B液をイットリウムアセチルアセトナート・三水和物2部及びシュウ酸ユーロピウム・六水和物0.18部を含むエタノール溶液40部に変更した以外は錯体粉末Aと同様の方法で、錯体粉末Jを得た。得られた錯体粉末Jの体積平均粒子径は243nmであり、粉末を蛍光X線分析により測定したところ、ユーロピウム、ビスマス、イットリウムの元素を含む物質であることが確認された。結果を表1に示す。
【0112】
(錯体粉末K)
錯体粉末Aの合成において、A液を酸化バナジウムアセチルアセトナート0.8部を含むエタノール溶液40部に変更し、B液をイットリウムアセチルアセトナート・三水和物1.6部及びシュウ酸ユーロピウム・六水和物0.15部を含むエタノール溶液40部に変更し、C液を硝酸ビスマス0.1部を純水に溶解させた溶液10部に変更した以外は錯体粉末Aと同様の方法で、錯体粉末Kを得た。得られた錯体粉末Kの体積平均粒子径は232nmであり、粉末を蛍光X線分析により測定したところ、ユーロピウム、ビスマス、イットリウムの元素を含む物質であることが確認された。結果を表1に示す。
【0113】
(錯体粉末L)
酸化バナジウムアセチルアセトナート0.7部を含むエタノール溶液(A液)40部を得た。A液を窒素置換した後、加熱を開始し、90℃に保った。イットリウムアセチルアセトナート・三水和1.2部、シュウ酸ユーロピウム・六水和物0.12部を含むエタノール溶液(B液)40mlを調製し、A液へ添加した。系を90℃に保ったまま撹拌し、5時間熟成させた後、減圧留去にて溶媒を除去した。これにより得られた粉末を真空乾燥させることにより錯体粉末Lを得た。得られた錯体粉末Lの体積平均粒子径は186nmであり、粉末を蛍光X線分析により測定したところ、ユーロピウム、イットリウムの元素を含む物質であることが確認された。結果を表1に示す。
【0114】
(錯体粉末M)
酸化バナジウムアセチルアセトナート0.8部を含むエタノール溶液(A液)40部を得た。A液を窒素置換した後、加熱を開始し、90℃に保った。イットリウムアセチルアセトナート・三水和物1.3部を含むエタノール溶液(B液)40部を調製し、A液へ添加した。15分撹拌後、硝酸ビスマス0.09部を純水へ溶解させた溶液(C液)10部を30分かけてA液へ滴下した。系を90℃に保ったまま撹拌し、7時間熟成させた後、減圧留去にて溶媒を除去した。これにより得られた粉末を真空乾燥させることにより錯体粉末Mを得た。得られた錯体粉末Mの体積平均粒子径は205nmであり、粉末を蛍光X線分析により測定したところ、ビスマス、イットリウムの元素を含む物質であることが確認された。結果を表1に示す。
【0115】
【表1】

【0116】
(トナー1の作製)
・ポリエステル樹脂(ビスフェノールAのプロピレンオキシド2モル付加物/エチレンオキシド2モル付加物、テレフタル酸、トリメリット酸を主成分とするスズ触媒を用いて合成したポリエステル樹脂):171.0部
・マゼンタ顔料(ピグメントレッド 122:大日精化工業(株)製):14.0部
・離型剤(ポリプロピレン;三井化学(株)製、三井HI−WAX NP055):5.0部
・錯体粉末A:10.0部
以上の成分を、ヘンシェルミキサーにて混合し、その後、図1に示すスクリュー構成を有する連続混錬機(2軸押出し機)にて、以下条件にて混錬を実施した。なお、スクリューの回転数は500rpmとした。
・フィード部(ブロック12A及び12B)設定温度:20℃
・ニーディング部1混錬設定温度(ブロック12Cから12E):100℃
・ニーディング部2混錬設定温度(ブロック12Fから12J):110℃
・水系媒体(蒸留水)添加量(原料供給量100部に対して):1.5部
この時の排出口(排出口18)での混錬物温度は、120℃であった。
【0117】
この混錬物を、内部を−5℃のブラインを通した圧延ロール及び2℃の冷水冷却のスラブ挟み込み式の冷却ベルトにて急冷却を行い、冷却後、ハンマーミルで破砕を行った。急冷却速度は冷却ベルトの速度を変化させて確認したが、平均降温速度は10℃/secであった。
この後粗粉分級機内蔵の粉砕機(AFG400)にて、粉砕し、粉砕粒子を得た。その後、慣性式分級機にて分級を行い、微粉・粗粉を除去し、体積平均粒子径6.0μmのトナー粒子1を得た。
【0118】
得られたトナー粒子に、メタチタン酸100部に対して40部のイソブチルトリメトキシシラン処理したチタン化合物1.5部、及び130nmのヘキサメチルジシラザン処理した球状シリカ1.2部を加え、ヘンシェルミキサーで10分間混合(外添ブレンド)した後、風力篩分機(ハイボルター)にて45μmで篩分を行いトナー1を得た。結果を表2に示す。
【0119】
(トナー2の作製)
トナー1の作製において、錯体粉末Aを錯体粉末Bへ変更した以外はトナー1と同様の方法で体積平均粒子径7.4μmのトナー粒子2を得た。トナー粒子1と同様の方法で外添・篩分工程を行い、トナー2を得た。結果を表2に示す。
【0120】
(トナー3の作製)
トナー1の作製において、錯体粉末Aを錯体粉末Cへ変更した以外はトナー1と同様の方法で体積平均粒子径5.8μmのトナー粒子3を得た。トナー粒子1と同様の方法で外添・篩分工程を行い、トナー3を得た。結果を表2に示す。
【0121】
(トナー4の作製)
トナー1の作製において、ポリエステル樹脂を、ポリエステル樹脂(ビスフェノールAのプロピレンオキシド2モル付加物/エチレンオキシド2モル付加物、テレフタル酸、トリメリット酸を主成分とするチタン触媒により合成したポリエステル樹脂)へ変更した以外はトナー1と同様の方法で体積平均粒子径6.2μmのトナー粒子4を得た。トナー粒子1と同様の方法で外添・篩分工程を行い、トナー4を得た。結果を表2に示す。
【0122】
(トナー5の作製)
トナー1の作製において、錯体粉末Aを錯体粉末Dへ変更した以外はトナー1と同様の方法で体積平均粒子径4.8μmのトナー粒子5を得た。トナー粒子1と同様の方法で外添・篩分工程を行い、トナー5を得た。結果を表2に示す。
【0123】
(トナー6の作製)
トナー1の作製において、錯体粉末Aを錯体粉末Eへ変更した以外はトナー1と同様の方法で体積平均粒子径8.2μmのトナー粒子6を得た。トナー粒子1と同様の方法で外添・篩分工程を行い、トナー6を得た。結果を表2に示す。
【0124】
(トナー7の作製)
トナー1の作製において、錯体粉末Aを錯体粉末Fへ変更した以外はトナー1と同様の方法で体積平均粒子径6.9μmのトナー粒子7を得た。トナー粒子1と同様の方法で外添・篩分工程を行い、トナー7を得た。結果を表2に示す。
【0125】
(トナー8の作製)
トナー1の作製において、錯体粉末Aを錯体粉末Gへ変更した以外はトナー1と同様の方法で体積平均粒子径3.9μmのトナー粒子8を得た。トナー粒子1と同様の方法で外添・篩分工程を行い、トナー8を得た。結果を表2に示す。
【0126】
(トナー9の作製)
トナー1の作製において、錯体粉末Aを錯体粉末Hへ変更した以外はトナー1と同様の方法で体積平均粒子径9.5μmのトナー粒子9を得た。トナー粒子1と同様の方法で外添・篩分工程を行い、トナー9を得た。結果を表2に示す。
【0127】
(トナー10の作製)
トナー1の作製において、錯体粉末Aを錯体粉末Iへ変更した以外はトナー1と同様の方法で体積平均粒子径6.0μmのトナー粒子10を得た。トナー粒子1と同様の方法で外添・篩分工程を行い、トナー10を得た。結果を表2に示す。
【0128】
(トナー11の作製)
トナー1の作製において、慣性式分級機にて粗粉を回収した以外はトナー1と同様の方法で体積平均粒子径21.0μmのトナー粒子11を得た。トナー粒子1と同様の方法で外添・篩分工程を行い、トナー11を得た。結果を表2に示す。
【0129】
(トナー12の作製)
トナー1の作製において、慣性式分級機にて微粉を回収した以外はトナー1と同様の方法で体積平均粒子径1.8μmのトナー粒子12を得た。トナー粒子1と同様の方法で外添・篩分工程を行い、トナー12を得た。結果を表2に示す。
【0130】
(トナー13の作製)
−スチレンアクリル樹脂(スチレンブチルアクリレート共重合体)の調製−
スチレン90部とブチルアクリレート10部とを、反応器内でクメン還流下(146〜156℃、Sn0.01部存在下)で重合させ、スチレン−ブチルアクリレート共重合体であるスチレンアクリル樹脂を合成した。
【0131】
−トナー13の作製−
トナー1の作製において、ポリエステル樹脂を、上記スチレンアクリル樹脂へ変更した以外はトナー1と同様の方法で体積平均粒子径7.2μmのトナー粒子13を得た。トナー粒子1と同様の方法で外添・篩分工程を行い、トナー13を得た。結果を表2に示す。
【0132】
(トナー14の作製)
トナー1の作製において、錯体粉末Aを錯体粉末Jへ変更した以外はトナー1と同様の方法で体積平均粒子径8.6μmのトナー粒子14を得た。トナー粒子1と同様の方法で外添・篩分工程を行い、トナー14を得た。結果を表2に示す。
【0133】
(トナー15の作製)
トナー1の作製において、錯体粉末Aを錯体粉末Kへ変更した以外はトナー1と同様の方法で体積平均粒子径5.7μmのトナー粒子15を得た。トナー粒子1と同様の方法で外添・篩分工程を行い、トナー15を得た。結果を表2に示す。
【0134】
(トナー16の作製)
−ポリエステル樹脂粒子分散液(1)の調製−
ポリエステル樹脂(ビスフェノールAのプロピレンオキシド2モル付加物/エチレンオキシド2モル付加物、テレフタル酸、トリメリット酸を主成分とするスズ触媒を用いて合成したポリエステル樹脂)100部と、メチルエチルケトン50部と、イソプロピルアルコール30部、10%アンモニア水溶液5部とをセパラブルフラスコに入れ、充分に混合して溶解した後、40℃で加熱撹拌しながら、イオン交換水を送液ポンプを用いて送液速度8g/minで滴下した。
フラスコ内の溶液が均一に白濁した後、送液速度25g/minに上げて転相させ、送液量が135部になったところで滴下を止めた。その後減圧下で溶剤除去を行い、ポリエステル樹脂粒子分散液(1)を得た。得られたポリエステル樹脂粒子の体積平均粒径は158nm、樹脂粒子の固形分濃度は39%であった。
【0135】
−離型剤分散液(1)の調製−
・エステルワックスWEP5(日本油脂(株)製):500部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK):50部
・イオン交換水:2000部
以上の成分を110℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴーリン社)で分散処理し、平均粒径が0.24μmである離型剤を分散させてなる離型剤分散液(1)(離型剤濃度:23%)を調製した。
【0136】
−着色剤分散液(1)の調製−
・マゼンタ顔料(ピグメントレッド 122:大日精化(株)製):100部
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンR):15部
・イオン交換水:900部
以上を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて約1時間分散して着色剤(マゼンタ顔料)を分散させてなる着色剤分散液(1)を調製した。
着色剤分散液(1)における着色剤(マゼンタ顔料)の平均粒径は、0.13μm、着色剤粒子濃度は25%であった。
【0137】
−トナー16の作製−
・ポリエステル樹脂粒子分散液(1):280部
・着色剤分散液(1):28部
・錯体粉末(A):20部
・アニオン性界面活性剤(dowfax2A1、20%水溶液):8部
・離型剤分散液(1):60部
pHメーター、撹拌羽、温度計を具備した重合釜に、上記原料のうち、ポリエステル樹脂粒子分散液(1)、アニオン性界面活性剤及びイオン交換水340部を入れ、150rpmで15分間撹拌した。
続いて、着色剤分散液(1)及び離型剤分散液(1)を加え混合した後、この原料混合物に0.3Mの硝酸水溶液を加えて、pHを4.2に調製した原料分散液を得た。
ついで、原料分散液をUltraturraxにより3,000rpmでせん断力を加えながら、凝集剤として硫酸アルミニウムを1%含む硝酸水溶液を27部滴下した。この凝集剤滴下の途中で、原料分散液の粘度が急激に増大するので、粘度上昇した時点で、滴下速度を緩め、凝集剤が一箇所に偏らないようにした。凝集剤の滴下が終了したら、更に回転数5,000rpmに上げて5分間撹拌した。
ついで原料分散液をマントルヒーターにて30℃に加温しながら350〜600rpmで撹拌した。30分撹拌後、コールターカウンター[TA−II]型(アパーチャー径:50μm;コールター社製)を用いて一次粒径が安定に形成するのを確認した後、凝集粒子を成長させるために0.1℃/分で42℃まで昇温した。凝集粒子の成長はコールターカウンターを用いて随時確認しつつ、その凝集速度によって、適宜凝集温度や撹拌の回転数を調整した。
【0138】
一方、凝集粒子表面に被覆層を形成するために、ポリエステル樹脂粒子分散液(1)110部に、イオン交換水30部、アニオン性界面活性剤(dowfax2A1 20%水溶液)4.2部を加えて混合し、予めpH3.3に調製した溶液を準備した。
凝集粒子の体積平均粒径が5.4μmに成長したところで、予め調製した被覆層形成用の溶液を加え、撹拌しながら10分間保持した。その後、被覆層を形成した凝集粒子の成長を停止させるために、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を前記重合釜に入っている分散液の総量に対し1.5pph添加した後、1モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加え、原料分散液のpHを7.5に制御した。
【0139】
ついで、凝集粒子を融合させるために、pHを7.5に調整しながら昇温速度1℃/minで85℃まで昇温した。85℃に達してからも、融合を進めるためにpHを7.5に調整し、光学顕微鏡で凝集粒子が融合したのを確認した後、粒径の成長を停止させる為に、氷水を注入して降温速度10℃/分で急冷した。
その後、得られた粒子を洗浄する目的で、目開き15μmメッシュで一度篩分した。続いて、固形分に対しておよそ10倍量のイオン交換水(30℃)を加え、20分撹拌した後、一旦濾過を行った。更にろ紙上に残った固形分をスラリーに分散して、30℃のイオン交換水で4回繰り返し洗浄を行い、乾燥させ、体積平均粒径6.1μmのトナー母粒子16を得た。
その後、得られたトナー母粒子100部に対して、気相法シリカ(日本アエロジル社製、R972)1部をヘンシェルミキサー(25m/sで10分)で混合して外添し、トナー16を得た。結果を表2に示す。
【0140】
(トナー17の作製)
−スズ及びチタンを含有しないポリエステル樹脂1の調製−
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸:17.5部
ビスフェノールA 1エチレンオキサイド付加物:31部
ドデシルベンゼンスルホン酸:0.15部
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターに投入し、窒素雰囲気下120℃で24時間重縮合を実施し、スズ及びチタンを含有しないポリエステル樹脂1を得た。
【0141】
−トナー17の作製−
ポリエステル樹脂を、上記のスズ及びチタンを含有しないポリエステル樹脂1へ変更した以外はトナー1と同様の方法で体積平均粒子径6.0μmのトナー粒子17を得た。トナー粒子1と同様の方法で外添・篩分工程を行い、トナー17を得た。結果を表2に示す。
【0142】
(比較のトナー18の作製)
トナー1の作製において、錯体粉末Aを錯体粉末Lへ変更した以外はトナー1と同様の方法で体積平均粒子径5.2μmの比較のトナー粒子18を得た。トナー粒子1と同様の方法で外添・篩分工程を行い、比較のトナー18を得た。結果を表2に示す。
【0143】
(比較のトナー19の作製)
トナー1の作製において、錯体粉末Aを錯体粉末Mへ変更した以外はトナー1と同様の方法で体積平均粒子径4.1μmの比較のトナー粒子19を得た。トナー粒子1と同様の方法で外添・篩分工程を行い、比較のトナー19を得た。結果を表2に示す。
【0144】
(比較のトナー20の作製)
トナー1の作製において、錯体粉末Aを使用しなかった以外はトナー1と同様の方法で体積平均粒子径10.5μmの比較のトナー粒子20を得た。トナー粒子1と同様の方法で外添・篩分工程を行い、比較のトナー20を得た。結果を表2に示す。
【0145】
(評価方法)
<現像剤の調製>
(現像剤(1)〜(17)及び比較の現像剤(1)〜(3)の調製)
キャリア(1)100部と、外添トナー7部とをVブレンダーにて40rpmで20min混合し、現像剤(1)〜(17)及び比較の現像剤(18)〜(20)を調製した。
【0146】
<発色保持性評価>
得られた現像剤1〜17及び比較の現像剤18〜20を用いて、Fuji Xerox社製DocuPrintColor400CPにより、松葉印刷用ジャパンカラー標準印刷のパッチをコピーした画像について、高強度の白色ランプ下で10日間放置した。X−rite社製の反射濃度計X−rite404を用いて、このストレステスト前後におけるΔEの変化量を算出した。結果を表2に示す。
評価基準は以下の通りである。
◎:標準サンプルに対して、ΔE≦1(目視では全く判断できず、実用上問題にならない。)
○:標準サンプルに対して、1<ΔE≦2(目視では判断できず、実用上問題にならない程度である。)
△:標準サンプルに対して、2<ΔE≦3(目視でも判断することができ、実用上問題がある。)
×:標準サンプルに対して、3<ΔE(目視でも明らかに判断でき、実用上問題がある。)
【0147】
<発色性>
得られた現像剤1〜17及び比較例の現像剤18〜20を用いて、Fuji Xerox社製DocuPrintColor400CPにより、松葉印刷用ジャパンカラー標準印刷のパッチ、及びこのパッチのコピー画像について、X−rite社製の反射濃度計X−rite404を用いてΔE差を算出した。結果を表2に示す。
評価基準は以下の通りである。
◎:ΔE≦1(目視では全く判断できず、実用上問題にならない。)
○:1<ΔE≦2(目視では判断できず、実用上問題にならない程度である。)
△:2<ΔE≦3(目視でも判断することができ、実用上問題がある。)
×:3<ΔE(目視でも明らかに判断でき、実用上問題がある。)
結果を以下の表2に示す。
【0148】
【表2】

【符号の説明】
【0149】
11 スクリュー押出し機、12 バレル、12A〜12J ブロック、14 注入口、16 液体添加口、18 排出口、NA,NB ニーディング部、SA,SB,SC 送りスクリュー部、1Y,1M,1C,1K 感光体、2Y,2M,2C,2K 帯電ローラ、3Y,3M,3C,3K レーザ光線、3 露光装置、4Y,4M,4C,4K 現像装置、5Y,5M,5C,5K 1次転写ローラ、6Y,6M,6C,6K 感光体クリーニング装置(クリーニング手段)、8Y,8M,8C,8K トナーカートリッジ、10Y,10M,10C,10K 画像形成ユニット、20 中間転写ベルト、22 駆動ローラ、24 支持ローラ、26 2次転写ローラ(2次転写手段)、28 定着装置(定着手段)、30 中間転写体クリーニング装置、P 記録紙、107 感光体、108 帯電ローラ、111 現像装置、111A 現像剤保持体、112 転写装置、113 感光体クリーニング装置(クリーニング手段)、115 定着装置、116 取り付けレール、117,118 開口部、200 プロセスカートリッジ、300 記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、及び、着色剤を含有し、更に、
(A)ユーロピウム、及び、
(B)ビスマスを含有することを特徴とする
静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
蛍光X線分析により測定されたユーロピウムのトナー中における含有量が0.2重量%以上7.0重量%以下であり、蛍光X線分析により測定されたビスマスのトナー中における含有量が0.02重量%以上0.7重量%以下である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
蛍光X線分析により測定されたユーロピウムのトナー中における含有量をA(重量%)、蛍光X線分析により測定されたビスマスのトナー中における含有量をB(重量%)としたとき、A/Bが3以上20以下である、請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
体積平均粒径Dvが2μm以上20μm以下である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記結着樹脂がポリエステル樹脂を含有する、請求項1〜4のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
(C)スズ及び/又はチタンを更に含有する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
蛍光X線分析により測定されたユーロピウムのトナー中における含有量をA(重量%)、透過型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分析にて測定されたトナー断面における前記スズ及び/又はチタンの含有量をC(重量%)としたとき、A/Cが3以上20以下である、請求項6に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
YVO4:Eu,Bi錯体、Y23:Eu,Bi錯体、及び、Y22S:Eu,Bi錯体よりなる群から選択された錯体を含有する、請求項1〜7のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項9】
前記着色剤がマゼンタ着色剤である、請求項1〜8のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項10】
結着樹脂、着色剤、及び、ユーロピウムとビスマスとを含む化合物を含むトナー形成材料を混錬する混錬工程、
混錬工程により形成された混錬物を冷却する冷却工程、
冷却工程により冷却された混錬物を粉砕する粉砕工程、並びに、
粉砕工程により粉砕された混錬物を分級する分級工程を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1つに記載の静電荷現像用トナーの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、及び、キャリアを含むことを特徴とする
静電荷像現像剤。
【請求項12】
画像形成装置に着脱可能であり、請求項1〜9のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーを収容することを特徴とする
トナーカートリッジ。
【請求項13】
像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程、
前記像保持体表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像工程、
前記トナー像を被転写体表面に転写する転写工程、及び、
前記被転写体表面に転写されたトナー像を定着する定着工程、を含み、
前記トナーが請求項1〜9のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーであることを特徴とする
画像形成方法。
【請求項14】
像保持体と、
前記像保持体を帯電させる帯電手段と、
帯電した前記像保持体を露光して前記像保持体表面に静電潜像を形成させる露光手段と、
トナーにより前記静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、
前記トナー像を前記像保持体から被転写体表面に転写する転写手段と、
前記被転写体表面に転写されたトナー像を定着する定着手段と、を有し、
前記トナーが請求項1〜9のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーであることを特徴とする
画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−64954(P2013−64954A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204739(P2011−204739)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】