説明

静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成方法、及び、画像形成装置

【課題】静電荷像現像用トナーの強度を保ちつつ、脂肪族系ポリエステル樹脂の生分解性の阻害が抑制される静電荷像現像用トナーを提供する。
【解決手段】脂肪族系ポリエステル樹脂と、ロジンジオール由来の繰り返し単位を有するポリエステル樹脂と、を含む静電荷像現像用トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成方法、及び、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法のように、静電潜像を形成し、これを現像する工程を経て画像情報を可視化する方法は、現在様々な分野で利用されている。この方法による画像の形成は、感光体(潜像保持体)表面を全体に帯電させた後、この感光体表面に、画像情報に応じたレーザ光により露光して静電潜像を形成し、次いでこの静電潜像を、トナーを含む現像剤で現像してトナー像を形成し、最後にこのトナー像を記録媒体表面に転写・定着することにより行われる。
ところで、近年、種々の事務用品、日用品等において、環境への負荷を抑制した素材で製品を製造することが求められており、紙等の記録媒体や、トナーの結着樹脂として用いられる各種樹脂も例外ではない。樹脂は、一般に、自然環境下でほとんど分解されないため、環境への負荷を低減する取り組みがなされている。
【0003】
トナーの結着樹脂には、一般に、ポリエステル樹脂が用いられているところ、ポリエステル樹脂の中でも、脂肪族系ポリエステル樹脂は生分解性と合成の簡便さから、多くの研究がなされ、実用化されている。例えば、芳香環を含むポリエステルと、直鎖ポリエステルをオリゴマーの状態で共重合させる方法や、ポリ乳酸と3官能以上の多価イソシアナートとを架橋した樹脂などが開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
また、例えば、水酸基価0.5−5、酸価3−20、融点80−140℃の生分解性ポリエステル(A)とガラス転移点50−70℃のポリエステル(B)を含み混合比が(A)/(B)=5/95−44/55%にすることでトナーの画像強度を向上させる樹脂組成が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
さらにまた、例えば、少なくとも1つの生分解性半結晶性ポリエステル樹脂;少なくとも1つのバイオベース非晶性ポリエステル樹脂;ならびに着色剤、ワックス、凝集剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される1以上の材料を含むトナー組成や、生分解性樹脂とこの生分解性樹脂よりも軟化点の低い樹脂を含む結着樹脂、及び着色剤を含有する電子写真用トナーであって、前記生分解性樹脂は、平均粒径が1μm以下の微粒子であり、結着樹脂に対し10〜78%含まれることを特徴とする電子写真用トナーが開示されている(例えば、特許文献4及び特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−342244号公報
【特許文献2】特開平9−281746号公報
【特許文献3】特開2006−195352号公報
【特許文献4】特願2009−241092号公報
【特許文献5】特願2008−213909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、静電荷像現像用トナーの強度を保ちつつ、脂肪族系ポリエステル樹脂の生分解性の阻害が抑制される静電荷像現像用トナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、請求項1に係る発明は、
脂肪族系ポリエステル樹脂と、
ロジンジオール由来の繰り返し単位を有するポリエステル樹脂と、
を含む静電荷像現像用トナーである。
【0008】
請求項2に係る発明は、
前記脂肪族系ポリエステル樹脂が、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する請求項1に記載の静電荷像現像用トナーである。
【0009】
【化1】

【0010】
前記一般式(I)中、Aは単結合または2価の脂肪族炭化水素基を表し、Bは炭素数2以上の2価の脂肪族炭化水素基を表す。前記Aおよび前記Bの炭素数の合計は2以上25である。
【0011】
請求項3に係る発明は、
前記ロジンジオール由来の繰り返し単位を有するポリエステル樹脂が、下記一般式(II)で表されるロジンジオールとジカルボン酸との重縮合体である請求項1または請求項2に記載の静電荷像現像用トナーである。
【0012】
【化2】

【0013】
前記一般式(II)中、Rは安定化ロジン残基、又は安定化ロジン残基と一塩基酸基からなる二種の基を表し、nは1以上6以下の整数を表す。Rは、nが1である場合、水素原子を表し、nが2以上である場合、2つのRが水素原子を表し、残りのRがアセトアセチル基、又はアセトアセチル基と少なくとも一種の一塩基酸基からなる二種以上の基を表す。Rは水素原子及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも一種を表し、Dはメチレン基又はイソプロピレン基を表す。
【0014】
請求項4に係る発明は、
前記ロジンジオール由来の繰り返し単位を有するポリエステル樹脂に対する前記脂肪族系ポリエステル樹脂の含有比が、質量基準で5/95以上40/60以下である請求1〜請求項3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーである。
【0015】
請求項5に係る発明は、
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像用現像剤である。
【0016】
請求項6に係る発明は、
請求項4に記載の静電荷像現像用トナーを収納し、
画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジである。
【0017】
請求項7に係る発明は、
請求項5に記載の静電荷像現像用現像剤を収納し、潜像保持体表面に形成された静電潜像を前記現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0018】
請求項8に係る発明は、潜像保持体表面を帯電する帯電工程と、前記潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、請求項5に記載の静電荷像現像用現像剤により、前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に前記トナー像を定着する定着工程とを含む画像形成方法である。
【0019】
請求項9に係る発明は、
潜像保持体と、前記潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、前記潜像保持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、請求項5に記載の静電荷像現像用現像剤を収納し、前記静電荷像現像用現像剤により、前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に前記トナー像を定着する定着手段と、を備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明によれば、静電荷像現像用トナーが、脂肪族系ポリエステル樹脂と、ロジンジオール由来の繰り返し単位を有するポリエステル樹脂とを含まない場合に比較して、静電荷像現像用トナーの強度を保ちつつ、脂肪族系ポリエステル樹脂の生分解性の阻害が抑制される静電荷像現像用トナーが提供される。
【0021】
請求項2に係る発明によれば、前記脂肪族系ポリエステル樹脂が、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を有しない場合に比較して、脂肪族系ポリエステル樹脂の生分解性の阻害が抑制される静電荷像現像用トナーが提供される。
【0022】
請求項3に係る発明によれば、前記ロジンジオール由来の繰り返し単位を有するポリエステル樹脂が、前記一般式(II)で表されるロジンジオールとジカルボン酸との重縮合体でない場合に比較して、静電荷像現像用トナーの強度を保ち易い静電荷像現像用トナーが提供される。
【0023】
請求項4に係る発明によれば、前記ロジンジオール由来の繰り返し単位を有するポリエステル樹脂に対する前記脂肪族系ポリエステル樹脂の含有比が、質量基準で5/95以上40/60以下でない場合に比較して、静電荷像現像用トナーの強度を保ちつつ、脂肪族系ポリエステル樹脂の生分解性の阻害が抑制されるトナーが得られる。
【0024】
請求項5に係る発明によれば、現像剤が、脂肪族系ポリエステル樹脂と、ロジンジオール由来の繰り返し単位を有するポリエステル樹脂とを含む静電荷像現像用トナーを含有しない場合に比較して、静電荷像現像用トナーの強度を保ちつつ、脂肪族系ポリエステル樹脂の生分解性の阻害が抑制される静電荷像現像用トナーを含む現像剤が得られる。
【0025】
請求項6に係る発明によれば、トナーカートリッジが、脂肪族系ポリエステル樹脂と、ロジンジオール由来の繰り返し単位を有するポリエステル樹脂とを含む静電荷像現像用トナーを含む現像剤を収納しない場合に比較して、静電荷像現像用トナーの強度の低下に起因する画像欠陥を抑制し、環境への負荷が少ない画像形成に適したトナーカートリッジが得られる。
【0026】
請求項7に係る発明によれば、プロセスカートリッジが、脂肪族系ポリエステル樹脂と、ロジンジオール由来の繰り返し単位を有するポリエステル樹脂とを含む静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像用現像剤を収納しない場合に比較して、静電荷像現像用トナーの強度の低下に起因する画像欠陥を抑制し、環境への負荷が少ない画像形成に適したプロセスカートリッジが得られる。
【0027】
請求項8に係る発明によれば、脂肪族系ポリエステル樹脂と、ロジンジオール由来の繰り返し単位を有するポリエステル樹脂とを含む静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像用現像剤用いない場合に比較して、静電荷像現像用トナーの強度の低下に起因する画像欠陥を抑制し、環境への負荷が少ない画像形成に適した画像形成方法が提供される。
【0028】
請求項9に係る発明によれば、画像形成装置が、脂肪族系ポリエステル樹脂と、ロジンジオール由来の繰り返し単位を有するポリエステル樹脂とを含む静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像用現像剤により現像してトナー像を形成しない場合に比較して、静電荷像現像用トナーの強度の低下に起因する画像欠陥を抑制し、環境への負荷が少ない画像形成に適した画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態のプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成方法、及び、画像形成装置の実施形態について詳細に説明する。
なお、以下、静電荷像現像用トナーを単に「トナー」、静電荷像現像用現像剤を単に「現像剤」とも称する。
【0031】
<静電荷像現像用トナー>
本実施形態に係るトナーは、脂肪族系ポリエステル樹脂と、ロジンジオール由来の繰り返し単位を有するポリエステル樹脂とを含んで構成される。
トナーを上記構成とすることで、トナーの強度を保ちつつ、脂肪族系ポリエステル樹脂の生分解性の阻害が抑制される理由は定かではないが、次の理由によるものと考えられる。なお、「ロジンジオール由来の繰り返し単位を有するポリエステル樹脂」を、以下、「特定ロジン系ポリエステル樹脂」ともいう。
【0032】
脂肪族系ポリエステル樹脂は生分解性を有し、環境への負荷が少ない傾向にある。具体的には、脂肪族系ポリエステル樹脂は、例えば、水分率が50%以上を保つ土壌中に保存することで、加水分解し易く、土に返り易い。
従って、脂肪族系ポリエステル樹脂をトナーの結着樹脂として用いることで、環境への負荷の抑制を考慮したトナーを製造することが期待されていたが、その生分解性に起因して、トナーが脆くなり、トナーの強度を保つことができなかった。一方で、トナーの強度を保つために、加水分解性を抑制した脂肪族系ポリエステル樹脂を用いると、脂肪族系ポリエステル樹脂の生分解性を低下させる傾向にあった。
【0033】
これに対し、本実施形態に係るトナーは、脂肪族系ポリエステル樹脂と、特定ロジン系ポリエステル樹脂とを併用することで、脂肪族系ポリエステル樹脂が、特定ロジン系ポリエステル樹脂により包囲されていると考えられる。ロジンは、疎水性で剛直な機械的強度を有するため、かかるロジンを分子骨格として有する特定ロジン系ポリエステル樹脂も疎水性で剛直な機械物性を有する傾向にある。従って、トナーが、貯蔵や画像形成をする湿度環境下に置かれても、特定ロジン系ポリエステル樹脂により包囲されていることで、脂肪族系ポリエステル樹脂が水分に晒されにくくなり、脂肪族系ポリエステル樹脂の加水分解を阻害し易く、加水分解が進み難いと考えられる。また、ロジンの機械的強度により、脂肪族系ポリエステル樹脂の強度を補完すると考えられる。
そのため、トナーの強度(力学的強度)を保ち得るものと考えられる。
【0034】
一方、本実施形態に係るトナーに用いる脂肪族系ポリエステル樹脂自体は、加水分解性を制御した樹脂ではないため、脂肪族系ポリエステル樹脂自体の生分解性は阻害されにくく、また、特定ロジン系ポリエステル樹脂は、松脂等の天然化合物に由来するロジンを分子骨格として有しているため、土壌中で生分解し易い樹脂であると考えられる。
【0035】
以上から、本実施形態に係るトナーは、トナーの強度を保ちつつ、脂肪族系ポリエステル樹脂の生分解性の阻害が抑制されると考えられる。
以下、本実施形態に係るトナーを構成する脂肪族系ポリエステル樹脂およびロジンジオール由来の繰り返し単位を有するポリエステル樹脂(特定ロジン系ポリエステル樹脂)について説明する。
【0036】
〔脂肪族系ポリエステル樹脂〕
脂肪族系ポリエステル樹脂は、脂肪族カルボン酸エステルを繰り返し単位として含む樹脂であり、ヒドロキシカルボン酸重合体、脂肪族ジオールと脂肪族カルボン酸との重縮合体等が挙げられる。脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族炭化水素は飽和炭化水素であっても不飽和炭化水素であってもよいし、直鎖状でも、分岐状でも、環状でもよい。
さらに、脂肪族系ポリエステル樹脂は、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0037】
【化3】

【0038】
一般式(I)中、Aは単結合または2価の脂肪族炭化水素基を表し、Bは炭素数2以上の2価の脂肪族炭化水素基を表す。AおよびBの炭素数の合計は2以上25である。
脂肪族系ポリエステル樹脂が、一般式(I)で表される繰り返し単位を有することで、脂肪族系ポリエステル樹脂の生分解性を高めると共に、より高分子量で、溶融温度を高くし得るため、画像形成時におけるトナーの凝集(ブロッキングともいう)を抑制し易い。
【0039】
一般式(I)中、Aは単結合又は2価の脂肪族炭化水素基を表す。
Aとして表される脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であっても、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、例えば、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、環状のアルキレン基、すなわちシクロアルキレン基、直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基、シクロアルケニレン基等が例示される。
脂肪族炭化水素基としては、中でも、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、またはシクロアルキレン基であることが好ましい。
これらの中でも、Aは、単結合、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、又は、シクロアルキレン基であることが好ましい。
Aの炭素数は0以上12以下であり、炭素数が1以上10以下であることが好ましく、炭素数が2以上10以下であることがより好ましい。なお、Aの炭素数が0であるとは、Aが単結合を表すことを意味する。
【0040】
Bは、炭素数2以上の2価の脂肪族炭化水素基を表す。
Bとして表される脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であっても、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、例えば、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、環状のアルキレン基、すなわちシクロアルキレン基、直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基、シクロアルケニレン基等が例示される。
脂肪族炭化水素基としては、中でも、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、またはシクロアルキレン基であることが好ましい。
Bの炭素数は2以上14以下であり、炭素数が2以上11以下であることが好ましく、炭素数が2以上10以下であることがより好ましい。
【0041】
また、本発明において、A及びBの炭素数の合計は2以上25以下である。A及びBの炭素数の合計が25を超えると、生分解性を発現しにくい。また、A及びBの炭素数の合計が2以上であることで、樹脂が化合物として安定に存在し易い。
A及びBの炭素数の合計は、4以上14以下であることが好ましく、より好ましくは4以上10以下であり、さらに好ましくは4以上8以下である。
【0042】
一般式(I)中のA及びBにおいて、脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。A及びBが、直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す場合、該アルキレン基は置換基としてシクロアルキル基を有していてもよく、この場合、置換基を含めた全炭素数が、A及びBの炭素数として好ましい範囲内であればよい。
また、A及びBが分岐状のアルキレン基である場合は、分岐鎖が、脂肪族系ポリエステル樹脂の主鎖と環を形成していてもよい。ここで、A及びBは、生分解により二酸化炭素及び水に分解される点から、炭素及び水素のみで構成されることが好ましい。
【0043】
脂肪族系ポリエステル樹脂は、一般式(I)で表される繰り返し単位を、脂肪族系ポリエステル樹脂全体の5%以上40%以下の範囲で含有することが好ましい。
ここで、「ポリエステル樹脂全体の5%以上」とは、一般式(I)で表される繰り返し単位が、脂肪族系ポリエステル樹脂の全質量に対して、5%以上であることを意味し、他の繰り返し単位が、一般式(I)で表される繰り返し単位の間に、脂肪族系ポリエステル樹脂の全質量に対して、5%未満の割合で挿入されていてもよい。
また、脂肪族系ポリエステル樹脂は、脂肪族系ポリエステル樹脂の全質量に対して40%未満を上限として、一般式(I)で表される繰り返し単位以外の、他の繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0044】
脂肪族系ポリエステル樹脂は、下記一般式(III)で表されるジカルボン酸成分及び下記一般式(IV)で表されるジオール成分を重縮合性単量体として用いて、重縮合性単量体の重縮合反応又はエステル交換反応により得ればよい。
なお、ジカルボン酸成分とは、ジカルボン酸に限定されず、ジカルボン酸の無水物や、カルボン酸エステル化物等のカルボン酸誘導体をも含む意である。
【0045】
【化4】

【0046】
一般式(III)中、Rは、水素原子、低級アルキル基、又はアリール基を表し、Aは単結合又は2価の脂肪族炭化水素基を表す。
【0047】
【化5】

【0048】
一般式(IV)中、Bは炭素数2以上の2価の脂肪族炭化水素基を表す。
一般式(III)および一般式(IV)において、A及びBの炭素数の合計は、2以上25以下である。
なお、一般式(III)および一般式(IV)において、A及びBの好ましい態様は、一般式(I)における態様と同様である。
【0049】
一般式(III)中、Rとして表される低級アルキル基は、炭素数1以上4以下のアルキル基を意味し、直鎖状又は分岐状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基等が例示される。
一般式(III)中、Rとして表されるアリール基は、炭素数6以上12以下であることが好ましく、より好ましくは、炭素数6以上10以下である。
なお、アリール基は置換基を有していてもよく、置換基としてはハロゲン原子、炭素数1以上4以下のアルキル基が例示される。
また、一般式(III)中の2つのRは、互いに連結して環を形成していてもよい。
【0050】
一般式(III)で表されるジカルボン酸としては、例えば、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、トリデカンジカルボン酸、β−メチルアジピン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸〔cis−HOOC−CH=C(CH)−COOH〕が例示される。
【0051】
一般式(III)中、Aが環状のアルキレン基(シクロアルキレン基)である場合、具体的には、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロドデカンから水素原子を2つ除いた基が例示される。Aがシクロアルキレン基であるジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸、1,1−シクロペンテンジカルボン酸、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸等が例示される。
【0052】
なお、上述の通り、上記ジカルボン酸として例示したジカルボン酸の酸無水物や酸エステル化物等を使用してもよい。
【0053】
一般式(IV)で表されるジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオール、トリデカンジオール等が挙げられる。
また、一般式(IV)中のBが環状のアルキレン基である場合、環状構造を有するジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等が例示される。
【0054】
一般式(III)で表されるジカルボン酸成分として、特に好ましくは、蓚酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、及び、ドデカンジ酸が挙げられる。
一般式(IV)で表されるジオール成分として、特に好ましくは、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、及び、デカンジオールが挙げられる。
ジカルボン酸成分とジオール成分との好ましい組合せとしては、上記特に好ましい範囲同士の組み合わせであり、かつ、一般式(III)中のAと一般式(IV)中のBとの炭素数の範囲が上述の炭素数の範囲を満たす組み合わせが挙げられる。
【0055】
一般式(III)中のAと一般式(IV)中のBとの炭素数の範囲が上述の炭素数の範囲を満たす組み合わせならば、重縮合性単量体(繰り返し単位)を3種以上含んでいてもよく、その場合、ジカルボン酸成分およびジオール成分の少なくとも一方において、それぞれ炭素数の平均値を算出し、それらを元に、一般式(III)中のAと一般式(IV)中のBとの炭素数の範囲が、既述の範囲内であるかどうかを判断する。
【0056】
既述のように、脂肪族系ポリエステル樹脂は、脂肪族系ポリエステル樹脂の全質量に対して40%未満を上限として、一般式(I)で表される繰り返し単位以外の、他の繰り返し単位を含んでいてもよい。
従って、重縮合性単量体(繰り返し単位)を3種以上含む場合に、一般式(III)で表されるジカルボン酸成分及び一般式(IV)で表されるジオール成分と共に、他の重縮合性単量体(繰り返し単位)を併用してもよい。
【0057】
併用し得る重縮合性単量体としては、例えば、ポリカルボン酸成分、ポリオール成分、及びヒドロキシカルボン酸成分が例示される。これらの中でも、一般式(III)で表されるジカルボン酸成分以外のジカルボン酸成分、一般式(IV)で表されるジオール酸成分以外のジオール酸成分、または、モノヒドロキシモノカルボン酸成分が好ましい。
【0058】
高い生分解性を達成する観点から、脂肪族系ポリエステル樹脂は架橋構造を有していないことが好ましい。したがって、重縮合性単量体として、3価以上のポリオール成分、3価以上のポリオール成分、及び、3価以上のヒドロキシカルボン酸成分は使用しないことが好ましい。
ここで、カルボン酸成分とは、上述の通り、カルボン酸のみではなく、その酸無水物及び酸エステル化物等のカルボン酸誘導体をも含む意である。
【0059】
一般式(III)で表されるジカルボン酸成分および一般式(IV)で表されるジオール酸成分と併用しうる一般式(III)で表されるジカルボン酸成分以外の他のポリカルボン酸成分は、既述のように、ジカルボン酸成分であることが好ましく、具体的には以下のジカルボン酸が例示される。
重縮合性単量体として併用し得るジカルボン酸は、1分子中にカルボキシル基を2個含有する一般式(III)で表されるジカルボン酸成分以外の化合物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロルフタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレン二酢酸、p−フェニレンジプロピオニック酸、m−フェニレンジプロピオニック酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等が挙げられる。
また、ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等が挙げられる。
上記のカルボン酸は、カルボキシル基以外の官能基を有していてもよく、酸無水物、酸エステル等のカルボン酸誘導体として用いてもよい。
【0060】
一般式(III)で表されるジカルボン酸成分および一般式(IV)で表されるジオール酸成分と併用しうる一般式(IV)で表されるジオール酸成分以外の他の多価アルコールとは、1分子中に水酸基を2個以上含有する一般式(IV)で表されるジオール酸成分以外の化合物である。かかる多価アルコールとしては、特に限定はされないが、次の単量体を用いればよい。
ジオールとしては、例えば、オクタデカンジオール等が挙げられる。
また、ジオール以外の多価オールとしては、直鎖状または分岐状の多価オールとしては、例えば、グリコール、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミン等が挙げられる。
また、環状構造を有する多価アルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールP、ビスフェノールS、ビスフェノールZ、水素添加ビスフェノール、ビフェノール、ナフタレンジオール、ヒドロキシフェニルシクロヘキサン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
環状構造を有する多価アルコールは、上記ビスフェノール類が少なくとも一つのアルキレンオキサイド基を有することが好ましい。アルキレンオキサイド基としては、例えば、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、ブチレンオキサイド等が挙げられるが、これらに限定されない。好適には、エチレンオキサイド、またはプロピレンオキサイドであり、アルキレンオキサイド基の付加モル数は1以上3以下であることが好ましい。この範囲であると、脂肪族系ポリエステル樹脂の粘弾性やガラス転移温度が、トナーとして使用するのに好ましい範囲となり易い。
【0062】
また、一般式(III)で表されるジカルボン酸成分及び一般式(IV)で表されるジオール成分と併用し得る他の重縮合性単量体として、一分子中にカルボキシ基と水酸基とを含有するヒドロキシカルボン酸化合物を用いてもよい。
例えば、モノヒドロキシモノカルボン酸としては、ヒドロキシオクタン酸、ヒドロキシノナン酸、ヒドロキシデカン酸、ヒドロキシウンデカン酸、ヒドロキシドデカン酸、ヒドロキシテトラデカン酸、ヒドロキシトリデカン酸、ヒドロキシヘキサデカン酸、ヒドロキシペンタデカン酸、ヒドロキシステアリン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、3価以上のヒドロキシカルボン酸としては、リンゴ酸(HOOC−CH(OH)−CH−COOH)、酒石酸(HOOC−CH(OH)−CH(OH)−COOH)、粘液酸、ジブチロールブタン酸、ジブチロールプロピオン酸などが例示される。
【0063】
脂肪族系ポリエステル樹脂は、上述したジカルボン酸成分及びジオール成分それぞれ1種を使用した単独重合体、上述した単量体を含む単量体を2種以上組み合せた共重合体、又はそれらの混合物、グラフト重合体、一部枝分かれや架橋構造などを有していてもよい。
【0064】
−重量平均分子量−
脂肪族系ポリエステル樹脂は、重量平均分子量が3,000以上500,000以下であることが好ましい。重量平均分子量が3,000以上であることで十分な強度を得易く、500,000以下であることで、生分解性が低下しにくい。
重量平均分子量は3,500以上300,000以下であることが好ましく、より好ましくは3,500以上200,000以下であり、さらに好ましくは3,500以上100,000以下である。
【0065】
−溶融温度−
脂肪族系ポリエステル樹脂の溶融温度は50℃以上であることが好ましい。より好ましくは、50℃以上120℃以下であり、60℃以上110℃以下であることがさらに好ましく、70℃以上100℃以下であることが特に好ましい。
溶融温度が50℃以上であると、脂肪族系ポリエステル樹脂の機械強度が高まり易い。
なお、脂肪族系ポリエステル樹脂の溶融温度は、示差走査熱量計により測定した値である。
【0066】
(脂肪族系ポリエステル樹脂の製造方法)
脂肪族系ポリエステル樹脂の製造方法は特に限定されないが、以下の方法により製造することが好ましい。
すなわち、一般式(III)で表されるジカルボン酸成分と、一般式(IV)で表されるジオール成分とを重縮合触媒の存在下に重縮合する重縮合工程を含み、重縮合触媒の下、重縮合して得る脂肪族系ポリエステル樹脂の製造方法により製造し得る。
【0067】
−重縮合触媒−
重縮合触媒としては、例えば、金属触媒や加水分解酵素等の一般的に使用される重縮合触媒が挙げられる。
金属触媒としては以下のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。例えば、有機スズ化合物、無機スズ化合物、有機チタン化合物、有機ハロゲン化スズ化
合物、希土類金属触媒を挙げられる。
有機スズ化合物、無機スズ化合物、有機チタン化合物、及び、有機ハロゲン化スズ化合物としては、重縮合触媒として公知のものを用いればよい。
希土類含有触媒としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイド元素としてランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)などを含むものが有効であり、特にアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、又はトリフラート構造を有するものなどが有効である。
【0068】
希土類含有触媒としては、スカンジウムトリフラート、イットリウムトリフラート、及び、ランタノイドトリフラートなどのトリフラート構造を有するものが好ましい。ランタノイドトリフラートについては、有機合成化学協会誌、第53巻第5号、p44−54)に詳述されている。前記トリフラートとしては、構造式では、X(OSOCFが例示される。ここでXは、希土類元素であり、これらの中でも、前記Xがスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、イッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)などであることがさらに好ましい。
【0069】
触媒として金属触媒を使用する場合には、脂肪族系ポリエステル樹脂中の触媒由来の金
属含有量を10ppm以下とすることが好ましく、7.5ppm以下とすることがより好ましく、5ppm以下とすることがさらに好ましい。
【0070】
加水分解酵素は、エステル合成反応を触媒するものであれば特に制限はない。
加水分解酵素として、具体的には、例えば、カルボキシエステラーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、アセチルエステラーゼ、ペクチンエステラーゼ、コレステロールエステラーゼ、タンナーゼ、モノアシルグリセロールリパーゼ、ラクトナーゼ、リポプロテインリパーゼ等のEC(酵素番号)3.1群(丸尾・田宮監修「酵素ハンドブック」朝倉書店(1982)等参照)に分類されるエステラーゼ、グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルクロニダーゼ、キシロシダーゼ等のグリコシル化合物に作用するEC3.2群に分類される加水分解酵素、エポキシドヒドラーゼ等のEC3.3群に分類される加水分解酵素、アミノペプチダーゼ、キモトリプシン、トリプシン、プラスミン、ズブチリシン等のペプチド結合に作用するEC3.4群に分類される加水分解酵素、フロレチンヒドラーゼ等のEC3.7群に分類される加水分解酵素等が挙げられる。
【0071】
上記エステラーゼのうち、グリセロールエステルを加水分解し脂肪酸を遊離する酵素を特にリパーゼと呼ぶが、リパーゼは有機溶媒中での安定性が高く、収率良くエステル合成反応を触媒し、さらに安価に入手し得ることなどの利点がある。したがって、脂肪族系ポリエステル樹脂の製造においても、収率やコストの面からリパーゼを用いることが好ましい。
【0072】
リパーゼには種々の起源のものを使用してもよいが、好ましいものとして、シュードモナス(Pseudomonas)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、カンジダ(Candida)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、リゾプス(Rhizopus)属、ムコール(Mucor)属等の微生物から得られるリパーゼ、植物種子から得られるリパーゼ、動物組織から得られるリパーゼ、さらに、パンクレアチン、ステアプシン等が挙げられる。このうち、シュードモナス属、カンジダ属、アスペルギルス属の微生物由来のリパーゼを用いることが好ましい。
【0073】
塩基性触媒としては、一般の有機塩基化合物、含窒素塩基性化合物、テトラブチルホスホニウムヒドロキシドなどのテトラアルキル又はアリールホスホニウムヒドロキシドを挙げられるがこれに限定されない。
有機塩基化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のアンモニウムヒドロキシド類、含窒素塩基性化合物としては、トリエチルアミン、ジベンジルメチルアミン等のアミン類、ピリジン、メチルピリジン、メトキシピリジン、キノリン、イミダゾールなど、さらにナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム等のアルカリ金属類及びカルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属類の水酸化物、ハイドライド、アミドや、アルカリ、アルカリ土類金属と酸との塩、例えば炭酸塩、燐酸塩、ほう酸塩、カルボン酸塩、フェノール性水酸基との塩が挙げられる。
また、アルコール性水酸基との化合物やアセチルアセトンとのキレート化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
重縮合工程における重縮合反応は、バルク重合、乳化重合、懸濁重合等の水中重合、溶液重合、界面重合等一般の重縮合法で実施し得る。また、重縮合反応は、大気圧下で反応してもよいが、ポリエステル分子量の高分子量化等を目的とした場合、減圧、窒素気流下等の一般的な条件を用いてもよい。
脂肪族系ポリエステル樹脂は、その特性を損なわない限り、記述の成分以外の重縮合性単量体(モノマー)を併用して重縮合してもよい。そのような重縮合性単量体(モノマー)としては、例えば、一価カルボン酸、一価アルコールや、不飽和結合を有するラジカル重合性モノマーなどが例示される。こうした単官能モノマーはポリエステル末端を保護するため、効果的な末端変性を可能としポリエステルの性状を制御し得る。単官能モノマーは重合初期から用いてもよいし、また重合途中に添加してもよい。
重縮合工程では、既述の単量体と、予め作製しておいたプレポリマーとの重合反応を含んでいてもよい。プレポリマーは、既述の単量体に、溶融又は混合し得るポリマーであれば限定されない。
【0075】
−生分解性−
本実施形態において、「生分解性」とは、脂肪族系ポリエステル樹脂が、微生物等によって分解されることを意味する。脂肪族系ポリエステル樹脂が、生分解性を有しているかは、JIS K 6950、JIS K 6951,JIS K 6953,JIS K 6955、ISO14855−2、OECD 301C等に記載の方法により評価し得る。
本実施形態においては、トナーを、厚み3mmで10cm四方のプレートに成形し、土壌中の水分率が50%以上を保持する比較的湿度の高い、例えば、日当たりの悪い土壌の中(地表から深さ15cm)にプレートを埋設し、埋設から6ヶ月後、及び12ヶ月後にプレートが元の形状を保っているか否かを目視により確認することで、脂肪族系ポリエステル樹脂の生分解性を確認する。さらに、より湿度の低い地表から深さ7cmの土壌中にプレートを埋めた態様についても同様に行い、湿度の異なる環境下でも脂肪族系ポリエステル樹脂が生分解し易いか否かを評価する。より湿度の低い地表から深さ7cmの土壌中で、埋設から6ヶ月以内に、プレートが元の形状を残していないことが好ましい。
【0076】
〔ロジンジオール由来の繰り返し単位を有するポリエステル樹脂(特定ロジン系ポリエステル樹脂)〕
ロジンジオール由来の繰り返し単位を有するポリエステル樹脂(特定ロジン系ポリエステル樹脂)は、ジカルボン酸成分由来の繰り返し単位と、ジアルコール成分由来の繰り返し単位として、ロジンジオール由来の繰り返し単位とを有するポリエステル樹脂である。
特定ロジン系ポリエステル樹脂の各繰り返し単位を構成するジカルボン酸成分およびロジンジオールは、特に制限されず、例えば、ジカルボン酸成分としては、脂肪族系ポリエステル樹脂の合成に用いるジカルボン酸成分として説明したジカルボン酸およびジカルボン酸の誘導体を用いてもよい。また、ロジンジオールは、例えば、ロジンとエポキシ化合物等とから公知の方法で合成したものを用いればよい。なお、ロジンは、松脂等の天然化合物に由来し、一般にカルボキシ基を有するため、ロジン酸とも呼ばれる。
【0077】
特定ロジン系ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分由来の繰り返し単位と、下記一般式(1)で表されるジアルコール成分由来の繰り返し単位と、を有するポリエステル樹脂が挙げられる。
【0078】
【化6】

【0079】
一般式(1)中、R及びRは水素、又はメチル基を表わす。L、L、Lはカルボニル基、エステル基、エーテル基、スルホニル基、直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基、環状アルキレン基、アリーレン基、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、LとL又はLとLで環を形成してもよい。A、Aはロジンエステル基を表わす。
【0080】
一般式(1)で表されるジアルコール成分は、1分子中に2個のロジンエステル基を含有するジアルコール化合物である(以下、特定ロジンジオールと称することがある)。一般式(1)中、R及びRは水素、又はメチル基を表わす。A、Aはロジンエステル基を表す。本実施形態において、ロジンエステル基とは、ロジンに含まれるカルボキシル基から水素原子を除いた残基をいう。
【0081】
特定ロジンジオールに含有されるロジンエステル基の元となるロジンは、嵩高い構造を有し、且つ、疎水性が高い性質のため、ロジンエステル基を含む特定ロジン系ポリエステル樹脂は含水しにくい。それに加えて、ポリエステル樹脂の構造上、樹脂分子の末端にのみ水酸基又はカルボキシル基が存在するため、トナーの帯電性に悪影響を与えるおそれのある水酸基又はカルボキシル基の量を増やすことなく樹脂中のロジンエステル基の量を増やし得る。さらに、特定ロジンジオールをロジンと2官能エポキシ化合物とを反応させて得る場合に、2官能エポキシ化合物中のエポキシ基とロジン中のカルボキシル基との間で生ずるエポキシ基の開環反応は、アルコール成分とロジンとの間で生ずるエステル化反応よりも反応性が高いため、特定ロジン系ポリエステル樹脂中に未反応のロジンが残留しにくい。
【0082】
以下に、特定ロジン系ポリエステル樹脂の合成スキームの一例を示す。下記合成スキームにおいては、2官能のエポキシ化合物とロジンとを反応させて特定ロジンジオールが合成され、この特定ロジンジオールとジカルボン酸成分とを脱水重縮合させることで特定ロジン系ポリエステル樹脂が合成される。なお、特定ロジン系ポリエステル樹脂を表す構造式のうち、点線で囲まれた部分が本実施形態に係るロジンエステル基に該当する。
【0083】
【化7】



【0084】
なお、特定ロジン系ポリエステル樹脂を加水分解すると下記モノマーに分解する。ポリエステル樹脂はジカルボン酸とジオールの1:1縮合物なので、分解物から樹脂の構成成分を推定し得る。
【0085】
【化8】



【0086】
一般式(1)において、L、L、Lはカルボニル基、エステル基、エーテル基、スルホニル基、直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基、環状アルキレン基、アリーレン基、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、LとL又はLとLで環を形成してもよい。
【0087】
、L、Lで表される直鎖状または分岐状アルキレン基としては、例えば、炭素数1以上10以下の直鎖状または分岐状アルキレン基が挙げられる。
【0088】
、L、Lで表される環状アルキレン基としては、例えば、炭素数3以上7以下の環状アルキレン基が挙げられる。
【0089】
、L、Lで表されるアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセン基が挙げられる。
【0090】
直鎖状、分岐状、または環状のアルキレン基、及びアリーレン基の置換基の例としては炭素数1以上8以下のアルキル基、アリール基などが挙げられ、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。
【0091】
一般式(1)で表わされる特定ロジンジオールは公知の方法によって合成され、例えば、2官能エポキシ化合物とロジンの反応により合成し得る。本実施形態で用いてもよいエポキシ基含有化合物は1分子中にエポキシ基を2個含む2官能エポキシ化合物であり、芳香族系ジオールのジグリシジルエーテル、芳香族系ジカルボン酸のジグリシジルエーテル、脂肪族系ジオールのジグリシジルエーテル、脂環式ジオールのジグリシジルエーテル、脂環式エポキシド等が挙げられる。
【0092】
芳香族系ジオールのジグリシジルエーテルの代表例としては、芳香族ジオール成分としてビスフェノールA、ビスフェノールAのポリアルキレンオキサイド付加物等のビスフェノールAの誘導体類、ビスフェノールF、ビスフェノールFのポリアルキレンオキサイド付加物等のビスフェノールFの誘導体類、ビスフェノールS、ビスフェノールSのポリアルキレンオキサイド付加物等のビスフェノールSの誘導体類、レソルシノール、t−ブチルカテコール、ビフェノールなどが挙げられる。
【0093】
芳香族系ジカルボン酸のジグリシジルエーテルの代表例としては、芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸などが挙げられる。
【0094】
脂肪族系ジオールのジグリシジルエーテルの代表例としては、脂肪族ジオール成分としてエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0095】
脂環式ジオールのジグリシジルエーテルの代表例としては、脂環式ジオール成分として水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのポリアルキレンオキサイド付加物等の水添ビスフェノールAの誘導体類、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0096】
脂環式エポキシドの代表例としては、リモネンジオキサイドが挙げられる。
【0097】
上記エポキシ基含有化合物は、例えば、ジオール成分とエピハロヒドリンの反応で得られるが、その量比によって重縮合させることができ高分子量化してもよい。
【0098】
本実施形態において、ロジンと2官能エポキシ化合物との反応は、主としてロジンのカルボキシル基と2官能エポキシ化合物のエポキシ基との開環反応により進む。その際、反応温度としては両構成成分の溶融温度以上、及び/又は偏りの少ない混合が可能な温度であることが好ましく、具体的には60℃以上200℃以下の範囲が一般的である。反応に際し、エポキシ基の開環反応を促進する触媒を加えてもよい。
【0099】
触媒としては、エチレンジアミン、トリメチルアミン、2−メチルイミダゾールなどのアミン類、トリエチルアンモニウムブロマイド、トリエチルアンモニウムクロライド、ブチルトリメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム塩類、トリフェニルホスフィンなどが挙げられる。
【0100】
反応は種々の方法があり、一般的には回分式の場合は冷却管、撹拌装置、不活性ガス導入口、温度計等を備えた加熱可能なフラスコに所定の割合でロジンと2官能エポキシ化合物を仕込み、加熱溶融し適宜反応物をサンプリングすることによって反応進行を追跡し得る。反応を進行度は主として酸価の低下によって確認され、化学量論的な反応終点あるいはその近傍に到達した時点をもって適宜反応を完結すればよい。
【0101】
ロジンと2官能エポキシ化合物との反応比率は特に制限されないが、ロジンと2官能エポキシ化合物のモル比は、2官能エポキシ化合物1モルに対してロジンを1.5モル以上2.5モル以下の範囲で反応させるのが好ましい。
【0102】
本実施形態で用いるロジンとは、樹木から得られる樹脂酸の総称であり、主成分は3環性ジテルペン類の1種であるアビエチン酸とその異性体類を含む天然物由来の物質である。具体的な成分としては、例えば、アビエチン酸の他にパラストリン酸、ネオアビエチン酸、ピマル酸、デヒドロアビエチン酸、イソピマル酸、サンダラコピマル酸などがあり、本実施形態で用いるロジンはこれらの混合物である。
ロジンは採取方法による分類では、原料をパルプとするトールロジン、原料を生松脂とするガムロジン、及び原料を松の切り株とするウッドロジンの3種に大別される。本実施形態で用いるロジンは入手が容易であることからガムロジン及び/又はトールロジンが好ましい。
これらのロジン類は精製することが好ましい。未精製のロジン類から樹脂酸の過酸化物から生起したと考えられる高分子量物や、未精製のロジン類に含まれていた不ケン化物を除去することにより精製ロジンが得られる。精製方法は特に限定されず、公知の各種精製方法を選択すればよい。具体的には蒸留、再結晶、抽出等の方法が挙げられる。工業的には蒸留による精製を行うことが好ましい。蒸留は、通常、200℃以上300℃以下、6.67kPa以下の圧力で蒸留時間を考慮して選択される。再結晶は、例えば、未精製ロジンを良溶媒に溶解し、ついで溶媒を留去して濃厚な溶液とし、この溶液に貧溶媒を添加することにより行う。良溶媒としてはベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、クロロホルムなどの塩素化炭化水素類、低級アルコール等のアルコール類、アセトンなどのケトン類、酢酸エチルなどの酢酸エステル類等が挙げられ、貧溶媒としてはn−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、イソオクタン等の炭化水素系溶媒が挙げられる。抽出は、例えば、アルカリ水を用いて未精製のロジンをアルカリ水溶液となし、これに含まれる不溶性の不ケン化物を、有機溶媒を用いて抽出したのち、水層を中和することで精製ロジンを得る方法である。
【0103】
本実施形態で用いられるロジンは、不均化ロジンでも良い。不均化ロジンとは、主成分としてアビエチン酸を含むロジンを不均化触媒の存在下で高温加熱することによって、分子内の不安定な共役二重結合を消失させたもので、主成分として、デヒドロアビエチン酸とジヒドロアビエチン酸との混合物である。
不均化触媒としては、パラジウムカーボン、ロジウムカーボン、白金カーボンなどの担持触媒、ニッケル、白金等の金属粉末、ヨウ素、ヨウ化鉄等のヨウ化物等の各種公知のものが挙げられる。
【0104】
また、本実施形態で用いられるロジンは、分子内の不安定な共役二重結合を消失させることを目的として水素化ロジンでも良い。水素化反応については、公知の水素化反応条件を適宜選択すればよい。すなわち、水素化触媒の存在下に水素加圧下で、ロジンを加熱させることにより行う。水素化触媒としては、パラジウムカーボン、ロジウムカーボン、白金カーボンなどの担持触媒、ニッケル、白金等の金属粉末、ヨウ素、ヨウ化鉄等のヨウ化物等の各種公知のものが挙げられる。
【0105】
これらの不均化ロジン、水素化ロジンは、不均化処理、又は水素化処理の前後において、上記精製工程を設けても良い。
【0106】
以下に、本実施形態で好適に用いうる特定ロジンジオールの例示化合物を以下に示すが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0107】
【化9】



【0108】
【化10】

【0109】
【化11】

【0110】
【化12】

【0111】
【化13】

【0112】
【化14】

【0113】
【化15】

【0114】
なお、上記特定ロジンジオールの例示化合物において、nは1以上の整数を表す。
【0115】
特定ロジンジオールは、下記一般式(II)で表されるロジンジオールであることが好ましい。従って、特定ロジン系ポリエステル樹脂は、一般式(II)で表されるロジンジオールとジカルボン酸との重縮合体であることが好ましい。
【0116】
【化16】

【0117】
前記一般式(II)中、Rは安定化ロジン残基、又は安定化ロジン残基と一塩基酸基からなる二種の基を表し、nは1以上6以下の整数を表す。Rは、nが1である場合、水素原子を表し、nが2以上である場合、2つのRが水素原子を表し、残りのRがアセトアセチル基、又はアセトアセチル基と少なくとも一種の一塩基酸基からなる二種以上の基を表す。Rは水素原子及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも一種を表し、Dはメチレン基又はイソプロピレン基を表す。
【0118】
一般式(II)中、Rとして示される安定化ロジン残基は、安定化ロジンをE−COOH(Eは安定化ロジンのカルボキシ基を除く分子骨格)と表したとき、E−CO−として表され、エポキシ化合物に安定化ロジンを反応させて生じた安定化ロジン変性エポキシ化合物のエステル結合(−CO−O−)におけるカルボニル(−CO−)を含む基である。
ここで、ビスフェノール型のエポキシ化合物としては、公知のものを用いればよく、例えば、ビスフェノールA型のエポキシ化合物、ビスフェノールF型のエポキシ化合物およびビスフェノールA型の臭素化エポキシ化合物等が挙げられる。
【0119】
安定化ロジンとしては、不均化ロジン、水素化ロジンや、天然ロジンに不均化工程、水素化工程及び精製工程を任意に経由させてえられるいわゆる無色ロジン等が挙げられる。
【0120】
一般式(II)中、nは、ビスフェノール型エポキシ化合物の骨格単位数を表し、1以上6以下の整数(1単位以上6単位以下)であることが好ましく、2以上5以下(2単位以上5単位以下)であることがより好ましい。骨格単位数が6単位以内であることで、一般式(II)で表されるロジンジオールの高粘度化を抑制し、特定ロジン系ポリエステル樹脂を合成し易い。骨格単位数が1単位以上であることが、エポキシ化合物がビフェノール型を構成する最低条件である。
【0121】
ビスフェノール型のエポキシ化合物に対する安定化ロジンの割合は、エポキシ化合物のエポキシ基1モル当量に対して、0.3モル以上1.2モル以下であり、0.5モル以上0.9モル以下であることが好ましい。安定化ロジンの割合を1.2モル以下とすることで未反応のロジンの残存を抑制し得る。
なお、ビスフェノール型のエポキシ化合物と安定化ロジンとの反応に際しては、安定化ロジンと併用して、または順次に仕込んで、一塩基酸を使用してもよい。その場合、一塩基酸の割合は、エポキシ化合物のエポキシ基1モル当量に対して0.7モル以下とするのがよい。
【0122】
一般式(II)中、R1として示される一塩基酸基とは、1分子中に他の陽イオンと交換できる水素イオンが1個ある酸である基をいう。
一塩基酸としては、例えば、炭素数1以上18以下の飽和もしくは不飽和の脂肪族カルボン酸、炭素数6以上11以下の飽和もしくは不飽和脂環族カルボン酸または芳香族カルボン酸のいずれか少なくとも一種が挙げられる。具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクチル酸、ラウリン酸、ステアリン酸、安息香酸、t-ブチル安息香酸、ヘキサヒドロ安息香酸、フェニル酢酸、オレイン酸、パルミチン酸等が例示される。
【0123】
ビスフェノール型のエポキシ化合物と安定化ロジンとの反応の方法は、特に制限されず、たとえば、ビスフェノール型のエポキシ化合物と安定化ロジンとを同時に混合する方法によればよく、通常、反応温度を180℃以上240℃以下とし、また、反応時間を8時間以上18時間以下として行う。
【0124】
一般式(II)中、Rは、nが1である場合、水素原子を表し、nが2以上である場合、2つのRが水素原子を表し、残りのRがアセトアセチル基、又はアセトアセチル基と少なくとも一種の一塩基酸基からなる二種以上の基を表す。
すなわち、一般式(II)中にRが2つある場合も、3つ以上ある場合も、Rは、合計して2つの水素原子を表し、一般式(II)で表される化合物がジオール化合物であることを意味する。
【0125】
として、「アセトアセチル基、またはアセトアセチル基と少なくとも一種の一塩基酸基」を導入する場合における、アセトアセチル基と一塩基酸基の割合(モル比)は、アセトアセチル基:一塩基酸基を、65:35以上100:0以下、70:30以上100:0以下とするのがよい。
として表される「アセトアセチル基、またはアセトアセチル基と少なくとも一種の一塩基酸基」は、安定化ロジンにより変性され、ヒドロキシ基を3つ以上有するエポキシ化合物(nが3以上)に、ジケテン又はジケテンと少なくとも一種の一塩基酸を反応させることにより得られる。
ジケテンは、変性エポキシ化合物のヒドロキシ基と反応させることにより、Rにアセトアセチル基を導入するために使用されるものである。
【0126】
アセトアセチル基を分子中に導入するに際し、ジケテンのみを使用する場合、その使用量は変性エポキシ化合物のヒドロキシ基の1モル当量に対して、通常0.8モル当量以上1.2モル当量以下、好ましくは1.0モル当量以上1.1モル当量以下とするのがよい。
【0127】
また、ジケテンと少なくとも一種の一塩基酸を使用する場合、反応の操作上、3つ以上のヒドロキシ基を有する変性エポキシ化合物に対して、まず、一塩基酸を加え、次いでジケテンを仕込み反応させる方法によるのがよい。
詳しくは、まず、変性エポキシ樹脂のヒドロキシ基の1モル当量に対して、通常、0.35モル当量以下、好ましくは0.30モル当量以下の一塩基酸を反応させてから、残存ヒドロキシ基の理論値の1モル当量に対して0.8モル当量以上1.2当量以下、好ましくは1.0モル当量以上1.1モル当量以下のジケテンを反応させるのがよい。
【0128】
上記反応において、3つ以上のヒドロキシ基を有する変性エポキシ化合物に対して、一塩基酸をエステル化反応させる条件は、エポキシ化合物と安定化ロジンとのエステル化の反応条件と同様でよく、安定化ロジンによるエステル化反応に続けて、一塩基酸のエステル化反応を行えばよい。また、ジケテンを反応させる温度は、40℃以上80℃以下であることが好ましく、反応時間は1時間以上3時間以下とするのがよい。
【0129】
上記エステル化反応に際しては、いずれの場合も高温反応であるため、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行うのが望ましい。また、着色防止剤、酸化防止剤等の使用、各反応工程における触媒の使用等はすべて任意である。また、反応をトルエン、キシレンなど不活性溶媒中で行うことも任意である。
【0130】
一般式(II)中、Rは水素原子及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも一種を表し、Dはメチレン基又はイソプロピレン基を表す。
一般式(II)における2つのRは、同じであっても異なっていてもよい。また、一般式(II)における2つ以上のDおよびRについても、各々、同じであっても異なっていてもよい。また、一般式(II)におけるRが2つ以上のアセトアセチル基、またはアセトアセチル基と少なくとも一種の一塩基酸基からなる二種以上の基を有するとき、すなわち、nが3以上であるときは、水素原子として表される2つのR以外のRは、同じであっても異なっていてもよい。
【0131】
次に、特定ロジン系ポリエステル樹脂のジカルボン酸成分由来の繰り返し単位を構成するジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いればよい。
例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、分岐鎖を有する炭素数1以上20以下のアルキルコハク酸、分岐鎖を有する炭素数1以上20以下のアルケニル基を有するアルケニルコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸;それらの酸の無水物及び、それらの酸のアルキル(炭素数1以上3以下)エステル等が挙げられる。これらの中では、トナーの耐久性、定着性及び着色剤の分散性の観点から芳香族カルボン酸化合物が好ましい。
【0132】
本実施形態においては、ジアルコール成分として特定ロジンジオール以外のその他のジアルコール成分を併用してもよい。本実施形態における特定ロジンジオールの含有量は、機械的強度の観点からジアルコール成分中10モル%以上100モル%以下が好ましく、20モル%以上90モル%以下がより好ましい。
【0133】
前記特定ロジンジオール以外のアルコール成分として、脂肪族ジオール及びエーテル化ジフェノールからなる群より選ばれる少なくとも1種を、トナー性能を落とさない範囲で用いてもよい。
脂肪族ジオールの例としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−メチルプロパン−1,3−ジオール、2−ブチル−2−エチルプロパン−1,3−ジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロパノエート、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これら脂肪族ジオールは単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
また、本実施形態において、脂肪族ジオールと共に、エーテル化ジフェノールを更に用いても良い。エーテル化ジフェノールとは、ビスフェノールAとアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるジオールであり、該アルキレンオキサイドとしてはエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドであり、該アルキレンオキサイドの平均付加モル数がビスフェノールAの1モルに対して2モル以上16モル以下であるものが好ましい。
【0134】
特定ロジン系ポリエステル樹脂は、前記ジカルボン酸成分、および、ジアルコール成分を原料として、公知慣用の製造方法によって調製され、脂肪族系ポリエステル樹脂の合成方法として説明したエステル交換反応又は直接エステル化反応方法により合成すればよい。合成にあたっては、既述の重縮合触媒を反応触媒として用いてもよい。これら反応触媒の添加量はジカルボン酸成分とジアルコール成分の総量100部に対して、0.01部以上1.5部以下が好ましく、0.05部以上1.0部以下がより好ましい。反応温度は180℃以上300℃以下の温度で行えばよい。
【0135】
トナーの定着性、保存性、及び耐久性の観点から特定ロジン系ポリエステル樹脂の軟化温度は80℃以上160℃以下が好ましく、90℃以上150℃以下がより好ましい。また、特定ロジン系ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、定着性、保存性、及び耐久性の観点から35℃以上80℃以下が好ましく、40℃以上70℃以下がより好ましい。軟化温度及びガラス転移温度は、原料モノマー組成、重合開始剤、分子量、触媒量等の調整、又は反応条件の選択により容易に調整される。
【0136】
なお、特定ロジン系ポリエステル樹脂は、変性されたポリエステルであっても良い。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルを包含する。
【0137】
本実施形態のトナーは、既述の脂肪族系ポリエステル樹脂と、特定ロジン系ポリエステル樹脂との割合は、次の割合で用いることが好ましい。
すなわち、特定ロジン系ポリエステル樹脂に対する脂肪族系ポリエステル樹脂の含有比(脂肪族系ポリエステル樹脂/特定ロジン系ポリエステル樹脂)が、質量基準で5/95以上40/60以下であることが好ましい。特定ロジン系ポリエステル樹脂に対する脂肪族系ポリエステル樹脂の含有比が5/95以上であることで、トナーの生分解性を高め、40/60以下であることで、トナーの強度を保ち易い。
特定ロジン系ポリエステル樹脂に対する脂肪族系ポリエステル樹脂の含有比は、6/94以上30/70以下であることがより好ましく、8/92以上20/80以下であることがさらに好ましい。
【0138】
既述の脂肪族系ポリエステル樹脂と、特定ロジン系ポリエステル樹脂とをトナーの結着樹脂として用いることにより、強度を保ち、生分解性に優れたトナーが得られる。
本実施形態のトナーには、本実施形態の効果を損なわない範囲で、公知の結着樹脂、例えば、スチレン−アクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等の他の樹脂が併用されても良いが、本実施形態の特定ポリエステルの含有量は、結着樹脂中、70%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、実質的に100%であることがさらに好ましい。
【0139】
本実施形態のトナーは、既述の脂肪族系ポリエステル樹脂と、特定ロジン系ポリエステル樹脂を含有し、必要に応じて、さらに、着色剤、離型剤、外添剤等のその他の成分を含んでもよい。
【0140】
〔着色剤〕
本実施形態で用いられる着色剤としては、染料であっても顔料であってもかまわないが、耐光性や耐水性の観点から顔料が望ましい。
望ましい着色剤としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、キナクリドン、ベンジシンイエロー、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド185、C.I.ピグメント・レッド238、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー74、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等の公知の顔料を使用してもよい。
【0141】
トナーにおける着色剤の含有量としては、結着樹脂100部に対して、1部以上30部以下の範囲が望ましい。また、必要に応じて表面処理された着色剤を使用したり、顔料分散剤を使用したりすることも有効である。前記着色剤の種類を選択することにより、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナー等が得られる。
【0142】
離型剤としては、例えば、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン等のパラフィンワックス;シリコーン樹脂;ロジン類;ライスワックス;カルナバワックス;等が挙げられる。これらの離型剤の融解温度は、50℃以上100℃以下が望ましく、60℃以上95℃以下がより望ましい。離型剤のトナー中の含有量は0.5%以上15%以下が望ましく、1.0%以上12%以下がより望ましい。離型剤の含有量が0.5%以上であれば、特にオイルレス定着において剥離不良の発生が防止される。離型剤の含有量が15%以下であれば、トナーの流動性が悪化することがなく、画質および画像形成の信頼性が向上する。
【0143】
帯電制御剤としては、公知のものを使用してもよいが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤を用いてもよい。
【0144】
本実施形態のトナーは、流動性の向上などを目的として、白色の無機粉末を外添剤として含有してもよい。適当な無機粉末としては、例えば、シリカ粉末、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化硅素、窒化硅素などが挙げられるが、シリカ粉末が特に望ましい。かかる無機粉末のトナーに混合される割合は、通常、トナー100部に対して0.01部以上5部以下の範囲であり、望ましくは0.01部以上2.0部以下の範囲である。また、かかる無機粉末に、シリカ、チタン、樹脂粒子(ポリスチレン、PMMA、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、アルミナ等の公知の材料を併用してもよい。また、クリーニング活剤として、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子粉末を添加してもよい。
【0145】
−トナーの特性−
本実施形態のトナーの形状係数SF1は110以上150以下の範囲であることが望ましく、120以上140以下の範囲であることがより望ましい。
【0146】
ここで上記形状係数SF1は、下記式(S)により求められる。
SF1=(ML/A)×(π/4)×100 ・・・ 式(S)
上記式(S)中、MLはトナーの絶対最大長、Aはトナーの投影面積を各々示す。
【0147】
SF1は、主に顕微鏡画像または走査型電子顕微鏡(SEM)画像を画像解析装置を用いて解析することによって数値化され、例えば、以下のようにして算出される。すなわち、スライドガラス表面に散布した粒子の光学顕微鏡像を、ビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、100個の粒子の最大長と投影面積を求め、上記式(S)によって計算し、その平均値を求めることにより得られる。
【0148】
本実施形態のトナーの体積平均粒子径は8μm以上15μm以下の範囲であることが望ましく、より望ましくは9μm以上14μm以下の範囲であり、さらに望ましくは10μm以上12μm以下の範囲である。
【0149】
なお、上記体積平均粒子径の測定は、コールターマルチサイザー(コールター社製)を用いて、50μmのアパーチャー径で行われる。この際、測定はトナーを電解質水溶液(アイソトン水溶液)に分散させ、超音波により30秒以上分散させた後に行った。
【0150】
本実施形態のトナーの製造方法は特に限定されず、公知である混練粉砕法等の乾式法や、乳化凝集法や懸濁重合法等の湿式法等によってトナー粒子を作製し、必要に応じてトナー粒子に外添剤が外添されてトナーが得られる。
【0151】
上述した混練粉砕法においては、まず、上述の結着樹脂、着色剤、離型剤等の成分を混合した後、溶融混練を行う。溶融混練機としては、三本ロール型、一軸スクリュー型、二軸スクリュー型、バンバリーミキサー型が挙げられる。得られた混練物を粗粉砕した後、例えば、マイクロナイザー、ウルマックス、ジェット−O−マイザー、ジェットミル、クリプトロン、ターボミル等の粉砕機により粉砕を行い、エルボージェット、ミクロプレックス、DSセパレーターなどの分級装置により分級処理を施してトナーが得られる。
【0152】
本実施形態のトナーにおいて、トナーの強度を保ちつつ、脂肪族系ポリエステル樹脂の生分解性の阻害を抑制するには、脂肪族系ポリエステル樹脂と、特定ロジン系ポリエステル樹脂とが、トナー中に偏りなく混合して存在していることが好ましい。トナーがこのような形態をとるためには、トナーを乳化凝集法や懸濁重合法等の湿式法等によってトナーを作製することが好ましい。
乳化凝集法は、トナーを構成する原料を乳化して樹脂粒子(乳化粒子)を形成する乳化工程と、該樹脂粒子を含む凝集体を形成する凝集工程と、凝集体を融合させる融合工程とを有してもよい。
【0153】
(乳化工程)
例えば樹脂粒子分散液の作製は、水系媒体と結着樹脂とを混合した溶液に、分散機により剪断力を与えることにより行ってもよい。その際、加熱して樹脂成分の粘性を下げて粒子を形成してもよい。また分散した樹脂粒子の安定化のため、分散剤を使用してもよい。
さらに、樹脂が油性で水への溶解度の比較的低い溶剤に溶解するものであれば、該樹脂をそれらの溶剤に解かして水中に分散剤や高分子電解質と共に粒子分散し、その後加熱又は減圧して溶剤を蒸散することにより、樹脂粒子分散液が作製される。
ここで、樹脂粒子分散液の調製にあたり、結着樹脂として少なくとも用いる記述の脂肪族系ポリエステル樹脂と、特定ロジン系ポリエステル樹脂とは、既述の割合で用いることが好ましく、混合順序等の混合条件は特に制限されない。
【0154】
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水;アルコール類;などが挙げられるが、水であることが望ましい。
また、乳化工程に使用される分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアニオン性界面活性剤、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤;リン酸三カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の無機塩;等が挙げられる。
【0155】
前記乳化液の作製に用いる分散機としては、例えば、ホモジナイザー、ホモミキサー、加圧ニーダー、エクストルーダー、メディア分散機等が挙げられる。樹脂粒子の大きさとしては、その平均粒子径(体積平均粒子径)は1.0μm以下が望ましく、60nm以上300nm以下の範囲であることがより望ましく、さらに望ましくは150nm以上250nm以下の範囲である。60nm未満では、樹脂粒子が分散液中で安定な粒子となるため、該樹脂粒子の凝集が困難となる場合がある。また1.0μmを超えると、樹脂粒子の凝集性が向上しトナー粒子を作成することが容易となるが、トナーの粒子径分布が広がってしまう場合がある。
【0156】
離型剤分散液の調製に際しては、離型剤を、水中にイオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質と共に分散した後、離型剤の融解温度以上の温度に加熱すると共に、強いせん断力が付与されるホモジナイザーや圧力吐出型分散機を用いて分散処理する。上記処理を経ることにより、離型剤分散液が得られる。分散処理の際、ポリ塩化アルミニウム等の無機化合物を分散液に添加してもよい。望ましい無機化合物としては、例えば、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、高塩基性ポリ塩化アルミニウム(BAC)、ポリ水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等が望ましい。上記離型剤分散液は乳化凝集法に用いられるが、トナーを懸濁重合法により製造する際にも上記離型剤分散液を用いてもよい。
【0157】
分散処理により、体積平均粒子径が1μm以下の離型剤粒子を含む離型剤分散液が得られる。なお、より望ましい離型剤粒子の体積平均粒子径は、100nm以上500nm以下である。
体積平均粒子径が100nm未満では、使用される結着樹脂の特性にも影響されるが、一般的に離型剤成分がトナー中に取り込まれにくくなる。また、500nmを超える場合には、トナー中の離型剤の分散状態が不十分となる場合がある。
【0158】
着色剤分散液の調製は、公知の分散方法が利用でき、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル、アルティマイザーなどの一般的な分散手段を採用することができ、なんら制限されるものではない。着色剤は、水中にイオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質と共に分散される。分散させた着色剤粒子の体積平均粒子径は1μm以下であればよいが、80nm以上500nm以下の範囲であれば、凝集性を損なうことなく且つトナー中の着色剤の分散が良好で望ましい。
【0159】
(凝集工程)
凝集工程においては、樹脂粒子の分散液、着色剤分散液、離型剤分散液等を混合して混合液とし、樹脂粒子のガラス転移温度以下の温度で加熱して凝集させ、凝集粒子を形成する。凝集粒子の形成は、攪拌下、混合液のpHを酸性にすることによってなされる場合が多い。pHとしては、2以上7以下の範囲が望ましく、この際、凝集剤を使用することも有効である。
なお、凝集工程において、離型剤分散液は、樹脂粒子分散液等の各種分散液とともに一度に添加・混合してもよいし、複数回に分割して添加しても良い。
【0160】
凝集剤としては、前記分散剤に用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩の他、2価以上の金属錯体が好適に用いられる。特に、金属錯体を用いた場合には界面活性剤の使用量を低減でき、帯電特性が向上するため特に望ましい。
【0161】
無機金属塩としては、特に、アルミニウム塩およびその重合体が好適である。より狭い粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価、3価より4価の方が、また、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方が、より適している。
【0162】
また、凝集粒子が所望の粒子径になったところで樹脂粒子分散液を追添加することで(被覆工程)、コア凝集粒子の表面を樹脂で被覆した構成のトナーを作製してもよい。この場合、離型剤や着色剤がトナー表面に露出しにくくなるため、帯電性や現像性の観点で望ましい構成である。追添加する場合、追添加前に凝集剤を添加したり、pH調整を行ってもよい。
【0163】
(融合工程)
融合工程においては、凝集工程に準じた攪拌条件下で、凝集粒子の懸濁液のpHを3以上9以下の範囲に上昇させることにより凝集の進行を止め、樹脂のガラス転移温度以上の温度で加熱を行うことにより凝集粒子を融合させる。また、樹脂で被覆した場合には、該樹脂も融合しコア凝集粒子を被覆する。加熱の時間としては、融合がされる程度行えばよく、0.5時間以上10時間以下程度行えばよい。
【0164】
融合後に冷却し、融合粒子を得る。また冷却の工程で、樹脂のガラス転移温度近傍(ガラス転移温度±10℃の範囲)で冷却速度を落とす、いわゆる徐冷をすることで結晶化を促進してもよい。
融合して得た融合粒子は、ろ過などの固液分離工程や、必要に応じて洗浄工程、乾燥工程を経てトナー粒子とされる。トナー粒子に外添剤を外添しない場合には、得られたトナー粒子をトナーとして用いてもよい。
【0165】
(外添工程)
得られたトナー粒子には、必要に応じて、流動化剤や助剤等の外添剤が添加処理される。外添剤としては、上述した公知の粒子が使用される。
【0166】
<静電荷像現像用現像剤>
本実施形態の現像剤は、本実施形態のトナーを少なくとも含むものである。
本実施形態のトナーは、そのまま一成分現像剤として、あるいは二成分現像剤として用いられる。二成分現像剤として用いる場合にはキャリアと混合して使用される。
【0167】
二成分現像剤に使用し得るキャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアを用いてもよい。例えば酸化鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物や、これら芯材表面に樹脂被覆層を有する樹脂コートキャリア、磁性分散型キャリア等が挙げられる。またマトリックス樹脂に導電材料などが分散された樹脂分散型キャリアであってもよい。
【0168】
前記二成分現像剤における、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100程度の範囲が好ましく、3:100乃至20:100程度の範囲がより好ましい。
【0169】
<画像形成装置および画像形成方法>
次に、本実施形態の現像剤を用いた本実施形態の画像形成装置について説明する。
本実施形態の画像形成装置は、潜像保持体と、潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、潜像保持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、本実施形態の現像剤を収納し、本実施形態の現像剤により、静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体にトナー像を定着する定着手段と、を備える。
本実施形態の画像形成装置により、潜像保持体表面を帯電する帯電工程と、潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、本実施形態の現像剤により、静電潜像を現像してトナー像を形成する現像工程と、トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、記録媒体にトナー像を定着する定着工程とを含む本実施形態の画像形成方法が実施される。
【0170】
尚、この画像形成装置において、例えば前記現像手段を含む部分が、画像形成装置本体に対して着脱可能なカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。該プロセスカートリッジとしては、本実施形態の現像剤を収納し、潜像保持体表面に形成された静電潜像を前記現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段を備え、画像形成装置に着脱される本実施形態のプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0171】
以下、本実施形態の画像形成装置の一例を示すが、本実施形態はこれに限定されるわけではない。尚、図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
図1は、4連タンデム方式のカラー画像形成装置を示す概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」ということがある。)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して着脱可能なプロセスカートリッジであってもよい。
【0172】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図中における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20内面に接する駆動ローラ22および支持ローラ24に巻回されて設けられ、第1ユニット10Yから第4ユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。尚、支持ローラ24は、図示しないバネ等により駆動ローラ22から離れる方向に付勢されており、両者に巻回された中間転写ベルト20に予め定められた張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の潜像保持体側面には、駆動ローラ22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給可能である。
【0173】
上述した第1乃至第4ユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1ユニット10Yについて代表して説明する。尚、第1ユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4ユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0174】
第1ユニット10Yは、潜像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ローラ2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電潜像を形成する露光装置3、静電潜像に帯電したトナーを供給して静電潜像を現像する現像装置(現像手段)4Y、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ローラ(1次転写手段)5Y、および1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段)6Yが順に配設されている。
尚、1次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ローラに印加する転写バイアスを可変する。
【0175】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ローラ2Yによって感光体1Yの表面が−600V以上−800V以下程度の電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(20℃における体積抵抗率:1×10−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電潜像が感光体1Yの表面に形成される。
【0176】
静電潜像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
このようにして感光体1Y上に形成された静電潜像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電潜像が、現像装置4Yによって可視像(現像像)化される。
【0177】
現像装置4Y内に収納されているイエロー現像剤は、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が予め定められた1次転写位置へ搬送される。
【0178】
感光体1Y上のイエロートナー像が1次転写位置へ搬送されると、1次転写ローラ5Yに予め定められた1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ローラ5Yに向かう静電気力がトナー像に作用され、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性(+)の極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部(図示せず)によって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーはクリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0179】
また、第2ユニット10M以降の1次転写ローラ5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1ユニットに準じて制御されている。
こうして、第1ユニット10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4ユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ね合わされて重ね合わせトナー像が形成される。
【0180】
第1乃至第4ユニットを通して4色のトナー像が重ね合わされた中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ローラ(2次転写手段)26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録紙(被転写体)Pが供給機構を介して2次転写ローラ26と中間転写ベルト20とが圧接されている隙間に予め定められたタイミングで給紙され、予め定められた2次転写バイアスが支持ローラ24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性(−)の極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向かう静電気力が重ね合わせトナー像に作用され、中間転写ベルト20上の重ね合わせトナー像が記録紙P上に転写される。尚、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0181】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段)28へと送り込まれ重ね合わせトナー像が加熱され、色重ねしたトナー像が溶融されて、記録紙P上へ定着される。カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬送ロール(排出ロール)32により搬送され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
尚、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介して重ね合わせトナー像を記録紙Pに転写する構成となっているが、この構成に限定されるものではなく、感光体から直接トナー像が記録紙に転写される構造であってもよい。
【0182】
<プロセスカートリッジ、トナーカートリッジ>
図2は、本実施形態の現像剤を収納するプロセスカートリッジの好適な一例を示す概略構成図である。プロセスカートリッジ200は、感光体107とともに、帯電ローラ108、現像装置111、感光体クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、および除電露光のための開口部117を取り付けレール116を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。
上記プロセスカートリッジ200は、転写装置112と、定着装置115と、図示しない他の構成部分とから構成される画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。尚、300は記録紙である。
【0183】
図2で示すプロセスカートリッジ200では、感光体107、帯電装置108、現像装置111、クリーニング装置113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を備えているが、これら装置は選択的に組み合わせてもよい。本実施形態のプロセスカートリッジでは、現像装置111のほかには、感光体107、帯電装置108、クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117から構成される群から選択される少なくとも1種を備えてもよい。
【0184】
次に、トナーカートリッジについて説明する。
トナーカートリッジは、画像形成装置に着脱可能に装着され、少なくとも、前記画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するためのトナーを収容するトナーカートリッジにおいて、前記トナーが既述した本実施形態のトナーとしたものである。なお、トナーカートリッジには少なくともトナーが収容されればよく、画像形成装置の機構によっては、例えば現像剤が収められてもよい。
【0185】
なお、図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱が可能な構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しない現像剤供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収納されている現像剤が少なくなった場合には、このトナーカートリッジを交換すればよい。
【実施例】
【0186】
以下、実施例を挙げて本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態は以下に示す実施例にのみ限定されるものではない。なお、実施例中において「質量部」及び「質量%」は、特に断りのない限り「部」及び「%」を意味する。
【0187】
〔各種物性の測定方法〕
<軟化温度の測定>
軟化温度の測定は、高化式フローテスターCFT−500(島津製作所社製)を用い、ダイスの細孔の径を0.5mm、加圧荷重を0.98MPa(10Kg/cm)、昇温速度を1℃/分とした条件下で、1cmの試料を溶融流出させたときの流出開始点から終了点の高さの1/2に相当する温度として求めた。
【0188】
<溶融温度の測定>
「DSC−20」(セイコー電子工業(株)製)を使用し、試料10mgを一定の昇温速度(10℃/min)で加熱して測定した。
【0189】
<重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定>
「HLC−8120GPC、SC−8020(東ソー(株)製6.0mmID×15cm)」を2本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min、サンプル注入量10μl、測定温度40℃、RI検出器を用いて実験を行った。また、検量線は東ソー(株)製「Polystyrene標準試料TSK standard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作製した。
【0190】
<酸価の測定>
酸価は、JIS K0070に従って行い、中和滴定法を用いた測定で行った。即ち、適当量の試料を分取し、溶剤(ジエチルエーテル/エタノール混合液)100ml、及び、指示薬(フェノールフタレイン溶液)数滴を加え、水浴上で試料が完全に溶けるまで充分に振り混ぜる。これに、0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の薄い紅色が30秒間続いた時を終点とした。酸価をA、試料量をS(g)、滴定に用いた0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液をB(ml)、fを0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液のファクターとした時、A=(B×f×5.611)/Sとして算出した。
【0191】
〔脂肪族系ポリエステル樹脂A(樹脂A)の作製〕
1L三つ口フラスコに、撹拌機、温度計、冷却管を具備した重縮合装置中に、セバシン酸46部、1,3−プロパンオール45部、ジブチルスズオキサイド0.2mol%を投入し、減圧下、140℃で重縮合を行った。8時間後の物性を測定すると、分子量Mw27,000、溶融温度83℃であった。
なお、前記ジブチルスズオキサイドの添加量は、重合性単量体(セバシン酸及び1,3−プロパンジオール)の総モル数に対する添加量である。
【0192】
〔脂肪族系ポリエステル樹脂B(樹脂B)の作製〕
ドデカン二酸63部、1,6−ヘキサンジオール21部、ドデシルベンゼンスルホン酸0.2mol%を1L三つ口フラスコに、撹拌機、温度計、冷却管を具備した重縮合装置中に、投入し減圧下、150℃で重縮合を行った。8時間後の物性を測定すると、分子量Mw35,000、溶融温度75℃であった。
なお、ドデシルベンゼンスルホン酸の添加量は、重合性単量体(ドデカン二酸及び1,6−ヘキサンジオール)の総モル数に対する添加量である。
【0193】
〔特定ロジン系ポリエステル樹脂C(樹脂C)の作製〕
−特定ロジンジオール(1)の合成−
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(商品名jER828、三菱化学(株)製)120g、ロジン成分として蒸留による精製処理を行ったロジン250g、及び反応触媒としてテトラエチルアンモニウムブロマイドを撹拌装置、加熱装置、冷却管、温度計を備えたステンレス製反応容器に仕込み、140℃に温度を上げ、ロジンのカルボキシ基とエポキシ化合物のエポキシ基とを反応させエポキシ環の開環反応を行った。同温度で4時間継続して行い、酸価が0.5mgKOH/gになった時点で反応を停止し、特定ロジンジオール(1)を得た。
【0194】
−樹脂Cの合成−
ジアルコール成分として、特定ロジンジオール(1)300g、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸38g、イソフタル酸24g、反応触媒としてジブチル錫オキサイド0.3gを、それぞれ、攪拌装置、加熱装置、温度計、分留装置、窒素ガス導入管を備えたステンレス製反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、攪拌しながら240℃で7時間重縮合反応させ、Mw27,000、酸価15.1mg/KOHに達したことを確認し、樹脂Cを合成した。合成した樹脂Cを2gとり、重ジメチルスルホキシド10mlと水酸化ナトリウムの重メタノール溶液(7N)2ml中で150℃、3時間加熱し、加水分解させた。その後、重水を加え、1H−NMR測定を行い、特定ロジンジオール(1)、テレフタル酸及びイソフタル酸で、仕込み値通りの組成で樹脂が構成されていることを確認した。
【0195】
〔比較用ロジン系ポリエステル樹脂D(樹脂D)の合成〕
ジアルコール成分としてビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物40部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物215部、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸ジメチル40部、無水トリメリット酸19部、マレイン酸変性ロジン25部、反応触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート0.2部を、それぞれ、撹拌装置、加熱装置、冷却管、温度計を備えたステンレス製反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、撹拌しながら230℃で7時間重縮合反応させ、樹脂Dを得た。樹脂の物性は、Tg52℃、Mw15000、酸価21mgKOH/gであった。
【0196】
〔特定ロジン系ポリエステル樹脂E(樹脂E)の作製〕
−特定ロジンジオール(2)の合成−
2官能エポキシ化合物として1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(商品名EX−212、ナガセケムテックス(株)製)77部、ロジン成分として不均化ロジン(商品名パインクリスタルKR614、荒川化学工業(株)製)200部、及び反応触媒としてテトラエチルアンモニウムブロマイド(東京化成工業(株)製)1.5部を撹拌装置、加熱装置、冷却管、温度計を備えたステンレス製反応容器に仕込み、130℃に温度を上げ、ロジンの酸基とエポキシ化合物のエポキシ基との開環反応を行った。同温度で5時間継続して行い、酸価が0.5mgKOH/gになった時点で反応を停止し、特定ロジンジオール(2)を得た。
【0197】
−樹脂Eの合成−
樹脂Cの合成において、特定ロジンジオール(1)に代えて特定ロジンジオール(2)を用いた他は同様にして、Mw34000、酸価10.5mg/KOHの樹脂Eを合成した。
【0198】
〔脂肪族系ポリエステル樹脂F(樹脂F)の作製〕
脂肪族系ポリエステル樹脂A(樹脂A)の作製において、1,3−プロパンジオールの代わりにデカンジオールを用いた以外は同様の方法により、脂肪族系ポリエステル樹脂F(樹脂F)を作製した。
【0199】
〔脂肪族系ポリエステル樹脂G(樹脂G)の作製〕
脂肪族系ポリエステル樹脂B(樹脂B)の作製において、1,6−ヘキサンジオールの代わりにオクタデカンジオールを用いた以外は同様の方法により、脂肪族系ポリエステル樹脂G(樹脂G)を作製した。
【0200】
〔脂肪族系ポリエステル樹脂の繰り返し単位〕
脂肪族系ポリエステル樹脂A、脂肪族系ポリエステル樹脂B、脂肪族系ポリエステル樹脂F、および脂肪族系ポリエステル樹脂Gについて、一般式(I)で表される繰り返し単位におけるAおよびBの炭素数の合計を、表1の「(1)脂肪族系ポリエステル」の「炭素数」欄に示した。
【0201】
〔樹脂Aを用いた樹脂分散液(a)の調製〕
樹脂A100部に、界面活性剤としてソフト型ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部を加え、さらにイオン交換水300部を加え、80℃に加熱しながら丸型ガラス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で十分に混合・分散した。その後、さらに0.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを5.0に調整した後、ホモジナイザーによる撹拌を継続しながら95℃まで加熱して、樹脂粒子の中心径が250nm、固形分量が20%の樹脂粒子分散液(a)を得た。
【0202】
〔樹脂Bを用いた樹脂分散液(b)の調製〕
樹脂分散液(a)の調製において、樹脂Aを樹脂Bに変更したほかは同様にして、樹脂Bを用いた樹脂分散液(b)を調製した。
【0203】
〔樹脂Cを用いた樹脂分散液(c)の調製〕
樹脂C100部に界面活性剤としてソフト型ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部を加え、さらにイオン交換水300部を加え、80℃に加熱しながら丸型ガラス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で十分に混合・分散した。その後、さらに0.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを5.0に調整した後、ホモジナイザーによる撹拌を継続しながら98℃まで加熱して樹脂Cの乳化分散液を得た。樹脂粒子の中心径が168nm、固形分量が20%の樹脂粒子分散液(c)を得た。
【0204】
〔樹脂Dを用いた樹脂分散液(d)の調製〕
樹脂D100部に界面活性剤としてソフト型ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部を加え、さらにイオン交換水300部を加え、80℃に加熱しながら丸型ガラス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で十分に混合・分散した。その後、さらに0.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを5.0に調整した後、ホモジナイザーによる撹拌を継続しながら92℃まで加熱して樹脂Dの乳化分散液を得た。樹脂粒子の中心径が125nm、固形分量が20%の樹脂粒子分散液(d)を得た。
【0205】
〔樹脂Eを用いた樹脂分散液(e)の調製〕
樹脂分散液(c)の調製において、樹脂Cを樹脂Eに変更したほかは同様にして、樹脂Eを用いた樹脂分散液(e)を調製した。
【0206】
〔樹脂Fを用いた樹脂分散液(f)の調製〕
樹脂分散液(a)の調製において、樹脂Aを樹脂Fに変更したほかは同様にして、樹脂Fを用いた樹脂分散液(f)を調製した。
【0207】
〔樹脂Gを用いた樹脂分散液(g)の調製〕
樹脂分散液(a)の調製において、樹脂Aを樹脂Gに変更したほかは同様にして、樹脂Gを用いた樹脂分散液(g)を調製した。
【0208】
〔着色剤粒子分散液(P1)の調製〕
サイアン顔料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50部
(大日精化社製、銅フタロシアニン C.I.Pigment Blue15:3)
アニオン性界面活性剤(第一工業製薬製、ネオゲンR)・・5部
イオン交換水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・200部
【0209】
前記成分を混合溶解し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)5分と超音波バスにより10分間分散し、中心径190nm、固形分量20%のサイアン着色剤粒子分散液(P1)を得た。
【0210】
〔離型剤粒子分散液(W1)の調製〕
ドデシル硫酸・・・・・・・・・・・・・・30部
イオン交換水・・・・・・・・・・・・・852部
上記成分を混合し、ドデシル硫酸水溶液を調製した。
【0211】
パルミチン酸・・・・・・・・・・・・・188部
ペンタエリスリトール・・・・・・・・・・25部
別途、上記成分を混合し、250℃に加熱し融解した後、上記のドデシル硫酸水溶液に投入し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)で5分間乳化した後、さらに超音波バス中で15分乳化後、乳化物を撹拌しながらフラスコ中で70℃に維持し、15時間保持した。
これにより粒子の中心径が200nm、融点が72℃、固形分量が20%の離型剤粒子分散液(W1)を得た。
【0212】
(実施例1)
〔トナー粒子(1)の調製〕
樹脂粒子分散液(a)・・・・100部(樹脂Aの含有量;20部)
樹脂粒子分散液(c)・・・・300部(樹脂Cの含有量;60部)
着色剤粒子分散液(P1)・・・50部 (顔料の含有量;10部)
離型剤粒子分散液(W1)・・・50部(離型剤の含有量;10部)
ポリ塩化アルミニウム・・・0.15部
イオン交換水・・・・・・・・300部
【0213】
上記組成の成分を、丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で十分に混合・分散した後、加熱用オイルバスでフラスコを撹拌しながら42℃まで加熱し、42℃で60分間保持した。
その後、0.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液で、系内のpHを6.0に調整してから、撹拌を継続しながら95℃まで加熱した。95℃までの昇温の間、通常の場合、系内のpHは、5.0以下まで低下するが、ここでは水酸化ナトリウム水溶液を追加滴下し、pHが5.5以下とならない様に保持した。
【0214】
反応終了後、冷却し、濾過し、濾過物をイオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離した。そして、40℃のイオン交換水3リットル中に再分散し、15分、300rpmで撹拌、洗浄した。この洗浄操作を5回繰り返し、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離し、次いで、真空乾燥を12時間行い、トナー粒子(1)を得た。
【0215】
トナー粒子(1)の粒径をコールターカウンターで測定したところ、累積体積平均粒径D50が5.8μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.24であった。また、ルーゼックスによる形状観察より求めたトナー粒子の形状係数SF1は130のポテト形状であった。
【0216】
〔外添トナー(1)及び現像剤(1)の調製〕
トナー粒子(1)50部に対し、疎水性シリカ(キャボット社製、TS720)1.5部を添加し、サンプルミルで混合して外添トナー(1)を得た。
そして、ポリメチルメタアクリレート(綜研化学社製、Mw75,000)を1%被覆した平均粒径50μmのフェライトキャリアを用い、トナー濃度が5%になるように外添トナー(1)を秤量し、両者をボールミルで5分間撹拌・混合して現像剤(1)を調製した。
【0217】
<トナーの評価>
島津フローテスターCFT−500A型を用い、外添トナー(1)の軟化温度を測定すると125℃であった。
【0218】
<トナーの生分解性の評価>
外添トナー(1)を用い、外添トナー(1)の軟化温度より15℃高い温度で、厚み3mmのプレート(1)を作製し、生分解性と以下の物性評価を行った。結果を表1に示す。
【0219】
(生分解性試験)
生分解性は、プレート(1)を10cm四方に切り取り、土壌中の水分率が50%以上を保持する比較的湿度の高い(日当たりの悪い)土壌中(地表から15cm)に埋設した。また比較的日当たりがよく、湿度の低い土壌中(地表から7cm)にも同様に、プレート(1)を埋めて、埋設後6ヶ月および12ヶ月の2回にわたり、プレートの形状を目視観察して、下記評価基準により評価した。
【0220】
−評価基準−
○:プレートの形状が大部分(65%以上)消失
△:プレートの形状が半分近く(45%以上65%未満)消失
×:プレートの形状がほぼそのまま(45%未満)残っている
【0221】
<トナー(現像剤)の機械的強度評価>
富士ゼロックス社製700 Digital Color Pressの定着器を改造した画像形成装置を用い、記録媒体として、富士ゼロックス社指定の厚紙コート紙であるミラーコートプラチナ紙(127g/m)を使用し、プロセススピードを180mm/secに調整して、外添トナー(1)の機械的強度を調べた。結果を表1に示す。
【0222】
トナーを50℃の高温度チャンバーに17時間保管した。チャンバーから取り出し室温に戻し現像剤を調製した。
次に、富士ゼロックス社製フルカラー複写機700 Digital Color Pressの現像機を単体で駆動できる装置とし、上記現像剤を現像機内に投入し、複写機内と同一条件にて駆動させた。そこで、任意の時間(2時間以上)において、現像機内の現像剤をサンプリングし、トナーの粒度分布をコールターカウンターTAII(日科機社製)にて測定した。X軸に駆動時間、Y軸に個数平均分布における3.0μm以下の累計値をプロットし、その傾きを機械的強度指数と定義した。この数値が大きいほど現像機内での破砕が発生しやすく、機械的強度が弱いことを表す。得られた機械的強度指数に基づき、下記評価基準から機械的強度を評価した。
【0223】
−評価基準−
○:機械的強度指数が0.12未満
△:機械的強度指数が0.12以上0.15未満
×:機械的強度指数が0.15以上
【0224】
外添トナー(1)の定着性を、上記評価方法により評価したところ、良好であり、最低定着温度は120℃で、画像は充分な定着性を示すとともに、光沢の均一性も良好であった。現像性、転写性とも良好であり、画像欠陥もなく高品質で良好な画像(○)を示した。
定着温度200℃においてもホットオフセットの発生は見られなかった。
また、上記改造機において、実験室環境で5万枚の連続プリント試験を行ったが、初期の良好な画質を最後まで維持した。(連続試験維持性○)
【0225】
(実施例2)
−トナー粒子(2)の調製−
トナー粒子(1)の調製において、樹脂粒子分散液(a)に代えて樹脂粒子分散液(b)を用いたほかは同様にしてトナー粒子(2)を得た。
このトナー粒子(2)の粒径をコールターカウンターで測定したところ、累積体積平均粒径D50が5.5μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.21であった。また、ルーゼックスによる形状観察より求めたトナー粒子の形状係数SF1は136であった。
【0226】
−外添トナー(2)及び現像剤(2)の調製−
実施例1の外添トナー(1)及び現像剤(1)の調製において、トナー粒子(1)に代えてトナー粒子(2)を用いたほかは同様にして、実施例2の外添トナー(2)及び現像剤(2)を調製した。
また、実施例1と同様にして外添トナー(2)の軟化温度を測定したところ、121℃であった。
得られた外添トナー(2)及び現像剤(2)について、実施例1と同様の方法で評価を行った。
結果を表1に示す。
【0227】
(実施例3)
実施例1の外添トナー(1)の調製において、樹脂Aと樹脂Cとの質量比が表1の「(1)/(2)質量比」欄に示す比となるように、樹脂分散液(a)と樹脂分散液(c)とを混合したほかは同様にして、実施例3の外添トナー(3)を調製した。得られた外添トナー(3)について、外添トナー(1)と同様の方法で軟化温度を測定し、表1に示した。
また、現像剤1の調製において、外添トナー(1)に代えて外添トナー(3)を用いた他は同様にして、現像剤(3)を調製した。
得られた外添トナー(3)及び現像剤(3)について、実施例1と同様の方法で評価し、表1に評価結果を示した。
【0228】
(実施例4)
実施例1の外添トナー(1)の調製において、樹脂Aと樹脂Cとの質量比が表1の「(1)/(2)質量比」欄に示す比となるように、樹脂分散液(a)と樹脂分散液(c)とを混合したほかは同様にして、実施例4の外添トナー(4)を調製した。得られた外添トナー(4)について、外添トナー(1)と同様の方法で軟化温度を測定し、表1に示した。
また、現像剤1の調製において、外添トナー(1)に代えて外添トナー(4)を用いた他は同様にして、現像剤(4)を調製した。
得られた外添トナー(4)及び現像剤(4)について、実施例1と同様の方法で評価し、表1に評価結果を示した。
【0229】
(実施例5)
実施例2の外添トナー(2)の調製において、樹脂Bと樹脂Cとの質量比が表1の「(1)/(2)質量比」欄に示す比となるように、樹脂分散液(b)と樹脂分散液(c)とを混合したほかは同様にして、実施例5の外添トナー(5)を調製した。得られた外添トナー(5)について、外添トナー(1)と同様の方法で軟化温度を測定し、表1に示した。
また、現像剤1の調製において、外添トナー(1)に代えて外添トナー(5)を用いた他は同様にして、現像剤(5)を調製した。
得られた外添トナー(5)及び現像剤(5)について、実施例1と同様の方法で評価し、表1に評価結果を示した。
【0230】
(実施例6)
実施例2の外添トナー(2)の調製において、樹脂Bと樹脂Cとの質量比が表1の「(1)/(2)質量比」欄に示す比となるように、樹脂分散液(b)と樹脂分散液(c)とを混合したほかは同様にして、実施例6の外添トナー(6)を調製した。得られた外添トナー(6)について、外添トナー(1)と同様の方法で軟化温度を測定し、表1に示した。
また、現像剤1の調製において、外添トナー(1)に代えて外添トナー(6)を用いた他は同様にして、現像剤(6)を調製した。
得られた外添トナー(6)及び現像剤(6)について、実施例1と同様の方法で評価し、表1に評価結果を示した。
【0231】
(実施例7)
−トナー粒子(7)の調製−
トナー粒子(1)の調製において、樹脂粒子分散液(a)に代えて樹脂粒子分散液(e)を用いたほかは同様にしてトナー粒子(7)を得た。
このトナー粒子(7)の粒径をコールターカウンターで測定したところ、累積体積平均粒径D50が5.9 μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.19であった。また、ルーゼックスによる形状観察より求めたトナー粒子の形状係数SF1は128であった。
【0232】
−外添トナー(7)及び現像剤(7)の調製−
実施例1の外添トナー(1)及び現像剤(1)の調製において、トナー粒子(1)に代えてトナー粒子(7)を用いたほかは同様にして、実施例7の外添トナー(7)及び現像剤(7)を調製した。
また、実施例1と同様にして外添トナー(7)の軟化温度を測定し、結果を表1に示した。
得られた外添トナー(7)及び現像剤(7)について、実施例1と同様の方法で評価を行った。
結果を表1に示す。
【0233】
(実施例8)
−トナー粒子(8)の調製−
トナー粒子(1)の調製において、樹脂粒子分散液(a)に代えて樹脂粒子分散液(f)を用いたほかは同様にしてトナー粒子(8)を得た。
【0234】
−外添トナー(8)及び現像剤(8)の調製−
実施例1の外添トナー(1)及び現像剤(1)の調製において、トナー粒子(1)に代えてトナー粒子(8)を用いたほかは同様にして、実施例8の外添トナー(8)及び現像剤(8)を調製した。
得られた外添トナー(8)及び現像剤(8)について、実施例1と同様の方法で評価を行った。
結果を表1に示す。
【0235】
(実施例9)
−トナー粒子(9)の調製−
トナー粒子(1)の調製において、樹脂粒子分散液(a)に代えて樹脂粒子分散液(g)を用いたほかは同様にしてトナー粒子(9)を得た。
【0236】
−外添トナー(9)及び現像剤(9)の調製−
実施例1の外添トナー(1)及び現像剤(1)の調製において、トナー粒子(1)に代えてトナー粒子(9)を用いたほかは同様にして、実施例9の外添トナー(9)及び現像剤(9)を調製した。
得られた外添トナー(9)及び現像剤(9)について、実施例1と同様の方法で評価を行った。
結果を表1に示す。
【0237】
(比較例1)
−トナー粒子(101)の調製−
樹脂粒子分散液(a)・・・・100部(樹脂Aの含有量;20部)
樹脂粒子分散液(d)・・・・300部(樹脂Dの含有量;60部)
着色剤粒子分散液(P1)・・・50部 (顔料の含有量;10部)
離型剤粒子分散液(W1)・・・50部(離型剤の含有量;10部)
ポリ塩化アルミニウム・・・0.15部
イオン交換水・・・・・・・・300部
【0238】
実施例1のトナー粒子(1)の調製において、トナー粒子(1)の成分組成を上記成分組成に変更したほかは同様にして、比較例1のトナー粒子(101)を調製した。
得られたトナー粒子(101)の粒径をコールターカウンターで測定したところ、累積体積平均粒径D50が7.6μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.29であった。また、ルーゼックスによる形状観察より求めたトナー粒子の形状係数SF1は136であった。
【0239】
−外添トナー(101)及び現像剤(101)の調製−
実施例1の外添トナー(1)及び現像剤(1)の調製において、トナー粒子(1)に代えてトナー粒子(101)を用いたほかは同様にして、比較例1の外添トナー(101)及び現像剤(101)を調製した。
また、実施例1と同様にして外添トナー(101)の軟化温度を測定したところ、131℃であった。
得られた外添トナー(101)及び現像剤(101)について、実施例1と同様の方法で評価を行った。
結果を表1に示す。
【0240】
(比較例2)
比較例1の外添トナー(101)の調製において、樹脂Aと樹脂Dとの質量比が表1の「(1)/(2)質量比」欄に示す比となるように、樹脂分散液(a)と樹脂分散液(d)とを混合したほかは同様にして、比較例2の外添トナー(102)を調製した。得られた外添トナー(102)について、外添トナー(1)と同様の方法で軟化温度を測定し、表1に示した。
また、現像剤1の調製において、外添トナー(1)に代えて外添トナー(102)を用いた他は同様にして、現像剤(102)を調製した。
得られた外添トナー(102)及び現像剤(102)について、実施例1と同様の方法で評価し、表1に評価結果を示した。
【0241】
(比較例3)
−トナー粒子(103)の調製−
樹脂粒子分散液(a)・・・・320部(樹脂Aの含有量;64部)
着色剤粒子分散液(P1)・・・50部 (顔料の含有量;10部)
離型剤粒子分散液(W1)・・・50部(離型剤の含有量;10部)
ポリ塩化アルミニウム・・・0.15部
イオン交換水・・・・・・・・300部
【0242】
実施例1のトナー粒子(1)の調製において、トナー粒子(1)の成分組成を上記成分組成に変更したほかは同様にして、比較例3のトナー粒子(103)を調製した。
得られたトナー粒子(103)の粒径をコールターカウンターで測定したところ、累積体積平均粒径D50が6.2μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.21であった。また、ルーゼックスによる形状観察より求めたトナー粒子の形状係数SF1は128であった。
【0243】
−外添トナー(101)及び現像剤(101)の調製−
実施例1の外添トナー(1)及び現像剤(1)の調製において、トナー粒子(1)に代えてトナー粒子(101)を用いたほかは同様にして、比較例1の外添トナー(101)及び現像剤(101)を調製した。
また、実施例1と同様にして外添トナー(103)の軟化温度を測定したところ、142℃であった。
得られた外添トナー(103)及び現像剤(103)について、実施例1と同様の方法で評価を行った。
結果を表1に示す。
【0244】
(比較例4)
−トナー粒子(104)の調製−
トナー粒子(103)の調製において、樹脂粒子分散液(a)に代えて樹脂粒子分散液(d)を用いたほかは同様にしてトナー粒子(104)を得た。
このトナー粒子(104)の粒径をコールターカウンターで測定したところ、累積体積平均粒径D50が7.9μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.35であった。また、ルーゼックスによる形状観察より求めたトナー粒子の形状係数SF1は148 であった。
【0245】
−外添トナー(104)及び現像剤(104)の調製−
実施例1の外添トナー(1)及び現像剤(1)の調製において、トナー粒子(1)に代えてトナー粒子(104)を用いたほかは同様にして、比較例4の外添トナー(104)及び現像剤(104)を調製した。
また、実施例1と同様にして外添トナー(104)の軟化温度を測定し、結果を表1に示した。
得られた外添トナー(104)及び現像剤(104)について、実施例1と同様の方法で評価を行った。
結果を表1に示す。
【0246】
【表1】

【0247】
表1からわかるように、実施例1〜9の外添トナー及び現像剤を用いれば、生分解性およびトナーの強度の両方に優れ、環境への負荷を抑制した画像形成に適していることがわかる。
【符号の説明】
【0248】
1Y,1M,1C,1K,107 感光体(像保持体)
2Y,2M,2C,2K,108 帯電ローラ
3Y,3M,3C,3K レーザ光線
3 露光装置
4Y,4M,4C,4K,111 現像装置(現像手段)
5Y,5M,5C,5K 1次転写ローラ
6Y,6M,6C,6K,113 感光体クリーニング装置(クリーニング手段)
8Y,8M,8C,8K トナーカートリッジ
10Y,10M,10C,10K ユニット
20 中間転写ベルト
22 駆動ローラ
24 支持ローラ
26 2次転写ローラ(転写手段)
28,115 定着装置(定着手段)
30 中間転写体クリーニング装置
32 搬送ロール(排出ロール)
112 転写装置
116 取り付けレール
117 除電露光のための開口部
118 露光のための開口部
200 プロセスカートリッジ,
P,300 記録紙(被転写体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族系ポリエステル樹脂と、
ロジンジオール由来の繰り返し単位を有するポリエステル樹脂と、
を含む静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記脂肪族系ポリエステル樹脂が、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【化1】


〔前記一般式(I)中、Aは単結合または2価の脂肪族炭化水素基を表し、Bは炭素数2以上の2価の脂肪族炭化水素基を表す。前記Aおよび前記Bの炭素数の合計は2以上25である。〕
【請求項3】
前記ロジンジオール由来の繰り返し単位を有するポリエステル樹脂が、下記一般式(II)で表されるロジンジオールとジカルボン酸との重縮合体である請求項1または請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
【化2】


〔前記一般式(II)中、Rは安定化ロジン残基、又は安定化ロジン残基と一塩基酸基からなる二種の基を表し、nは1以上6以下の整数を表す。Rは、nが1である場合、水素原子を表し、nが2以上である場合、2つのRが水素原子を表し、残りのRがアセトアセチル基、又はアセトアセチル基と少なくとも一種の一塩基酸基からなる二種以上の基を表す。Rは水素原子及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも一種を表し、Dはメチレン基又はイソプロピレン基を表す。〕
【請求項4】
前記ロジンジオール由来の繰り返し単位を有するポリエステル樹脂に対する前記脂肪族系ポリエステル樹脂の含有比が、質量基準で5/95以上40/60以下である請求1〜請求項3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像用現像剤。
【請求項6】
請求項4に記載の静電荷像現像用トナーを収納し、
画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジ。
【請求項7】
請求項5に記載の静電荷像現像用現像剤を収納し、潜像保持体表面に形成された静電潜像を前記静電荷像現像用現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項8】
潜像保持体表面を帯電する帯電工程と、
前記潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、
請求項5に記載の静電荷像現像用現像剤により、前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、
前記記録媒体に前記トナー像を定着する定着工程と
を含む画像形成方法。
【請求項9】
潜像保持体と、
前記潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、
前記潜像保持体表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
請求項5に記載の静電荷像現像用現像剤を収納し、前記静電荷像現像用現像剤により、前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に前記トナー像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−68740(P2013−68740A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206349(P2011−206349)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】