説明

静電荷像現像用トナーと該トナーを用いる現像剤、及び画像形成装置、並びにプロセスカートリッジ

【課題】結着樹脂としてポリ乳酸骨格を用いた場合においても、分散安定剤であるポリエステル樹脂の表面への付着を良好にせしめ、長期にわたって良好な帯電安定性と低温定着性を発現し得る電子写真用トナー。
【解決手段】第1の樹脂を含有する樹脂粒子もしくは樹脂を含有する被膜が、第2の樹脂を含有する樹脂粒子の表面に付着されてなる構造の樹脂粒子からなるトナーであって、前記第1の樹脂が、ポリエステル樹脂であって、樹脂全体の酸価(酸価)が15〜36mgKOH/gであり、樹脂を含有する樹脂粒子もしくは樹脂を含有する被膜の表面酸価が10〜27mgKOH/gである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の静電複写プロセスの画像形成に用いられる静電荷像現像用トナーと該トナーを用いる現像剤、及び画像形成装置、並びにプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂溶液を界面活性剤又は水溶性樹脂等の分散(助)剤及び無機微粒子、樹脂微粒子等の分散安定剤の存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱、減圧等によって溶剤を除去することによりトナーを得る溶解樹脂懸濁法は公知である。そして、この溶解樹脂懸濁法によって得られるものは分級しなくても均一なトナーが得られることも知られている(特許文献1、2)。なお、電子写真方式の画像形成装置では、加熱部材に対する離型性(以降、耐オフセット性と称す)が要求されるが、耐オフセット性については変性ポリエステル樹脂を用いることで解決が図られている(特許文献3)。トナーの構成成分の70%以上を占める結着樹脂は、そのほとんどが石油資源を原料としており、石油資源の枯渇問題や石油資源を大量消費して二酸化炭素を大気中へ排出することによる温暖化の問題が懸念されている。そこで、結着樹脂として、大気中の二酸化炭素を取り込んで成長する植物由来の樹脂を使用すれば、生じる二酸化炭素は環境中で循環するだけとなり、温暖化問題と石油資源の枯渇問題を同時に解決できる可能性があるため、近年このような植物由来の樹脂を結着樹脂とするトナーが種々提案されており、結着樹脂としてポリ乳酸を使用することについても本出願前公知である(特許文献4)。ポリ乳酸は単位構造当たりの極性基の数が多いことから結晶性が高くトナーとしては好ましくない。一方、結晶性が低いポリ乳酸を用いたトナーの場合は、結晶性が高いポリ乳酸を用いる場合よりも湿度の影響を大きく受けてトナーの帯電量を制御することが困難になるという別の問題が生じてくる。
特に、低温低湿度の条件、高温高湿度の条件になった時に帯電量の変化を低減させることが困難になり、帯電量、画像濃度が安定しないという問題がある。
【0003】
従来の溶解樹脂懸濁法では、主にスチレン−アクリル骨格を主体とした有機微粒子が分散安定剤として使用されており、それらがトナー表面に付着した状態であることから低温定着性が大きく損なわれやすいという問題がある。また、前記スチレン−アクリル骨格を主体とした有機微粒子は分散安定剤として機能させるために、大量の親水性基を導入せねばならず、帯電の湿度安定性に乏しいポリ乳酸樹脂を被覆していても、この観点での改善は望めない。さらに、前記有機微粒子はトナー表面、特に微粒子への付着状態が均一でなく、コア粒子であるポリ乳酸を主体とする樹脂がむき出しになった微粉末がキャリアや帯電部材へのフィルミングを引き起こすため、大量の画像出力時のトナーの帯電安定性の面からも更なる改善が望まれている。この問題は前記分散安定剤である有機微粒子の添加量を増大させることによりある程度解決できるが、トナー表面への被覆率が増大することから低温定着性がさらに悪化し易くなる。上記のように、低温定着性と耐湿度やマシンの長期利用に伴う帯電安定性を同時に実現することは困難である。なお、画像濃度、定着性、耐熱保存性および低温での耐オフセット性に優れ、フィルミングの発生が少なく、高画質な画像を安定に得ることができるトナー及び該トナーの製造方法、並びに該トナーを用いた現像剤として、樹脂が光学活性モノマーからなるポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有し、前記光学活性モノマーからなるポリヒドロキシカルボン酸骨格がモノマー成分換算で、光学純度X(%)=|X(L体)−X(D体)|〔ただし、X(L体)は光学活性モノマー換算でのL体比率(モル%)、X(D体)は光学活性モノマー換算でのD体比率(モル%)を表す〕が80%以下のトナーについても本出願前に公知である(特許文献5)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、結着樹脂としてポリ乳酸骨格を用いた場合においても、分散安定剤であるポリエステル樹脂の表面への付着を良好にせしめ、長期にわたって良好な帯電安定性と低温定着性を発現し得る静電荷像現像用トナーと該トナーを用いる現像剤、及び画像形成装置、並びにプロセスカートリッジの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、下記(1)〜(12)の発明によって解決される。
(1)少なくとも第1の樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)、もしくは樹脂(a)を含有する被膜(P)が、第2の樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)の表面に付着されてなる構造の樹脂粒子(C)からなるトナーであって、前記樹脂(a)がポリエステル樹脂であって、樹脂(a)全体の酸価(全酸価)が15〜36mgKOH/gであり、樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)、もしくは樹脂(a)を含有する被膜(P)の表面酸価が10〜27mgKOH/gであることを特徴とする静電荷像現像用トナーを提供する。
(2)前記樹脂粒子(A)の体積平均粒径が0.03〜0.15μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナーを提供する。
(3)樹脂(a)が少なくとも多塩基酸、多価アルコールより構成されるポリエステルユニットを有する樹脂であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーを提供する。
(4)樹脂(b)が光学活性モノマーからなるポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有し、前記光学活性モノマーからなるポリヒドロキシカルボン酸骨格がモノマー成分換算で光学純度X(%)=|X(L体)−X(D体)|〔ただし、X(L体)は光学活性モノマー換算でのL体比率(モル%)、X(D体)は光学活性モノマー換算でのD体比率(モル%)を表す〕が80%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーを提供する。
(5)樹脂(b)のポリヒドロキシカルボン酸骨格が炭素数2〜6のヒドロキシカルボン酸が共重合した骨格であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーを提供する。
(6)樹脂(b)が、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有するポリエステルジオール(b11)と(b11)以外のポリエステルジオール(b12)とを、伸長剤とともに反応させて得られる直鎖状のポリエステル系樹脂(b1)を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーを提供する。
(7)樹脂(b)が、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有するポリエステルジオール(b11)と(b11)以外のポリエステルジオール(b12)との質量比が31:69〜90:10であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーを提供する。
(8)樹脂(b)が、前記直鎖状のポリエステル系樹脂(b1)および樹脂粒子(C)の形成工程で前駆体(b0)が反応して得られる樹脂(b2)を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーを提供する。
(9)樹脂(a)が、ポリエステル樹脂であって、塩基性化合物が含有されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーを提供する。
(10)請求項1〜9のいずれかに記載のキャリア及び静電荷像現像用トナーを含むことを特徴とする現像剤を提供する。
(11)静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を現像剤を用いて現像し、可視像を形成する現像手段を有し、画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジにおいて、現像剤が請求項10に記載の現像剤であることを特徴とするプロセスカートリッジを提供する。
(12)静電潜像担持体と、該静電潜像担持体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された静電潜像担持体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像を現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、前記現像剤が請求項10に記載の現像剤であることを特徴とする画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の静電荷像現像用トナーは植物由来の樹脂を使用することで温暖化問題と石油資源の枯渇問題に対して大きく寄与することができるとともに、従来の課題であった微粒子への付着状態が均一ではなく、コア粒子であるポリ乳酸を主体とする樹脂の微粉末がキャリアや帯電部材に対してフィルミングを引き起こすと言う問題を解決することができるものであり、画像濃度、耐トナーフィルミング性、低温定着性、耐湿度およびマシンの長期利用に伴う帯電安定性に優れた、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の静電複写プロセスの画像形成に好適なトナー、及びトナーの製造方法の提供を可能とするものである。
そして、第1〜9に記載の静電荷像現像用トナーの発明によれば、静電荷像現像用トナーを製造するに際して、樹脂の種類と組成を特定するとともに、樹脂粒子の酸価(全酸価)および表面酸価を特定することにより、分散安定剤の有機微粒子が油水界面に安定に吸着するための最適な親水性の範囲を求めることができる。
第4の発明によれば、光学純度を80%以下にすることによりトナー中の離型剤をさらに良好に分散させることができる。
第7の発明によれば、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有するポリエステルジオールとそれ以外のポリエステルジオールの質量比を特定することにより、透明性および定着性が良好な静電荷像現像用トナーを提供することができる。
第9の発明によれば、ポリエステル樹脂に塩基性化合物を含有させることにより、微粒子間の凝集を防ぎ、ポリエステル樹脂水分散体の過度な増粘を防ぐことができる。
第10の発明によれば、キャリア及び静電荷像現像用トナーを含むことを特徴とする現像剤を提供することができる。
第11の発明によれば、上記の現像剤を用いて現像し、可視像を形成する現像手段を有し、画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジを提供することができる。
第12の発明によれば、上記の現像剤を利用する画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】樹脂粒子の表面の酸基が水酸化カリウムによって置換される際の電導度上昇の測定と苛性カリ溶液による滴定曲線を示した図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の一例を示す図である。
【図3】現像器の一例を示す断面図である。
【図4】現像器の一例を示す断面図である。
【図5】プロセスカートリッジの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本出願人の発明に係る特許文献5に記載された発明は、本発明と同じく、ポリヒドロキシカルボン酸骨格の具体例としてPLA(ポリ乳酸)を用いることが記載されている。
しかしながら、該特許文献5に記載されている発明では、低温低湿度の条件、高温高湿度の条件になった時に帯電量の変化を低減させることが困難になり、帯電量、画像濃度が安定しないといった問題やトナー帯電量の環境安定性の改善や、キャリア表面や帯電部材へのフィルミングによる帯電量低下といった問題が未だ解消されていない。
本発明者らはこれらの問題を鋭意検討した結果、結着樹脂の表面親水性が微粉消失やトナー表面への均一な付着に重要な要素であること、また表面親水性と樹脂粒子の表面酸価とは密接な関係があり、分散安定剤として有機微粒子が油水界面に安定に吸着するためには親水性(=表面酸価)を最適な範囲に調整することが必要であり、親水性が低過ぎても高過ぎても安定的に界面には吸着できずに広範囲な粒度分布になること、粒度分布が広範囲になると表面への分散安定剤の付着が不十分になるだけでなく、トナー中に微粉が増加したり、分散安定剤としてポリエステル樹脂の表面被覆が不十分になることを知得した。
また、ポリエステル樹脂の表面被覆が不十分であると、経時でキャリアや帯電付与部材へのフィルミングの原因となるし長期のトナー帯電量が変動し易くなる原因であることも知得した。
【0009】
即ち、本発明は結着用樹脂としてポリ乳酸骨格を用いて溶解樹脂懸濁法でトナーを製造するに際して、樹脂粒子の表面親水性がトナーの微粉消失やトナー表面への均一な付着に密接な関係があること、及び、この樹脂粒子の表面親水性と樹脂粒子の全酸価(以後、酸価と称す)及び表面酸価とが密接に関連しているという知見に基づくものであるが、更には、本発明はポリ乳酸を用いて溶解樹脂懸濁法でトナーを製造するに際して、樹脂粒子の酸価又は表面酸価を測定することにより、好適な親水性の範囲を特定することができるというものである。図1は樹脂粒子の表面の酸基が水酸化カリウムによって置換される際の電導度上昇を測定したものである。この図1にも示されているが樹脂粒子の表面の酸基が水酸化カリウムで完全に置換された後の電導度上昇の傾きは明らかに変化している。
本出願人はこの電導度上昇の傾きの変化を詳細に検討することにより、分散安定剤としての有機微粒子が油水界面に安定に吸着するための最適な親水性の範囲を求めることができるとの考えに基づき種々の条件下で測定した。その結果、ポリエステル樹脂を静電荷像現像用トナーとして用いる場合は、樹脂全体の酸価(酸価)が15〜36mgKOH/gで、樹脂を含有した樹脂粒子もしくは樹脂を含有した被膜の場合は、表面酸価が10〜27mgKOH/gが好ましいことを知得したものである。
【0010】
(トナー)
本発明のトナーを構成する樹脂粒子(C)は次の(1)又は(2)の構造を有する。
(1)第1の樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)が、第2の樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)の表面に付着されてなる構造。
(2)第1の樹脂(a)を含有する被膜(P)が、第2の樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)の表面に付着されてなる構造。
そして、本発明のトナーは、樹脂(a)がポリエステル樹脂であって、全体の酸価(全酸価)が15〜36mgKOH/gであり、樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)もしくは樹脂(a)を含有する被膜(P)の表面酸価が10〜27mgKOH/gであることを特徴としている。
【0011】
樹脂(b)は、光学活性モノマーからなるポリヒドロキシカルボン酸骨格を有し、該ポリヒドロキシカルボン酸骨格は、ヒドロキシカルボン酸が共重合した骨格を有し、ヒドロキシカルボン酸を直接脱水縮合する方法、あるいは、対応する環状エステルを開環重合する方法で形成できる。重合法は、重合されるポリヒドロキシカルボン酸の分子量を大きくするという観点から環状エステルの開環重合が好ましい。ヒドロキシカルボン酸としては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸(グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸等)、芳香族ヒドロキシカルボン酸(サリチル酸、クレオソート酸、マンデル酸、バーリン酸、シリング酸等)あるいはこれらの混合物を挙げられ、対応する環状エステルとしては、グリコリド、ラクチド、γ−ブチロラクトン、6−バレロラクトン等が挙げられる。
これらのうちで、樹脂粒子(C)の透明性と熱特性の観点から、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を形成するモノマーとしては脂肪族ヒドロキシカルボン酸が好ましく、さらに好ましくは炭素数2〜6のヒドロキシカルボン酸であり、特に好ましくはグリコール酸、乳酸、グリコリド、ラクチドであり、最も好ましくは、グリコール酸および乳酸である。
【0012】
ポリマーの原材料としてヒドロキシカルボン酸以外に、ヒドロキシカルボン酸の環状エステルを用いる事も可能であり、その場合には重合して得られる樹脂のヒドロキシカルボン酸骨格は、環状エステルを構成するヒドロキシカルボン酸が重合した骨格となる。
例えば、ラクチドを用いて得られる樹脂のポリヒドロキシカルボン酸骨格は、乳酸が重合した骨格になる。ポリヒドロキシカルボン酸骨格を形成するモノマーが乳酸のように光学活性モノマーの場合、モノマー成分換算で光学純度X(%)=|X(L体)−X(D体)|〔ただし、X(L体)は光学活性モノマー換算でのL体比率(%)、X(D体)は光学活性モノマー換算でのD体比率(%)を表す〕が80%以下であることが好ましく、さらに好ましくは60%以下である。この範囲であると、溶剤溶解性、樹脂の透明性が向上し、好ましい製造方法である後述の(I)の製造方法を適用しやすい。
【0013】
樹脂(b)を使用した場合には、顔料、ワックスの樹脂中への分散を均一とし易く、また透明性が高いため、顔料やワックスを内包するトナーに使用した場合には画像濃度やヘイズ度が良好になるという特徴がある。
【0014】
本発明においては、樹脂(b)が、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有するポリエステルジオール(b11)と該ポリエステルジオール(b11)以外のポリエステルジオール(b12)とを、伸長剤とともに反応させて得られる直鎖状のポリエステル系樹脂(b1)を含有することが好ましい。直鎖状のポリエステルは構造が単純であり分子量、これによって生じる物性(熱特性、他樹脂との相溶性など)の制御が容易である。
また、本発明における前記ポリエステルジオール(b11)と該ポリエステルジオール(b11)以外のポリエステルジオール(b12)のユニットから構成され、該ポリエステルジオール(b11)以外のポリエステルジオール(b12)のユニットに用いるポリエステル種、分子量、構造によっても直鎖状のポリエステル系樹脂(b1)の物性制御が可能になることがメリットであり、従来の乳酸を含有する組成物に対し、物性制御手段を明確に具備させたことが特徴である。直鎖状のポリエステルを得るためには、前記ポリエステルジオール(b11)、該ポリエステルジオール(b11)以外のポリエステルジオール(b12)および伸長剤が、それぞれ2官能である必要がある。いずれかが3官能以上であると、架橋反応が進行し直鎖状のポリエステルを得ることができない。
【0015】
ポリヒドロキシカルボン酸骨格を形成する際に、後述のジオール(11)を添加して共重合することで、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有するポリエステルジオール(b11)が得られる。ジオール(11)として好ましいものは、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど)のアルキレンオキサイド〔アルキレンオキサイドを以下AOと略記する、具体例としてはエチレンオキサイド(以下EOと略記)、プロピレンオキサイド(以下POと略記)、ブチレンオキサイド(以下BOと略記)などが挙げられる〕付加物(付加モル数2〜30)、およびこれらの併用であり、さらに好ましくは、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ビスフェノールAのAO付加物であり、特に好ましくは1,3−プロピレングリコールである。
【0016】
前記ポリエステルジオール(b11)以外のポリエステルジオール(b12)は、後述のポリエステル樹脂のうち、ジオール(11)とジカルボン酸(13)の反応物と同様のものが使用可能であり、重合時にジオールとジカルボン酸の仕込み比率を調整して、水酸基を過剰にすることで得られる。該ポリエステルジオール(b11)以外のポリエステルジオール(b12)として好ましいものは、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど)のAO(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2〜30)、およびこれらの併用から選ばれる1種以上と、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの併用から選ばれる1種以上との反応物である。
【0017】
前記ポリエステルジオール(b11)および該ポリエステルジオール(b11)以外のポリエステルジオール(b12)の数平均分子量(以下、Mnと略記)は、直鎖状ポリエステル樹脂(b1)の物性調整の観点から、500〜3万が好ましく、さらに好ましくは1,000〜2万、最も好ましくは2,000〜5,000である。
【0018】
前記ポリエステルジオール(b11)と該ポリエステルジオール(b11)以外のポリエステルジオール(b12)との伸長に用いる伸長剤としては、前記ポリエステルジオール(b11)および該ポリエステルジオール(b11)以外のポリエステルジオール(b12)に含有される水酸基と反応可能な官能基を2つ有しているものであれば、特に制限されないが、後述のジカルボン酸(13)およびその無水物、ポリイソシアネート(15)、ポリエポキシド(19)のうち、2官能のものが挙げられる。これらのうち、前記ポリエステルジオール(b11)および該ポリエステルジオール(b11)以外のポリエステルジオール(b12)との相溶性の観点から、好ましいものは、ジイソシアネート化合物、ジカルボン酸化合物であり、さらに好ましくはジイソシアネート化合物である。具体的には、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸(および無水物)、フマール酸(および無水物)、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4′−および/または4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート(水添MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等が挙げられ、これらのうち、好ましいものは、コハク酸、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸(および無水物)、フマール酸(および無水物)、およびHDI、IPDIであり、もっとも好ましくはマレイン酸(および無水物)、フマール酸(および無水物)、およびIPDIである。
直鎖状ポリエステル樹脂(b1)中の伸長剤の含有量は、透明性と熱特性の観点から、好ましくは0.1〜30質量%であり、さらに好ましくは1〜20質量%である。
【0019】
樹脂(b)に含有される直鎖状ポリエステル樹脂(b1)の含有量は、用途によって好ましい範囲に適宜調整すればよいが、樹脂粒子(C)の透明性と熱特性の観点から、好ましくは、樹脂(b)に対して40〜100質量%であり、さらに好ましくは60〜90質量%である。直鎖状ポリエステル樹脂(b1)に含有されるヒドロキシカルボン酸が乳酸のように光学活性モノマーの場合でも、モノマー成分換算で光学純度が80%以下であれば、溶剤溶解性の観点から、同様の含有量が好ましい。モノマー成分換算で光学純度が80%を越える場合は、溶剤溶解性の観点から、樹脂(b)中の直鎖状ポリエステル樹脂(b1)の含有量は樹脂(b)中の直鎖状ポリエステル樹脂(b1)の含有率Y(%)とXの関係がY≦−1.5X+220を満たすことが好ましい。
直鎖状ポリエステルを構成するポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有するポリエステルジオール(b11)と該ポリエステルジオール(b11)以外のポリエステルジオール(b12)との質量比は、好ましくは31:69〜90:10であり、樹脂粒子(C)の透明性と熱特性の観点から、さらに好ましくは、40:60〜80:20である。
【0020】
樹脂(b)に含有される樹脂は、上記の直鎖状ポリエステル(b1)以外に、公知のいかなる樹脂を併用してもよく、併用する樹脂は、用途・目的に応じて適宜好ましいものを選択することができる。また、併用する樹脂は、樹脂粒子形成工程で前駆体(b0)が反応して得られる樹脂(b2)であってもよく、粒子形成が容易であるという観点から、前駆体(b0)を用いて、併用する樹脂を含有させる方法が好ましい。前駆体(b0)、および、(b0)から(b2)を得る反応方法は後述のものが使用できる。
【0021】
一般に、併用される樹脂として好ましいものは、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、およびそれらの併用であり、さらに好ましいのはポリウレタン樹脂、およびポリエステル樹脂であり、特に好ましいのは、1,2−プロピレングリコールを構成単位として含有する、ポリエステル樹脂およびポリウレタン樹脂である。
上記直鎖状ポリエステル樹脂(b1)以外の樹脂の含有量は、用途によって好ましい範囲に適宜調整すればよいが、樹脂粒子(C)の透明性と熱特性の観点から、(b)に対して0〜60質量%が好ましく、さらに好ましくは10〜40質量%である。
【0022】
樹脂(b)の数平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定、測定法の詳細は後述する。以下Mnと略記)、融点(DSCにて測定)、ガラス転移温度(Tg)、sp値(sp値の計算方法はPolymer Engineering and Science,Feburuary,1974、Vol.14、No.2 P.147〜154による)は、用途によって好ましい範囲に適宜調整すればよい。
例えば、樹脂(b)のMnは、好ましくは1,000〜500万、さらに好ましくは、2,000〜50万である。(b)の融点は、好ましくは20℃〜300℃、さらに好ましくは80℃〜250℃である。(b)のTgは、好ましくは20℃〜200℃、さらに好ましくは40℃〜200℃である。(b)のsp値は、好ましくは8〜16、さらに好ましくは9〜14である。
【0023】
本発明におけるTgは、DSC測定またはフローテスター測定(DSCで測定できない場合)から求められる値である。
DSCで測定する場合は、セイコー電子工業(株)製DSC20、SSC/580を用いて、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で測定される。
フローテスター測定は島津製作所製の高架式フローテスターCFT500型を用いる。フローテスター測定の条件は下記のとおりであり以下測定は全てこの条件で行われる。
(フローテスター測定条件)
荷重:30kg/cm、昇温速度:3.0℃/min
ダイ口径:0.50mm、ダイ長さ:10.0mm
【0024】
樹脂(a)に用いるポリエステル樹脂において、樹脂全体の酸価(全酸価)が15〜36mgKOH/gで、樹脂を含有した樹脂粒子もしくは樹脂を含有した被膜の場合は、表面酸価が10〜27mgKOH/gの範囲であることが本発明を成立させる上での必要条件である。この全酸価が36mgKOH/gを越えたり、表面酸価が27mgKOH/gを超えると、形成される被膜の耐水性が劣ったり、均一、かつ安定にトナー表面に粒子が付着せず、被膜形成が困難になる場合がある。一方、酸価が15mgKOH/g未満であったり、表面酸価が10未満の場合は、水性化に寄与するカルボキシル基量が十分でなく、良好な水分散体を得ることができない場合があったり、得られるトナーの微粉が消失せず、粒度分布が悪化する場合がある。また、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、ポリスチレン換算)で測定される重量平均分子量が9,000以上、又はフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの等重量比混合溶媒中に1重量%の濃度で溶解させ、20℃で測定したときの相対粘度が1.20以上であるのが好ましい。
重量平均分子量が9,000未満又は相対粘度が1.20未満の場合、該ポリエステル樹脂の水分散体から形成される被膜に十分な加工性が付与されない。さらに、ポリエステル樹脂の重量平均分子量は12,000以上、更には15,000以上が特に好ましい。上限については45,000以下が好ましい。45,000を越えると、ポリエステル樹脂の製造時の操業性を悪化させるばかりでなく、このようなポリエステル樹脂を使用した水分散体では粘度が異常に高くなる場合がある。また、相対粘度は1.22以上が好ましく、1.24以上がより好ましい。上限については1.95以下が好ましく、この値を越えると、ポリエステル樹脂の製造時の操業性を悪化させるばかりでなく、このようなポリエステル樹脂を使用した水分散体では粘度が異常に高くなる場合がある。
【0025】
前記ポリエステル樹脂は本来それ自身で水に分散又は溶解しない本質的に水不溶性のものであり、多塩基酸、多価アルコール類より実質的に合成されるものである。以下にこれらのポリエステル樹脂の構成成分について説明する。
【0026】
多塩基酸のうちの芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等を挙げることができ、必要に応じて耐水性を損なわない範囲で少量の5−ナトリウムスルホイソフタル酸や5−ヒドロキシイソフタル酸を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、(無水)コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、水添ダイマー酸等の飽和ジカルボン酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)シトラコン酸、ダイマー酸等の不飽和ジカルボン酸等を挙げることができ、脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸(無水物)、テトラヒドロフタル酸(無水物)等を挙げることができる。
一方、多価アルコール成分については、グリコールとして炭素数2〜10の脂肪族グリコール、炭素数6〜12の脂環族グリコール、エーテル結合含有グリコールを挙げることができる。炭素数2〜10の脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール等、炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。エーテル結合含有グリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらにビスフェノール類の2つのフェノール性水酸基にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドをそれぞれ1〜数モル付加して得られるグリコール類、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールも必要により使用しうる。ただし、エーテル構造はポリエステル樹脂被膜の耐水性、耐候性を低下させることから、その使用量は全多価アルコール成分の10重量%以下、更には5重量%以下にとどめることが好ましい。
【0027】
本発明においては、ポリエステル樹脂の全多価アルコール成分の50モル%以上、特に65モル%以上がエチレングリコール及び/又はネオペンチルグリコールで構成されていることが好ましい。エチレングリコール及びネオペンチルグリコールは工業的に多量に生産されているので安価であり、しかも形成される被膜の諸性能にバランスがとれ、エチレングリコール成分は特に耐薬品性を、ネオペンチルグリコール成分は特に耐候性を向上させるという長所を有する。
【0028】
本発明で樹脂(a)として使用されるポリエステル樹脂は、必要に応じて3官能以上の多塩基酸及び/又は多価アルコールを共重合することができるが、3官能以上の多塩基酸としては(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等が使用される。一方、3官能以上の多価アルコールとしてはグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が使用される。
3官能以上の多塩基酸及び/又は多価アルコールは、全酸成分あるいは全アルコール成分に対し10モル%以下、好ましくは5モル%以下の範囲で共重合されるが、10モル%を越えるとポリエステル樹脂の長所である被膜の高加工性が発現されなくなる。
【0029】
また、必要に応じて、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の脂肪酸やそのエステル形成性誘導体、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、4−ヒドロキシフェニルステアリン酸等の高沸点のモノカルボン酸、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等の高沸点のモノアルコール、ε−カプロラクトン、乳酸、β−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やそのエステル形成性誘導体を使用してもよい。
【0030】
かかるポリエステル樹脂は、前記のモノマー類より公知の方法を用いて合成される。例えば、(a)全モノマー成分及び/又はその低重合体を不活性雰囲気下で180〜250℃、2.5〜10時間程度反応させてエステル化反応を行い、引き続いて触媒の存在下、1Torr以下の減圧下に220〜280℃の温度で所望の溶融粘度に達するまで重縮合反応を進めてポリエステル樹脂を得る方法、(b)前記重縮合反応を、目標とする溶融粘度に達する以前の段階で終了し、反応生成物を次工程で多官能のエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、オキサゾリン系化合物等から選ばれる鎖長延長剤と混合し、短時間反応させることにより高分子量化を図る方法、(c)前記重縮合反応を目標とする溶融粘度以上の段階まで進めておき、モノマー成分を更に添加し、不活性雰囲気、常圧〜加圧系で解重合を行うことで目標とする溶融粘度のポリエステル樹脂を得る方法等を挙げることができる。
【0031】
水性化に必要なカルボキシル基は、樹脂骨格中に存在するよりも樹脂分子鎖の末端に偏在していることが、形成される被膜の耐水性の面から好ましい。副反応やゲル化等を伴わずに、高分子量のポリエステル樹脂の分子鎖末端に特定量のカルボキシル基を導入する方法としては、ポリエステル樹脂を製造する場合、前記の方法(a)において重縮合反応の開始時以降に3官能以上の多塩基酸成分を添加するか、或いは、重縮合反応の終了直前に多塩基酸の酸無水物を添加する方法、前記の方法(b)において大部分の分子鎖末端がカルボキシル基である低分子量ポリエステル樹脂を鎖長延長剤により高分子量化させる方法、前記の方法(c)において解重合剤として多塩基酸成分を使用する方法等が好ましい態様である。
【0032】
前記ポリエステル樹脂水分散体中におけるポリエステル樹脂の含有率はその使用される用途、乾燥膜厚、成形方法によって適宜選択されるべきであるが、一般には0.5〜50重量%、中でも1〜40重量%の範囲で使用することが好ましい。後述するように、本発明のポリエステル樹脂水分散体はポリエステル樹脂の含有率が20重量%以上といった高固形分濃度であっても貯蔵安定性に優れるという長所を有する。しかし、ポリエステル樹脂の含有率が50重量%を越えるとポリエステル樹脂水分散体の粘度が著しく高くなり、実質的に成形が困難となってしまう場合がある。
【0033】
[塩基性化合物]
本発明における樹脂(a)のポリエステル樹脂は水媒体に分散させる際、塩基性化合物で中和される。本発明においてはポリエステル樹脂中のカルボキシル基との中和反応が水性化(樹脂微粒子の形成)の起動力であり、しかも生成したカルボキシアニオン間の電気反発力によって、微粒子間の凝集を防ぐことができる。塩基性化合物としては被膜形成時、或いは硬化剤配合による焼付硬化時に揮散する化合物が好ましく、このようなものとしてはアンモニア、沸点が250℃以下の有機アミン化合物等が挙げられる。望ましい有機アミン化合物の例としては、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等を挙げることができる。塩基性化合物は、ポリエステル樹脂中に含まれるカルボキシル基に応じて、少なくとも部分中和し得る量、すなわち、カルボキシル基に対して0.2〜1.5倍当量を添加することが好ましく、0.4〜1.3倍当量を添加することがより好ましい。0.2倍当量未満では塩基性化合物添加の効果が認められず、1.5倍当量を越えると、ポリエステル樹脂水分散体が著しく増粘する場合がある。
【0034】
[両親媒性の有機溶剤]
本発明においては、水性化処理速度を加速させる目的で、水性化工程では、ポリエステル樹脂に対して両親媒性の有機化合物を用いても良い。
かかる有機溶剤としては、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等を例示することができる。これらの溶剤は単一でも、また2種以上を混合しても使用できる。
【0035】
本発明における樹脂粒子(C)は、第1の樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)もしくは、樹脂(a)を含有する被膜(P)が、第2の樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)の表面を被覆するものであれば、いかなる製造方法で得られたものであってもよい。
本発明における樹脂粒子(C)は、どのような方法および過程で製造された樹脂粒子であってもよいが、樹脂粒子を製造する方法として、次のような製造方法(I)あるいは(II)等が挙げられる。
(I):樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)の水性分散液(W)と、[樹脂(b)もしくはそれらの有機溶剤溶液乃至分散液]〔以下(O1)という〕、または、[樹脂(b)の前駆体(b0)もしくはそれらの有機溶剤溶液乃至分散液]〔以下(O2)という〕とを混合し、(W)中に(O1)または(O2)を分散し、(W)中で(b)を含有する樹脂粒子(B)を形成する方法。
この場合、樹脂粒子(B)の造粒と同時に(B)表面に樹脂粒子(A)あるいは被膜(P)が付着して樹脂粒子(C)の水性分散体(X)ができ、これから水性媒体を除去することによって造られる。
【0036】
(II):あらかじめ作製した樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)に、樹脂(a)を含有するコーティング剤(W′)でコーティングして樹脂粒子(C)を得る方法。
この場合、コーティング剤(W′)は液体、固体、どのような形態であってもかまわず、さらに(a)の前駆体(a′)でコーティングした後に(a′)を反応させて(a)にしてもよい。また、用いる(B)は、乳化重合凝集法などで作製された樹脂粒子であっても、粉砕法で作製された樹脂粒子であっても、どのような製造法で作製されたものでもかまわない。またコーティング方法には、限定はなく、例えば、樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)の水性分散液(W)中にあらかじめ作製した樹脂粒子(B)または(B)の分散体を分散させる方法や、(B)に(a)の溶解液をコーティング剤としてふりかける方法などが挙げられる。
これらの中では(I)の製法が好ましい。
【0037】
樹脂粒子(C)は、以下の製造方法により得られたものであることが、粒径が均一な樹脂粒子となることからさらに好ましい。
樹脂粒子(A)の水性分散液(W)と、(O1)(樹脂(b)もしくはその有機溶剤溶液乃至分散液)、または(O2)(樹脂(b)の前駆体(b0)と、その有機溶剤溶液乃至分散液)とを混合し、(W)中に(O1)または(O2)を分散させて、(b)を含有する樹脂粒子(B)が形成される際に、樹脂粒子(B)の表面に樹脂粒子(A)を吸着させることで樹脂粒子(C)同士が合一するのを防ぎ、また、高剪断条件下で(C)が分裂され難くする。これにより、(C)の粒径を一定の値に収斂させ、粒径の均一性を高める効果を発揮する。そのため、樹脂粒子(A)は、分散する際の温度において、剪断により破壊されない程度の強度を有すること、水に溶解したり、膨潤したりしにくいこと、(b)、もしくはその有機溶剤溶液乃至分散液、樹脂(b)と前駆体(b0)、もしくはその有機溶剤溶液乃至分散液に溶解しにくいことが好ましい特性としてあげられる。
また、トナー成分である、着色剤、離型剤及び変性層状無機鉱物は、樹脂粒子(B)中に包含される。このため、(W)と(O)(O1又はO2)との混合前に、(O)の溶液中に分散させておく。また、帯電制御剤は樹脂粒子(B)に内包させてもよく、外添してもよい。内包させる場合には前記着色剤等と同様に(O)の溶液中に分散させておけばよく、また、外添する場合には粒子Cの形成後に外添する。
【0038】
樹脂粒子(A)が水や分散時に用いる溶剤に対して、溶解したり、膨潤したりするのを低減する観点から、樹脂(a)の分子量、sp値(sp値の計算方法はPolymer Engineering and Science,Feburuary,1974,VoL14、No.2P、147〜154による)、結晶性、架橋点間分子量等を適宜調整するのが好ましい。
【0039】
本発明において、ポリエステル樹脂等のポリウレタン樹脂以外の樹脂の、数平均分子量(Mn)、および重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分について、ゲルパーミエーションクロマトグラフイー(GPC)を用いて以下の条件で測定される。
装置(一例) :東ソー製HLC−8120
カラム(一例) :TSKgelGMHXL(2本)
:TSKgelMultiporeHXL−M(1本)
試料溶液 :0.25%のTHF溶液
溶液注入量 :100μL
流量 :1mL/分
測定温度 :40℃
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :東ソー製標準ポリスチレン(TSKstandardPOLYSTYRENE)12点(分子量500 1050 2800 5970 9100 18100 37900 96400 190000 355000 1090000 2890000)
【0040】
また、ポリウレタン樹脂のMnおよびMwはGPCを用いて以下の条件で測定される。
装置(一例) :東ソー製HLC−8220GPC
カラム(一例) :GuardcolumnαTSKgelα−M
試料溶液 :0.125%のジメチルホルムアミド溶液
溶液注入量 :100μL
流量 :1mL/分
温度 :40℃
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :東ソー製標準ポリスチレン(TSKstandardPOLYSTYRENE)12点(分子量500 1050 2800 5970 9100 18100 37900 96400 190000 355000 1090000 2890000)
【0041】
樹脂(a)のガラス転移温度(Tg)は、樹脂粒子(C)の粒径均一性、粉体流動性、保存時の耐熱性、耐ストレス性の観点から、好ましくは50℃〜100℃、さらに好ましくは51℃〜90℃、特に好ましくは52℃〜75℃ある。水性樹脂分散体を作成する温度よりTgが低いと、合一を防止したり、分裂を防止したりする効果が小さくなり、粒径の均一性を高める効果が小さくなる。また、樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)および樹脂(a)を含有する被膜(P)のTgは、同様の理由で、好ましくは20〜200℃、さらに好ましくは30〜100℃、特に好ましくは40〜85℃である。
なお、本発明におけるTgは、DSC測定またはフローテスター測定(DSCで測定できない場合)から求められる値である。
【0042】
DSCで測定する場合は、セイコー電子工業(株)製DSC20、SSC/580を用いて、ASTMD3418−82に規定の方法(DSC法)で測定される。フローテスター測定には、島津製作所製の高架式フローテスターCFT500型を用いる。フローテスター測定の条件は下記のとおりであり、以下測定は全てこの条件で行われる。
(フローテスター測定条件)
荷重:30kg/cm、昇温速度:3.0℃/min、
ダイロ径:0.50mm、タイ長さ:10.0mm
【0043】
樹脂(a)は、前述のように公知の樹脂から選択されるが、樹脂(a)のガラス転移温度(g)を調整する場合、樹脂(a)の分子量および/または樹脂(a)を構成する単量体組成を変更することで容易に調整できる。樹脂(a)の分子量(分子量が大きくなるほど、これらの温度は高くなる。)を調整する方法としては、公知の方法でよく、例えば、ポリエステル樹脂のような逐次反応で重合する場合には、単量体の仕込み比の調整が挙げられる。
【0044】
樹脂粒子(A)の水性分散液(W)中に、水以外に後述の有機溶剤(u)のうち水と混和性の有機溶剤(アセトン、メチルエチルケトン等)が含有されていてもよい。この際、含有される有機溶剤は、樹脂粒子(A)の凝集を引き起こさないもの、樹脂粒子(A)を溶解しないもの、および樹脂粒子(C)の造粒を妨げることがないものであればどの種であっても、またどの程度の含有量であってもかまわないが、水との合計量の40質量%以下用いて、乾燥後の樹脂粒子(C)中に残らないものが好ましい。
【0045】
本発明に用いる有機溶剤(u)は、乳化分散の際に必要に応じて水性媒体中に加えても、被乳化分散体中[樹脂(b)を含む油相(O1)または樹脂(b)、(b0)を含む油相(O2)中]に加えてもよい。有機溶剤(u)の具体例としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素系溶剤;n−ヘキサン、n−へブタン、ミネラルスピリットシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素系溶剤;塩化メチル、臭化メチルヨウ化メチル、メチレンジクロライド、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレンなどのハロゲン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテートエチル、セロソルブアセテートなどのエステル系またはエステルエーテル系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランジオキサン、エチルセロソルブ、プチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤:メタノールエタノールn−プロパノールイソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノールt−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコールベンジルアルコールなどのアルコール系溶剤:ジメチルホルムアミドジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶剤、N−メチルピロリドンなどの複素環式化合物系溶剤、ならびにこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。
【0046】
可塑剤(v)は、乳化分散の際に必要に応じて水性媒体中に加えても、被乳化分散体中[樹脂(b)を含む油相(O1)または樹脂(b)および(b0)を含む油相(O2)中]に加えてもよい。可塑剤(v)としては、何ら限定されず、以下のものが例示される。
(vl)フタル酸エステル[フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルベンジルフタル酸ジイソデシル等];
(v2)脂肪族2塩基酸エステル[アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸−2−エチルヘキシル等];
(v3)トリメリット酸エステル[トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリオクチル等];
(v4)燐酸エステル[リン酸トリエチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジール等];
(v5)脂肪酸エステル[オレイン酸ブチル等];
(V6)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0047】
本発明において用いる樹脂粒子(A)の粒径は、通常、形成される樹脂粒子(B)の粒径よりも小さく、粒径均一性の観点から、粒径比[樹脂粒子(A)の体積平均粒径]/[樹脂粒子(B)の体積平均粒径]の値が0.001〜0.3の範囲であるのが好ましい。粒径比の下限は、さらに好ましくは0.003であり、上限は、さらに好ましくは0.25である。粒径比が、0.3より大きいと(A)が(B)の表面に効率よく吸着しないため、得られる(C)の粒度分布が広くなる傾向がある。
【0048】
樹脂粒子(A)の体積平均粒径は、所望の粒径の樹脂粒子(C)を得るのに適した粒径になるように、上記粒径比の範囲で適宜調整することができる。樹脂粒子(A)の体積平均粒径は、一般的には、0.0005〜1μmが好ましい。上限は、さらに好ましくは0.75μm、特に好ましくは0.5μmであり、下限は、さらに好ましくは0.01μm、特に好ましくは0.02μm、最も好ましくは0.04μmである。
ただし、例えば、体積平均粒径1μmの樹脂粒子(C)を得たい場合には、好ましくは0.0005〜0.30μm、特に好ましくは0.001〜0.2μmの範囲、10μmの樹脂粒子(C)を得た場合には、好ましくは0.005〜0.8μm、特に好ましくは0.05〜1μm、である。
【0049】
本発明において用いる樹脂粒子(A)の粒径は、樹脂粒子(B)の粒径よりも小さく、粒径均一性の観点から、粒径比[樹脂粒子(A)の体積平均粒径]/[樹脂粒子(B)の体積平均粒径]の値が0.001〜0.3の範囲であるのが好ましく、さらに好ましい範囲は0.003〜0.25である。また、樹脂粒子(A)の体積平均粒径は所望の粒径の樹脂粒子(C)を得るのに適した粒径になるように、上記粒径比の範囲で適宜調整することができるが、0.03〜0.15μmであることが好ましく、さらには0.03〜0.12μmが好ましく、最も好ましくは0.03〜0.10μmである。
樹脂粒子(A)の体積平均粒径は、樹脂粒子(A)が分散安定剤として樹脂粒子(B)の表面を被覆する際の安定性に大きな影響を与える。例えば0.03μm以下では樹脂粒子(A)が樹脂粒子(B)表面に付着した際に、併用する有機溶剤へ溶解しやすく、樹脂粒子(B)表面で樹脂粒子(A)自身が単独で凝集・合一しやすくなり、均一に樹脂粒子(A)で被覆されたトナーを得ることが困難になる。また、0.10μm以上になると、後述する樹脂粒子(B)の好ましい体積平均粒径の範囲においては、樹脂粒子(A)の粒径が大きくなりすぎ、均一に樹脂粒子(B)の表面を被覆することが困難になる。
【0050】
いずれの場合も、樹脂粒子(C)の表層の不均一化を招くことから、トナー造粒中の分散安定性が悪化するため、造粒時の分散時間の制御が必要になるだけでなく、得られたトナーの耐トナーフィルミング性が悪化する場合がある。なお、体積平均粒径はレーザー式粒度分布測定装置LA−920(堀場製作所製)やマルチサイザーIII(コールター社製)、光学系としてレーザードップラー法を用いるELS−800(大塚電子社製)などで測定できる。もし、各測定装置間で粒径の測定値に差を生じた場合は、ELS−800での測定値を採用する。なお、上記粒径比が得やすいことから、後述する樹脂粒子(B)の体積平均粒径は、0.1〜15μmが好ましい。さらに好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは1〜8μmである。
【0051】
前駆体(b0)としては、反応性基を有するプレポリマー(α)と硬化剤(β)の組み合わせを用いることもできる。ここで「反応性基」とは硬化剤(β)と反応可能な基のことをいう。この場合、樹脂粒子(C)の形成工程で前駆体(b0)を反応させて得られる樹脂(b2)を含有する樹脂粒子(B)を形成する方法としては、反応性基含有プレポリマー(α)および硬化剤(β)および必要により有機溶剤(u)を含む油相を、樹脂粒子(A)の水系分散液中に分散させ、加熱により反応性基含有プレポリマー(α)と硬化剤(β)を反応させて樹脂(b2)を含有する樹脂粒子(B)を形成させる方法;反応性基含有プレポリマー(α)またはその有機溶剤溶液乃至分散液を樹脂粒子(A)の水系分散液中に分散させ、ここに水溶性の硬化剤(β)を加え反応させて、樹脂(b2)を含有する樹脂粒子(B)を形成させる方法;反応性基含有プレポリマー(α)が水と反応して硬化するものである場合は、反応性基含有プレポリマー(α)またはその有機溶剤溶液乃至分散液を樹脂粒子(A)の水性分散液(W)に分散させることで水と反応させて(b2)を含有する樹脂粒子(B)を形成させる方法等が例示できる。
【0052】
反応性基含有プレポリマー(α)が有する反応性基と、硬化剤(β)の組み合わせとしては、下記〔1〕、〔2〕などが挙げられる。
〔1〕反応性基含有プレポリマー(α)が有する反応性基が、活性水素化合物と反応可能な官能基(α1)であり、硬化剤(β)が活性水素基含有化合物(β1)であるという組み合わせ。
〔2〕反応性基含有プレポリマー(α)が有する反応性基が活性水素含有基(α2)であり、硬化剤(β)が活性水素含有基と反応可能な化合物(β2)であるという組み合わせ。
【0053】
これらのうち、水中での反応率の観点から、〔1〕がより好ましい。上記組合せ〔1〕において、活性水素化合物と反応可能な官能基(α1)としては、イソシアネート基(α1a)、ブロック化イソシアネート基(α1b)、エポキシ基(α1c)、酸無水物基(α1d)および酸ハライド基(α1e)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、(α1a)、(α1b)および(α1c)であり、特に好ましいものは、(α1a)および(α1b)である。ブロック化イソシアネート基(α1b)は、ブロック化剤によりブロックされたイソシアネート基のことをいう。上記ブロック化剤としては、オキシム類[アセトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、ジエチルケトオキシム、シクロペンタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、メチルエチルケトオキシム等];ラクタム類[γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム、γ−バレロラクタム等]:炭素数1〜20の脂肪族アルコール類[エタノール、メタノール、オクタノール等];フェノール類[フェノール、−クレゾール、キシレノール、ノニルフェノール等];活性メチレン化合物[アセチルアセトン、マロン酸エチル、アセト酢酸エチル等];塩基性窒素含有化合物[N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、2−ヒドロキシピリジン、ピリジンN−オキサイド、2−メルカプトピリジン等]:およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
これらのうち好ましいのはオキシム類であり、特に好ましいものはメチルエチルケトオキシムである。
【0054】
反応性基含有プレポリマー(α)の骨格としては、ポリエーテル(αw)、ポリエステル(αx)、エポキシ樹脂(αy)およびポリウレタン(αz)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、(αx)、(αy)および(αz)であり、特に好ましいものは(αx)および(αz)である。ポリエーテル(αw)としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイドポリテトラメチレンオキサイドなどが挙げられる。ポリエステル(αx)としては、ジオール(11)とジカルボン酸(13)の重縮合物、ポリラクトン(ε−カプロラクトンの開環重合物)等が挙げらる。エポキシ樹脂(αy)としては、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど)とエピクロルヒドリンとの付加縮合物などが挙げられる。ポリウレタン(αz)としてはジオール(11)とポリイソシアネート(15)の重付加物、ポリエステル(αx)とポリイソシアネート(15)の重付加物などが挙げられる。
【0055】
ポリエステル(αx)、エポキシ樹脂(αy)、ポリウレタン(αz)などに反応性基を含有させる方法としては、
〔1〕二以上の構成成分のうちの一つを過剰に用いることで構成成分の官能基を末端に残存させる方法、
〔2〕二以上の構成成分のうちの一つを過剰に用いることで構成成分の官能基を末端に残存させ、さらに残存した該官能基と反応可能な官能基および反応性基を含有する化合物を反応させる方法などが挙げられる。
【0056】
上記方法〔1〕では、水酸基含有ポリエステルプレポリマー、カルボキシル基含有ポリエステルプレポリマー、酸ハライド基含有ポリエステルプレポリマー、水酸基含有エポキシ樹脂プレポリマー、エポキシ基含有エポキシ樹脂プレポリマー、水酸基含有ポリウレタンプレポリマー、イソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマーなどが得られる。構成成分の比率は、例えば、水酸基含有ポリエステルプレポリマーの場合、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率が、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、好ましくは2/1〜1/1、さらに好ましくは1.5/1〜1/1、特に好ましくは1.3/1〜1.02/1である。他の骨格、末端基のプレポリマーの場合も、構成成分が変わるだけで比率は同様である。
【0057】
上記方法〔2〕では、上記方法〔1〕で得られたプレプリマーに、ポリイソシアネートを反応させることでイソシアネート基含有プレポリマーが得られ、ブロック化ポリイソシアネートを反応させることでブロック化イソシアネート基含有プレポリマーが得られ、ポリエポキサイドを反応させることでエポキシ基含有プレポリマーが得られ、ポリ酸無水物を反応させることで酸無水物基含有プレポリマーが得られる。官能基および反応性基を含有する化合物の使用量は、例えば、水酸基含有ポリエステルにポリイソシアネートを反応させてイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマーを得る場合、ポリイソシアネートの比率が、イソシアネート基[NCO]と、水酸基含有ポリエステルの水酸基[OHの当量比[NCO]/[OH]として、好ましくは5/1〜1/1、さらに好ましくは4/1〜1.2/1、特に好ましくは2.5/1〜1.5/1である。他の骨格、末端基を有するプレポリマーの場合も、構成成分が変わるだけで比率は同様である。
【0058】
反応性基含有プレポリマー(α)中の1分子当たりに含有する反応性基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。上記範囲にすることで、硬化剤(β)と反応させて得られる硬化物の分子量が高くなる。反応性基含有プレポリマー(α)のMnは、好ましくは500〜30,000、さらに好ましくは1,000〜20,000、特に、好ましくは2,000〜10,000である。反応性基含有プレポリマー(α)の重量平均分子量は、1,000〜50,000、好ましくは2,000〜40,000、さらに好ましくは4,000〜20,000である。反応性基含有プレポリマー(α)の粘度は、100℃において、好ましくは2,000ポイズ以下、さらに好ましくは1,000ポイズ以下である。2,000ポイズ以下にすることで、少量の有機溶剤で粒度分布のシヤープな樹脂粒子(C)が得られる点で好ましい。
【0059】
活性水素基含有化合物(βl)としては、脱離可能な化合物でブロック化されていてもよいポリアミン(β1a)、ポリオール(β1b)、ポリメルカプタン(β1c)および水(β1d)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、(β1a)、(β1b)および(β1d)であり、さらに好ましいものは、(β1a)および(β1d)であり、特に好ましいものは、ブロック化されたポリアミン類および(β1d)である。(β1a)としては、ポリアミン(16)と同様のものが例示される。(β1a)として好ましいものは、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンおよびそれらの混合物である。
【0060】
(β1a)が脱離可能な化合物でブロック化されたポリアミンである場合の例としては、前記ポリアミン類と炭素数3〜8のケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、炭素数2〜8のアルデヒド化合物(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド)から得られるアルジミン化合物、エナミン化合物、およびオキサゾリジン化合物などが挙げられる。
【0061】
ポリオール(β1b)としては、前記のジオール(11)およびポリオール(12)と同様のものが例示される。ジオール(11)単独、またはジオール(11)と少量のポリオール(12)の混合物が好ましい。ポリメルカプタン(β1c)としては、エチレンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオールなどが挙げられる。
【0062】
必要により活性水素基含有化合物(β1)と共に反応停止剤(βs)を用いることができる。反応停止剤を(βl)と一定の比率で併用することにより、(b2)を所定の分子量に調整することが可能である。反応停止剤(βs)としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなど);モノアミンをブロックしたもの(ケチミン化合物など):モノオール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、フェノールなど);モノメルカプタン(ブチルメルカプタン、ラウリルメルカブタンなど);モノイソシアネート(ラウリルイソシアネートフェニルイソシアネートなど):モノエポキサイド(ブチルグリシジルエーテルなど)などが挙げられる。
【0063】
上記組合せ〔2〕における反応性基含有プレポリマー(α)が有する活性水素含有基(α2)としては、アミノ基(α2a)、水酸基(アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基)(α2b)、メルカプト基(α2c)、カルポキシル基(α2d)およびそれらが脱離可能な化合物でブロック化された有機基(α2e)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、(α2a)、(α2b)およびアミノ基が脱離可能な化合物でブロック化された有機基(α2e)であり、特に好ましいものは、(α2b)である。アミノ基が脱離可能な化合物でブロック化された有機基としては、前記(β1a)の場合と同様のものが例示できる。
【0064】
活性水素含有基と反応可能な化合物(β2)としては、ポリイソシアネート(β2a)、ポリエポキシド(β2b)、ポリカルボン酸(β2c)、ポリカルボン酸無水物(β2d)およびポリ酸ハライド(β2e)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、(β2a)および(β2b)であり、さらに好ましいものは、(β2a)である。
【0065】
ポリイソシアネート(β2a)としては、ポリイソシアネート(15)と同様のものが例示され、好ましいものも同様である。ポリエポキシド(β2b)としては、ポリエポキシド(19)と同様のものが例示され、好ましいものも同様である。
【0066】
ポリカルボン酸(β2c)としては、ジカルボン酸(β2c−1)および3価以上のポリカルボン酸(β2c−2)が挙げられ、(β2c−1)単独、および(β2c−1)と少量の(β2c−2)の混合物が好ましい。ジカルボン酸(β2c−1)としては、前記ジカルボン酸(13)と、ポリカルボン酸としては、前記ポリカルボン酸(5)と同様のものが例示され、好ましいものも同様である。
【0067】
ポリカルボン酸無水物(β2d)としては、ピロメリット酸無水物などが挙げられる。ポリ酸ハライド類(β2e)としては、前記(β2c)の酸ハライド(酸クロライド、酸ブロマイド酸アイオダイド)などが挙げられる。さらに、必要により(β2)と共に反応停止剤(βs)を用いることができる。
【0068】
硬化剤(β)の比率は、反応性基含有プレポリマー(α)中の反応性基の当量[α]と、硬化剤(β)中の活性水素含有基[β]の当量の比[α]/[β]として、好ましくは1/2〜2/1、さらに好ましくは1.5/1〜1/1.5、特に好ましくは1.2/1〜1/1.2である。なお、硬化剤(β)が水(β1d)である場合は水は2価の活性水素化合物として取り扱う。
【0069】
反応性基含有プレポリマー(α)と硬化剤(β)を含有する前駆体(b0)を水系媒体中で反応させた樹脂(b2)が樹脂粒子(B)並びに樹脂粒子(C)の構成成分となる。反応性基含有プレポリマー(α)と硬化剤(β)を反応させた樹脂(b2)の重量平均分子量は、好ましくは3,000以上、さらに好ましくは3,000〜1,000万、特に好ましくは5,000〜100万である。
【0070】
また、反応性基含有プレポリマー(α)と硬化剤(β)との水系媒体中での反応時に、直鎖状ポリエステル系樹脂(b1)等の反応性基含有プレポリマー(α)および硬化剤(β)と反応しないポリマー[いわゆるデッドポリマー]を系内に含有させることにより、樹脂(b)は、反応性基含有プレポリマー(α)と硬化剤(β)を水系媒体中で反応させて得られた樹脂(b2)と、直鎖状のポリエステル系樹脂(b1)等の反応させていない樹脂の混合物となる。
【0071】
樹脂(b)100質量部に対する水性分散液(W)の使用量は、好ましくは50〜2,000質量部、さらに好ましくは100〜1,000質量部である。50質量部以上では(b)の分散状態が良好であり2,000質量部以下であると経済的である。
【0072】
樹脂粒子(C)は、樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)の水性分散液(W)と、樹脂(b)もしくはそれらの有機溶剤溶液乃至分散液(O1)、または樹脂(b)と樹脂(b)の前駆体(b0)と樹脂(d)、もしくはそれらの有機溶剤溶液乃至分散液(O2)とが混合され、(W)中に(O1)または(O2)とが分散され、(b0)の場合は(b0)が反応されて樹脂(b2)が形成され、樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)の表面に樹脂(a)が付着してなる構造の樹脂粒子(C)の水性分散体(X)を得て、水性樹脂分散体(X)から水性媒体を除去することにより得られる。樹脂粒子(B)の表面に付着している樹脂(a)の状態は、樹脂粒子(A)でも被膜(P)のどちらでもよい。(A)となるか(P)となるかは、樹脂(a)のTg、樹脂粒子(C)の製造条件(脱溶媒温度等)により異なる。
【0073】
前記製造方法(I)で得られる樹脂粒子(C)の形状の制御は、樹脂(a)と、樹脂(b)のsp値差、また樹脂(a)の分子量を制御することで粒子形状や粒子表面性を制御することができる。sp値差が小さいといびつな形で表面平滑な粒子が得られやすく、また、sp値差が大きいと球形で表面はザラつきのある粒子が得られやすい。また、(a)の分子量が大きいと表面はザラつきのある粒子が得られやすく、分子量が小さいと表面平滑な粒子が得られやすい。ただし、(a)と、(b)のsp値差は小さすぎても大きすぎても造粒困難になる。また樹脂(a)の分子量も小さすぎると造粒困難になる。このことから、好ましい(a)と、(b)のsp値差は0.01〜5.0で、より好ましくは0.1〜3.0、さらに好ましくは、0.2〜2.0である。
【0074】
前記の製造方法(II)の場合においては、樹脂粒子(C)の形状はあらかじめ作製する樹脂粒子(B)の形状に大きく影響し、樹脂粒子(C)は樹脂粒子(B)とほぼ同じ形状になる。ただし、(B)がいびつな場合、製造方法(II)でより多くコーティング剤(W′)を使用すると球形になる。
【0075】
本発明において、樹脂粒子(C)の粒径均一性、保存安定性等の観点から、樹脂粒子(C)は、0.01〜60質量%の樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)、あるいは樹脂(a)を含有する被膜(P)と40〜99.99質量%の樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)からなるのが好ましく、さらに好ましくは0.1〜50質量%の(A)あるいは(P)と50〜99.9質量%の(B)、特に好ましくは1〜45質量%の(A)あるいは(P)と55〜99質量%の(B)からなるものである。(A)あるいは(P)が0.01質量%以上であると耐ブロッキング性が良好であり、60%質量以下であると定着特性、特に低温定着性が良好である。
【0076】
また、樹脂粒子(C)の粒径均一性、粉体流動性、保存安定性等の観点からは、樹脂粒子(C)において、樹脂粒子(B)の表面の5%以上、好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、特に好ましくは80%以上が樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)あるいは樹脂(a)を含有する被膜(P)で覆われているのがよい。(C)の表面被覆率は、走査電子顕微鏡(SEM)で得られる像の画像解析から下式に基づいて求めることができる。
表面被覆率(%)=[(A)あるいは(P)に覆われている部分の面積/(A)あるいは(P)に覆われている部分の面積+樹脂粒子(B)が露出している部分の面積]×100
【0077】
粒径均一性の観点から、樹脂粒子(C)の体積分布の変動係数は、30%以下であるのが好ましく、0.1〜15%であるのがさらに好ましい。また、粒径均一性から、樹脂粒子(C)の[体積平均粒径/個数平均粒径]の値は、1.0〜1.4であるのが好ましく、1.0〜1.3であるのがさらに好ましい。(C)の体積平均粒径は、用途により異なるが、一般的には0.1〜16μmが好ましい。上限は、さらに好ましくは11μm、特に好ましくは9μmであり、下限は、さらに好ましくは0.5μm、特に好ましくは1μmである。なお、体積平均粒径および個数平均粒径は、マルチサイザーIII(コールター社製)で同時に測定することができる。
【0078】
本発明の樹脂粒子(C)は、樹脂粒子(A)と樹脂粒子(B)の粒径、および、樹脂(a)を含有する被膜(P)による樹脂粒子(B)表面の被覆率を変えることで、粒子表面に所望の凹凸を付与することができる。粉体流動性を向上させたい場合には、(C)のBET値比表面積が0.5〜5.0m/gであるのが好ましい。本発明のBET比表面積は、比表面積計、例えばQUANTASORB(ユアサアイオニクス製)を用いて測定(測定ガス:He/Kr=99.9/0.1vol%、検量ガス:窒素)したものである。同様に粉体流動性の観点から、(C)の表面平均中心線粗さRaが0.01〜0.8μmであるのが好ましい。Raは、粗さ曲線とその中心線との偏差の絶対値を算術平均した値のことであり、例えば、走査型プローブ顕微鏡システム(東陽テクニカ製)で測定することができる。
【0079】
樹脂粒子(C)の形状は、粉体流動性、溶融レベリング性等の観点から球状であるのが好ましい。その場合、樹脂粒子(B)も球状であるのが好ましい。(C)の平均円形度は0.95〜1.00であるのが好ましい。平均円形度は、さらに好ましくは0.96〜1.0、特に好ましくは0.97〜1.0である。なお、平均円形度は、光学的に粒子を検知して、投影面積の等しい相当円の周囲長で除した値である。具体的には、フロー式粒子像分析装置(FPIA−2000;シスメックス社製)を用いて測定する。所定の容器に、予め不純固形物を除去した水100〜150mLを入れ、分散剤として界面活性剤(ドライウエル;富士写真フィルム社製)0.1〜0.5mLを加え、さらに測定試料0.1〜9.5g程度を加える。試料を分散した懸濁液を超音波分散器(ウルトラソニッククリーナモデルVS−150;ウエルボクリア社製)で約1〜3分間分散処理を行い、分散濃度を3,000〜10,000個/μLにして樹脂粒子の形状および分布を測定する。
【0080】
(帯電制御剤:CCA)
本発明のトナーは必要に応じ帯電制御剤をトナー中に含有させることができる。
例えば、ニグロシン、炭素数2〜16のアルキル基を含むアジン系染料(特公昭42−1627号公報)、塩基性染料、例えばC.I.Basic Yellow 2(C.I.41000)、C.I.Basic Yellow 3、C.I.Basic Red 1(C.I.45160)、C.I.Basic Red 9(C.I.42500)、C.I.Basic Violet 1(C.I.42535)、C.I.Basic Violet 3(C.I.42555)、C.I.Basic Violet 10(C.I.45170)、C.I.Basic Violet 14(C.I.42510)、C.I.Bas ic Blue 1(C.I.42025)、C.I.Basic Blue3(C.I.51005)、C.I.Basic Blue 5(C.I.42140)、C.I.Basic Blue 7(C.I.42595)、C.I.Basic Blue 9(C.I.52015)、C.I.Basic Blue 24(C.I.52030)、C.I.Basic Blue 25(C.I.52025)、C.I.Basic Blue 26(C.I.44045)、C.I.Basic Green 1(C.I.42040)、C.I.Basic Green 4(C.I.42000)など及びこれらの塩基性染料のレーキ顔料、C.I.Solvent Black 8(C.I.26150)、ベンゾイルメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルクロライド等の4級アンモニウム塩、或いはジブチル又はジオクチルなどのジアルキルスズ化合物、ジアルキルスズボレート化合物、グアニジン誘導体、アミノ基を含有するビニル系ポリマー、アミノ基を含有する縮合系ポリマー等のポリアミン樹脂、特公昭41−20153号公報、特公昭43−27596号公報、特公昭44−6397号公報、特公昭45−26478号公報に記載されているモノアゾ染料の金属錯塩、特公昭55−42752号公報、特公昭59−7385号公報に記載されているサルチル酸、ジアルキルサルチル酸、ナフトエ酸、ジカルボン酸のZn、Al、Co、Cr、Fe等の金属錯体、スルホン化した銅フタロシアニン顔料、有機ホウ素塩類、含フッ素四級アンモニウム塩、カリックスアレン系化合物等が挙げられる。ブラック以外のカラートナーは、当然目的の色を損なう帯電制御剤の使用は避けるべきであり、白色のサリチル酸誘導体の金属塩等が好適に使用される。
【0081】
前記帯電制御剤の含有量は、前記結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部〜2質量部が好ましく、0.02質量部〜1質量部がより好ましい。前記含有量が、0.01質量部以上であると帯電制御性が得られ、2質量部以下であるとトナーの帯電性が大きくなりすぎることがなく、主帯電制御剤の効果を減退させることもなく、現像ローラとの静電的吸引力が増大してトナーの流動性低下や画像濃度の低下を招くということもない。
【0082】
本発明のトナーは、層状無機鉱物が有する層間のイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物を含有することが好ましい。本発明に用いる層状無機鉱物が有する層間のイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物は、スメクタイト系の基本結晶構造を持つものを有機カチオンで変性したものが望ましい。また、層状無機鉱物の2価金属の一部を3価の金属に置換することにより、金属アニオンを導入することが出来る。しかし、金属アニオンを導入すると親水性が高いため、金属アニオンの少なくとも一部を有機アニオンで変性した層状無機化合物が望ましい。
【0083】
前記層状無機鉱物が有するイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物の、有機物カチオン変性剤としては第4級アルキルアンモニウム塩、フォスフォニウム塩やイミダゾリウム塩などが挙げられるが、第4級アルキルアンモニウム塩が望ましい。前記第4級アルキルアンモニウムとしては、トリメチルステアリルアンモニウム、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム、オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0084】
前記有機物アニオン変性剤としては、さらに分岐、非分岐または環状アルキル(C1〜C44)、アルケニル(C1〜C22)、アルコキシ(C8〜C32)、ヒドロキシアルキル(C2〜C22)、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を有する硫酸塩、スルフォン酸塩、カルボン酸塩、またはリン酸塩が挙げられる。エチレンオキサイド骨格を持ったカルボン酸が望ましい。
【0085】
層状無機鉱物を少なくとも一部を有機物イオンで変性することにより、適度な疎水性を持ち、トナー組成物含む前記油相(O1)、(O2)が非ニュ−トニアン粘性を持ち、トナーを異形化することが出来る。このとき、トナー材料中の一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物の含有量は、0.05〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることがより好ましい。
一部を有機物イオンで変性した層状無機鉱物は、適宜選択することができるが、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、アタパルジャイト、セピオライト及びこれらの混合物等が挙げられる。中でも、トナー特性に影響を与えず、容易に粘度調整ができ、添加量を少量とすることができることから有機変性モンモリロナイト又はベントナイトが好ましい。
【0086】
一部を有機カチオンで変性した層状無機鉱物の市販品としては、Bentone 3、Bentone 38、Bentone 38V(以上、レオックス社製)、チクソゲルVP(United catalyst社製)、クレイトン34、クレイトン40、クレイトンXL(以上、サザンクレイ社製)等のクオタニウム18ベントナイト;Bentone 27(レオックス社製)、チクソゲルLG(United catalyst社製)、クレイトンAF、クレイトンAPA(以上、サザンクレイ社製)等のステアラルコニウムベントナイト;クレイトンHT、クレイトンPS(以上、サザンクレイ社製)等のクオタニウム18/ベンザルコニウムベントナイトが挙げられる。特に好ましいのはクレイトンAF、クレイトンAPAがあげられる。また一部を有機アニオンで変性した層状無機鉱物としてはDHT−4A(協和化学工業社製)に下記一般式(1)で表される有機アニオンで変性させたものが特に好ましい。下記一般式(1)は例えばハイテノール330T(第一工業製薬社製)が上げられる。
一般式(1)
(OR)nOSO
[式中、Rは炭素数13を有するアルキル基、Rは炭素数2から6を有するアルキレン基を表す。nは2から10の整数を表し、Mは1価の金属元素を表す]
【0087】
(着色剤)
本発明のトナーに用いられる着色剤としては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック各色のトナーを得ることが可能な公知の顔料や染料が使用できる。
例えば、黄色顔料としては、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキが挙げられる。
また、橙色顔料としては、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGKが挙げられる。
赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bが挙げられる。
紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。
青色顔料としては、コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、
ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBCが挙げられる。
緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキが挙げられる。
黒色顔料としては、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラック等のアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物が挙げられる。
これらは、1種または2種以上を使用することができる。
【0088】
トナー中における着色剤の含有量は、1質量%〜15質量%が好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましい。前記含有量が、1質量%未満であると、トナーの着色力が低下することがあり、15質量%を超えると、トナー中での顔料の分散不良が起こり、着色力の低下及びトナーの電気特性の低下を招くことがある。
【0089】
着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして使用してもよい。このような樹脂としては、例えば、ポリエステル、スチレン又はその置換体の重合体、スチレン系共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、スチレン又はその置換体の重合体が特に好ましい。
【0090】
前記スチレン又はその置換体の重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリビニルトルエン等が挙げられる。スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0091】
前記マスターバッチは、高せん断力をかけて、樹脂と着色剤を混合又は混練させて製造することができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶媒を添加することが好ましい。また、いわゆるフラッシング法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができ、乾燥する必要がない点で好適である。フラッシング法は、着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶媒と共に混合又は混練し、着色剤を樹脂側に移行させて水及び有機溶媒を除去する方法である。混合又は混練には、例えば、三本ロールミル等の高せん断分散装置を用いることができる。
【0092】
(離型剤)
本発明においてトナーに使用される離型剤としては公知のものが全て使用できるが、特に脱遊離脂肪酸型カルナウバワックス、ポリエチレンワックス、モンタンワックス及び酸化ライスワックスを単独又は組み合わせて使用することができる。カルナウバワックスとしては、微結晶のものが良く、酸価が5以下であり、トナーバインダー中に分散した時の粒子径が1μm以下の粒径であるものが好ましい。モンタンワックスについては、一般に鉱物より精製されたモンタン系ワックスを指し、カルナウバワックス同様、微結晶であり、酸価が5〜14であることが好ましい。酸化ライスワックスは、米ぬかワックスを空気酸化したものであり、その酸価は10〜30が好ましい。その理由は本発明のトナー結着樹脂に対してこれらのワックスは適度に微分散するため後述するようにオフセット防止性と転写性・耐久性ともに優れたトナーとすることが容易なためである。これらワックス類は1種又は2種以上を併用して用いることができる。
【0093】
その他の離型剤としては、固形シリコーンワックス、高級脂肪酸高級アルコール、モンタン系エステルワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等、従来公知のいかなる離型剤をも混合して使用できる。
本発明のトナーに使用する離型剤のTgは70〜90℃が好ましい。70℃未満ではトナーの耐熱保存性が悪化し、90℃超では低温での離型性が発現されず、耐コールドオフセット性の悪化、定着機への紙の巻付きなどが発生する。これらの離型剤の使用量は、トナー樹脂成分に対し1〜20質量%、好ましくは3〜10質量%である。1質量%未満ではオフセット防止効果が不十分であり20質量%を超えると転写性、耐久性が低下する。
【0094】
本発明のトナーは、結着樹脂、着色剤、離型剤及び離型剤の分散剤以外にも、帯電制御剤等を更に含有することができる。
【0095】
−帯電制御剤−
帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、リンの単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系界面活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0096】
帯電制御剤としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、ニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(いずれも、オリエント化学工業株式会社製);4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(いずれも、保土谷化学工業株式会社製);4級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(いずれも、ヘキスト社製);LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(いずれも、日本カーリット社製);銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、スルホン酸基、カルボキシル基、4級アンモニウム塩基等の官能基を有する高分子系の化合物等が挙げられる。
【0097】
帯電制御剤の含有量は、前記分散用樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.2質量部〜5質量部がより好ましい。前記含有量が、0.1質量部未満であると、帯電制御性が得られないことがあり、10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きくなりすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させて、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、トナーの流動性低下や画像濃度の低下を招くことがある。
【0098】
本発明のトナーは、無機微粒子、クリーニング性向上剤、磁性材料等を更に含有していてもよい。
無機微粒子は、トナーに流動性、現像性、帯電性等を付与するための外添剤として用いられる。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
無機微粒子は、一次粒径が5nm〜2μmであることが好ましく、5nm〜500nmがより好ましい。
無機微粒子のトナーにおける含有量は、0.01質量%〜5.0質量%が好ましく、0.01質量%〜2.0質量%がより好ましい。
【0099】
また、無機微粒子は、流動性向上剤で表面処理されていることが好ましい。これにより、無機微粒子の疎水性が向上し、高湿度下においても流動性や帯電性の低下を抑制することができる。流動性向上剤としては、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等が挙げられる。シリカ、酸化チタンは、流動性向上剤で表面処理し、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして用いることが好ましい。
【0100】
クリーニング性向上剤は、転写後に感光体や一次転写媒体に残存するトナーを除去し易くするために用いられる。前記クリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、ポリメタクリル酸メチル微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子等が挙げられる。ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01μm〜1μmであることが好ましい。
【0101】
磁性材料としては、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライト等が挙げられる。なお、磁性材料は、トナーの色調の点から、白色のものが好ましい。
【0102】
本発明のトナーは、体積平均粒径(Dv)が3μm〜8μmであることが好ましく、個数平均粒径(Dn)に対するDvの比(Dv/Dn)が1.00〜1.25であることが好ましい。これにより、耐熱保存性、低温定着性及び耐ホットオフセット性のいずれにも優れ、とりわけフルカラー複写機等に用いた場合に、画像の光沢性に優れる。更に、二成分現像剤に用いた場合は、長期に亘るトナーの収支(トナーの消費と、消費されたトナーを補償するためのトナーの補充)が行われても、トナーの粒径の変動が少なくなる。その結果、現像装置における長期の攪拌においても、良好で安定した現像性が得られる。従来、例えば、粒径が大きいトナーの方が速やかに消費される結果、長期ランの後には、粒径が小さいトナーの含有率が上昇する現象が生じることがあった。また、一成分現像剤として用いた場合も、トナーの収支が行われても、トナーの粒径の変動が少なくなると共に、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するためのブレード等の部材へのトナーの融着を抑制することができる。その結果、現像装置の長期の使用(攪拌)においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
【0103】
一般には、トナーの粒径が小さい程、高解像で高画質の画像を得るために有利であると言われているが、逆に転写性やクリーニング性に対しては不利である。前記体積平均粒径(Dv)が3μm未満のトナー母体粒子を有するトナーを二成分現像剤に用いると、現像装置における長期の攪拌において、キャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させることがある。また、一成分現像剤として用いた場合には、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するためのブレード等の部材へのトナーの融着が発生しやすくなることがある。
一方、トナーの体積平均粒径(Dv)が8μmを超える場合及びDv/Dnが1.25を超える場合には、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなると共に、現像剤中のトナーの収支が行われた場合に、トナーの粒径の変動が大きくなることが多い。
【0104】
体積平均粒径(Dv)及び個数平均粒径(Dn)は、例えば粒度測定器(マルチサイザーIII、ベックマンコールター社製)などを用いて、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフトBeckman Coulter Multisizer 3 Version3.51で解析を行うことができる。具体的には、ガラス製100mLビーカーに、アルキルベンゼンスルホン酸塩(ネオゲンSC−A、第一工業製薬株式会社製)の10質量%水溶液0.5mL及びトナー母体粒子0.5gを添加し、ミクロスパーテルでかき混ぜた後、イオン交換水80mLを添加する。得られた分散液を超音波分散器W−113MK−II(本多電子株式会社製)で10分間分散処理した。更に、分散処理された試料分散液を、マルチサイザーIII及び測定用溶液アイソトンIII(ベックマンコールター社製)を用いて測定する。なお、測定は、マルチサイザーIIIが示す濃度が8±2%になるように、試料分散液を滴下した。本測定法は、粒径の測定再現性の点から、濃度を8±2%にすることが重要である。
【0105】
(トナーの製造方法)
トナーを製造する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、粉砕法、特定の離型剤の分散用樹脂及び重合性単量体を含有する単量体組成物を水相中で直接的に重合する重合法(懸濁重合法、乳化重合法)、特定の離型剤の分散用樹脂及びイソシアネート基含有プレポリマーを含有する組成物を水相中においてアミン類で直接的に伸長/架橋する重付加反応法、イソシアネート基含有プレポリマーを用いた重付加反応法、溶剤で溶解し脱溶剤して粉砕する方法、溶融スプレー法などが挙げられる。
【0106】
粉砕法は、例えば、結着樹脂、着色剤、離型剤、離型剤の分散用樹脂等のトナー材料を溶融乃至混練し、粉砕、分級等することにより、トナーの母体粒子を得る方法である。
なお、該粉砕法の場合、前記トナーの平均円形度を高くする目的で、得られたトナーの母体粒子に対し、機械的衝撃力を与えて形状を制御してもよい。この場合、前記機械的衝撃力は、例えば、ハイブリタイザー、メカノフュージョンなどの装置を用いて前記トナーの母体粒子に付与することができる。
以上のトナー材料を混合し、該混合物を溶融混練機に仕込んで溶融混練する。該溶融混練機としては、例えば、一軸の連続混練機、二軸の連続混練機、ロールミルによるバッチ式混練機を用いることができる。例えば、神戸製鋼所製KTK型二軸押出機、東芝機械株式会社製TEM型押出機、ケイシーケイ社製二軸押出機、株式会社池貝製PCM型二軸押出機、ブス社製コニーダー等が好適に用いられる。この溶融混練は、分散用樹脂の分子鎖の切断を招来しないような適正な条件で行うことが好ましい。具体的には、溶融混練温度は、バインダー樹脂の軟化点を参考にして行われ、該軟化点より高温過ぎると切断が激しく、低温すぎると分散が進まないことがある。
【0107】
粉砕では、前記混練で得られた混練物を粉砕する。この粉砕においては、まず、混練物を粗粉砕し、次いで微粉砕することが好ましい。この際ジェット気流中で衝突板に衝突させて粉砕したり、ジェット気流中で粒子同士を衝突させて粉砕したり、機械的に回転するローターとステーターの狭いギャップで粉砕する方式が好ましく用いられる。
【0108】
分級は、前記粉砕で得られた粉砕物を分級して所定粒径の粒子に調整する。前記分級は、例えば、サイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行うことができる。
粉砕及び分級が終了した後に、粉砕物を遠心力などで気流中に分級し、所定の粒径のトナーを製造する。
【0109】
懸濁重合法は、油溶性重合開始剤、重合性単量体中に着色剤、離型剤、離型剤の分散用樹脂等を分散し、界面活性剤、その他固体分散剤等が含まれる水系媒体中で後に述べる乳化法によって乳化分散する。その後重合反応を行い粒子化した後に、トナー粒子表面に無機微粒子を付着させる湿式処理を行えばよい。その際、余剰にある界面活性剤等を洗浄し、除去したトナー粒子に処理を施すことが好ましい。
重合性単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸又は無水マレイン酸などの酸類;アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド又はこれらのメチロール化合物;ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のアミノ基を有する(メタ)アクリレートなどを一部用いることによってトナー粒子表面に官能基を導入できる。
また、使用する分散剤として酸基や塩基性基を有するものを選ぶことによって粒子表面に分散剤を吸着残存させ、官能基を導入することができる。
【0110】
乳化重合法としては、水溶性重合開始剤、重合性単量体を水中で界面活性剤を用いて乳化し、通常の乳化重合の手法によりラテックスを合成する。別途着色剤、離型剤、離型剤の分散用樹脂等を水系媒体中分散した分散体を用意し、混合の後にトナーサイズまで凝集させ、加熱融着させることによりトナーを得る。その後、無機微粒子の湿式処理を行えばよい。ラテックスとして懸濁重合法に使用される単量体と同様なものを用いればトナー粒子表面に官能基を導入できる。
【0111】
これらの中でも、樹脂の選択性が高く、低温定着性が高く、また、造粒性に優れ、粒径、粒度分布、形状の制御が容易であるため、前記トナーとしては、少なくとも結着樹脂及び着色剤及び離型剤及び離型剤の分散用樹脂とを含むトナー材料を有機溶剤に溶解乃至分散させてトナー溶液を調製した後、該トナー溶液を水系媒体中に乳化乃至分散させて分散液を調製し、トナーを造粒することが好適である。更に前記分散用樹脂がイソシアネート基等の活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステル樹脂を含有し、該水系媒体中で、活性水素基含有化合物と、前記活性水素基含有化合物と反応可能なポリエステル樹脂とを反応させて結着樹脂を粒子状に生成させ、前記有機溶剤を除去して得られるものがより好適である。具体的には、以下の工程(1)〜(6)を含むことが好ましい。
【0112】
(1)トナー材料液の調製
トナー材料を有機溶媒に溶解乃至分散させることにより、トナー材料液を調製する。有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエステル樹脂の溶解性に優れることから、エステル系溶剤が好ましく、除去が容易であることから、酢酸エチルが特に好ましい。
有機溶媒の使用量は、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トナー材料100質量部に対して、40質量部〜300質量部が好ましく、60質量部〜140質量部がより好ましく、80質量部〜120質量部が更に好ましい。
【0113】
(2)水系媒体の調製
水系媒体は、例えば、樹脂微粒子を水性溶媒に分散させることにより調製することができる。水性溶媒中の樹脂微粒子の添加量は、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5〜10質量%であることが好ましい。
前記水性溶媒としては、例えば、水、水と混和可能な溶剤等が挙げられ、2種以上併用してもよいが、中でも、水が好ましい。水と混和可能な溶剤としては、例えば、アルコール(例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類、低級ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)等が挙げられる。
【0114】
樹脂微粒子の材料としては、水性溶媒中で分散することが可能な樹脂であれば、特に限定されないが、例えば、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、微細な球状の樹脂粒子の水性分散液が得られやすいことから、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂が好ましい。なお、ビニル樹脂は、ビニルモノマーを単独重合又は共重合することにより得られる樹脂であり、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられる。
また、不飽和基を2個以上有する単量体を用いて、樹脂微粒子を形成することもできる。不飽和基を2個以上有する単量体としては、例えば、メタクリル酸のエチレンオキシド付加物の硫酸エステルのナトリウム塩、ジビニルベンゼン、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等が挙げられる。
【0115】
樹脂微粒子は、公知の重合方法を用いて形成することができるが、樹脂微粒子の水性分散液として得ることが好ましい。樹脂微粒子の水性分散液を調製する方法としては、例えば、以下の(a)〜(h)に示す方法が挙げられる。
(a)ビニルモノマーを出発原料として、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法及び分散重合法のいずれかの重合反応により、直接、樹脂微粒子の水性分散液を調製する方法。(b)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加乃至縮合系樹脂の前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液を適当な分散剤の存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱又は硬化剤を添加して硬化させて、樹脂微粒子の水性分散液を調製する方法。
(c)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加乃至縮合系樹脂の前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液(液体であることが好ましく、加熱により液状化してもよい。)中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化させて、樹脂微粒子の水性分散液を調製する方法。
(d)予め重合反応(例えば、付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等)により合成した樹脂を機械回転式又はジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、分級することによって樹脂微粒子を得た後、適当な分散剤の存在下、水中に分散させて、樹脂微粒子の水性分散液を調製する方法。
(e)予め重合反応(例えば、付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等)により合成した樹脂を溶剤に溶解させた樹脂溶液を霧状に噴霧することにより樹脂微粒子を形成した後、樹脂微粒子を適当な分散剤の存在下、水中に分散させて、樹脂微粒子の水性分散液を調製する方法。
(f)予め重合反応(例えば、付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等)により合成した樹脂を溶剤に溶解させた樹脂溶液に貧溶剤を添加する、又は予め溶剤に加熱溶解させた樹脂溶液を冷却することにより樹脂微粒子を析出させ、溶剤を除去して樹脂微粒子を形成した後、樹脂微粒子を適当な分散剤の存在下、水中に分散させて、樹脂微粒子の水性分散液を調製する方法。
(g)予め重合反応(例えば、付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等)により合成した樹脂を溶剤に溶解させた樹脂溶液を、適当な分散剤の存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱、減圧等によって溶剤を除去して、樹脂微粒子の水性分散液を調製する方法。
(h)予め重合反応(例えば、付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等)により合成した樹脂を溶剤に溶解させた樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化させて、樹脂微粒子の水性分散液を調製する方法。
【0116】
また、水系媒体は、トナー材料液を乳化乃至分散させる際に、油滴を安定化させ、所望の形状を得ながら、粒度分布をシャープにする観点から、必要に応じて、分散剤を含有することが好ましい。分散剤としては、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤が特に好ましい。
【0117】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等が挙げられ、フルオロアルキル基を有するものが好ましい。フルオロアルキル基を有する陰イオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(炭素数6〜11)オキシ]−1−アルキル(炭素数3〜4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(炭素数6〜8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(炭素数11〜20)カルボン酸又はその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(炭素数7〜13)又はその金属塩、パーフルオロアルキル(炭素数4〜12)スルホン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(炭素数6〜16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。また、フルオロアルキル基を有する陰イオン性界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113(以上、旭硝子株式会社製);フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(以上、住友3M株式会社製);ユニダインDS−101、DS−102(以上、ダイキン工業株式会社製);メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(以上、大日本インキ化学工業株式会社製);エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204(トーケムプロダクツ社製);フタージェントF−100、F150(ネオス社製)等が挙げられる。
【0118】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、アミン塩型の界面活性剤、4級アンモニウム塩型の界面活性剤等が挙げられる。アミン塩型の界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等が挙げられる。また、4級アンモニウム塩型の界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。中でも、フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級又は3級アミン酸、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10個)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が好ましい。陽イオン性界面活性剤の市販品としては例えば、サーフロンS−121(旭硝子株式会社製);フロラードFC−135(住友3M社製);ユニダインDS−202(ダイキン工業株式会社製)、メガファックF−150、F−824(以上、大日本インキ化学工業株式会社製);エクトップEF−132(トーケムプロダクツ社製);フタージェントF−300(ネオス社製)等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、アラニン、ドデシルビス(アミノエチル)グリシン、ビス(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタイン等が挙げられる。
【0119】
難水溶性の無機化合物分散剤としては、例えば、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等が挙げられる。
高分子系保護コロイドとしては、例えば、酸モノマー、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー、ビニルアルコールのエーテル、ビニルアルコールとカルボキシル基を有する化合物のエステル、アミド結合を有するモノマー、アミド結合を有するモノマーのメチロール化物、酸塩化物モノマー、窒素原子又は窒素原子を含有する複素環を有するモノマー等の単独重合体又は共重合体、ポリオキシエチレン系樹脂、セルロース類等が挙げられる。
【0120】
酸モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、グリセリンモノアクリレート、グリセリンモノメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。
【0121】
ビニルアルコールのエーテルとしては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等が挙げられる。
前記ビニルアルコールとカルボキシル基を有する化合物のエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。
前記アミド結合を有するモノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド酸等が挙げられる。
前記酸塩化物モノマーとしては、例えば、アクリル酸塩化物、メタクリル酸塩化物等が挙げられる。
窒素原子又は窒素原子を含有する複素環を有するモノマーとしては、例えば、ビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等が挙げられる。
前記ポリオキシエチレン系樹脂としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等が挙げられる。
セルロース類としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0122】
樹脂微粒子の水性分散液を調製する際には、必要に応じて、分散安定剤を用いることができる。分散安定剤としては、例えば、リン酸カルシウム塩等の酸、アルカリに可溶な化合物等が挙げられる。また、分散用樹脂がポリエステルプレポリマーを含有する場合は、水系媒体は、例えば、ジブチルスズラウレート、ジオクチルスズラウレート等のウレア反応、ウレタン反応の触媒を含有することもできる。
【0123】
(3)乳化スラリーの調製
乳化スラリーは、トナー材料液を水系媒体中に乳化乃至分散させることにより調製されるが、攪拌しながら乳化乃至分散させることが好ましい。乳化乃至分散させる装置としては、例えば、ホモジナイザー(IKA株式会社製)、ポリトロン(キネマティカ株式会社製)、TKオートホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)等のバッチ式乳化機、エバラマイルダー(荏原製作所製)、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサー(以上、特殊機化工業株式会社製)、コロイドミル(神鋼パンテック株式会社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(以上、三井三池化工機株式会社製)、キャピトロン(ユーロテック社製)、ファインフローミル(太平洋機工株式会社製)等の連続式乳化機、マイクロフルイダイザー(みずほ工業株式会社製)、ナノマイザー(ナノマイザー社製)、APVガウリン(ガウリン社製)等の高圧乳化機、膜乳化機(冷化工業株式会社製)等の膜乳化機、バイブロミキサー(冷化工業株式会社製)等の振動式乳化機、超音波ホモジナイザー(ブランソン社製)等の超音波乳化機等が挙げられる。中でも、粒径の均一化の観点から、APVガウリン、ホモジナイザー、TKオートホモミキサー、エバラマイルダー、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサーが好ましい。
【0124】
(4)有機溶媒の除去
乳化スラリーから、有機溶媒を除去する際には、反応系全体を徐々に昇温させて、乳化分散体中の有機溶媒を蒸発除去する方法、乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、有機溶媒を除去すると共に、水性溶媒を蒸発除去する方法等が挙げられる。
【0125】
(5)洗浄、乾燥、分級等
乳化スラリーから有機溶媒が除去されると、トナー母体粒子が形成される。トナー母体粒子に対しては、洗浄、乾燥等を行うことができ、更に、所望により分級等を行うことができる。例えば、水系媒体中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子成分を取り除くことにより分級してもよいし、乾燥後のトナー母体粒子を分級してもよい。
なお、分散安定剤として、リン酸カルシウム塩等の酸、アルカリに可溶な化合物を用いた場合には、塩酸等の酸で分散安定剤を溶解させた後に、水洗する方法等により、トナー母体粒子から分散安定剤を除去することができる。
【0126】
(6)無機微粒子等の外添
トナー母体粒子を、必要に応じて、シリカ、酸化チタン等の無機微粒子等と共に混合し、更に機械的衝撃力を印加することにより、トナー母体粒子の表面からの無機微粒子等の脱離を抑制することができる。機械的衝撃力を印加する方法としては、例えば、高速で回転する羽根を用いて、粒子に衝撃力を印加する方法、高速気流中に粒子を投入して加速させて粒子同士又は複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させて衝撃力を印加する方法等が挙げられる。機械的衝撃力を印加する装置としては、例えば、オングミル(ホソカワミクロン株式会社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して粉砕エアー圧カを低下させた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所製)、クリプトロンシステム(川崎重工業株式会社製)、自動乳鉢等が挙げられる。
【0127】
本発明のトナーの着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ブラックトナー、シアントナー、マゼンタトナー及びイエロートナーから選択される少なくとも1種とすることができ、各色のトナーは前記着色剤の種類を適宜選択することにより得ることができる。
【0128】
本発明のトナーは、流動性、定着性等の諸特性が良好であり、優れた低温定着性と耐熱保存性を両立することができる。したがって、本発明のトナーは、各種分野で使用することができ、特に、電子写真法による画像形成に使用することが好ましい。
【0129】
(現像剤)
本発明の現像剤は、本発明の前記トナーを少なくとも含有してなり、キャリア等の適宜選択したその他の成分を含有してなる。該現像剤としては、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命向上等の点で前記二成分現像剤が好ましい。
本発明のトナーを用いた前記一成分現像剤の場合、トナーの収支が行われても、トナー粒径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化する為のブレード等の部材へのトナーの融着がなく、現像装置の長期の使用(撹拌)においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。また、本発明の前記トナーを用いた前記二成分現像剤の場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒径の変動が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性が得られる。
【0130】
キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、該芯材を被覆する樹脂層とを有するものが好ましい。
芯材の材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、50emu/g〜90emu/gのマンガン−ストロンチウム(Mn−Sr)系材料、マンガン−マグネシウム(Mn−Mg)系材料等が好ましく、画像濃度の確保の点では、鉄粉(100emu/g以上)、マグネタイト(75emu/g〜120emu/g)等の高磁化材料が好ましい。また、トナーが穂立ち状態となっている感光体への当りを弱くでき高画質化に有利である点で、銅−ジンク(Cu−Zn)系(30emu〜80emu/g)等の弱磁化材料が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
芯材の粒径としては、体積平均粒径で、10μm〜150μmが好ましく、20μm〜80μmがより好ましい。
平均粒径(体積平均粒径(D50))が、10μm未満であると、キャリア粒子の分布において、微粉系が多くなり、1粒子当たりの磁化が低くなってキャリア飛散を生じることがあり、150μmを超えると、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特にベタ部の再現が悪くなることがある。
【0131】
樹脂層の材料としては、特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アミノ系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、シリコーン樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0132】
アミノ系樹脂としては、例えば、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる前記ポリビニル系樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。前記ポリスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂等が挙げられる。前記ハロゲン化オレフィン樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。前記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0133】
樹脂層には、必要に応じて導電粉等を含有させてもよく、該導電粉としては、例えば、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、等が挙げられる。これらの導電粉の平均粒子径としては、1μm以下が好ましい。前記平均粒子径が1μmを超えると、電気抵抗の制御が困難になることがある。
樹脂層は、例えば、前記シリコーン樹脂等を溶剤に溶解させて塗布溶液を調製した後、該塗布溶液を芯材の表面に公知の塗布方法により均一に塗布し、乾燥した後、焼付を行うことにより形成することができる。塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法、等が挙げられる。溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、セルソルブチルアセテート、等が挙げられる。焼付としては、特に制限はなく、外部加熱方式であってもよいし、内部加熱方式であってもよく、例えば、固定式電気炉、流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉等を用いる方法、マイクロウエーブを用いる方法、などが挙げられる。
【0134】
樹脂層のキャリアにおける量としては、0.01質量%〜5.0質量%が好ましい。前記量が、0.01質量%未満であると、前記芯材の表面に均一な前記樹脂層を形成することができないことがあり、5.0質量%を超えると、前記樹脂層が厚くなり過ぎてキャリア同士の造粒が発生し、均一なキャリア粒子が得られないことがある。
現像剤が二成分現像剤である場合、キャリアの該二成分現像剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、90質量%〜98質量%が好ましく、93質量%〜97質量%がより好ましい。
【0135】
本発明の現像剤は、磁性一成分現像方法、非磁性一成分現像方法、二成分現像方法等の公知の各種電子写真法による画像形成に好適に用いることができる。
【0136】
本発明の画像形成方法及び画像形成装置は、定着上限温度、定着下限温度、及び耐熱保存性に優れ、ヘイズ度が良好な画像が得られる本発明の前記トナーを用いているので、高画質画像が効率よく形成できる。
【0137】
<画像形成方法及び画像形成装置>
静電潜像担持体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された静電潜像担持体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも含む画像形成方法であって、現像剤として本件発明のトナー又は本件発明の2成分現像剤を用いる。
さらに本発明の画像形成装置は、潜像担持体(感光体)と、該静電潜像担持体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された静電潜像担持体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有しており、さらに転写後の潜像担持体をクリーニングするクリーニング手段を備えており、現像剤として本件発明のトナー又は本件発明の2成分現像剤を備えている。
【0138】
(画像形成装置)
本発明のトナーを用いる画像形成装置の概略について以下述べる。
本発明の画像形成装置は静電潜像担持体(感光体)と、該静電潜像担持体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された静電潜像担持体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有しており、使用するトナーとして本発明のトナーを用いる。
本発明の電子写真式画像形成装置の一例としての複写機を図2に示す。
図2は、本発明の一実施の形態に係るカラー画像形成装置の内部構成図の一例を示す。この具体例はタンデム型間接転写方式の電子写真複写装置であるが、本発明の画像形成装置は本具体例に限ったものではない。
【0139】
図中符号100は複写装置本体、200は複写装置本体100を載せる給紙テーブル、300は複写装置本体100上に取り付けるスキャナ(読取り光学系)、400はさらにその上に取り付ける原稿自動搬送装置(ADF)である。複写装置本体100の中央位置には、横方向へ延びる無端ベルト状の中間転写体10を設ける。そして、図示例では中間転写体を3つの支持ローラ14・15・16に掛け回して図中時計回りに回転搬送可能とする。この図示例では、3つの支持ローラの中で、第2の支持ローラ15の左に、画像転写後に中間転写体10上に残留する残留トナーを除去する中間転写体クリーニング装置17を設ける。また、3つの支持ローラの中で第1の支持ローラ14と第2の支持ローラ15間に張り渡した中間転写体10上には、その搬送方向に沿って、ブラック・イエロー・マゼンタ・シアンの4つの画像形成手段18を横に並べて配置してタンデム画像形成部20を構成する。タンデム画像形成部20の直上には、図に示すように、さらに露光装置21を設ける。一方、中間転写体10を挟んでタンデム画像形成部20と反対の側には、2次転写装置22を備える。2次転写装置22は、図示例では、2つのローラ23間に、無端ベルトである2次転写ベルト24を掛け渡して構成し、中間転写体10を介して第3の支持ローラ16に押し当てて配置し、中間転写体10上の画像をシートに転写する。2次転写装置22の横には、シート上の転写画像を定着する定着装置25を設ける。定着装置25は、無端ベルトである定着ベルト26に加圧ローラ27を押し当てて構成する。上述した2次転写装置22は、画像転写後のシートをこの定着装置25へと搬送するシート搬送機能も備えている。なお、図示例では、このような2次転写装置22および定着装置25の下に、上述したタンデム画像形成部20と平行に、シートの両面に画像を記録すべくシートを反転するシート反転装置28を備える。
【0140】
さて、このカラー電子写真装置を用いてコピーをとるときは、原稿自動搬送装置400の原稿台30上に原稿をセットする。または、原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じてそれで押さえる。不図示のスタートスイッチを押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットしたときは、原稿を搬送してコンタクトガラス32上へと移動させた後、他方コンタクトガラス32上に原稿をセットしたときは、直ちにスキャナ300を駆動し、第1走行体33および第2走行体34を走行する。そして、第1走行体33で光源から光を発射するとともに原稿面からの反射光をさらに反射して第2走行体34に向け、第2走行体34のミラーで反射して結像レンズ35を通して読取りセンサ36に入れ、原稿内容を読み取る。また、不図示のスタートスイッチを押すと、不図示の駆動モータで支持ローラ14、15、16のうちの1つを回転駆動して他の2つの支持ローラを従動回転し、中間転写体10を回転搬送する。同時に、個々の画像形成手段18でその感光体40を回転して各感光体40上にそれぞれ、ブラック・イエロー・マゼンタ・シアンの単色画像を形成する。
【0141】
そして、中間転写体10の搬送とともに、それらの単色画像を順次転写して中間転写体10上に合成カラー画像を形成する。一方、不図示のスタートスイッチを押すと、給紙テーブル200の給紙ローラ42の1つを選択回転し、ペーパーバンク43に多段に備える給紙カセット44の1つからシートを繰り出し、分離ローラ45で1枚ずつ分離して給紙路46に入れ、搬送ローラ47で搬送して複写機本体100内の給紙路48に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。そして、中間転写体10上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転し、中間転写体10と2次転写装置22との間にシートを送り込み、2次転写装置22で転写してシート上にカラー画像を記録する。
画像転写後のシートは、2次転写装置22で搬送して定着装置25へと送り込み、定着装置25で熱と圧力とを加えて転写画像を定着した後、切換爪55で切り換えて排出ローラ56で排出し、排紙トレイ57上にスタックする。または、切換爪55で切り換えてシート反転装置28に入れ、そこで反転して再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録して後、排出ローラ56で排紙トレイ57上に排出する。
一方、画像転写後の中間転写体10は、中間転写体クリーニング装置17で、画像転写後に中間転写体10上に残留する残留トナーを除去し、タンデム画像形成部20による再度の画像形成に備える。
【0142】
さて、上述したタンデム画像形成部20において、個々の画像形成手段18は、ドラム状の感光体40のまわりに、帯電装置60、現像装置61、1次転写装置62、除電装置64などを備えている。感光体クリーニング装置63は少なくともブレードクリーニング部材を持つ。また、現像装置61は、図3に示すように現像剤容器内に、現像剤攪拌・搬送手段としてのトナー補給側攪拌室86、現像側攪拌室87、現像スリーブ68、トナー濃度センサ75、ドクタブレード77を備える。トナー補給側撹拌室86の容器外壁には図示しない補給口を設けて図示しないトナー補給装置からトナーが供給される。トナー補給側の攪拌スクリューは、トナー補給装置から補給されたトナーと現像剤容器内の現像剤(磁性粒子とトナーとを有する二成分現像剤)とを攪拌、搬送する。また、現像剤撹拌室87(現像剤担持体側)の攪拌スクリューは、現像剤容器内の現像剤を攪拌、搬送する。
補給側攪拌室と現像側攪拌室は図4に示すように仕切り板80で仕切られており、両端部に現像剤の受け渡す開口部がある。現像側攪拌室の現像剤は現像スリーブに汲み上げられ、ドクタブレードによって量を規制され潜像坦持体との摺擦部に供給される。この時、ドクタブレードにより現像剤は最も大きな摺擦力を与えられる。
【0143】
図5に本発明のトナーを用いるプロセスカートリッジの概略構成を示す。
図5において、1はプロセスカートリッジ全体を示し、2は感光体、3は帯電手段、4は現像手段、5はクリーニング手段を示す。本発明においては、上述の感光体2、帯電手段3、現像手段4及びクリーニング手段5等の構成要素のうち、複数のものをプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やプリンタ等の画像形成装置本体に対して着脱可能に構成する。
【0144】
本発明のトナーを用いるプロセスカートリッジを有する画像形成装置は、感光体が所定の周速度で回転駆動される。感光体は回転過程において、帯電手段によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザビーム走査露光等の像露光手段からの画像露光光を受ける。こうして感光体の周面に静電潜像が順次形成され、形成された静電潜像は現像手段によりトナーで現像され、現像されたトナー像は、給紙部から感光体と転写手段との間に感光体の回転と同期されて給送された転写材に、転写手段により順次転写されていく。像転写を受けた転写材は感光体面から分離されて像定着手段へ導入されて像定着され、複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。像転写後の感光体の表面は、少なくともブレードクリーニング部材を持つクリーニング手段によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、更に除電された後、繰り返し画像形成に使用される
【実施例】
【0145】
以下、本発明の態様について、図1及び表1〜表6に従って詳細を述べる。
なお、樹脂粒子の最適な親水性の範囲を求めるための「酸価」及び「表面酸価」の具体的な測定方法とその計算式は下記のとおりである。
【0146】
「酸価の測定」
JIS K0070−1992の測定方法に準拠して、以下の条件で測定を行った。
試料調製:ポリエステル0.5gをTHF120mLに添加して室温(23℃)で約10時間攪拌して溶解した。更にエタノール30mLを添加して試料溶液とした。
次いで、予め標定された0.1N水酸化カリウムアルコール溶液で滴定して水酸化カリウムアルコール溶液の消費量から次の計算で酸価を求めた。
酸価=KOH(mL数)×N×56.1/試料質量(但し、NはN/10KOH)
【0147】
「表面酸価の測定」
試料調製:樹脂粒子の水分散液を、樹脂純分で20gとなるように200mLのビーカーにとり、さらに脱イオン水を加えて全量を100gとした。これを透析用チューブに充填して脱イオン水1Lに浸して24時間攪拌した。24時間後、脱イオン水を新しいものに置換し再度攪拌して、これを15日間繰り返した。次いで、固形分濃度が10wt%となるように脱イオン水で希釈して、そのうち100gを200mLビーカーにとり、強酸型イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製アンバーライトIR120B(H)−AG)を15g添加して攪拌機で約1時間攪拌した。攪拌後、目開き150ミクロンの篩を通して、イオン交換樹脂を分離し、再度ろ液を透析用チューブに充填して透析を15日間繰り返すことで、前記樹脂粒子の水分散液中に溶存する不要なイオンを除去した。
表面酸価:前記樹脂粒子の調製液が純分で1gとなるように100mLビーカーへ計量した。さらに脱イオン水を添加して全量を50gとし、ここに0.1Nの水酸化カリウム水溶液を滴下し、電導度滴定をすることで表面酸価を求めた。
以下、実施例により本発明の詳細を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の記載において「部」は質量部を示している。
【0148】
<製造例1及び2>([樹脂b−1]、[樹脂b−2]の製造)
温度計、攪拌機および窒素挿入管の付いたオートクレーブ反応槽中に、表1のポリエステルジオール(b11)の欄に示される原材料、および2−エチルヘキシル酸スズ2部を入れ、常圧、160℃で3時間開環重合し、さらに常圧、130℃で反応させた。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕粒子化しポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有するポリエステルジオール(b11)−1〜2を得た。
次に、表1のポリエステルジオール(b12)の欄に示される原材料を脱水縮合して得たポリエステルジオール(b12)−1〜2と、先に得られたポリエステルジオール(b11)−1〜2のそれぞれをメチルエチルケトン中に溶解し、続いて伸長剤としてIPDIを加えて、50℃で6時間伸長反応を行い、溶媒を留去して[樹脂b−1]、[樹脂b−2]を得た。
【表1】

【0149】
<製造例3及び4>([樹脂b−3]、[樹脂b−4]の製造)
L−ラクチド、D−ラクチド、ε−カプロラクトン、オクチル酸スズを表2に示す部数で4つ口フラスコに加え、窒素雰囲気下、190℃で20分間加熱溶融させた。
その後、残留ラクチドとカプロラクトンを減圧下留去し、[樹脂b−3]、[樹脂b−4]を得た。
【表2】

【0150】
<ポリエステルプレポリマーの合成>
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器内に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物720部、ビスフェノールAのプロピレンオキシド2モル付加物90部、テレフタル酸290部、無水トリメリット酸25部、及びジブチルスズオキシド2部を入れ、常圧下、230℃で8時間反応させた後、10〜15mmHgの減圧下で7時間反応させ、中間体ポリエステル樹脂を合成した。得られた中間体ポリエステル樹脂は、数平均分子量(Mn)が2,500、重量平均分子量(Mw)が10,700、ピーク分子量が3,400、ガラス転移温度(Tg)が57℃、酸価が0.4mgKOH/g、水酸基価49mgKOH/gであった。
次に、冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器内に、400部の中間体ポリエステル樹脂、イソホロンジイソシアネート95部、及び酢酸エチル580部を入れ、100℃で8時間反応させ、ポリエステルプレポリマーを合成した。得られたポリエステルプレポリマーは、遊離イソシアネートの含有量が1.42質量%であった。
【0151】
<ケチミン化合物の合成>
攪拌棒、及び温度計をセットした反応容器内に、イソホロンジアミン30部、及びメチルエチルケトン70部を仕込み、50℃で5時間反応させ、ケチミン化合物を合成した。得られたケチミン化合物は、アミン価が423mgKOH/gであった。
【0152】
<マスターバッチの作製>
水1,000部、及びDBP吸油量が42mL/100g、pHが9.5のカーボンブラック(Printex35、デグサ社製)530部、及び前記b−1〜b−4の樹脂1,200部の樹脂をそれぞれヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)を用いて混合した。二本ロールを用いて、得られた混合物を150℃で30分間混練した後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン株式会社製)で粉砕して、マスターバッチb−1〜b−4を作製した。
【0153】
<製造例5>([樹脂a−1]の製造)
テレフタル酸1,250部、イソフタル酸130部、トリメリット酸360部、エチレングリコール280部、ネオペンチルグリコール570部からなる混合物をオートクレーブ中で、260℃で2.5時間加熱してエステル化反応を行った。次いで二酸化ゲルマニウムを触媒として0.262部を添加し、系の温度を30分で280℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1時間後に0.1Torrとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、1.5時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、260℃になったところでイソフタル酸50部、無水トリメリット酸37部を添加し、255℃で30分攪拌し、シート状に払い出した。
これを室温まで十分に冷却した後、クラッシャーで粉砕して目開き1〜6mmの篩を用いて分画し、ポリエステル樹脂[樹脂a−1]を得た。この分析結果を表3に示す。
【0154】
<製造例6〜12>([樹脂a−2]〜[樹脂a−8]の製造)
「表3に記載された比率からなる混合物」をオートクレーブ中で、260℃で2.5時間加熱してエステル化反応を行った。次いで二酸化ゲルマニウムを触媒として0.262部を添加し、系の温度を30分で280℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1時間後に0.1Torrとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、1.5時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、260℃になったところでイソフタル酸50部、無水トリメリット酸37部を添加し、255℃で30分攪拌し、シート状に払い出した。
各樹脂の分析結果を表3に示す。
【0155】
【表3】

【0156】
<製造例13>([微粒子分散液w−1]の製造)
ジャケット付きの2Lガラス容器に、[樹脂a−1]200部を添加してメチルエチルケトン300部に溶解させ、さらに該ポリエステル樹脂中〔樹脂(a)〕の酸価から求められる全カルボキシル基量の1.2倍当量に相当するN,N−ジメチルエタノールアミン(以下、DMEA)を投入した。これを開放系で卓上型ホモディスパー〔特殊機化工業(株)製,TKロボミックス〕を用いて6,000rpmで攪拌しながら徐々にイオン交換水を1L添加させて、転相乳化を完了させた。次いで乳化後のエマルションを減圧下留去することで、メチルエチルケトンを除去し、さらにステンレス製のフィルター(635メッシュ、平織)を用いて濾過して、濾液を[微粒子分散液w−1]として得た。
【0157】
<製造例14〜20>([微粒子分散液w−2]〜[微粒子分散液w−8]の製造)
製造例13と同様にして、[樹脂a−1]をそれぞれ[樹脂a−2]〜[樹脂a−8]に置き換えることで、[微粒子分散液w−2]〜[微粒子分散液w−8]とした。
【0158】
<製造例21>([微粒子分散液w−9]の製造)
ジャケット付きの2Lガラス容器に、[樹脂a−1]200部を添加してメチルエチルケトン300部に溶解させ、さらに該ポリエステル樹脂中〔樹脂(a)〕の酸価から求められる全カルボキシル基量の0.8倍当量に相当するN,N−ジメチルエタノールアミンを投入した。これを開放系で卓上型ホモディスパーを用いて6,000rpmで攪拌しながら徐々にイオン交換水を1L添加させて、転相乳化を完了させた。次いで乳化後のエマルションを減圧下留去することで、メチルエチルケトンを除去し、さらにステンレス製のフィルター(635メッシュ、平織)を用いて濾過して、濾液を[微粒子分散液w−9]として得た。
【0159】
<製造例22>([微粒子分散液w−10]の製造)
ジャケット付きの2Lガラス容器に、[樹脂a−1]100部を添加してメチルエチルケトン300部に溶解させ、さらに該ポリエステル樹脂中〔樹脂(a)〕の酸価から求められる全カルボキシル基量の1.4倍当量に相当するN,N−ジメチルエタノールアミンを投入した。これを開放系で卓上型ホモディスパーを用いて、氷浴中で12,000rpmで攪拌しながら10mL/分の速さでイオン交換水を1L添加させて、転相乳化を完了させた。次いで乳化後のエマルションを減圧下留去することで、メチルエチルケトンを除去し、さらにステンレス製のフィルター(635メッシュ、平織)を用いて濾過して、濾液を[微粒子分散液w−10]として得た。
【0160】
<製造例23>([微粒子分散液w−11]の製造)
攪拌棒および温度計をセットした反応容器に、水600部、スチレン120部、メタクリル酸100部、アクリル酸ブチル45部、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム塩(エレミノールJS−2、三洋化成工業製)10部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で20分攪拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し6時間反応させた。さらに1%過硫酸アンモニウム水溶液30部を加え、75℃で6時間熟成してビニル樹脂(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸ブチル−アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液w−11]を得た。
【0161】
<微粒子分散液w−1〜11の物性測定>
得られた微粒子分散液w−1〜11について、前述の方法にて表面酸価を求めた。また、各微粒子分散液の体積平均粒径をレーザードップラー式粒度分布装置(大塚電子株式会社製 ELS−800)を用いて測定した。結果を表4にまとめた。
【表4】

【0162】
<製造例24>([水系媒体相1]〜[水系媒体相11]の調製)
イオン交換水300部、([微粒子分散液w−1]〜[微粒子分散液w−11])300部、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2部を混合攪拌して均一に溶解させて[水系媒体相1]〜[水系媒体相11]を調製した。
【0163】
<製造例25>([樹脂溶液1]〜[樹脂溶液4]の調製)
反応容器内に表5に示す部数で[樹脂b−1]〜[樹脂b−4]、[ポリエステルプレポリマー]、及び酢酸エチル80部を加えて攪拌して[樹脂溶液1]〜[樹脂溶液4]を調製した。
【表5】

【0164】
<製造例26>([トナー母体粒子1]の作製)
次に、樹脂溶液1〜4を90部に対してカルナウバワックス〔分子量1,800、酸価2.7mgKOH/g、針入度1.7mm(40℃)〕5部、及びそれぞれに対応するようにマスターバッチb1〜b4を5部仕込み、ビーズミルのウルトラビスコミル(アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/時、ディスク周速度6m/秒で、粒径が0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスした。更に、ケチミン化合物2.5部を加えて溶解させ、トナー材料液を得た。
次に、容器内に[水系媒体相1]150部を入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12,000rpmで攪拌しながら、トナー材料液100部を添加し、10分間混合して乳化スラリーを得た。更に、攪拌機及び温度計をセットしたコルベンに、乳化スラリー100部を仕込み、攪拌周速20m/分で攪拌しながら、30℃で10時間脱溶剤し、分散スラリーを得た。次に、分散スラリー100部を減圧濾過し、得られた濾過ケーキにイオン交換水100部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行った。得られた濾過ケーキに10質量%水酸化ナトリウム水溶液20部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで30分間混合した後、減圧濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行った。得られた濾過ケーキに10質量%塩酸20部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、フッ素系第四級アンモニウム塩化合物フタージェントF−310(ネオス社製)を、フッ素系第四級アンモニウム塩がトナーの固形分100部に対して0.1部相当になるよう5%メタノール溶液で添加し、10分間攪拌した後、濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行い、濾過ケーキを得た。循風乾燥機を用いて、得られた濾過ケーキを40℃で36時間乾燥し、目開きが75μmのメッシュで篩い、トナー母体粒子1を作製した。
【0165】
<製造例27〜37>([トナー母体粒子2]〜[トナー母体粒子12]の作製)
表6に示すように樹脂bの種類、その配合量、プレポリマーの配合量、微粒子分散液の種類を変更して、製造例26と同様にして[トナー母体粒子2]〜[トナー母体粒子12]を作製した。
【0166】
<製造例38〜39>([トナー母体粒子13]〜[トナー母体粒子14]の作製)
表6に示すように樹脂bの種類、その配合量、プレポリマーの配合量、微粒子分散液の種類を変更した。また、製造例26と同様の方法では脱溶剤中にトナー粒子の粒度分布が悪化し、Dv/Dnが1.25以上になることが確認された。このため、乳化時間を10分から3分へ変更し、30℃で10分間脱溶剤した後、さらにイオン交換水100部を攪拌しながら添加して乳化スラリーを希釈して、引き続き10時間脱溶剤を行った。
それ以外は製造例26と同様にして[トナー母体粒子13]〜[トナー母体粒子14]を作製した。
【0167】
<製造例40〜50>([トナー母体粒子15]〜[トナー母体粒子25]の作製)
表6に示すように樹脂bの種類、その配合量、プレポリマーの配合量、微粒子分散液の種類を変更して、製造例26と同様にして[トナー母体粒子15]〜[トナー母体粒子25]を作製した。
【0168】
【表6】

【0169】
実施例
<トナーの作製>(実施例1〜14及び比較例1〜11)
得られたトナー母体粒子(No.1〜25)を100部と、外添剤としての疎水性シリカ(H2000、クラリアントジャパン社製)1.0部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)を用いて、周速30m/秒で30秒間混合し、1分間休止する処理を5サイクル行った後、目開きが35μmのメッシュで篩い、トナー1〜25を作製した。
<キャリアの作製>
トルエン100部に、シリコーン樹脂(オルガノストレートシリコーン)100部、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン5部、及びカーボンブラック10部を添加し、ホモミキサーで20分間分散させて、樹脂層塗布液を調製した。流動床型コーティング装置を用いて、体積平均粒径が50μmの球状マグネタイト1,000部の表面に樹脂層塗布液を塗布して、キャリアを作製した。
<現像剤の作製>
トナー1〜25のそれぞれ5部と前記キャリア95部を混合して、実施例1〜14及び比較例1〜11の各現像剤を作製した。次に、得られた各現像剤を用いて、以下のようにして定着性、画像濃度、環境安定性、耐トナーフィルミング性を評価したものを表7に示す。
【0170】
【表7】

【0171】
表7の結果より、表面酸価が10〜27mgKOH/gの範囲にある樹脂微粒子分散液を用いたトナーは粒度分布が良好(Dv/Dnが1.25以下)で、低温定着性、環境安定性、および耐トナーフィルミング性による帯電低下が改善されていることが確認された。一方、表面酸価の低いポリエステル樹脂微粒子分散液を用いた比較例2〜8では粒度分布は悪化し、環境安定性やトナーフィルミング性が悪化した。比較例1の粒度分布は良好であったものの、特にトナーフィルミング性が大きく悪化した。これらの現象は仮に粒度分布が良好であっても、樹脂微粒子分散液であるポリエステル樹脂の付着が不均一であり、付着状態の悪いトナーから選択的にキャリア表面へフィルミングされていくためと推定された。スチレン−アクリル樹脂を主体とする樹脂微粒子分散液を用いた比較例9〜11は環境安定性が著しく悪化するとともにトナーフィルミング性も良好ではないことが確認された。
【0172】
実施例13、14は、体積平均粒径が0.03〜0.10μmの範囲から外れた樹脂微粒子分散液を分散安定剤として用いた例だが、製造例38〜39に記載の通り、乳化時間の短縮および乳化スラリーの希釈を行わない限り表7に記載のような粒度分布を有するトナーを得ることはできなかった。また、樹脂粒子の表面への付着が不均一であることに起因して、若干のトナーフィルミング悪化が認められた。
なお、表7に示されている定着性、画像濃度、環境変動、耐トナーフィルミング性についての評価の測定方法と評価基準の詳細を下記に示す。
【0173】
<定着性>
定着ローラとして、テフロン(登録商標)ローラを使用した電子写真方式の複写機(MF−200、株式会社リコー製)の定着部を改造した装置を用いて、定着ベルトの温度を変化させて、普通紙及び厚紙の転写紙タイプ6200(株式会社リコー製)及び複写印刷用紙<135>(NBSリコー社製)に、トナーの付着量が0.85±0.1mg/cmのベタ画像を形成した。このとき、普通紙でホットオフセットの発生しない上限温度を定着上限温度とした。また、厚紙でベタ画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる下限温度を定着下限温度とした。
[定着上限温度の評価基準]
A:190℃以上
B:180℃以上190℃未満
C:170℃以上180℃未満
D:170℃未満
[定着下限温度の評価基準]
A:135℃未満
B:135℃以上145℃未満
C:145℃以上155℃未満
D:155℃以上
【0174】
<画像濃度>
タンデム型カラー画像形成装置(imagio Neo 450、株式会社リコー製)を用いて、定着ローラの表面温度を160±2℃にして、複写紙TYPE 6000 70W(株式会社リコー製)に、トナーの付着量が1.00±0.05mg/cmのベタ画像を形成した。得られたベタ画像の任意の6箇所の画像濃度を、分光計(938 スペクトロデンシトメータ、X−Rite社製)を用いて測定し、画像濃度(平均値)を求め、下記基準で評価した。
[評価基準]
A:画像濃度が2.0以上
B:画像濃度が1.70以上2.0未満
C:画像濃度が1.70未満
【0175】
<環境安定性>
得られた現像剤を気温23℃、湿度50%RHの環境下(M/M環境)にてボールミルで5分間攪拌した後に現像剤1.0gを採取し、ブローオフ帯電量測定装置(京セラケミカル社製TB−200)を用い、1分間窒素ブローした後の測定値を帯電量として用いた。また、この測定を気温40℃、湿度90%RHの環境下(H/H環境)、気温10℃、湿度30%RHの環境下(L/L環境)の2つの条件にて各現像剤の帯電量を評価した。
下記式より環境変動率を算出した。環境変動率が低いほど帯電性の安定な現像剤であると言うことができる。
[評価基準]
A:環境変動率が10%未満
B:環境変動率が10%以上30%未満
C:環境変動率が30%以上50%未満
D:環境変動率が50%以上
【0176】
<耐トナーフィルミング性>
得られた現像剤をタンデム型カラー画像形成装置(imagio Neo450、株式会社リコー製)を用いて、20%画像面積のチャートを、画像濃度1.4±0.2になるようにトナー濃度を制御しながら20万枚出力後の電子写真用現像剤の帯電量(μc/g)の変化量(20万枚ラン後の帯電量の低下量/ラン初期の帯電量)で、出力前の初期値と比較して、下記基準で評価した。なお、帯電量は、ブローオフ法で測定した。
[評価基準]
A:15%未満
B:15%以上30%未満
C:30%以上50%未満
D:50%以上
トナーがキャリア表面にフィルミングすることで、キャリア最表面の組成が変化して、帯電量が低下する。この、ラン前後における帯電量の変化が少ないほど、トナーの電子写真用キャリアへのフィルミングの程度が少ないと判断される。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明のトナーは、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の静電複写プロセスの画像形成に好適に用いられるものであり、特に定着性の温度範囲が広く、画像濃度、耐トナーフィルミングが優れたトナーを提供することができる。
【符号の説明】
【0178】
1 プロセスカートリッジ
2 感光体
3 帯電手段
4 現像手段
5 クリーニング手段
10 中間転写体
14 支持ローラ
15 支持ローラ
16 支持ローラ
17 中間転写体クリーニング装置
18 画像形成手段
20 タンデム画像形成部
21 露光装置
22 2次転写装置
23 ローラ
24 2次転写ベルト
25 定着装置
26 定着ベルト
27 加圧ローラ
28 シート反転装置
30 原稿台
32 コンタクトガラス
33 第1走行体
34 第2走行体
35 結像レンズ
36 読取りセンサ
40 感光体(静電潜像担持体)
42 給紙ローラ
43 ペーパーバンク
44 給紙カセット
45 分離ローラ
46 給紙路
47 搬送ローラ
48 給紙路
49 レジストローラ
55 切換爪
56 排出ローラ
57 排紙トレイ
60 帯電装置
61 現像装置
62 1次転写装置
63 感光体クリーニング装置
64 除電装置
68 現像スリーブ
75 トナー濃度センサ
77 ドクタブレード
78 現像剤経路規制部材
80 仕切り板
86 トナー補給側攪拌室
87 現像側攪拌室
100 複写装置本体
200 給紙テーブル
300 スキャナ
400 原稿自動搬送装置(ADF)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0179】
【特許文献1】特開平9−319144号公報
【特許文献2】特開2002−284881号公報
【特許文献3】特許第3640918号公報
【特許文献4】特許第2909873号公報
【特許文献5】特開2010−122667号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)、もしくは樹脂(a)を含有する被膜(P)が、第2の樹脂(b)を含有する樹脂粒子(B)の表面に付着されてなる構造の樹脂粒子(C)からなるトナーであって、前記樹脂(a)がポリエステル樹脂であって、樹脂(a)全体の酸価(全酸価)が15〜36mgKOH/gであり、樹脂(a)を含有する樹脂粒子(A)、もしくは樹脂(a)を含有する被膜(P)の表面酸価が10〜27mgKOH/gであることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記樹脂粒子(A)の体積平均粒径が0.03〜0.15μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
樹脂(a)が少なくとも多塩基酸、多価アルコールより構成されるポリエステルユニットを有する樹脂であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
樹脂(b)が光学活性モノマーからなるポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有し、前記光学活性モノマーからなるポリヒドロキシカルボン酸骨格がモノマー成分換算で光学純度X(%)=|X(L体)−X(D体)|〔ただし、X(L体)は光学活性モノマー換算でのL体比率(モル%)、X(D体)は光学活性モノマー換算でのD体比率(モル%)を表す〕が80%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
樹脂(b)のポリヒドロキシカルボン酸骨格が炭素数2〜6のヒドロキシカルボン酸が共重合した骨格であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
樹脂(b)が、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有するポリエステルジオール(b11)と(b11)以外のポリエステルジオール(b12)とを、伸長剤とともに反応させて得られる直鎖状のポリエステル系樹脂(b1)を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
樹脂(b)が、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を含有するポリエステルジオール(b11)と(b11)以外のポリエステルジオール(b12)との質量比が31:69〜90:10であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
樹脂(b)が、前記直鎖状のポリエステル系樹脂(b1)および樹脂粒子(C)の形成工程で前駆体(b0)が反応して得られる樹脂(b2)を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項9】
樹脂(a)が、ポリエステル樹脂であって、塩基性化合物が含有されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のキャリア及び静電荷像現像用トナーを含むことを特徴とする現像剤。
【請求項11】
静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を現像剤を用いて現像し、可視像を形成する現像手段を有し、画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジにおいて、該現像剤が請求項10に記載の現像剤であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項12】
静電潜像担持体と、該静電潜像担持体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された静電潜像担持体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像を現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、前記現像剤が請求項10に記載の現像剤であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−137730(P2012−137730A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178040(P2011−178040)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】