説明

静電荷像現像用トナー

【課題】低温定着性、保存安定性、及び耐高温オフセット性に優れる、静電荷像現像用トナーを提供すること。また、低温で良好に定着を行うことができ、高温でのオフセットの発生を抑制できる前述のトナーを用いる画像形成方法を提供すること。
【解決手段】結着樹脂、着色剤、離型剤、及び電荷制御剤を含有する静電荷像現像用トナーであって、離型剤は、極性基を有するワックスを含み、周波数10kHz、せん断応力500Paで粘弾性測定装置により測定される、80〜145℃におけるtanδの値が1〜2であり、温度−tanδ曲線において180℃以下に破断点が観測される静電荷像現像用トナーを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子写真法においては、まず、静電潜像担持体(感光体)の表面をコロナ放電等により一様に帯電させた後、レーザー等により一様に帯電した静電潜像担持体の表面を露光して静電潜像を形成する。次に、静電潜像をトナーで現像して静電潜像担持体の表面にトナー像を形成し、さらにこのトナー像を記録媒体に転写して高品質な画像を得ている。通常トナー像の形成に使用するトナーには熱可塑性樹脂等の結着樹脂に、着色剤、電荷制御剤、離型剤、磁性材料等を混合した後、混練、粉砕、分級を行い平均粒径5〜10μmのトナー粒子としたものが用いられる。そしてトナーに流動性を付与したり、トナーの帯電量の制御を行ったり、転写されずに感光体上に残留したトナーのクリーニング性を向上させたりする目的で、シリカや酸化チタン等の無機微粉末等がトナーに外添されている。
【0003】
かかるトナーに関して、省エネルギー化、装置の小型等の観点から、定着ローラーを極力加熱することなく良好に定着可能な、低温定着性に優れるトナーが望まれている。しかし、低温定着性に優れるトナーは、融点やガラス転移点の低い結着樹脂や、低融点の離型剤を使用していることが多く、一般的に、高温で保存する場合に凝集しやすいことや、加熱された定着ローラーにトナーが融着することによる高温オフセットが生じやすいという問題がある。
【0004】
かかる課題を解決するために種々の検討が行われており、例えば、周波数1Hz、歪み0.1の測定条件での粘弾性測定において、tanδ値のピーク温度が50〜100℃、130〜180℃に存在するトナーが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−133937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のトナーは、確かに保存安定性に優れるが、例えば、高速印字を行う画像形成装置や、定着圧力(ニップ圧)の高い画像形成装置により画像を形成する場合等、画像形成の条件によって、低温で良好に定着を行えなかったり、高温でのオフセットが発生したりする場合がある。このため、トナーの保存安定性を損なうことなく、低温定着性、及び高温でのオフセットの発生の抑制についてさらに改善されたトナーが求められている。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みなされたものであり、低温定着性、及び保存安定性に優れ、高温でのオフセットの発生を抑制できる、静電荷像現像用トナーを提供することを目的とする。また、本発明は、前述のトナーを用いる画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、結着樹脂、着色剤、離型剤、及び電荷制御剤を含有し、離型剤は、極性基を有するワックスを含み、周波数10kHz、せん断応力500Paで粘弾性測定装置により測定される、80〜145℃におけるtanδの値が1〜2であり、温度−tanδ曲線において180℃以下に破断点が観測される静電荷像現像用トナーにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
(1) 結着樹脂、着色剤、離型剤、及び電荷制御剤を含有し、
前記離型剤は、極性基を有するワックスを含み、
周波数10kHz、せん断応力500Paで粘弾性測定装置により測定される、80〜145℃におけるtanδの値が1〜2であり、温度−tanδ曲線において180℃以下に破断点が観測される、静電荷像現像用トナー。
【0010】
(2) 前記極性基を有するワックスの含有量が、前記結着樹脂100質量部に対して20質量部以下である、(1)記載の静電荷像現像用トナー。
【0011】
(3) 前記結着樹脂が、分子鎖中に下式(1)で表される基を含む架橋型ポリエステル樹脂を含み、前記結着樹脂のメチルエチルケトン不溶分が15〜50質量%である、(1)記載の静電荷像現像用トナー。
−CO−N<・・・(1)
【0012】
(4) 前記結着樹脂が、非晶質ポリエステル樹脂と前記架橋型ポリエステル樹脂とからなる、(3)記載の静電荷像現像用トナー。
【0013】
(5) 前記架橋型ポリエステル樹脂が、3価以上の多価カルボン酸成分を含むカルボン酸成分と、アルコール成分との共重合体に、下式(2)で表されるビスオキサゾリン化合物を反応させて得られたものである、(3)又は(4)記載の静電荷像現像用トナー。
【化1】

(式中、Rはフェニレン基、又は炭素原子数1〜6のアルキレン基である。)
【0014】
(6) (1)から(5)のいずれか1記載の静電荷像現像用トナーを用いて画像を形成する、画像形成装置による画像形成方法であって、
前記画像形成装置が、トナー像が転写された被記録媒体を加熱する加熱ローラーと、前記加熱ローラーと対向配置されて、前記被記録媒体を加圧する加圧ローラーとを備える、画像形成方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低温定着性、及び保存安定性に優れ、高温でのオフセットの発生を抑制できる、静電荷像現像用トナーを提供することができる。また、本発明によれば、低温で良好に定着を行うことができ、高温でのオフセットの発生を抑制できる、前述のトナーを用いる画像形成方法を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】高化式フローテスターによる融点の測定方法を説明する図である。
【図2】本実施例に係る粘弾性測定により得られる温度−tanδ曲線の一例である。
【図3】画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
【0018】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態は、静電荷像現像用トナー(以下、トナーともいう)に関する。第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、結着樹脂、着色剤、離型剤、及び電荷制御剤を含有し、離型剤は、極性基を有するワックスを含み、周波数10kHz、せん断応力500Paで粘弾性測定装置により測定される、80〜145℃におけるtanδの値が1〜2であり、温度−tanδ曲線において160〜180℃の区間に破断点が観測される、静電荷像現像用トナーである。
【0019】
本発明の第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤の他に、磁性粉等を含んでいてもよい。また、静電荷像現像用トナーは、結着樹脂と種々の成分とを溶融混練した後に粉砕して得たトナー母粒子の表面に、外添剤を付着させることもできる。また、本発明のトナーは、所望により、キャリアと混合して2成分現像剤として使用することもできる。以下、本発明の第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーについて、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、離型剤、磁性粉、外添剤、及び本発明のトナーを2成分現像剤として使用する場合に用いるキャリアと、本発明の第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーの製造方法とについて順に説明する。
【0020】
〔結着樹脂〕
トナーに含まれる結着樹脂は、得られるトナーが所定の粘弾性を示す限り特に限定されず、従来からトナー用の結着樹脂として用いられている樹脂から、融点、ガラス転移点、軟化点等を勘案して適宜選択される。結着樹脂の具体例としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中でも、融点やガラス転移点の調整が容易であり、低温定着性に優れたトナーを調製しやすいことや、トナー中で着色剤が良好に分散しやすいことから、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0021】
ポリエステル樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合や共縮重合によって得られるものを使用できる。ポリエステル樹脂を合成する際に用いられる成分としては、以下のアルコール成分やカルボン酸成分が挙げられる。
【0022】
2価又は3価以上のアルコール成分の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の3価以上のアルコール類が挙げられる。
【0023】
2価又は3価以上のカルボン酸成分の具体例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、或いはn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等のアルキル又はアルケニルコハク酸等の2価カルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等の3価以上のカルボン酸等が挙げられる。これらの2価又は3価以上のカルボン酸成分は、酸ハライド、酸無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成性の誘導体として用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1から6のアルキル基を意味する。
【0024】
結着樹脂がポリエステル樹脂である場合の、ポリエステル樹脂の軟化点は、100〜130℃が好ましく、100〜120℃がより好ましい。ポリエステル樹脂の軟化点がかかる範囲である場合、低温定着性に優れるトナーを得やすい。
【0025】
結着樹脂としては、定着性が良好であることから熱可塑性樹脂を用いることが好ましいが、熱可塑性樹脂単独で使用するだけでなく、熱可塑性樹脂に架橋剤や熱硬化性樹脂を添加することができる。結着樹脂内に一部架橋構造を導入することにより、定着性を低下させることなく、トナーの保存安定性、形態保持性、耐久性等を向上させることができる。
【0026】
熱可塑性樹脂と共に使用できる熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂やシアネート系樹脂が好ましい。好適な熱硬化性樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、シアネート樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0027】
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、50〜65℃が好ましく、50〜60℃がより好ましい。結着樹脂のガラス転移点が低すぎる場合、画像形成装置の現像部の内部でトナー同士が融着したり、保存安定性の低下により、トナー容器の輸送時や倉庫等での保管時にトナー同士が一部融着したりする場合がある。また、ガラス転移点が高すぎる場合、結着樹脂の強度が低下し、潜像担持部(像担持体:感光体)にトナーが付着しやすい。ガラス転移点が高すぎる場合、トナーが低温で良好に定着しにくい傾向がある。
【0028】
なお、結着樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、比熱の変化点から求めることができる。より具体的には、測定装置としてセイコーインスツルメンツ株式会社製示差走査熱量計(DSC−6200(セイコーインスツル株式会社製))を用い、吸熱曲線を測定することで求めることができる。測定試料10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用し、測定温度範囲25〜200℃、昇温速度10℃/minで常温常湿下にて測定して得られた吸熱曲線よりガラス転移点を求めることができる。
【0029】
以上、結着樹脂として使用されるポリエステル樹脂について説明したが、本発明のトナーでは、所定の粘弾性を有するトナーを調製しやすいことから、下式(1)で表される基を有する架橋型ポリエステル樹脂を含む樹脂を用いるのも好ましい。架橋型ポリエステル樹脂は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
−CO−N<・・・(1)
【0030】
上記式(1)で表される結合は特に限定されないが、例えば、アミド結合、ウレイド結合、ウレタン結合、イミド結合等が挙げられる。
【0031】
結着樹脂が、上記式(1)で表される基を有する架橋型ポリエステル樹脂を含む場合、
結着樹脂の、後述する離型剤に含まれる成分である極性基を有するワックスに対する親和性が高くなるため、結着樹脂と離型剤とが分離しにくくなる。よって、この場合、定着時に、紙等の被記録媒体表面の軟化状態のトナー像が、層状に分離して加熱された定着ローラーに付着しにくくなる。
【0032】
また、架橋型ポリエステルには、架橋度に応じた量で、メチルエチルケトン(MEK)に不溶であって、弾性に優れるMEK不溶分が含まれる。トナーが弾性に優れるMEK不溶分を含む場合、被記録媒体表面の軟化状態のトナー像が、定着ローラー側と被記録媒体側とに層状に分離することによる、加熱された定着ローラーへのトナーの付着が生じにくくなる。
【0033】
以上説明した通り、結着樹脂が、上記式(1)で表される基を有する架橋型ポリエステル樹脂を含む場合、被記録媒体表面の軟化状態のトナー像が定着ローラー側と被記録媒体側とに層状に分離することによる、加熱された定着ローラーへのトナーの付着が生じにくくなるため、トナーを低温で良好に定着しやすく、また高温でのオフセットの発生を抑制しやすくなる。
【0034】
以下、架橋型ポリエステル樹脂について説明する。
(架橋型ポリエステル樹脂)
本発明において好適に使用される架橋型ポリエステルとしては、分子鎖中に下式(1)で表される基を含む架橋型ポリエステル樹脂が好ましい。
―CO―N<・・・(1)
【0035】
架橋型ポリエステル樹脂の製造方法は、特に制限されず、従来知られる方法から適宜選択することができる。上記式(1)で表される基は、架橋型ポリエステル樹脂の主鎖に含まれていても、架橋鎖に含まれていてもよい。
【0036】
架橋型ポリエステル樹脂の架橋度は、本発明の目的が阻害されない範囲で特に限定されない。架橋型ポリエステル樹脂に含まれる架橋鎖が架橋剤により導入される場合、架橋剤の量は、架橋剤も含めた架橋型ポリエステル樹脂の全単量体のモル数に対して、5〜30モル%が好ましく、5〜20モル%が好ましく、5〜15モル%が好ましい。かかる範囲の量の架橋剤を用いて調製された架橋型ポリエステル樹脂を含む結着樹脂によれば、所定の粘弾性を示すトナーを調製しやすい。
【0037】
分子鎖中に下式(1)で表される基を含む架橋型ポリエステル樹脂として好適なものとしては、3価以上の多価カルボン酸成分を含むカルボン酸成分と、アルコール成分との共重合体に、下式(2)で表されるビスオキサゾリン化合物を架橋剤として反応させて得られたものが挙げられる。
【0038】
【化2】

(式中、Rはフェニレン基、又は炭素原子数1〜6のアルキレン基である。)
【0039】
式(2)において、基Rの具体例としては、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、メチレン基、1,1−エタンジイル基、1,2−エチレン基、1,3−プロパンジイル基、2,2−プロパンジイル基、1,4−ブタンジイル基、1,5−ペンタンジイル基、1,6−へキサンジイル基等が挙げられる。
【0040】
ビスオキサゾリン化合物は、カルボキシル基との反応性に優れるため、ポリエステル樹脂に、−CONH−結合を有する架橋鎖を良好に導入することができる。このため、かかる方法により得られる架橋型ポリエステル樹脂は、ビスオキサゾリン化合物の使用量を変化させて架橋度を調整することにより、MEK不溶分の含有量を調整しやすい。
【0041】
架橋型ポリエステル樹脂のガラス転移点は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、低温定着性の点から140〜160℃が好ましく、耐熱性との両立を考えれば、145〜155℃がより好ましい。なお、複数の架橋型ポリエステル樹脂を使用する場合、架橋型ポリエステル樹脂のガラス転移点は、複数の架橋型ポリエステル樹脂を均一に溶融混練した場合のガラス転移点である。
【0042】
架橋型ポリエステル樹脂の、重量平均分子量(Mw)は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、弾性力を持たせるため50000〜100000が好ましく、65000〜85000がより好ましい。架橋型ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、従来知られる方法に従って、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定できる。
【0043】
架橋型ポリエステル樹脂の軟化点(F1/2)は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、架橋型ポリエステル樹脂の軟化点(F1/2)は、低温定着性の観点から130℃〜150℃が好ましく、135℃〜145℃がより好ましい。かかる軟化点の架橋型ポリエステル樹脂を用いる場合、低温定着性、耐高温オフセット性、及び耐熱保存性に優れるトナーを調製しやすい。架橋型ポリエステル樹脂の軟化点(F1/2)はフローテスターにより測定することができる。以下、フローテスターによる軟化点の測定方法について説明する。
【0044】
<軟化点測定方法>
高化式フローテスター(CFT−500D(株式会社島津製作所製))により軟化点(F1/2)の測定を行う。測定試料作成用の成形型にトナー約1.8gを充填し、4MPaの圧力を印加して、直径1cm長さ2cmの円柱状のトナーのペレットを作成する。得られたペレットをフローテスターにセットし、プランジャー荷重:30kg、ダイ穴直径:1mm、ダイ長さ:1mm、昇温速度4℃/分、測定温度範囲70〜160℃で軟化点(Tm)を測定する。フローテスターの測定により得られた、温度(℃)とストローク(mm)とに関するS字カーブより、軟化点(F1/2)を読み取る。
【0045】
軟化点(F1/2)の読み取り方を、図1により説明する。ストロークの最大値をSとし、低温側のベースラインのストローク値をSとする。S字カーブにおいて、ストロークの値が(S+S)/2となる温度を、測定試料の軟化点(F1/2)とする。
【0046】
結着樹脂が、上記式(1)で表される基を含む架橋型ポリエステル樹脂を含むものである場合、架橋型ポリエステル樹脂以外の他の樹脂は、本発明の目的を阻害しない範囲で、従来から、トナー用の結着樹脂として使用されている樹脂から適宜選択できる。架橋型ポリエステル樹脂以外の他の樹脂としては、低温定着性に優れ、高温でのオフセットの発生を抑制しやすいトナーを調製しやすいことから、MEK不溶分を含まない樹脂が好ましい。MEK不溶分を含まない樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチルメタクリレート等の樹脂骨格に架橋構造を含まないものが挙げられる。MEK不溶分を含まない樹脂の中では、特に低温定着性に優れたトナーを得やすいことから、非晶質ポリエステル樹脂を用いるのが好ましい。
【0047】
以下、非晶質ポリエステル樹脂について説明する。
(非晶質ポリエステル樹脂)
非晶質ポリエステル樹脂は、従来のポリエステル樹脂と同様の単量体、及び方法により製造することができる。本出願の明細書、及び特許請求の範囲において、非晶質ポリエステル樹脂は結晶性指数が1.1〜1.4、好ましくは1.5〜3.0となるようなポリエステル樹脂である。ポリエステル樹脂の結晶性指数は、単量体であるアルコール成分やカルボン酸成分の、種類、及び使用量を適宜調整することにより調整できる。
【0048】
非晶質ポリエステル樹脂の結晶性指数は、ポリエステル樹脂の軟化点と融解熱の最大ピーク温度との比(軟化点/融解熱の最大ピーク温度)により求めることができる。ポリエステル樹脂の軟化点(F1/2)は上述するフローテスターによって測定され、融解熱の最大ピーク温度は上述する示差走査熱量計(DSC)によって測定される。
【0049】
非晶質ポリエステル樹脂を調製する場合、得られるポリエステル樹脂の結晶化を抑制する必要がある。ポリエステル樹脂の結晶化の抑制方法は特に限定されないが、好適な結晶化抑制方法として、例えば、以下の1)〜3)の方法が挙げられる。
1)結晶化を促進するアルコール成分、及びカルボン酸成分を少量しか使用しないか、使用しない方法。
2)アルコール成分、及びカルボン酸成分として、それぞれ2種以上の化合物を使用する方法。
3)ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物や、アルキル置換コハク酸等を使用して結晶化を抑制する方法。
【0050】
1)の結晶化抑制方法の結晶化を促進するアルコール成分は炭素原子数2〜8の脂肪族ジオールであり、カルボン酸成分は、炭素原子数2〜16の脂肪族ジカルボン酸である。
【0051】
上述した結晶化抑制方法の中では、単量体の種類が少なく非晶質ポリエステル樹脂の調製が容易であることから、3)の方法がより好ましい。3)の方法では、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、及びアルキル置換コハク酸の使用量を増やすほど結晶化を抑制しやすいが、これらの単量体の使用量は、得られるポリエステルの結晶化度と、他の物性とを考慮して、適宜調整される。
【0052】
非晶質ポリエステル樹脂は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
非晶質ポリエステル樹脂のガラス転移点は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、低温定着性、耐熱性の点から50〜60℃が好ましく、52.5℃〜57.5℃がより好ましい。なお、複数の非晶質ポリエステル樹脂を使用する場合、非晶質ポリエステル樹脂のガラス転移点は、複数の非晶質ポリエステル樹脂を均一に溶融混練した場合のガラス転移点である。非晶質ポリエステル樹脂のガラス転移点は、上述した示差走査熱量計(DSC)により測定できる。
【0054】
非晶質ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、低温定着性、機械的強度の点から2000〜8000が好ましく、4000〜6000がより好ましい。非晶質ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、従来知られる方法に従って、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定できる。
【0055】
非晶質ポリエステル樹脂の軟化点(F1/2)は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、非晶質ポリエステル樹脂の軟化点(F1/2)は、低温定着性の点から80〜100℃が好ましく、85〜95℃がより好ましい。かかる軟化点(F1/2)の非晶質ポリエステル樹脂を用いる場合、低温定着性、耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性に優れるトナーを調製しやすい。非晶質ポリエステル樹脂の軟化点(F1/2)は、架橋型ポリエステル樹脂の融点と同様に測定することができる。
【0056】
結着樹脂中の、架橋型ポリエステル樹脂、及び非晶質ポリエステル樹脂の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。結着樹脂が、架橋型ポリエステル樹脂と、非晶質ポリエステル樹脂とからなる場合、架橋型ポリエステル樹脂の使用量を調整することにより、後述の測定方法によって測定される、結着樹脂のメチルエチルケトン(MEK)不溶分(質量%)を調整することができる。結着樹脂に含まれるMEK不溶分の量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、結着樹脂の質量に対して15〜50質量%であるのが好ましい。このため、架橋型ポリエステル樹脂の使用量は、架橋型ポリエステル樹脂に含まれるMEK不溶分の量を考慮して、結着樹脂に含まれるMEK不溶分の量が、上記範囲となるように調整されるのが好ましい。以下、結着樹脂のMEK不溶分の測定方法について説明する。
【0057】
<MEK不溶分測定方法>
結着樹脂2.0gをメチルエチルケトン(MEK)100mlに浸漬させ、25℃で、24時間放置し、試料をガラスフィルター(目開き規格11G−3)でろ過する。次いで、得られたろ液の上澄み液を採取する。上澄み液を採取する方法としては、ろ液を約12時間静置した後、上澄み液を採取する方法でもよく、遠心分離機を用いて、少量の固形物を分離する方法でもよい。その後、上澄み液を60℃で真空乾燥し、得られた乾燥後の残渣の質量を測定し、MEKに浸漬する前の結着樹脂の質量と、得られた乾燥後の残渣の質量とから、結着樹脂のMEK不溶分を下記式で求める。
(MEKに浸漬する前の結着樹脂の質量−乾燥後の残渣の質量)/(MEKに浸漬する前の結着樹脂の質量)×100
【0058】
なお、MEK不溶分の測定において、結着樹脂として複数種類の樹脂を用いる場合には、これらを均一に混ぜ合わせ、微粉末状にした結着樹脂を用いるのが好ましい。このように結着樹脂を調製する方法としては、例えば、後述するトナー母粒子の製造方法と同様の方法が挙げられる。
【0059】
架橋型ポリエステル樹脂の使用量が過多であっても過少であっても、つまり、MEK不溶分が過多であっても過少であっても、トナーの低温定着性が損なわれやすい。
【0060】
〔着色剤〕
本発明の第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーは結着樹脂中に着色剤を含有する。トナーに含まれる着色剤は、トナー粒子の色に合わせて、公知の顔料や染料から適宜選択される。トナーに含有させる好適な着色剤の具体例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、アニリンブラック等の黒色顔料;黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等の黄色顔料;赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジGK等の橙色顔料;ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等の赤色顔料;マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等の紫色顔料;紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC等の青色顔料;クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等の緑色顔料;亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等の白色顔料;バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等の体質顔料が挙げられる。これらの着色剤は、トナーを所望の色相に調整する目的等で2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0061】
着色剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的には、結着樹脂100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、3〜7質量部がより好ましい。
【0062】
〔電荷制御剤〕
本発明の第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、電荷制御剤を含有する。電荷制御剤は、トナーの帯電レベルや、トナーを所定の帯電レベルに短時間で帯電可能か否かの指標となる帯電立ち上がり特性を向上させ、耐久性や安定性に優れたトナーを得る目的で使用される。トナーを正帯電させて現像を行う場合、正帯電性の電荷制御剤が使用され、トナーを負帯電させて現像を行う場合、負帯電性の電荷制御剤が使用される。
【0063】
電荷制御剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来よりトナーに使用されている電荷制御剤から適宜選択できる。正帯電性の電荷制御剤の具体例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、及びアジンディープブラック3RL等のアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体等のニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等のニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの正帯電性の電荷制御剤の中では、より迅速な帯電の立ち上がり性が得られる点で、ニグロシン化合物が特に好ましい。これらの正帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0064】
4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を官能基として有する樹脂も正帯電性の電荷制御剤として使用できる。より具体的には、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボキシル基を有するポリエステル系樹脂等の1種又は2種以上が挙げられる。これらの樹脂の分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、オリゴマーであってもポリマーであってもよい。
【0065】
正帯電性の電荷制御剤として使用できる樹脂の中では、帯電量を所望の範囲内の値に容易に調節することができる点から、4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系共重合樹脂がより好ましい。4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系共重合樹脂において、スチレン単位と共重合させる好ましいアクリル系コモノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0066】
また、4級アンモニウム塩としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキル(メタ)アクリルアミド、又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドから第4級化の工程を経て誘導される単位が用いられる。ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、ジアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としてはジメチルメタクリルアミドが挙げられ、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としては、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが挙げられる。また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有重合性モノマーを重合時に併用することもできる。
【0067】
負帯電性の電荷制御剤の具体例としては、例えば、有機金属錯体、キレート化合物等が挙げられる。有機金属錯体、及びキレート化合物としては、アルミニウムアセチルアセトナートや鉄(II)アセチルアセトナート等のアセチルアセトン金属錯体、及び、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸クロム等のサリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩が好ましく、サリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩がより好ましい。これらの負帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0068】
正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、典型的には、トナー全量を100質量部とした場合に、1.5〜15質量部が好ましく、2.0〜8.0質量部がより好ましく、3.0〜7.0質量部が特に好ましい。電荷制御剤の使用量が過少である場合、所定の極性にトナーを安定して帯電させ難いため、形成画像の画像濃度が所望する値より低くなったり、形成画像の画像濃度を長期にわたって維持することが困難になったりする場合がある。また、かかる場合、電荷制御剤が均一にトナー中に分散しにくく、形成画像にかぶりが生じやすかったり、潜像担持部の汚染が起こりやすくなったりする。電荷制御剤の使用量が過多である場合、耐環境性の悪化による、高温高湿環境下での帯電不良に起因する画像不良が形成画像に生じやすくなったり、トナー成分による潜像担持部の汚染等が起こりやすくなったりする。
【0069】
〔離型剤〕
離型剤は、トナーの定着性や耐オフセット性を向上させる目的で使用される成分である。本発明の第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、離型剤を必須に含有する。本発明の第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーに含まれる離型剤は、極性基を有するワックスを含む。離型剤における極性基を有するワックスの含有量の合計量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、典型的には、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%であるのが特に好ましい。
【0070】
極性基を有するワックスは、極性基を有する限り特に限定されず、従来からトナー用に用いられているワックスから適宜選択して用いることができる。極性基を有するワックスが有する極性基は、酸素、窒素、イオウ、ハロゲン等電気陰性度の高い原子によって分極が生じている基であれば特に限定されない。極性基の具体例としては、ウレタン基、ウレア基、イミド基、カーボネート基、アミド基、エステル基、カルボキシル基、イミノ基、又はアミノ基等が挙げられる。極性基を有するワックスの具体例としては、カルナバワックス、ライスワックス等の天然エステルワックス、合成エステルワックス、アミドワックス、ウレタン系ワックス等を挙げることができる。また、オレフィン系ワックスやパラフィン系ワックスのように極性基を持たないワックスに、極性基を導入して変性したワックスも、極性基を有するワックスとして用いることができる。
【0071】
離型剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的な離型剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1〜20質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。離型剤の使用量が過少である場合、オフセットや像スミアリングの発生の抑制について所望の効果が得られない場合があり、離型剤の使用量が過多である場合、トナー同士の融着によって保存安定性が低下する場合がある。
【0072】
また、トナーにおける、極性基を有するワックスの含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、結着樹脂100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、1〜10質量部がより好ましく、1〜5質量部がより好ましい。極性基を有するワックスの含有量が過多である場合、トナー同士の融着によって保存安定性が低下する場合がある。
【0073】
〔磁性粉〕
静電荷像現像用トナーは、所望により、結着樹脂中に磁性粉を配合することができる。トナーに配合する磁性粉の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。好適な磁性粉の例としては、フェライト、マグネタイト等の鉄;コバルト、ニッケル等の強磁性金属;鉄、及び/又は強磁性金属を含む合金;鉄、及び/又は強磁性金属を含む化合物;熱処理等の強磁性化処理を施された強磁性合金;二酸化クロムが挙げられる。
【0074】
磁性粉の粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されない。具体的な磁性粉の粒子径は、0.1〜1.0μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。かかる範囲の粒子径の磁性粉を用いる場合、結着樹脂中に磁性粉を均一に分散させやすい。
【0075】
磁性粉は、結着樹脂中での分散性を改良する目的等で、チタン系カップリング剤やシラン系カップリング剤等の表面処理剤により表面処理されたものを使用できる。
【0076】
磁性粉の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的な磁性粉の使用量は、トナーを1成分現像剤として使用する場合、トナー全量を100質量部とした場合に、35〜60質量部が好ましく、40〜60質量部がより好ましい。磁性粉の使用量が過多である場合、長期間にわたり印刷する場合に形成画像の画像濃度が所望する値より低くなったり、定着性が極度に低下したりする場合がある。磁性粉の使用量が過少である場合、形成画像にかぶりが発生しやすかったり、長期間にわたり印刷する場合に画像濃度が所望値より低くなったりする場合がある。また、トナーを2成分現像剤として使用する場合、磁性粉の使用量は、トナー全量を100質量部とした場合に、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。
【0077】
〔外添剤〕
本発明の第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、トナーの流動性、保存安定性、クリーニング性等を改良する目的で、外添剤をトナー母粒子の表面に付着させてもよい。なお、本出願の明細書、及び特許請求の範囲において、外点剤を付着させる処理が施される粒子を「トナー母粒子」という。
【0078】
外添剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来からトナー用に使用されている外添剤から適宜選択できる。好適な外添剤の具体例としては、シリカや、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の金属酸化物が挙げられる。これらの外添剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0079】
外添剤の粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、典型的には0.01〜1.0μmが好ましい。
【0080】
外添剤の体積固有の抵抗値は、外添剤の表面に酸化スズ及び酸化アンチモンからなる被覆層を形成し、被覆層の厚さや、酸化スズと酸化アンチモンとの比率を変えることにより調整できる。
【0081】
外添剤のトナー母粒子に対する使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。外添剤の使用量は、典型的には、トナー母粒子100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。かかる範囲の量で外添剤を使用する場合、流動性、保存安定性、クリーニング性に優れるトナーを得やすい。
【0082】
〔キャリア〕
静電荷像現像用トナーは、所望のキャリアと混合して2成分現像剤として使用することもできる。2成分現像剤を調製する場合、キャリアとして磁性キャリアを用いるのが好ましい。
【0083】
本発明の第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーを2成分現像剤とする場合の好適なキャリアとしては、キャリア芯材が樹脂により被覆されたものが挙げられる。キャリア芯材の具体例としては、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、コバルト等の粒子や、これらの材料とマンガン、亜鉛、アルミニウム等との合金の粒子、鉄−ニッケル合金、鉄−コバルト合金等の粒子、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、ニオブ酸リチウム等のセラミックスの粒子、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、ロッシェル塩等の高誘電率物質の粒子、樹脂中に上記磁性粒子を分散させた樹脂キャリア等が挙げられる。
【0084】
キャリア芯材を被覆する樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、オレフィン系重合体(ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等)、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、アミノ樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0085】
キャリアの粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、電子顕微鏡により測定される粒子径で、20〜120μmが好ましく、25〜80μmがより好ましい。
【0086】
キャリアの見掛け密度は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。見掛け密度は、キャリアの組成や表面構造によって異なるが、典型的には、2000〜2500kg/mが好ましい。
【0087】
本発明の第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーを2成分現像剤として用いる場合、トナーの含有量は、2成分現像剤の質量に対して、3〜20質量%が好ましく、5〜15質量%が好ましい。2成分現像剤におけるトナーの含有量をかかる範囲とすることにより、適度な画像濃度を維持し、現像装置からのトナー飛散の抑制によって画像形成装置内部の汚染や転写紙等へのトナーの付着を抑制できる。
【0088】
〔静電荷像現像用トナーの製造方法〕
本発明の第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、粘弾性測定装置によって測定される周波数10kHz、せん断応力500Paで、80〜145℃におけるtanδの値が1〜2であり、温度−tanδ曲線において160〜180℃の区間に破断点が観測される。以下、本発明の第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーの粘弾性測定について説明する。
【0089】
トナーの粘弾性測定は、粘弾性測定装置(Physica MCR301(株式会社アントンパール社製))を用いて測定する。測定条件については、直径20mmのパラレルプレートを用い、ギャップを2mm、周波数を10kHz、温度を60〜200℃、昇温速度を2.5℃/m、せん断応力を500Paに設定して粘弾性測定を行う。トナーは20mm、厚さ2.1mmのペレット状に成型したものを使用する。
【0090】
トナーの粘弾性測定によって、温度毎のtanδ値を求めることにより、図2に示すように温度−tanδ曲線が得られる。図2に示すように、測定対象となるトナーのtanδ値は、温度上昇と共に、まず、ガラス転移点(Tg)において一度目のピークが得られる。その後、温度上昇と共に緩やかにtanδ値が上昇した後、tanδが急激に上昇した後、不連続にtanδの値が低下する。この、温度−tanδ曲線における二つの不連続点のうち低温側の点を破断点とする。
【0091】
トナーを上記のtanδを示し、上記の破断点を有するものとする方法は特に限定されないが、好ましい方法としては、結着樹脂を種々変更して、tanδの値や、破断点が観測される温度を調整する方法が挙げられる。
【0092】
トナーを上記のtanδを示し、上記の破断点を有するものとする好適な方法としては、結着樹脂として、前述の式(1)で表わされる基を有する架橋型ポリエステル樹脂を含む樹脂を用い、結着樹脂における架橋型ポリエステル樹脂の含有量を調整するか、架橋型ポリエステル樹脂の架橋度を調整することによって、上記の結着樹脂のMEK不溶分の含有量を調整する方法が挙げられる。結着樹脂に含まれるMEK不溶分を減らす場合、tanδの値が小さくなり、破断点の温度が低くなる傾向がある。結着樹脂に含まれるMEK不溶分を増やす場合、tanδの値が大きくなり、破断点の温度が高くなる傾向がある。
【0093】
本発明の第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、結着樹脂に対して、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤と、必要に応じて、磁性粉等の任意の成分とを配合した後に、所望の粒子径のトナー母粒子を調製し、所望により、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させることにより製造できる。
【0094】
結着樹脂に、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤と、必要に応じて、磁性粉等の成分とを配合してトナー母粒子を製造する方法は、結着樹脂中にこれらの成分を良好に分散できる限り特に限定されない。トナー母粒子の好適な製造方法の具体例としては、結着樹脂と、着色剤、離型剤、電荷制御剤、磁性粉等の成分とを混合機等により混合した後、一軸、又は二軸押出機等の混練機により結着樹脂と結着樹脂に配合される成分とを溶融混練し、冷却された混練物を粉砕・分級する方法が挙げられる。トナー母粒子の平均粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、一般的には5〜10μmが好ましい。
【0095】
このようにして得られたトナー母粒子の表面に外添剤を付着させる方法は特に限定されず、例えば、ヘンシェルミキサーやナウターミキサー等の混合機により、外添剤がトナー母粒子に埋め込まれないように混合条件を調整して、トナー母粒子と外添剤と混合する方法が挙げられる。
【0096】
以上説明した、本発明の第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、低温定着性、保存安定性、耐高温オフセット性に優れる。このため、本発明の第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、種々の画像形成装置において好適に使用される。
【0097】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態は、トナー像が転写された被記録媒体を加熱する加熱ローラーと、加熱ローラーと対向配置されて、被記録媒体を加圧する加圧ローラーとを備える画像形成装置において、第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーを用いて画像を形成する画像形成方法について説明する。
【0098】
〔画像形成方法〕
以上説明した本発明に係る第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーを用いて画像を形成する際に使用する画像形成装置は、特に限定されないが、加熱ローラーと、加圧ローラーとを備える定着部を有する、画像形成装置を用いるのが好ましい。かかる画像形成装置では、定着条件によっては、低温定着性が損なわれたり、高温でのオフセットが生じたりしやすいが、本発明の第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーを用いることにより、低温でも良好に定着を行うことができ、高温でのオフセットの発生を抑制できる。ここでは、好適な画像形成装置として、加熱ローラーと、加圧ローラーとを備える定着部を有する、タンデム方式のカラー画像形成装置による画像形成方法について説明する。
【0099】
なお、以下に説明するタンデム方式のカラー画像形成装置は、各潜像担持部の表面上にそれぞれ異なった各色のトナーによるトナー像を形成させるために、所定方向に並設された、複数の潜像担持部と、各潜像担持部に対向して配置され、表面にトナーを担持して搬送し、搬送されたトナーを、各潜像担持部の表面にそれぞれ供給するローラー(現像スリーブ)を備えた複数の現像部とを備え、現像部において、本発明の第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーを潜像担持部に供給する。
【0100】
図3は、好適な画像形成装置の構成を示す概略図である。ここでは、画像形成装置として、カラープリンター1を例に挙げて説明する。
【0101】
このカラープリンター1は、図3に示すように、箱型の機器本体1aを有している。この機器本体1a内には、用紙Pを給紙する給紙部2と、この給紙部2から給紙された用紙Pを搬送しながら当該用紙Pに画像データ等に基づくトナー像を転写する画像形成部3と、この画像形成部3で用紙P上に転写された未定着トナー像を用紙Pに定着する定着処理を施す定着部4とが設けられている。さらに、機器本体1aの上面には、定着部4で定着処理の施された用紙Pが排紙される排紙部5が設けられている。
【0102】
給紙部2は、給紙カセット121、ピックアップローラー122、給紙ローラー123,124,125、及びレジストローラー対126を備えている。給紙カセット121は、機器本体1aから挿脱可能に設けられ、用紙Pを貯留する。ピックアップローラー122は、給紙カセット121の図2に示す左上方位置に設けられ、給紙カセット121に貯留されている用紙Pを1枚ずつ取り出す。給紙ローラー123,124,125は、ピックアップローラー122によって取り出された用紙Pを用紙搬送路に送り出す。レジストローラー対126は、給紙ローラー123,124,125によって用紙搬送路に送り出された用紙Pを一時待機させた後、所定のタイミングで画像形成部3に供給する。
【0103】
また、給紙部2は、機器本体1aの図2に示す左側面に取り付けられる不図示の手差しトレイとピックアップローラー127とをさらに備えている。このピックアップローラー127は、手差しトレイに載置された用紙Pを取り出す。ピックアップローラー127によって取り出された用紙Pは、給紙ローラー123,125によって用紙搬送路に送り出され、レジストローラー対126によって、所定のタイミングで画像形成部3に供給される。
【0104】
画像形成部3は、画像形成ユニット7と、この画像形成ユニット7によってその表面(接触面)にコンピューター等から電送された画像データに基づくトナー像が1次転写される中間転写ベルト31と、この中間転写ベルト31上のトナー像を給紙カセット121から送り込まれた用紙Pに2次転写させるための2次転写ローラー32とを備えている。
【0105】
画像形成ユニット7は、中間転写ベルト31の移動方向の上流側(図2では右側)から下流側に向けて順次配設されたブラック用ユニット7Kと、イエロー用ユニット7Yと、シアン用ユニット7Cと、マゼンタ用ユニット7Mとを備えている。各ユニット7K,7Y,7C及び7Mは、それぞれの中央位置に像担持体であるドラム型の潜像担持部37が矢符(時計回り)方向に回転可能に配置されている。そして、各潜像担持部37の周囲には、帯電部39、露光部38、現像部71、クリーニング部(不図示)、及び除電器(不図示)等が、潜像担持部37の回転方向上流側から順に各々配置されている。
【0106】
帯電部39は、矢符方向に回転されている潜像担持部37の周面を均一に帯電させる。帯電部39は、潜像担持部37の周面を均一に帯電させることができれば特に制限されず、非接触方式であっても接触方式であってもよい。帯電部の具体例としては、コロナ帯電装置、帯電ローラー、帯電ブラシ等が挙げられる。
【0107】
潜像担持部37の表面電位(帯電電位)は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。現像性と潜像担持部37の帯電能力とのバランスを考慮すると、表面電位は+200〜+500Vであるのが好ましく、+200V〜+300Vであるのがより好ましい。表面電位が低すぎる場合、現像電界が不十分となり、形成画像の画像濃度を確保しにくくなる。表面電位が高すぎる場合、感光層の膜厚によっては帯電能力が不足、潜像担持部37の絶縁破壊、オゾンの発生量が増加する等の問題が起こりやすくなる。
【0108】
潜像担持部37としては、アモルファスシリコン等の無機感光体;導電性基体上に電荷発生剤、電荷輸送剤、結着樹脂等を含有する単層又は積層の感光層が形成された有機感光体等が挙げられる。
【0109】
露光部38は、いわゆるレーザー走査ユニットであり、帯電部39によって均一に帯電された潜像担持部37の周面に、上位装置であるパーソナルコンピューター(PC)から入力された画像データに基づくレーザー光を照射し、潜像担持部37上に画像データに基づく静電潜像を形成する。現像部71は、静電潜像が形成された潜像担持部37の周面に本発明のトナーを供給し、画像データに基づくトナー像を形成させる。本発明のトナーを用いることにより、現像部71が備える現像ローラー(スリーブ)へのトナーの付着を抑制することができ、良好な画像を形成することができる。現像部71の構成は、現像剤の種類、及び現像方式によって適宜変更される。現像部71により潜像担持部37の周面に形成されたトナー像は、中間転写ベルト31に1次転写される。
【0110】
中間転写ベルト31へのトナー像の1次転写が終了した後、潜像担持部37の周面に残留しているトナーは、必要に応じ、不図示のクリーニング部により清掃される。
【0111】
除電器は、1次転写が終了した後、潜像担持部37の周面を除電する。クリーニング部及び除電器によって清浄化処理された潜像担持部37の周面は、新たな帯電処理のために帯電部39へ向かい、新たな帯電処理が行われる。
【0112】
中間転写ベルト31は、無端状のベルト状回転体であって、表面(接触面)側が各潜像担持部37の周面にそれぞれ当接するように駆動ローラー33、従動ローラー34、バックアップローラー35、及び1次転写ローラー36等の複数のローラーに架け渡されている。また、中間転写ベルト31は、各潜像担持部37と対向配置された1次転写ローラー36によって潜像担持部37に押圧された状態で、複数のローラーによって無端回転するように構成されている。駆動ローラー33は、不図示のステッピングモータ等の駆動源によって回転駆動し、中間転写ベルト31に無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラー34、バックアップローラー35、及び1次転写ローラー36は、回転自在に設けられ、駆動ローラー33による中間転写ベルト31の無端回転に伴って従動回転する。これらのローラー34,35,36は、駆動ローラー33の主動回転に応じて中間転写ベルト31を介して従動回転すると共に、中間転写ベルト31を支持する。
【0113】
1次転写ローラー36は、1次転写バイアスを中間転写ベルト31に印加する。そうすることによって、各潜像担持部37上に形成されたトナー像は、各潜像担持部37と1次転写ローラー36との間で、駆動ローラー33の駆動により矢符(反時計回り)方向に周回する中間転写ベルト31に重ね塗り状態で順次転写(1次転写)される。
【0114】
2次転写ローラー32は、2次転写バイアスを用紙Pに印加する。そうすることによって、中間転写ベルト31上に1次転写されたトナー像は、2次転写ローラー32とバックアップローラー35との間で用紙Pに2次転写され、これによって、用紙Pにカラーの転写画像(未定着トナー像)が転写される。
【0115】
定着部4は、画像形成部3で用紙Pに転写された転写画像に定着処理を施すものであり、通電発熱体により加熱される加熱ローラー41と、この加熱ローラー41に対向配置され、周面が加熱ローラー41の周面に押圧当接される加圧ローラー42とを備えている。
用紙P上に形成された未定着トナー像は、加熱ローラー41により軟化され、軟化したトナー像が加圧ローラー42によって用紙Pの表面に押圧されることによって、用紙P上に定着される。
【0116】
そして、画像形成部3で2次転写ローラー32により用紙Pに転写された転写画像は、当該用紙Pが加熱ローラー41と加圧ローラー42との間を通過する際の加熱及び加圧からなる定着処理で用紙Pに定着される。そして、定着処理の施された用紙Pは、排紙部5へ排紙されるようになっている。また、本実施形態のカラープリンター1では、定着部4と排紙部5との間の適所に複数の搬送ローラー対6が配設されている。
【0117】
排紙部5は、カラープリンター1の機器本体1aの頂部が凹没されることによって形成され、この凹没した凹部の底部に排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ51が形成されている。
【0118】
カラープリンター1は、以上のような画像形成動作によって、用紙P上に画像形成を行う。そして、加熱ローラー41と、加圧ローラー42とを備える定着部4を有する画像形成装置では、定着条件によっては、低温定着性が損なわれたり、高温でのオフセットが生じたりしやすいが、本発明の第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーを用いることにより、低温でも良好に定着を行うことができ、高温でのオフセットの発生を抑制できる。
【実施例】
【0119】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0120】
〔合成例〕
(ポリエステル樹脂Aの合成)
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物30モル%、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物20モル%、テレフタル酸30モル%、無水ドデセニルコハク酸10モル%、ハイドロキノン2g、酸化ジブチルスズ4gを反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、160度で5時間反応させた後、200℃で5時間反応させ、さらに5〜20mmHgの圧力下で、200℃で1時間反応させた。次いで、8.3kPaの圧力下で、180℃で1時間反応させて非晶質ポリエステル樹脂であるポリエステル樹脂Aを得た。
【0121】
(ポリエステル樹脂Bの合成)
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物30モル%、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物20モル%、テレフタル酸ジメチルエステル30モル%、無水トリメリット酸10モル%となる様に、これらの単量体を反応容器に仕込み、さらに、縮合触媒(酸化ジブチルスズ)4g、及びハイドロキノン2gを加え、窒素雰囲気下、150度で2時間反応させた。次いで、反応容器に、1,4−フェニレンビスオキサゾリンを全単量体に対して10モル%となるように添加し、180℃で20時間反応させて、架橋型ポリエステル樹脂であるポリエステル樹脂Bを得た。
【0122】
〔実施例1〕
ポリエステル樹脂A50質量部、ポリエステル樹脂B50質量部、ワックス(離型剤、カルナバワックス1号(日油株式会社製))3質量部、カーボンブラック(着色剤、MA−100(三菱化学株式会社製))5質量部、及び電荷制御剤(P−51(オリヱント化学工業株式会社))1質量部を、ヘンシェルミキサー(20B(日本コークス株式会社製))を用いて混合した。得られた混合物を、二軸押出機(PCM−30(株式会社池貝製))を用いて、材料供給速度6kg/hr、軸回転数160rpm、シリンダー温度120℃の条件にて溶融混練した後冷却して混練物を得た。得られた混練物を粉砕機(ロートプレックス16/8型(株式会社東亜機械製作所製))で粗粉砕した後、粉砕機(ターボミルRS(ターボ工業株式会社製))で微粉砕し、得られた微粉砕品をエルボージェット(EJ−LABO型式EJ−L−3(日鉄鉱業株式会社製))で分級して、体積平均粒子径8μmのトナー母粒子を得た。得られたトナー母粒子100質量部に対して、外添剤として、シリカ微粒子(RA−200(日本アエロジル株式会社製))1.0質量部、及びシリカ微粒子(NA−50H(日本アエロジル株式会社製))0.8質量部を加え、ヘンシェルミキサー(FM−20B(日本コークス株式会社製))により回転数2000rpm、ジャケット制御温度25℃にて2分間攪拌して、外添処理されたトナーを得た。
【0123】
実施例1のトナーについて、以下の方法に従って、トナーに用いる結着樹脂のメチルエチルケトン(MEK)不溶分測定を行った。MEK不溶分の測定結果を表1に記す。
【0124】
<MEK不溶分測定>
ポリエステル樹脂A50質量部とポリエステル樹脂B50質量部とを、ヘンシェルミキサー(20B(日本コークス株式会社製))を用いて混合した。得られた混合物を、二軸押出機(PCM−30(株式会社池貝製))を用いて、材料供給速度6kg/hr、軸回転数160rpm、シリンダー温度120℃の条件にて溶融混練した後冷却して混練物を得た。得られた混練物を粉砕機(ロートプレックス16/8型(株式会社東亜機械製作所製))で粗粉砕した後、粉砕機(ターボミルRS(ターボ工業株式会社製))で微粉砕し、得られた微粉砕品をエルボージェット(EJ−LABO型式EJ−L−3(日鉄鉱業株式会社製))で分級して、体積平均粒子径8μmの結着樹脂微粒子を得た。得られた結着樹脂微粒子2.0gをメチルエチルケトン(MEK)100mlに浸漬させ、25℃で、24時間放置し、試料をガラスフィルター(目開き規格11G−3)でろ過した。試料のろ液を12時間静置し、上澄み液を採取した。上澄み液を60℃で真空乾燥し、得られた乾燥後の残渣の質量を測定し、MEKに浸漬する前の結着樹脂の質量と、得られた乾燥後の残渣の質量とから、結着樹脂のMEK不溶分を下記式で求めた。
(MEKに浸漬する前の結着樹脂の質量−乾燥後の残渣の質量)/(MEKに浸漬する前の結着樹脂の質量)×100
【0125】
また、実施例1のトナーについて、以下の方法に従って、粘弾性測定を行った。粘弾性測定の評価結果として、測定温度75〜200℃における5℃刻みのtanδの値を表2に記す。なお、破断点以降のtanδの値については、表2に記載していない。
【0126】
<粘弾性測定>
粘弾性測定装置(Physica MCR301(株式会社アントンパール社製))により、直径20mmのパラレルプレートを用い、ギャップを2mm、周波数を10Hz、測定温度を60〜200℃、昇温速度を2.5℃/m、せん断応力を500Paに設定して粘弾性測定を行った。実施例1のトナーは20mm、厚さ2.1mmのペレット状に成型したものを使用した。
【0127】
また、実施例1のトナーについて、以下の方法に従って、低温定着性、耐高温オフセット性(離型性)、耐熱保存性について評価した。低温定着性、耐高温オフセット性、耐熱保存性の評価結果を表3に記す。
【0128】
<低温定着性評価方法>
(二成分現像剤の調製)
現像剤中のトナー量がキャリアの質量に対して5質量%となるように、得られたトナーと現像剤用キャリア(KM−C850用キャリア)とを混合して2成分現像剤を調製した。得られた2成分現像剤とトナーを用いて、複合機(KM−C850(京セラミタ株式会社製))により、定着温度を種々変化させて定着試験を行った。定着性は、下記の摩擦試験により定着下限温度と定着上限温度とを測定し、定着上限温度と定着下限温度との差である定着温度幅(定着上限温度−定着下限温度)を算出して評価した。定着性の評価は、定着温度幅が40℃以上を○と判断した。低温定着性の総合評価としては、定着温度幅、後述する摩擦試験、定着下限温度、及び定着上限温度の全てが○と判断されたとき、○と判断した。
【0129】
・摩擦試験
画像濃度1.3以上のソリッド画像上を、布帛により覆った500gの分銅を用いて分銅の自重のみが画像にかかるように5往復させて摩擦し、摩擦後の画像濃度を測定した。画像濃度の測定は、グレタグマクベススペクトロアイ(グレタグマクベス社製)を用いて行った。下式に従って、摩擦前後の画像濃度から定着率を算出した。
定着率(%)=(摩擦後画像濃度/摩擦前画像濃度)×100
【0130】
・定着下限温度、及び定着上限温度
上記の摩擦試験において90%以上の定着率が得られ、コールドオフセットの生じない最低の温度を定着下限温度とし、150℃以下であれば○と判断した。また、上記の摩擦試験において90%以上の定着率が得られ、ホットオフセットの生じない最高の温度を定着上限温度とし、180℃以上であれば○と判断した。
【0131】
<離型性評価(耐高温オフセット性)>
複合機(KM−C850(京セラミタ株式会社製))の定着装置(定着部)に、離型性評価用に、外部駆動装置、及び定着温度制御装置を取り付けた定着試験機を用いた複合機(KM−C850(京セラミタ株式会社製))にて、先端マージン5mmの位置に縦50mm×横160mmの未定着画像を形成した。得られた未定着画像を、紙上のトナー載り量をはかりながら、定着温度180℃、線速97mm/秒で定着試験機を通した。0.1mg/cm刻みで、トナー載り量を変化させ、紙が定着ローラーに巻きつかないトナー載り量(mg/cm)を分離可能トナー載り量とした。下記の基準により離型性を評価した。離型性評価の判定基準は以下の通りである。
○:トナー載り量1.5mg/cm以上。
×:トナー載り量1.5mg/cm未満。
【0132】
<耐熱保存性評価>
トナー5gを、58℃にて24時間保存した後、室温まで冷却した。冷却されたトナーを、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)により、振動目盛り5にて、400メッシュの篩を用いて篩別した。耐熱保存性の評価は、通過率60質量%未満を○とし、60%以上を×とした。
【0133】
〔実施例2〕
ポリエステル樹脂Aの使用量を60質量部に変えることと、ポリエステル樹脂Bの使用量を40質量部に変えることとの他は、実施例1と同様にしてトナーを得た。MEK不溶分の測定結果を表1に記す。また、粘弾性測定の評価結果を表2に記す。また、低温定着性、耐高温オフセット性、耐熱保存性の評価結果を表3に記す。
【0134】
〔実施例3〕
ポリエステル樹脂Aの使用量を70質量部に変えることと、ポリエステル樹脂Bの使用量を30質量部に変えることとの他は、実施例1と同様にしてトナーを得た。MEK不溶分の測定結果を、ポリエステル樹脂A、ポリエステル樹脂Bの組成と、ワックスの種類、添加量と共に表1に記す。また、粘弾性測定の評価結果を表2に記す。また、低温定着性、耐高温オフセット性、耐熱保存性の評価結果を表3に記す。
【0135】
〔実施例4〕
ポリエステル樹脂Aの使用量を40質量部に変えることと、ポリエステル樹脂Bの使用量を60質量部に変えることとの他は、実施例1と同様にしてトナーを得た。MEK不溶分の測定結果を表1に記す。また、粘弾性測定の評価結果を表2に記す。また、低温定着性、耐高温オフセット性、耐熱保存性の評価結果を表3に記す。
【0136】
〔実施例5〕
ポリエステル樹脂Aの使用量を30質量部に変えることと、ポリエステル樹脂Bの使用量を70質量部に変えることとの他は、実施例1と同様にしてトナーを得た。MEK不溶分の測定結果を表1に記す。また、粘弾性測定の評価結果を表2に記す。また、低温定着性、耐高温オフセット性、耐熱保存性の評価結果を表3に記す。
【0137】
〔実施例6〕
カルナバワックスの使用量を10質量部に変えることの他は、実施例1と同様にしてトナーを得た。MEK不溶分の測定結果を表1に記す。また、粘弾性測定の評価結果を表2に記す。また、低温定着性、耐高温オフセット性、耐熱保存性の評価結果を表3に記す。
【0138】
〔実施例7〕
カルナバワックスの使用量を20質量部に変えることの他は、実施例1と同様にしてトナーを得た。MEK不溶分の測定結果を表1に記す。また、粘弾性測定の評価結果を表2に記す。また、低温定着性、耐高温オフセット性、耐熱保存性の評価結果を表3に記す。
【0139】
〔実施例8〕
カルナバワックスを合成エステルワックス(WEP−3(日油株式会社製))に変えることの他は、実施例1と同様にしてトナーを得た。MEK不溶分の測定結果を表1に記す。また、粘弾性測定の評価結果を表2に記す。また、低温定着性、耐高温オフセット性、耐熱保存性の評価結果を表3に記す。
【0140】
〔実施例9〕
カルナバワックスを水酸基変性されたパラフィンワックス(水酸基変性FT−105(日本精蝋株式会社製))に変えることの他は、実施例1と同様にしてトナーを得た。MEK不溶分の測定結果を表1に記す。また、粘弾性測定の評価結果を表2に記す。また、低温定着性、耐高温オフセット性、耐熱保存性の評価結果を表3に記す。
【0141】
〔比較例1〕
ポリエステル樹脂Aの使用量を20質量部に変えることと、ポリエステル樹脂Bの使用量を80質量部に変えることとの他は、実施例1と同様にしてトナーを得た。MEK不溶分の測定結果を表1に記す。また、粘弾性測定の評価結果を表2に記す。また、低温定着性、耐高温オフセット性、耐熱保存性の評価結果を表3に記す。
【0142】
〔比較例2〕
ポリエステル樹脂Aの使用量を80質量部に変えることと、ポリエステル樹脂Bの使用量を20質量部に変えることとの他は、実施例1と同様にしてトナーを得た。MEK不溶分の測定結果を表1に記す。また、粘弾性測定の評価結果を表2に記す。また、低温定着性、耐高温オフセット性、耐熱保存性の評価結果を表3に記す。
【0143】
〔比較例3〕
ワックスの種類を水酸基変性されていないパラフィンワックス(FT−105(日本精蝋株式会社製))に変えることの他は、実施例1と同様にしてトナーを得た。MEK不溶分の測定結果を、ポリエステル樹脂A、ポリエステル樹脂Bの組成と、ワックスの種類、添加量と共に表1に記す。また、粘弾性測定の評価結果を表2に記す。また、低温定着性、耐高温オフセット性、耐熱保存性の評価結果を表3に記す。
【0144】
【表1】

【0145】
【表2】

【0146】
【表3】

【0147】
実施例1〜9によれば、結着樹脂、着色剤、離型剤、及び電荷制御剤を含有し、離型剤は、極性基を有するワックスを含み、周波数10kHz、せん断応力500Paで粘弾性測定装置により測定される、80〜145℃におけるtanδの値が1〜2であり、温度−tanδ曲線において180℃以下に破断点が観測される、静電荷像現像用トナーであれば、低温定着性、耐高温オフセット性、及び耐熱保存性に優れることが分かる。
【0148】
比較例1のトナーは、80〜145℃におけるtanδの値が1未満となる場合が有り、また、温度−tanδ曲線において、180以上で破断点が観測される。このため、比較例1のトナーは、低温で軟化しにくく、高温では粘性が高い。これにより、比較例1のトナーは、耐熱保存性は良好なものの、定着下限温度が高く、低温定着性に劣り、分離性に劣るために高温でのオフセットが生じやすい。
【0149】
比較例2のトナーは、実施例のトナーと比較して、tanδの値が、80〜145℃の範囲にて大きく上昇している。このため、比較例2のトナーは80〜145℃まで温度を変化させる際に、粘弾性が大きく変化するため、定着幅が狭く、低温定着性に劣る。また、比較例2のトナーは、145〜150℃付近でのtanδの値が、実施例のトナーよりも大きく、この温度付近において粘性が高い。このため、比較例2のトナーは、分離性に劣り、高温でのオフセットが生じやすい。
【0150】
比較例3のトナーは、離型剤の成分として、極性基を持たないワックスが使用されている。このため、比較例3のトナーは、結着樹脂と離型剤との親和性に劣るため、高温で結着樹脂と離型剤とが剥離しやすく、高温でのオフセットが生じやすい。また、極性基を持たないワックスは、結着樹脂との親和性に劣るため、高温で結着樹脂から染み出しやすい。このため、比較例3のトナーは耐熱保存性が劣っている。
【符号の説明】
【0151】
1 カラープリンター
1a 機器本体
2 給紙部
3 画像形成部
37 潜像担持部
38 露光部
39 帯電部
4 定着部
41 加熱ローラー
42 加圧ローラー
6 搬送ローラー
5 排紙部
7 画像形成ユニット
71 現像部
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、着色剤、離型剤、及び電荷制御剤を含有し、
前記離型剤は、極性基を有するワックスを含み、
周波数10kHz、せん断応力500Paで粘弾性測定装置により測定される、80〜145℃におけるtanδの値が1〜2であり、温度−tanδ曲線において180℃以下に破断点が観測される、静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記極性基を有するワックスの含有量が、前記結着樹脂100質量部に対して20質量部以下である、請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記結着樹脂が、分子鎖中に下式(1)で表される基を含む架橋型ポリエステル樹脂を含み、前記結着樹脂のメチルエチルケトン不溶分が15〜50質量%である、請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
−CO−N<・・・(1)
【請求項4】
前記結着樹脂が、非晶質ポリエステル樹脂と前記架橋型ポリエステル樹脂とからなる、請求項3記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記架橋型ポリエステル樹脂が、3価以上の多価カルボン酸成分を含むカルボン酸成分と、アルコール成分との共重合体に、下式(2)で表されるビスオキサゾリン化合物を反応させて得られたものである、請求項3又は4記載の静電荷像現像用トナー。
【化1】

(式中、Rはフェニレン基、又は炭素原子数1〜6のアルキレン基である。)
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1記載の静電荷像現像用トナーを用いて画像を形成する、画像形成装置による画像形成方法であって、
前記画像形成装置が、トナー像が転写された被記録媒体を加熱する加熱ローラーと、前記加熱ローラーと対向配置されて、前記被記録媒体を加圧する加圧ローラーとを備える、画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−88503(P2013−88503A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226682(P2011−226682)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】