説明

静電荷像現像用マゼンタトナー及びその製造方法、静電荷像現像剤、並びに画像形成方法

【課題】電子写真法において、高彩度のマゼンタ画像が与えられる静電荷像現像用マゼンタトナー及びその製造方法、前記静電荷像現像用マゼンタトナーを用いた静電荷像現像剤、並びに画像形成方法を提供すること。
【解決手段】電子写真法の静電荷像現像用マゼンタトナーにおいて、CIE L***色空間の色相角−11±0.5°に最大彩度が75以上の色域を有するマゼンタ画像を形成することを特徴とする静電荷像現像用マゼンタトナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用マゼンタトナー及びその製造方法、静電荷像現像剤、並びに画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法など静電荷像を経て画像情報を可視化(現像)する方法は、現在様々な分野で利用されている。電子写真法においては、例えば、帯電、露光工程により静電潜像保持体上に静電潜像を形成し(静電潜像形成工程)、これにトナーを供給して静電潜像を現像し(現像工程)、現像されたトナー像を、中間転写部材を介して又は介さずに、記録媒体に転写して(転写工程)、転写された転写像を定着する(定着工程)ことで可視化される。
【0003】
電子写真法において、フルカラー画像を形成する場合には、一般に、色材の三原色である、イエロー、マゼンタ、シアンの組み合わせの3色、又はこれにブラックを加えた4色のトナーを用いて、色の再現を行っている。
近年、電子写真分野の技術進化により、電子写真プロセスは、複写機、プリンターのみならず印刷用途等にも使用されるようになり、複写物が印刷物同等の高画質、色彩度、色相を有することが要求されてきている。
【0004】
マゼンタトナーの改良技術としては、特許文献1には、少なくとも結着樹脂、キナクリドン系着色剤、モノアゾ系着色剤及びワックス成分を含有する乾式トナーであって、該トナー中のキナクリドン系着色剤とモノアゾ系着色剤の総含有量が1〜20重量%で、含有量の重量比率が、キナクリドン系着色剤:モノアゾ系着色剤=25:75〜75:25であり、且つ、フロー式粒子像測定装置で計測されるトナーの平均円形度が0.950以上であることを特徴とする乾式トナーが開示されている。
また、特許文献2には、着色剤として蛍光X線分析におけるCa強度が50〜150kcpsの範囲であるキナクリドン系顔料と、ブラッグ角が0〜35°の範囲のX線回折パターンにおける最大ピークの強度に対する相対角度が25%より高いピークの半値幅の和が2〜5°の範囲であるナフトール系顔料を含んでなることを特徴とする電子写真用マゼンタトナーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−156795号公報
【特許文献2】特開2006−267741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、高彩度のマゼンタ画像が与えられる静電荷像現像用マゼンタトナー及びその製造方法、前記静電荷像現像用マゼンタトナーを用いた静電荷像現像剤、並びに画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は、以下の<1>、<5>、<6>、及び<7>に記載の手段により解決された。好ましい実施形態である<2>〜<4>とともに以下に記載する。
<1> CIE L***色空間の色相角−11±0.5°に最大彩度が75以上の色域を有する画像を形成することを特徴とする静電荷像現像用マゼンタトナー、
<2> 結着樹脂及び顔料を含有し、前記結着樹脂がポリエステル樹脂を含み、前記顔料がC.I.ピグメントレッド282(PR282)を含み、PR282の含有量が全重量の5〜20重量%である、上記<1>に記載の静電荷像現像用マゼンタトナー、
<3> PR282の分散粒子径の平均値が100〜200nmである、上記<2>に記載の静電荷像現像用マゼンタトナー、
<4> 融点が60〜100℃である離型剤を更に含有し、離型剤の含有量が全重量の5〜25重量%である、上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用マゼンタトナー、
<5> 上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用マゼンタトナーとキャリアとを含むことを特徴とする静電荷像現像剤、
<6> ポリエステル樹脂、離型剤、活性水素を含む基を有する化合物、前記活性水素を含む基と反応可能な部位を有する重合体、顔料及び溶剤を含む油相を調製し、更に水相を加えて乳化分散しトナー粒子の油滴を作製する分散工程、前記油滴中で前記化合物と前記重合体とを重付加反応させて伸長樹脂を得る伸長樹脂製造工程、前記伸長樹脂製造工程と同時及び/又は前記伸長樹脂製造工程の後に前記トナー粒子の油滴中の溶剤を除去する脱溶剤工程、並びに、脱溶剤した前記トナー粒子の表面を洗浄後、前記トナー粒子内部の水分を除去する洗浄乾燥工程、を含むことを特徴とする上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用マゼンタトナーの製造方法、
<7> 像保持体を帯電させる帯電工程、帯電された前記像保持体を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成工程、前記静電潜像を、トナーを含む現像剤を用いて現像し、現像像を形成する現像工程、前記現像像を、基材上に転写し転写像を形成する転写工程、及び、前記転写像を定着する定着工程、を含み、前記トナーが上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用マゼンタトナー、又は、前記現像剤が上記<5>に記載の静電荷像現像剤であることを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0008】
上記<1>に記載の発明によれば、本構成を有しない場合と比較して、彩度が高い画像が得られる静電荷像現像用マゼンタトナーが提供される。
前記<2>に記載の発明によれば、ポリエステル樹脂を含有しない場合、PR282を含まない場合、或いはPR282の含有量がマゼンタトナー全重量の5重量%未満又は20重量%を超える場合と比較して、より彩度が高い画像が得られる静電荷像現像用マゼンタトナーが提供される。
前記<3>に記載の発明によれば、PR282の分散粒子径の平均値が100nm未満又は200nmを超える場合と比較して、より彩度の高い画像が得られる静電荷像現像用マゼンタトナーが提供される。
前記<4>に記載の発明によれば、離型剤の融点が60℃未満又は100℃を超える場合と比較して、光沢性に優れ、得られる画像にひびの欠陥が少なく、帯電特性の環境依存性の小さい画像が得られる静電荷像現像用マゼンタトナーが提供される。
前記<5>に記載の発明によれば、本実施形態の静電荷像現像用マゼンタトナーを含まない場合と比較して、彩度が高い画像が得られる静電荷像現像剤が提供される。
前記<6>に記載の発明によれば、本構成を有しない場合と比較して、彩度の高い画像が得られる静電荷像現像用マゼンタトナーの製造方法が提供される。
前記<7>に記載の発明によれば、本構成を有しない場合と比較して、彩度の高い画像が得られる画像形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態の画像形成装置の一例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態について詳細に説明する。
なお、本実施形態において、「A〜B」との記載は、AからBの間の範囲だけでなく、その両端であるA及びBも含む範囲を表す。例えば、「A〜B」が数値範囲であれば、数値の大小に応じて「A以上B以下」又は「B以上A以下」を表す。
【0011】
(静電荷像現像用マゼンタトナー)
本実施形態の静電荷像現像用マゼンタトナー(以下、静電荷像現像用マゼンタトナーを単に「マゼンタトナー」ともいう。)は、CIE L***色空間の色相角−11±0.5°に最大彩度が75以上の色域を有する画像を形成することを特徴とする。
【0012】
<CIE L***色空間>
CIE L***色空間は、1975年の第18回CIEロンドン大会で採択された色空間であり、対象色を測定したL*値、a*値、b*値から色空間を規定している(新編色彩化学ハンドブック(第2版)、1998年、日本色彩学会編、p125)。彩度(C*)は下式で規定され、数値が大きいほど彩度が高いすなわち鮮やかな色彩を表現することを意味する。また、色相角(H)は下式で規定され、色空間上の位置座標を表し、対象色の色相すなわち色味を意味する。
*=((a*2+(b*21/2
H=tan-1(b*/a*
本実施形態のマゼンタトナーは、CIE L***色空間の色相角−11±0.5°に最大彩度が75以上の色域を有する画像を形成することにより、従来技術と比較し、より高い彩度のマゼンタ画像が形成される。
***色空間の測定は、例えばエックスライト社製の反射分光濃度計X−rite938により測定される。
***色空間の測定に使用する試料は、トナーの載り量が、2.6〜3.4g/m2となるように現像剤の帯電量を調製し、また、定着条件としては、ベルト定着(定着温度160℃、定着速度180mm/sec)の方法を用いて行われる。
【0013】
<顔料>
本実施形態の静電荷像現像用マゼンタトナーは、結着樹脂及び顔料を含有し、前記結着樹脂がポリエステル樹脂を含み、前記顔料がC.I.ピグメントレッド282(PR282)を含み、PR282の含有量が全重量の5〜20重量%であることが好ましい。
【0014】
PR282は、キナクリドン系化合物の顔料である。従来、マゼンタトナーの彩度、色相等の色再現の改良のために、キナクリドン系顔料、ナフトール系顔料等を使用する技術が検討されてきている。このような顔料では、顔料の微細化を行いすぎるとトナー内の顔料の結晶構造に歪みを与えることなどにより、時間が経過すると凝集してしまうことがあり、改良が望まれていた。高彩度のマゼンタ色が再現される顔料の開発が望まれ、静電荷像現像用マゼンタトナーで形成されるマゼンタ画像の好ましい色再現域の改良が期待されていた。
【0015】
また、従来の水系で顔料を分散するトナーの製法では、水系で分散性の悪い顔料は、トナー中の顔料の分散状態が劣り、彩度が不充分なだけでなく、トナー成分の結着樹脂、離型剤等がトナー表面に滲み出すなどのため、トナーの帯電特性が悪くなり環境依存性が劣化したり、トナー画像にひびが出るなどの欠点が発生し、改良が望まれていた。
【0016】
従来のマゼンタ顔料として、C.I.ピグメントレッド122、同202、同206、同207、同209、同238等が使用されてきているが、PR282は好ましくは本実施形態の静電荷像現像用マゼンタトナーの製造方法を用いることにより、従来のマゼンタ顔料よりも、彩度が高いマゼンタ画像を与える静電荷像現像用マゼンタトナーが得られることが判った。PR282は、従来用いられてきた水系での顔料分散では不安定であり、彩度の向上も得られなかった。顔料としてPR282を使用し、更に本実施形態のマゼンタトナーの製造方法を用いることにより、CIE L***色空間の色相角−11±0.5°に最大彩度が75以上の色域を有する画像を形成する静電荷像現像用マゼンタトナーが得られ、従来技術よりも高い彩度のマゼンタ画像が得られることが判明した。
【0017】
本実施形態のマゼンタトナーに含有されるPR282の含有量は、マゼンタトナー全重量の5〜20重量%であることが好ましく、10〜15重量%がより好ましい。上記範囲内であると、彩度が高く、光沢性に優れた静電荷像現像用マゼンタトナーが得られる。
【0018】
PR282の分散粒子径の平均値は、100〜200nmが好ましく、130〜170nmがより好ましい。上記範囲内であると、彩度が高い静電荷像現像用マゼンタトナーが得られる。
PR282の分散粒子とは、トナーの中に分散されている状態の粒子を指す。
PR282の分散粒子径の平均値は、日立協和エンジニアリング(株)製のS−4800(STEM)により観察された断面トナー写真を用いて測定される。分散粒子径の平均値については、断面トナー写真から測定されたトナー中の顔料部分の最長径の平均値(例えば断面トナー写真の中の1個のトナーに顔料が10粒見つかった場合、各々の最長径を測定しその平均値を採用する。100個のトナーについて同様の平均値をとり、最後に全体の平均値を求める。)をとり分散粒子径の平均値とした。
【0019】
PR282は、市販品として、BASF CORPORATIONより、Irgazin(商標)Magenta2012として入手可能である。
【0020】
<結着樹脂>
本実施形態の静電荷像現像用マゼンタトナーは、結着樹脂を含有する。結着樹脂としては、特に限定はなく、付加重合系樹脂、及び、重縮合系樹脂が好ましく例示される。この中でも、付加重合系樹脂としては、エチレン性不飽和化合物の付加重合系樹脂が好ましく、アクリル樹脂がより好ましい。重縮合系樹脂としては、ポリエステル樹脂が好ましく、ポリオールとポリカルボン酸から得られるポリエステル樹脂がより好ましい。
また、結着樹脂には、後述する本実施形態の活性水素を含む基を有する化合物と前記活性水素基を含む基と反応可能な部位を有する重合体とを重付加反応させて得られる伸長樹脂も好ましく含まれる。
以下にこれらの結着樹脂について詳しく述べる。
【0021】
本実施形態に使用される重縮合系樹脂としては、ポリエステル樹脂が好ましく例示される。ポリエステル樹脂は、ポリオール成分とポリカルボン酸成分とから重縮合により合成される。本実施形態において、前記ポリエステル樹脂として、市販品、又は、合成品が使用される。
ポリカルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられ、更にこれらの無水物や低級アルキルエステル等も挙げられる。
三価以上のポリカルボン酸成分としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物や低級アルキルエステル等が挙げられる。これらは1種単独、又は、2種以上で併用される。
【0022】
前述の脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸成分を含有することも好ましい。このようなジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級エステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でもコストの点で、フマル酸、マレイン酸等が好ましく挙げられる。
【0023】
ポリオール成分のうち二価のアルコールとしては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド付加物(平均付加モル数1.5〜6)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
三価以上のアルコールとしては、例えば、ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0024】
非晶性ポリエステル樹脂(「非結晶性ポリエステル樹脂」ともいう。)では、前記した原料モノマーの中でも、二価以上の第二級アルコール及び/又は二価以上の芳香族カルボン酸化合物が好ましい。二価以上の第二級アルコールとしては、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセロール等が挙げられる。これらの中では、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物が好ましい。
二価以上の芳香族カルボン酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸及びトリメリット酸が好ましく、テレフタル酸及びトリメリット酸がより好ましい。
【0025】
また、トナーに低温定着性を付与するために結着樹脂の少なくとも一部に結晶性ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂は、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとの重縮合樹脂からなることが好ましく、主鎖部分の炭素数が4〜20である直鎖型ジカルボン酸と直鎖型脂肪族ジオールとの重縮合樹脂からなることがより好ましい。直鎖型であると、ポリエステル樹脂の結晶性に優れ、結晶融点が適度であるため、耐トナーブロッキング性、画像保存性、及び、低温定着性に優れる。また、炭素数が4以上であると、エステル結合濃度が低く、電気抵抗が適度であり、トナー帯電性に優れる。また、20以下であると、実用上の材料の入手が容易である。前記炭素数としては14以下であることがより好ましい。
【0026】
結晶性ポリエステルの合成に好適に用いられる脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等、又は、その低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられるが、この限りではない。これらのうち、入手容易性を考慮すると、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸が好ましい。
【0027】
脂肪族ジオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール等が挙げられるが、これらに限定されない。これらのうち、入手容易性を考慮すると1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
三価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらは1種単独、又は、2種以上で併用されるのが好ましい。
【0028】
ポリカルボン酸成分のうち、脂肪族ジカルボン酸の含有量が80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。
ポリオール成分のうち、前記脂肪族ジオール成の含有量が80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。
なお、必要に応じて、酸価や水酸基価の調製等の目的で、酢酸、安息香酸等の一価の酸や、シクロヘキサノールベンジルアルコール等の一価のアルコールも用いられる。
【0029】
ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、ポリカルボン酸成分とポリオール成分とを反応させる一般的なポリエステル重合法が例示され、例えば、直接重縮合、エステル交換法等が挙げられる。これらの製造方法は、モノマーの種類によって使い分けられる。
ポリエステル樹脂は、上記ポリカルボン酸成分とポリオール成分とを常法に従って縮合反応させて製造される。例えば、上記ポリカルボン酸成分、及び、ポリオール成分、必要に応じて触媒を入れ、温度計、撹拌機、流下式コンデンサを備えた反応容器に配合し、不活性ガス(窒素ガス等)の存在下、150〜250℃で加熱し、副生する低分子化合物を連続的に反応系外に除去し、所定の重量平均分子量や酸価に達した時点で反応を停止させ、冷却し、目的とする反応物を取得することによって製造される。
【0030】
本実施形態に使用される付加重合系樹脂としては、各種エチレン性不飽和化合物の単独重合体及び共重合体が好ましく使用される。エチレン性不飽和化合物の付加重合系樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン等の単独重合体又は共重合体が例示される。
特に好ましく使用される付加重合系樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられる。
【0031】
本実施形態のトナーにおける結着樹脂の含有量としては、特に制限はないが、静電荷像現像用トナーの全重量に対し、5〜95重量%であることが好ましく、20〜90重量%であることがより好ましく、40〜85重量%であることが更に好ましい。上記範囲であると、低温定着性、帯電特性等に優れる。
【0032】
<離型剤>
本実施形態のマゼンタトナーは離型剤を含むことが好ましい。離型剤は公知の成分を使用することができ限定されるものではないが、具体例としては、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン、グラフト化ポリエチレン、グラフト化ポリプロピレン等のオレフィン系ワックス、ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス、水添ひまし油、カルナバワックス等の植物系ワックス、ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン、アルキル基、フェニル基を有するシリコーン系ワックス、ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、長鎖脂肪酸アルコール、ペンタエリスリトール等の長鎖脂肪酸多価アルコール、及びその部分エステル体、パラフィン系ワックス及びフィッシャートロプシュワックス等が例示され、中でも、フィッシャートロプシュワックス、並びに、ペンタエリスリトール及び長鎖脂肪酸のエステルが好ましく、前記長鎖脂肪酸としてはパルミチン酸が好ましい。
【0033】
離型剤の融点は60〜100℃であることが好ましく、65〜90℃であることがより好ましく、70〜80℃が更に好ましい。離型剤の融点が上記の数値の範囲内であると、光沢性に優れ環境依存性の低いトナーが得られる。
【0034】
離型剤の配合量は、トナー総重量に対して、5〜25重量%の範囲であることが好ましく、10〜15重量%であることがより好ましい。
【0035】
<着色剤>
本実施形態に使用される静電荷像現像用トナーは、PR282以外の着色剤を含有してもよい。
本実施形態に使用される静電荷像現像用トナーに含有されるPR282以外の着色剤としては、カーボンブラック、クロムイエロー(C.I.No.14090)、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー(C.I.No.47005)、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド(C.I.No.26105)、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル(C.I.No.45435)、アニリンブルー(C.I.No.50405)、ウルトラマリンブルー(C.I.No.77103)、カルコオイルブルー(C.I.No.azoic Blue3)、メチレンブルークロライド(C.I.No.52015)、フタロシアニンブルー(C.I.No.74160)、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレレート(C.I.No.42000)、チタンブラック、ランプブラック(C.I.No.77266)などの種々の顔料や、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、チオインジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアジン系、チアゾール系、キサンテン系、ニグロシン系染料(C.I.No.50415B)、などの各種染料などを1種単独で又は2種以上を併せて使用することが好ましい。
【0036】
これらの着色剤の分散方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的な分散方法があり、なんら制限されるものではない。また、これらの着色剤は、本実施形態に使用されるPR282と一緒に分散され用いられてもよい。PR282を含む着色剤の配合量は、トナー構成固体分総重量に対して0.1〜20重量%の範囲であることが好ましく、0.5〜15重量%の範囲であることがより好ましい。
【0037】
着色剤中に含まれるPR282の含有量は50重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以上が更に好ましく、PR282のみを含有するのが最も好ましい。
【0038】
(静電荷像現像用マゼンタトナーの製造方法)
本実施形態の静電荷像現像用マゼンタトナーの製造方法(以下、「静電荷像現像用マゼンタトナーの製造方法」を単に「マゼンタトナーの製造方法」ともいう。)は、ポリエステル樹脂、離型剤、活性水素を含む基を有する化合物、前記活性水素を含む基と反応可能な部位を有する重合体、顔料及び溶剤を含む油相を調製し、更に水相を加えて乳化分散しトナー粒子の油滴を作製する分散工程、前記油滴中で前記化合物と前記重合体とを重付加反応させて伸長樹脂を得る伸長樹脂製造工程、前記伸長樹脂製造工程と同時及び/又は前記伸長樹脂製造工程の後に前記トナー粒子の油滴中の溶剤を除去する脱溶剤工程、並びに、脱溶剤した前記トナー粒子の表面を洗浄後、前記トナー粒子内部の水分を除去する洗浄乾燥工程、を含むことが好ましい。また、前記洗浄乾燥したトナー粒子表面に外添剤を付着させる外添剤付着工程を更に有することが好ましい。
【0039】
本実施形態のマゼンタトナーの製造方法において、伸長樹脂製造工程は、トナー粒子の油滴中の活性水素を含む基を有する化合物と前記活性水素を含む基と反応可能な部位を有する重合体との重付加反応による伸長及び/又は架橋反応により前記重合体をより高分子量とする工程、すなわち結着樹脂として好ましく用いられる伸長樹脂を製造する工程である。
本実施形態のマゼンタトナーの製造方法は、伸長樹脂製造工程において重付加反応による伸長及び/又は架橋反応を適用するので、以下、単に「重付加反応法」ともいう。
以下、本実施形態のマゼンタトナーの製造方法について、各工程毎に説明する。
【0040】
−分散工程−
本実施形態のマゼンタトナーの製造方法における分散工程とは、ポリエステル樹脂、離型剤、活性水素を含む基を有する化合物、前記活性水素を含む基を有する化合物と反応可能な部位を有する重合体、顔料、及び溶剤を含む油相を調製し、更に水相を加えて乳化分散しトナー粒子の油滴を作製する工程をいう。
【0041】
本実施形態の分散工程におけるポリエステル樹脂は、前記結着樹脂として用いられるポリエステル樹脂と同じ定義であり、好ましい態様も同じである。
本実施形態の分散工程における離型剤は、前記離型剤と同じ定義であり、好ましい態様も同じである。
【0042】
本実施形態における、活性水素を含む基を有する化合物について以下に説明する。
活性水素とは有機化合物を構成する水素原子のうちプロトンとして解離しやすいものをいい、具体的にはヒドロキシ基やアミノ基の水素原子のように電気陰性度の大きな原子に結合している水素原子や、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基などの電子吸引性基が置換した炭素に結合している水素が挙げられ、本実施形態においてはアミノ基に含まれる活性水素が好ましい。活性水素を含む基を有する化合物の具体例としては、以下に詳述するアミン類が挙げられる。
以下、「活性水素を含む基」を単に、「活性水素基」ともいう。「活性水素を含む基を有する化合物」を、単に「活性水素基含有化合物」ともいう。
【0043】
アミン類としては下記の(1)〜(6)のアミン類を好ましく用いられる。
(1)ポリアミン類
ポリアミン類としては、ジアミン及び3価以上のポリアミンが挙げられる。ジアミンとしては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等)、脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミン等)、及び、脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等)が挙げられる。3価以上のポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等が挙げられる。
(2)ポリアミン類を脱離可能な化合物でブロック化した化合物
ポリアミン類を脱離可能な化合物でブロック化した化合物としては、前記ポリアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物及びオキサゾリン化合物等が挙げられる。
(3)アミノアルコール
アミノアルコールとしては、エタノールアミン及びヒドロキシエチルアニリン等が挙げられる。
(4)アミノメルカプタン
アミノメルカプタンとしては、アミノエチルメルカプタン及びアミノプロピルメルカプタン等が挙げられる。
(5)アミノ酸
アミノ酸としては、アミノプロピオン酸及びアミノカプロン酸等が挙げられる。
(6)その他のアミン類
その他のアミン類としては、前記(3)〜(5)のアミン類に含まれるアミノ基をブロックしたものが挙げられ、前記(3)〜(5)のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。
前記(1)〜(6)に挙げたアミン類のうち、(1)及び(2)のアミン類が好ましく、(1)のジアミンと少量の3価以上のポリアミンの混合物、及び、それらのケトン類とのケチミン化合物がより好ましく、前記ケチミン化合物が更に好ましい。
【0044】
必要に応じて前記アミン類と共に伸長停止剤を併用することが好ましい。伸長停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等)及びモノアミンのアミノ基をブロックしたケチミン化合物等が挙げられる。
【0045】
本実施形態における、前記活性水素基と反応可能な部位を有する重合体について、以下に説明する。
前記活性水素基と反応可能な部位を有する重合体の具体例としては、後に詳述するイソシアナト基を有するプレポリマーが挙げられる。従って本実施形態における次の伸長樹脂製造工程では、イソシアナト基を有するプレポリマーと前記アミン類とを反応させて伸長/架橋する重付加反応法により高分子量の好ましい結着樹脂が得られる。
【0046】
本実施形態において、イソシアナト基含有プレポリマーとは、イソシアナト基を有するプレポリマーをいう。イソシアナト基含有プレポリマーとしては、イソシアナト基含有ポリエステルプレポリマー、イソシアナト基含有エポキシ樹脂プレポリマー、イソシアナト基含有ポリウレタンプレポリマー及びイソシアナト基含有ポリアミドプレポリマー等が挙げられ、中でもイソシアナト基含有ポリエステルプレポリマーが好ましい。
【0047】
本実施形態においてイソシアナト基含有ポリエステルプレポリマー(以下、単に「変性ポリエステル樹脂」ともいう。)は、例えばポリオールとポリカルボン酸との重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルプレポリマーを、更にポリイソシアネートと反応させたものであることが好ましい。
ポリエステルプレポリマーの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシ基、メルカプト基などが挙げられ、中でもアルコール性水酸基が好ましい。
ポリオール及びポリカルボン酸は、前記結着樹脂における前記結晶性ポリエステル樹脂又は前記非結晶性ポリエステル樹脂の重縮合に用いたポリオール及びポリカルボン酸が用いられる。
【0048】
重縮合性単量体を重縮合して前記ポリエステルプレポリマーを製造する際の、ポリオールとポリカルボン酸の比率は、水酸基[OH]とカルボキシ基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として表した場合、2/1〜1/1が好ましく、1.5/1〜1/1がより好ましく、1.3/1〜1.02/1が更に好ましい。これにより、活性水素基としてアルコール性水酸基を有するポリエステルが得られる。
【0049】
前記ポリエステルのアルコール性水酸基と反応させて、変性ポリエステル樹脂を調製するために用いられるポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート等)、脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート等)、芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等)、芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等)、イソシアヌレート類、前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの等が挙げられる。これらのポリイソシアネートは1種又は2種以上を併用することが好ましい。
【0050】
本実施形態のマゼンタトナーの製造方法の分散工程において用いられるポリエステル樹脂(「変性ポリエステル樹脂」との区別のため、「変性されていないポリエステル樹脂」ともいう。)としては、前記ポリエステル樹脂の粒子を分散させた樹脂粒子分散液を用いることが好ましい。樹脂粒子の分散液については、後で詳述する。塊状のポリエステル樹脂を用いる場合は、更に塊状のポリエステル樹脂を粉砕する工程を設けることが好ましい。
【0051】
変性されていないポリエステル樹脂の樹脂粒子分散液又は粉砕物、離型剤、及び、顔料を溶剤中で加熱分散して半溶解状態として溶解物とした後、更に、変性ポリエステル樹脂を加えて混合溶解した後、ケチミン化合物等のアミン化合物を加えて更に混合することにより、有機溶媒中に溶解及び/又は分散させた溶液及び/又は分散液が好ましく調製される。
溶液及び/又は分散液を調製する方法の一例を述べたが、溶液及び/又は分散液を調製する方法は、用いる変性されていないポリエステル樹脂、変性ポリエステル樹脂、離型剤、顔料等に応じて適宜設計することができ限定されるものではない。
本実施形態の分散工程で使用される溶剤としては、有機溶剤が好ましく、中でもトルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、及び、テトラヒドロフラン等の有機溶剤が好ましく挙げられる。
【0052】
重付加反応法における分散工程とは、得られた溶液及び/又は分散液にイオン交換水等の水系媒体を加えて乳化する工程をいう。
前記溶液及び/又は分散液を水系媒体中に分散する分散工程は、水相中での機械的エネルギーを付与して強制的に乳化(液滴の形成)させる処理であることが好ましい。機械的エネルギーの付与手段としては公知の分散機を用いることができ、限定されるものではないが、ホモミキサー、超音波分散機、マントンゴーリン及び圧力式ホモジナイザー等の分散機が好ましく挙げられる。
【0053】
前記水系媒体に用いる水は、イオン交換水等の水単独でもよいが、水と混和する溶剤も好ましく併用される。水と混和する溶剤としては、アルコール類、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類、低級ケトン類が挙げられる。乳化分散するためには、分散剤も好ましく用いられる。分散剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、リン酸塩等のアニオン性界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の四級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤、多価アルコール類等の非イオン性界面活性剤、又は、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン等の両性界面活性剤が挙げられる。また、フルオロ基を有する界面活性剤も好ましく用いられる。
【0054】
−伸長樹脂製造工程、脱溶剤工程及び洗浄乾燥工程−
次に重付加反応法における伸長樹脂製造工程、脱溶剤工程及び洗浄乾燥工程について説明する。本実施形態において伸長樹脂製造工程とは、前記活性水素含有化合物と変性ポリエステル樹脂等の前記重合体とを重付加反応させ、トナー粒子の油滴中において前記重合体の伸長及び/又は架橋反応により更に高分子量となった伸長樹脂を得る工程をいう。
重付加反応は、50〜100℃の範囲内で反応させることが好ましく、60〜90℃の範囲内で反応させることがより好ましい。また、前記重付加反応を行う時間は、反応に用いる材料や反応温度にもよるが0.1〜10時間が好ましく、2〜5時間がより好ましい。
【0055】
また、脱溶剤工程とは、前記伸長樹脂製造工程と同時に、及び/又は、前記伸長樹脂製造工程の後に前記溶剤を除去する工程をいい、本実施形態においては、脱溶剤工程は前記伸長樹脂製造工程と同時であることが好ましい。
溶剤を除去するためには、系全体を徐々に昇温し、液滴中の溶剤を除去する方法が好ましく採用される。或いはまた、乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の溶剤を除去してトナー微粒子を形成する方法なども採用される。
更に脱溶剤工程の後に、更に洗浄乾燥工程を設けることにより、不純物の除去等を行うことが好ましい。
洗浄は、帯電性の点から十分にイオン交換水による置換洗浄を施すことが好ましい。乾燥工程では、通常の振動型流動乾燥法、スプレードライ法、凍結乾燥法、フラッシュジェット法など、任意の方法が採用される。
【0056】
−外添剤付着工程−
得られた乾燥後のトナーの粉体に、外添剤として、帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子などの異種粒子を添加し混合を行い、前記混合粉体に機械的衝撃力を与えることによってトナー粒子表面において固定化、融合化させ、得られるトナー複合体粒子の表面からの外添剤異種粒子の脱離を防止したりする工程として、外添剤付着工程が含まれることが好ましい。
【0057】
外添剤付着工程では、例えば、得られたトナーには、流動性付与やクリーニング性向上の目的で通常のトナーと同様に乾燥した後、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウムなどの無機粒子やビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーンなどの樹脂粒子を乾燥状態でせん断をかけながらトナー粒子表面に添加して使用することが好ましい。
【0058】
また、水系媒体中にてトナー表面に付着せしめる場合、無機粒子の例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウムなど通常トナー表面の外添剤として使うすべてのものをイオン性界面活性剤や高分子酸、高分子塩基で分散することにより好ましく使用される。
【0059】
本実施形態の静電荷像現像用マゼンタトナーに加えて、本実施形態の静電荷像現像用マゼンタトナーの製造方法以外の方法で製造されたトナーも好ましく用いられる。本実施形態の静電荷像現像用マゼンタトナーの製造方法以外の方法としては特に限定されるものではなく、乳化凝集法、溶融混練粉砕法、重合法、溶剤により溶解し脱溶剤して粉砕する方法のほか、溶融スプレー法等が挙げられる。以下にこれらの説明を行う。
【0060】
<乳化凝集法>
乳化凝集法は、前記結着樹脂及び前記離型剤を水系媒体中に分散する工程(以下、「分散工程」ともいう。)、分散した前記結着樹脂及び前記離型剤を凝集して凝集粒子を得る工程(以下、「凝集工程」ともいう。)、並びに、前記凝集粒子を加熱して融合する工程(以下、「融合工程」ともいう。)を含む。この乳化凝集法と呼ばれる製造方法において、樹脂粒子を分散させた分散液として、前記樹脂粒子分散液を適用することが好ましい。
【0061】
先に、分散工程に好ましく用いられる樹脂粒子分散液及びその製造方法について説明する。樹脂粒子分散液の樹脂粒子は、その平均粒子径が50〜1,000nmであることが好ましく、50〜500nmであることがより好ましく、50〜300nmであることが更に好ましい。
樹脂粒子の平均粒子径が上記の数値の範囲内であると、これを用いて作製した静電荷像現像用トナーが均一の組成となるので好ましい。ここで、平均粒子径とは、体積平均粒子径を意味する。体積平均粒子径はレーザー回折式粒度分布測定装置等を用いて測定される。
【0062】
本実施形態において、樹脂粒子分散液の製造方法は、高分子分散剤、結着樹脂及び水系媒体を混合する方法が好ましい。上記混合方法は適宜選択される。本実施形態に好適に使用される製造方法としては、(I)バッチ乳化法及び(II)連続乳化法が挙げられる。以下、それぞれについて説明する。
【0063】
(I)バッチ乳化法
バッチ乳化法では、高分子分散剤の水中分散液を作製し、これを加熱し、同じく加熱した重縮合樹脂に撹拌下で投入し、溶融転相乳化を行った後、冷却し、樹脂粒子分散液を製造する方法が例示される。
好ましい一例を挙げれば、例えばメタクリル酸メチルなどの単量体とアクリル酸などの親水性単量体(イオン性極性基含有単量体)とを共重合し、高分子分散剤を作製し、水中に一定量分散する。更に、卓上型ニーダーなどの高粘度撹拌機中で、多価酸(ポリカルボン酸)と多価アルコール(ポリオール)を融解混合して硫黄酸(硫黄原子を含むブレンステッド酸)を触媒とし、70〜150℃(例えば120℃)で4〜20時間程度(例えば8時間)減圧下で重縮合を実施し、重縮合樹脂を作製する。
得られた重縮合樹脂を必要に応じて冷却後(例えば100℃)、重縮合樹脂を例えば15rpmに撹拌しながら上記の高分子分散剤の水分散液を加熱し(例えば95℃)、卓上型ニーダーに徐々に投入しながら撹拌回転数を上昇し(30rpm)、溶融転相乳化を行った後、冷却、重縮合樹脂の乳化分散液を作製する。なお、本実施形態はこれに限定されず、バッチ乳化法において、重縮合温度、重縮合時間、重縮合樹脂と高分子分散剤の水分散液の温度、撹拌速度、撹拌時間などは、適宜選択される。
バッチ乳化法において、重縮合樹脂に添加する高分子分散剤の分散液は、高分子分散剤を2〜50重量%含有することが好ましく、5〜40重量%含有することがより好ましく、10〜30重量%含有することが特に好ましい。高分子分散剤の含有量が上記範囲内であると重縮合樹脂の分散性が良好であるので好ましい。
【0064】
(II)連続乳化法
重縮合樹脂を分散乳化する方法としては、上記のようなニーダーのようなバッチ型混練機を用いてもよいが、連続的に乳化を行う連続乳化法により樹脂粒子分散液を製造することも好ましい。
本実施形態に好適に使用可能な連続乳化法の一例を説明する。本例では、通常の反応器で重縮合反応を実施して、重縮合樹脂を得た後、二軸押し出し機を用いて、重縮合樹脂を混練しながら、先の高分子分散剤分散液を95℃に加熱して、一軸押し出し機の混練ゾーン中に注入、更に希釈水をその後工程に注入して希釈、安定化する方法である。この場合、連続的な非溶剤乳化プロセスを実現することができ、極めて効率的な生産を実現することが可能となる。
なお、本実施形態はこれに限定されず、重縮合樹脂の温度、高分子分散剤の分散液の温度や、押し出し条件等は、適宜選択される。
【0065】
前述のようにして得られた樹脂粒子分散液を、離型剤粒子分散液等と混合し、必要に応じて着色剤粒子分散液、更に凝集剤を添加しヘテロ凝集を生じさせることによりトナー径の凝集粒子を形成し、その後、樹脂粒子のガラス転移点以上又は融点以上の温度に加熱して前記凝集粒子を融合・合一し、更に、洗浄、乾燥する事により本実施形態のトナーが得られる。
なおトナー形状は不定形から球形までのものが好ましく用いられる。また、凝集剤としては界面活性剤の他、無機塩、2価以上の金属塩が好適に用いられる。特に金属塩を用いる場合、凝集性制御及びトナー帯電性の特性において望ましい。
【0066】
本実施形態において、樹脂粒子を分散させる際に、高分子分散剤や界面活性剤を使用することが好ましい。
ここで用いる高分子分散剤や界面活性剤は、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン系界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン性界面活性剤、及び、種々のグラフトポリマー等を挙げることができ、特に制限されない。
【0067】
また、このように凝集して第一の凝集粒子形成後、更に上記本実施形態の樹脂粒子分散液又は別の樹脂粒子分散液を添加し、第一の粒子表面に第2のシェル層を形成することも可能である。なお、この例示においては、着色剤分散液を別に調製しているが、重縮合樹脂粒子に予め着色剤が配合されている場合には、着色剤分散液は必要ない。
【0068】
ここで、凝集剤としては、界面活性剤のほか、無機塩、2価以上の金属塩を用いることが好ましい。特に、金属塩を用いる場合、凝集性制御及びトナー帯電性などの特性において好ましい。また、例えば、樹脂の乳化重合、顔料の分散、樹脂粒子の分散、離型剤の分散、凝集、凝集粒子の安定化などに上述した界面活性剤を用いることも好ましい。
分散手段としては、回転せん断型ホモジナイザーやメデイアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的なものが使用される。
【0069】
本実施形態において、前述の凝集法としては、特に限定されるものではなく、従来より静電荷像現像用トナーの乳化凝集法において用いられている凝集法、例えば、昇温、pH変化、塩添加等によってエマルジョンの安定性を低減化させてディスパーザー等で撹拌する方法、等が用いられる。
更に、凝集処理後、粒子表面からの着色剤の滲出を抑える等の目的で、熱処理を施す等により粒子表面を架橋せしめてもよい。なお、用いられた界面活性剤等は、必要に応じて、水洗浄、酸洗浄、或いはアルカリ洗浄等によって除去してもよい。
【0070】
なお、本実施形態の静電荷像現像用マゼンタトナーの製造方法には、必要に応じて、この種のトナーに用いられる帯電制御剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の公知の各種内添剤が用いられてもよい。
帯電制御剤は、乳化分散物(油相)の調製時、乳化分散時や、凝集時等の何れで添加することも好ましい。また、帯電制御剤は水性分散液等として添加されることが好ましく、添加される帯電制御剤の量は、油相100重量部に対して好ましくは1〜25重量部、より好ましくは5〜15重量部となるように添加されることが好ましい。ここで、油相とは、バルク重合の場合には、少なくとも重縮合性樹脂を含み、水系媒体中に乳化分散される成分である。
【0071】
帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩系化合物、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン系樹脂等の正荷電性帯電制御剤、又は、クロム、コバルト、アルミニウム、鉄等の金属含有アゾ系染料、サリチル酸若しくはアキルサリチル酸やベンジル酸等のヒドロキシカルボン酸のクロム、亜鉛、アルミニウム等の金属塩や金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物、フェノールアミド化合物等の負荷電性帯電制御剤等、公知のものが用いられる。
【0072】
<静電荷像現像用トナー>
本実施形態の静電荷像現像用マゼンタトナーの製造方法により得られたトナーの累積体積平均粒子径D50は好ましくは3.0〜9.0μmであり、より好ましくは3.0〜7.0μmであり、更に好ましくは3.0〜5.0μmである。D50が上記の数値の範囲内であると、付着力が強く、現像性が良好であるので好ましい。また、画像の解像性が良好であるので好ましい。
【0073】
また、得られるトナーの体積平均粒度分布指標GSDvは1.30以下であることが好ましい。GSDvが1.30以下であると、解像性が良好であり、トナー飛散やカブリ等の画像欠損の原因となることがないので好ましい。
【0074】
ここで、累積体積平均粒子径D50や体積平均粒度分布指標GSDvは、例えばコールターカウンターTAII(日科機バイオス(株)製)、マルチサイザーII(日科機バイオス(株)製)等の測定器で測定される。粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描き、累積16%となる粒子径を体積D16v、数D16P、累積50%となる粒子径を体積D50v、数D50P、累積84%となる粒子径を体積D84v、数D84Pと定義する。これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v1/2、数平均粒度分布指標(GSDp)は(D84P/D16P1/2として算出される。
【0075】
得られたトナーの形状係数SF1は、画像形成性の点より100〜140であることが好ましく、より好ましくは110〜135である。形状係数SF1は次のようにして求められる。まず、スライドグラス上に散布したトナーの光学顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、50個以上のトナーについてSF1を求め、これの平均を求めることによって得られる。SF1は以下のように定義される。
【0076】
【数1】

ここでML:トナ−粒子の絶対最大長、A:トナ−粒子の投影面積である。
【0077】
(静電荷像現像剤)
本実施形態の静電荷像現像剤は、本実施形態の静電荷像現像用マゼンタトナーと、キャリアとを含む。
本実施形態の静電荷像現像用マゼンタトナーは、静電荷像現像剤として使用される。この現像剤は、この静電荷像現像用マゼンタトナーを含有することのほかは特に制限はなく、目的に応じて所望の成分組成がとられる。静電荷像現像用トナーを、単独で用いると一成分系の静電荷像現像剤として調製され、また、キャリアと組み合わせて用いると二成分系の静電荷像現像剤として調製され、本実施形態においては二成分系の静電荷像現像剤であることが好ましい。
【0078】
キャリアとしては、特に限定されないが、通常、鉄粉、フェライト、酸化鉄粉、ニッケル等の磁性体粒子;磁性体粒子を芯材としてその表面をスチレン系樹脂、ビニル系樹脂、エチレン系樹脂、ロジン系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂などの樹脂やステアリン酸等のワックスで被覆し、樹脂被覆層を形成させてなる樹脂被覆キャリア;結着樹脂中に磁性体粒子を分散させてなる磁性体分散型キャリア等が挙げられる。中でも、樹脂被覆キャリアは、トナーの帯電性やキャリア全体の抵抗を樹脂被覆層の構成により制御可能となるため特に好ましい。
二成分系の静電荷像現像剤における本実施形態のトナーとキャリアとの混合割合は、好ましくはキャリア100重量部に対して、トナーが2〜10重量部である。また、現像剤の調製方法は、特に限定されないが、例えば、Vブレンダー等で混合する方法等が挙げられる。
【0079】
(画像形成方法)
本実施形態の静電荷像現像剤及び本実施形態の静電荷像現像用マゼンタトナーは、本実施形態の静電荷像現像方式(電子写真方式)の画像形成方法に使用される。
本実施形態の画像形成方法は、像保持体を帯電させる帯電工程、帯電された前記像保持体を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成工程、前記静電潜像を、トナーを含む現像剤を用いて現像し、現像像を形成する現像工程、前記現像像を、基材上に転写し転写像を形成する転写工程、及び、前記転写像を定着する定着工程、を含み、前記トナーが本実施形態の静電荷像現像用マゼンタトナー、又は、前記現像剤が本実施形態の静電荷像現像剤であることを特徴とする。
【0080】
前記各工程は、それ自体一般的な工程であり、例えば、特開昭56−40868号公報、特開昭49−91231号公報等に記載されている。なお、本実施形態の画像形成方法は、それ自体公知のコピー機、ファクシミリ機等の画像形成装置を用いて実施される。
【0081】
前記帯電工程は、像保持体を帯電させる工程である。
前記静電潜像形成工程は、像保持体表面に静電潜像を形成する工程である。
前記現像工程は、前記像保持体表面に形成された前記静電潜像を本実施形態の静電荷像現像用マゼンタトナー又は本実施形態の静電荷像現像用マゼンタトナーを含む静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する工程である。
前記転写工程は、前記トナー像を被転写体上に転写する工程である。
前記定着工程は、加熱部材と加圧部材との間に未定着の前記トナー像が形成された前記被転写体を通過させ前記トナー像を定着する工程である。
【0082】
前記定着工程において用いられる加熱部材としては、少なくとも最表層の表面エネルギーが30×10-3N/m以上3,000×10-3N/m以下であることが好ましく、300×10-3N/m以上1,500×10-3N/m以下であることがより好ましい。
このように表面エネルギーの高い加熱部材は、金属材又は無機材により形成されていることが好ましく、金属材により形成されていることがより好ましい。
加熱部材を形成する金属材としては、Fe、Cr、Cu、Ni、Co、Mn、Al、ステンレスなどのこれらの合金、及びこれらの酸化物などが挙げられ、中でも、Al、ステンレスが好ましく、Alがより好ましい。
加熱部材を形成する無機材としては、ガラス、セラミックスなどが挙げられる。
なお、加熱部材は、少なくともその最表層が前記金属材又は無機材により形成されているものであることが好ましい。例えば、加熱部材の全体が前記金属材又は無機材により形成されていてもよいし、加熱部材の最表層が前記金属材又は無機材により形成され、最表層以外の部分が他の材料により形成されていてもよい。
加熱部材の形状としては、例えば、円筒状のロール形状が挙げられる。
【0083】
定着工程において、加熱部材は、離型剤の融点以上に加熱され、トナーに含有される離型剤が加熱部材により溶融状態となる。定着工程における加熱部材の温度は、130〜170℃であることが好ましく、140〜160℃であることがより好ましい。上記範囲であると、トナーに含有される離型剤が確実に溶融状態となる。
【0084】
(画像形成装置)
本実施形態に用いられる画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体を帯電させる帯電手段と、前記像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成手段と、前記像保持体表面に形成された静電潜像を静電荷像現像用トナー又は静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、前記像保持体表面に形成された前記トナー像を被転写体表面に転写する転写手段と、加熱部材と加圧部材との間に未定着の前記トナー像が形成された前記被転写体を通過させ前記トナー像を定着する定着手段と、を有することが好ましい。
【0085】
前記像保持体、及び、前記の各手段においては、前記の画像形成方法の各工程で述べた構成が好ましく用いられる。
前記の各手段は、いずれも画像形成装置において公知の手段が利用される。また、本実施形態で用いる画像形成装置は、前記した構成以外の手段や装置等を含むものであってもよい。また、本実施形態で用いる画像形成装置は前記した手段のうちの複数を同時に行ってもよい。
【0086】
(トナーカートリッジ及びプロセスカートリッジ)
本実施形態に用いられるトナーカートリッジは、本実施形態の静電荷像現像用マゼンタトナーを少なくとも収容しているトナーカートリッジである。本実施形態に使用されるトナーカートリッジは、本実施形態の静電荷像現像用マゼンタトナーを静電荷像現像剤として収納しているのが好ましい。
また、本実施形態に用いられるプロセスカートリッジは、像保持体表面上に形成された静電潜像を前記静電荷像現像用マゼンタトナー又は前記静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、像保持体、前記像保持体表面を帯電させるための帯電手段、及び、前記像保持体表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段よりなる群から選ばれる少なくとも1種と、を備え、本実施形態の静電荷像現像用マゼンタトナー、又は、本実施形態の静電荷像現像剤を少なくとも収容しているプロセスカートリッジであることが好ましい。
【0087】
本実施形態に用いられるトナーカートリッジは、画像形成装置に着脱可能であることが好ましい。すなわち、トナーカートリッジが着脱可能な構成を有する画像形成装置において、本実施形態のトナーを収納したトナーカートリッジが好適に使用される。
また、本実施形態に用いられるトナーカートリッジは、トナー及びキャリアを収納するカートリッジであってもよく、トナーを単独で収納するカートリッジとキャリアを単独で収納するカートリッジとを別体としたものでもよい。
【0088】
本実施形態に用いられるプロセスカートリッジは、画像形成装置に脱着されることが好ましい。プロセスカートリッジは、その他必要に応じて、除電手段等、その他の部材を含んでもよい。
本実施形態に用いられるトナーカートリッジ及びプロセスカートリッジとしては、公知の構成を採用してもよく、例えば、特開2008−209489号公報、及び、特開2008−233736号公報等が参照される。
【0089】
(画像形成装置の例)
本実施形態に用いられる画像形成装置の一例について図1を参照しながら説明するが、何ら本実施形態を限定するものではない。図1は本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略断面図である。
【0090】
図1において、複写機により構成された画像形成装置U1の上端のプラテンガラスPG上面には、自動原稿搬送装置U2が載置されている。前記自動原稿搬送装置U2は、複写しようとする複数の原稿Giが重ねて載置される原稿給紙トレイTG1を有している。前記原稿給紙トレイTG1に載置された複数の各原稿Giは、順次プラテンガラスPG上の複写位置を通過して原稿排紙トレイTG2に排出されるように構成されている。前記自動原稿搬送装置U2は、その後端部(−X端部)に設けた左右方向に延びるヒンジ軸(図示せず)により前記画像形成装置U1に対して回動可能であり、原稿Giを作業者が手でプラテンガラスPG上に置く際に上方に回動される。
【0091】
前記画像形成装置U1は、ユーザがコピースタート等の作動指令信号を入力操作するUI(ユーザインタフェース)を有している。画像形成装置U1上面の透明なプラテンガラスPGの下方に配置された原稿読取装置IITは、プラテンレジ位置(OPT位置)に配置された露光系レジセンサ(プラテンレジセンサ)Sp、及び露光光学系Aを有している。前記露光光学系Aは、その移動及び停止が露光系レジセンサSpの検出信号により制御され、常時はホーム位置に停止している。前記自動原稿搬送装置U2によりプラテンガラスPG上面の露光位置を通過する原稿Gi又は手動でプラテンガラスPG上に置かれた原稿からの反射光は、前記露光光学系Aを介して、固体撮像素子CCDでR(赤)、G(緑)、B(青)の電気信号に変換される。
【0092】
イメージプロセッシングシステムIPSは、固体撮像素子CCDから入力される前記RGBの電気信号をK(黒)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の画像データに変換して一時的に記憶し、前記画像データを所定のタイミングで潜像形成用の画像データとしてレーザー駆動回路DLに出力する。レーザー駆動回路DLは、入力された画像データに応じてレーザー駆動信号を潜像形成装置ROSに出力する。前記イメージプロセッシングシステムIPS及びレーザー駆動回路DLの作動は、マイコンにより構成されたコントローラCにより制御される。
【0093】
像保持体PRは矢印Ya方向に回転しており、その表面は、次に帯電機(チャージロール)CRにより一様に帯電された後、潜像書込位置Q1において潜像形成装置ROSのレーザビームLにより露光走査されて静電潜像が形成される。フルカラー画像を形成する場合は、K(黒)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の4色の画像に対応した静電潜像が順次形成され、モノクロ画像の場合はK(黒)画像に対応した静電潜像のみが形成される。
【0094】
前記静電潜像が形成された像保持体PR表面は、回転移動して現像領域Q2、1次転写領域Q3を順次通過する。ロータリ式の現像装置Gは、回転軸Gaの回転に伴って前記現像領域Q2に順次回転移動するK(黒)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の4色の現像機GK、GY、GM、GCを有している。前記各色の現像機GK、GY、GM、GCは、前記現像領域Q2に現像剤を搬送する現像ロールGRを有しており、現像領域Q2を通過する像保持体PR上の静電潜像をトナー像に現像する。前記各現像機GK、GY、GM、GCの現像容機にはカートリッジ装着部Hk、Hy、Hm、Hc(図1参照)に装着されたトナー補給用カートリッジから各色のトナーが補給されるように構成されている。なお、このようなロータリ式現像装置は、例えば、特開2000−131942号公報、特開2000−231250号公報等に記載されている。
【0095】
前記像保持体PRの下方には中間転写ベルトBと、ベルト駆動ロールRd、テンションロールRt、ウォーキングロールRw、アイドラロール(フリーロール)Rf及びバックアップロールT2aを含む複数のベルト支持ロール(Rd,Rt,Rw,Rf,T2a)と、1次転写ロールT1と、それらを支持するベルトフレーム(図示せず)とを有している。そして、前記中間転写ベルトBは前記ベルト支持ロール(Rd,Rt,Rw,Rf,T2a)により回転移動可能に支持されており、画像形成装置動作時には矢印Yb方向に回転する。
【0096】
フルカラー画像を形成する場合、潜像書込位置Q1において第1色目の静電潜像が形成され、現像領域Q2において1色目のトナー像Tnが形成される。このトナー像Tnは、1次転写領域Q3を通過する際に、1次転写ロールT1によって中間転写ベルトB上に静電的に1次転写される。その後同様にして、第1色目のトナー像Tnを担持した中間転写ベルトB上に、第2色目、第3色目、第4色目のトナー像Tnが順次重ねて1次転写され、最終的にフルカラーの多重トナー像が中間転写ベルトB上に形成される。単色のモノカラー画像を形成する場合には1個の現像機のみを使用し、単色トナー像が中間転写ベルトB上に1次転写される。1次転写後、像保持体PR表面は、残留トナーが除電機JRにより除電され、像保持体クリーナCL1によりクリーニングされる。
【0097】
前記バックアップロールT2aの下方には、2次転写ロールT2bが前記バックアップロールT2aに対して離隔した位置と接触した位置との間で移動可能に配置されている。前記バックアップロールT2a及び2次転写ロールT2bにより2次転写器T2が構成されている。前記バックアップロールT2a及び2次転写ロールT2bの接触領域により2次転写領域Q4が形成されている。前記2次転写ロールT2bには、現像装置Gで使用するトナーの帯電極性と逆極性の2次転写電圧が電源回路Eから供給され、前記電源回路EはコントローラCにより制御される。
【0098】
給紙トレイTR1又はTR2に収容された記録シートSは、所定のタイミングでピックアップロールRpにより取り出され、さばきロールRsで1枚ずつ分離されて、給紙路SH1の複数の搬送ロールRaによりレジロールRrに搬送される。前記レジロールRrに搬送された記録シートSは、前記1次転写された多重トナー像又は単色トナー像が2次転写領域Q4に移動するのにタイミングを合わせて、転写前シートガイドSG1から2次転写領域Q4に搬送される。前記2次転写領域Q4において前記2次転写器T2は、中間転写ベルトB上のトナー像を記録シートSに静電的に2次転写する。2次転写後の中間転写ベルトBは、ベルトクリーナCL2により残留トナーが除去される。前記像保持体PR、帯電ロールCR、現像装置G、1次転写ロールT1、中間転写ベルトB、2次転写器T2等により、記録シートSにトナー像を転写して形成するトナー像形成装置(PR+CR+G+T1+B+T2)が構成されている。
【0099】
なお、前記2次転写ロールT2b及びベルトクリーナCL2は、中間転写ベルトBと離接(離隔及び接触)自在に配設されており、カラー画像が形成される場合には最終色の未定着トナー像が中間転写ベルトBに1次転写されるまで、中間転写ベルトBから離隔している。なお、前記2次転写ロールクリーナCL3は、前記2次転写ロールT2bと一緒に中間転写ベルトBに対して離接移動を行う。トナー像が2次転写された前記記録シートSは、転写後シートガイドSG2、シート搬送ベルトBHにより定着領域Q5に搬送される。定着領域Q5は定着装置Fの加熱ロールFhと加圧ロールFpとが圧接する領域(ニップ)であり、定着領域Q5を通過する記録シートSは、定着装置Fにより加熱定着される。加熱ロールFhは、例えば金属材により形成されたものである。
【0100】
図1において、記録シートSのトナー像を定着する定着領域Q5の下流側には、駆動ロール16aと従動ロール16bとを有するシート搬送ロール16、駆動ロールRb1と従動ロールRb2とを有するシート搬送ロールRb、及びシート排出路SH2が順次設けられている。シート排出路SH2には、シート反転路SH3が接続されている。前記シート排出路SH2及びシート反転路SH3の分岐点には、切替ゲートGT1が設けられている。シート排出路SH2に搬送された記録シートSは、複数の搬送ロールRaによりシート排出ロールRhに搬送され、画像形成装置U1の上端部に形成されたシート排出口Kaから排紙トレイTR3に排出される。前記シート反転路SH3にはシート循環路SH4が接続されており、その接続部にはシート状部材により構成されたマイラゲートGT2が設けられている。前記マイラゲートGT2は、前記切替ゲートGT1からシート反転路SH3を搬送されてきた記録シートSをそのまま通過させると共に、一旦通過してからスイッチバックして来た記録シートSを、シート循環路SH4側に向かわせる。シート循環路SH4に搬送された記録シートSは前記給紙路SH1を通って前記転写領域Q4に再送される。前記符号SH1〜SH4で示された要素によりシート搬送路SHが構成されている。前記シート搬送路SH及びそこに配置されたシート搬送機能を有するロールRa、Rh等によりシート搬送装置USが構成されている。
【実施例】
【0101】
以下、実施例を交えて詳細に本実施形態を説明するが、何ら本実施形態を限定するものではない。なお、以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り「重量部」を示すものとする。
【0102】
(樹脂粒子分散液の調製)
(非晶性ポリエステル樹脂(1)の作製)
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 10部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 90部
・テレフタル酸 40部
・フマル酸 40部
・ドデセニルコハク酸 20部
撹拌装置、窒素導入管を備えた反応槽(フラスコ)に上記のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した後、ジステアリン酸スズの0.9重量%を投入した。更に生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃で更に3時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移温度が60℃、酸価13.6mgKOH/g、重量平均分子量が16,000、数平均分子量6,000の非晶性ポリエステル樹脂(1)を得た。
【0103】
(非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(1)の作製)
・非晶性ポリエステル樹脂(1) 100部
・メチルエチルケトン(溶剤) 60部
・イソプロピルアルコール(溶剤) 15部
セパラブルフラスコにメチルエチルケトンを投入し、その後上記樹脂を徐々に投入して、スリーワンモーターで撹拌を施し、完全に溶解させて油相を得た。この油相の入ったセパラブルフラスコはウォーターバスにより40℃に設定し、更に撹拌されている油相に10%アンモニア水溶液を合計で3.5部となるようにスポイトで徐々に滴下し、更にイオン交換水230部を10部/minの速度で徐々に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、非晶性ポリエステル樹脂(1)からなる非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(1)を得た。この樹脂粒子の体積平均粒径は、175nmであった。樹脂粒子固形分量はイオン交換水で調整して20%とした。
【0104】
(顔料分散液Iの調製)
・マゼンタ顔料(BASF社製、Pigment Red 282(PR282)、Irgazin(商標)Magenta2012)) 50部
・アニオン性界面活性剤(テイカ(株)製、テイカパワー) 4部
・イオン交換水 200部
上記の顔料、界面活性剤及びイオン交換水を混合し、溶解し、高圧式分散機((株)スギノマシン製、アルチマイザーHPJ30006)を用いて2時間分散して、顔料を分散させてなる顔料分散液Iを調製した。顔料分散液Iにおける顔料の体積平均粒子径は140nm、固形分濃度は25重量%であった。
顔料の体積平均粒子径は、日機装(株)製のマイクロトラックUPAのセル中に純度99.9%のエタノールを使用する測定方法(溶媒屈折率1.36/粒子屈折率1.80)により測定した。
【0105】
(離型剤分散液Iの調製)
・フィッシャートロプシュ ワックス(日本精蝋(株)製、FT−0070、融解温度74℃) 50部
・イオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK) 1部
・イオン交換水 200部
以上を混合して80℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した。その後、高圧ホモジナイザ(ゴーリン社製)で分散処理し、離型剤を分散させてなる離型剤分散液I(固形分濃度:25重量%)を調製した。離型剤の平均粒子径は200nmであった。離型剤粒径は、日機装(株)製のマイクロトラックUPAを用いて、セル内を水で満たした動的光散乱法(ナノトラック法、溶媒屈折率1.333/粒子屈折率1.80)により測定した。
【0106】
(活性水素を含む基と反応可能な部位を有する重合体(イソシアナト基含有ポリエステルプレポリマー)の調製)
イソシアナト基含有ポリエステルプレポリマーは、次のようにして合成した。
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 5部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 60部
・テレフタル酸 40部
・フマル酸 40部
・ドデセニルコハク酸 20部
冷却管、撹拌機、及び窒素導入管を備えた反応槽に、上記原材料をそれぞれ投入し、常圧窒素気流下180℃で6時間縮合反応した後で10〜20mmHgの減圧下220℃で3時間脱水縮合反応を行った。その後反応物を90℃に冷却し、酢酸エチル中イソホロンジイソシアネート150部と3時間反応を行いイソシアナト基含有ポリエステルプレポリマーを得た。
【0107】
(実施例1)
<静電荷像現像用マゼンタトナーの作製>
−分散工程−
・イソシアナト基含有ポリエステルプレポリマー 100部
・活性水素を含む基を有する化合物(ジエチルトルエンジアミン) 30部
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(1) 770部
・顔料分散液I 200部
・離型剤分散液I 200部
・酢酸エチル 80部
上記原料をフラスコに入れ2時間溶融混合した後で、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)を用い、ホモジナイザーの回転数を5,000rpmにして、せん断力を加えながら10分間分散して混合し、原料油相分散液とした。
【0108】
−伸長樹脂製造工程−
その後、撹拌装置、温度計を備えた反応容器に前記原料油相分散液を移し、ヒーターにて加熱し始め、65℃にて、活性水素を含む基を有する化合物(ジエチルトルエンジアミン)と前述で調製したイソシアナト基含有ポリエステルプレポリマーとを反応させ伸長樹脂を得る反応を促進させ、樹脂の伸長を行った。前記反応液を85℃に保持して2時間ほど反応継続し、樹脂の伸長を促進させた。
【0109】
−脱溶剤工程、洗浄乾燥工程−
伸長樹脂製造工程後の反応液から、窒素バブリング(反応液を25℃で撹拌しながら、流量600〜700N/minに保ちながらノズルから窒素を噴出する)の方法により、25℃12時間かけ溶剤の酢酸エチルを除去した。その後、脱溶剤後のトナー粒子を、40℃18時間かけ乾燥させた。
【0110】
−外添剤付着工程−
前記乾燥後のトナー粒子100部と、平均粒子径15nmのデシルシラン処理の疎水性チタニア0.8部、平均粒子径30nmの疎水性シリカ(NY50、日本アエロジル(株)製)1.1部、平均粒子径100nmの疎水性シリカ(X24、信越化学工業(株)製)1.0部をヘンシェルミキサーを用い周速32m/sで10分間ブレンドをおこなった後、45μm網目のシーブを用いて粗大粒子を除去し、外添カラートナー1(静電荷像現像用マゼンタトナー)を得た。
【0111】
前記外添カラートナー1の体積平均粒子径は4.5μmであった。
トナー粒子径の測定は、ベックマン・コールター(株)製のマルチサイザー3(測定部アパーチャー径50μm)を用いて、測定した。
得られたトナー中に分散された顔料PR282の分散粒子径(平均値)は、日立協和エンジニアリング(株)製のS−4800(STEM)により観察されたトナー断面写真を用いて測定した。分散粒子径の平均値は、トナー断面写真から測定された顔料部分の最長径の平均値をとり顔料分散粒子径の平均値とした。前述で得られた外添カラートナー1中に分散した顔料PR282の分散粒子径の平均値は、150nmであった。
【0112】
<キャリアの作製>
・フェライト(重量平均粒子径35μm) 100部
・トルエン 13.5部
・メチルメタアクリレート/パーフルオロオクチルメタクリレート共重合体(重合比90/10、重量平均分子量49,000) 2.3部
・カーボンブラック(VXC72、キャボット社製) 0.3部
・エポスターS(メラミン樹脂粒子、(株)日本触媒製) 0.3部
フェライトを除く上記成分をサンドミルにて1時間分散して樹脂被覆層形成用溶液を作製した。次にこの樹脂被覆層形成用溶液とフェライトを真空脱気型ニーダーに入れて、温度60℃で減圧しながら20分撹拌してフェライト上に樹脂被覆層を形成し、キャリアを得た。
【0113】
<静電荷像現像剤の作製>
前記静電荷像現像用マゼンタトナー60重量部と上記で得られたキャリア540重量部をVブレンダーに入れ20分間撹拌した後、212μmメッシュで篩分し、静電荷像現像剤を作製した。
【0114】
得られた静電荷像現像用マゼンタトナー及び静電荷像現像剤を用いて下記に示した通りに画像を作製し、下記の彩度及び色相角の測定、光沢度の測定、画像ひびの測定、及び環境依存性の評価(帯電の測定)を行った。
【0115】
<彩度、色相角の測定>
温度25℃、湿度60%の環境室内で、富士ゼロックス(株)製DocuCentreColor400CPの本体、現像器、トナーカートリッジを、それまでにセットされていた現像剤及びトナーを充分に除去して清掃した後、前述で作製した静電荷像現像剤を現像器に、補給用トナーを各トナーカートリッジに投入した。マゼンタ現像器を、DocuCentreColor400CPの元々マゼンタ現像器がセットされていた位置にセットした。
次に、OKトップコート紙上の単色100%画像の現像トナー量を3.0g/m2に調整し、3cm×2cmの大きさからなるマゼンタトナー100%からなる単色画像を作製し、得られたマゼンタ画像の色域(L***)を測定した。測定には、X−Rite939(アパーチャー4mm、X−Rite社製)を用いて、マゼンタ画像面内をランダムに10回測定し平均値を色域(L***)とした。得られた色域(L***)から、彩度(C*)及び色相角(H)を、以下の式にて算出した。
*=((a*2+(b*21/2
H=tan-1(b*/a*
【0116】
<光沢度の測定>
光沢度測定用の試料を、OKトップコート紙上の単色100%画像の現像トナー量を3.0g/m2に調整し、3cm×2cmの大きさからなるマゼンタトナー100%からなる単色画像を作製し、160℃で定着した。
測定方法は、上記画像を偏角光沢計(スガ試験機(株)製、デジタル変角光沢計)にて、60℃光沢度を測定した。
評価基準は下記の通りであり、許容レベルは◎、○、△であった。
◎:60°光沢度が80以上であった。
○:60°光沢度が65以上80未満であった。
△:60°光沢度が45以上65未満であった。
×:60°光沢度が45未満であった。
【0117】
<画像ひびの測定>
画像ひびの評価は、1インチ四方(2.54cm×2.54cm)のベタ画像部分を内側に印字面が重なるように曲げ、その上から円柱ブロックを円周方向に転がすことにより、250g/cmの線圧にて荷重を掛けて折り曲げた後に、重ね折りした印字面を開き、折り曲げ部分をレーヨンウールに荷重120g/cm2を掛けて往復させて、はがれた画像部の拭き取りを行い、像破損部分を目視にて評価した。判定×については、印字不良と判断した。
◎:極めて良好(破損なし)
○:良好(破損が点在する状態)
△:普通(破損が部分的に繋がっている点線状態)
×:悪い(破損部分が繋がった線状態)
【0118】
<環境依存性の評価>
環境依存性の評価用の試料を、ターブラ瓶にトナー1.8gとキャリア28.2gをそれぞれ秤量して作製した。
評価は、上記瓶を環境室内でターブラ撹拌して行う。このとき温度25℃/湿度85Rhの高温高湿条件に設定した環境室1、温度10℃/湿度25Rhの低温低湿条件に設定した環境室2でそれぞれ30分撹拌し、撹拌したサンプルの帯電値を摩擦帯電量測定器(東芝ケミカル(株)製TB−200型)を用い測定した。帯電量はこのときの環境室1での帯電測定値をQ1(μC/g)、環境室2での帯電測定値をQ2(μC/g)としたときに、帯電比=Q1÷Q2で表し、この比を評価指標とした。
評価基準は下記の通りであり、許容レベルは◎、○、△であった。
◎:帯電比は、0.85以上であった。
○:帯電比は、0.70以上0.85未満であった。
△:帯電比は、0.60以上0.70未満であった。
×:帯電比は、0.60未満であった。
【0119】
(実施例2、3)
顔料の含有量を20重量%、5重量%に変更する以外は、実施例1と同様にして静電荷像現像用マゼンタトナー及び静電荷像現像剤を調製し、評価した。評価結果を表1に示した。
【0120】
(実施例4、5)
顔料の分散粒子径(平均値)を前記高圧式分散機の分散時間を1時間にして200nmとし、また分散時間延長して100nmへと変更する以外は、実施例1と同様にして静電荷像現像用マゼンタトナー及び静電荷像現像剤を調製し、評価した。評価結果を表1に示した。
【0121】
(実施例6、7)
離型剤の含有量を20重量%、5重量%に変更する以外は、実施例1と同様にして静電荷像現像用マゼンタトナー及び静電荷像現像剤を調製し、評価した。評価結果を表1に示した。
【0122】
(実施例8、9)
融点が100℃、60℃である離型剤(ポリワックス655、融点100℃、ベーカーペトロライト社製;パラフィンワックスSP−1039、融点60℃、日本精蝋(株)製)を使用した以外は、実施例1と同様にして静電荷像現像用マゼンタトナー及び静電荷像現像剤を調製し、評価した。評価結果を表1に示した。
【0123】
(比較例1、2)
顔料の含有量を30重量%、2重量%に変更する以外は、実施例1と同様にして静電荷像現像用マゼンタトナー及び静電荷像現像剤を調製し、評価した。評価結果を表1に示した。
【0124】
(比較例3、4)
顔料の分散粒子径(平均値)を前記高圧式分散機の分散時間を40分間にして300nm、また分散時間延長して50nmに変更する以外は、実施例1と同様にして静電荷像現像用マゼンタトナー及び静電荷像現像剤を調製し、評価した。評価結果を表1に示した。
【0125】
(比較例5、6)
離型剤の含有量を30重量%、2重量%に変更する以外は、実施例1と同様にして静電荷像現像用マゼンタトナー及び静電荷像現像剤を調製し、評価した。評価結果を表1に示した。
【0126】
(比較例7、8)
融点が122℃、47℃である離型剤(ハイワックス200P、融点122℃、三井化学(株)製;パラフィンワックス115、融点47℃、日本精蝋(株)製)を使用した以外は、実施例1と同様にして静電荷像現像用マゼンタトナー及び静電荷像現像剤を調製し、評価した。評価結果を表1に示した。
【0127】
【表1】

【符号の説明】
【0128】
U1:画像形成装置、PG:プラテンガラス、U2:自動原稿搬送装置、Gi:原稿、TG1、TG2:トレイ、IIT:原稿読取装置、Sp:露光系レジセンサ、A:露光光学系、CCD:固体撮像素子、IPS:イメージプロセッシングシステム、DL:レーザー駆動回路、ROS:潜像形成装置、C:コントローラ、PR:像保持体、CR:帯電器、Q1:潜像書込位置、Q2:現像領域、Q3:1次転写領域、G:ロータリ式の現像装置、Ga:回転軸、GK、GY、GM、GC:4色の現像器、GR:現像ロール、Hk、Hy、Hm、Hc:カートリッジ装着部、B:中間転写ベルト、Rd:ベルト駆動ロール、Rt:テンションロール、Rw:ウォーキングロール、Rf:アイドラロール、T2a:バックアップロール、T1:1次転写ロール、JR:除電器、CL1:像保持体クリーナ、T2b:2次転写ロール、T2:2次転写器、Q4:2次転写領域、E:電源回路、S:記録シート、Rp:ピックアップロール、Rs:さばきロール、SH1:給紙路、Ra:搬送ロール、Rr:レジロール、SG1:転写前シートガイド、CL2:ベルトクリーナ、CL3:2次転写ロールクリーナ、SG2:転写後シートガイド、BH:シート搬送ベルト、Q5:定着領域、F:定着装置、Fh:加熱ロール、Fp:加圧ロール、16a:駆動ロール、16b:従動ロール、16:シート搬送ロール、Rb1:駆動ロール、Rb2:従動ロール、Rb:シート搬送ロール、SH2:シート排出路、SH3:シート反転路、GT1:切替ゲート、Ra:搬送ロール、Rh:シート排出ロール、Ka:シート排出口、TR3:排紙トレイ、SH4:シート循環路、GT2:マイラゲート、SH:シート搬送路、US:シート搬送装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CIE L***色空間の色相角−11±0.5°に最大彩度が75以上の色域を有する画像を形成することを特徴とする
静電荷像現像用マゼンタトナー。
【請求項2】
結着樹脂及び顔料を含有し、前記結着樹脂がポリエステル樹脂を含み、前記顔料がC.I.ピグメントレッド282(PR282)を含み、PR282の含有量が全重量の5〜20重量%である、請求項1に記載の静電荷像現像用マゼンタトナー。
【請求項3】
PR282の分散粒子径の平均値が100〜200nmである、請求項2に記載の静電荷像現像用マゼンタトナー。
【請求項4】
融点が60〜100℃である離型剤を更に含有し、離型剤の含有量が全重量の5〜25重量%である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の静電荷像現像用マゼンタトナー。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の静電荷像現像用マゼンタトナーとキャリアとを含むことを特徴とする
静電荷像現像剤。
【請求項6】
ポリエステル樹脂、離型剤、活性水素を含む基を有する化合物、前記活性水素を含む基と反応可能な部位を有する重合体、顔料及び溶剤を含む油相を調製し、更に水相を加えて乳化分散しトナー粒子の油滴を作製する分散工程、
前記油滴中で前記化合物と前記重合体とを重付加反応させて伸長樹脂を得る伸長樹脂製造工程、
前記伸長樹脂製造工程と同時及び/又は前記伸長樹脂製造工程の後に前記トナー粒子の油滴中の溶剤を除去する脱溶剤工程、並びに、
脱溶剤した前記トナー粒子の表面を洗浄後、前記トナー粒子内部の水分を除去する洗浄乾燥工程、を含むことを特徴とする
請求項1〜4のいずれか1つに記載の静電荷像現像用マゼンタトナーの製造方法。
【請求項7】
像保持体を帯電させる帯電工程、
帯電された前記像保持体を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成工程、
前記静電潜像を、トナーを含む現像剤を用いて現像し、現像像を形成する現像工程、
前記現像像を、基材上に転写し転写像を形成する転写工程、及び、
前記転写像を定着する定着工程、を含み、
前記トナーが請求項1〜4のいずれか1つに記載の静電荷像現像用マゼンタトナー、又は、前記現像剤が請求項5に記載の静電荷像現像剤であることを特徴とする
画像形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−76742(P2013−76742A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215080(P2011−215080)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】