説明

静電霧化装置

【課題】オゾンの発生を抑制しつつ、多量の帯電微粒子水を発生させることができる静電霧化装置を提供する。
【解決手段】放電電極1を備える。放電電極1に液体13を供給する液供給手段を備える。放電電極1に供給された液体13に電圧を印加して静電霧化を生じさせる電圧印加手段4を備える。電圧印加手段4による電圧印加時において、前記電圧印加によって生じる電界の強度を周期的に変化させる電界強度制御手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電微粒子水を発生させる静電霧化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、静電霧化装置が開示されている。この静電霧化装置は、霧化電極と、霧化電極に対向する対向電極と、霧化電極の先端に液体を搬送する搬送供給体を備え、霧化電極の先端と対向電極の間に電圧を印加することで、霧化電極の先端に搬送された液体を静電霧化して帯電微粒子水を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−272092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示す静電霧化装置において、多量の帯電微粒子水を発生させるには、液体に大きなエネルギーを与えるために霧化電極の先端と対向電極の間に印加される電圧を大きくすることが考えられる。しかし、このように印加電圧を大きくすると、静電霧化現象と共に生じる放電現象によってオゾンが多く発生し、帯電微粒子水と共に外部に放出されることが懸念される。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、オゾンの発生を抑制しつつ、多量の帯電微粒子水を発生させることができる静電霧化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の静電霧化装置は、放電電極と、この放電電極に液体を供給する液供給手段と、前記放電電極に供給された液体に電圧を印加して静電霧化を生じさせる電圧印加手段を備えた静電霧化装置であって、前記電圧印加手段による電圧印加時において、前記電圧印加によって生じる電界の強度を周期的に変化させる電界強度制御手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、前記電界制御手段が、前記電圧印加によって生じる電界の強度を周波数0.1〜10Hzで周期的に変化させることが好ましい。
【0008】
また、前記放電電極に対向する対向電極を備えることが好ましい。
【0009】
また、前記電界強度制御手段が、前記電圧印加手段により前記液体に印加される電圧を周期的に変化させて、前記電圧印加によって生じる電界の強度を周期的に変化させることが好ましい。
【0010】
また、前記電界強度制御手段が、前記放電電極と前記対向電極の間隔を変動させて、前記電圧印加によって生じる電界の強度を周期的に変化させることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明にあっては、オゾンの発生を抑制しつつ、多量の帯電微粒子水を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第一実施形態の静電霧化装置を示す説明図である。
【図2】同上のペルチェユニットを示す断面図である。
【図3】電圧印加手段によって印加される電圧を正方向の最大値が負となるものとしたときの電圧波形を示すグラフである。
【図4】電圧印加手段によって印加される電圧を正方向の最大値が0Vとなるものとしたときの電圧波形を示すグラフである。
【図5】第一実施形態及び比較例の帯電微粒子水の発生量の経時的変化を示すグラフである。
【図6】第二実施形態の静電霧化装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
(第一実施形態)
図1に示す第一実施形態の静電霧化装置は、放電電極1と、放電電極1に対向する対向電極2と、放電電極1に液体13を供給するペルチェユニット7で構成された液供給手段と、放電電極1に供給された液体13に電圧を印加して静電霧化を生じさせる電圧印加手段4を備えている。
【0015】
放電電極1は棒状に形成されてその先端部が霧化部となる。対向電極2は円環状に形成され、放電電極1の先端に対向する位置に設けられており、接地されている。
【0016】
液供給手段を構成するペルチェユニット7には、冷却部を構成する絶縁板5と、放熱部を構成する放熱フィン6が設けられている。
【0017】
ペルチェユニット7は、図2に示すように、一対のペルチェ回路板8と、両ペルチェ回路板8で挟持されたBiTe系の熱電素子9とで構成されている。各ペルチェ回路板8は、熱伝導性の高いアルミナや窒化アルミニウムからなる絶縁板の片面側に回路を形成したものであり、両ペルチェ回路板8は互いの回路が向き合うように対向している。熱電素子9は両ペルチェ回路板8の間において多数並べて設けられており、隣接する熱電素子9同士は両側の前記ペルチェ回路板8の回路で電気的に接続されている。
【0018】
一方のペルチェ回路板8の外側には絶縁板5が接続され、他方のペルチェ回路板8の外側には放熱フィン6が接続されている。図1に示すように、絶縁板5のペルチェユニット7と反対側の面には放電電極1が立設され、この放電電極1は絶縁板5を介して前記一方のペルチェ回路板8に熱的に接続されている。
【0019】
ペルチェユニット7の熱電素子9に図示しないペルチェ入力リード線を介して通電がなされると、絶縁板5が設けられた一方のペルチェ回路板8側から放熱フィン6が設けられた他方のペルチェ回路板8側に向けて熱が移動し、これによって絶縁板5が冷却される。そして、このように絶縁板5が冷却されることで放電電極1が冷却され、これにより空気中の水蒸気が放電電極1の先端部に結露して放電電極1に水(結露水)が付着する。
【0020】
電圧印加手段4は放電電極1に接続されている。放電電極1には電圧印加手段4から負の電圧が印加される。この印加電圧は、図3に示すように周期的に変化するものであって、その周波数は前記放電電極1に供給される水の固有振動数である0.1〜10Hzに設定される。なお、図3の例では正方向の最大値が負に設定されているが、図4の例のように正方向の最大値が0Vであってもよい。また、前記印加電圧の波形は正弦波に限定されるものではない。
【0021】
本実施形態の静電霧化装置を用いて静電霧化を生じさせるには、ペルチェユニット7を駆動して前述のように放電電極1の先端部に結露水を供給しつつ、電圧印加手段4によって放電電極1に前記電圧を印加する。すると、放電電極1と対向電極2との間に印加された電圧により、放電電極1の先端部に保持された水と対向電極2との間にクーロン力が働き、水の液面が局所的に錐状に盛り上がり(テーラーコーン)が形成される。このテーラーコーンの先端には電荷が集中してこの部分における電界強度が大きくなって、当該部分に生じるクーロン力が大きくなり、更にテーラーコーンを成長させる。そして、このようにテーラーコーンが成長してテーラーコーンの先端に電荷が集中すると、テーラーコーンの先端部分の水が大きなエネルギー(高密度となった電荷の反発力)を受け、表面張力を超えて分裂・飛散を繰り返す。これにより負に帯電したナノメータサイズの帯電微粒子水が発生する。
【0022】
このように生成された帯電微粒子水はナノメータサイズのミストであって非常に小さいため、長時間浮遊し、また、拡散性も高い。また、この帯電微粒子水はヒドロキシラジカルやスーパーオキサイド等の活性種を有しているため、臭いの成分やアレルゲン物質、ウイルスや菌を効果的に分解、不活性化あるいは抑制あるいは除菌することができる。
【0023】
ここで、本実施形態では、前記静電霧化を生じさせるにあたって、電圧印加手段4が放電電極1に対して周期的に変化する電圧を印加しているため、これに応じて前記電圧印加によって生じる電界の強度も周期的に変化する。すなわち、本実施形態では、電圧印加手段4が、前記電圧印加時に生じる電界の強度を周期的に変化させる電界強度制御手段を構成している。この構成により、前記放電電極1の先端部に保持される水は周期的に変化する電界強度の変化に応じてその全体が放電電極1の長手方向に大きく伸縮し、収縮時には静電霧化現象が生じ難くなるが、伸長時にはテーラーコーンが電界の作用によって引きちぎられて多量の帯電微粒子水が発生するようになる。
【0024】
図5は帯電微粒子水の発生量の時間的変化を示すグラフであり、図における破線は、電圧印加手段4によって放電電極1に図3に示す周期的な電圧を印加したときを示し、実線は放電電極1に図3に示す電圧の中心値と同じ直流電圧を印加したときを示している。図からも明らかなように、本実施形態において放電電極1に図3に示す電圧を印加した場合、電圧が低くなるときには帯電微粒子水の発生量が少なくなるものの、電圧が高くなるときには帯電微粒子水は最大で4倍程度発生するまた、総体的に見ても図3に示す電圧を印加する場合、直流電圧を印加する場合よりも多くの帯電微粒子水が発生する。また、このように電圧印加手段4から放電電極1に保持された液体13にかかるエネルギーは多量の帯電微粒子水の発生に用いられるため、オゾンの発生量を抑えることができる。また、放電電極1に印加される電圧が周期的に変化して、放電電極1に保持された液体13に印加される電圧は一時的に放電開始電圧を下回るため、アーク放電が継続して生じることが防止される。このため、電圧印加時に放電の制御が不能になったり、音鳴りが生じたりすることも防止できる。
【0025】
また、本実施形態では、電圧印加によって生じる電界の強度を0.1〜10Hzの周波数で周期的に変化させる。このため、前記放電電極1の先端部に保持される水をより大きく変形させることができ、帯電微粒子水をより多く発生させることができる。
【0026】
なお、本実施形態の対向電極2は放電電極1との間の電界強度を高めて帯電微粒子水を多量に発生させるために設けたものであり、省略可能である。
【0027】
また、本実施形態では、電圧印加手段4から放電電極1に電圧を印加したが、上記実施形態と同様の高周波の電圧が放電電極1に供給された液体13にかかるように対向電極2に電圧を印加しても構わない。すなわち、電圧印加手段4は放電電極1に供給された液体13に前記高周波の電圧を印加するものであればよい。
【0028】
(第二実施形態)
次に第二実施形態について説明する。なお、以下の説明では第一実施形態と同一の構成については同一の番号を付与し、重複する説明は省略する。
【0029】
図6に示す本実施形態の静電霧化装置は、放電電極1と対向電極2の間隔を変動させて、前記電界強度を周期的に変化させるようにしてある。
【0030】
この静電霧化装置の対向電極2は、ばね10を介して保持部11に接続されることで保持部11に吊り下げられて保持されており、放電電極1の長手方向に移動可能となっている。対向電極2に対して放電電極1と反対側に位置する保持部11の下面において、対向電極2の中央部に対向する位置には電磁石12が設けられている。
【0031】
電磁石12は、通電がなされると磁性体である対向電極2を引き寄せる方向に磁力を発生させる。この電磁石12への通電量は図示しない制御手段により制御されるようになっている。すなわち、電磁石12に通電がなされると、対向電極2は電磁石12の磁力によりばね10の弾性力に抗って放電電極1の先端部から離れる方向に移動する。また、この通電状態から電磁石12への通電を停止あるいは通電量を小さくすると、電磁石12の磁力が無くなる又は小さくなり、これにより対向電極2は自重及びばね10の弾性力により放電電極1の先端部に近づく方向に移動する。
【0032】
また、電圧印加手段4は放電電極1に対して周期的に変化する電圧ではなく負の直流電圧を印加する。
【0033】
本実施形態において、静電霧化を生じさせるには、第一実施形態と同様にペルチェユニット7を駆動して放電電極1の先端部に結露水を供給しつつ、電圧印加手段4によって放電電極1に前記直流電圧を印加する。また、このとき、図示しない制御手段が電磁石12への通電量を周期的に変化させて対向電極2を放電電極1の長手方向に振動させる。具体的に制御手段は、前記対向電極2の振動周波数が放電電極1に供給される水の固有振動数である0.1〜10Hzになるように設定されている。
【0034】
上記のように対向電極2が振動すると、放電電極1と対向電極2の間隔が周期的に変化し、これにより放電電極1と対向電極2の間に形成される電界の強度は0.1〜10Hzの周波数で周期的に変化する。すなわち、本実施形態では、前記放電電極1と対向電極2の間隔を変動させる電磁石12によって、電界強度を周期的に変化させる電界強度制御手段が構成されている。
【0035】
このように本実施形態でも、放電電極1と対向電極2の間に形成される電界の強度を周期的に変化させることができるので、第一実施形態と同様に多くの帯電微粒子水を発生させることができる。
【0036】
なお、放電電極1と対向電極2の間隔を変動させる手段としては電磁石12以外のものを用いてもよい。
【0037】
また、前記各実施形態では、電界強度を0.1〜10Hzの周波数で周期的に変化させたが、この周波数は前記範囲外であってもよい。また、液供給手段はペルチェユニット7に限定されるものではなく、タンク等で構成される水溜部から放電電極1に毛細管等を利用して水を供給する等の公知の技術を用いてもよい。また、液供給手段によって放電電極1に供給される液体13は水に限定されない。
【符号の説明】
【0038】
1 放電電極
2 対向電極
13 液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極と、この放電電極に液体を供給する液供給手段と、前記放電電極に供給された液体に電圧を印加して静電霧化を生じさせる電圧印加手段を備えた静電霧化装置であって、前記電圧印加手段による電圧印加時において、前記電圧印加によって生じる電界の強度を周期的に変化させる電界強度制御手段を備えたことを特徴とする静電霧化装置。
【請求項2】
前記電界制御手段が、前記電圧印加によって生じる電界の強度を周波数0.1〜10Hzで周期的に変化させることを特徴とする請求項1に記載の静電霧化装置。
【請求項3】
前記放電電極に対向する対向電極を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電霧化装置。
【請求項4】
前記電界強度制御手段が、前記電圧印加手段により前記液体に印加される電圧を周期的に変化させて、前記電圧印加によって生じる電界の強度を周期的に変化させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の静電霧化装置。
【請求項5】
前記電界強度制御手段が、前記放電電極と前記対向電極の間隔を変動させて、前記電圧印加によって生じる電界の強度を周期的に変化させることを特徴とする請求項3に記載の静電霧化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−75266(P2013−75266A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217341(P2011−217341)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】