説明

非アルコール性脂肪性肝疾患の予防および/または治療に有効な経口摂取用組成物

【課題】ヒトにみられる非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease, NAFLD)、特に非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis, NASH)の予防・改善に有効であり、安全性が高く、しかも、カフェインを含まず、経口摂取しやすいNAFLDの予防および/または治療に有用な、経口摂取用組成物を提供する。
【解決手段】本発明の非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease, NAFLD)の予防および/または治療に有効な経口摂取用組成物は、ユーカリ属(Eucalyptus)植物、サルスベリ属(Lagerstroemia)およびバンジロウ属(Psidium)植物からなる群より選ばれる少なくとも1種から抽出した抽出物を有効成分とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非アルコール性脂肪性肝疾患、特に非アルコール性脂肪性肝炎の予防および/または治療に有効な経口摂取用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活習慣病の有病者、その予備軍の人口が増加の一途を辿り、国民の健康に対する大きな脅威となっている。特に肥満を伴う脂肪肝は、そのままにしておくと、生活習慣病を引きおこし、その結果、糖尿病、高脂血症、高血圧および動脈硬化を原因とした脳血管障害、心臓病等の合併症・重症化による深刻な疾患に進行するおそれがある。
脂肪肝とは、肝臓に中性脂肪がたまる病気であり、脂肪滴を伴う肝細胞が30%以上認められる状態のことをいう。主な原因としては、アルコールの過剰摂取、肥満、糖尿病がある。
肝臓は、食事中の脂肪や糖質から中性脂肪を合成する。この中性脂肪は、タンパク質と結合して肝臓から血管に放出され、脂肪組織に蓄積されたり、エネルギー源として利用される。しかしながら、肝臓で合成された中性脂肪を肝臓外に運び出す処理能力には限界があり、その能力を超えて中性脂肪が合成されると、肝細胞内に中性脂肪がたまり脂肪肝となる。
【0003】
脂肪肝は、自覚症状がほとんどないため放置されやすく、健診時等で軽度の肝機能異常をきっかけに、主として超音波検査によって、一部コンピュータ断層撮影(CT)検査によって発見される。
従来は、脂肪の蓄積が顕著な脂肪肝が長引くと肝障害が生じ、一部は肝線維症や慢性肝炎、肝硬変に進展すると想像されていたものの、確定的エビデンスに欠けることから、脂肪肝は進展することのない良性な病態と考えられていた。
【0004】
脂肪肝の中には肝臓に炎症を伴わない単純性脂肪肝(simple steatosis)と、肝臓障害が伴う脂肪性肝疾患(fatty liver disease)がある。これらは、糖尿病や肥満に伴って多くみられ、インスリン抵抗性、脂質代謝異常、高血圧などの危険因子を包括したメタボリックシンドロームの、肝臓における表現型とも言われる。肝炎ウィルス感染、自己免疫性疾患、先天的代謝性疾患および薬物性肝障害例を除き、飲酒歴がないにもかかわらず(1日エタノール換算で20g以下)脂肪性肝疾患である状態を非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease、以下NAFLDと略する場合がある。)という(非特許文献1〜3参照)。NAFLDのなかでも非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis、以下NASHと略する場合がある。)は、炎症を伴う進行性の病態のことをいい、飲酒歴がないにもかかわらず、脂肪肝の経過中に原因不明の炎症が加わりアルコール性肝障害に類似した所見を呈する(非特許文献1〜3参照)。すなわち、肝細胞内の中性脂肪沈着のみならず、肝臓小葉内の炎症所見、小葉内や門脈域の線維化等、その確定診断や進行度の評価には生体組織診断(生検)による病理組織学的評価が必須とされている(非特許文献4参照)。
【0005】
NAFLD患者は、10年またはそれ以上かけて、その約20%が肝硬変へ進行、また、約10%が肝臓癌を生ずるといわれている。その有病率として、欧米では、人口の20−30%が脂肪肝を、約3%程度がNASHを罹患していると推測されている。日本でも、食生活の欧米化により肥満人口、生活習慣病患者の増加に伴い、脂肪肝患者、NASH患者も増加してくることが想定され、欧米に近い頻度でこれらの患者が存在すると推測されている。例えば、15歳以上の日本人肥満者は男性1300万人、女性1000万人であり、高度肥満者(BMI>30)が350万人いることから推定すると、約100万人のNASH患者が存在すると推計する報告もある(非特許文献3)。NASHの頻度が3〜5%と極めて高い米国では、単純性脂肪肝をNASH予備群と見なし、NASH、単純性脂肪肝いずれも治療の第一選択が減量であることに着目し、包括的にNAFLDとして治療する場合も少なくない。こうした背景のもと、NAFLD特にNASHの予防または治療薬の開発が切望されているが、臨床現場では充足されていないのが現状である。
【0006】
NAFLDを改善する薬剤としてチアゾリジン系化合物(ピオグリタゾン、ロジグリタゾン)が報告されている(非特許文献5〜7参照)。
しかし、これら薬剤の主たる作用メカニズムはPPARγの活性化による脂肪細胞への作用であり、これに起因する副作用として体重増加が投与期間中のみならず投与終了後も続き肝障害が再燃することが問題とされている(非特許文献6参照)。さらに、改善効果が見られるとした報告でも組織学的に門脈域の炎症は増加しているという報告(非特許文献7参照)や、肝でのPPARγ活性化はむしろ脂肪肝を惹起するという報告(非特許文献8、9参照)からも、チアゾリジン系化合物の肝疾患を有する患者への長期投与の安全性は充分に確認されているとはいえない。
また、メトフォルミンも有効という報告があるが、腎臓障害などの副作用が報告されている。
このように薬物を長期投与することによる治療は副作用の危険性の観点から、とくに軽度のNAFLD患者は、投薬よりも、安全性の高い食品または食経験豊富な天然物を摂取することが望ましい。
【0007】
一方、NAFLD、特にNASHを予防・改善する天然物・食品として、ルテオリン(特許文献1参照)、イノシトール類(特許文献2参照)、後発酵茶(特許文献3参照)、未成熟パパイア果実発酵物(特許文献4参照)、緑茶(非特許文献10参照)などが報告されている。
いずれも動物にコリンなど必要な栄養分を欠いた食餌投与などによって引き起こされる肝臓障害モデルを用いて予防・改善作用を評価しているが、ヒトでは相当な偏食を続けたとしても、このような欠乏状態は起こりえない。また、このコリン欠乏食(choline-deficient L-amino acid-defind, CDAA)を動物が長期摂取すると高度の代謝障害を起こして肝臓障害が強く生じ、肝臓の病理組織も急激かつ高度に変化するため、ヒトでみられるNASHとは様相が異なり、臨床例との類似性には限界がある(非特許文献11参照)。
よって、ヒトにみられるNAFLD、特にNASHに有効であることを十分証明したとはいえない。
【0008】
また、脂肪肝を予防・改善する天然物・食品として、ブルーベリー葉(特許文献5参照)、甘草(非特許文献12、非特許文献13参照)、カテキン類(特許文献6参照)、クルクミンもしくはそれを含有するウコン(特許文献7参照)などが報告されている。
ブルーベリー葉(特許文献5参照)は、肝臓での脂肪蓄積量を測定して有効性を確認しているが、単純性脂肪肝とNAFLDを鑑別せず、かつNAFLDに関連する項目は検討されずに評価したデータであるので、NAFLDの予防・改善作用を十分証明したとはいえない。
甘草(非特許文献12参照)は、その大量摂取により低カリウム血症などの副作用を引き起こすことがあり(非特許文献13参照)、日常的に大量摂取を繰り返すことに安全面での懸念がある。
カテキン類(特許文献6参照)は、主に緑茶(Camellia sinensis)から抽出・精製されて得られるが、緑茶はカフェインを含むことからカフェイン摂取を避ける場合には用いることができず、カフェインを除去すると製造コストが高くなる問題がある。
クルクミンもしくはそれを含有するウコン(特許文献7参照)は、独特の風味と刺激性を有することから、その使用には制限が伴う。
【0009】
ところで、ユーカリ属植物、サルスベリ属植物およびバンジロウ属植物について、関連する先行技術を調査したところ、ユーカリ属植物は、高カロリー食摂取に起因する脂肪肝の抑制作用(特許文献8参照)、およびエンドトキシン(特許文献9参照)、四塩化炭素(非特許文献14参照)など薬物投与によって生ずる肝臓障害に対する抑制作用およびアロキサン(非特許文献15参照)投与によって生ずる肝臓脂肪蓄積に対する抑制作用が報告されている。
サルスベリ属植物は、脂肪肝および肝臓障害に対する作用を検討した報告はない。
バンジロウ属植物は、肝臓中の過酸化脂質増加抑制作用(非特許文献16参照)および四塩化炭素投与による肝臓障害抑制作用(非特許文献17参照)が報告されている。
しかしながら、いずれも脂肪肝とともに生ずる肝疾患、あるいは高カロリー食摂取や高フルクトース食摂取に起因するNAFLDに関しては検討されておらず、これら研究結果からNAFLDの予防・治療効果を関連付けることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公表2006-135084号公報
【特許文献2】特開2006-342128号公報
【特許文献3】特開2009-29735号公報
【特許文献4】特開2009-102247号公報
【特許文献5】特開2008-189631号公報
【特許文献6】特開2007-182405号公報
【特許文献7】特開2007-320864号公報
【特許文献8】特開2001-270833号公報
【特許文献9】特開2004-307379号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「Mayo Clinic Proceedings」、1980年、第55巻、p.434-438
【非特許文献2】日本肝臓学会、「NASH・NAFLDの診療ガイド」、分光堂、2006年
【非特許文献3】西原利治、「NASH診療ハンドブック」、中外医学社、2007年
【非特許文献4】「Gastroenterology」、2002年、第123巻、p.745-750
【非特許文献5】「日本薬理学雑誌」、2006年、第128巻、p.235-238
【非特許文献6】「Hepatology」、2004年、第39巻、p.188-196
【非特許文献7】「Hepatology」、2003年、第38巻、p.1008-1017
【非特許文献8】「Journal of lipid research」、2002年、第43巻、p.1809-1817
【非特許文献9】「Journal of Clinical Investigation」、2000年、第106巻、p.1221-1228
【非特許文献10】「Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition」、2009年、第44巻、p.239-246
【非特許文献11】「Biochemical and biophysical research communications」、2004年、第27巻、第315号、p.187-195
【非特許文献12】「Hepatology」、2008年、第47巻、p.1905-1915
【非特許文献13】キャサリン・E.ウルブリヒトら、「ハーブ&サンプリメント : NATURAL STANDARDによる有効性評価 = Herb & supplement reference」、産調出版、2007年、p.209-212
【非特許文献14】「日本農芸化学会2008年度大会講演要旨集」、2008年、p.290
【非特許文献15】「Chemico - Biological Interactions」、2009年、第181巻、p.71-76
【非特許文献16】「日本家政学会誌」、1988年、第39巻、p.265-269
【非特許文献17】「Indian journal of experimental biology」、2006年、第44巻、p.305-311
【非特許文献18】「帝京医学雑誌」、2009年、第32巻、p.223-232
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、ヒトにみられるNAFLD、特にNASHの予防・改善に有効で、安全性が高く、しかも、カフェインを含まず、経口摂取しやすい非アルコール性脂肪性肝疾患の予防および/または治療に有効な経口摂取用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ユーカリ属植物、サルスベリ属植物およびバンジロウ属植物からなる群より選ばれる少なくとも1種から抽出した抽出物を有効成分とする経口摂取用組成物が、NAFLD、特にNASHの予防・改善に有効で、安全性が高く、カフェインを含まず、経口摂取しやすいことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)ユーカリ属植物、サルスベリ属植物およびバンジロウ属植物からなる群より選ばれる少なくとも1種から抽出した抽出物を有効成分とする非アルコール性脂肪性肝疾患の予防および/または治療に有効な経口摂取用組成物。
(2)前記ユーカリ属植物が、ユーカリノキ(Eucalyptus globulus L.)であり、前記サルスベリ属植物が、バナバ(Lagerstroemia spesiosa L.)であり、前記バンジロウ属植物が、グァバ(Psidium guajava L.)である、前記(1)に記載の非アルコール性脂肪性肝疾患の予防および/または治療に有効な経口摂取用組成物。
(3)非アルコール性脂肪性肝疾患の予防および/または治療に有効な食品、食品添加剤、医薬製剤、動物飼料、および動物飼料用添加剤を製造するための、ユーカリ属植物、サルスベリ属植物およびバンジロウ属植物からなる群より選ばれる少なくとも1種から抽出した抽出物の使用。
(4)非アルコール性脂肪性肝疾患の予防および/または治療に有効な食品、食品添加剤、医薬製剤、動物飼料、および動物飼料用添加剤を製造するための、ユーカリノキ(Eucalyptus globulus L.)、バナバ(Lagerstroemia spesiosa L.)およびグァバ(Psidium guajava L.)からなる群より選ばれる少なくとも1種から抽出した抽出物の使用。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、食経験豊富で安全性の高い天然物から抽出した抽出物を有効成分とするので、高カロリー食に起因するNAFLD、特にNASHに有効で、安全性が高く、しかもカフェインを含まず、経口摂取しやすい、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】Hematoxylin eosin(以下、HEと略記する)染色を施行した健常群の組織切片を拡大した光学顕微鏡写真(倍率;400倍、以下同じ)である。
【図2】HE染色を施行したNASH群の組織切片を拡大した光学顕微鏡写真である。
【図3】HE染色を施行したユーカリ群の組織切片を拡大した光学顕微鏡写真である。
【図4】HE染色を施行したバナバ群の組織切片を拡大した光学顕微鏡写真である。
【図5】HE染色を施行したグァバ群の組織切片を拡大した光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の非アルコール性脂肪性肝疾患の予防および/または治療に有効な経口摂取用組成物(以下、経口摂取用組成物と略する場合がある。)は、ユーカリ属植物、サルスベリ属植物およびバンジロウ属植物からなる群より選ばれる少なくとも1種から抽出した抽出物を有効成分とする。上記植物はカフェインを含まず、食経験が豊富かつ安全性の高い天然物であり、該植物から抽出される抽出物は、日常的に大量摂取を繰り返しても安全である。
【0018】
本発明における抽出物は、以下に示す食経験豊富で安全性の高い植物から抽出される。
【0019】
<ユーカリ属(Eucalyptus spp.)植物>
本発明におけるユーカリ属(Eucalyptus spp.)植物としては、例えば、E. globulusのほか、E. acaciiformis, E. acmenioides, E. agglomerate, E. aggregate, E. alba, E. albens, E. amplifolia, E. ampliora, E. amygdalina, E. andrewsi, E. angulosa, E. annulata, E. astringens, E. australiana, E. badjensis, E. bakeri, E. baueriana, E. baxterii, E. behriana, E. benthamii, E. beyeri, E. biangularis, E. bicolor, E. bicostata, E. blakelyi, E. boormani, E. bosistoana, E. botryoides, E. brassiana, E. bridgesiana, E. brockwayi, E. burdettiana, E. calcicultrix, E. caleyi, E. calophylla, E. calycogona, E. camaldulensis, E. campanifructa, E. campaspe, E. camphora, E. celastroides, E. cinerea, E.citriodora, E. cladocalyx E. clelandii, E. cloeziana, E. cneorifolia, E. coccifera, E. colossea, E. conica, E. consideniana, E. coolabahs, E.cordata, E. cornuta, E. cosmophylla, E. costata, E. crawfordii, E. crebra, E. crenulata, E. curtisii, E. cylindriflora, E. cypellocarpa, E. dalrympleana, E. dcrrigoensis, E. dealbata, E. deanei, E. deglupta, E. delegatensis, E. diversfolia, E. diversicolor, E. dives, E. doratoxylon, E. drepanophylla, E. dumosa, E. dundasii, E. dunnii, E. dwyeri, E. elaeophora, E. elata, E. eremophila, E. erythronema, E. eugenioides, E. exerta, E. eximia, E. falcata, E. fasciculosa, E. fastigata, E. dibrosa, E. fibrosa, E.ficifolia, E. flocktoniae, E. forrestiana, E. forthiana, E. fraxinoides, E. glaucescens, E. globoidea, E. gomphocephala, E. goniocalyx, E. gracilis, E. grandis, E. griffithsii, E. grossa, E. gummifera, E. gunnii, E. haemastoma, E. hellandra, E. hemiphloia, E. horistes, E. huberiana, E. intermedia, E. jacksonii, E. johnstoni, E. kirtoniana, E. kochii, E. laevopinea, E. largeana, E.largiflorens, E. lehmanni, E. leptophylla, E. lesouefii, E. leucoxylon, E. linearis, E. longicornis, E. longifolia, E. loxophleba, E. macarthurii, E. macrandra, E. macrocarpa, E. macrorhyncha, E. maculata, E. maculosa, E. maidenii, E. mannifera, E. marginata, E. melanophloia, E. melanoxylon, E. melliodora, E. microcarpa, E. microcorys, E. microtheca, E. miniata, E. moluccana, E. muelleriana, E. neglecta, E. nicholii, E. niphophila, E. nitens, E. nova-anglica, E. obliqua, E. occidentalis, E. ochrophloia, E. odorata, E. oleosa, E. oreades, E. ovata, E. paliformis, E. paniculata, E. papuana, E. parramattensis, E. parvifolia, E. pauciflora, E. peltata, E. perriniana, E. phaeotricha, E. phellandra, E. phoenicea, E. pilularis, E. piperita, E. planchoniana, E. platyphylla, E. platypus, E. polybractea, E. populifolia, E. propinqua, E. pulverulenta, E. punctata, E. pyriformis, E. pyrocarpa, E. quadrangulata, E. racemosa, E. radiata, E. raveretiana, E. regnans, E. resinifera, E. robsonae, E. robusta, E. rostrata, E. rubida, E. rudis, E. salicifolia, E. saligna, E. salmonophloia, E. salubris, E. scoparia, E. seeana, E. sheathiana, E. sideroxylon, E. sieberiana, E. signata, E. smithii, E. spathulata, E. staffordi, E. staigeriana, E. stellulata, E. stricklandii, E. stuartiana, E. tereticornis, E. tetragona, E. tetraptera, E. torelliana, E. torquata, E. trabutii, E. trachyphloia, E. transcontinentalis, E. umbra, E. uncinata, E. urnigera, E. urophylla, E. viminalis, E. viridis, E. vitrea, E. wandoo, E. wilkinsoniana, E. woodwardii, E. woolsianaなど500種以上が挙げられる。
【0020】
<サルスベリ属(Lagerstroemia spp.)植物>
本発明におけるサルスベリ属(Lagerstroemia spp.)植物としては、例えば、L. spesiosaのほか、L. anhuiensis, L. anisoptera, L. balansae, L. calyculata, L. caudata, L. chekiangensis, L. chinensis, L. cristata, L. excelsa, L. fauriei, L. floribunda, L. fordii, L. glabra, L. grandiflora, L. guilinensis, L. indica, L. intermedia, L. langkawiensis, L. loudonii, L. micrantha, L. minuticarpa, L. parviflora, L. siamica, L. stenopetala, L. subcostata, L. subsessilifolia, L. suprareticulata, L. tomentosa, L. venusta, L. villosa などが挙げられる。
【0021】
<バンジロウ属(Psidium spp.)植物>
本発明におけるバンジロウ属(Psidium spp.)植物としては、例えば、P. guajavaのほか、P. amplexicaule, P. araao, P. araca, P. australe, P. cinereum, P. dumetorum, P. firmum, P. friedrichsthalianum, P. galapageium, P. guajava, P. guineense, P. harrisianum, P. havanense, P. incanescens, P. littorale, P. montanum, P. pedicellatum, P. robustum, P. rostratum, P. sartorianum, P. sintenisii, P. socorrense, P. spathulatum などが挙げられる。
【0022】
<抽出物>
本発明における抽出物の製造方法は、特に制限されるものではなく、通常用いられる抽出方法が挙げられ、抽出条件も特に制約はなく、例えば、上記植物の各種部位(全草、花、萼、種子、果実、葉、枝、樹皮、根皮、根茎、根等)をそのまま、または裁断、粉砕もしくは細紛した後、搾取する抽出方法または抽出溶媒を用いて固液抽出する方法などが挙げられる。
【0023】
上記植物の各種部位を裁断、粉砕、細紛する方法としては、特に限定されず、ハサミ、粉砕機、細粉機などを用いた公知の方法を採用すればよい。また、植物の各種部位を裁断、粉砕、細紛する大きさも、特に限定されず、抽出方法などに合わせて、適宜調整すればよい。
【0024】
抽出溶媒を用いて固液抽出する方法としては、特に制限はなく、一般に使用する抽出溶媒の性質に合わせて常圧〜加圧下で常温〜溶媒の沸点の温度条件下で10分〜1週間程度行なう方法が挙げられ、具体的には常温ホモジナイズ抽出法、還流抽出法、超臨界流体抽出法などが挙げられる。
固液抽出に使用する抽出溶媒としては、植物種や処理工程にあわせて通常用いられる溶媒を適宜選択して用いればよく、例えば、水やアルコール類(例えば、メタノール、無水エタノール、エタノール等の低級アルコール、又はプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコールなど)、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチルエステル等のエステル類、その他キシレン、ベンゼン、クロロホルム等の有機溶媒が挙げられる。なお、抽出物を食品として用いる場合のように、得られた抽出物に有機溶媒が残留するのが好ましくない場合は、抽出溶媒は、特に水、エタノール、含水エタノール等を使用することが好ましい。これらの抽出溶媒は単独で用いることもできるが、2種類以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0025】
抽出溶媒を用いて固液抽出する方法は、具体的には、例えば以下の方法が使用できる。すなわち、上記植物原体あるいはその乾燥物を細砕し、抽出溶媒を5〜20倍量加え、常圧下、室温で1週間程度静置、又は抽出溶媒の沸点付近で10〜30分程抽出してから濾過して得られた濾液を、必要に応じて減圧乾固あるいは凍結乾燥して植物抽出物を得る。
【0026】
上記のようにして得られた植物抽出物は、そのままの状態で使用することもできるが、必要に応じ、その効力に影響のない範囲で更に脱臭、脱色等の精製処理を加えても良い。
脱臭、脱色等の精製処理としては、通常の手段を任意に選択して行なえば良く、例えば濾過又はイオン交換樹脂や活性炭カラム等を用い、抽出物に吸着・脱色・精製等を行なえば良い。更に、抽出物を凍結乾燥又は濃縮処理等することで、溶液状、ペースト状、ゲル状、又は粉末状等のさまざまな状態の抽出物の精製物とすることができる。
【0027】
<NAFLD>
NAFLDとは、肝炎ウィルス感染、自己免疫性疾患、先天的代謝性疾患および薬物性肝障害例を除き、飲酒歴がないにもかかわらず(1日エタノール換算で20g以下)、脂肪肝を伴い肝機能障害が認められる脂肪性肝疾患のことをいう。肝臓の炎症がさらに亢進し、線維化等がみられるようになる状態がNASHである。
【0028】
NAFLDを評価する方法として、例えば、顕微鏡を用いて肝臓組織の病理切片を観察する評価方法、肝機能を表す血液生化学検査値による評価方法、上述した超音波検査等を用いた診断による評価方法等が挙げられるが、これらの評価方法は、他の疾病と明確に区別する診断基準は定まっておらず、個々の患者を診察して総合的に(定性的に)判断せざるをえないのが現状である。なかでも、顕微鏡を用いて肝臓組織の病理切片を観察する評価方法が、もっとも精度よくNAFLDの病態を評価することができる。
【0029】
顕微鏡を用いて肝臓組織の病理切片を観察する評価方法として、例えば、Bruntらが提案した方法が挙げられ、広く用いられている。
本発明の経口摂取用組成物は、Bruntらが提案した方法よりも、さらに精密にNAFLDを評価する改良法(非特許文献18参照)により評価されることで、前記のようにして得られた抽出物が、ヒトにみられるNAFLDや、特にNASHに対する有効であるか否か、すなわち、肝臓組織の脂肪化、好中球浸潤、線維化等の進行を抑制しているか否かを精度よく評価できる。
【0030】
<経口摂取用組成物>
本発明の経口摂取用組成物の形態としては、抽出物を有効成分としていれば特に限定されず、上記のようにして得られた抽出物をそのまま用いてもかまわないが、例えば前記抽出物に必要に応じて加えられる他の成分とからなる組成物が挙げられる。
【0031】
このような組成物としては、例えば、前記抽出物と適当な担体(食品または医薬品に使用されている担体等)とからなる組成物が挙げられる。これらの組成物の具体例としては、例えば経口摂取に適した食品(飲食物等)、食品添加剤、医薬製剤、動物飼料、動物飼料用添加剤等の形態が挙げられる。
【0032】
このような形態で組成物を経口摂取する際における該抽出物の人または哺乳動物への投与量は、通常、1日当たり0.01〜2000mg/kg体重の範囲であるのがよいが、投与量が2000mg/kg体重/日を超えても、抽出物自体は植物由来の天然物であるゆえ安全性に問題はない。
【0033】
食品形態とするには、上記抽出物を食品に使用する各種成分と混合し、例えば固形食品、クリーム状ないしジャム状の半流動食品、ゲル状食品、飲料等の形態に調製する。
【0034】
上記抽出物と共に食品に配合されるその他の成分は特に制限はなく、通常使用される各種成分がいずれも使用可能である。このような成分としては、例えばブドウ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB群、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤等が挙げられ、これらを食品の種類に応じて適宜配合すればよい。
【0035】
前記食品の具体例としては、例えば、清涼飲料、ジュース、コーヒー、紅茶、リキュール、牛乳、乳清飲料、乳酸菌飲料、キャンデー、チューインガム、チョコレート、グミ、ヨーグルト、アイスクリーム、プディング等が挙げられる。
抽出物の食品への含有量は0.5〜100mg/gの範囲が適当であるが、この範囲よりも多量に配合しても安全性や効果に問題はない。
【0036】
食品添加剤の形態とするには、例えば上記抽出物をそのまま食品に添加してもよい。食品添加剤の形態は、粉末、顆粒、カプセル、シロップ、ゲル状、液状、固形状等に調製されたものであってもよい。この食品添加剤を添加する食品には、特に制限はなく種々の調理食品や加工食品が挙げられる。また添加量は前記した食品の配合量と同程度であればよい。食品添加剤の添加時期は調理前、調理中、調理後のいずれの段階でもよい。
【0037】
前記医薬製剤の形態とするには、上記抽出物に通常の製薬上許容される担体を加えて、固体、半固体または液体の形態に調製する。具体的な形態としては、例えば錠剤、カプセル、丸剤、顆粒剤、散剤、乳濁液、懸濁剤、シロップ剤、ペレット剤等の経口投与剤、坐薬等の非経口投与剤が挙げられる。
【0038】
製剤化に際しては、剤形に応じて従来から使用されている界面活性剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤等の担体を使用することができる。好ましくは、例えばデンプン、乳糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩等の固形担体、蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノール等のアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の液体担体、さらに各種の動植物油、白色ワセリン、パラフィン、ロウ等の油性担体等が挙げられる。
【0039】
前記医薬製剤は、NAFLD、特にNASHの予防および/または治療に有効な上記抽出物を有効成分として含有することから、非アルコール性脂肪性肝炎から生ずる肝臓がんの予防、改善、治療にも有効である。
【0040】
医薬製剤の投与量としては、剤形や疾患等に合わせて適宜調整すればよいが、内服剤であれば、製剤全量中、前記抽出物を固形分換算で、0.5〜99質量%、好ましくは5〜90質量%の範囲で配合すればよい。
【0041】
動物飼料の形態とするには、抽出物の1種または2種以上を動物飼料に使用する各種成分と混合して調製する。
動物飼料の具体例としては、例えば、家畜用飼料、キャットフード、ドッグフード等のペットフード等が挙げられる。ユーカリ抽出物の動物飼料への配合量は、0.5〜100mg/gの範囲が適当であるが、この範囲よりも多量に配合しても安全性や効果に問題はない。
【0042】
動物飼料用添加剤の形態とするには、抽出物をそのまま動物飼料に添加してもよく、あるいは粉末、顆粒、カプセル、シロップ、ゲル状、液状、固形状等の形態に調製されたものであってもよい。前記動物飼料用添加剤を添加する動物飼料には、前記したような種類の動物飼料が挙げられる。また添加量は前記した動物飼料の配合量と同程度であればよい。動物飼料の添加時期は製造時または製造後のいずれの段階でもよい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
実施例では、ユーカリ属植物の一例としてユーカリノキ(Eucalyptus globulus)を、サルスベリ属植物の一例としてバナバ(Lagerstroemia spesiosa L.)を、バンジロウ属植物の一例としてグァバ(Psidium guajava L.)を用いて、それらの抽出物を調製し、NAFLD、特にNASHに対する効果を検討したが、本発明はこれら品種のみに制限されるものではない。実施例で使用した抽出物の調製、非アルコール性脂肪性肝疾患の評価、および測定されたデータの取り扱いは以下の方法により行なった。
【0044】
(実施例)
<抽出物の調製>
ユーカリノキ(使用部位:葉)、バナバ(使用部位:葉)およびグァバ(使用部位:葉)について、それぞれ原料1kgを30%エタノール9kgで2時間還流を行ない、室温冷却後、濾過した。得られた濾液を減圧濃縮し、さらに凍結乾燥して抽出物を得た。
【0045】
<非アルコール性脂肪性肝疾患の評価方法>
(実験方法)
Wistarラット(4週齢、雄)を使用した。ラットは室温23±2℃、湿度60±10%に保たれた恒温恒湿の室内にて飼育ケージを使用し、12時間照明(9時〜21時)、12時間消灯下で個別飼育した。飲料水には水道水を使用した。
【0046】
ラットを標準食で1週間予備飼育後(5週齢時、体重108〜130g)、健常群(n=7)、NASH群(n=9)、ユーカリ群(n=7)、バナバ群(n=7)およびグァバ群(n=7)の5群に分け、それぞれ表1に掲げる飼料を自由摂取させた。
表1のうちミネラルミックスは、「AIN-93-G-MX」(日本クレア(株)製)およびビタミンミックスは、「AIN-93-VX」(日本クレア(株)製)を用いた。その他の原料は日本クレア(株)製または特級試薬を用いた。
【0047】
【表1】

【0048】
5週間飼育後、エーテル麻酔下、下大静脈より全血採血による安楽死にて屠殺後、開腹して最も大きい肝葉を摘出した。
【0049】
(病理標本作製法)
肝組織を摘出後、3mmの厚さの組織片を切り出し、10%緩衝ホルマリン溶液で固定後、パラフィン包埋を行なった。その後薄切を行ない、脂肪化を含む肝組織所見を評価するためのHE染色、線維化を評価するためのAzan Mallory染色、脂肪滴を評価するための脂肪染色(oil red O染色)を施行した。
HE染色では、薄切した組織切片をスライドガラスに貼り付け、ふ卵器で60℃にて30分間加温した後、キシレンで10分間の脱パラフィン処理を行ない、70〜100%アルコール溶液で処理した。その後、流水で水洗し、HE染色を行なった。
Azan Mallory染色では、薄切した組織切片を脱パラフィン処理後水洗し、媒染を15分間行ない水洗、その後、1%オレンジ液に5分間浸し、その後水洗、さらにアゾカルミンG液に20分間浸した。さらに、該組織切片を5%リンタングステン酸液に20分間浸し、その後水洗しアニリン青 オレンジG液に10分間浸したのち、純アルコールで素早く分別し、その後脱水、透徹、封入を行なった。
また、oil red O染色では、ホルマリン固定した凍結切片をまず純水に1分間馴染ませ、60%イソプロピルアルコール液に1分間浸し、さらにoil red O染色液に入れて37℃で10分間加温、その後60%イソプロピルアルコール液で組織周囲の色素液を洗浄後1分間純水に馴染ませた。その後Mayerのヘマトキシリン液で5分間染色、流水で10分間水洗、色出し後に水性封入剤で封入した。
上記染色法により作成した病理標本のうち、HE染色を施した各5群の組織切片の光学顕微鏡写真(倍率;400倍)を図1〜5に示す。
【0050】
<体重増加量、血清ALT値および肝臓TG量の側定>
Wistarラットの10週齢時の体重と5週齢時の体重の差を体重増加量とした。
と殺時に採取した血液から、常法により血清を分離し、「トランスアミナーゼCII−テストワコー」(和光純薬工業(株)製)を用いて血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の値を測定した。
と殺時に採取した肝臓のトリグリセリド(中性脂肪、TG)をFolchらの方法により抽出し、「LタイプワコーTG・Hトリグリセライド-テストワコー」(和光純薬工業(株)製)を用いてトリオレイン換算で肝臓TG量を定量した。その結果を表2へ示す。
【0051】
<肝病理所見の評価方法>
上述した3種の染色方法を用いて作成した肝臓組織の病理標本を顕微鏡観察し(倍率;400倍)、その病理組織学的変化を以下の4項目により評価した。その際は、Bruntらの方法を若干改変して用いた(非特許文献18参照)。
1)大滴性脂肪化(macrovesicular steatosis):肝細胞の細胞質に、肝細胞核より大きな大型の脂肪滴がみられ、肝細胞核が圧排されている状態のもの。1視野に存在する全肝細胞に対する脂肪化を伴う肝細胞の割合(%)を0〜4で評価した(0,なし;1,10%未満;2、10〜33%;3、33〜66%;4、66%以上)。
2)小滴性脂肪化(microvesicular steatosis):肝細胞の細胞質に、肝細胞核より小型の脂肪滴がみられ、肝細胞核は偏在していないもの。1視野に存在する全肝細胞に対する脂肪化を伴う肝細胞の割合(%)を0〜4で評価した(0,なし;1,10%未満;2、10〜33%;3、33〜66%;4、66%以上)。
3)脂肪肉芽腫(lipogranuloma):肝組織内に沈着した脂肪滴を中心に肉芽腫性炎症様の微小結節を呈した状態の出現数を10視野計測し、1視野当たりの平均値(個)を算定した。
4)線維化進行度(fibrosis stage):線維化の進行度を0〜4(0、なし;1、類洞周囲線維化あり;2、類洞周囲線維化と門脈域周囲の線維化あり;3、架橋状線維化;4、肝硬変)の5段階で評価した。
【0052】
<統計処理>
各食餌群間の比較はWilcoxon順位和検定により、体重及び餌の摂取量の推移の比較は分散分析により行ない、危険率5%以下を有意差ありとした。各群の成績は平均値±標準偏差で表記した。その結果を表2および表3へ示す。
【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
ラットの飼料摂取量、体重を週に2回測定した結果、図2に示すように、各群の総飼料摂取量、体重変化に有意差は認められなかった。解剖時、臓器等各組織に奇形・炎症などの異状は肝臓を除きとくに認められなかった。
肝臓の病理標本を観察したところ、健常群の所見では図1に示すように、小葉内に小型の脂肪滴よりなる小滴性脂肪化が観察されたが、大滴性脂肪化はほとんど見られなかった。NASH群では、図2に示すように、門脈域(グリソン鞘)周囲(zone 1)を中心として小葉内の肝細胞に大型の脂肪滴よりなる大滴性脂肪化が顕著に存在した。また、小葉内にリンパ球をはじめとする炎症性細胞浸潤が確認され、NASHの初期症状の様相を呈することが認められた。図2と同様に、oil red O染色(脂肪染色)の結果でも、NASH群において門脈域周囲を中心に小葉内に広くみられる大滴状構造が、脂肪滴であることが確認された。
一方、ユーカリ(図3)、バナバ(図4)、グァバ(図5)の各抽出物を与えたラット群では、NASH群で見られた大滴性脂肪化、小滴性脂肪化および炎症性細胞浸潤が著しく抑えられ、ほとんど認められなかった。
【0056】
これら病理所見を定量的あるいは半定量的に評価した結果、表3に示すように、NASH群は軽度の非アルコール性脂肪性肝炎と診断されるレベルを示したのに対して、ユーカリ、バナバ、グァバの各抽出物を与えたラット群は、大滴性脂肪化、小滴性脂肪化および脂肪肉芽腫の各項目において低い数値を示し、健常ラットと同様の傾向を示した。
と殺時の採血で得られた血液検体の生化学所見では、表2に示すように、NASH群の血清ALT値は健常群に対して高い値を示したが、ユーカリ、バナバ、グァバの各抽出物を与えたラット群は、低い値を示した。
これらの結果から、ユーカリ、バナバ、グァバの各抽出物は、NASHを抑制したことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーカリ属植物、サルスベリ属植物およびバンジロウ属植物からなる群より選ばれる少なくとも1種から抽出した抽出物を有効成分とする非アルコール性脂肪性肝疾患の予防および/または治療に有効な経口摂取用組成物。
【請求項2】
前記ユーカリ属植物が、ユーカリノキ(Eucalyptus globulus L.)であり、前記サルスベリ属植物が、バナバ(Lagerstroemia spesiosa L.)であり、前記バンジロウ属植物が、グァバ(Psidium guajava L.)である、請求項1記載の非アルコール性脂肪性肝疾患の予防および/または治療に有効な経口摂取用組成物。
【請求項3】
非アルコール性脂肪性肝疾患の予防および/または治療に有効な食品、食品添加剤、医薬製剤、動物飼料、および動物飼料用添加剤を製造するための、ユーカリ属植物、サルスベリ属植物およびバンジロウ属植物からなる群より選ばれる少なくとも1種から抽出した抽出物の使用。
【請求項4】
非アルコール性脂肪性肝疾患の予防および/または治療に有効な食品、食品添加剤、医薬製剤、動物飼料、および動物飼料用添加剤を製造するための、ユーカリノキ(Eucalyptus globulus L.)、バナバ(Lagerstroemia spesiosa L.)およびグァバ(Psidium guajava L.)からなる群より選ばれる少なくとも1種から抽出した抽出物の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−231078(P2011−231078A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104960(P2010−104960)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(591016839)長岡香料株式会社 (20)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】