説明

非イオン性多糖類および/または非イオン性有機分子を含有する混合液を調整する方法

一または複数の非イオン性多糖類および/または一または複数の有機分子を含有する膜バイオリアクター混合液を調整する方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一または複数の非イオン性多糖類および/または非イオン性有機分子を含有する膜バイオリアクター(MBR)混合液を調整する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶存有機物を除去するための廃水の生物学的処理は公知であり、地方自治体施設および産業施設で広く実践されている。この好気性生物学的方法は、微生物が増殖を通して有機化合物を消費する「活性汚泥」法として、一般に知られている。この方法は、水から分離させるための微生物または「バイオマス」の沈殿を必然的に含み、したがって、生物学的酸素要求量(BOD)が低下し、総懸濁物質(TSS)が減少した最終廃水が得られる。沈殿ステップは、一般に清澄機ユニットで実施される。したがって、この生物学的方法は、良好な沈殿特性を有するバイオマスを生産する必要性に制約される。断続的な高い有機物負荷およびバイオマスに有毒である汚染物質の出現中は、これらの条件を維持することが特に困難である。
【0003】
廃水処理用バイオリアクターに取り付けた膜(MBR)は周知であるが、いまだ広く実践されていない。これらのシステムにおいては、限外濾過(UF)、精密濾過(MF)またはナノ濾過(NF)膜が、固液分離のためのバイオマスの沈殿に取って代わる。膜は、バイオリアクター槽または隣接の槽に取り付けることができる。隣接の槽では、混合液がバイオリアクター槽から絶えずポンプで送られ、さらに、汲み戻されて通常5mg/L未満と、清澄機からの20〜50mg/Lと比べて、総懸濁物質(TSS)がかなり低い廃水が生成される。さらに重要なことに、膜によって水からバイオマスが分離されるので、これらのMBRでは、生物学的方法におけるバイオマスの沈殿が不要となる。このことは、1)MLSS(細菌負荷)が10〜30g/Lと高い、2)汚泥滞留時間が長い、および3)水理学的滞留時間が短いなど、従来のシステムでは維持できない条件で生物学的方法の操作を可能にする。従来のシステムでは、このような条件では、汚泥バルキングが生じ、沈殿能力が損なわれる可能性がある。
【0004】
MBR操作の利点として、汚泥生成が少ないこと、廃水からほぼ完全に固体が除去されること、廃水消毒、単一ユニットでCOD、固体および栄養分を合わせて除去すること、高負荷率性能、汚泥バルキングの問題がないこと、ならびに設置面積が小さいことなどが挙げられる。欠点としては、エアレーションの制限、膜のファウリングおよび膜のコストなどが挙げられる。
【0005】
膜のコストは、膜を通る所定の容積流量、つまり「透過流束」に必要な膜面積に正比例する。透過流束はリットル/m/時間(LMH)またはガロン/ft/日(GFD)で表される。MBRの典型的な透過流束速度は約10LMH〜約20LMHまで様々である。これらの透過流束速度は、飲料水の適用で観察される同様の孔径および化学的性質を有する膜での透過流束速度(>50LMH)と比べて比較的低い。これらの低い透過流束速度は、主に膜のファウリングが原因であり、廃水処理用MBRシステムの普及が遅いことの主な理由である。
【0006】
MBR膜は、水、タンパク質や多糖類などの溶解固形物、コロイド状および粒子状物質などの懸濁固形物、細菌の凝集体または「綿状物」、遊離細菌、原生動物、ならびに様々な溶解代謝産物および細胞構成要素からなる、いわゆる「混合液」と結びつく。操作においては、コロイド状および粒子状固体、ならびに溶存有機物は膜の表面に付着する。コロイド状粒子は、「ケーキ層」と呼ばれる膜の表面上の層を形成する。ケーキ層の形成は、クロスフローのない「デッドエンド」モード(すなわち、膜に接線方向の流れ)で操作されるMBRにおいて特に問題となる。ケーキ層の多孔度に応じて、流体抵抗が増加し、透過流束は減少する。
【0007】
膜上のケーキ形成に加えて、細かい粒子が膜孔を塞ぐ可能性がある(元に戻すことはできないファウリング状態)。標準活性汚泥法と比べて、典型的なMBR装置では綿状物(粒子)の大きさは極めて小さいことが報告されている。MBR膜の孔径は約0.04〜約0.4μmまで様々なので、これより小さな粒子は孔が閉塞する原因になりうる。孔の閉塞により膜を通る透過に対する抵抗が大きくなり、透過流束が減少する。
【0008】
これらの物理的なファウリング機構に加えて、可溶性多糖類(「Biopolymer」より)は、孔壁と同様に膜表面上に吸着し、粘液性の層を形成するので、水透過に対する総抵抗が著しくなる。細菌によって分泌される細胞外多糖類が陰イオン性(例えば、ウロン酸)および非イオン性の寡糖類と多糖類(例えば、ヘキソースおよびペントース)の双方を含むことが文献において知られている。陽イオン性、両性または両性イオン性ポリマーで混合液を調整すると、荷電多糖類のみの複合体が生じる。非イオン性寡糖類/多糖類は、依然として膜表面上に粘液性の層を形成し、透過に対する抵抗を増加させる。
【0009】
したがって、MBRシステムにおける混合液を調整する改良した方法を開発して、非イオン性寡糖類/多糖類、および/または、非イオン性有機分子により生じるファウリングにも対処し、膜の透過流束を増加させる必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、24時間の吸引圧力の増加に対する試験的MBR混合液へのPGA(ポリガラクツロ酸:polygalacturonic acid)および製品Aの連続添加の効果を示すグラフである。
【図2】図2は、5日間の吸引圧力の増加に対する試験的MBR混合液へのPGAおよび製品Aの連続添加の効果を示すグラフである。
【図3】図3は、24時間の吸引圧力の増加に対する米国西部MBR設備の混合液へのPGAおよび製品Aの連続添加の効果を示すグラフである。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、一または複数の非イオン性多糖類および/または非イオン性である一または複数の有機分子を含有する膜バイオリアクター混合液を調整する方法であって、(a)一または複数の非イオン性多糖類および/または非イオン性である一または複数の有機分子と複合体を形成するまたは会合する能力を有する一または複数の陰イオン性ポリマーを選択するステップと、(b)ステップ(a)から選択された一または複数の水溶性陰イオン性ポリマーを含有する組成物を混合液に加えるステップと、(c)ステップ(b)を実施後に、一または複数の水溶性の両性、陽イオン性もしくは両性イオン性ポリマー、またはその組合せを混合液に加えるステップとを含む、方法に関する。
【0012】
また本発明は、一または複数の非イオン性多糖類および/または非イオン性である一または複数の有機分子を含有する膜バイオリアクター混合液を調整する方法であって、(a)一または複数の非イオン性多糖類および/または非イオン性である一または複数の有機分子と複合体を形成するまたは会合する能力を有する一または複数の陰イオン性ポリマーを選択するステップと、(b)一または複数の水溶性の両性、陽イオン性もしくは両性イオン性ポリマー、またはその組合せを混合液に加えるステップと、(c)ステップ(a)から選択された一または複数の水溶性陰イオン性ポリマーを含有する組成物を混合液に加えるステップとを含む、方法に関する。
【0013】
[発明の詳細な説明]
この特許出願の全体にわたって、以下の用語は表示した意味を有する。
【0014】
「MBR」は、膜バイオリアクターを意味する。
【0015】
「両性ポリマー」は、陽イオン性モノマーおよび陰イオン性モノマーの両方、および、場合により、その他の非イオン性モノマーから誘導されたポリマーを意味する。両性ポリマーは、実効正または負電荷を有しうる。また両性ポリマーは、両性イオン性モノマーおよび陽イオン性または陰イオン性モノマー、および場合により非イオン性モノマーから誘導することができる。両性ポリマーは、水溶性である。
【0016】
「陽イオン性ポリマー」は、全体的に陽電荷を有するポリマーを意味する。本発明の陽イオン性ポリマーは、一または複数の陽イオン性モノマーを重合することによって、一または複数の非イオン性モノマーと一または複数の陽イオン性モノマーを共重合することによって、エピクロロヒドリンとジアミンもしくはポリアミンを縮合することによって、または二塩化エチレンとアンモニアもしくはホルムアルデヒドとアミン塩を縮合することによって製造することができる。陽イオン性ポリマーは、水溶性である。
【0017】
「両性イオン性ポリマー」は、両性イオン性モノマー、および場合により、その他の非イオン性モノマーから構成されるポリマーを意味する。両性イオン性ポリマーでは、すべてのポリマー鎖およびこれらの鎖内のセグメントは、厳密に電気的に中性である。したがって、両性イオン性ポリマーは、両性ポリマーのサブセットを表し、陰イオン電荷および陽イオン電荷の両方が同じ両性イオン性モノマー内に導入されるので、必然的に、すべてのポリマー鎖およびセグメントにわたり電荷的中性を維持する。両性イオン性ポリマーは、水溶性である。
【0018】
「陰イオン性ポリマー」は、全体的に陰電荷を有するポリマーを意味する。また陰イオン性ポリマーは、この陰電荷に加えて、官能性と、中性/非イオン性寡糖類/多糖類および/またはMBRの混合液に存在するその他の非イオン性有機物と会合する能力を有する。陰イオン性ポリマーは、天然または合成物でありうる。陰イオン性ポリマーは、水溶性である。
【0019】
「混合液」または「汚泥」は、廃水、廃水中で有機物を分解するために用いられる微生物、細胞種から誘導される有機物含有物質、細胞副産物および/または老廃物、または細胞残屑の混合物を意味する。また混合液は、コロイド状および粒子状物質(すなわち、バイオマス/バイオソリッド)および/または可溶性分子もしくはバイオポリマー(すなわち、中性で帯電した寡糖類/多糖類、タンパク質、他)を含有していてもよい。
【0020】
MLSS:活性汚泥浮遊物(mgL−1またはppm)は、有機物を処理するバイオマスの混合液中の濃度を意味する。
【0021】
DMAE.MCQは、ジメチルアンモエチルアクリレート−メチルクロリド4級塩を意味する。
【0022】
「非イオン性」は、実効中性電荷を有することを意味する。例えば、非イオン性多糖類である多糖類は、実効中性電荷を有する。
【0023】
「一または複数の多糖類」は、一または複数の多糖類および/または一または複数の寡糖類を含む。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上記のように、選択された陰イオン性ポリマーは、一または複数の種類の非イオン性ポリマーおよび/または非イオン性である有機分子と会合する能力を持つものでなければならない。
【0025】
当業者は、会合という用語が意味することを理解するだろう。例えば、非イオン性多糖類および/またはその他の非イオン性有機分子などの標的分子の陰イオン性ポリマーとの会合は、水素結合、イオン結合、共有結合、配位結合およびファンデルワールス力のうちの結合方法の一または複数によって生じる。
【0026】
混合液の塩分、pH、温度、および尿素などの水素結合を切断する化合物の存在などの要素は、会合を強化または阻害することがある。
【0027】
一実施形態では、混合液中の陰イオン性ポリマーと非イオン性多糖類の会合が水素結合を介している。
【0028】
システムに加える陰イオン性ポリマーの量は、混合液の種類によって決まる。
【0029】
一実施形態では、陰イオン性ポリマーが、ポリガラクツロ酸(polygalacturonic acid)である。
【0030】
別の実施形態では、陰イオン性ポリマーは、グルクロン酸、マンヌロン酸、ピルビン酸、アルギン酸、これらの塩およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0031】
別の実施形態では、立体化学における、またはモノマー間の結合種類における制限がない陰イオン性ポリマーが選択される。
【0032】
別の実施形態では、陰イオン性ポリマーが、ホモ多糖類またはヘテロ多糖類である。
【0033】
別の実施形態では、陰イオン性ポリマーが、枝分かれ鎖または直鎖でありうる。
【0034】
別の実施形態では、陰イオン性ポリマーは、カルボン酸、スルホン酸またはリン酸官能基、および−OH、−NHおよび/または−SHなどの水素結合基を含有する陰イオン性ポリマーから選択される。様々な量の陰イオン性ポリマーを、混合液に加えてもよい。
【0035】
別の実施形態では、混合液に加える陰イオン性ポリマーの量が、活性固体に基づいて約5ppm〜約10,000ppmである。更なる実施形態では、混合液に加える陰イオン性ポリマーの量は、活性固体に基づいて約10ppm〜約200ppmである。
【0036】
前記陰イオン性ポリマーに対する標的種は、例えば−OH基をいくつか含有する中性/非イオン性多糖類、および/またはその他の非イオン性有機分子を含む。
【0037】
非イオン性多糖類は、様々な種類のものがある。ポリマーによって調整されている混合液に応じて、非イオン性多糖類の種類はシステムによって異なる。
【0038】
一実施形態では、非イオン性多糖類は、ラムノース、ピラノース、ガラクトース、マンノース、デキストランおよびグルカンからなる群から選択される。
【0039】
当業者には、非イオン性多糖類が上述の非イオン性多糖類以外の、その他のヘキソースおよびペントースでありうることは自明である。
【0040】
一実施形態では、非イオン性多糖類は、ホモ多糖類またはヘテロ多糖類であってもよい。
【0041】
別の実施形態では、非イオン性多糖類は、枝分かれ鎖または直鎖であってもよい。
【0042】
別の実施形態では、陰イオン性ポリマーによる会合の標的である混合液由来の非イオン性有機分子は、アミン、アルコール、グリセリン、グリコールおよびその組合せからなる群から選択される。
【0043】
陰イオン性ポリマーを混合液に加えるステップの追加を行った後、必ずというわけではないが、陰イオン性ポリマーの追加に続いて、一または複数の水溶性両性、陽イオン性もしくは両性イオン性ポリマーまたはこれらの組合せを混合液に加える。
【0044】
一実施形態では、両性ポリマーは、アクリル酸/DMAEA・MCQコポリマー、DADMAC/アクリル酸コポリマー、DADMAC/アクリル酸/アクリルアミドターポリマーおよびその組合せからなる群から選択される。
【0045】
別の実施形態では、両性ポリマーは、約5,000ダルトン〜約2,000,000ダルトンの分子量を有する。
【0046】
別の実施形態では、両性ポリマーは、約1,000,000ダルトン〜約2,000,000ダルトンの分子量を有する。
【0047】
別の実施形態では、両性ポリマーは、約0.2:9.8〜約9.8:0.2の陰イオン電荷相当比と同等の陽イオン電荷を有する。
【0048】
別の実施形態では、両性ポリマーは、DMAEA.MCQとアクリル酸の70モル%/30モル%の混合である。この両性ポリマーは、常に良好に透過流束を向上させるので、好ましい両性ポリマーである。
【0049】
別の実施形態では、陽イオン性ポリマーは、アクリルアミドと、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロリド4級塩、ジメチルアミノエチルメタクリレートメチルクロリド4級塩およびジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロリド4級塩からなる群から選択される一または複数の陽イオン性モノマーとのコポリマーである。
【0050】
別の実施形態では、陽イオン性ポリマーは、少なくとも約5モル%の陽イオン電荷を有する。
【0051】
別の実施形態では、陽イオン性ポリマーは、100モル%の陽イオン電荷を有する。
【0052】
別の実施形態では、陽イオン性ポリマーが、約2,000,000ダルトン〜約5,000,000ダルトンの分子量を有する。
【0053】
別の実施形態では、陽イオン性ポリマーは、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ポリエチレンイミン、ポリエピアミン、アンモニアまたはエチレンジアミンと架橋したポリエピアミン、エチレンジクロリドおよびアンモニアの縮合ポリマー、トリエタノールアミンおよびタル油脂肪酸の縮合ポリマー、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート硫酸塩)およびポリ(ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロリド4級塩)からなる群から選択される。
【0054】
別の実施形態では、両性ポリマーは、ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロリド4級塩/アクリル酸コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリル酸コポリマー、ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロリド塩/N,N−ジメチル−N−メタクリルアミドプロピル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタインコポリマー、アクリル酸/N,N−ジメチル−N−メタクリルアミドプロピル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタインコポリマーおよびDMAEA・MCQ/アクリル酸/N,N−ジメチル−N−メタクリルアミドプロピル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタインターポリマーからなる群から選択される。
【0055】
別の実施形態では、両性イオン性ポリマーは、N,N−ジメチル−N−(2−アクリロイルオキシエチル)−N−(3−スルホプロピル)アンモニウムベタイン、アクリルアミドおよびN、N−ジメチル−N−(2−アクリロイルオキシエチル)−N−(3−スルホプロピル)アンモニウムベタインのコポリマー、ならびにアクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドンおよび1−(3−スルホプロピル)−2−ビニルピリジニウムベタインのターポリマーからなる群から選択される。
【0056】
別の実施形態では、水溶性両性イオン性ポリマーは、約1〜約99モル%のN,N−ジメチル−N−メタクリルアミドプロピル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタインおよび約99〜約1モル%の一または複数の非イオン性モノマーからなる。
【0057】
別の実施形態では、水溶性両性イオン性ポリマーは、約5,000ダルトン〜約2,000,000ダルトンの分子量を有する。
【0058】
別の実施形態では、陰イオン性ポリマーは、約1,000ダルトン〜約2,000,000ダルトンの分子量を有する。
【0059】
調整方法は、広範な精製の方法の一部でありうる。
【0060】
一実施形態では、本方法は、限外濾過膜、精密濾過膜、ナノ濾過膜および逆浸透膜からなる群から選択される一または複数の膜を通して、更に混合液を処理することによって調整された混合液を浄化するステップを更に含む。
【0061】
本調整プロトコールは、様々な種類の処理施設に適用することができる。
【0062】
一実施形態では、混合液は、地方自治体の廃水、施設(例えば、リゾート、アパート、ホテル、学校)の廃水または産業廃水を処理するための膜バイオリアクターからのものである。
【0063】
混合液中には様々な量の非イオン性多糖類が存在する。
【0064】
一実施形態では、混合液中に非イオン性種の総量に基づき少なくとも10%の非イオン性多糖類が存在する。
【0065】
以下の実施例は、限定を意味するものではない。
【実施例】
【0066】
A.実験プロトコール
ポリガラクツロ酸(polygalacturonic acid:PGA)は、細胞外多糖類に見られる陰イオン性多糖類の一種であるので、実験用に選択した。製品A(実効正電荷を有する両性DMAEA.MCQ(70モル%)−アクリル酸(30モル%)コポリマー)を、PGAにより混合液を調整した後の第2ステップに使用した。現在、MBR設備は、透過流束が高い場合にファウリングが深刻であるため、通常、12〜25LMHで稼働している。したがって、高い透過流束、例えば、36LMHといったより高い透過流束で、より長い期間ファウリングを制御することに、MBR使用者は大きな関心を寄せている。
【0067】
実験プロトコールは、以下のシーケンスを含む:
1)洗浄した膜を含むフロースルーセル槽への混合液の添加(対照および処理、それぞれ7.5L)、
2)様々な濃度のPGAのナトリウム塩(以下、PGAという)の処理槽への添加およびエアレーション(10リットル/分)下での10分間の混合、
3)250ppmの活性製品Aの添加およびエアレーション下での10分間の混合、および、
4)吸引圧力を監視しながら、36LMHでの浸透吸引および10リットル/分の膜エアレーション(活性面積が0.1mの平板膜)。
【0068】
B.結果
図1は、様々な濃度でのPGAを添加し、続いて合成した廃水を使用して動作させた試験的MBRから得られた混合液で、36LMHの透過流速での膜の吸引圧力を条件とした混合液用の製品Aの添加の効果を示す。吸引圧力が高くなるほど、膜ファウリングも高くなる。通常MBR設備は、吸引圧力が7〜8psiに達したあと、膜を洗浄する。図1より、対照の吸引圧力は30分以内に12psiに達するが、24時間後には、吸引圧力は、製品A単独での10psiから、50ppm PGA+250ppm活性製品Aでの8psiまで、および100または200ppm PGA+250ppm活性製品Aでの約3psiまで下がったことがわかる。次の実験を行って、24時間ごとに汚泥交換と処理を行い、200ppm PGA+250ppm活性製品Aを用いて、上記結果の長期間の持続可能性を評価した。図2に示すように、連続添加により、5日間の連続作動後に吸引圧力は最高で3psiまで上昇しただけであった。
【0069】
また本発明の方法を、米国西部の本格規模の地方自治体MBR設備から得た混合液を用いて試験した。この混合液は、MLSS(0.97%)および多糖類濃度(7ppm)が上記の試験的MBR(それぞれ1.25%〜1.5%および50〜70ppm)と比較して低かった。したがって、PGAおよび製品Aの濃度を、それぞれ活性固体として、20ppmおよび25ppmになるように選択した。24時間の実験結果を図3に示す。連続添加の有益な効果は、このファウリングが低い混合液によっても明白である。
【0070】
したがって、連続的な化学的添加法により、ファウリングが高い混合液およびファウリングが低い混合液を両方用いて、36LMHの高い透過流束でファウリングが減少した。また、COD除去率は約90%であり、したがって、本発明の方法によっては影響を受けなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一または複数の非イオン性多糖類および/または非イオン性である一または複数の有機分子を含有する膜バイオリアクター混合液を調整する方法であって、
a.一または複数の非イオン性多糖類および/または非イオン性である一または複数の有機分子と複合体を形成するまたは会合する能力を有する一または複数の陰イオン性ポリマーを選択するステップと、
b.ステップ(a)から選択された一または複数の水溶性陰イオン性ポリマーを含有する組成物を前記混合液に加えるステップと、
c.ステップ(b)を実施後に、一または複数の水溶性の両性、陽イオン性もしくは両性イオン性ポリマー、またはこれらの組合せを前記混合液に加えるステップと、
を具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記陰イオン性ポリマーがポリガラクツロ酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記両性ポリマーが実効正電荷を有するDMAEA.MCQ−アクリル酸コポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記混合液に加える陰イオン性ポリマーの量が活性固体を基準にして約10ppm〜約200ppmである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
活性固体として1000ppmの両性ポリマーを混合液に加え、当該両性ポリマーが実効正電荷を有するDMAEA.MCQ(70モル%)−アクリル酸(30モル%)コポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
限外濾過膜、精密濾過膜、ナノ濾過膜、逆浸透膜およびこれらの組合せからなる群から選択される一または複数の膜を通して、前記混合液を更に処理することによって、前記調整した混合液を浄化するステップを更に具える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記両性ポリマーが、アクリル酸/DMAEA・MCQコポリマー、DADMAC/アクリル酸コポリマー、DADMAC/アクリル酸/アクリルアミドターポリマー、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記両性ポリマーの分子量が、約5,000ダルトン〜約2,000,000ダルトンである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記両性ポリマーの分子量が、約1,000,000ダルトン〜約2,000,000ダルトンである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記両性ポリマーが、約0.2:9.8〜約9.8:0.2の陰イオン電荷相当比と同等の陽イオン電荷を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記両性ポリマーが、DMAEA.MCQとアクリル酸の70%/30%の混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記陽イオン性ポリマーが、アクリルアミドと、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロリド4級塩、ジメチルアミノエチルメタクリレートメチルクロリド4級塩およびジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロリド4級塩からなる群から選択される一または複数の陽イオン性モノマーとのコポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記陽イオン性ポリマーが、少なくとも約5モル%の陽イオン電荷を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記陽イオン性ポリマーが、100モル%の陽イオン電荷を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記陽イオン性ポリマーが、約2,000,000ダルトン〜約5,000,000ダルトンの分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記陽イオン性ポリマーが、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ポリエチレンイミン、ポリエピアミン、アンモニアまたはエチレンジアミンと架橋したポリエピアミン、エチレンジクロリドおよびアンモニアの縮合ポリマー、トリエタノールアミンおよびタル油脂肪酸の縮合ポリマー、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート硫酸塩)、およびポリ(ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロリド4級塩)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記両性ポリマーが、ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロリド4級塩/アクリル酸コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリル酸コポリマー、ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロリド塩/N,N−ジメチル−N−メタクリルアミドプロピル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタインコポリマー、アクリル酸/N,N−ジメチル−N−メタクリルアミドプロピル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタインコポリマー、およびDMAEA・MCQ/アクリル酸/N,N−ジメチル−N−メタクリルアミドプロピル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタインターポリマーから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記両性イオン性ポリマーが、N,N−ジメチル−N−(2−アクリロイルオキシエチル)−N−(3−スルホプロピル)アンモニウムベタイン、アクリルアミドおよびN、N−ジメチル−N−(2−アクリロイルオキシエチル)−N−(3−スルホプロピル)アンモニウムベタインのコポリマー、ならびにアクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドンおよび1−(3−スルホプロピル)−2−ビニルピリジニウムベタインのターポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記両性イオン性ポリマーが、約1〜約99モル%のN,N−ジメチル−N−メタクリルアミドプロピル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタインおよび約99〜約1モル%の一または複数の非イオン性モノマーから構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記両性イオン性ポリマーの分子量が、約5,000ダルトン〜約2,000,000ダルトンである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記陰イオン性ポリマーの分子量が約1,000ダルトン〜約2,000,000ダルトンである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記混合液中の陰イオン性ポリマーと非イオン性多糖類の会合が水素結合によるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記陰イオン性ポリマーが、グルクロン酸、マンヌロン酸、ピルビン酸、アルギン酸、その塩およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記非イオン性多糖類が、ラムノース、ピラノース、ガラクトース、マンノース、デキストラン、グルカンおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記陰イオン性ポリマーによる会合の標的である混合液由来の非イオン性有機分子が、アミン、アルコール、グリセリン、グリコールおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記混合液が、地方自治体の廃水、施設の廃水または産業廃水を処理するための膜バイオリアクターに由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
一または複数の非イオン性多糖類および/または非イオン性である一または複数の有機分子を含有する膜バイオリアクター混合液を調整する方法であって、
a.一または複数の非イオン性多糖類および/または非イオン性である一または複数の有機分子と複合体を形成する能力または会合する能力を有する一または複数の陰イオン性ポリマーを選択するステップと、
b.一または複数の水溶性の両性、陽イオン性もしくは両性イオン性ポリマー、またはこれらの組合せを混合液に加えるステップと、
c.ステップ(a)から選択された一または複数の水溶性陰イオン性ポリマーを含有する組成物を前記混合液に加えるステップとを含む、方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−520594(P2011−520594A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507642(P2011−507642)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/042300
【国際公開番号】WO2009/134996
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(507248837)ナルコ カンパニー (91)
【Fターム(参考)】