説明

非イオン性薬物含有組成物

【課題】容器の種類にかかわらず、容器へのヒノキチオールの吸着を防ぎ、非イオン性薬物を安定に配合でき、組成物の製剤保存安定性が良く、患部への組成物の使用性(のびやすさ)が良好な、非イオン性薬物含有組成物を提供する。
【解決手段】(A)非イオン性薬物、(B)ゲル化炭化水素及び(C)親水性ゲル基剤を含有する組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非イオン性薬物を含有する組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非イオン性薬物には、ヒノキチオール、イソプロピルメチルフェノール(ビオゾール)、トリクロサン、トリクロロカルバニリド、チモール、オイゲノール、イソオイゲノール、アセチルオイゲンオール等が挙げられる。非イオン性薬物は、医薬品、医薬部外品、化粧品の有効成分として用いられている。しかしながら、非イオン性薬物は容器に吸着しやすく、また、光や酸素、金属により、その含有量が低下しやすいという問題があった。これを防ぐ方法としては、フェノール樹脂又はブチラール樹脂を内面に焼付けた金属チューブを用いる技術が提案されている(特許文献1:特開2002−3354号公報)。しかしながら、これらの方法では、チューブが限定されており、例えば、一般的なコーティング剤であるエポキシ樹脂又はエポキシ樹脂と他の樹脂を混合したものが使えないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−3354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、容器の種類にかかわらず、容器への非イオン性薬物の吸着を防ぎ、非イオン性薬物を安定に配合でき、製剤保存安定性が良く、患部への組成物の使用性(のびやすさ)が良好な非イオン性薬物含有組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、非イオン性薬物及び親水性ゲル基剤を配合した非イオン性薬物含有組成物に、ゲル化炭化水素を配合することにより、非イオン性薬物の容器への吸着が抑制できるため、容器内面コーティングの種類に関係なく非イオン性薬物の安定化が図れると共に、製剤保存安定性が向上し、使用性(のびやすさ)も良好であることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0006】
従って、本発明は下記非イオン性薬物含有組成物を提供する。
[1].(A)非イオン性薬物、(B)ゲル化炭化水素及び(C)親水性ゲル基剤を含有する組成物。
[2].(A)非イオン性薬物:(B)ゲル化炭化水素で表される含有質量比が、1:0.5以上である[1]記載の組成物。
[3].(A)非イオン性薬物:(B)ゲル化炭化水素で表される含有質量比が、1:1〜50である[2]記載の組成物。
[4].(B)ゲル化炭化水素:(C)親水性ゲル基剤で表される含有質量比が、1:0.04以上である[1]、[2]又は[3]記載の組成物。
[5].(C)親水性ゲル基剤が、ビニル系高分子化合物、セルロース系高分子化合物、アルギン酸又はアルギン酸塩である[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物。
[6].(A)非イオン性薬物が、ヒノキチオール、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン又はチモールである[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物。
[7].[1]〜[6]のいずれかに記載の組成物を、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシフェノール樹脂、エポキシユリア樹脂、フッ素樹脂及びこれらの混合樹脂から選ばれる樹脂で、内面がコーティングされた容器に充填してなる組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、容器の種類にかかわらず、容器への非イオン性薬物の吸着を防ぎ、非イオン性薬物を安定に配合でき、製剤保存安定性が良く、患部への組成物の使用性(のびやすさ)が良好な、非イオン性薬物含有組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の組成物は、(A)非イオン性薬物、(B)ゲル化炭化水素及び(C)親水性ゲル基剤を含有するものであり、外用剤、特に口腔用組成物として好適である。
【0009】
(A)非イオン性薬物
非イオン性薬物としては、ヒノキチオール、イソプロピルメチルフェノール(ビオゾール)、トリクロサン、トリクロロカルバニリド、チモール、オイゲノール、イソオイゲノール、アセチルオイゲンオール等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。中でも、ヒノキチオール、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、チモールが好ましい。
【0010】
[ヒノキチオール]
ヒノキチオールは、口腔内の歯肉炎・歯槽膿漏の予防・治療を目的として、組織の収斂、抗炎症作用と抗菌作用を有するヒノキチオールを軟膏や歯磨等の口腔用組成物に配合することが知られている。本発明で用いるヒノキチオールには、タイワンヒノキ、ニオイヒバ、ネズコ、アスナロ、オニヒバ等のヒノキ科植物及びビャクシン等の精油のフェノール性成分中から分離される天然トロポロン等が包含される。本発明においては、ヒノキチオールとしては、このような天然品だけでなく、合成品を用いてもよい。また、ヒノキチオールを含有した抽出物又は粉末を用いることも可能である。例えば、ヒノキ油、ヒノキ末、ヒバ油、ヒバ末等が挙げられる。
【0011】
[イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、チモール]
イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、チモール等は広い抗菌スペクトルを有することから殺菌剤としてハンドソープ、化粧品、石鹸、育髪トニック、デオドラント、ハップ剤や口腔用組成物等に使用されている。
イソプロピルメチルフェノールは、1−ヒドロキシ−4−イソプロピル−3−メチルフェノールであり、商品名ビオゾールとして大阪化成(株)から販売されている。イソプロピルメチルフェノールは、優れたバイオフィルム殺菌力を有している。
トリクロサンは、別名トリクロロヒドロキシジフェニルエーテルであり、チバ・スペシャルティ・ケミカルズより販売されている。
チモールは、化学式5−メチル−2−(1−メチルエチル)フェノールである公知のチモール((CH32CHC63(CH3)OH;イソプロピル−m−クレゾール)は有効な抗菌剤であり、そして典型的にはThymus vulgaris Labiatae及びMonarda punctata Labiataeの精油から得られる。
【0012】
非イオン性薬物の含有量は、組成物全量に対して0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましく、0.05〜3質量%がさらに好ましい。ヒノキチオールの含有量を0.01質量%以上とすることで、十分な殺菌作用をより得ることができ、10質量%を超えると、使用性・安全性に劣るおそれがある。
【0013】
(B)ゲル化炭化水素
ゲル化炭化水素とは、例えば流動パラフィンをポリエチレン末でゲル化して半固化したものが挙げられる。市販品としては、プラスチベース(商品名:ブリストル・マイヤーズ株式会社)等が挙げられる。このゲル化炭化水素を配合することにより、非イオン性薬物を溶解し、容器への非イオン性薬物の吸着を防ぎ、非イオン性薬物を安定に配合することができる。
【0014】
ゲル化炭化水素の含有量は、組成物全量に対して0.05〜50質量%から適宜選定され、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。容器への非イオン性薬物の吸着を防ぎ、非イオン性薬物を安定に配合する点からは、(A)非イオン性薬物:(B)ゲル化炭化水素で表される含有質量比は、1:0.5以上が好ましく、1:1以上がより好ましく、1:5以上がさらに好ましい。また、非イオン性薬物の吸着を防ぎ、さらに組成物の製剤保存安定性、使用性を両立する点から、1:1〜50が好ましく、より使用性を向上する点から、1:1〜10が好ましい。ゲル化炭化水素が多すぎると、組成物の製剤保存安定性が低下するおそれがあり、少なすぎると、非イオン性薬物の安定性が不十分となるおそれがある。
【0015】
(C)親水性ゲル基剤
本発明において、「親水性ゲル基剤」とは、吸水して膨張又は溶解しゲル状になるものをいう。(B)ゲル化炭化水素を含有する製剤に(C)親水性ゲル基剤を配合することにより、製剤保存安定性が向上する。親水性ゲル基剤としては、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン等のビニル基を有するビニル系高分子化合物、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系高分子化合物、アルギン酸、アルギン酸塩等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、口腔用に用いる場合には粘膜親和性及び滞留性の点から、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドンが好ましく、粘膜付着性が高まり滞留性が向上する点から、カルボキシビニルポリマーとポリビニルピロリドンとを併用すること、カルボキシビニルポリマーと、ポリビニルピロリドンと、アルギン酸又はアルギン酸塩とを併用することが好ましい。
【0016】
親水性ゲル基剤の含有量は、組成物全量に対して1〜7質量%が好ましく、1.5〜5.0質量%がより好ましい。なお、組成物の製剤保存安定性、使用性を両立する点から、(B)ゲル化炭化水素:(C)親水性ゲル基剤で表される含有質量比が、1:0.04以上が好ましく、使用性の点から1:4以上がより好ましく、上限は特に限定されないが、1:50以下が好ましく、1:40以下がより好ましい。
【0017】
本発明の組成物は、組成物全量に対する水分が10質量%以上の水性組成物とすることが好ましい。水分は20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。水性組成物とすることで、患部への密着性や、非イオン性薬物の放出性及び吸収性が向上するため、口内炎、歯肉炎・歯槽膿漏治療等の非イオン性薬物の効果がより発揮されると共に、使用感もよい。
【0018】
本発明の組成物は、外用剤として好適であり、特に口腔用組成物として好適である。口腔粘膜に直接塗布して用いることができ、口内炎、歯肉炎、歯槽膿漏等の口腔内疾患の予防・治療を目的とする軟膏・歯磨等のペースト状にすることができる。口腔用組成物の場合、組成物の粘度(25℃)は40〜200Pa・sが好ましく、50〜150Pa・sがより好ましい。なお、粘度はBH型粘度計No.7で測定する。また、化粧料、特に皮膚化粧料としても好適であり、剤型としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ローション、乳液、スプレー、ミスト等の剤型とすることができる。化粧料の場合、組成物の25℃の粘度は、例えば、ローション(200〜500mPa・s:BL粘度計No.3)、乳液(1000〜5000mPa・s:BL粘度計No.4)の範囲から適宜選定される。
【0019】
本発明の組成物には、上記成分以外に本発明の効果を損なわない範囲で任意成分を配合することができ、これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。任意成分としては、例えば下記のものが挙げられる。
【0020】
有効成分としては、(A)成分以外の薬物、例えば、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン塩類等の殺菌剤、シコンエキス等の口内炎用薬理成分、塩酸テトラサイクリン、塩酸ミノサイクリン等の歯肉炎用薬理成分、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化第1スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、トウキ軟エキス、オウバクエキス、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物、塩酸プロカイン、塩酸テトラカイン、塩酸ジブカイン、塩化リゾチーム、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼ、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、グリチルリチン酸及びその塩類、グリチルレチン酸、塩化ナトリウム、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、ヒドロキサム酸及びその誘導体、銅クロロフィンナトリウム、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ゼオライト、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、クエン酸亜鉛等が挙げられる。
【0021】
特に、口腔用組成物としての任意成分としては、下記のものが挙げられる。
研磨剤としては、沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤、第2リン酸カルシウム2水和物及び無水和物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、合成樹脂系研磨剤等が挙げられる。これら成分の含有量は、組成物全量に対して通常3〜60質量%である。
【0022】
粘稠剤としては、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット等が挙げられる。これら成分の含有量は、組成物全量に対して通常1〜70質量%である。粘結剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カラギーナン、カルボキシビニルポリマー、グアガム、モンモリロナイト、ゼラチン等が挙げられる。これら成分の含有量は、組成物全量に対して通常0.1〜30質量%である。
【0023】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤を本発明の効果が妨げられない範囲で配合することができ、具体的には、ラウリル硫酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ステアリン酸グリセリル、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレン(10,20,40,60,80,100モル)硬化ヒマシ油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの重合物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノラウリルエステル等のポリエチレンオキサイドと脂肪酸、脂肪アルコール、多価アルコールとの縮合生成物、アルキロールアマイド、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。なお、これら界面活性剤の含有量は、組成物全量に対して0〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0024】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン等、防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等、着色剤としては、青色1号、黄色4号、二酸化チタン等が例示される。なお、これら成分の含有量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0025】
香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、シナモン油、クローブ油、タイム油、セージ油、カルダモン油、ローズマリー油、マジョラム油、レモン油、オレンジ油、フェンネル油、ナツメグ油、ラベンダー油、パラクレス油等の天然精油、及びl−メントール、l−カルボン、アネトール、1,8−シネオール、メチルサリシレート、オイゲノール、チモール、リナロール、リモネン、メントン、メンチルアセテート、シトラール、カンファー、ボルネオール、ピネン、スピラントール等の上記天然精油中に含まれる香料成分、エチルアセテート、エチルブチレート、イソアミルアセテート、ヘキサナール、ヘキセナール、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、ベンツアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、フラネオール、マルトール、エチルマルトール、ガンマ/デルタデカラクトン、ガンマ/デルタウンデカラクトン、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド、メンチルラクテート、エチレングリコール−l−メンチルカーボネート等の香料成分、いくつかの香料成分や天然精油を組み合わせてなる、アップル、バナナ、ストロベリー、ブルーベリー、メロン、ピーチ、パイナップル、グレープ、マスカット、ワイン、チェリー、スカッシュ、コーヒー、ブランデー、ヨーグルト等の調合フレーバー等が挙げられる。香料の含有量は、組成物全量に対して0.00001〜3質量%が好ましい。
【0026】
pH調整剤としては、フタル酸、リン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸及び炭酸、ならびにそれらのカリウム塩、ナトリウム塩又はアンモニウム塩、リボ核酸及びその塩類、水酸化ナトリウム等が挙げられる。本発明の組成物は、25℃におけるpHを5.5〜8.0に調整することが好ましい。
【0027】
組成物には、エタノールを配合することができ、その量は組成物全量に対して1〜30質量%が好ましい。また、セタノール等も配合することができる。さらに、エチレングリコール、プロピレングリコール等の2価アルコールを配合することもできるが、苦味が生じるため、その量は組成物全量に対して30質量%未満が好ましく、10質量%がより好ましい。
【0028】
特に、化粧料としての任意成分としては、例えば、界面活性剤、油分、保湿剤、増粘剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、紫外線吸収・散乱剤、ビタミン類、アミノ酸類、香料、色素、水等が挙げられる。
【0029】
具体的には、界面活性剤としては、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、ポリグリセリンモノステアレート、モノオレイン酸ソルビタン、ステアリン酸PEG−40等のポリエチレングリコールモノステアレート、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレン化ステロール、グリセロール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化ラノリン、ポリオキシエチレン化蜜ロウ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のノニオン界面活性剤、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、セチル硫酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、パルミチン酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルリン酸ナトリウム、N−アシルグルタミン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等のカチオン界面活性剤、塩化アルキルアミノエチルグリシン液、レシチン等の両性界面活性剤等を例示することができる。
【0030】
油分としては、ヒマシ油、オリーブ油、カカオ油、椿油、ヤシ油、木ロウ、ホホバ油、グレープシード油、アボガド油等の植物油脂類、ミンク油、卵黄油等の動物油脂類、ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等のロウ類、流動パラフィン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、パラフィンワックス、ワセリン等の炭化水素類、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸等の天然及び合成脂肪酸類、セタノール、(セト)ステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、ラウリルアルコール等の天然及び合成高級アルコール類、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、コレステロールオレート等のエステル類等、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン類を例示することができる。
【0031】
保湿剤としては、グリセリン、濃グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類、アミノ酸、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等のNMF成分、ヒアルロン酸、コラーゲン、ムコ多糖類、コンドロイチン硫酸等の水溶性高分子物質等を例示することができる。
【0032】
増粘剤としては、(C)成分以外のものをさらに用いることもでき、ケイ酸アルミニウム、ベントナイト等の無機物マルメロ種子抽出物、クインスシード抽出物、トラガントガム、デンプン、キサンタンガム等の天然高分子物質等が挙げられる。
【0033】
防腐剤としては、安息香酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸塩、デヒドロ酢酸塩、パラオキシ安息香酸エステル、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル、3,4,4’−トリクロロカルバニリド、塩化ベンザルコニウム、レゾルシン、エタノール等を例示することができる。
【0034】
酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸等が例示され、キレート剤としては、エデト酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸塩、ピロリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、クエン酸、酒石酸、グルコン酸等が例示され、pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂、無水リン酸水素カリウム等が例示される。
【0035】
紫外線吸収・散乱剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、オクチルジメチルパラアミノベンゾエート、エチルヘキシルパラメトキシサイナメート、酸化チタン、カオリン、タルク等を例示することができる。ビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンK、ビタミンP、ビタミンU、カルニチン、フェルラ酸、γ−オリザノール、α−リポ酸、オロット酸及びそれらの誘導体を例示することができる。アミノ酸類としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、シスチン、システィン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、ヒスチジン、リジン及びそれらの誘導体等を例示することができる。
【0036】
本発明の組成物は、常法により水溶性成分と油溶性成分とをそれぞれ溶解、混合することで調製することができる。具体的には、親水性ゲル基剤と水とを膨潤させた後、この膨潤物に水溶性成分を混合した後、予め溶解させた油溶性成分を混合する方法が挙げられる。
【0037】
本発明の組成物を充填する容器は特に限定されず、チューブでも、ボトルでもよいが、使いやすさの点からチューブが好ましい。組成物を容器に充填し、組成物を容器に充填してなる組成物、容器充填用組成物、組成物と、これを充填する容器とを備えた製品とすることができる。
【0038】
本発明の組成物は容器材質にかかわらず、容器への非イオン性薬物の吸着を防ぎ、非イオン性薬物を安定に配合できることから、容器内面はどのような樹脂であってもよい。例えば、容器内面の樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシフェノール樹脂、エポキシユリア樹脂、フッ素樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエチレン樹脂及びこれらの混合樹脂等が挙げられる。中でも、本発明の効果をより発揮する点からは、これまで非イオン性薬物吸着の問題があった、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシフェノール樹脂、エポキシユリア樹脂、フッ素樹脂及びこれらの混合樹脂から選ばれる樹脂で、内面がコーティングされた容器に充填することが好ましい。
【0039】
内面は上記樹脂でコーティングし焼き付けてあればよく、そのコーティンク膜厚は通常1〜5μmであり、1.5〜4μmが好ましい。また、容器外面は金属製であれば特に限定されず、アルミニウム等から適宜選択される。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%、比率は質量比を示し、表中の各成分の量は純分換算した量である。
【0041】
[実施例1〜35、比較例1〜12]
表1〜9に示す組成のペースト状口腔用組成物を調製した。実施例粘度は、50〜100Pa・s(BH型粘度計No.7(25℃))、pHは5.0〜7.0であった。得られた組成物について、下記評価を行った。
【0042】
<非イオン性薬物残存率(%)>
組成物20gをエポキシ・フェノール樹脂焼付けコーティングアルミニウムチューブに充填し、50℃・1ヶ月で保存した。製造直後と保存後の非イオン性薬物含量を、常法によりHPLCで測定した。得られた値から、下記式に基づいて非イオン性薬物の残存率(%)を算出した。
残存率(%)=(保存後の非イオン性薬物含量/製造直後の非イオン性薬物含量)×100
【0043】
<製剤保存安定性>
組成物20gをエポキシフェノール樹脂焼付けコーティングアルミニウムチューブに充填し、50℃・2ヶ月で保存した。保存後、チューブを切り開き、外観により製剤保存安定性を評価した。結果を下記評価基準に基づいて示す。
[製剤保存安定性評価基準]
○:外観に変化が認められなかった。
△:水又は油の浸み出しが認められた。
×:水相と油相が分離した。
【0044】
<使用性>
組成物を歯グキに塗布した時の使用性を評価した。結果を下記評価基準に基づいて示す。
組成物を歯グキに塗布した時の使用性をヒト使用試験により評価した。被験者10名に、組成物0.3gを歯グキに塗布してもらい、「のびやすさ」を下記評点で各々評価した。結果を10名の平均値から下記の評価基準で示す。
[評点]
4点:歯グキへの「のび」が非常に良好である。
3点:歯グキへの「のび」が良好である。
2点:歯グキへの「のび」がやや劣る。
1点:歯グキへの「のび」が劣る。
[評価基準]
◎:評点が3.5点以上4点以下
○:評点が3点以上3.5点未満
△:評点が2点を超えて3点未満
×:評点が2点以下
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
【表5】

【0050】
【表6】

【0051】
【表7】

【0052】
【表8】

【0053】
【表9】

【0054】
下記、ヒノキチオール(実施例11)、イソプロピルメチルフェノール(実施例26)、トリクロサン(実施例34)の各実施例について、充填容器の種類による残存率を評価した。
<充填容器の種類による残存率>
表10に示す樹脂により焼付けコーティングアルミニウムチューブに組成物を充填し、50℃・1ヶ月で保存した。製造直後と保存後の非イオン性薬物含量を、常法によりHPLCで測定した。得られた値から、下記式に基づいて非イオン性薬物の残存率(%)を算出した。
残存率(%)=(保存後の非イオン性薬物含量/製造直後の非イオン性薬物含量)×100
【0055】
【表10】

【0056】
<口内炎に対する有用性評価>
実施例11及び比較例3のペースト状口腔用組成物について、下記口内炎に対する有用性評価を行った。結果を表3に示す。
口内炎症状のある成人男女42例(実施例11)、23例(比較例3)に対し、1日2〜4回適量を患部に塗布させ、1週間後の有用性を4段階(極めて有用、有用、やや有用、有用でない)で判断した。被験者に対する各評価段階の割合を示す。
【0057】
【表11】

【0058】
下記表12〜22に示す組成のローション、乳液、歯磨、洗口剤を常法に基づいて調製した。得られたものについて、上記と同様の方法で製剤保存安定性を評価し、使用性評価は、下記方法で行った。
<使用性>
(ローション・乳液)
組成物を顔に塗布した時の使用性(皮膚へののびやすさ)を評価した。結果を下記評価基準に基づいて示す。
被験者10名に、組成物(ローションあるいは乳液)1mLを手のひらにとり顔に塗布してもらい、「のびやすさ」を下記評点で各々評価した。結果を10名の平均値から下記評価基準で示す。
[評点]
4点:皮膚への「のび」が非常に良好である。
3点:皮膚への「のび」が良好である。
2点:皮膚への「のび」がやや劣る。
1点:皮膚への「のび」が劣る。
[評価基準]
◎:評点が3.5点以上4点以下
○:評点が3点以上3.5点未満
△:評点が2点を超えて3点未満
×:評点が2点以下
【0059】
(歯磨・洗口剤)
組成物を口腔内に含んだ時の使用性(歯磨の場合は歯面及び歯グキへののびやすさ、洗口剤の場合は口腔内への広がりやすさ)を評価した。結果を下記評価基準に基づいて示す。
被験者10名に、歯磨は0.3gを歯ブラシにとり歯グキへ塗布したときの「のび」を、洗口剤は10mLを口腔内に含んだときの、「広がりやすさ」を下記評点で各々評価した。結果を10名の平均値から下記評価基準で示す。
[評点]
4点:歯面及び歯グキへの「のび」が非常に良好である。
口腔内への「広がりやすさ」が非常に良好である。
3点:歯面及び歯グキへの「のび」が良好である。
口腔内への「広がりやすさ」が良好である。
2点:歯面及び歯グキへの「のび」がやや劣る。
口腔内への「広がりやすさ」がやや劣る。
1点:歯面及び歯グキへの「のび」が劣る。
口腔内への「広がりやすさ」が劣る。
[評価基準]
◎:評点が3.5点以上4点以下
○:評点が3点以上3.5点未満
△:評点が2点を超えて3点未満
×:評点が2点以下
【0060】
【表12】

【0061】
【表13】

【0062】
【表14】

【0063】
【表15】

【0064】
【表16】

【0065】
【表17】

【0066】
【表18】

【0067】
【表19】

【0068】
【表20】

【0069】
【表21】

【0070】
【表22】

【0071】
実施例に用いた原料を下記に示す。
ヒノキチオール:丸善製薬株式会社製
イソプロピルメチルフェノール:大阪化成株式会社製
ゲル化炭化水素(プラスティベース(商標)):ブリストル・マイヤーズ株式会社製
カルボキシビニルポリマー(Carbopol 980):NOVEON社製
ポリビニルピロリドン(PLASDONE K−90):アイエスビー・ジャパン株式会社製
アルギン酸ナトリウム(ダックアルギン FF−SL−10):株式会社フードケミファ製

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)非イオン性薬物、(B)ゲル化炭化水素及び(C)親水性ゲル基剤を含有する組成物。
【請求項2】
(A)非イオン性薬物:(B)ゲル化炭化水素で表される含有質量比が、1:0.5以上である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
(A)非イオン性薬物:(B)ゲル化炭化水素で表される含有質量比が、1:1〜50である請求項2記載の組成物。
【請求項4】
(B)ゲル化炭化水素:(C)親水性ゲル基剤で表される含有質量比が、1:0.04以上である請求項1、2又は3記載の組成物。
【請求項5】
(C)親水性ゲル基剤が、ビニル系高分子化合物、セルロース系高分子化合物、アルギン酸又はアルギン酸塩である請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
(A)非イオン性薬物が、ヒノキチオール、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン又はチモールである請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物を、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシフェノール樹脂、エポキシユリア樹脂、フッ素樹脂及びこれらの混合樹脂から選ばれる樹脂で、内面がコーティングされた容器に充填してなる組成物。

【公開番号】特開2011−116754(P2011−116754A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248529(P2010−248529)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】