非ガウス特性振動制御装置
【課題】連続した非ガウス特性のランダム波形を生成する。
【解決手段】非ガウス特性波形生成手段B05は、制御用PSDの各周波数成分に位相を与えて逆フーリエ変換し、これに窓関数を掛けて、1フレームのランダム波形を生成する。位相設定手段B07は、(i)最初のラインについてはランダムな初期位相φ0をそのまま与え、(ii)隣接する各ラインには、正規分布に従ったランダムな位相差ΔφRを各ラインの位相に順次加算したものを与える。重ね合わせ波形生成手段B11は、非ガウス特性ランダム波形を複数フレーム受けて、これらをシフトして足し合わせる。
【解決手段】非ガウス特性波形生成手段B05は、制御用PSDの各周波数成分に位相を与えて逆フーリエ変換し、これに窓関数を掛けて、1フレームのランダム波形を生成する。位相設定手段B07は、(i)最初のラインについてはランダムな初期位相φ0をそのまま与え、(ii)隣接する各ラインには、正規分布に従ったランダムな位相差ΔφRを各ラインの位相に順次加算したものを与える。重ね合わせ波形生成手段B11は、非ガウス特性ランダム波形を複数フレーム受けて、これらをシフトして足し合わせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、目標とする非ガウス特性振動が、供試体に与えられるように振動試験機を制御する振動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
輸送中や稼働中に被る振動による影響をシミュレートするため、供試体に所望の振動を与える振動試験が行われている。振動試験において、所望の振動となるように振動試験機を制御するのが振動制御装置である。
【0003】
現実に加えられる振動を記録しておき、この振動を供試体に与えることができれば、正確な振動試験を行うことが可能である。しかし、実際の振動波形自体を記録し再現するためには、膨大な記録容量が必要であるため、一般的にはあまり用いられていない。
【0004】
一方で、正弦波による振動を与える試験も行われている。この場合、正弦波を出力するだけであるから制御は容易であるが、現実に加えられる振動との乖離が大きすぎるという問題がある。
【0005】
そこで、現実に加えられる振動の周波数特性(PSD:パワースペクトル密度)を算出し、当該目的とするパワースペクトル密度を有する振動を供試体に加えるランダム振動試験が行われている。
【0006】
図13に、特許文献1に開示された従来のランダム振動試験のための振動制御装置を示す。振動試験機2自体も周波数特性を有するので、目標とするスペクトルを有する振動を与えたとしても、そのとおりの振動が供試体4には与えられない。したがって、振動制御装置により、供試体4の振動波形のスペクトル(応答PSD)が、目標PSDに等しくなるように、フィードバック制御を行っている。
【0007】
振動試験機2に固定された供試体4は、振動試験機2によって振動させられる。供試体4の振動は、加速度センサ6によって検出され、A/D変換器8によってディジタル信号である応答波形とされる。PSD算出手段11は、応答波形をフーリエ変換し、応答PSDを算出する。
【0008】
制御用PSD算出手段13は、目標PSDと応答PSDとを比較し、両者が等しくなるように制御用PSDを算出する。ドライブ波形生成手段15は、制御用PSDの各周波数成分にランダムな位相を与えて逆フーリエ変換を行い、ドライブ波形を生成する。
【0009】
D/A変換器10は、生成されたドライブ波形をアナログ信号に変換し、振動試験機2に与える。
【0010】
以上のようにして、目標PSDを有する振動を供試体4に与えるよう制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−068718
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1の振動制御装置では、目標とするスペクトルを有する振動を供試体4に与えることはできるものの、その振動の確率密度分布は、図14に実線で示すガウス分布(正規分布)となる。しかし、現実の振動は非ガウス分布(図14に点線で示す)となることが多いにもかかわらず、従来の振動制御装置では、非ガウス特性を有する振動を供試体に与えることはできなかった。
【0013】
この発明は、上記の問題を解決して、目標とするスペクトルだけでなく、目標とする非ガウス特性を有する振動を供試体4に与えることを目的とする。さらに詳しくは、目標とする非ガウス特性を有する振動を供試体4に与えるよう制御することができる振動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)この発明の振動制御装置は、
供試体の加速度を測定する加速度センサからの応答波形をフーリエ変換して、応答PSDを算出するPSD算出手段、
応答PSDを目標PSDと比較して制御用PSDを求めるPSD比較手段、
制御用PSDの各周波数成分に位相を与えて逆フーリエ変換することにより、フレーム波形を生成するフレーム波形生成手段、
複数のフレーム波形をシフトして重ね合わせることにより生成したドライブ波形を出力する重ね合わせ波形生成手段、
を備えた振動制御装置において、
前記フレーム波形生成手段は、
制御用PSDの第1の周波数成分に初期位相を与え、隣接する周波数成分には、正規分布に従ったランダムな位相差を順次加算して算出した位相を与えて逆フーリエ変換することにより非ガウス特性のランダム波形を生成すること、
を特徴とする。
【0015】
これにより、非ガウス特性を有する振動を供試体に与えて制御することが可能な振動制御装置を提供することができる。
【0016】
(2)この発明の振動制御装置は、
前記フレーム波形生成手段が、
フレーム波形のピーク位置がランダムになるように正規分布の中心値を設定すること、
これにより、非ガウス特性の劣化を低減することができる。
【0017】
(3)この発明の振動制御装置は、
供試体の加速度を測定する加速度センサからの応答波形をフーリエ変換して、応答PSDを算出するPSD算出手段、
応答PSDを目標PSDと比較して制御用PSDを求めるPSD比較手段、
制御用PSDの各周波数成分に位相を与えて逆フーリエ変換することにより、フレーム波形を生成するフレーム波形生成手段、
複数のフレーム波形をシフトして重ね合わせることにより生成したドライブ波形を出力する重ね合わせ波形生成手段、
を備えた振動制御装置において、
前記フレーム波形生成手段は、
目標非ガウス特性に基づいて、制御用PSDの第1の周波数成分に初期位相を与え、隣接する周波数成分には、正規分布に従ったランダムな位相差を順次加算して算出した位相を与えて逆フーリエ変換することにより非ガウス特性のランダム波形を生成してフレーム波形を生成すること、
を特徴とする。
【0018】
これにより、応答波形の非ガウス特性が目標非ガウス特性と一致するようにドライブ波形を制御することができる。
【0019】
(4)この発明の振動制御装置は、
供試体の加速度を測定する加速度センサからの応答波形をフーリエ変換して、応答PSDを算出するPSD算出手段、
応答PSDを目標PSDと比較して制御用PSDを求めるPSD比較手段、
制御用PSDの各周波数成分に位相を与えて逆フーリエ変換することにより、フレーム波形を生成するフレーム波形生成手段、
複数のフレーム波形をシフトして重ね合わせることにより生成したドライブ波形を出力する重ね合わせ波形生成手段、
を備えた振動制御装置において、
前記フレーム波形生成手段は、
応答波形から得られた非ガウス特性と目標非ガウス特性とを比較して得た非ガウス特性に基づいて、制御用PSDの第1の周波数成分に初期位相を与え、隣接する周波数成分には、正規分布に従ったランダムな位相差を順次加算して算出した位相を与えて逆フーリエ変換することにより非ガウス特性のランダム波形を生成してフレーム波形を生成すること、
を特徴とする。
【0020】
これにより、応答波形から得られた非ガウス特性と目標非ガウス特性とを比較して得た非ガウス特性に一致するように、ドライブ波形を正確にフィードバック制御することができる。
【0021】
(5)この発明の振動制御装置は、
前記応答波形から非ガウス特性値を算出して、前記非ガウス特性制御手段に与える非ガウス特性算出手段を備えたこと、
を特徴とする。
【0022】
これにより、応答波形から算出される非ガウス特性値に基づいて、ドライブ波形を正確にフィードバック制御することができる。
【0023】
(6)この発明の振動制御装置は、
供試体の加速度を測定する加速度センサからの応答波形をフーリエ変換して、応答PSDを算出するPSD算出手段、
応答PSDを目標PSDと比較して制御用PSDを求めるPSD比較手段、
制御用PSDの各周波数成分に位相を与えて逆フーリエ変換することにより、ガウス特性のフレーム波形を生成するフレーム波形生成手段、
複数のフレーム波形をシフトして重ね合わせることにより生成したランダム波形を出力する重ね合わせ波形生成手段、
を備えた振動制御装置において、
前記ガウス特性のランダム波形を、入力された非ガウス特性に基づいて、非ガウス特性のランダム波形に変換する非ガウス化変換手段、
非ガウス特性を前記非ガウス化変換手段に与える非ガウス特性制御手段、
を備えたこと、を特徴とする。
【0024】
これにより、応答の周波数成分が変化する場合でも、応答の非ガウス特性が目標値と一致するようにドライブ波形を正確にフィードバック制御することができる。
【0025】
(7)この発明の振動制御装置は、
前記フレーム波形生成手段が、クルトシスに対応する標準偏差の正規分布に基づいて設定された位相を受けること、
を特徴とする。
【0026】
これにより、制御しようとするクルトシスを有する非ガウス特性波形を生成することができる。
【0027】
(8)この発明の振動制御装置は、
前記フレーム波形生成手段が、スキューネスに対応する初期位相を受けること、
を特徴とする。
【0028】
これにより、制御しようとするスキューネスを有する非ガウス特性波形を生成することができる。
【0029】
(9)この発明の振動制御装置は、
供試体の加速度を測定する加速度センサからの応答波形をフーリエ変換して、応答PSDを算出するPSD算出手段、
応答PSDを目標PSDと比較して制御用PSDを求めるPSD比較手段、
制御用PSDの各周波数成分に位相を与えて逆フーリエ変換するとともに、窓関数を掛けることにより、非ガウス特性を有するフレーム波形を生成するフレーム波形生成手段、
複数のフレーム波形をシフトして重ね合わせることにより生成した非ガウス特性を有するドライブ波形を出力する重ね合わせ波形生成手段、
を備えたこと、を特徴とする。
【0030】
これにより、複数のフレーム波形を重ね合わせた非ガウス特性を有する連続したドライブ波形を容易に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】振動制御装置100のブロック図である。
【図2】振動制御装置100のハードウェア構成を示す図である。
【図3】目標PSDのデータ例(図3A)および標準偏差σと目標クルトシスK’との関係(図3B)を示す図である。
【図4】制御プログラム18の実行する処理を示すフローチャートである。
【図5】位相設定処理の詳細を示すフローチャートである。
【図6】正規分布に従う位相差Δφの確率密度関数を示すグラフである。
【図7】フレームをシフトして重ね合わせる処理を説明するための図である。
【図8】応答波形から得た非ガウス特性をフィードバック制御した振動制御装置200のブロック図である。
【図9】位相設定処理の詳細を示すフローチャートである。
【図10】他の実施形態のブロック図である。
【図11】ZMNL関数を示す図である。
【図12】他の実施形態のブロック図である。
【図13】従来のランダム振動試験のための振動制御装置を示す図である。
【図14】従来のランダム振動試験により得られる加速度の確率密度分布を示す図である。
【図15】波形の開始位置をずらせることにより、1つのPSDから複数フレームの非ガウス特性ランダム波形を生成した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
1.第1の実施形態(非ガウス特性のオープンループ)
図1に本発明の振動制御装置100のブロック図を示す。
【0033】
図1に示すPSD算出手段B01は、振動試験機2から得た応答波形をフーリエ変換して、応答PSDを算出する手段である。
【0034】
図1に示すPSD比較手段B03は、当該応答PSDを予め設定された目標PSDと比較して、制御用PSDを出力する手段である。なお、応答波形が存在しない起動時には、目標PSDをそのまま制御用PSDとして出力する。
【0035】
さらに、図1に示す非ガウス特性波形生成手段B05は、位相設定手段B07から与えられる位相を各周波数成分に与えて逆フーリエ変換し、これに窓関数を掛けることによって、1フレームのランダム波形を生成する手段である。
【0036】
図1に示す中心値設定手段B09は、与える位相の確率密度分布の中心値μを位相設定手段B07に与える。また、非ガウス特性制御手段B13は、予め設定された目標非ガウス特性[K’、S’]から、以下に説明する標準偏差σおよび初期位相φ0を求めて、位相設定手段B07に与える手段である。
【0037】
位相設定手段B07は、まず、(i)最初のライン(周波数成分)には、非ガウス特性制御手段B13から受けた初期位相φ0(0〜2π)を設定し、(ii)隣接する各ライン(周波数成分)には、正規分布[中心値μ、標準偏差σ]に従うランダムな位相差ΔφR(0〜2π)を順次加算して位相を設定する。
【0038】
ここで、重要な点は、各位相φkを一様なランダムで与えたのではないという点である。このように、正規分布に従ったランダムな位相差ΔφRを順に加算して各ラインの位相を算出することで、結果として、非ガウス特性のランダム波形を生成できる。
【0039】
図1に示す重ね合わせ手段B11は、非ガウス特性波形生成手段B05から非ガウス特性ランダム波形を複数受けて、これらをシフトして足し合わせることにより、連続した非ガウス特性ランダム波形を生成し、ドライブ波形として出力する手段である。
【0040】
非ガウス特性制御手段B13は、目標非ガウス特性([K’、S’])を読み出して、目標クルトシスK’に対応する制御用の標準偏差σと、目標スキューネスS’に対応する制御用の初期位相φ0の値を算出する手段である。
【0041】
以上の各手段を備えることで、本発明の振動制御装置100は、目標非ガウス特性を有する連続した非ガウス特性のランダム波形を生成し、振動試験機2に与えることができる。
【0042】
[ハードウェア構成]
図1の振動制御装置100のハードウエア構成を、図2に示す。振動制御装置100には、A/D変換器8、D/A変換器10、メモリ12、フラッシュROM14、DSP16が接続されている。
【0043】
振動試験機2によって振動させられた供試体4の振動は、加速度センサ6によって検出され、アナログの応答波形としてA/D変換器8に出力される。A/D変換器8は、アナログの応答波形をデジタルデータに変換する。D/A変換器10は、デジタルのドライブ波形をアナログ信号に変換して、振動試験機2に与える。
【0044】
フラッシュROM14には、非ガウス波形制御のための制御プログラム18が記録されている。制御プログラム18は、目標PSDのデータのほか、制御しようとする目標非ガウス特性[目標クルトシスK’、目標スキューネスS’]の値や、これら目標非ガウス特性[目標クルトシスK’、目標スキューネスS’]に対応する標準偏差σ、初期位相φ0を決定するための計算式・テーブルを有する(図示せず)。
【0045】
図3Aに、目標PSDとして予め設定された、一般的な輸送環境(主として道路)に対応するPSDデータの例を示す(JIS Z 0232)。図3Bに、目標クルトシスK’に対応する標準偏差σを算出するために用いられる、目標クルトシスK’と、位相差Δφの確率密度分布の標準偏差σとの関係を示す。
【0046】
図3Bのグラフを見ると、標準偏差σの値を大きくすれば、確率密度分布の急峻度(尖度)を示すクルトシスKは3に近づいていくこと、すなわち、ガウス特性のランダム振動が得られることがわかる。一方で、標準偏差σの値を小さくしていくと、クルトシスKの値が大きくなっていくこと、非ガウス特性のランダム振動が得られることがわかる。このようなクルトシスKと標準偏差σの関係に基づき、所望のクルトシスKに対応する標準偏差σの値を設定することが可能となる。
【0047】
分布の非対称性(歪度)を示すスキューネスSには、初期位相φ0との相関性が存在することが知られている。しかし、クルトシスKと標準偏差σの関係のように一義的に定まるものではなく、クルトシスKとの関係を考慮して探索して決定することが可能である。よって、例えば、予めクルトシスKおよび初期位相φ0との関係で得られる目標スキューネスSの関係を実測してテーブルに記憶しておくことで、目標スキューネスS’に対応する初期位相φ0の値を得ることができる。また、初期位相φ0を設計変数にして、K、Sを目的関数として予めアルゴリズムを作成しておくことで、スキューネスSを導き出すことも可能である。
【0048】
[制御プログラム18のフローチャート]
図2に示す制御プログラム18により実行される処理について、図4のフローチャートを用いて以下に説明する。
【0049】
まず、DSP16(図2)は、振動試験機2からの応答波形を取得する(ステップS100)。これを応答波形フーリエ変換して、各周波数成分についての応答PSDを算出し、メモリ12に記憶する(ステップS102)。
【0050】
さらに、予め設定された目標PSDをフラッシュROM14から読み出し(ステップS104)、応答PSDを目標PSDと比較して、応答PSDが目標PSDと等しくなるように制御用PSDを生成する(ステップS106)。例えば、応答PSDと目標PSDとで、誤差スペクトルを求め制御用PSDを調整する処理を実行する。
【0051】
DSP16は、ステップS106で生成した制御用PSDの各周波数成分に与える位相を算出し(ステップS108)、逆フーリエ変換処理を実行する(ステップS110)。
【0052】
図5に位相設定処理(ステップS108)の詳細なフローチャートを示す。
【0053】
図5に示すように、DSP16は、フラッシュROM14に記憶された目標非ガウス特性[目標クルトシスK’、目標スキューネスS’]の値を読み出す(ステップS200)。例えば、K’=4、S’=0の値が読み出される。
【0054】
つぎに、目標非ガウス特性[目標クルトシスK’、目標スキューネスS’]に対応する標準偏差σ、初期位相φ0を設定する(ステップS202)。例えば、目標クルトシスK’=4のとき、図3Bに示すグラフから、対応する標準偏差σを220に設定する。目標非ガウス特性Sに対応する初期位相φ0は、目標スキューネスS’および目標クルトシスK’の値に基づいてテーブルを参照して設定することができる。
【0055】
さらに、DSP16は、正規分布の中心値μを設定する(ステップS204)。例えば、中心値μの値として、フレーム毎に0〜2πの間で一様にランダムな値を設定することができる。これにより、各フレームのピーク位置をランダムにすることが可能であり、クルトシスの劣化を抑制することができる。
【0056】
DSP16は、ステップS202で設定した初期位相φ0を、フレーム波形生成手段B05に与える(ステップS206)。さらに、図6に示すような正規分布[標準偏差σ、中心値μ]に従うランダムな位相差ΔφRを各位相ごとに発生させて、これを順次加えた位相φkを算出してフレーム波形生成手段B05に与える(ステップS208)。このように、最初の周波数成分に隣接する各周波数成分については、k番目の位相φk-1を、φk-1=φk-2+ΔφRより算出する。
【0057】
すなわち、第2ラインの周波数成分PSD1に対しては、正規分布に従った0〜2πまでのランダムな位相差ΔφR1を、ステップS202で設定した初期位相φ0に加算して得た位相φ1(=φ0+ΔφR1)が与えられる。第3ラインの周波数成分PSD2に対しては、正規分布に従ったランダムな位相差ΔφR2を位相φ1に加算して得た位相φ2(=φ1+ΔφR2)が与えられる。以降のラインについても同様にして、全ての隣接するラインに位相差ΔφRを順次加算して得た位相が与えられる。
【0058】
上記のように与えた位相を設定して、図4のステップS110に示す逆フーリエ変換処理を実行した後、DSP16は、生成した非ガウス特性ランダム波形に窓関数を掛け合わせて窓操作処理を実行する(図4のステップS112)。なお、この実施形態では、1つの制御用PSDに対して、生成した異なる位相を与えて、複数フレームの非ガウス特性ランダム波形を生成するようにしている。
【0059】
ここで、窓関数を用いるのは、各フレーム間の非ガウス特性ランダム信号を滑らかに繋ぐためである。この実施形態では、窓関数としてハニングウインドウを用いている。
【0060】
窓操作処理を実行した所定フレーム数の非ガウス特性ランダム波形は、シフトした上で(ステップS114)、順に重ね合わせ処理が行われる(ステップS116)。例えば、図7に示すように、所定長だけずらされた状態で、波形W1〜Wnが足し合わされる。これにより、図7に示す連続した波形Wが生成される。
【0061】
なお、制御用PSD(図4のステップS106で生成)は、離散値として算出された線スペクトルであるから、これに基づいて生成される非ガウス特性ランダム波形は、線スペクトルとしての周波数特性を有することになる。しかし、この実施形態では、異なる波形の非ガウス特性ランダム波形を複数生成し、窓操作、重ね合わせを行うことで線スペクトルを連続スペクトル化している。
【0062】
つまり、1つの制御用PSDに対して、生成した異なる位相を与えて、複数フレームの非ガウス特性ランダム波形を生成し、これらに窓操作処理(ステップS112)を実行し、さらに、シフト処理(ステップS114)および重ね合わせ処理(ステップS116)を施すことにより、線スペクトルから連続スペクトルに変えることができる。
【0063】
DSP16は、所定数のフレームを重ね合わせた連続した非ガウス特性ランダム波形をドライブ波形として出力する(図4のステップS120)。これにより、振動試験機2が、入力されたドライブ波形に基づいて、非ガウス特性の振動を発生させることができる。
【0064】
2.第2の実施形態(非ガウス特性のフィードバック)
上記のようなオープンループ制御の場合、生成した非ガウス特性ランダム波形に比べて、応答波形の非ガウス特性が劣化してしまうことがある(例えば、目標のクルトシスKが5であったとき、出力のクルトシスKが4に劣化してしまう)。このような場合、目標クルトシスK’よりも大きなクルトシスを与えることが必要となる。そこで、応答波形から得られる非ガウス特性[応答クルトシスK”とスキューネスS”]をフィードバック制御するようにしてもよい。
【0065】
応答波形から得られる振動加速度の確率密度分布から得られる応答クルトシスK”、応答スキューネスS”をフィードバック制御した振動制御装置200のブロック図を図8に示す。
【0066】
図8に示すブロック図は、非ガウス特性算出手段B15が追加されている点および非ガウス特性制御手段B13が応答非ガウス特性と、目標非ガウス特性とを比較して、制御用の非ガウス特性を決定する点で、図1に示すブロック図とは異なっている。
【0067】
図8に示す非ガウス特性算出手段B15は、応答波形から非ガウス特性[応答クルトシスK”とスキューネスS”]を算出して非ガウス特性制御手段13に与える手段である。
【0068】
制御プログラム18が実行する処理は、図4のフローチャートに示す処理と同じであるが、位相設定処理(図4のステップS108)の詳細が異なる。図9に本実施形態における位相設定処理(ステップS108)の詳細なフローチャートを示す。
【0069】
図9に示すように、DSP16は、まず、応答波形から応答非ガウス特性[応答クルトシスK”とスキューネスS”]を算出する(ステップS300)。応答非ガウス特性の算出は、応答波形から求めて行ってもよいし、ヒストグラム分析を行い確率密度分布から求めて行ってもよい。例えば、応答クルトシスK’=4、目標スキューネスS’=0の値が読み出される。
【0070】
つぎに、DSP16は、フラッシュROM14に記憶された目標非ガウス特性[目標クルトシスK’、目標スキューネスS’]の値を読み出す(ステップS302)。例えば、K’=6、S’=0の値が読み出される。
【0071】
さらに、DSP16は、応答非ガウス特性と、目標非ガウス特性とを比較して、制御用の非ガウス特性を決定する(ステップS304)。例えば、応答クルトシスK”=4で、目標クルトシスK’=6のとき、制御クルトシスKは、劣化した分を目標クルトシスK’に加算して、K=8に設定する。
【0072】
つぎに、制御非ガウス特性[制御クルトシスK’、制御スキューネスS’]に対応する標準偏差σ、初期位相φ0を設定する(ステップS306)。
【0073】
さらに、DSP16は、正規分布の中心値μを設定する(ステップS308)。例えば、中心値μの値として、フレーム毎に0〜2πの間で一様にランダムな値を設定することができる。
【0074】
DSP16は、ステップS202で設定した初期位相φ0を、フレーム波形生成手段B05に与える(ステップS310)。さらに、図6に示すような正規分布[標準偏差σ、中心値μ]に従うランダムな位相差ΔφRを各位相ごとに発生させて、これを順次加えた位相φkを算出してフレーム波形生成手段B05に与える(ステップS312)。このように、最初の周波数成分に隣接する各周波数成分については、k番目の位相φk-1を、φk-1=φk-2+ΔφRより算出する。
【0075】
上記のように設定した位相を与えて逆フーリエ変換処理(図4のステップS110)、窓操作処理(図4のステップS112)を実行して、応答非ガウス特性をフィードバック制御した非ガウス特性波形を生成することができる。
【0076】
3.第3の実施形態(ZMNL方式での非ガウス特性のフィードバック)
なお、上記実施形態では、非ガウス特性波形生成手段B05(図1、図8)を設けることにより、非ガウス特性ランダム波形を生成したが、図10に示す振動制御装置300のように、代わりにガウス特性波形生成手段B06を設け、ガウス特性ランダム波形を重ね合わせて、連続したガウス特性波形を生成した後で、非ガウス化変換手段B25を適用して、非ガウス波形を生成してもよい。
【0077】
この実施形態では、ガウス特性波形を非ガウス特性波形に変換するために、図11に示すようなZMNL関数による変換を行っている。ZMNL関数は、入力信号の振幅を、当該振幅の大きさによって非線形的に変換して出力するものである。これにより、ガウス特性波形を非ガウス特性波形に変換することができる。
【0078】
ただし、ZMNL変換を行うと波形のPSDが変化してしまう。この点については、図10に示すように、ZMNL変換がPSDを制御するフィードバックループの中に設けられているので、フィードバックループによって、このPSD変化を吸収することができる。つまり、ZMNL変換を挿入したとしても、目標PSDによる振動を達成することができる。
【0079】
なお、上記のようにZMNL変換は非線形変換であるため、特定の周波数領域(たとえば高周波)においては、フィードバック制御では補えない周波数変化をもたらす可能性もある。ただし、ほとんどの周波数帯域では、フィードバックによる制御が実効性を持ち、ほぼ目標PSDを達成できるといってよい。
【0080】
また、実施形態1、2において示した位相差をランダムに与える手法では、PSDに変化はない(制御用PSDを有する非ガウス特性ランダム波形を得ることができる)。この点において、実施形態1、2の手法の方が優れている。一方で、ZMNL関数による変換においては、非ガウス特性の制御が容易であるという特徴がある。
【0081】
図10に示すガウス特性波形生成手段B06は、フーリエ変換時に各周波数成分にランダムな位相φkを与える等により、ガウス特性波形を生成する手段であり、生成された波形は、重ね合わせ処理の後、非ガウス特性波形に変換される。
【0082】
図10に非ガウス特性制御手段B15は、応答非ガウス特性と、目標非ガウス特性とを比較して、決定した制御用の非ガウス特性[応答クルトシスK”、応答スキューネスS”]を非ガウス化変換手段B25に直接与えて、非ガウス特性をフィードバック制御している。
【0083】
非ガウス化変換手段B25としては、例えば、図11に示すZMNL関数を用いることができる。ZMNL関数は、周波数特性が変更してしまう欠点がある反面、クルトシスとスキューネスの値を直接与えることで非ガウス特性の波形を容易に生成できる点で、非ガウス特性の制御がしやすいという利点がある。また、クルトシスとスキューネスの値を算出しなくても、応答波形から得られる確率密度分布をそのままフィードバック制御に利用することができるという利点もある。
【0084】
そこで、この実施形態では、図11に示すようなZMNL関数(Zero-memory nonliner sysytem関数)を用いて、所望の非ガウス特性を有する信号に変換するようにしている(ステップS26)。図11において、横軸は与えられた信号であり、縦軸は出力信号である。ガウス特性ドライブ波形x(t)を、このZMNL関数によって変換すると、非ガウス特性ドライブ波形y(t)が得られる。
【0085】
ZMNL関数を数式で表すと、数1のとおりである。
【0086】
【数1】
【0087】
xがガウス特性信号、yが得られる非ガウス特性信号である。各係数の詳細は、数2に示すとおりである。
【0088】
【数2】
【0089】
上式におけるスキューネスS、クルトシスKの値を代入することにより、変換によって所望の非ガウス特性ドライブ波形を生成することのできるZMNL関数を得ることができる。
【0090】
なお、上式では、2.8より小さい目標クルトシスを設定することができない。そこで、数3のような関数を用いるようにしてもよい。
【0091】
【数3】
【0092】
係数Cnは、数4に示す誤差変数εを最小にする最適化問題を解くことにより決定することができる。
【0093】
【数4】
【0094】
以上のようにして得られた非ガウス特性ドライブ波形を与えることで、非ガウス特性を容易にフィードバックすることができる。
【0095】
4.伝達特性に基づく波形制御
第2、第3の実施形態では、生成した非ガウス特性ランダム波形を振動試験機2に与えても応答波形の非ガウス特性が劣化することに鑑み、非ガウス特性のフィードバック制御を行っている。
【0096】
しかし、生成した非ガウス特性ランダム波形と同じ振動を供試体4に与えることができれば、上記の問題は解決する。そこで、この実施形態では、以下のように伝達特性に基づいて波形制御することで、非ガウス特性ランダム波形と同じ振動を与えることとした。
【0097】
図12は、伝達特性に基づいてドライブ波形を修正する振動制御装置400のブロック図である。変換手段B23は、ドライブ波形生成手段32および制御特性更新手段34を備える。
【0098】
図12に示すドライブ波形生成手段32は、振動試験機2および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス特性ドライブ波形を変形してドライブ波形を生成する。ドライブ波形は、D/A変換器10によってアナログ信号に変換され、振動試験機2に与えられる。
【0099】
図12に示す制御特性更新手段34は、ドライブ波形と応答波形に基づいて、系の伝達特性を算出し、その逆特性である制御特性を更新する。更新された制御特性は、ドライブ波形生成手段32に与えられる。
【0100】
これにより、供試体4に対し、変換手段28の変換特性を設定することにより目標とする非ガウス特性を有し、かつ、目標スペクトルを有する振動を、供試体4に与えることができる。
【0101】
5.その他の実施形態
なお、上記実施形態(図1、図8)では、目標非ガウス特性の値を予め記憶することとしたが、これに限定されるものではない。例えば、目標非ガウス特性として、振動加速度の確率分布グラフを予め記憶しておき、これから目標非ガウス特性の値を算出してもよい。
【0102】
なお、上記実施形態(図8)では、非ガウス特性算出手段B15が応答波形から算出した応答非ガウス特性の値と、予め記憶された目標非ガウス特性の値とを比較することとしたが、これに限定されるものではない。
【0103】
例えば、図8に示す非ガウス特性算出手段B15を設けずに、非ガウス特性制御手段B13が、応答波形から振動加速度の確率密度分布を生成し、これを目標非ガウス特性として予め記憶した振動加速度の確率密度分布と比較するようにしてもよい。この場合、応答波形から非ガウス特性(スキューネス、クルトシス)の値を算出する必要がない。
【0104】
なお、上記実施形態では、図1に示す中心値設定手段B09は、正規分布の中心値μを0〜2πの間で一様にランダムな値に設定したが(図5のステップS204および図9のステップS308)、これに限定されるものではない。例えば、正規分布の中心値μを固定値に設定してもよい。
【0105】
なお、上記実施形態では、隣接する周波数成分に加算するランダムな位相差ΔφRを0〜2πの間に収まるように算出したが(図5のステップS208、図9のステップS312)、これに限定されるものではない。例えば、次式 ΔφR=2π(P+σ・RND)により、ランダムな位相差ΔφRを算出するようにしてもよい。ここで、Pはフレームにおけるピークの出現位置(0〜1)、σは標準偏差、RNDは正規乱数(0〜1)を示す。
【0106】
なお、図10に示す第3の実施形態では、応答波形の非ガウス特性をフィードバック制御しているが、応答波形の非ガウス特性をフィードバック制御しないようにしてもよい。
【0107】
なお、図12に示す第4の実施形態では、応答波形の非ガウス特性をフィードバック制御していないが、応答波形の非ガウス特性をフィードバック制御するようにしてもよい。
【0108】
なお、上記実施形態では、予め設定した目標非ガウス特性に近づくように非ガウス波形を生成したが、目標非ガウス特性を設定しないて非ガウス波形を生成してもよい。
【0109】
なお、上記実施形態では標準偏差σに対応する目標クルトシスを設定したが、分散σ2に対応する目標クルトシスを設定してもよい。
【0110】
なお、上記実施形態では、DSP16によって処理を実行したが、代わりにCPUを用いて処理を実行してもよい。
【0111】
なお、上記実施形態では、1つの制御用PSDから複数フレームの非ガウス性ランダム波形を生成する際に、フレーム毎に異なった位相を与えるようにしている、すなわち、制御用PSDの各ラインの強度をP1, P2, P3, P4......Pnとしたとき、以下のようにφ1,φ2,φ3,φ4....φmを与えて、逆フーリエ変換を行っている。
【0112】
1フレーム目 P1(φ1)、P2(φ2)、P3(φ3)...Pn(φn)
2フレーム目 P1(φn+1)、P2(φn+2)、P3(φn+3)...Pn(φn+n)
3フレーム目 P1(φ2n+1)、P2(φ2n+2)、P3(φ2n+3)...Pn(φ2n+n)
・
・
・
mフレーム目 P1(φn(m-1)+1)、P2(φn(m-1)+2)、P3(φn(m-1)+3)...Pn(φn(m-1)+n)
上記のように、フレーム毎に異なった位相を与えることにより、窓関数をかけて重ね合わされた波形の、PSDは線スペクトルではなく連続スペクトルになる。
【0113】
しかし、複数のフレームに同一の位相を与えて、複数フレームの非ガウス性ランダム波形を生成し、窓関数をかけて重ね合わせることにより、PSDとして線スペクトルを有する波形を得ることもできる。すなわち、制御用PSDの各ラインの強度をP1, P2, P3, P4......Pnとしたとき、以下のようにφ1,φ2,φ3,φ4....φmを与えて、逆フーリエ変換を行っている。
【0114】
1フレーム目 P1(φ1)、P2(φ2)、P3(φ3)...Pn(φn)
2フレーム目 P1(φ1)、P2(φ2)、P3(φ3)...Pn(φn)
3フレーム目 P1(φ1)、P2(φ2)、P3(φ3)...Pn(φn)
・
・
・
mフレーム目 P1(φ1)、P2(φ2)、P3(φ3)...Pn(φn)
換言すると、複数フレームについて同一の非ガウス性ランダム波形を生成し、これに窓関数をかけて重ね合わせた場合には、線スペクトルを有する波形を得ることができる。
【0115】
通常は、連続スペクトルを有する波形の方が好ましいが、試験の目的によっては線スペクトルを用いることもできる。
【0116】
なお、上記実施形態では、異なる位相を与えることにより、1つの制御用PSDから複数フレームの非ガウス性ランダム波形を生成することとしたが、これに限定されるものではない。例えば、図15に示すように、開始位置をランダムにして、波形をずらせることにより、1つの制御用PSDから複数フレームの非ガウス性ランダム波形を生成してもよい。
【0117】
具体的には、1つの制御用PSDから、図15Aに示す1フレームのランダム波形w1を生成する。次に、開始位置をそれぞれランダムな位置T2、T3、T4(図15B、C、D)にずらせて、このランダム波形W1を循環的に読み出す。すなわち、1フレームの終わりまで読み出すと、先頭に戻って読み出しを続ける。これにより、図15B、C、Dに示す複数フレームの非ガウス性ランダム波形W2、W3、W4を簡単に生成することができる。
【技術分野】
【0001】
この発明は、目標とする非ガウス特性振動が、供試体に与えられるように振動試験機を制御する振動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
輸送中や稼働中に被る振動による影響をシミュレートするため、供試体に所望の振動を与える振動試験が行われている。振動試験において、所望の振動となるように振動試験機を制御するのが振動制御装置である。
【0003】
現実に加えられる振動を記録しておき、この振動を供試体に与えることができれば、正確な振動試験を行うことが可能である。しかし、実際の振動波形自体を記録し再現するためには、膨大な記録容量が必要であるため、一般的にはあまり用いられていない。
【0004】
一方で、正弦波による振動を与える試験も行われている。この場合、正弦波を出力するだけであるから制御は容易であるが、現実に加えられる振動との乖離が大きすぎるという問題がある。
【0005】
そこで、現実に加えられる振動の周波数特性(PSD:パワースペクトル密度)を算出し、当該目的とするパワースペクトル密度を有する振動を供試体に加えるランダム振動試験が行われている。
【0006】
図13に、特許文献1に開示された従来のランダム振動試験のための振動制御装置を示す。振動試験機2自体も周波数特性を有するので、目標とするスペクトルを有する振動を与えたとしても、そのとおりの振動が供試体4には与えられない。したがって、振動制御装置により、供試体4の振動波形のスペクトル(応答PSD)が、目標PSDに等しくなるように、フィードバック制御を行っている。
【0007】
振動試験機2に固定された供試体4は、振動試験機2によって振動させられる。供試体4の振動は、加速度センサ6によって検出され、A/D変換器8によってディジタル信号である応答波形とされる。PSD算出手段11は、応答波形をフーリエ変換し、応答PSDを算出する。
【0008】
制御用PSD算出手段13は、目標PSDと応答PSDとを比較し、両者が等しくなるように制御用PSDを算出する。ドライブ波形生成手段15は、制御用PSDの各周波数成分にランダムな位相を与えて逆フーリエ変換を行い、ドライブ波形を生成する。
【0009】
D/A変換器10は、生成されたドライブ波形をアナログ信号に変換し、振動試験機2に与える。
【0010】
以上のようにして、目標PSDを有する振動を供試体4に与えるよう制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−068718
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1の振動制御装置では、目標とするスペクトルを有する振動を供試体4に与えることはできるものの、その振動の確率密度分布は、図14に実線で示すガウス分布(正規分布)となる。しかし、現実の振動は非ガウス分布(図14に点線で示す)となることが多いにもかかわらず、従来の振動制御装置では、非ガウス特性を有する振動を供試体に与えることはできなかった。
【0013】
この発明は、上記の問題を解決して、目標とするスペクトルだけでなく、目標とする非ガウス特性を有する振動を供試体4に与えることを目的とする。さらに詳しくは、目標とする非ガウス特性を有する振動を供試体4に与えるよう制御することができる振動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)この発明の振動制御装置は、
供試体の加速度を測定する加速度センサからの応答波形をフーリエ変換して、応答PSDを算出するPSD算出手段、
応答PSDを目標PSDと比較して制御用PSDを求めるPSD比較手段、
制御用PSDの各周波数成分に位相を与えて逆フーリエ変換することにより、フレーム波形を生成するフレーム波形生成手段、
複数のフレーム波形をシフトして重ね合わせることにより生成したドライブ波形を出力する重ね合わせ波形生成手段、
を備えた振動制御装置において、
前記フレーム波形生成手段は、
制御用PSDの第1の周波数成分に初期位相を与え、隣接する周波数成分には、正規分布に従ったランダムな位相差を順次加算して算出した位相を与えて逆フーリエ変換することにより非ガウス特性のランダム波形を生成すること、
を特徴とする。
【0015】
これにより、非ガウス特性を有する振動を供試体に与えて制御することが可能な振動制御装置を提供することができる。
【0016】
(2)この発明の振動制御装置は、
前記フレーム波形生成手段が、
フレーム波形のピーク位置がランダムになるように正規分布の中心値を設定すること、
これにより、非ガウス特性の劣化を低減することができる。
【0017】
(3)この発明の振動制御装置は、
供試体の加速度を測定する加速度センサからの応答波形をフーリエ変換して、応答PSDを算出するPSD算出手段、
応答PSDを目標PSDと比較して制御用PSDを求めるPSD比較手段、
制御用PSDの各周波数成分に位相を与えて逆フーリエ変換することにより、フレーム波形を生成するフレーム波形生成手段、
複数のフレーム波形をシフトして重ね合わせることにより生成したドライブ波形を出力する重ね合わせ波形生成手段、
を備えた振動制御装置において、
前記フレーム波形生成手段は、
目標非ガウス特性に基づいて、制御用PSDの第1の周波数成分に初期位相を与え、隣接する周波数成分には、正規分布に従ったランダムな位相差を順次加算して算出した位相を与えて逆フーリエ変換することにより非ガウス特性のランダム波形を生成してフレーム波形を生成すること、
を特徴とする。
【0018】
これにより、応答波形の非ガウス特性が目標非ガウス特性と一致するようにドライブ波形を制御することができる。
【0019】
(4)この発明の振動制御装置は、
供試体の加速度を測定する加速度センサからの応答波形をフーリエ変換して、応答PSDを算出するPSD算出手段、
応答PSDを目標PSDと比較して制御用PSDを求めるPSD比較手段、
制御用PSDの各周波数成分に位相を与えて逆フーリエ変換することにより、フレーム波形を生成するフレーム波形生成手段、
複数のフレーム波形をシフトして重ね合わせることにより生成したドライブ波形を出力する重ね合わせ波形生成手段、
を備えた振動制御装置において、
前記フレーム波形生成手段は、
応答波形から得られた非ガウス特性と目標非ガウス特性とを比較して得た非ガウス特性に基づいて、制御用PSDの第1の周波数成分に初期位相を与え、隣接する周波数成分には、正規分布に従ったランダムな位相差を順次加算して算出した位相を与えて逆フーリエ変換することにより非ガウス特性のランダム波形を生成してフレーム波形を生成すること、
を特徴とする。
【0020】
これにより、応答波形から得られた非ガウス特性と目標非ガウス特性とを比較して得た非ガウス特性に一致するように、ドライブ波形を正確にフィードバック制御することができる。
【0021】
(5)この発明の振動制御装置は、
前記応答波形から非ガウス特性値を算出して、前記非ガウス特性制御手段に与える非ガウス特性算出手段を備えたこと、
を特徴とする。
【0022】
これにより、応答波形から算出される非ガウス特性値に基づいて、ドライブ波形を正確にフィードバック制御することができる。
【0023】
(6)この発明の振動制御装置は、
供試体の加速度を測定する加速度センサからの応答波形をフーリエ変換して、応答PSDを算出するPSD算出手段、
応答PSDを目標PSDと比較して制御用PSDを求めるPSD比較手段、
制御用PSDの各周波数成分に位相を与えて逆フーリエ変換することにより、ガウス特性のフレーム波形を生成するフレーム波形生成手段、
複数のフレーム波形をシフトして重ね合わせることにより生成したランダム波形を出力する重ね合わせ波形生成手段、
を備えた振動制御装置において、
前記ガウス特性のランダム波形を、入力された非ガウス特性に基づいて、非ガウス特性のランダム波形に変換する非ガウス化変換手段、
非ガウス特性を前記非ガウス化変換手段に与える非ガウス特性制御手段、
を備えたこと、を特徴とする。
【0024】
これにより、応答の周波数成分が変化する場合でも、応答の非ガウス特性が目標値と一致するようにドライブ波形を正確にフィードバック制御することができる。
【0025】
(7)この発明の振動制御装置は、
前記フレーム波形生成手段が、クルトシスに対応する標準偏差の正規分布に基づいて設定された位相を受けること、
を特徴とする。
【0026】
これにより、制御しようとするクルトシスを有する非ガウス特性波形を生成することができる。
【0027】
(8)この発明の振動制御装置は、
前記フレーム波形生成手段が、スキューネスに対応する初期位相を受けること、
を特徴とする。
【0028】
これにより、制御しようとするスキューネスを有する非ガウス特性波形を生成することができる。
【0029】
(9)この発明の振動制御装置は、
供試体の加速度を測定する加速度センサからの応答波形をフーリエ変換して、応答PSDを算出するPSD算出手段、
応答PSDを目標PSDと比較して制御用PSDを求めるPSD比較手段、
制御用PSDの各周波数成分に位相を与えて逆フーリエ変換するとともに、窓関数を掛けることにより、非ガウス特性を有するフレーム波形を生成するフレーム波形生成手段、
複数のフレーム波形をシフトして重ね合わせることにより生成した非ガウス特性を有するドライブ波形を出力する重ね合わせ波形生成手段、
を備えたこと、を特徴とする。
【0030】
これにより、複数のフレーム波形を重ね合わせた非ガウス特性を有する連続したドライブ波形を容易に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】振動制御装置100のブロック図である。
【図2】振動制御装置100のハードウェア構成を示す図である。
【図3】目標PSDのデータ例(図3A)および標準偏差σと目標クルトシスK’との関係(図3B)を示す図である。
【図4】制御プログラム18の実行する処理を示すフローチャートである。
【図5】位相設定処理の詳細を示すフローチャートである。
【図6】正規分布に従う位相差Δφの確率密度関数を示すグラフである。
【図7】フレームをシフトして重ね合わせる処理を説明するための図である。
【図8】応答波形から得た非ガウス特性をフィードバック制御した振動制御装置200のブロック図である。
【図9】位相設定処理の詳細を示すフローチャートである。
【図10】他の実施形態のブロック図である。
【図11】ZMNL関数を示す図である。
【図12】他の実施形態のブロック図である。
【図13】従来のランダム振動試験のための振動制御装置を示す図である。
【図14】従来のランダム振動試験により得られる加速度の確率密度分布を示す図である。
【図15】波形の開始位置をずらせることにより、1つのPSDから複数フレームの非ガウス特性ランダム波形を生成した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
1.第1の実施形態(非ガウス特性のオープンループ)
図1に本発明の振動制御装置100のブロック図を示す。
【0033】
図1に示すPSD算出手段B01は、振動試験機2から得た応答波形をフーリエ変換して、応答PSDを算出する手段である。
【0034】
図1に示すPSD比較手段B03は、当該応答PSDを予め設定された目標PSDと比較して、制御用PSDを出力する手段である。なお、応答波形が存在しない起動時には、目標PSDをそのまま制御用PSDとして出力する。
【0035】
さらに、図1に示す非ガウス特性波形生成手段B05は、位相設定手段B07から与えられる位相を各周波数成分に与えて逆フーリエ変換し、これに窓関数を掛けることによって、1フレームのランダム波形を生成する手段である。
【0036】
図1に示す中心値設定手段B09は、与える位相の確率密度分布の中心値μを位相設定手段B07に与える。また、非ガウス特性制御手段B13は、予め設定された目標非ガウス特性[K’、S’]から、以下に説明する標準偏差σおよび初期位相φ0を求めて、位相設定手段B07に与える手段である。
【0037】
位相設定手段B07は、まず、(i)最初のライン(周波数成分)には、非ガウス特性制御手段B13から受けた初期位相φ0(0〜2π)を設定し、(ii)隣接する各ライン(周波数成分)には、正規分布[中心値μ、標準偏差σ]に従うランダムな位相差ΔφR(0〜2π)を順次加算して位相を設定する。
【0038】
ここで、重要な点は、各位相φkを一様なランダムで与えたのではないという点である。このように、正規分布に従ったランダムな位相差ΔφRを順に加算して各ラインの位相を算出することで、結果として、非ガウス特性のランダム波形を生成できる。
【0039】
図1に示す重ね合わせ手段B11は、非ガウス特性波形生成手段B05から非ガウス特性ランダム波形を複数受けて、これらをシフトして足し合わせることにより、連続した非ガウス特性ランダム波形を生成し、ドライブ波形として出力する手段である。
【0040】
非ガウス特性制御手段B13は、目標非ガウス特性([K’、S’])を読み出して、目標クルトシスK’に対応する制御用の標準偏差σと、目標スキューネスS’に対応する制御用の初期位相φ0の値を算出する手段である。
【0041】
以上の各手段を備えることで、本発明の振動制御装置100は、目標非ガウス特性を有する連続した非ガウス特性のランダム波形を生成し、振動試験機2に与えることができる。
【0042】
[ハードウェア構成]
図1の振動制御装置100のハードウエア構成を、図2に示す。振動制御装置100には、A/D変換器8、D/A変換器10、メモリ12、フラッシュROM14、DSP16が接続されている。
【0043】
振動試験機2によって振動させられた供試体4の振動は、加速度センサ6によって検出され、アナログの応答波形としてA/D変換器8に出力される。A/D変換器8は、アナログの応答波形をデジタルデータに変換する。D/A変換器10は、デジタルのドライブ波形をアナログ信号に変換して、振動試験機2に与える。
【0044】
フラッシュROM14には、非ガウス波形制御のための制御プログラム18が記録されている。制御プログラム18は、目標PSDのデータのほか、制御しようとする目標非ガウス特性[目標クルトシスK’、目標スキューネスS’]の値や、これら目標非ガウス特性[目標クルトシスK’、目標スキューネスS’]に対応する標準偏差σ、初期位相φ0を決定するための計算式・テーブルを有する(図示せず)。
【0045】
図3Aに、目標PSDとして予め設定された、一般的な輸送環境(主として道路)に対応するPSDデータの例を示す(JIS Z 0232)。図3Bに、目標クルトシスK’に対応する標準偏差σを算出するために用いられる、目標クルトシスK’と、位相差Δφの確率密度分布の標準偏差σとの関係を示す。
【0046】
図3Bのグラフを見ると、標準偏差σの値を大きくすれば、確率密度分布の急峻度(尖度)を示すクルトシスKは3に近づいていくこと、すなわち、ガウス特性のランダム振動が得られることがわかる。一方で、標準偏差σの値を小さくしていくと、クルトシスKの値が大きくなっていくこと、非ガウス特性のランダム振動が得られることがわかる。このようなクルトシスKと標準偏差σの関係に基づき、所望のクルトシスKに対応する標準偏差σの値を設定することが可能となる。
【0047】
分布の非対称性(歪度)を示すスキューネスSには、初期位相φ0との相関性が存在することが知られている。しかし、クルトシスKと標準偏差σの関係のように一義的に定まるものではなく、クルトシスKとの関係を考慮して探索して決定することが可能である。よって、例えば、予めクルトシスKおよび初期位相φ0との関係で得られる目標スキューネスSの関係を実測してテーブルに記憶しておくことで、目標スキューネスS’に対応する初期位相φ0の値を得ることができる。また、初期位相φ0を設計変数にして、K、Sを目的関数として予めアルゴリズムを作成しておくことで、スキューネスSを導き出すことも可能である。
【0048】
[制御プログラム18のフローチャート]
図2に示す制御プログラム18により実行される処理について、図4のフローチャートを用いて以下に説明する。
【0049】
まず、DSP16(図2)は、振動試験機2からの応答波形を取得する(ステップS100)。これを応答波形フーリエ変換して、各周波数成分についての応答PSDを算出し、メモリ12に記憶する(ステップS102)。
【0050】
さらに、予め設定された目標PSDをフラッシュROM14から読み出し(ステップS104)、応答PSDを目標PSDと比較して、応答PSDが目標PSDと等しくなるように制御用PSDを生成する(ステップS106)。例えば、応答PSDと目標PSDとで、誤差スペクトルを求め制御用PSDを調整する処理を実行する。
【0051】
DSP16は、ステップS106で生成した制御用PSDの各周波数成分に与える位相を算出し(ステップS108)、逆フーリエ変換処理を実行する(ステップS110)。
【0052】
図5に位相設定処理(ステップS108)の詳細なフローチャートを示す。
【0053】
図5に示すように、DSP16は、フラッシュROM14に記憶された目標非ガウス特性[目標クルトシスK’、目標スキューネスS’]の値を読み出す(ステップS200)。例えば、K’=4、S’=0の値が読み出される。
【0054】
つぎに、目標非ガウス特性[目標クルトシスK’、目標スキューネスS’]に対応する標準偏差σ、初期位相φ0を設定する(ステップS202)。例えば、目標クルトシスK’=4のとき、図3Bに示すグラフから、対応する標準偏差σを220に設定する。目標非ガウス特性Sに対応する初期位相φ0は、目標スキューネスS’および目標クルトシスK’の値に基づいてテーブルを参照して設定することができる。
【0055】
さらに、DSP16は、正規分布の中心値μを設定する(ステップS204)。例えば、中心値μの値として、フレーム毎に0〜2πの間で一様にランダムな値を設定することができる。これにより、各フレームのピーク位置をランダムにすることが可能であり、クルトシスの劣化を抑制することができる。
【0056】
DSP16は、ステップS202で設定した初期位相φ0を、フレーム波形生成手段B05に与える(ステップS206)。さらに、図6に示すような正規分布[標準偏差σ、中心値μ]に従うランダムな位相差ΔφRを各位相ごとに発生させて、これを順次加えた位相φkを算出してフレーム波形生成手段B05に与える(ステップS208)。このように、最初の周波数成分に隣接する各周波数成分については、k番目の位相φk-1を、φk-1=φk-2+ΔφRより算出する。
【0057】
すなわち、第2ラインの周波数成分PSD1に対しては、正規分布に従った0〜2πまでのランダムな位相差ΔφR1を、ステップS202で設定した初期位相φ0に加算して得た位相φ1(=φ0+ΔφR1)が与えられる。第3ラインの周波数成分PSD2に対しては、正規分布に従ったランダムな位相差ΔφR2を位相φ1に加算して得た位相φ2(=φ1+ΔφR2)が与えられる。以降のラインについても同様にして、全ての隣接するラインに位相差ΔφRを順次加算して得た位相が与えられる。
【0058】
上記のように与えた位相を設定して、図4のステップS110に示す逆フーリエ変換処理を実行した後、DSP16は、生成した非ガウス特性ランダム波形に窓関数を掛け合わせて窓操作処理を実行する(図4のステップS112)。なお、この実施形態では、1つの制御用PSDに対して、生成した異なる位相を与えて、複数フレームの非ガウス特性ランダム波形を生成するようにしている。
【0059】
ここで、窓関数を用いるのは、各フレーム間の非ガウス特性ランダム信号を滑らかに繋ぐためである。この実施形態では、窓関数としてハニングウインドウを用いている。
【0060】
窓操作処理を実行した所定フレーム数の非ガウス特性ランダム波形は、シフトした上で(ステップS114)、順に重ね合わせ処理が行われる(ステップS116)。例えば、図7に示すように、所定長だけずらされた状態で、波形W1〜Wnが足し合わされる。これにより、図7に示す連続した波形Wが生成される。
【0061】
なお、制御用PSD(図4のステップS106で生成)は、離散値として算出された線スペクトルであるから、これに基づいて生成される非ガウス特性ランダム波形は、線スペクトルとしての周波数特性を有することになる。しかし、この実施形態では、異なる波形の非ガウス特性ランダム波形を複数生成し、窓操作、重ね合わせを行うことで線スペクトルを連続スペクトル化している。
【0062】
つまり、1つの制御用PSDに対して、生成した異なる位相を与えて、複数フレームの非ガウス特性ランダム波形を生成し、これらに窓操作処理(ステップS112)を実行し、さらに、シフト処理(ステップS114)および重ね合わせ処理(ステップS116)を施すことにより、線スペクトルから連続スペクトルに変えることができる。
【0063】
DSP16は、所定数のフレームを重ね合わせた連続した非ガウス特性ランダム波形をドライブ波形として出力する(図4のステップS120)。これにより、振動試験機2が、入力されたドライブ波形に基づいて、非ガウス特性の振動を発生させることができる。
【0064】
2.第2の実施形態(非ガウス特性のフィードバック)
上記のようなオープンループ制御の場合、生成した非ガウス特性ランダム波形に比べて、応答波形の非ガウス特性が劣化してしまうことがある(例えば、目標のクルトシスKが5であったとき、出力のクルトシスKが4に劣化してしまう)。このような場合、目標クルトシスK’よりも大きなクルトシスを与えることが必要となる。そこで、応答波形から得られる非ガウス特性[応答クルトシスK”とスキューネスS”]をフィードバック制御するようにしてもよい。
【0065】
応答波形から得られる振動加速度の確率密度分布から得られる応答クルトシスK”、応答スキューネスS”をフィードバック制御した振動制御装置200のブロック図を図8に示す。
【0066】
図8に示すブロック図は、非ガウス特性算出手段B15が追加されている点および非ガウス特性制御手段B13が応答非ガウス特性と、目標非ガウス特性とを比較して、制御用の非ガウス特性を決定する点で、図1に示すブロック図とは異なっている。
【0067】
図8に示す非ガウス特性算出手段B15は、応答波形から非ガウス特性[応答クルトシスK”とスキューネスS”]を算出して非ガウス特性制御手段13に与える手段である。
【0068】
制御プログラム18が実行する処理は、図4のフローチャートに示す処理と同じであるが、位相設定処理(図4のステップS108)の詳細が異なる。図9に本実施形態における位相設定処理(ステップS108)の詳細なフローチャートを示す。
【0069】
図9に示すように、DSP16は、まず、応答波形から応答非ガウス特性[応答クルトシスK”とスキューネスS”]を算出する(ステップS300)。応答非ガウス特性の算出は、応答波形から求めて行ってもよいし、ヒストグラム分析を行い確率密度分布から求めて行ってもよい。例えば、応答クルトシスK’=4、目標スキューネスS’=0の値が読み出される。
【0070】
つぎに、DSP16は、フラッシュROM14に記憶された目標非ガウス特性[目標クルトシスK’、目標スキューネスS’]の値を読み出す(ステップS302)。例えば、K’=6、S’=0の値が読み出される。
【0071】
さらに、DSP16は、応答非ガウス特性と、目標非ガウス特性とを比較して、制御用の非ガウス特性を決定する(ステップS304)。例えば、応答クルトシスK”=4で、目標クルトシスK’=6のとき、制御クルトシスKは、劣化した分を目標クルトシスK’に加算して、K=8に設定する。
【0072】
つぎに、制御非ガウス特性[制御クルトシスK’、制御スキューネスS’]に対応する標準偏差σ、初期位相φ0を設定する(ステップS306)。
【0073】
さらに、DSP16は、正規分布の中心値μを設定する(ステップS308)。例えば、中心値μの値として、フレーム毎に0〜2πの間で一様にランダムな値を設定することができる。
【0074】
DSP16は、ステップS202で設定した初期位相φ0を、フレーム波形生成手段B05に与える(ステップS310)。さらに、図6に示すような正規分布[標準偏差σ、中心値μ]に従うランダムな位相差ΔφRを各位相ごとに発生させて、これを順次加えた位相φkを算出してフレーム波形生成手段B05に与える(ステップS312)。このように、最初の周波数成分に隣接する各周波数成分については、k番目の位相φk-1を、φk-1=φk-2+ΔφRより算出する。
【0075】
上記のように設定した位相を与えて逆フーリエ変換処理(図4のステップS110)、窓操作処理(図4のステップS112)を実行して、応答非ガウス特性をフィードバック制御した非ガウス特性波形を生成することができる。
【0076】
3.第3の実施形態(ZMNL方式での非ガウス特性のフィードバック)
なお、上記実施形態では、非ガウス特性波形生成手段B05(図1、図8)を設けることにより、非ガウス特性ランダム波形を生成したが、図10に示す振動制御装置300のように、代わりにガウス特性波形生成手段B06を設け、ガウス特性ランダム波形を重ね合わせて、連続したガウス特性波形を生成した後で、非ガウス化変換手段B25を適用して、非ガウス波形を生成してもよい。
【0077】
この実施形態では、ガウス特性波形を非ガウス特性波形に変換するために、図11に示すようなZMNL関数による変換を行っている。ZMNL関数は、入力信号の振幅を、当該振幅の大きさによって非線形的に変換して出力するものである。これにより、ガウス特性波形を非ガウス特性波形に変換することができる。
【0078】
ただし、ZMNL変換を行うと波形のPSDが変化してしまう。この点については、図10に示すように、ZMNL変換がPSDを制御するフィードバックループの中に設けられているので、フィードバックループによって、このPSD変化を吸収することができる。つまり、ZMNL変換を挿入したとしても、目標PSDによる振動を達成することができる。
【0079】
なお、上記のようにZMNL変換は非線形変換であるため、特定の周波数領域(たとえば高周波)においては、フィードバック制御では補えない周波数変化をもたらす可能性もある。ただし、ほとんどの周波数帯域では、フィードバックによる制御が実効性を持ち、ほぼ目標PSDを達成できるといってよい。
【0080】
また、実施形態1、2において示した位相差をランダムに与える手法では、PSDに変化はない(制御用PSDを有する非ガウス特性ランダム波形を得ることができる)。この点において、実施形態1、2の手法の方が優れている。一方で、ZMNL関数による変換においては、非ガウス特性の制御が容易であるという特徴がある。
【0081】
図10に示すガウス特性波形生成手段B06は、フーリエ変換時に各周波数成分にランダムな位相φkを与える等により、ガウス特性波形を生成する手段であり、生成された波形は、重ね合わせ処理の後、非ガウス特性波形に変換される。
【0082】
図10に非ガウス特性制御手段B15は、応答非ガウス特性と、目標非ガウス特性とを比較して、決定した制御用の非ガウス特性[応答クルトシスK”、応答スキューネスS”]を非ガウス化変換手段B25に直接与えて、非ガウス特性をフィードバック制御している。
【0083】
非ガウス化変換手段B25としては、例えば、図11に示すZMNL関数を用いることができる。ZMNL関数は、周波数特性が変更してしまう欠点がある反面、クルトシスとスキューネスの値を直接与えることで非ガウス特性の波形を容易に生成できる点で、非ガウス特性の制御がしやすいという利点がある。また、クルトシスとスキューネスの値を算出しなくても、応答波形から得られる確率密度分布をそのままフィードバック制御に利用することができるという利点もある。
【0084】
そこで、この実施形態では、図11に示すようなZMNL関数(Zero-memory nonliner sysytem関数)を用いて、所望の非ガウス特性を有する信号に変換するようにしている(ステップS26)。図11において、横軸は与えられた信号であり、縦軸は出力信号である。ガウス特性ドライブ波形x(t)を、このZMNL関数によって変換すると、非ガウス特性ドライブ波形y(t)が得られる。
【0085】
ZMNL関数を数式で表すと、数1のとおりである。
【0086】
【数1】
【0087】
xがガウス特性信号、yが得られる非ガウス特性信号である。各係数の詳細は、数2に示すとおりである。
【0088】
【数2】
【0089】
上式におけるスキューネスS、クルトシスKの値を代入することにより、変換によって所望の非ガウス特性ドライブ波形を生成することのできるZMNL関数を得ることができる。
【0090】
なお、上式では、2.8より小さい目標クルトシスを設定することができない。そこで、数3のような関数を用いるようにしてもよい。
【0091】
【数3】
【0092】
係数Cnは、数4に示す誤差変数εを最小にする最適化問題を解くことにより決定することができる。
【0093】
【数4】
【0094】
以上のようにして得られた非ガウス特性ドライブ波形を与えることで、非ガウス特性を容易にフィードバックすることができる。
【0095】
4.伝達特性に基づく波形制御
第2、第3の実施形態では、生成した非ガウス特性ランダム波形を振動試験機2に与えても応答波形の非ガウス特性が劣化することに鑑み、非ガウス特性のフィードバック制御を行っている。
【0096】
しかし、生成した非ガウス特性ランダム波形と同じ振動を供試体4に与えることができれば、上記の問題は解決する。そこで、この実施形態では、以下のように伝達特性に基づいて波形制御することで、非ガウス特性ランダム波形と同じ振動を与えることとした。
【0097】
図12は、伝達特性に基づいてドライブ波形を修正する振動制御装置400のブロック図である。変換手段B23は、ドライブ波形生成手段32および制御特性更新手段34を備える。
【0098】
図12に示すドライブ波形生成手段32は、振動試験機2および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス特性ドライブ波形を変形してドライブ波形を生成する。ドライブ波形は、D/A変換器10によってアナログ信号に変換され、振動試験機2に与えられる。
【0099】
図12に示す制御特性更新手段34は、ドライブ波形と応答波形に基づいて、系の伝達特性を算出し、その逆特性である制御特性を更新する。更新された制御特性は、ドライブ波形生成手段32に与えられる。
【0100】
これにより、供試体4に対し、変換手段28の変換特性を設定することにより目標とする非ガウス特性を有し、かつ、目標スペクトルを有する振動を、供試体4に与えることができる。
【0101】
5.その他の実施形態
なお、上記実施形態(図1、図8)では、目標非ガウス特性の値を予め記憶することとしたが、これに限定されるものではない。例えば、目標非ガウス特性として、振動加速度の確率分布グラフを予め記憶しておき、これから目標非ガウス特性の値を算出してもよい。
【0102】
なお、上記実施形態(図8)では、非ガウス特性算出手段B15が応答波形から算出した応答非ガウス特性の値と、予め記憶された目標非ガウス特性の値とを比較することとしたが、これに限定されるものではない。
【0103】
例えば、図8に示す非ガウス特性算出手段B15を設けずに、非ガウス特性制御手段B13が、応答波形から振動加速度の確率密度分布を生成し、これを目標非ガウス特性として予め記憶した振動加速度の確率密度分布と比較するようにしてもよい。この場合、応答波形から非ガウス特性(スキューネス、クルトシス)の値を算出する必要がない。
【0104】
なお、上記実施形態では、図1に示す中心値設定手段B09は、正規分布の中心値μを0〜2πの間で一様にランダムな値に設定したが(図5のステップS204および図9のステップS308)、これに限定されるものではない。例えば、正規分布の中心値μを固定値に設定してもよい。
【0105】
なお、上記実施形態では、隣接する周波数成分に加算するランダムな位相差ΔφRを0〜2πの間に収まるように算出したが(図5のステップS208、図9のステップS312)、これに限定されるものではない。例えば、次式 ΔφR=2π(P+σ・RND)により、ランダムな位相差ΔφRを算出するようにしてもよい。ここで、Pはフレームにおけるピークの出現位置(0〜1)、σは標準偏差、RNDは正規乱数(0〜1)を示す。
【0106】
なお、図10に示す第3の実施形態では、応答波形の非ガウス特性をフィードバック制御しているが、応答波形の非ガウス特性をフィードバック制御しないようにしてもよい。
【0107】
なお、図12に示す第4の実施形態では、応答波形の非ガウス特性をフィードバック制御していないが、応答波形の非ガウス特性をフィードバック制御するようにしてもよい。
【0108】
なお、上記実施形態では、予め設定した目標非ガウス特性に近づくように非ガウス波形を生成したが、目標非ガウス特性を設定しないて非ガウス波形を生成してもよい。
【0109】
なお、上記実施形態では標準偏差σに対応する目標クルトシスを設定したが、分散σ2に対応する目標クルトシスを設定してもよい。
【0110】
なお、上記実施形態では、DSP16によって処理を実行したが、代わりにCPUを用いて処理を実行してもよい。
【0111】
なお、上記実施形態では、1つの制御用PSDから複数フレームの非ガウス性ランダム波形を生成する際に、フレーム毎に異なった位相を与えるようにしている、すなわち、制御用PSDの各ラインの強度をP1, P2, P3, P4......Pnとしたとき、以下のようにφ1,φ2,φ3,φ4....φmを与えて、逆フーリエ変換を行っている。
【0112】
1フレーム目 P1(φ1)、P2(φ2)、P3(φ3)...Pn(φn)
2フレーム目 P1(φn+1)、P2(φn+2)、P3(φn+3)...Pn(φn+n)
3フレーム目 P1(φ2n+1)、P2(φ2n+2)、P3(φ2n+3)...Pn(φ2n+n)
・
・
・
mフレーム目 P1(φn(m-1)+1)、P2(φn(m-1)+2)、P3(φn(m-1)+3)...Pn(φn(m-1)+n)
上記のように、フレーム毎に異なった位相を与えることにより、窓関数をかけて重ね合わされた波形の、PSDは線スペクトルではなく連続スペクトルになる。
【0113】
しかし、複数のフレームに同一の位相を与えて、複数フレームの非ガウス性ランダム波形を生成し、窓関数をかけて重ね合わせることにより、PSDとして線スペクトルを有する波形を得ることもできる。すなわち、制御用PSDの各ラインの強度をP1, P2, P3, P4......Pnとしたとき、以下のようにφ1,φ2,φ3,φ4....φmを与えて、逆フーリエ変換を行っている。
【0114】
1フレーム目 P1(φ1)、P2(φ2)、P3(φ3)...Pn(φn)
2フレーム目 P1(φ1)、P2(φ2)、P3(φ3)...Pn(φn)
3フレーム目 P1(φ1)、P2(φ2)、P3(φ3)...Pn(φn)
・
・
・
mフレーム目 P1(φ1)、P2(φ2)、P3(φ3)...Pn(φn)
換言すると、複数フレームについて同一の非ガウス性ランダム波形を生成し、これに窓関数をかけて重ね合わせた場合には、線スペクトルを有する波形を得ることができる。
【0115】
通常は、連続スペクトルを有する波形の方が好ましいが、試験の目的によっては線スペクトルを用いることもできる。
【0116】
なお、上記実施形態では、異なる位相を与えることにより、1つの制御用PSDから複数フレームの非ガウス性ランダム波形を生成することとしたが、これに限定されるものではない。例えば、図15に示すように、開始位置をランダムにして、波形をずらせることにより、1つの制御用PSDから複数フレームの非ガウス性ランダム波形を生成してもよい。
【0117】
具体的には、1つの制御用PSDから、図15Aに示す1フレームのランダム波形w1を生成する。次に、開始位置をそれぞれランダムな位置T2、T3、T4(図15B、C、D)にずらせて、このランダム波形W1を循環的に読み出す。すなわち、1フレームの終わりまで読み出すと、先頭に戻って読み出しを続ける。これにより、図15B、C、Dに示す複数フレームの非ガウス性ランダム波形W2、W3、W4を簡単に生成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試体の加速度を測定する加速度センサからの応答波形をフーリエ変換して、応答PSDを算出するPSD算出手段、
応答PSDを目標PSDと比較して制御用PSDを求めるPSD比較手段、
制御用PSDの各周波数成分に位相を与えて逆フーリエ変換することにより、フレーム波形を生成するフレーム波形生成手段、
複数のフレーム波形をシフトして重ね合わせることにより生成したドライブ波形を出力する重ね合わせ波形生成手段、
を備えた振動制御装置において、
前記フレーム波形生成手段は、
制御用PSDの第1の周波数成分に初期位相を与え、隣接する周波数成分には、正規分布に従ったランダムな位相差を順次加算して算出した位相を与えて逆フーリエ変換することにより非ガウス特性のランダム波形を生成すること、
を特徴とする振動制御装置。
【請求項2】
請求項1の振動波形装置において、
前記フレーム波形生成手段が、
フレーム波形のピーク位置がランダムになるように正規分布の中心値を設定すること、
を特徴とする振動制御装置。
【請求項3】
供試体の加速度を測定する加速度センサからの応答波形をフーリエ変換して、応答PSDを算出するPSD算出手段、
応答PSDを目標PSDと比較して制御用PSDを求めるPSD比較手段、
制御用PSDの各周波数成分に位相を与えて逆フーリエ変換することにより、フレーム波形を生成するフレーム波形生成手段、
複数のフレーム波形をシフトして重ね合わせることにより生成したドライブ波形を出力する重ね合わせ波形生成手段、
を備えた振動制御装置において、
前記フレーム波形生成手段は、
目標非ガウス特性に基づいて、制御用PSDの第1の周波数成分に初期位相を与え、隣接する周波数成分には、正規分布に従ったランダムな位相差を順次加算して算出した位相を与えて逆フーリエ変換することにより非ガウス特性のランダム波形を生成してフレーム波形を生成すること、
を特徴とする振動制御装置。
【請求項4】
供試体の加速度を測定する加速度センサからの応答波形をフーリエ変換して、応答PSDを算出するPSD算出手段、
応答PSDを目標PSDと比較して制御用PSDを求めるPSD比較手段、
制御用PSDの各周波数成分に位相を与えて逆フーリエ変換することにより、フレーム波形を生成するフレーム波形生成手段、
複数のフレーム波形をシフトして重ね合わせることにより生成したドライブ波形を出力する重ね合わせ波形生成手段、
を備えた振動制御装置において、
前記フレーム波形生成手段は、
応答波形から得られた非ガウス特性と目標非ガウス特性とを比較して得た非ガウス特性に基づいて、制御用PSDの第1の周波数成分に初期位相を与え、隣接する周波数成分には、正規分布に従ったランダムな位相差を順次加算して算出した位相を与えて逆フーリエ変換することにより非ガウス特性のランダム波形を生成してフレーム波形を生成すること、
を特徴とする振動制御装置。
【請求項5】
請求項4の振動制御装置において、さらに、
前記応答波形から非ガウス特性値を算出して、前記非ガウス特性制御手段に与える非ガウス特性算出手段を備えたこと、
を特徴とする振動制御装置。
【請求項6】
供試体の加速度を測定する加速度センサからの応答波形をフーリエ変換して、応答PSDを算出するPSD算出手段、
応答PSDを目標PSDと比較して制御用PSDを求めるPSD比較手段、
制御用PSDの各周波数成分に位相を与えて逆フーリエ変換することにより、ガウス特性のフレーム波形を生成するフレーム波形生成手段、
複数のフレーム波形をシフトして重ね合わせることにより生成したランダム波形を出力する重ね合わせ波形生成手段、
を備えた振動制御装置において、
前記ガウス特性のランダム波形を、入力された非ガウス特性に基づいて、非ガウス特性のランダム波形に変換する非ガウス化変換手段、
非ガウス特性を前記非ガウス化変換手段に与える非ガウス特性制御手段、
を備えたこと、を特徴とする振動制御装置。
【請求項7】
請求項1〜5の何れかの振動制御装置において、
前記フレーム波形生成手段が、クルトシスに対応する標準偏差の正規分布に基づいて設定された位相を受けること、
を特徴とする振動制御装置。
【請求項8】
請求項1〜5の何れかの振動制御装置において、
前記フレーム波形生成手段が、スキューネスに対応する初期位相を受けること、
を特徴とする振動制御装置。
【請求項9】
供試体の加速度を測定する加速度センサからの応答波形をフーリエ変換して、応答PSDを算出するPSD算出手段、
応答PSDを目標PSDと比較して制御用PSDを求めるPSD比較手段、
制御用PSDの各周波数成分に位相を与えて逆フーリエ変換するとともに、窓関数を掛けることにより、非ガウス特性を有するフレーム波形を生成するフレーム波形生成手段、
複数のフレーム波形をシフトして重ね合わせることにより生成した非ガウス特性を有するドライブ波形を出力する重ね合わせ波形生成手段、
を備えたこと、を特徴とする振動制御装置。
【請求項1】
供試体の加速度を測定する加速度センサからの応答波形をフーリエ変換して、応答PSDを算出するPSD算出手段、
応答PSDを目標PSDと比較して制御用PSDを求めるPSD比較手段、
制御用PSDの各周波数成分に位相を与えて逆フーリエ変換することにより、フレーム波形を生成するフレーム波形生成手段、
複数のフレーム波形をシフトして重ね合わせることにより生成したドライブ波形を出力する重ね合わせ波形生成手段、
を備えた振動制御装置において、
前記フレーム波形生成手段は、
制御用PSDの第1の周波数成分に初期位相を与え、隣接する周波数成分には、正規分布に従ったランダムな位相差を順次加算して算出した位相を与えて逆フーリエ変換することにより非ガウス特性のランダム波形を生成すること、
を特徴とする振動制御装置。
【請求項2】
請求項1の振動波形装置において、
前記フレーム波形生成手段が、
フレーム波形のピーク位置がランダムになるように正規分布の中心値を設定すること、
を特徴とする振動制御装置。
【請求項3】
供試体の加速度を測定する加速度センサからの応答波形をフーリエ変換して、応答PSDを算出するPSD算出手段、
応答PSDを目標PSDと比較して制御用PSDを求めるPSD比較手段、
制御用PSDの各周波数成分に位相を与えて逆フーリエ変換することにより、フレーム波形を生成するフレーム波形生成手段、
複数のフレーム波形をシフトして重ね合わせることにより生成したドライブ波形を出力する重ね合わせ波形生成手段、
を備えた振動制御装置において、
前記フレーム波形生成手段は、
目標非ガウス特性に基づいて、制御用PSDの第1の周波数成分に初期位相を与え、隣接する周波数成分には、正規分布に従ったランダムな位相差を順次加算して算出した位相を与えて逆フーリエ変換することにより非ガウス特性のランダム波形を生成してフレーム波形を生成すること、
を特徴とする振動制御装置。
【請求項4】
供試体の加速度を測定する加速度センサからの応答波形をフーリエ変換して、応答PSDを算出するPSD算出手段、
応答PSDを目標PSDと比較して制御用PSDを求めるPSD比較手段、
制御用PSDの各周波数成分に位相を与えて逆フーリエ変換することにより、フレーム波形を生成するフレーム波形生成手段、
複数のフレーム波形をシフトして重ね合わせることにより生成したドライブ波形を出力する重ね合わせ波形生成手段、
を備えた振動制御装置において、
前記フレーム波形生成手段は、
応答波形から得られた非ガウス特性と目標非ガウス特性とを比較して得た非ガウス特性に基づいて、制御用PSDの第1の周波数成分に初期位相を与え、隣接する周波数成分には、正規分布に従ったランダムな位相差を順次加算して算出した位相を与えて逆フーリエ変換することにより非ガウス特性のランダム波形を生成してフレーム波形を生成すること、
を特徴とする振動制御装置。
【請求項5】
請求項4の振動制御装置において、さらに、
前記応答波形から非ガウス特性値を算出して、前記非ガウス特性制御手段に与える非ガウス特性算出手段を備えたこと、
を特徴とする振動制御装置。
【請求項6】
供試体の加速度を測定する加速度センサからの応答波形をフーリエ変換して、応答PSDを算出するPSD算出手段、
応答PSDを目標PSDと比較して制御用PSDを求めるPSD比較手段、
制御用PSDの各周波数成分に位相を与えて逆フーリエ変換することにより、ガウス特性のフレーム波形を生成するフレーム波形生成手段、
複数のフレーム波形をシフトして重ね合わせることにより生成したランダム波形を出力する重ね合わせ波形生成手段、
を備えた振動制御装置において、
前記ガウス特性のランダム波形を、入力された非ガウス特性に基づいて、非ガウス特性のランダム波形に変換する非ガウス化変換手段、
非ガウス特性を前記非ガウス化変換手段に与える非ガウス特性制御手段、
を備えたこと、を特徴とする振動制御装置。
【請求項7】
請求項1〜5の何れかの振動制御装置において、
前記フレーム波形生成手段が、クルトシスに対応する標準偏差の正規分布に基づいて設定された位相を受けること、
を特徴とする振動制御装置。
【請求項8】
請求項1〜5の何れかの振動制御装置において、
前記フレーム波形生成手段が、スキューネスに対応する初期位相を受けること、
を特徴とする振動制御装置。
【請求項9】
供試体の加速度を測定する加速度センサからの応答波形をフーリエ変換して、応答PSDを算出するPSD算出手段、
応答PSDを目標PSDと比較して制御用PSDを求めるPSD比較手段、
制御用PSDの各周波数成分に位相を与えて逆フーリエ変換するとともに、窓関数を掛けることにより、非ガウス特性を有するフレーム波形を生成するフレーム波形生成手段、
複数のフレーム波形をシフトして重ね合わせることにより生成した非ガウス特性を有するドライブ波形を出力する重ね合わせ波形生成手段、
を備えたこと、を特徴とする振動制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−88125(P2013−88125A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225752(P2011−225752)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(512109161)地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所 (13)
【出願人】(000100676)IMV株式会社 (17)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(512109161)地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所 (13)
【出願人】(000100676)IMV株式会社 (17)
[ Back to top ]