説明

非ガラス系マイクロ波誘電体

【課題】 本発明は、優秀なマイクロ波誘電特性を持つ非ガラス系マイクロ波誘電体セラミックス、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 上記の課題を達成するための本発明による誘電体セラミックス組成物は、次の組成式で表現される組成物を含むことを特徴とする誘電体セラミックス組成物であって、
2+4+
但し、MはBa、Ca及びSrの中のいずれか一つであり、NはSn、Zr及びTiの中のいずれか一つであり、
前記誘電体セラミックス組成物の前記Mサイトを、前記Ba、Ca及びSrの中の互いに異なる2個で複数置き換え、また前記誘電体セラミックス組成物の前記Nサイトを、前記Sn、Zr及びTiの中の互いに異なる2個で複数置き換えて(M1−x2+2+)(N1−y4+4+)B(但し、0<x<1及び0<y<1)の組成式で表現される組成物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロ波誘電体セラミックス及びその製造方法に関するものであって、特に内部導体と同時に焼結が可能であると共に、優秀なマイクロ波誘電特性を持つ非ガラス系マイクロ波誘電体セラミックス、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近個人ポータブル端末機などの移動通信とユビキタスを標榜するブルートゥース市場の拡大とともに、これらの機器を構成する核心部品であるマイクロ波フィルター(microwave filter)、送受切替え器(duplexer)、共振器(resonator)、集積回路基板などの高周波素子の小型化、高軽量化、表面室長化などが可能な積層化の要求が増加しつつある。
【0003】
このような高周波素子の材料としては、誘電体セラミックスが使われ、誘電体セラミックスのマイクロ波誘電特性は、基本的に次の必須条件が充足されなければならない。
【0004】
第一に、誘電体セラミックス内部のマイクロ波の波長は、誘電率の1/2乗に反比例して短縮されるので、マイクロ波素子の小型化のためには誘電率(dielectric constant:ε)が大きくならなければならない。一方、RF(Radio Frequency)/マイクロウエーブ用モジュールの基板に形成されるマイクロ波送信線(microwave transmission line)の場合、その伝送速度を早くするためにはむしろ誘電率が小さくなければならない。
【0005】
第二に、高効率の動作のためには、作動周波数帯での誘電損失が小さくて品質係数(quality factor:Q)の値が大きくなければならないし、言い換えればこれの逆数である誘電損失(tanδ)が小さくなければならない。また、通常的に前記品質係数は、これの値と該当の共振周波数(f)の積であるQ×fの値として、その優劣が評価され、また品質係数の逆数である誘電損失値でも評価される。
【0006】
第三に、動作周波数の精密な作動のためには、共振周波数の温度係数(TCF(Temperature Coefficient Factor): τ)が、なるべく0の近くにならなければならない。
【0007】
一方、最近に入っては高周波素子の積層化を具現するために、誘電体セラミックスのグリーンシーツに導体のパターンを印刷して積層した後、これを焼結する技術などが開発されている。これはインダクター、キャパシター、抵抗などを一つのモジュール内に別途のリード線なしに具現することができるので、パッケージの体積を著しく減らすことができるようになる。
【0008】
ところが、内部導体としては、導電性が優秀なAgやCuなどを使うので、このような導体との同時焼結が不可避となり、結局、高い品質係数と低い共振周波数の温度係数を持ちながらも、おおよそ950℃以下の低温で焼結が可能な低温同時焼結のセラミックス(Low Temperature Co−Fired Ceramics:LTCC)が強力に要求されている。このために、最近まで低温焼結が可能な誘電体セラミックスが開発されているが、その殆どが低温焼結の時、緻密化が不十分であるとか、焼結剤の添加による誘電率の低下、品質係数の低下、及び共振周波数の温度係数の上昇など、マイクロ波誘電特性が大きく低下することが大きな問題点として指摘されている。
【0009】
さらに、既存のLTCCとしては、殆どが硝子(glass)を基地上(matrix)とし、ここに充填剤(filler)としてアルミナ(Al)粉末を混合した複合体(composite)構造のセラミックス組成物が使われていた。この場合、前記硝子組成物のバラ付きや、前記硝子及び充填剤混合物のセラミックススラーリの製造上レオロジー(rheology)制御の難しさ、及び分散のバラ付きなど、さまざまな問題点が提起されていた。これによって、最近には前記硝子の使用量を最小化するとか、または基地上として硝子を使わない非ガラス系(non−glass、またはglass−free)LTCC組成の要求と、これによる研究がなされつつある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明は、上記のような問題点を解決するために創案されたものであって、本発明の目的は、優秀なマイクロ波誘電特性を持つ非ガラス系マイクロ波誘電体セラミックス、及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明の目的は、上記非ガラス系マイクロ波誘電体セラミックスに低温焼結用の焼結剤を添加して低温焼結が可能な低温同時焼結用のマイクロ波誘電体セラミックス、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によるマイクロ波誘電体セラミックスは、M2+4+組成、または、この組成において、上記Mサイトを、互いに異なる2個の2価金属原素で複数置き換えするか、及び/または、上記Nサイトを、互いに異なる2個の4価金属原素で複数置き換えた組成を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるマイクロ波誘電体セラミックスは、M2+4+組成だけではなく、この組成において、上記Mサイトを、互いに異なる2個の2価金属原素で複数置き換えるか、及び/または、上記Nサイトを、互いに異なる2個の4価金属原素で複数置き換えた組成を含むことによって、優秀なマイクロ波誘電特性を提供すると共に基地上として硝子を使っていないので、高周波素子としての応用に非常に有利である。
【0014】
また、本発明によるマイクロ波誘電体セラミックスは、上記セラミックス組成にBi−CuO系焼結剤を添加することによって、誘電特性の劣化なしに低温焼結が可能になり、優秀なマイクロ波誘電特性を提供する低温同時焼結のセラミックス素子用の誘電体としての適用が有望である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好ましい一実施例において、BaZr(BOセラミックスのマイクロ波誘電特性を現すグラフである。
【図2】図1のBaZr(BOセラミックスの走査電子顕微鏡(SEM)の写真である。
【図3】本発明の好ましい他の実施例において、1050℃で2時間焼結したBa(Zr1−xTi)BセラミックスのSEMの写真である。
【図4】本発明の好ましい他の実施例において、BaZr(BOセラミックスに焼結剤である、0.88Bi−0.12CuOが5wt%添加された組成で900℃で2時間焼結したセラミックスのSEMの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一観点による非ガラス系マイクロ波誘電体セラミックスは、M2+4+(但し、MはBa、Ca及びSrの中のいずれか一つであり、NはSn、Zr及びTiの中のいずれか一つである。)の組成式で表現される組成物を含むことができる。
【0017】
また、本発明による非ガラス系マイクロ波誘電体セラミックスは、上記誘電体セラミックス組成物の上記Mサイトを、上記Ba、Ca及びSrの中の互いに異なる2個で複数置き換えて(M1−x2+2+)N4+(但し、0<x<1)の組成式で表現される組成物と、上記誘電体セラミックス組成物の上記Nサイトを、上記Sn、Zr及びTiの中の互いに異なる2個で複数置き換えてM2+(N1−y4+4+)B(但し、0<y<1)の組成式で表現される組成物と、上記Mサイトを、上記Ba、Ca及びSrの中の互いに異なる2個で複数置き換えて、上記Nサイトを、上記Sn、Zr及びTiの中の互いに異なる2個で複数置き換えて(M1−x2+2+)(N1−y4+4+)Bの組成式で表現される組成物を各々含むことができる。
【0018】
また、本発明による非ガラス系マイクロ波誘電体セラミックスは、上記誘電体セラミックス組成物にαwt%(0.12CuO+0.88Bi)(但し、1≦α≦7)の組成式になる焼結剤を含むことができるし、上記焼結剤は1〜7wt%添加することができる。
【0019】
また、本発明の他の一観点による非ガラス系マイクロ波誘電体セラミックスの製造方法は、上記記述した誘電体セラミックス組成物等の中のいずれか一つの組成式で試料を秤量し混合、粉碎した後、これを乾燥してか焼(カルサイン)する第1ステップと、組成式αwt%(0.12CuO+0.88Bi)(但し、1≦α≦7)で表現される焼結剤を上記か焼した試料と混合及び粉碎した後、乾燥する第2ステップと、上記第2ステップの上記乾燥した試料を成形して、これを焼結する第3ステップとを含んで構成されることができる。この時、上記焼結剤は1〜7wt%添加して、上記焼結温度は875〜1000℃の範囲になり、何らマイクロ波遺伝特性の劣化なしに最下875℃まで低下することによって、低温焼結が可能になる。
【0020】
先ず、本発明の好ましい一具現例によるマイクロ波誘電体セラミックスは、次の式(1)で表現されるセラミックス組成を持つ:
2+4+ (1)
但し、Mは、例えばBa、Ca、Srなどを含む2価の金属元素中のいずれか一つになることができるし、いかなる2価の金属原子にもなることができる。Nは、例えばSn、Zr、Tiなどを含む4価の金属元素中のいずれか一つになることができるし、同じようにいかなる4価の金属原子にもなることができる。本発明者たちは上記マイクロ波誘電体セラミックスがドロマイト(Dolomite:白雲石)構造を持ち異方性熱膨脹特性を持つことを見つけた。
【0021】
また、上記式(1)のセラミックス組成式は、各サイト(すなわち、M及びNサイト)に入るそれぞれの金属原素を互いに異なる2個の金属原素で取り替えることによって変形させることができる。すなわち、本発明の好ましい他の一具現例等として、上記式(1)によるセラミックス組成式は、上記Mサイトを、互いに異なる2個の2価金属原素で複数置き換える形態になるか、及び/または上記Nサイトを、互いに異なる2個の4価金属原素で複数置き換える形態にも変形が可能である。すなわち、これらの場合に該当するマイクロ波誘電体セラミックスの組成式などは、次の式(2)〜(4)でそれぞれ表現されることができる:
(M1−x2+2+)N4+ (2)
2+(N1−y4+4+)B (3)
(M1−x2+2+)(N1−y4+4+)B (4)
この時、上記式(2)〜(4)において、x及びyはそれぞれ0<x<1及び0<y<1であり、式(1)の組成と同じく、上記2個のMは、例えばBa、Ca、Srなどを含む2価の金属元素として互いに異なる元素から選択されることができるし、いかなる2価の金属元素からも選択されることができる。また、Nは、例えばSn、Zr、Tiなどを含む4価の金属元素として互いに異なる元素から選択されることができるし、同じようにいかなる4価の金属原素からも選択されることができる。
【0022】
また、本発明者たちは上記式(1)〜(4)のマイクロ波誘電体セラミックス等が、おおよそ1100℃以上の焼結温度を持つことを見つけた。このような高い焼結温度は、低温同時焼結セラミックス(LTCC)への応用を難しくしている。よって、LTCCとしての応用のために本発明の好ましい他の一具現例として、上記式(1)〜(4)のマイクロ波誘電体セラミックスの組成それぞれにCuO及びBiになる低温焼結用の焼結剤を添加して上記のような高い焼結温度を低めることができる。この時、上記焼結剤の組成式は次の式(5)のようである:
αwt%(0.12CuO+0.88Bi) (5)
(但し、1≦α≦7である。)
すなわち、前述したように、式(1)〜(4)によるマイクロ波誘電体セラミックスは、おおよそ1100℃以上の高い焼結温度によってLTCCの材料として困難であるが、これに焼結剤としておおよそ600±20℃の共融点(eutectic point)を持つCuO及びBiになる焼結剤を添加することによって上記のような高い焼結温度を、好ましくは875〜1000℃、もっと好ましくは875〜925℃、さらにもっと好ましくは875℃に低下させることができる。このようなCuO及びBiは、上記セラミックスの焼結の時セラミックスの内部界面に液状を形成することによってセラミックスの緻密化を促進するので、これによって低温の焼結温度が可能になり、尚且つ良好なマイクロ波誘電特性を得ることができるようになる。
【0023】
以下、本発明の好ましい実施例等を添付した図面を参照しながら詳しく説明する。ただ、本発明が説明する実施例等は、本発明の全般的な理解を助けるために提供されるものであり、本発明は下記の実施例等にのみ限定されるものではない。
【0024】
実施例1〜5)
本実施例等では、上記式(1)によってBaZr(BOセラミックスを製造して各焼結温度によるマイクロ波誘電特性を測定した。
【0025】
先ず、BaCO、ZrOと、BまたはHBOの試料をBaZr(BOの組成比に秤量して、分散溶媒として脱イオン水(deionized water)を使い24時間の間ジルコニアボール(Zirconia ball)と一緒に混合粉碎した後、これを乾燥した。そして、これを900〜1150℃から4時間の間か焼してドロマイト構造(六角対称)を持つ固溶体を合成した。合成した粉末はまた24時間の間湿式ボールミルで粉碎して平均粒径約1μmで微粉末化した。そして、この粉末に2wt%のPVA(Poly Vinyl Alcohol)バインダー(binder)水溶液を添加して直径10mm、厚さ5〜6mmの円柱の試片の形態で1ton/cmの圧力をかけて成形しており、上記成形した試料を400℃で1時間の間熱処理して含有していた上記バインダーをとり除いた後、1100〜1300℃の温度で2時間の間焼結した。そして、上記焼結した試料の両面を研磨紙(SiC paper)で研いた後,インピーダンス分析機(Impedance analyzer:4294A、Agilent Technologies Inc.、アメリカ)を使って1MHzで誘電率(ε),誘電損失(tanδ)及び誘電率の温度係数(TCC:Temperature Coefficient of Capacitance)を測定した。この時、上記温度係数(TCC)の測定範囲は−25〜+125℃とした。また、マイクロ波領域での誘電特性を測定するために回路網分析機(Network analyzer: 8720ES、Agilent Technologies Inc.、アメリカ)を使い平行導体板(post resonator)法及び共同共振機(cavity resonator)法によって測定して該当のデータを得た。この時、共振周波数の温度係数(τ)は、+25〜+80℃の温度範囲で測定した。
【0026】
上記のように測定された1100〜1300℃の各焼結温度によるマイクロ波誘電特性は次の表1及び図1のようである:
【0027】
【表1】

表1及び図1を参照すると、BaZr(BOセラミックスは、その焼結温度が1100℃の場合、品質係数が測定周波数15GHzでおおよそ900で、誘電率がおおよそ11である誘電特性を持っている。本実施例等において1200℃で2時間焼結した実施例3の場合2,073として一番高い品質係数を持っており、図2はこれの走査電子顕微鏡(SEM)の写真である。
【0028】
その一方、実施例4及び5では、焼結温度が1250℃以上に上がるによってその品質係数が大きく減少した。これはBaZr(BO相の分解によるBaZrO相の生成に起因したものと判断される。
【0029】
実施例6〜9)
本実施例等では上記式(1)によってCaZr(BOセラミックスを製造して各焼結温度によるマイクロ波誘電特性を測定した。その出発試料としてはCaCO、ZrOと、BまたはHBOを使って、焼結温度だけを除き実施例1〜5と等しく製造及び測定した。上記焼結条件は1000〜1150℃で2時間とした。
【0030】
これによって製造及び測定されたCaZr(BOセラミックスのマイクロ波誘電特性は下の表2に示す:
【0031】
【表2】

実施例10〜13)
本実施例等では上記式(1)によってSrZr(BOセラミックスを製造して各焼結温度によるマイクロ波誘電特性を測定しており、その出発試料としてはSrCO、ZrOと、BまたはHBOを使って実施例6〜9と等しく製造及び測定した。
【0032】
これによって製造及び測定されたSrZr(BOセラミックスのマイクロ波誘電特性を下の表3に示す:
【0033】
【表3】

実施例14〜17)
本実施例等では上記式(1)によってSrSn(BOセラミックスを製造して各焼結温度によるマイクロ波誘電特性を測定した。その出発試料としてはSrCO、SnOと、BまたはHBOを使って実施例6〜9と等しく製造及び測定した。
【0034】
これによって製造及び測定されたSrSn(BOセラミックスのマイクロ波誘電特性を下の表4に示す:
【0035】
【表4】

実施例18〜21)
本実施例等では上記式(1)によってCaSn(BOセラミックスを製造して各焼結温度によるマイクロ波誘電特性を測定した。その出発試料としてはCaCO、SnOと、BまたはHBOを使って実施例6〜9と等しく製造及び測定した。
【0036】
これによって製造及び測定されたCaSn(BOセラミックスのマイクロ波誘電特性を下の表5に示す:
【0037】
【表5】

実施例22〜29)
本実施例等では上記式(3)によってBa(Zr1−xTi)B(但し、0<x<1)セラミックスを製造して各焼結温度によるマイクロ波誘電特性を測定した。その出発試料としてはBaCO、ZrO及びTiOと、BまたはHBOの試料を使って実施例6〜9と等しく製造及び測定した。
【0038】
これによって製造及び測定されたBa(Zr、Ti)Bセラミックスのマイクロ波誘電特性をZr/Tiのモル比及び焼結温度によって下の表6に現わしており、また1050℃で2時間焼結した実施例22のSEMの写真を図3に示す:
【0039】
【表6】

また、特にBa(Zr1/2Ti1/2)Bセラミックス組成を1050℃、1100℃、1150℃で焼結した実施例22〜24の低周波数誘電特性を測定しており(すなわち、実施例27〜29)、これのデータは下の表7のようである:
【0040】
【表7】

(実施例30〜33)
本実施例等では上記式(3)によってBa(Sn1−xZr)B(但し、0<x<1)セラミックスを製造して各焼結温度によるマイクロ波誘電特性を測定した。その出発試料としてはBaCO、SnO及びZrOと、BまたはHBOの試料を使って実施例6〜9と等しく製造及び測定した。
【0041】
これによって製造及び測定されたBa(Sn、Zr)Bセラミックスのマイクロ波誘電特性をSn/Zrのモル比及び焼結温度によって示すと、下の表8のようになる:
【0042】
【表8】

実施例34〜37)
本実施例等では1000℃以下の低温焼結を果たすために、実施例1〜5の組成である、BaZr(BOセラミックスにCuO及びBiのような低温焼結用の焼結剤を添加した。
【0043】
すなわち、上記実施例1〜5においてか焼し合成されたBaZr(BO粉末にCuO及びBiの試料を、上記式(5)において0.88Bi+0.12CuOになるように秤量し、これの添加量(αwt%)を1〜7wt%の範囲に調節しながら、焼結条件だけを除き実施例1〜5と等しいか焼以後の諸般の工程を遂行した。その焼結条件としては875〜925℃で2時間とした。特に、上記焼結剤の0.88Bi+0.12CuOの添加量が5wt%である組成セラミックスのマイクロ波誘電特性及び低周波数誘電特性を下の表9に示しており、特に900℃で2時間焼結したセラミックスのSEMの写真を図4に示す:
【0044】
【表9】

本実施例等においてBaZr(BOセラミックスに5wt%の0.88Bi+0.12CuOを添加したセラミックス組成物を、900℃から2時間焼結した場合、誘電率が11.8、品質係数は880、温度係数は約+1ppm/℃として、焼結温度が900℃に低くなったにもかかわらず良好なマイクロ波誘電特性を現わした。
【0045】
実施例38〜43)
本実施例等では上記式(1)によってBaSnB、CaZrB、SrZrB、BaZrB、CaSnB、SrSnBセラミックス組成等を焼結温度だけを除き実施例1〜5と等しく製造及び測定した。この時、上記焼結温度は1100℃に固定した。
【0046】
これと一緒に、式(1)によって実施例1〜5と等しくか焼し合成されたBaSnB、CaZrB、SrZrB、BaZrB、CaSnB、SrSnBセラミックス粉末等に焼結剤としてそれぞれ5wt%の0.88Bi+0.12CuOを添加し、これを900℃で焼結しており、その外には上記実施例1〜5と等しく製造及び測定した。
【0047】
上記の二つの場合、製造して測定された各セラミックス組成のマイクロ波誘電特性を比較して下の表10に示しており、この時、BCは0.88Bi+0.12CuOを指す:
【0048】
【表10】

実施例44〜46)
本実施例等では上記式(2)によって(Ba1−xCa)ZrB(但し、0<x<1)セラミックスを製造してマイクロ波誘電特性を測定した。その出発試料としてはBaCO、CaCO及びZrOと、BまたはHBOの試料を使って実施例6〜9と等しく製造及び測定した。
【0049】
これによって製造及び測定された(Ba1−xCa)ZrBセラミックスのマイクロ波誘電特性をBa/Caのモル比及び焼結温度によって示すと、下の表11のようになる:
【0050】
【表11】

実施例47)
本実施例では、上記式(4)によって(Ba1−xCa)(Zr1−yTi)B(但し、0<x<1、0<y<1)セラミックスを製造してマイクロ波誘電特性を測定した。その出発試料としてはBaCO、CaCO、ZrO及びTiOと、BまたはHBOの試料を使って実施例6〜9と等しく製造及び測定した。
【0051】
これによって製造及び測定された(Ba1−xCa)(Zr1−yTi)Bセラミックスのマイクロ波誘電特性をBa/Ca及びZr/Tiのモル比及び焼結温度によって示すと、下の表12のようになる:
【0052】
【表12】

実施例48〜50)
本実施例では上記式(2)〜(4)による(Ba1−xCa)ZrB、Ba(Zr1−xTi)B及び(Ba1−xCa)(Zr1−yTi)B(但し、0<x<1、0<y<0)セラミックスに、それぞれ3wt%の0.88Bi+0.12CuOの焼結剤を添加して900〜925℃で焼結しており、これによって製造及び測定された、これらのセラミックスのマイクロ波誘電特性を下の表13に示す:
【0053】
【表13】

以上記述したように、本発明の多くの実施例等において式(1)〜(4)による多くの組成のセラミックスに、Bi-CuO系焼結剤を添加することによって何ら誘電特性の劣化なしに900〜925℃での低温焼結が可能になる。これで、本発明によるセラミックスは、AgやCuを内部電極で使うキャパシター、マイクロ波用LTCC素子や、基板の有望な材料として使うことができる。
【0054】
一方、以上記述した本発明の好ましい実施例等において、最適のマイクロ波誘電特性を現わす焼結温度は、組成粉末の平均粒径、分布及び比表面積のような粉末特性と、原料の純度、不純物の添加量及び焼結条件によって通常的な誤差範囲内で少々変動があり得ることは、該当の分野で通常の知識を持った者には極めて当然のことである。
【0055】
また、本発明の好ましい実施例等は、例示の目的のために開始したもので、該当の分野で通常の知識を持った者なら誰でも本発明の思想と範囲の中で多様な修正、変更、付加などが可能であろうし、このような修正、変更、付加などは特許請求範囲に属することと見なければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の組成式で表現される組成物を含むことを特徴とする誘電体セラミックス組成物であって、
2+4+
但し、MはBa、Ca及びSrの中のいずれか一つであり、NはSn、Zr及びTiの中のいずれか一つであり、
前記誘電体セラミックス組成物の前記Mサイトを、前記Ba、Ca及びSrの中の互いに異なる2個で複数置き換え、また前記誘電体セラミックス組成物の前記Nサイトを、前記Sn、Zr及びTiの中の互いに異なる2個で複数置き換えて(M1−x2+2+)(N1−y4+4+)B(但し、0<x<1及び0<y<1)の組成式で表現される組成物を含む誘電体セラミックス組成物。
【請求項2】
前記誘電体セラミックス組成物にCuO及びBiを含む焼結剤が添加された組成物を含むことを特徴とする請求項1に記載の誘電体セラミックス組成物。
【請求項3】
前記CuOと前記Biの含量比は、0.12:0.88であることを特徴とする請求項2に記載の誘電体セラミックス組成物。
【請求項4】
前記焼結剤は、前記誘電体セラミックス組成物の総重量に対し1wt%ないし7wt%添加されることを特徴とする請求項3に記載の誘電体セラミックス組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−63909(P2013−63909A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−269702(P2012−269702)
【出願日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【分割の表示】特願2009−539179(P2009−539179)の分割
【原出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(509149150)コリア インスティチュート オブ セラミック エンジニアリング アンド テクノロジー (5)
【Fターム(参考)】