説明

非シアン系のスズ−銀合金電気メッキ浴

【課題】 非シアン系のスズ−銀合金メッキ浴において、浴から得られる電着皮膜のハンダ付け性や外観を向上する。
【解決手段】 (a)脂肪族アミノ酸類、含窒素芳香族カルボン酸類の少なくとも一種と、(b)芳香族スルフィド類、芳香族メルカプタン類、チオ尿素類の少なくとも一種とを含有するスズ−銀合金電気メッキ浴である。(a)の脂肪族アミノ酸類にはグリシンなどが、(a)の含窒素芳香族カルボン酸類にはピコリン酸などが、(b)の芳香族スルフィド類には3,4,5−トリヒドロキシ−4′−アミノジフェニルジスルフィドなどが、芳香族メルカプタン類には2,6−ジヒドロキシ−2−メルカプトピリジンなどが挙げられる。成分(b)のイオウ化合物を銀の安定剤とし、さらに、グリシンやピコリン酸などの成分(a)を併用することで、スズ−銀合金皮膜のハンダ濡れ性と外観を良好に向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非シアン系のスズ−銀合金メッキ浴に関して、浴から得られるスズ−銀合金皮膜のハンダ濡れ性と外観を良好に向上できるものを提供する。
【背景技術】
【0002】
スズ−銀合金メッキ浴又はスズ−銀系の多元合金メッキ浴の従来技術を挙げると下記の特許文献1〜7がある。
先ず、特許文献1には、平滑で密着性の良い電着物を得る目的で、スズの安定剤として、(b)脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸、(c)脂肪族ヒドロキシジカルボン酸、(e)脂肪族アミノカルボン酸、(f)脂肪族メルカプトカルボン酸などを含有するスズ−銀合金メッキ浴が開示されている(請求項1、段落1参照)。当該脂肪族ヒドロキシモノ又はジカルボン酸としてはグリコール酸、酒石酸やクエン酸が、脂肪族アミノカルボン酸としてはグリシンが、脂肪族メルカプトカルボン酸としてはメルカプトコハク酸が夫々挙げられ(段落9〜10参照)、実施例3、5には、上記スズの安定剤としてグリシンを単用するスズ−銀合金メッキ浴が開示されている(段落26、28参照)。
【0003】
特許文献2には、ハンダ付け性を良好にする目的で、銀の主錯化剤(C)としてチオ尿素類を含有するスズ−銀合金メッキ浴(請求項1参照)、或は、銀の主錯化剤(D)にメルカプトカルボン酸(チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、システイン、アセチルシステインなど)を使用し、銀の補助錯化剤(E)にアミンカルボン酸(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸など)を使用するスズ−銀合金メッキ浴が開示されている(請求項2参照、段落14、42、45)。これらのメッキ浴には、さらにスズの錯化剤としてグリシン、アラニン、バリン、グルタミン酸、アスパラギン酸などのアミノ酸を含有できることが記載されている(請求項3、段落48参照)。
また、実施例7〜8、12〜18、21には、グリシン、グルタミン酸などのアミノ酸を含有するスズ−銀合金メッキ浴が開示されている(段落84〜85、段落90〜97など参照)。さらに、実施例12には、EDTA4ナトリウム(上記アミンカルボン酸)とアセチルシステイン(上記脂肪族メルカプタン類)が共存するスズ−銀合金メッキ浴が(段落90参照)、実施例19には、イミノ二酢酸(上記アミンカルボン酸)とアセチルシステイン(上記脂肪族メルカプタン類)が共存するスズ−銀合金メッキ浴が(段落98参照)、実施例20には、DTPA(ジエチレントリアミンペンタ酢酸;上記アミンカルボン酸)とチオグリコール酸(上記脂肪族メルカプタン類)が共存するスズ−銀合金メッキ浴が夫々開示されている(段落99参照)。
【0004】
特許文献3には、ハンダ付け性を良好にする目的で、スズ又は銀の錯化剤として、化合物(3)のアミノ酸又はその塩、化合物(5)のメルカプトカルボン酸、化合物(8)のアミンカルボン酸、化合物(12)のチオ尿素又はその誘導体などを含有するスズ−銀系合金メッキ浴が開示されている(請求項6参照)。上記アミノ酸又はその塩にはグリシンが挙げられ(段落40〜41参照)、メルカプトカルボン酸にはメルカプトコハク酸、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、システインなどが挙げられ(段落44〜45参照)、アミンカルボン酸にはEDTA、イミノジ酢酸などが挙げられる(段落50〜51)。
また、実施例1〜20には、上記アミノ酸又はその塩、メルカプトカルボン酸、アミンカルボン酸などを単用したスズ−銀系合金メッキ浴が開示されている。
【0005】
特許文献4には、銀の安定剤として特定の含イオウ化合物を添加する銀又は銀合金メッキ浴が開示されている(請求項1〜2参照)。この特定の含イオウ化合物として、チオ尿素類、チアゾール類(2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアゾールジスルフィドなどのメルカプタン類やスルフィド類を含む)、イミダゾール類(2−メルカプトベンツイミダゾールなどのメルカプタン類を含む)、その他の化合物(チオグリコール、チオグリコール酸、チオジグリコール酸、チオジグリコールなどのメルカプタン類、スルフィド類を含む)を挙げている(段落9参照)。
また、実施例3にはチオグリコール酸を含有するスズ−銀−ビスマス合金メッキ浴が開示され(段落30)、実施例4には2−メルカプトベンゾチアゾールを含有するスズ−銀−亜鉛合金メッキ浴が開示され(段落31参照)、実施例5にはβ−チオジグリコールを含有するスズ−銀−銅合金メッキ浴が開示され(段落32参照)、実施例6には2−メルカプトベンツイミダゾールを含有するスズ−銀−インジウム合金メッキ浴が開示されている(段落33参照)。
【0006】
特許文献5には、浴の安定性を向上する目的で、芳香族メルカプタン類又は芳香族スルフィド類を含有するスズ−銀合金メッキ浴が開示されている(請求項1、段落3参照)。上記芳香族メルカプタン類としては、アミノチオフェン、メルカプトピリジン、2−アミノベンゼンチオールなどが挙げられ、芳香族スルフィド類としては、4,4−アミノジフェニルスルフィド、2,2−アミノジフェニルジスルフィド、2,2−ジピリジルジスルフィドなどが挙げられる(段落6、実施例1〜5など参照)。
【0007】
特許文献6には、スズ−銀−ビスマス合金、スズ−銀−銅合金のスズ−銀系合金メッキ浴に、錯化剤としてグリシン、酒石酸塩、クエン酸塩などを添加できることが開示されている(段落15参照)。但し、実施例1〜3のスズ−銀系合金浴には、グリシンなどの錯化剤を含有されていない。
また、特許文献7(特開2000−328286号公報:ユケン)には、浴の安定性を向上する目的で、スルフィド結合を有する特定のチオエタン化合物(例えば、3,6−ジチアオクタン−1,8−ジアミンなど;段落40〜41、段落46、段落48など参照)を含有するスズ−銀系合金メッキ浴が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平9−302498号公報
【特許文献2】特開平11−21693号公報
【特許文献3】特開平11−21692号公報
【特許文献4】特許第3012182号公報
【特許文献5】特許第3301707号公報
【特許文献6】特開平9−296289号公報
【特許文献7】特開2000−328286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
スズ又はスズ合金メッキはハンダ付け性に優れることから、電子部品や自動車部品などの工業メッキ分野に汎用されているが、環境保全や安全性の見地からスズ−鉛合金メッキは規制の対象になり、また、スズメッキはホイスカー発生の問題がある。
スズ−銀合金メッキは鉛を含まないスズ合金メッキの有力候補であり、排水処理の容易性や安全性の点から非シアン系のスズ−銀合金メッキ浴が望まれる。
上記特許文献1〜7は非シアン系のスズ−銀合金メッキ浴、又は、スズ−銀系の多元合金メッキ浴であるが、例えば、プリント基板などの電子部品では高密度化、高精度化が進んでいるため、優れたハンダ付け性により製品の信頼度を高める必要があり、この点に鑑みると、上記特許文献1〜7のメッキ浴はハンダ付け性、或は皮膜外観の点でいまだ改善の余地が少なくない。
本発明は非シアン系のスズ−銀合金メッキ浴において、浴から得られる電着皮膜のハンダ付け性や外観を向上することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、芳香族スルフィド類、芳香族メルカプタン類、或はチオ尿素類を銀イオンの安定剤として添加しながら、グリシンなどの脂肪族アミノ酸類やピコリン酸などの含窒素芳香族カルボン酸類をメッキ浴に共存させると、浴から得られるスズ−銀合金の電着皮膜のハンダ付け性並びに外観を効果的に改善できることを見い出して、本発明を完成した。
【0011】
即ち、本発明1は、可溶性第一スズ塩と、可溶性銀塩と、塩酸、硫酸、ホウフッ化水素酸などの無機酸、有機スルホン酸、カルボン酸などの有機酸から選ばれた酸の少なくとも一種とを含有するスズ−銀合金メッキ浴において、
(a)脂肪族アミノ酸類、含窒素芳香族カルボン酸類の少なくとも一種、及び
(b)芳香族スルフィド類、芳香族メルカプタン類、チオ尿素類の少なくとも一種
を含有することを特徴とするスズ−銀合金電気メッキ浴である。
【0012】
本発明2は、上記本発明1において、(a)のアミノ酸類がグリシン、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン、tert−ブチルグリシン、N−アセチルグリシン、グリシルグリシン、グリシルグリシルグリシン、グリシルグリシルグリシルグリシン、グリシンアミド、N,N−ジメチルグリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、システイン、メチオニン、グリシルグルタミン、グリシルグルタミン酸、グリシルチロシン、グリシルバリン、グリシルロイシン、グリシルヒスチジルリジン、アラニルアラニン、アラニルアラニルアラニン、アラニルヒスチジンであることを特徴とするスズ−銀合金メッキ浴である。
【0013】
本発明3は、上記本発明1又は2において、(a)の含窒素芳香族カルボン酸類がピコリン酸、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、キノリン−3−カルボン酸、キノリン−6−カルボン酸、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール−5−カルボン酸、4−アミノ−1−ピペリジンカルボン酸、1−イソキノリンカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸、インドール−2−カルボン酸、インドール−5−カルボン酸、6−メチル−3−ピリジンカルボン酸、チアゾリジン−2−カルボン酸、2−ピロールカルボン酸、8−ヒドロキシキノリン−2−カルボン酸、3-ヒドロキシ−2−ピリジンカルボン酸、2−ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、2−ピロリジンカルボン酸、5−メチル−2−ピラジンカルボン酸、2−ピペリジンカルボン酸、2−ピペラジンカルボン酸、ピペコリン酸、ピラジンカルボン酸、ピラジン−2,3−ジカルボン酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、ニコチン酸、2,3−ピリジンジカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸であることを特徴とするスズ−銀合金メッキ浴である。
【0014】
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかにおいて、(b)の芳香族スルフィド類が3,4,5−トリヒドロキシ−4′−アミノジフェニルジスルフィド、2′−アミノ−2,4,4′−トリヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2′−ジチオジアニリン、2,2′−ジピリジルジスルフィドであり、芳香族メルカプタン類が2,6−ジヒドロキシ−4−アミノベンゼンチオール、3,5−ジヒドロキシ−2−メルカプトピリジン、メルカプトピリジン、2−アミノチオフェノールである事を特徴とするスズ−銀合金メッキ浴である。
【0015】
本発明5は、上記本発明1〜4のいずれかにおいて、有機スルホン酸をベース酸とすることを特徴とするスズ−銀合金合金メッキ浴である。
【0016】
本発明6は、上記本発明1〜5のいずれかにおいて、さらに、界面活性剤、酸化防止剤、平滑剤、半光沢剤、光沢剤、電導性塩及びpH調整剤の少なくとも一種を含有することを特徴とするスズ−銀合金メッキ浴である。
【0017】
本発明7は、上記本発明1〜6のいずれかのスズ−銀合金メッキ浴を用いて、素地上にスズ−銀合金皮膜を形成した電子部品である。
【発明の効果】
【0018】
芳香族スルフィド類、芳香族メルカプタン類又はチオ尿素類(成分(b))を銀の安定剤とし、さらに、アミノ酸類、含窒素芳香族カルボン酸類(成分(a))を併用することで、その相乗効果により、浴から得られるスズ−銀合金皮膜のハンダ濡れ性と外観を良好に向上できる。
成分(a)としては、脂肪族アミノ酸類(グリシンなど)、含窒素芳香族カルボン酸類(ピコリン酸など)を単用しても良いし、両者を複用しても良い。
成分(b)としては、芳香族スルフィド類(3,4,5−トリヒドロキシ−4′−アミノジフェニルジスルフィド、2′−アミノ−2,4,4′−トリヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2′−ジチオジアニリン、2,2′−ジピリジルジスルフィドなど)、芳香族メルカプタン類(3,5−ジヒドロキシ−2−メルカプトピリジン、2,6−ジヒドロキシ−4−アミノベンゼンチオールなど)、チオ尿素類(チオ尿素など)を単用しても良いし、3者のうちの2種又は3種を複用しても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、第一に、(a)脂肪族アミノ酸類及び含窒素芳香族カルボン酸類の少なくとも一種と、(b)芳香族スルフィド類、芳香族メルカプタン類及びチオ尿素類の少なくとも一種とを共存させた非シアン系の電気スズ−銀合金メッキ浴であり、第二に、当該メッキ浴を用いて、素地上にスズ−銀合金皮膜を形成した電子部品である。
【0020】
本発明のスズ−銀合金メッキ浴は、可溶性第一スズ塩と、可溶性銀塩と、塩酸、硫酸、ホウフッ化水素酸などの無機酸、有機スルホン酸、カルボン酸などの有機酸から選ばれた酸の少なくとも一種を基本組成とする。
上記可溶性第一スズ塩は基本的に浴中でSn2+を発生させる有機又は無機のスズ塩であり、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、2−プロパノールスルホン酸、スルホコハク酸、p−フェノールスルホン酸などの有機スルホン酸の第一スズ塩を初め、ホウフッ化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第一スズ、ピロリン酸スズ、スルファミン酸スズ、塩化第一スズ、亜スズ酸塩などが挙げられる。
上記可溶性第一スズ塩は単用又は併用でき、そのメッキ浴に対する含有量は金属換算で0.5〜300g/Lが適当であり、好ましくは1〜120g/Lである。
【0021】
上記可溶性銀塩は基本的に浴中でAg+を発生させる有機又は無機の銀塩であり、有機スルホン酸銀を初め、シアン化銀、ホウフッ化銀、硫酸銀、亜硫酸銀、炭酸銀、スルホコハク酸銀、硝酸銀、クエン酸銀、酒石酸銀、グルコン酸銀、シュウ酸銀、酸化銀、酢酸銀などであり、難溶性塩も排除されない。
上記可溶性銀塩は単用又は併用でき、そのメッキ浴に対する含有量は金属換算で0.01〜10g/Lが適当であり、好ましくは0.1〜2g/Lである。
【0022】
上記浴ベースとしての酸は、基本的に有機酸、無機酸であり、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などを浴ベースにすることもできる。上記有機酸としては、有機スルホン酸、脂肪族カルボン酸などが挙げられ、無機酸としては、硫酸、塩酸、ホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルファミン酸などが挙げられる。このなかでは、本発明5に示すように、スズ塩、銀塩の溶解性、排水処理の容易性などの見地から有機スルホン酸が好ましい。
上記酸は単用又は併用でき、その含有量は0.1〜5モル/Lが適当であり、好ましくは0.3〜3モル/Lである。
【0023】
上記有機スルホン酸は、アルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸、スルホコハク酸、芳香族スルホン酸などであり、アルカンスルホン酸としては、化学式Cn2n+1SO3H(例えば、n=1〜11)で示されるものが使用でき、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1―プロパンスルホン酸、2―プロパンスルホン酸、1―ブタンスルホン酸、2―ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸などが挙げられる。
【0024】
上記アルカノールスルホン酸としては、化学式
m2m+1-CH(OH)-Cp2p-SO3H(例えば、m=0〜6、p=1〜5)
で示されるものが使用でき、具体的には、2―ヒドロキシエタン―1―スルホン酸(イセチオン酸)、2―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸(2−プロパノールスルホン酸)、2―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシペンタン―1―スルホン酸などの外、1―ヒドロキシプロパン―2―スルホン酸、3―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、4―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシヘキサン―1―スルホン酸などが挙げられる。
【0025】
上記芳香族スルホン酸は、基本的にベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸などであり、具体的には、1−ナフタレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、スルホサリチル酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、ジフェニルアミン−4−スルホン酸などが挙げられる。
上記有機スルホン酸では、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−プロパノールスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸などが好ましい。
【0026】
本発明は、浴から得られるスズ−銀合金皮膜のハンダ付け性と外観を向上するために、メッキ浴中に(a)脂肪族アミノ酸類及び含窒素芳香族カルボン酸類の少なくとも一種と、(b)芳香族スルフィド類、芳香族メルカプタン類及びチオ尿素類の少なくとも一種とを共存させることに特徴がある。
上記成分(a)のうちの脂肪族アミノ酸類は脂肪族アミノ酸(基本的にα−アミノ酸)又はその塩であり、冒述の特許文献2〜3などに記載されるEDTA、DTPA等のアミノカルボン酸類(窒素原子にカルボキシメチル基が結合した化合物)は排除される。
当該脂肪族アミノ酸としては、本発明2に示すように、グリシン、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン、tert−ブチルグリシン、N−アセチルグリシン、グリシルグリシン、グリシルグリシルグリシン、グリシルグリシルグリシルグリシン、グリシンアミド、N,N−ジメチルグリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、システイン、メチオニン、グリシルグルタミン、グリシルグルタミン酸、グリシルチロシン、グリシルバリン、グリシルロイシン、グリシルヒスチジルリジン、アラニルアラニン、アラニルアラニルアラニン、アラニルヒスチジンなどが挙げられる。
脂肪族アミノ酸の好ましい例は、グリシン、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン、N−アセチルグリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、システイン、メチオニン、グリシルグルタミン、グリシルグルタミン酸、グリシルチロシン、グリシルバリン、グリシルロイシンであり、グリシンがより好ましい。
【0027】
上記成分(a)のうちの含窒素芳香族カルボン酸類は含窒素芳香族カルボン酸又はその塩であり、含窒素芳香族カルボン酸としては、本発明3に示すように、ピコリン酸、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、キノリン−3−カルボン酸、キノリン−6−カルボン酸、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール−5−カルボン酸、4−アミノ−1−ピペリジンカルボン酸、1−イソキノリンカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸、インドール−2−カルボン酸、インドール−5−カルボン酸、6−メチル−3−ピリジンカルボン酸、チアゾリジン−2−カルボン酸、2−ピロールカルボン酸、8−ヒドロキシキノリン−2−カルボン酸、3-ヒドロキシ−2−ピリジンカルボン酸、2−ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、2−ピロリジンカルボン酸、5−メチル−2−ピラジンカルボン酸、2−ピペリジンカルボン酸、2−ピペラジンカルボン酸、ピペコリン酸、ピラジンカルボン酸、ピラジン−2,3−ジカルボン酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、ニコチン酸、2,3−ピリジンジカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸などが挙げられる。
含窒素芳香族カルボン酸の好ましい例は、ピコリン酸、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール−5−カルボン酸、4−アミノ−1−ピペリジンカルボン酸、6−メチル−3−ピリジンカルボン酸、2−ピロールカルボン酸、3-ヒドロキシ−2−ピリジンカルボン酸、2−ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、2−ピロリジンカルボン酸、2−ピペリジンカルボン酸、2−ピペラジンカルボン酸、ピペコリン酸、ピラジンカルボン酸、ニコチン酸、2,3−ピリジンジカルボン酸であり、ピコリン酸がより好ましい。
【0028】
上記芳香族スルフィド類、芳香族メルカプタン類、チオ尿素類よりなる含イオウ化合物(b)はメッキ浴中での銀イオンの安定剤であり、スズと銀を円滑に共析化させると共に、浴から得られる皮膜のハンダ付け性と外観を向上するために添加される。
当該成分(b)のうちの芳香族スルフィド類は、分子中に芳香環と、スルフィド、ジスルフィド、或はトリスルフィドなどの広義のスルフィド結合を1個、又は繰り返し有する化合物であれば特に制限はないが、スルフィド結合の両翼原子団のうちの、少なくとも一方に1個以上の塩基性窒素原子を有する化合物が好ましい(スルフィドとしては、モノスルフィド又はジスルフィド化合物が好ましい)。
【0029】
上記モノスルフィド化合物は、一般的に、各種の常法で合成される。例えば、両翼原子団に塩基性窒素を有するヘテロ環基が結合したスルフィド化合物は、ナトリウムチオラートとハロゲン化物を反応させて合成される。
上記ジスルフィド化合物は、例えば、チオール化合物を過酸化水素やヨウ素などの酸化剤で酸化し、ジスルフィド結合を生成するなどの常法により合成される。尚、非対称のジスルフィド化合物の場合には、チオール化合物とスルフェニルクロリドを反応させて合成される。
上記トリスルフィド化合物は、チオール化合物と塩化チオニルを反応させて合成される。上記テトラスルフィド化合物は、ヒドロジスルフィド化合物をヨウ素などで酸化して合成される。
【0030】
上記塩基性窒素原子を有する芳香族スルフィド類としては、3,4,5−トリヒドロキシ−4′−アミノジフェニルジスルフィド、2′−アミノ−2,4,4′−トリヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2′−ジチオジアニリン、2,2′−ジピリジルジスルフィド、4,4′−ジピリジルジスルフィド、2−(2−アミノエチルジチオ)ピリジン、2,2′−ジチアジアゾリルジスルフィド、5,5′−ジ(1,2,3−トリアゾリル)ジスルフィド、2,2′−ジピラジニルジスルフィド、2,2′−ジアミノ−4,4′−ジメチルジフェニルジスルフィド、2,2′−ジピリダジニルジスルフィド、5,5′−ジピリミジニルジスルフィド、2,2′−ジ(5−ジメチルアミノチアジアゾリル)ジスルフィド、5,5′−ジ(1−メチルテトラゾリル)ジスルフィド、2,2′−ジ(1−メチルピロリル)ジスルフィド、2−ピリジル−2−ヒドロキシフェニルジスルフィド、2,2′−ジピペリジルジスルフィド、2,2′−ジピリジルスルフィド、2,6−ジ(2−ピリジルジチオ)ピリジン、2,2′−ジ(3,5−ジヒドロキシピリミジニル)ジスルフィド、2,2′−ジキノリルジスルフィド、2,2′−ジ{6−(2−ピリジル)}ピリジルジスルフィド、2,2′−α−ピコリルジスルフィド、2,2′−ジ(8−ヒドロキシキノリル)ジスルフィド、5,5′−ジイミダゾリルジスルフィド、2,2′−ジチアゾリルジスルフィド、2−ピリジル−2−アミノフェニルジスルフィド、2−ピリジル−2−キノリルジスルフィド、2,2′−ジチアゾリニルジスルフィド、2,2′−ジ(4,5-ジアミノ-6-ヒドロキシピリミジニル)ジスルフィド、2,2′−ジキノキサリニルジスルフィド、3,3′−ジフェナントロリニルジスルフィド、8,8′−ジキノリルジスルフィド、2,2′−ジチアゾリニルジスルフィド、2,2′−ジピコリルジスルフィドなどが挙げられる。
本発明の芳香族スルフィド類の好ましい例は、3,4,5−トリヒドロキシ−4′−アミノジフェニルジスルフィド、2′−アミノ−2,4,4′−トリヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2′−ジチオジアニリン、2,2′−ジピリジルジスルフィドである。
例えば、3,4,5−トリヒドロキシ−4′−アミノジフェニルジスルフィド、2′−アミノ−2,4,4′−トリヒドロキシジフェニルスルフィドでは、モノスルフィド結合又はジスルフィド結合の一方のベンゼン環に置換したアミノ基が塩基性窒素原子を有する。
2,2′−ジチオジアニリンでは、ジスルフィド結合の両翼のベンゼン環に置換したアミノ基が塩基性窒素原子を有し、2,2′−ジピリジルジスルフィドでは、ジスルフィド結合の両翼のピリジン環が塩基性窒素原子を有する。
【0031】
当該成分(b)のうちの芳香族メルカプタン類は、分子中に芳香環と、メルカプト基を1個又は複数個有する化合物であれば特に制限はないが、芳香環に1個以上の塩基性窒素原子を有する化合物が好ましい。
塩基性窒素原子を有する芳香族メルカプタン類としては、2,6−ジヒドロキシ−4−アミノベンゼンチオール、3,5−ジヒドロキシ−4−アミノベンゼンチオール、3,5−ジヒドロキシ−2−メルカプトピリジン、3,5−ジヒドロキシ−4−メルカプトピリジン、メルカプトピリジン、2−アミノチオフェノール、2−アミノ−4−ヒドロキシチオフェノール、2−メルカプトベンゾチアゾール、5―ヒドロキシ―2―メルカプトベンゾチアゾール、2,5−ジヒドロキシチアゾールなどが挙げられる。
本発明の芳香族メルカプタン類の好ましい例は、本発明4に示すように、2,6−ジヒドロキシ−4−アミノベンゼンチオール、3,5−ジヒドロキシ−2−メルカプトピリジン、メルカプトピリジン、2−アミノチオフェノールである。
【0032】
当該成分(b)のうちのチオ尿素類は、チオ尿素及びチオ尿素誘導体をいう。
上記チオ尿素誘導体としては、N,N′―ジメチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素(例えば、N,N′―ジエチルチオ尿素)、N,N′―ジイソプロピルチオ尿素、アリルチオ尿素、アセチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、N,N′―ジフェニルチオ尿素、二酸化チオ尿素、チオセミカルバジド、S−メチルイソチオ尿素硫酸塩、トリブチルチオ尿素、塩酸ベンジルイソチオ尿素、N,N′−ジブチルチオ尿素、1−ナフチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、1−フェニルチオ尿素、1−メチルチオ尿素等が挙げられる。
本発明のチオ尿素類の好ましい例は、チオ尿素である。
【0033】
成分(a)に属する脂肪族アミノ酸類と含窒素芳香族カルボン酸類は夫々を単用又は併用でき、脂肪族アミノ酸類と含窒素芳香族カルボン酸類を複用しても良い。脂肪族アミノ酸類のメッキ浴への含有量は0.01〜1.5モル/Lであり、好ましくは0.05〜1.0モル/Lである。含窒素芳香族カルボン酸類のメッキ浴への含有量は8×10-4〜0.4モル/Lであり、好ましくは8×10-3〜0.24モル/Lである。
上記成分(b)に属する芳香族スルフィド類、芳香族メルカプタン類又はチオ尿素類は夫々を単用又は併用でき、芳香族スルフィド類、芳香族メルカプタン類又はチオ尿素類を複用しても良い。当該芳香族スルフィド類、芳香族メルカプタン類又はチオ尿素類の各メッキ浴への含有量は可溶性銀塩の濃度によっても異なるが、一般に1.8×10-4〜0.55モル/Lであり、好ましくは9.0×10-4〜0.18モル/Lである。
【0034】
また、下記の補助安定剤を銀イオンの安定化のために補助的に添加することもできる。 上記補助安定剤は、オキシカルボン酸、ポリカルボン酸、モノカルボン酸などであり、具体的には、グルコン酸、クエン酸、グルコヘプトン酸、グルコノラクトン、グルコヘプトラクトン、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アスコルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、ジグリコール酸、或はこれらの塩などが挙げられる。好ましくは、グルコン酸、クエン酸、グルコヘプトン酸、グルコノラクトン、グルコヘプトラクトン、或はこれらの塩などである。
また、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジオキシビス(エチルアミン)−N,N,N′,N′−テトラ酢酸、ニトリロトリメチルホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、或はこれらの塩なども有効である。
【0035】
一方、本発明6に示すように、スズ−銀合金メッキ浴には、前述したように、上記成分(a)〜(b)の外にも、必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、平滑剤、光沢剤、半光沢剤、pH調整剤、導電性塩、防腐剤、消泡剤等の各種添加剤を含有することができる。
上記界面活性剤は、メッキ皮膜の外観、緻密性、平滑性、密着性などの改善を目的とし、通常のアニオン系、カチオン系、ノニオン系、或は両性などの各種界面活性剤が使用できる。
上記アニオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、モノ〜トリアルキルアミン塩、ジメチルジアルキルアンモニウム塩、トリメチルアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、C1〜C25アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、C1〜C25アルキルナフトール、C1〜C25アルコキシルリン酸(塩)、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1〜C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2〜300モル付加縮合させたものなどが挙げられる。両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、スルホベタイン、イミダゾリンベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。
上記酸化防止剤は浴中のSn2+の酸化防止を目的としたもので、アスコルビン酸又はその塩、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、フロログルシン、クレゾールスルホン酸又はその塩、フェノールスルホン酸又はその塩、カテコールスルホン酸又はその塩、ハイドロキノンスルホン酸又はその塩、ヒドロキシナフタレンスルホン酸又はその塩、ヒドラジン等が挙げられる。例えば、中性浴ではアスコルビン酸又はその塩等が好ましい。
【0036】
上記平滑剤としては、β−ナフトール、β−ナフトール−6−スルホン酸、β−ナフタレンスルホン酸、m−クロロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、(o−、p−)メトキシベンズアルデヒド、バニリン、(2,4−、2,6−)ジクロロベンズアルデヒド、(o−、p−)クロロベンズアルデヒド、1−ナフトアルデヒド、2−ナフトアルデヒド、2(4)−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、2(4)−クロロ−1−ナフトアルデヒド、2(3)−チオフェンカルボキシアルデヒド、2(3)−フルアルデヒド、3−インドールカルボキシアルデヒド、サリチルアルデヒド、o−フタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−バレルアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、グリオキサール、アルドール、スクシンジアルデヒド、カプロンアルデヒド、イソバレルアルデヒド、アリルアルデヒド、グルタルアルデヒド、1−ベンジリデン−7−ヘプタナール、2,4−ヘキサジエナール、シンナムアルデヒド、ベンジルクロトンアルデヒド、アミン−アルデヒド縮合物、酸化メシチル、イソホロン、ジアセチル、ヘキサンジオン−3,4、アセチルアセトン、3−クロロベンジリデンアセトン、sub.ピリジリデンアセトン、sub.フルフリジンアセトン、sub.テニリデンアセトン、4−(1−ナフチル)−3−ブテン−2−オン、4−(2−フリル)−3−ブテン−2−オン、4−(2−チオフェニル)−3−ブテン−2−オン、クルクミン、ベンジリデンアセチルアセトン、ベンザルアセトン、アセトフェノン、(2,4−、3,4−)ジクロロアセトフェノン、ベンジリデンアセトフェノン、2−シンナミルチオフェン、2−(ω−ベンゾイル)ビニルフラン、ビニルフェニルケトン、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、クロトン酸、プロピレン−1,3−ジカルボン酸、ケイ皮酸、(o−、m−、p−)トルイジン、(o−、p−)アミノアニリン、アニリン、(o−、p−)クロロアニリン、(2,5−、3,4−)クロロメチルアニリン、N−モノメチルアニリン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、N−フェニル−(α−、β−)ナフチルアミン、メチルベンズトリアゾール、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,3−ベンズトリアジン、イミダゾール、2−ビニルピリジン、インドール、キノリン、モノエタノールアミンとo−バニリンの反応物、ポリビニルアルコール、カテコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ポリエチレンイミン、エチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
また、ゼラチン、ポリペプトン、N-(3-ヒドロキシブチリデン)-p-スルファニル酸、N-ブチリデンスルファニル酸、N-シンナモイリデンスルファニル酸、2,4-ジアミノ-6-(2'-メチルイミダゾリル(1'))エチル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2'-エチル-4-メチルイミダゾリル(1'))エチル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2'-ウンデシルイミダゾリル(1'))エチル-1,3,5-トリアジン、サリチル酸フェニル、或は、ベンゾチアゾール類も平滑剤として有効である。
上記ベンゾチアゾール類としては、ベンゾチアゾール、2-メチルベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(メチルメルカプト)ベンゾチアゾール、2-アミノベンゾチアゾール、2-アミノ-6-メトキシベンゾチアゾール、2-メチル-5-クロロベンゾチアゾール、2-ヒドロキシベンゾチアゾール、2-アミノ-6-メチルベンゾチアゾール、2-クロロベンゾチアゾール、2,5-ジメチルベンゾチアゾール、6-ニトロ-2-メルカプトベンゾチアゾール、5-ヒドロキシ-2-メチルベンゾチアゾール、2-ベンゾチアゾールチオ酢酸などが挙げられる。
【0037】
上記光沢剤、或は半光沢剤としては、上記平滑剤とも多少重複するが、ベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、2,4,6−トリクロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、フルフラール、1−ナフトアルデヒド、2−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、3−アセナフトアルデヒド、ベンジリデンアセトン、ピリジデンアセトン、フルフリリデンアセトン、シンナムアルデヒド、アニスアルデヒド、サリチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、グルタルアルデヒド、パラアルデヒド、バニリンなどの各種アルデヒド、トリアジン、イミダゾール、インドール、キノリン、2−ビニルピリジン、アニリン、フェナントロリン、ネオクプロイン、N―(3―ヒドロキシブチリデン)―p―スルファニル酸、N―ブチリデンスルファニル酸、N―シンナモイリデンスルファニル酸、2,4―ジアミノ―6―(2′―メチルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、2,4―ジアミノ―6―(2′―エチル―4―メチルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、2,4―ジアミノ―6―(2′―ウンデシルイミダゾリル(1′))エチル―1,3,5―トリアジン、サリチル酸フェニル、或は、ベンゾチアゾール、2―メチルベンゾチアゾール、2―アミノベンゾチアゾール、2―アミノ―6―メトキシベンゾチアゾール、2―メチル―5―クロロベンゾチアゾール、2―ヒドロキシベンゾチアゾール、2―アミノ―6―メチルベンゾチアゾール、2―クロロベンゾチアゾール、2,5―ジメチルベンゾチアゾール、5―ヒドロキシ―2―メチルベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール類などが挙げられる。
【0038】
上記pH調整剤としては、塩酸、硫酸等の各種の酸、アンモニア水、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の各種の塩基などが挙げられるが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などのモノカルボン酸類、ホウ酸類、リン酸類、シュウ酸、コハク酸などのジカルボン酸類、乳酸、酒石酸などのオキシカルボン酸類なども有効である。
上記導電性塩としては、硫酸、塩酸、リン酸、スルファミン酸、スルホン酸などのナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、アミン塩などが挙げられるが、上記pH調整剤で共用できる場合もある。
上記防腐剤としては、ホウ酸、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、塩化ベンザルコニウム、フェノール、フェノールポリエトキシレート、チモール、レゾルシン、イソプロピルアミン、グアヤコールなどが挙げられる。
上記消泡剤としては、プルロニック界面活性剤、高級脂肪族アルコール、アセチレンアルコール及びそれらのポリアルコキシレートなどが挙げられる。
【0039】
電気メッキの条件は任意であり、特に制限はない。
浴温は0℃以上が適当であり、好ましくは10〜50℃程度である。陰極電流密度は0.01〜150A/dm2が適当であり、好ましくは0.1〜30A/dm2程度である。浴のpHも酸性からほぼ中性までの領域に適用できる。
【0040】
上記本発明7は、本発明のスズ−銀合金メッキ浴を用いて素地上にスズ−銀合金皮膜を形成した電子部品である。
当該電子部品としては、半導体デバイス、プリント基板、フレキシブルプリント基板、フィルムキャリア、IC、コネクタ、スイッチ、抵抗、可変抵抗、コンデンサ、フィルタ、インダクタ、サーミスタ、水晶振動子、リード線などが挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明のスズ−銀合金電気メッキ浴の実施例、当該メッキ浴から得られるスズ−銀合金皮膜のハンダ付け性、外観の評価試験例を順次説明する。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0042】
《スズ−銀合金電気メッキ浴の実施例》
実施例1〜10のうち、実施例3と8は本発明の(a)成分としてアミノ酸類と含窒素芳香族カルボン酸類を複用した例、実施例6は本発明の(b)成分としてチオ尿素類を2種併用した例、実施例10は本発明の(b)成分として芳香族スルフィド類及び芳香族メルカプタン類を複用した例、他の実施例はすべて成分(a)と成分(b)を夫々単用した例である。実施例2〜4、6〜8は成分(a)にピコリン酸(含窒素芳香族カルボン酸類)を使用した例、実施例1、3、5、8〜10はグリシン(アミノ酸類)を使用した例である(上述のように、実施例3と8はピコリン酸とグリシンを複用した例である)。実施例1〜3、6〜7は成分(b)にチオ尿素類を使用した例、実施例4〜5、10は芳香族スルフィド類を使用した例、実施例8〜10は芳香族メルカプタン類を使用した例である。
また、比較例1〜7のうち、比較例1〜2は成分(a)を含まず、成分(b)(芳香族スルフィド類)のみを含有した例である。比較例3は成分(a)を含まず、成分(b)(チオ尿素類)のみを含有した例である。比較例4は成分(b)を含まず、成分(a)(アミノ酸類)のみを含有した例である。比較例5は成分(b)を含まず、成分(a)(含窒素芳香族カルボン類)のみを含有した例である。比較例6は冒述の特許文献2に準拠して脂肪族メルカプタン類(チオグリコール酸)とアミノカルボン酸類(DTPA)を含有した例である。比較例6〜7は成分(a)を含まず、成分(b)(芳香族メルカプタン類)のみを含有した例である。
【0043】
(1)実施例1
下記の組成でスズ−銀合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸錫(Sn2+として) 65g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸 0.7モル/L
チオ尿素 5g/L
グリシン 30g/L
オレイルアミンEO(15モル)・PO(15モル)付加物 1g/L
但し、上記EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシドを表す(下記の実施例、比較例も同様)。
【0044】
(2)実施例2
下記の組成でスズ−銀合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸錫(Sn2+として) 65g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸 0.7モル/L
チオ尿素 5g/L
ピコリン酸 30g/L
オレイルアミンEO(15モル)・PO(15モル)付加物 1g/L
【0045】
(3)実施例3
下記の組成でスズ−銀合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸錫(Sn2+として) 65g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸 0.7モル/L
チオ尿素 5g/L
ピコリン酸 30g/L
グリシン 30g/L
オレイルアミンEO(15モル)・PO(15モル)付加物 1g/L
ジスチレン化クレゾールEO(10モル)付加物 2g/L
【0046】
(4)実施例4
下記の組成でスズ−銀合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸錫(Sn2+として) 65g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸 0.7モル/L
ピコリン酸 2g/L
3,4,5−トリヒドロキシ
−4′−アミノジフェニルジスルフィド 5g/L
オレイルアミンEO(15モル)・PO(15モル)付加物 1g/L
【0047】
(5)実施例5
下記の組成でスズ−銀合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸錫(Sn2+として) 65g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸 0.7モル/L
2′−アミノ−2,4,4′−トリヒドロキシ
−ジフェニルスルフィド 5g/L
グリシン 30g/L
オレイルアミンEO(15モル)・PO(15モル)付加物 1g/L
エチレンジアミンEO付加物 2g/L
尚、上記エチレンジアミンのEO付加物は合計分子量の10%のEOを付加したものである(以下の実施例、比較例も同様)。
【0048】
(6)実施例6
下記の組成でスズ−銀合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸錫(Sn2+として) 80g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 1.4g/L
メタンスルホン酸 0.7モル/L
チオ尿素 5g/L
N,N−ジエチルチオ尿素 5g/L
ピコリン酸 20g/L
ラウリルアミンPO(10モル)・EO(7モル)付加物 1g/L
ジスチレン化クレゾールEO(10モル)付加物 2g/L
エチレンジアミンEO付加物 2g/L
【0049】
(7)実施例7
下記の組成でスズ−銀合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸錫(Sn2+として) 65g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸 0.7モル/L
チオ尿素 20g/L
ピコリン酸 20g/L
特殊パラクミルフェノールEO(10モル)付加物 4g/L
エチレンジアミンEO付加物 2g/L
【0050】
(8)実施例8
下記の組成でスズ−銀合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸錫(Sn2+として) 65g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸 0.7モル/L
グリシン 30g/L
ピコリン酸 2g/L
2,6−ジヒドロキシ−4−アミノベンゼンチオール 5g/L
オレイルアミンEO(15モル)・PO(15モル)付加物 1g/L
【0051】
(9)実施例9
下記の組成でスズ−銀合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸錫(Sn2+として) 65g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸 0.7モル/L
グリシン 30g/L
3,5−ジヒドロキシ−2−メルカプトピリジン 5g/L
オレイルアミンEO(15モル)・PO(15モル)付加物 1g/L
【0052】
(10)実施例10
下記の組成でスズ−銀合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸錫(Sn2+として) 65g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸 0.7モル/L
グリシン 30g/L
3,4,5−トリヒドロキシ
−4′−アミノジフェニルジスルフィド 5g/L
3,5−ジヒドロキシ−2−メルカプトピリジン 5g/L
オレイルアミンEO(15モル)・PO(15モル)付加物 1g/L
【0053】
(11)比較例1
下記の組成でスズ−銀合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸錫(Sn2+として) 65g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸 0.7モル/L
3,4,5−トリヒドロキシ
−4′−アミノジフェニルジスルフィド 5g/L
オレイルアミンEO(15モル)・PO(15モル)付加物 1g/L
【0054】
(12)比較例2
下記の組成でスズ−銀合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸錫(Sn2+として) 65g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸 0.7モル/L
2′−アミノ−2,4,4′−トリヒドロキシ
−ジフェニルスルフィド 5g/L
オレイルアミンEO(15モル)・PO(15モル)付加物 1g/L
ジスチレン化クレゾールEO(10モル)付加物 2g/L
【0055】
(13)比較例3
下記の組成でスズ−銀合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸錫(Sn2+として) 65g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸 0.7モル/L
チオ尿素 10g/L
ジスチレン化クレゾールEO(10モル)付加物 2g/L
【0056】
(14)比較例4
下記の組成でスズ−銀合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸錫(Sn2+として) 65g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸 0.7モル/L
グリシン 30g/L
エチレンジアミンEO付加物 2g/L
オレイルアミンEO(15モル)・PO(15モル)付加物 1g/L
【0057】
(15)比較例5
下記の組成でスズ−銀合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸錫(Sn2+として) 65g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸 0.7モル/L
ピコリン酸 2g/L
オレイルアミンEO(15モル)・PO(15モル)付加物 1g/L
【0058】
(16)比較例6
下記の組成でスズ−銀合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸錫(Sn2+として) 65g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸 0.7モル/L
チオグリコール酸 0.5モル/L
DTPA 0.001モル/L
ラウリルアミンPO(10モル)・EO(7モル)付加物 1g/L
【0059】
(17)比較例7
下記の組成でスズ−銀合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸錫(Sn2+として) 65g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸 0.7モル/L
2,6−ジヒドロキシ−4−アミノベンゼンチオール 5g/L
オレイルアミンEO(15モル)・PO(15モル)付加物 1g/L
【0060】
(18)比較例8
下記の組成でスズ−銀合金電気メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸錫(Sn2+として) 65g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸 0.7モル/L
3,5−ジヒドロキシ−2−メルカプトピリジン 5g/L
オレイルアミンEO(15モル)・PO(15モル)付加物 1g/L
【0061】
《スズ−銀合金皮膜の皮膜外観並びにハンダ濡れ性試験例》
そこで、上記実施例1〜10並びに比較例1〜8で得られた各スズ−銀合金電気メッキ浴を用いて、陰極電流密度5〜15A/dm2の条件で膜厚約10μmのスズ−銀合金メッキ皮膜を形成し、当該電着皮膜の外観を目視観察した。
メッキ皮膜の評価基準は次の通りである。
○:白色又は半光沢で均一な外観を呈した。
×:灰白色又は黒灰色の外観を呈した。
また、上記電気メッキで得られたスズ−銀合金皮膜について、プレッシャークッカー試験(以下、PCTと略す)機を用いて加速試験を行い、加速試験後(PCT飽和4時間後)の皮膜について、メニスコグラフ法によりゼロクロスタイム(ZCTと略す、単位:秒)を測定し、ハンダ濡れ性の優劣を評価した。
【0062】
下表はその試験結果である。
皮膜外観 ZCT(秒) 皮膜外観 ZCT(秒)
実施例1 ○ 1.8 比較例1 × 5以上
実施例2 ○ 1.6 比較例2 × 5以上
実施例3 ○ 1.7 比較例3 × 5以上
実施例4 ○ 1.6 比較例4 × 5以上
実施例5 ○ 1.8 比較例5 × 5以上
実施例6 ○ 1.7 比較例6 × 5以上
実施例7 ○ 1.6 比較例7 × 5以上
実施例8 ○ 1.8 比較例8 × 5以上
実施例9 ○ 1.7
実施例10 ○ 1.8
【0063】
上表を見ると、アミノ酸類や含窒素芳香族カルボン酸類からなる成分(a)を含まず、芳香族スルフィド類、芳香族メルカプタン類、或はチオ尿素類からなる成分(b)だけを含む比較例1〜3及び比較例7〜8は共に、灰白色又は黒灰色の外観不良を呈し、且つ、ハンダ濡れ性の評価も悪かった。また、成分(a)だけを含み、成分(b)を含まない比較例4〜5も、灰白色又は黒灰色の外観不良を呈し、且つ、ハンダ濡れ性の評価も悪かった。
これに対して、実施例1〜10のメッキ皮膜は美麗で均質な外観を呈し、且つ、ハンダ濡れ性にも優れていた(ZCTは全て2秒以下)。当該実施例1〜10をこれらの比較例に対比すると(例えば、実施例4と比較例1、実施例4と比較例5、実施例9と比較例8は成分(a)、成分(b)以外の組成が共通する。また、実施例1〜3と比較例3、実施例5と比較例2は、成分(a)、成分(b)、界面活性剤以外の組成が共通する。)、スズ−銀合金メッキ皮膜の外観とハンダ濡れ性を改善するには、上記成分(a)と成分(b)のいずれか一方だけの含有では足りず、成分(a)と成分(b)の両方を併有する必要があることが確認できた。
また、DTPAはアミノカルボン酸類に属し、本発明のアミノ酸類に類似し、且つ、脂肪族メルカプタン類であるチオグリコール酸と本発明の成分(b)中の芳香族メルカプタン類はメルカプタン類に属する点で共通するが、このDTPAとチオグリコール酸(HSCH2COOH)とを併用した比較例6においても、皮膜外観とハンダ濡れ性の評価は他の比較例と同様に悪かった。従って、この比較例6に実施例1〜10を対比すると、スズ−銀合金メッキ皮膜の外観とハンダ濡れ性を改善するには、成分(b)と組み合わせるべき対象(含窒素芳香族カルボン酸類以外)として、DTPAのようなアミノカルボン酸類ではなく、グリシンなどのアミノ酸類を選択する必要があることが確認できた。
【0064】
次いで、実施例1〜10を検討すると、成分(a)としてグリシン及び/又はピコリン酸を含み、成分(b)として安価なチオ尿素を含む実施例1〜3、6〜7は、同成分(a)に、成分(b)として芳香族スルフィド類及び/又は芳香族メルカプタン類を含む実施例4〜5、8〜10と同様のハンダ濡れ性の評価を示すことが判明した。成分(a)と(b)が共存すれば、スズ塩と銀塩を増量した浴(実施例6参照)においても、他の実施例と同様のハンダ濡れ性の評価であった。
さらに、ピコリン酸濃度を30〜20g/Lから2g/Lに低減しても、ハンダ濡れ性の評価に遜色がなく(実施例2と実施例4を対比参照)、また、チオ尿素についても20g/Lから5g/Lに低減しても、同様にハンダ濡れ性の評価に遜色がないことが判明した(実施例7と実施例2又は3を対比参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性第一スズ塩と、可溶性銀塩と、塩酸、硫酸、ホウフッ化水素酸などの無機酸、有機スルホン酸、カルボン酸などの有機酸から選ばれた酸の少なくとも一種とを含有するスズ−銀合金メッキ浴において、
(a)脂肪族アミノ酸類、含窒素芳香族カルボン酸類の少なくとも一種、及び
(b)芳香族スルフィド類、芳香族メルカプタン類、チオ尿素類の少なくとも一種
を含有することを特徴とするスズ−銀合金電気メッキ浴。
【請求項2】
(a)のアミノ酸類がグリシン、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン、tert−ブチルグリシン、N−アセチルグリシン、グリシルグリシン、グリシルグリシルグリシン、グリシルグリシルグリシルグリシン、グリシンアミド、N,N−ジメチルグリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、システイン、メチオニン、グリシルグルタミン、グリシルグルタミン酸、グリシルチロシン、グリシルバリン、グリシルロイシン、グリシルヒスチジルリジン、アラニルアラニン、アラニルアラニルアラニン、アラニルヒスチジンであることを特徴とする請求項1に記載のスズ−銀合金メッキ浴。
【請求項3】
(a)の含窒素芳香族カルボン酸類がピコリン酸、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、キノリン−3−カルボン酸、キノリン−6−カルボン酸、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール−5−カルボン酸、4−アミノ−1−ピペリジンカルボン酸、1−イソキノリンカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸、インドール−2−カルボン酸、インドール−5−カルボン酸、6−メチル−3−ピリジンカルボン酸、チアゾリジン−2−カルボン酸、2−ピロールカルボン酸、8−ヒドロキシキノリン−2−カルボン酸、3-ヒドロキシ−2−ピリジンカルボン酸、2−ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、2−ピロリジンカルボン酸、5−メチル−2−ピラジンカルボン酸、2−ピペリジンカルボン酸、2−ピペラジンカルボン酸、ピペコリン酸、ピラジンカルボン酸、ピラジン−2,3−ジカルボン酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、ニコチン酸、2,3−ピリジンジカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスズ−銀合金メッキ浴。
【請求項4】
(b)の芳香族スルフィド類が3,4,5−トリヒドロキシ−4′−アミノジフェニルジスルフィド、2′−アミノ−2,4,4′−トリヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2′−ジチオジアニリン、2,2′−ジピリジルジスルフィドであり、芳香族メルカプタン類が2,6−ジヒドロキシ−4−アミノベンゼンチオール、3,5−ジヒドロキシ−2−メルカプトピリジン、メルカプトピリジン、2−アミノチオフェノールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスズ−銀合金メッキ浴。
【請求項5】
有機スルホン酸をベース酸とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のスズ−銀合金合金メッキ浴。
【請求項6】
さらに、界面活性剤、酸化防止剤、平滑剤、半光沢剤、光沢剤、電導性塩及びpH調整剤の少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のスズ−銀合金メッキ浴。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のスズ−銀合金メッキ浴を用いて、素地上にスズ−銀合金皮膜を形成した電子部品。

【公開番号】特開2006−265573(P2006−265573A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−81044(P2005−81044)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000197975)石原薬品株式会社 (83)
【出願人】(593002540)株式会社大和化成研究所 (29)
【Fターム(参考)】