説明

非ステロイド性消炎鎮痛外用剤

【課題】非ステロイド性消炎鎮痛成分及び酸性ムコ多糖を含有する外用剤の経皮吸収性を改善した消炎鎮痛外用剤の提供。
【解決手段】非ステロイド性消炎鎮痛成分、酸性ムコ多糖を含有する消炎鎮痛外用剤に、N−メチルピロリドンを含有させた消炎鎮痛外用剤。該非ステロイド性消炎鎮痛成分としては、インドメタシンであることが好ましい。該酸性ムコ多糖としては、ヘパリン類似物質であることが好ましい。該消炎鎮痛外用剤は、酸性ムコ多糖を配合しても非ステロイド性消炎鎮痛成分の経皮吸収性が高く、優れた消炎鎮痛効果を示し、さらに酸性ムコ多糖による皮膚刺激の低減効果を併せ持ち、薬効及び使用感の両方に優れた効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた経皮吸収性を有する非ステロイド性消炎鎮痛成分及び酸性ムコ多糖を含有する消炎鎮痛外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
インドメタシンに代表される非ステロイド性消炎鎮痛成分は、外用剤として、筋肉痛、肩こりに伴う肩の痛み、腰痛、関節痛、腱鞘炎、肘の痛み、打撲、捻挫等の治療薬として広く使用されている。また、その剤形は、液剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲルクリーム剤、ゲル軟膏剤、貼付剤、エアゾール剤等、多岐に亘っている。しかし、いずれの剤形であっても外用剤での使用では、非ステロイド性消炎鎮痛成分の薬効を十分に発現させるために経皮吸収性を高める必要がある。そのため、製剤化にあたり非ステロイド性消炎鎮痛成分の溶解性を高める低級アルコール類やクロタミトン等を配合することや、その他経皮吸収促進剤であるメントールやアジピン酸ジイソプロピル等を配合すること等が行われている(特許文献1、2参照)。
【0003】
また、近年では非ステロイド性消炎鎮痛成分を配合した外用剤に非ステロイド性消炎鎮痛成分以外の有効成分を配合し、その作用を相乗的に高めた製剤や、副作用を低減させた製剤、追加の効能を持たせた製剤の開発もなされている。例えば、非ステロイド性消炎鎮痛成分にビタミンE又はビタミンEアセテートを配合することで皮膚刺激を低減した製剤(特許文献3参照)、同じくトウガラシエキスやノニル酸ワニリルアミドを配合することで温感刺激を与えた製剤(特許文献4参照)、同じく酸性ムコ多糖を配合することで皮膚刺激が低減され経皮吸収性が向上された製剤(特許文献5、6参照)、同じくリドカイン等の局所麻酔剤を配合することで鎮痛効果を向上させた製剤(特許文献7参照)、同じく山梔子を配合することで皮膚刺激を低減させた製剤等が知られている(特許文献8参照)。
【0004】
ここで、非ステロイド性消炎鎮痛成分と酸性ムコ多糖を配合した外用剤に着目すると、特許文献5では高い消炎鎮痛効果が得られ、かつ、皮膚刺激が低減された外用組成物が得られることが記載されており、特許文献6では皮膚刺激が少なく、薬効成分の経皮吸収性に優れ、抗炎症効果が向上した皮膚外用剤が提供されることが記載されている。特に、特許文献6には、酸性ムコ多糖が非ステロイド性消炎鎮痛成分等の薬効成分の経皮吸収促進及び抗炎症効果向上に寄与することが記載されている(特許文献6実施例1参照)。上記のように、非ステロイド性消炎鎮痛成分と酸性ムコ多糖とを配合した製剤は、いくつかの観点から通常の非ステロイド性消炎鎮痛成分のみを有効成分とする外用剤よりも優れた効果を示すことが示唆されている。しかし、未だ非ステロイド性消炎鎮痛成分と酸性ムコ多糖を配合した製剤は上市されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−189115号公報
【特許文献2】特開平02−142727号公報
【特許文献3】特開2004−307515号公報
【特許文献4】特開平08−081370号公報
【特許文献5】特開平10−182497号公報
【特許文献6】特開2000−212021号公報
【特許文献7】国際公開第01/047559号
【特許文献8】特開平07−223949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、高い消炎鎮痛効果、低い皮膚刺激、及び優れた経皮吸収性を有する消炎鎮痛外用剤を開発するにあたり、非ステロイド性消炎鎮痛成分及び酸性ムコ多糖を含有する消炎鎮痛外用剤を検討した結果、非ステロイド性消炎鎮痛成分及び酸性ムコ多糖を含有する製剤は、酸性ムコ多糖を含有しない製剤よりも非ステロイド性消炎鎮痛成分の経皮吸収性が低下するという今まで得られていた知見とは正反対の効果が得られることがわかった(表1参照)。本発明は、従来、経皮吸収性に優れていると考えられていた非ステロイド性消炎鎮痛成分及び酸性ムコ多糖を含有する外用組成物が、製剤化した際に経皮吸収性が低下するという新たな課題を発見したことによるものである。すなわち、非ステロイド性消炎鎮痛成分及び酸性ムコ多糖を含有する消炎鎮痛外用剤の経皮吸収性を改善することを本発明の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく、通常非ステロイド性消炎鎮痛成分を含有する製剤に配合されている経皮吸収促進剤を増量した製剤を製造したが、それでも経皮吸収促進効果は得られなかった(表1参照)。鋭意検討の結果、N−メチルピロリドンを配合したときのみ極めて優れた経皮吸収性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は非ステロイド性消炎鎮痛成分、酸性ムコ多糖、及びN−メチルピロリドンを含有する消炎鎮痛外用剤である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の消炎鎮痛外用剤は、酸性ムコ多糖を配合しても非ステロイド性消炎鎮痛成分の経皮吸収性が高く、優れた消炎鎮痛効果を示し、さらに酸性ムコ多糖による皮膚刺激の低減効果を併せ持つ。そのため、本発明により、薬効及び使用感の両方に優れた好ましい製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で使用する非ステロイド性消炎鎮痛成分としては、アスピリン、サリチルアミド、ジフルニサル、エテンザミド等のサリチル酸系消炎鎮痛薬;アセメタシン、インドメタシン、インドメタシンファルネシル、スリンダク、マレイン酸プログルメタシン、アルクロフェナク、アンフェナク、フェンブフェン、エトドラク、モフェゾラク、フェルビナク、ジクロフェナク等のアリール酢酸系消炎鎮痛薬;アルミノプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ザルトプロフェン、チアプロフェン酸、ナプロキセン、オキサプロジン、フェノプロフェンカルシウム塩、プラノプロフェン、フルルビプロフェン、メチアジン酸、ロキソプロフェン等のプロピオン酸系消炎鎮痛薬;アンピロキシカム、ピロキシカム、テノキシカム等のオキシカム系消炎鎮痛薬;トルフェナム酸、フルフェナム酸、フルフェナム酸アルミニウム、フロクタフェニン、メフェナム酸等のフェナム酸系消炎鎮痛薬;ケトフェニルブタゾン等のピラゾロン系消炎鎮痛薬等が挙げられる。これらの非ステロイド性消炎鎮痛成分は、場合によっては製薬上許容される塩及び/又は溶媒和物の形態であってもよい。製薬上許容される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、溶媒和物としては水和物が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0010】
本発明で使用する上述の非ステロイド性消炎鎮痛成分としてはアリール酢酸系消炎鎮痛薬、プロピオン酸系消炎鎮痛薬が好ましく、アリール酢酸系消炎鎮痛薬がより好ましく、特にインドメタシンが好ましい。本発明に使用する非ステロイド性消炎鎮痛成分の含有量は、本発明の消炎鎮痛外用剤の全量に対して通常0.1〜3重量%、好ましくは0.2〜
2重量%、特に0.5〜1.5重量%であるのが好ましい。
【0011】
本発明の消炎鎮痛外用剤は、酸性ムコ多糖を含有することを特徴とし、酸性ムコ多糖1種類のみを含有してもよく、2種類以上を含有することもできる。本発明で使用する酸性ムコ多糖とは、ムコ多糖に硫酸基等の酸性基が結合している化合物を意味する。このような酸性ムコ多糖としては、例えば、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸B(デルマタン硫酸)、コンドロイチン硫酸C、コンドロイチン硫酸D、コンドロイチン硫酸E、コンドロイチン硫酸K等のコンドロイチン硫酸類、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン類似物質等が挙げられる。これらは、場合によっては製薬上許容される塩及び/又は溶媒和物の形態であってよい。製薬上許容される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、溶媒和物としては水和物が挙げられる。これらの中で、本発明の消炎鎮痛外用剤には、ヘパリン類似物質を含有することが好ましい。
【0012】
本発明で使用するヘパリン類似物質とは、コンドロイチン多硫酸などの多硫酸化ムコ多糖類の総称を意味する。この様なヘパリン類似物質として、ムコ多糖類を多硫酸化することにより得られたものを使用することもできるし、健康な食用獣、主としてウシの気管軟骨を含む肺臓から抽出したムコ多糖の多硫酸エステルを使用することもできる。本発明で使用するヘパリン類似物質の性状や、確認試験の結果等は日本薬局方外医薬品規格2002、2002年9月30日発行、株式会社じほう刊の521ページに記載の内容を満たすものであることが好ましい。このようなヘパリン類似物質は、既に日本国において医薬・化粧品原料として開発されているため、市販品を利用することも可能である。例えば、入手可能な製品として、ヘパリン類似物質(アピ(株)製)等が挙げられる。
【0013】
本発明で使用される酸性ムコ多糖類の平均分子量は特に制限されないが、消炎鎮痛効果の向上及び皮膚刺激の低減などの観点から、1,000〜1,000,000Mwが好ましく、5,000〜100,000Mwが特に好ましい。また、酸性ムコ多糖類における、有機硫酸基の量(%)は特に制限されないが、消炎鎮痛効果の向上及び皮膚刺激の低減などの観点から、20〜40%が好ましく、25〜38%が特に好ましい。なお、有機硫酸基の量は、日本薬局方外医薬品規格2002中、「ヘパリン類似物質」の項に記載の方法により測定する。
【0014】
本発明に使用する酸性ムコ多糖の含有量は、本発明の消炎鎮痛外用剤の全量に対して合計0.01〜3重量%であることが好ましく、0.05〜1重量%であることがより好ましく、0.1〜0.5重量%であることが特に好ましい。
また、本発明で使用する酸性ムコ多糖と非ステロイド性消炎鎮痛成分の製剤中での配合比は、本発明の効果が得られる範囲で適宜設定することができる。通常、酸性ムコ多糖:非ステロイド性消炎鎮痛成分は1:0.03〜300であることが好ましく、1:0.2〜40であることがより好ましく、1:1〜15であることが特に好ましい。
【0015】
本発明の消炎鎮痛外用剤は、上述の非ステロイド性消炎鎮痛成分及び酸性ムコ多糖に加え、N−メチルピロリドンを含有することを特徴とする。本発明で使用するN−メチルピロリドンとは下記式(1)で示される化合物であり、N−メチル−2−ピロリドンとも呼ばれる。入手可能な製品としては、ファーマソルブ(アイエスピー・ジャパン)、N−メチル−2−ピロリドン(キシダ化学、三菱化成、メルク)が挙げられる。
【0016】
【化1】

【0017】
本発明に使用するN−メチルピロリドンの含有量は、本発明の消炎鎮痛外用剤の全量に対して通常0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%、特に0.1〜3重量%であることが好ましい。
また、本発明で使用する非ステロイド性消炎鎮痛成分とN−メチルピロリドンの製剤中での配合比は、本発明の効果が得られる範囲で適宜設定することができる。通常、非ステロイド性消炎鎮痛成分:N−メチルピロリドンは1:0.0003〜100であることが好ましく、1:0.005〜25であることがより好ましく、1:0.067〜6であることが特に好ましい。
【0018】
また、本発明で使用する酸性ムコ多糖とN−メチルピロリドンの製剤中での配合比は、本発明の効果が得られる範囲で適宜設定することができる。通常、酸性ムコ多糖:N−メチルピロリドンは1:0.0003〜1,000であることが好ましく、1:0.01〜100であることがより好ましく、1:0.2〜30であることが特に好ましい。
【0019】
本発明の消炎鎮痛外用剤は、非ステロイド性消炎鎮痛成分、酸性ムコ多糖、及びN−メチルピロリドンを含有することを特徴とする。これらの成分を含有することで、非ステロイド性消炎鎮痛成分の経皮吸収性を高め、優れた消炎鎮痛効果を有し、かつ皮膚刺激の低減された好ましい外用製剤とすることができる。
また、本発明の消炎鎮痛外用剤は、上記の成分の他に任意成分を加えることで、様々な剤形としたり、製剤の安定性や使用感をさらに高めたりすることができる。
【0020】
本発明の消炎鎮痛外用剤の剤形は特に限定されず、例えばゲル剤、軟膏剤、クリーム剤、液剤、乳剤、リニメント剤、ローション剤、硬膏剤(プラスタ−剤)、パップ剤、パッチ剤、テープ剤、スプレー剤、又はエアゾール剤を挙げることができる。特にゲル剤、液剤、クリーム剤、乳剤は優れた効果を示し好ましい。これらの製剤は、本発明による組成物と、製造する剤形に必要な製剤成分、すなわち基剤、補助剤、添加剤等を必要に応じて組み合わせることにより、第15改正日本薬局方記載の製剤化方法等の常法により製造することができる。
【0021】
例えば、ゲル剤に使用される基剤としては、ゲル化剤、低級アルコール類、多価アルコール類、精製水等が挙げられる。
ゲル化剤としては、カルボキシビニルポリマー等のアクリル酸系高分子;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等の水溶性セルロース系高分子;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン等が挙げられる。ゲル化剤は1種又は2種以上を併用してもよい。ゲル化剤としては、特にカルボキシビニルポリマー及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。ゲル化剤の含有量は、消炎鎮痛外用剤の全量に対して合計0.01〜5重量%、好ましくは0.5〜5重量%、特に0.5〜2.5重量%であるのが好ましい。
低級アルコール類としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
多価アルコールとしては、グリセリン、エチレングリコール、ブチレングリコール、プ
ロピレングリコール、マクロゴール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0022】
また、液剤に使用される基剤としては、低級アルコール類、多価アルコール類、精製
水等が挙げられる。
低級アルコール類としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
多価アルコール類としては、グリセリン、エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0023】
また、クリーム剤・乳剤に使用される基剤としては、油脂類、多価アルコール類、溶剤、乳化剤等が挙げられる。
油脂類としては、スクワラン、パラフィン、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、ワセリン等の炭化水素類;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル等の脂肪酸エステル類;ベヘニルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール類;ベヘニン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;カルナウバロウ、鯨ロウ、セラック、ホホバ油、ミツロウ、サラシミツロウ、モンタンロウ、ラノリン、ラノリン誘導体、還元ラノリン等のロウ類;シリコーン油等が挙げられる。
多価アルコール類としては、グリセリン、エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
溶剤としては、マクロゴール、エタノール、メチルエチルケトン、綿実油、オリブ油、落花生油、精製水等が挙げられる。
乳化剤としては、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、エチレングリコールモノ脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、メチルグルコシド脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド等の多価アルコール脂肪酸エステル又は多価アルコールアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンフィトスタノール、ポリオキシエチレンコレステロール、ポリオキシエチレンコレスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシエチレンエーテル;ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールジ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンメチルグルコシド脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン植物油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のエーテルエステル等の非イオン性界面活性剤又はラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、などのイオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0024】
また、本発明の消炎鎮痛外用剤に用いる補助剤あるいは添加剤としては、可溶化剤、pH調整剤、抗酸化剤、軟化剤、増粘剤、保湿剤、防腐剤、安定化剤、経皮吸収促進剤、香料等、一般に外用剤に用いられるものが挙げられる。
可溶化剤としては、上述の乳化剤として例示した非イオン性界面活性剤又はイオン性界面活性剤に加え、グリセリン、流動パラフィン、クロタミトン、マクロゴール等が挙げられる。
pH調整剤としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、無水クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、酒石酸ナトリウム、乳酸、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、氷酢酸等の有機酸又はその塩;塩酸、硫酸、リン酸、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、炭酸ナトリ
ウム、炭酸水素ナトリウム等の無機酸又はその塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の水酸化アルカリ;トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアミン類等が挙げられる。
抗酸化剤としては、亜硝酸ナトリウム、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エリソルビン酸、塩酸システイン、クエン酸、トコフェロール、酢酸トコフェロール、大豆レシチン、没食子酸プロピル等が挙げられる。
軟化剤としては、アラントイン、アーモンド油、オリブ油、グリセリン、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、精製ラノリン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ナタネ油、ヒマシ油、プロセス油、プロピレングリコール、ポリブテン等が挙げられる。
増粘剤としては、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、グアーガム、ゼラチン、アラビアゴム、アルギン酸、アルブミン等が挙げられる。
保湿剤としては、ヒアルロン酸ナトリウム、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、尿素、ショ糖、エリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸ベンジル、安息香酸ナトリウム、安息香酸、安息香酸ベンジル、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、アミノエチルスルホン酸等が挙げられる。
安定化剤としては、アジピン酸、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エデト酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硬化油、システイン等が挙げられる。
経皮吸収促進剤としては、メントール等のテルペン類;アジピン酸ジイソプロピル等の脂肪酸エステル類が挙げられる。
【0025】
さらに、本発明の消炎鎮痛外用剤は、非ステロイド性消炎鎮痛成分、酸性ムコ多糖、及びN−メチルピロリドンを必須成分とし、本発明の効果を損なわない範囲で以下の薬効成分を任意に配合することもできる。
例えば、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェニルピラリン、マレイン酸クロルフェニラミンなどの抗ヒスタミン剤;アスコルビン酸ナトリウム、塩酸ピリドキシン、トコフェロール、酢酸トコフェロールなどのビタミン剤;クロタミトンなどの鎮痒剤;トウガラシチンキ、ノニル酸ワニリルアミド等の温感成分;リドカイン、テトラカイン、プロカイン、ジブカイン、ベンゾカイン、ブピバカイン、メピバカイン、プロピトカイン及びこれらの塩等の塩基性局所麻酔剤;メントール、ボルネオール、カンフル、ハッカ油などの清涼化剤、生薬などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0026】
本発明の消炎鎮痛外用剤のpHは、消炎鎮痛外用剤の安定性及び皮膚刺激等の観点から、通常pH4〜8、更にpH5〜7であるのが好ましい。また、ゲルやクリームのような軟膏剤の場合、稠度は通常1〜100gであり、3〜50gであることが好ましい。ここで稠度は、25℃にて直径2cmの金属球を6cm/分の速度で2cm進入させた際の応力の最大値を表し、レオメーター(NRM−3002D−L:不動工業製)等にて測定できる。また、液剤の粘度は通常1〜1,000mPa・sであり、3〜500mPa・sであることが好ましい。ここで粘度は、25℃にてNo.2ローターで回転数60rpmの条件でB型粘度計(BL:トキメック製)等を用いて測定できる。
【0027】
本発明の消炎鎮痛外用剤は、変形性関節症、肩関節周囲炎、腱・腱鞘炎、腱周囲炎、上腕骨上顆炎、筋肉痛、外傷後の腫脹・疼痛、筋肉痛、肩こりに伴う肩の痛み、腰痛、関節痛、腱鞘炎、肘の痛み、打撲、及び捻挫からなる群から選ばれる疾患または症状の治療のための医薬品又は医薬部外品として使用することができる。
本発明の消炎鎮痛外用剤の使用形態は、対象疾患、患者の性別、年齢、症状等を考慮して、適量を患部に1日1回〜数回、剤形に応じて塗布、噴霧又は貼付すればよい。
【実施例】
【0028】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
<実施例1:ゲル剤1の調製>
インドメタシン1g及びl−メントール3gをN−メチルピロリドン1g、アジピン酸ジイソプロピル1g、プロピレングリコール1g及びイソプロパノール45gの混液に溶解し、インドメタシン溶液を得た。また、ヘパリン類似物質0.3g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.5g及びカルボキシビニルポリマー1gを精製水に混合させ、これを先のインドメタシン溶液と均一になるまで混合した。その後、ジイソプロパノールアミンにてpHを6に調整し、精製水にて全量を100gとした。これを攪拌混合することによりゲル剤1を得た。
<実施例2:ゲル剤2の調製>
実施例1のN−メチルピロリドンの配合量を3.5gに替え、アジピン酸ジイソプロピルを含有させないこと以外は実施例1と同様にしてゲル剤2を得た。
【0030】
<参考例1:ゲル剤3の調製>
インドメタシン1g及びl−メントール3gを、アジピン酸ジイソプロピル1g、プロピレングリコール1g及びイソプロパノール45gの混液に溶解し、インドメタシン溶液を得た。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.5g及びカルボキシビニルポリマー1gを精製水に混合させ、これを先のインドメタシン溶液と均一になるまで混合した。その後、ジイソプロパノールアミンにてpHを6に調整し、精製水にて全量を100gとした。これを攪拌混合することによりゲル剤3を得た。
<比較例1:ゲル剤4の調製>
インドメタシン1g及びl−メントール3gをアジピン酸ジイソプロピル1g、プロピレングリコール1g及びイソプロパノール45gの混液に溶解し、インドメタシン溶液を得た。また、ヘパリン類似物質0.3g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.5g及びカルボキシビニルポリマー1gを精製水に混合させ、これを先のインドメタシン溶液と均一になるまで混合した。その後、ジイソプロパノールアミンにてpHを6に調整し、精製水にて全量を100gとした。これを攪拌混合することによりゲル剤4を得た。
<比較例2:ゲル剤5の調製>
比較例1のアジピン酸ジイソプロピルの配合量を2gに替え、その他は比較例1と同様にしてゲル剤5を得た。
【0031】
<試験例1(インドメタシン吸収実験)>
参考例1、比較例1〜2、及び実施例1〜2で得られた製剤について、以下の手順で血中のインドメタシン濃度を測定した。
ラット腹部を除毛し、製剤0.7gを2.5cm×2.5cmの範囲に適用し、2時間後の血中のインドメタシン濃度を測定した。
結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
表1の結果より、ヘパリン類似物質を含有しない参考例1(ゲル剤3)とヘパリン類似物質0.3gを配合した比較例1(ゲル剤4)では、インドメタシンの吸収量に差が認められた。塗布から2時間後の血中インドメタシン濃度について、参考例1のゲル剤3が5.73μg/mLであるのに対して比較例1のゲル剤4では0.84μg/mLとヘパリン類似物質を追加配合することにより、インドメタシンの吸収量が大きく低下することがわかった。つまり、ヘパリン類似物質及びインドメタシンを含有する消炎鎮痛外用剤では、ヘパリン類似物質がインドメタシンの経皮吸収を阻害し、インドメタシンの有する優れた消炎鎮痛効果を減弱させることが示された。
一方、比較例1のゲル剤4において、経皮吸収促進剤であるアジピン酸ジイソプロピルを2倍に増量した比較例2のゲル剤5では、インドメタシン吸収量の増加がみられたもののわずかであり、ヘパリン類似物質を配合しない参考例1のゲル剤3の方が、大幅にインドメタシンの吸収が良いことが分かった。つまり、単なる経皮吸収促進剤の増量では、インドメタシン及びヘパリン類似物質を含有する好ましい消炎鎮痛外用剤は得られないことが示された。
【0034】
次に、N−メチルピロリドンを1重量%配合した実施例1のゲル剤1は、ヘパリン類似物質を配合しない参考例1のゲル剤3とほぼ同等の血中インドメタシン濃度を示し、十分にインドメタシンの消炎鎮痛効果が期待できることが示された。また、さらにN−メチルピロリドンを3.5重量%配合した実施例2のゲル剤2は、ヘパリン類似物質を配合しない参考例1のゲル剤3よりもさらに血中インドメタシン濃度が高く、さらなるインドメタシンの消炎鎮痛効果の向上が期待できることが示された。つまり、製剤中にN−メチルピロリドンを配合すると、インドメタシン及びヘパリン類似物質を配合した製剤であっても、インドメタシンの吸収量が低下せず、好ましい消炎鎮痛外用剤が得られることが示された。また、その結果はN−メチルピロリドンの濃度依存的に得られる効果であることが示された。
また、本発明で得られた実施例1及び2の製剤は、ヘパリン類似物質の有する皮膚刺激低減効果も得られていることは言うまでもない。
【0035】
以上の結果より、本発明の非ステロイド性消炎鎮痛成分、酸性ムコ多糖、及びN−メチルピロリドンを含有する消炎鎮痛外用剤は、非ステロイド性消炎鎮痛成分の経皮吸収性が高く、優れた消炎鎮痛効果を示し、さらに酸性ムコ多糖による皮膚刺激の低減効果を併せ持つことがわかった。そして、本発明により薬効及び使用感の両方に優れた好ましい製剤を提供することができる。
【0036】
次に剤型を変化させた本発明の製剤を調製した。
<実施例3:液剤の調製>
インドメタシン1g及びl−メントール3gをN−メチルピロリドン1g、アジピン酸ジイソプロピル1g、プロピレングリコール1g及びイソプロパノール40gの混液に溶解し、インドメタシン溶液を得た。また、ヘパリン類似物質0.3g及びヒドロキシプロピルメチルセルロース0.5gを精製水に混合させ、これを先のインドメタシン溶液と均一になるまで混合した。その後、ジイソプロパノールアミンにてpHを6に調整し、精製水にて全量を100gとし、本発明に係る液剤を得た。
【0037】
<実施例4:クリーム剤の調製>
(1)カルボキシビニルポリマー1g及びヘパリン類似物質0.3gを精製水に膨潤させ、約75℃まで加温させた。
(2)l−メントール3g、N−メチルピロリドン1g、ミリスチン酸オクチルドデシル10g、アジピン酸ジイソプロピル5g、モノステアリン酸グリセリン2g、モノステアリン酸ソルビタン0.5g、及びモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン1gを
約75℃に加温・溶解させ、均一になるまで混合させた後、ステップ(1)に添加し、良く混合し乳化させた。
(3)インドメタシン1gを、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン0.1gを溶解させた精製水に分散させ、ステップ(2)を冷却したところに添加し、良く混合し均一に分散させた。
(4)pH5になるように水酸化ナトリウム水溶液をステップ(3)に添加し、精製水にて全量を100gとした。その後、冷却しながら良く分散させ、本発明に係るクリーム剤を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ステロイド性消炎鎮痛成分、酸性ムコ多糖、及びN−メチルピロリドンを含有する消炎鎮痛外用剤。
【請求項2】
前記非ステロイド性消炎鎮痛成分がインドメタシンである請求項1に記載の消炎鎮痛外用剤。
【請求項3】
前記酸性ムコ多糖が、ヘパリン類似物質である請求項1又は2に記載の消炎鎮痛外用剤。

【公開番号】特開2012−92067(P2012−92067A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241754(P2010−241754)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】